説明

半導体発光装置及びその製造方法

【課題】 歩留まりを向上させることが可能な半導体発光装置及びその製造方法を提供す
る。
【解決手段】 光を出射する発光部2と、前記発光部2の一方の主面M1側に設けられ、
蛍光体を含有する波長変換部8と、前記波長変換部8上に設けられている透明樹脂部9と
を備え、透明樹脂部9は、弾性率とショア硬さのうち少なくとも一方の値が波長変換部8
より高いことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概ね、半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以下、単に発光素子と称する)と、蛍光体を含む波長変換部と、を用
いた半導体発光装置においては、例えば、青色光を発光する発光素子(例えば、青色LE
D(Light Emitting Diode))と、青色と補色関係にある黄色光を放出する蛍光体と、を
用いて白色光を得るようにしたものがある。
【0003】
そして、このような半導体発光装置を製造する際に、波長変換部の表面が平滑となるよ
うに研磨し、その後ウェットエッチング法を用いて表面に凹凸加工を施すようにした技術
がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−157637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の半導体発光装置では、例えばチップマウンタ等を用いて基板実装する際
に、半導体発光装置をピックアップするために吸着させてからマウントを行うのだが、そ
の際に、波長変換部の表面に凹凸加工が施されているため、隙間から空気が入ってしまい
、ピックアップミスが発生し易くなる。その結果、歩留まりが低下するという課題があっ
た。
【0006】
そこで本発明では、歩留まりを向上させることが可能な半導体発光装置及びその製造方
法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態の半導体発光装置は、光を出射する発光部と、発
光部の一方の主面側に設けられ、蛍光体を含有する波長変換部と、波長変換部上に設けら
れている透明樹脂とを備え、透明樹脂は、弾性率とショア硬さのうち少なくとも一方の値
が波長変換部より高いことを特徴としている。
【0008】
また、実施形態の半導体発光装置の製造方法は、光を出射する発光部と、発光部の一方
の主面側に設けられ、蛍光体を含有する波長変換部と、波長変換部上に設けられている透
明樹脂と、を有する半導体発光装置の製造方法であって、発光部の一方の主面側に蛍光体
を含有する波長変換部を設ける工程と、波長変換部上に、弾性率とショア硬さのうち少な
くとも一方の値が波長変換部よりも高くなるように透明樹脂を形成する工程と、を備えて
いることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体発光装置を示す図で、加工された半導体発光装置の一例を例示するための模式断面図である。
【図2】基板上に形成された複数の発光部から出射する光の波長の分布を例示するための模式図である。
【図3】波長と色度との関係を例示するための模式グラフ図である。(a)は波長と色度図におけるX座標の値Cxとの関係を例示するための模式グラフ図、(b)は波長と色度図におけるY座標の値Cyとの関係を例示するための模式グラフ図である。
【図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するための模式断面図。である。
【図5】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するための模式断面図。である。
【図6】加工が施された波長変換部の形態を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構
成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
なお、ここでは一例として、複数の発光部を有する半導体発光装置(いわゆるマルチチッ
プ型の半導体発光装置)について例示する。
【0012】
図1は、加工された半導体発光装置の一例を例示するための模式断面図である。図1に
示すように、半導体発光装置1には、発光部2、電極部3、電極部4、接合部5、絶縁部
6、封止部7、波長変換部8が設けられている。
【0013】
発光部2は、主面M1と、主面M1の反対面である主面M2とを有し、複数設けられて
いる。また、光を出射する発光部2には、半導体部2a、活性部2b、半導体部2cが設
けられている。
【0014】
半導体部2aは、例えば、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、A
lGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などの
n形の窒化物半導体を用いて形成されたものとすることができる。
【0015】
活性部2bは、半導体部2aと半導体部2cとの間に設けられている。また、活性部2
bは、正孔および電子が再結合して光を発生する井戸層と、井戸層よりも大きなバンドギ
ャップを有する障壁層(クラッド層)と、によって構成された量子井戸構造とすることが
できる。ただし、活性部2bの構成は量子井戸構造に限定されるわけではなく、発光可能
な構造を適宜選択することができる。
【0016】
半導体部2cは、例えば、GaN、AlN、AlGaN、InGaNなどのp形の窒化
物半導体を用いて形成されたものとすることができる。
【0017】
発光部2は、例えば、ピークの発光波長が350nm〜600nmの発光ダイオードと
することができる。
【0018】
電極部3、電極部4は、凹部7aの底面と封止部7の端面との間を貫通するようにして
設けられている。電極部3の一方の端部は接合部5と電気的に接続され、接合部5を介し
て電極部3と半導体部2aとが電気的に接続されている。そして、電極部4の一方の端部
は半導体部2cと電気的に接続されている。
【0019】
接合部5は、電極部3と半導体部2aとの間に設けられている。接合部5は、例えば、
Cu(銅)などの金属材料を用いて形成されたものとすることができる。なお、接合部5
は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0020】
絶縁部6は、封止部7に設けられた凹部7aを埋め込むようにして設けられている。絶
縁部6は、例えば、SiO2などの無機材料や、樹脂などから形成されるものとすること
ができる。
【0021】
封止部7は、発光部2の主面M2側に設けられ、電極部3の端部と電極部4の端部とを
露出させつつ、電極部3および電極部4を封止する。また、封止部7は凹部7aを有し、
凹部7aの内部に設けられた発光部2、接合部5をも封止する役割を有している。なお、
封止部7と絶縁部6とが一体的に形成されるようにすることもできる。
【0022】
波長変換部8は、発光部2の主面M1側に設けられ、後述する蛍光体を含有している。
また、波長変換部8は、発光部2から出射する光の特性に関する情報に基づいた蛍光体の
量の分布を有している。なお、蛍光体の量の分布に関する詳細は後述する。
【0023】
波長変換部8は、波長変換可能な蛍光体が混合された樹脂などを用いて形成されたもの
とすることができる。また、望ましくは弾性率が80〜1000MPa、ショア硬さが2
5〜90HSとなるように形成されている。
【0024】
波長変換部8は、440nm以上470nm以下(青色)、500nm以上555nm以
下(緑色)、560nm以上580nm以下(黄色)、600nm以上670nm以下(赤色)
にピークの発光波長を持つ蛍光体の少なくとも1種以上を含むものとすることができる。
また、波長変換部8は、発光波長の帯域が380nm〜720nmの蛍光体を含むものと
することができる。
【0025】
蛍光体としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニ
ウム(Ge)、燐(P)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、アルカリ土類元素、硫化
物元素、希土類元素、窒化物元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素が含ま
れたものとすることができる。
【0026】
赤色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば、以下のものを例示することができ
る。ただし、赤色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではなく適宜変更す
ることができる。
【0027】
La2O2S:Eu,Sm、
LaSi3N5:Eu2+、
α−sialon:Eu2+、
CaAlSiN3:Eu2+、
(SrCa)AlSiN3:EuX+、
Srx(SiyAl3)z(OxN):EuX+
【0028】
緑色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば、以下のものを例示することができ
る。ただし、緑色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではなく適宜変更す
ることができる。
(Ba,Sr,Mg)O・aAl2O3:Mn、
(BrSr)SiO4:Eu、
α−sialon:Yb2+、
β−sialon:Eu2+、
(CaSr)Si2O4N7:Eu2+、
Sr(SiAl)(ON):Ce
【0029】
青色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば、以下のものを例示することができ
る。ただし、青色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではなく適宜変更す
ることができる。
ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、
(Ba,Eu)MgAl10O17、
(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10O17、
10(Sr,Ca,Ba,Eu)・6PO4・Cl2、
BaMg2Al16O25:Eu
Y3(Al,Ga)5O12:Ce
SrSi2ON2.7:Eu2+
【0030】
黄色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば、以下のものを例示することができ
る。ただし、黄色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではなく適宜変更す
ることができる。
Li(Eu,Sm)W2O8、
(Y,Gd)3,(Al,Ga)5O12:Ce3+、
Li2SrSiO4:Eu2+、
(Sr(Ca,Ba))3SiO5:Eu2+、
SrSi2ON2.7:Eu2+
【0031】
黄緑色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば、以下のものを例示することがで
きる。ただし、黄緑色の蛍光を発する蛍光体は、これに限定されるわけではなく適宜変更
することができる。
SrSi2ON2.7:Eu2+
なお、混合する蛍光体は1種類である必要はなく、複数種類の蛍光体が混合されるよう
にしてもよい。この場合、青味がかった白色光、黄味がかった白色光などのように色味を
変えるために複数種類の蛍光体の混合割合を変えるようにすることもできる。
【0032】
蛍光体が混合される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、メタク
リル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)、脂環式アクリル(OZ
)、アリルジグリコールカーボネート(ADC)、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系
樹脂とエポキシ樹脂とのハイブリット樹脂、ウレタン樹脂などを例示することができる。
【0033】
ここで、発光部2は、例えば、エピタキシャル成長法などを用いて形成することができ
るが、形成過程において発光部2の厚み寸法にばらつきが生じる場合がある。そして、発
光部2の厚み寸法にばらつきが生じると、発光部2から出射する光の特性である光の波長
がばらつくようになる。そして、発光部2から出射する光の波長がばらつくと色度もばら
つくようになる。
【0034】
図2は、基板上に形成された複数の発光部から出射する光の波長の分布を例示するため
の模式図である。なお、基板上に形成された複数の発光部から出射する光の波長の分布を
モノトーン色の濃淡で表し、光の波長が短い程濃く、光の波長が長い程淡くなるように表
示した。
【0035】
図2に示すように、基板上の位置によって発光部から出射する光の波長が異なるものと
なる場合がある。このことは、形成された発光部2から出射する光の波長にばらつきがあ
ることを意味する。
【0036】
ここで、光の波長にばらつきがあれば、色度のばらつきが大きくなるおそれがある。そ
のため、発光部2から出射する光の波長のばらつきに基づいて厚み寸法が変化した波長変
換部8が設けられるようにしている。すなわち、発光部2から出射する光の特性に関する
情報に基づいて蛍光体の量の分布を有した波長変換部8が設けられるようにしている。
【0037】
次に、波長変換部8の厚み寸法と、色度のばらつきとの関係について例示する。図3は
、波長と色度との関係を例示するための模式グラフ図である。なお、図3(a)は波長と
色度図におけるX座標の値Cxとの関係を例示するための模式グラフ図、図3(b)は波
長と色度図におけるY座標の値Cyとの関係を例示するための模式グラフ図である。
【0038】
また、図3(a)、(b)中のAは波長変換部の厚み寸法が100μm程度、Bは波長
変換部の厚み寸法が65μm程度、Cは波長変換部の厚み寸法が45μm程度の場合であ
る。なお、波長変換部に含まれる蛍光体の量の割合を一定とした場合である。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、波長が長くなると色度図におけるX座標の値Cx、
Y座標の値Cyがともに低下する。このことは、発光部2から出射する光の波長がばらつ
くと色度もばらつくことを意味する。
【0040】
また、波長変換部8の厚み寸法が薄くなると色度図におけるX座標の値Cx、Y座標の
値Cyがともに低下する。このことは、波長変換部8に含まれる蛍光体の量を少なくすれ
ば色度図におけるX座標の値Cx、Y座標の値Cyを低下させることができることを意味
する。すなわち、発光部2から出射する光の波長に基づいて波長変換部8に含まれる蛍光
体の量を制御すれば、色度のばらつきを抑制することができることがわかる。
【0041】
例えば、図3(a)、(b)中のA、B、Cにおいて、短い波長(図中の左側)の光を
出射する発光部2の上に形成される波長変換部8に含まれる蛍光体の量を少なくして値C
x、値Cyを低下させるようにすれば、長い波長(図中の右側)の光を出射する発光部2
における値Cx、値Cyとの差を小さくすることができる。
【0042】
そのため、波長変換部8において、光の波長が短い位置における蛍光体の量が光の波長
が長い位置における蛍光体の量よりも少なくなるような蛍光体の量の分布を設けるように
すれば、色度のばらつきを少なくすることができる。
【0043】
例えば、図1に示す波長変換部8のように、発光部2から出射する光の波長に基づいて
厚み寸法を変化させることで蛍光体の量の分布を設け、色度のばらつきを少なくするよう
にすることができる。
【0044】
この場合、短い波長側における値Cxと、長い波長側における値Cxとの差である色度
差ΔCxが0.015以下となるように蛍光体の量が決められるようにすることができる
。また、短い波長側における値Cyと、長い波長側における値Cyとの差である色度差Δ
Cyが0.015以下となるように蛍光体の量が決められるようにすることができる。
【0045】
なお、蛍光体の量を変化させれば、色度差ΔCxと色度差ΔCyとがともに変化するの
で、色度差ΔCxと色度差ΔCyの内いずれか大きい値の方が0.015以下となるよう
に蛍光体の量が決められるようにすることができる。
【0046】
この場合、少なくとも隣接する発光部2同士の間で色度差ΔCxと色度差ΔCyとが0
.015以下となるようにすればよい。発光部2が多数設けられているような場合には、
色度差ΔCxと色度差ΔCyとが0.015以下となるように分割して、分割された各領
域毎に蛍光体の量を決めるようにすればよい。
【0047】
このように波長変換部8は、厚み寸法の変化に応じた蛍光体の量の分布を有している。
【0048】
このような波長変換部8は、発光部2から出射する光の特性(例えば、発光部2から出射
する光の波長)に基づいて波長変換部8の表面側を削り取ることや、蛍光体が混合された
樹脂を塗布することで形成することができる。
【0049】
透明樹脂部9は、波長変換部8上に設けられており、波長変換部8の厚み寸法の変化に
応じた量が設けられている。より詳しく説明すると、波長変換部8の厚み寸法を変化させ
ているため、厚み寸法が小さい部分には多くの量の透明樹脂部9が設けられ、厚み寸法が
大きい部分には少ない量の透明樹脂部9が設けられている。
【0050】
このように設けることにより、主面M1側に形成される波長変換部8と透明樹脂部9の
厚み寸法Tが略均一にすることが可能となる。
【0051】
そして、このように波長変換部8と透明樹脂部9の厚み寸法Tが略均一となるように形
成されることで、例えばチップマウンタ等で半導体装置をピックアップする際に、空気が
入り込む空間を低減させ、より確実に吸着させてピックアップをすることが可能となり、
歩留まりを向上させることが可能となる。
【0052】
更に、波長変換部8と透明樹脂部9の厚み寸法が略均一となることで、半導体発光装置
1をピックアップする位置を略均一にすることが可能となる。そのため、厚み寸法に合わ
せてピックアップする位置を決める必要がなく、生産効率を向上させることが可能となる

【0053】
また、透明樹脂部9は、波長変換部8よりも弾性率またはショア方さの少なくとも一方
の値が高くなるように設けられている。より具体的には、弾性率が150MPa以上、シ
ョア硬さがHS45以上となるように形成されている。ように形成することにより、例え
ばチップマウンタにより半導体発光装置1をマウントする際に半導体発光装置1をマウン
ト出来ずに持ち帰ってきてしまう持ち帰りを抑制することが出来る。この持ち帰りは、マ
ウンタのノズルにより半導体発光装置1を吸引する際に密着してしまい、ノズルの吸引を
止めても半導体発光装置1が密着し続け、その他の半導体発光装置1をピックアップする
位置まで持って帰ってきてしまうことをいう。この原因としては、吸引する透明樹脂部9
の弾性率とショア硬さに起因しており、弾性率が150MPa未満、ショア硬さがHS4
5未満の際によく発生するのだが、本実施形態のように弾性率が150MPa以上、ショ
ア硬さがHS45以上となるようにすることにより、持ち帰りを抑制することが出来る。
【0054】
また、透明樹脂部9に用いられる樹脂は、波長変換部8の屈折率よりも低い屈折率であ
ることが好ましい。その理由としては、透明樹脂部9の樹脂を波長変換部8の屈折率より
も低い屈折率のものを用いることにより、空気と波長変換部8との屈折率の差よりも、空
気と波長変換部8との間に透明樹脂部9を設けた構造の方が屈折率の差を小さくすること
ができるため、光の取り出し効率を向上させることができるからである。
【0055】
この場合、発光部2から出射する光が、波長の短い紫外から青色の光であり輝度も高い
場合には波長変換部4を形成する樹脂が劣化するおそれがある。そのため、波長変換部4
を形成する樹脂としては、青色光などによる劣化が生じにくいものとすることが好ましい

【0056】
青色光などによる劣化が生じにくい樹脂としては、例えば、メチルフェニルシリコーン
、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンとエポキシ樹脂とのハイブリット樹脂
などを例示することができる。ただし、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変
更することができる。これにより、発光部2から発光された光による劣化を抑制するだけ
でなく、外的要因による波長変換層8の表面の一部の劣化や変色を防ぐ保護膜として機能
することも可能となる。
【0057】
次に、半導体装置の製造方法の実施の形態について例示する。図4、図5は、実施の形
態に係る半導体発光装置の製造方法を例示するための模式工程断面図である。なお、図5
は図4に続く模式工程断面図である。
【0058】
まず、図4(a)に示すように、サファイアやシリコンなどからなる基板100上に所
定の形状を有する半導体部2a、活性部2b、半導体部2cをこの順で形成する(ステッ
プS1)。すなわち、サファイアやシリコンなどからなる基板100上に所定の形状を有
する発光部2を形成する。
【0059】
この場合、既知のスパッタリング法や気相成長法などを用いてこれらの成膜を行うよう
にすることができる。気相成長法としては、例えば、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Or
ganic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Ph
ase Epitaxy)法、分子線エピタキシャル成長(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などを
例示することができる。
【0060】
そして、既知のリソグラフィ技術やエッチング技術などを用いて、半導体部2a、活性
部2b、半導体部2cの形状を成形するようにすることができる。
【0061】
次に、図4(b)に示すように、接合部5、絶縁部6を形成する(ステップS2)。こ
の場合、真空蒸着法やスパッタリング法などの各種の物理的気相成長(PVD:Physical Va
por Deposition)法、各種の化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法など
と、リソグラフィ技術やエッチング技術などとを組み合わせることで接合部5、絶縁部6
を形成するようにすることができる。
【0062】
次に、図4(c)に示すように、電極部3、電極部4を形成する(ステップS3)。こ
の場合、真空蒸着法やスパッタリング法などの各種の物理的気相成長法、各種の化学的気
相成長法などと、リソグラフィ技術やエッチング技術などとを組み合わせることで電極部
3、電極部4を形成するようにすることができる。
【0063】
次に、図4(d)に示すように、封止部7となる層17を形成する(ステップS4)。
この場合、真空蒸着法やスパッタリング法などの各種の物理的気相成長法、各種の化学的
気相成長法などと、リソグラフィ技術やエッチング技術などとを組み合わせることで封止
部7となる層17を形成するようにすることができる。
【0064】
次に、図4(e)に示すように、この様にして形成された積層体を基板100から剥離
する(ステップS5)。基板100にサファイアなどを用いた場合、レーザリフトオフ法
などを用いて積層体を基板100から剥離することができる。また、基板100にシリコ
ンを用いた場合、エッチング等により積層体を基板100から剥離させる。なお、図4(
e)は、積層体を反転させた状態で剥離する場合を表したものである。
【0065】
次に、図5(a)に示すように、層17の表面を研磨加工などして電極部3、電極部4
の端部を露出させる(ステップS6)。この際、封止部7が形成されることになる。
【0066】
次に、発光部2から出射する光の波長を発光部2毎に測定する(ステップS7)。
【0067】
次に、測定された光の波長に基づいて蛍光体の量の分布を求める(ステップS8)。こ
の場合、図2、図3において例示をしたように、光の波長、蛍光体の量、色度のばらつき
における相関関係などを予め実験やシミュレーションなどにより求めておき、これらの相
関関係に基づいて蛍光体の量の分布を求めるようにすることができる。
【0068】
そして、求められた蛍光体の量の分布に基づいて波長変換部8を形成する(ステップS
9)。
【0069】
例えば、図5(b)に示すように、すべての発光部2の主面M1側に波長変換部18a
を形成し、求められた蛍光体の量に基づいて波長変換部18bなどを個別的に形成する。
すなわち、発光部2の一方の主面M1側に求められた蛍光体の量の分布に基づいて、蛍光
体が混合された樹脂を塗布することで波長変換部を個別的に形成する。
【0070】
また、例えば、図5(c)に示すように、すべての発光部2の主面M1側に波長変換部
48を形成し、求められた蛍光体の量に基づいて波長変換部48の厚み寸法を変化させる
。すなわち、発光部2の一方の主面M1側に蛍光体が混合された樹脂を塗布することで波
長変換部を形成し、求められた蛍光体の量の分布に基づいて波長変換部の厚み寸法を変化
させる。
【0071】
更に、図5(b),(c)の方法を両方行いながら波長変換部を形成してもよい。
【0072】
すべての発光部2の主面M1側に波長変換部を形成するような場合には、例えば、スキ
ージ印刷法、コンプレッションモールド法、インプリント法、ディスペンス法、インクジ
ェット法、エアロゾル法などの塗布方法を用いることができる。
【0073】
波長変換部を個別的に形成するような場合には、例えば、ディスペンス法、インクジェ
ット法、エアロゾル法などの塗布方法を用いることができる。
【0074】
波長変換部の厚み寸法を変化させるような場合には、例えば、図4(c)に示すように
、砥石101を用いた研磨加工により行うようにすることができる。
【0075】
図6は、加工が施された波長変換部の形態を例示するための模式断面図である。図6(
a)に示すように波長変換部8aの表面側を階段状に加工することができる。図6(b)
に示すように波長変換部8bの表面側を曲面状に加工することができる。図6(c)に示
すように波長変換部8cの表面側を傾斜面状に加工することができる。図6(d)に示す
ように波長変換部8dの表面側を有底の孔状に加工することができる。
【0076】
なお、加工が施された波長変換部の形態は例示をしたものに限定されるわけではなく、
適宜変更することができる。
【0077】
また、波長変換部8の形成後、各発光部2における色度のばらつきを測定し、色度のば
らつきが大きく不良となった部分のリペアを行うようにすることもできる。不良となった
部分のリペアは、例えば、蛍光体が混合された樹脂を個別的に塗布したり、波長変換部の
厚み寸法を薄くしたりすることで行うことができる。また、必要に応じて、電極部3、電
極部4の端部に半田バンプなどを形成するようにすることもできる。
【0078】
次に、波長変換部8の厚み寸法に応じて透明樹脂部9を形成する(ステップ10)。こ
の場合、図5(d)に示すように、厚み寸法が小さい部分には多くの量の透明樹脂部9が
設けられ、厚み寸法が大きい部分には少ない量の透明樹脂部9が形成されるように設ける
。これにより、波長変換部8と透明樹脂部9の厚み寸法が略均一となるように形成するこ
とができる。
【0079】
例えば、スピンコート法、スキージ印刷法、コンプレッションモールド法、インプリン
ト法、ディスペンス法、インクジェット法、エアロゾル法などの塗布方法を用いることが
できる。
【0080】
次に、必要に応じて分割を行う。この場合、個片化を行うことで1つの発光部2を有す
る半導体発光装置とすることもできるし、複数の発光部を有する半導体発光装置とするこ
ともできる。この場合、ブレードダイシング法などを用いて分割を行うようにすることが
できる。
【0081】
以上、本実施形態によれば、光を出射する発光部2と、発光部2の一方の主面M1側に
設けられ、蛍光体を含有する波長変換部8と、波長変換部8上に設けられ、波長変換部8
の厚み寸法に応じた量が設けられている透明樹脂部9とを備えている。また、透明樹脂部
9は、弾性率とショア硬さのうち少なくとも一方の値が波長変換部8より高くなるように
形成されている。
【0082】
これにより、例えばチップマウンタ等で半導体装置をピックアップする際に、空気が入
り込む空間を低減させ、より確実に吸着させてピックアップをすることが可能となる。そ
して、歩留まりを向上させることが可能となる。また、半導体装置をマウントする際に持
ち帰りの発生を抑制することができるため、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0083】
更に、波長変換部8と透明樹脂部9の厚み寸法が略均一となることで、半導体発光装置
をピックアップする位置を略均一にすることが可能となる。そのため、厚み寸法に合わせ
てピックアップする位置を決める必要がなく、生産効率を向上させることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態によれば、透明樹脂部9は波長変幹部8より低い屈折率のものを用い
ている。
【0085】
これにより、空気と波長変換部8との屈折率の差よりも、空気と波長変換部8との間に
透明樹脂部9を設けた構造の方が屈折率の差を小さくすることができるため、光の取り出
し効率を向上させることができる。
【0086】
なお、半導体発光装置として、複数の発光部を有するマルチチップ型の半導体発光装置
について例示をしたが、1つの発光部を有する半導体発光装置についても適用が可能であ
る。
【0087】
また、本実施形態では発光部2上に波長変換部8が形成されているが、発光部2と波長
変換部8との間に発光部2から放出される発光光に対する透光性を有する接着層が設けら
れていてもよい。これにより、接着層から発光部2から出射した青い光を透過させ、黄色
の蛍光体を用いた場合に発生するイエローリングの形成を抑制させ、略均一な白色光とす
ることが可能となる。
【0088】
接着層の材質は、無機材料としては、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウムなどの
各種の酸化物、窒化シリコンなどの各種の窒化物、フッ化マグネシウムなどの各種のフッ
化物などを挙げることができる。有機材料としては、例えば、アクリル、エポキシ、ポリ
カーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコン樹脂などを挙げることができる
。なお、無機材料を用いた場合、発光部2と波長変換部8との密着性を向上させることが
可能となる。
【0089】
また、接着層は発光部2の屈折率と波長変換部8の屈折率との間の屈折率となるように
設けられており、これにより光の取り出し効率を上げることができる。すなわち、発光部
2の屈折率と、波長変換部8の屈折率との中間の屈折率を接着層に与えることにより、発
光部2から放出された発光光が発光部2の光取り出し面において全反射されることを抑制
できる。その結果として、発光部2から放出された発光光を波長変換部8に取り出す効率
を向上させることができる。
【0090】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示
したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は
、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、
種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、
発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範
囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体発光装置
2…発光部
2a…半導体部
2b…活性部
2c…半導体部
3,4…電極部
5…接合部
6…絶縁部
7…封止部
7a…凹部
8,8a,8b,8c,18a,18b,48…波長変換部
9…透明樹脂部
17…層
100…基板
M1,M2…主面
T…波長変換部と透明樹脂部の厚み寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光部と、
前記発光部の一方の主面側に設けられ、蛍光体を含有する波長変換部と、
前記波長変換部上に設けられている透明樹脂部と、
を備え、
前記透明樹脂部は、弾性率とショア硬さのうち少なくとも一方の値が前記波長変換部よ
り高いことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記透明樹脂部は、弾性率が150MPa以上、ショア硬さがHS45以上となるよう
に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記透明樹脂部は、前記波長変換部と前記透明樹脂部との厚み寸法が略均一となるよう
に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記発光部は複数設けられ、前記波長変換部は、前記発光部から出射する光の波長に基
づいた前記蛍光体の量の分布に基づいて厚み寸法を変化させていることを特徴とする請求
項1乃至請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記透明樹脂部は、前記波長変換部の光屈折率よりも低屈折率であることを特徴とする
請求項1乃至4に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
光を出射する発光部と、前記発光部の一方の主面側に設けられ、蛍光体を含有する波長
変換部と、前記波長変換部上に設けられている透明樹脂部と、を有する半導体発光装置の
製造方法であって、
前記発光部の一方の主面側に前記蛍光体を含有する前記波長変換部を設ける工程と、
前記波長変換部上に、弾性率とショア硬さのうち少なくとも一方の値が前記波長変換部
よりも高くなるように前記透明樹脂部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記透明樹脂部の弾性率は、弾性率が150MPa以上、ショア硬さがHS45以上で
あることを特徴とする請求項6に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記透明樹脂部は、前記波長変換部と前記透明樹脂部との厚み寸法が略均一となるよう
に形成することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の半導体発光装置の製造方法

【請求項9】
前記発光部を複数設けられており、
複数の前記発光部から出射する光の波長を測定する工程と、
前記測定された光の波長に基づいて前記蛍光体の量の分布を求める工程と、
前記求められた蛍光体の量の分布に基づいて前記波長変換部の厚み寸法を変化させる工
程と、
を更に有することを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の半導体発光装置の製造方
法。
【請求項10】
前記透明樹脂部は、前記波長変換部の光屈折率よりも低屈折率となるように形成するこ
とを特徴とする請求項6乃至請求項9に記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84889(P2013−84889A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78364(P2012−78364)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】