説明

半導体素子モジュール

【課題】本発明は半導体素子の温度をより早く正確に計測することにより、半導体素子の出力をより正確に制御することのできる半導体素子モジュールを提供する。
【解決手段】放熱フィン4の半導体素子1と反対側の面に窪み3を設け、この窪み3に温度検出素子2を配置し、温度検出素子2と放熱フィン4を熱伝導グリスで熱的に接続したので、熱伝導グリスが放熱フィン4と温度検出素子2の接触面の凹凸のすきまを埋め、相互の接触面積が大きくなるため放熱フィン4と温度検出素子2間の熱伝導効率がより高くなり、半導体素子1の温度をより正確に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を供給すると発熱する半導体素子を冷却する構造を有する半導体素子モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ素子など電力を供給すると発熱する半導体素子を冷却する構造を有する半導体素子モジュールは図6に示すような構成となっていた。
【0003】
図6に示す半導体素子モジュールは、半導体レーザ素子101、半導体レーザ素子101内部の光学系とカップリングして半導体レーザ素子101のレーザ出力を伝送する光ファイバ102、半導体レーザ素子101を固定する基板103、一端に熱的に接続している例えばヒートシンクなどの放熱フィン104。放熱フィン104の他端(開放端)に配置している冷却ファン105、基板103上でかつ半導体レーザ素子101の近傍に設けた例えばサーミスタなどの温度検出素子106を備えており、この冷却ファン105は温度検出素子106からの信号に基づいて図示しない制御装置で駆動している(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−368326号公報(段落0028、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子は温度によりその出力が変動する性質がある。上記従来の構成では、温度検出素子106が基板103を介して半導体素子101と熱的に接続されている。ここで半導体素子101と温度検出素子106との接触面には凹凸があり、接触部が点接触となり熱伝導効率が低下する。また基板103上の温度検出素子106と半導体素子101との距離のため熱抵抗が発生する。更に基板103は放熱フィン104よりも熱抵抗が大きい。
【0005】
これらの理由で半導体素子101の温度に計測誤差が生じ、また半導体素子101の温度が変動した場合に温度計測値に遅延が発生していた。
【0006】
本発明は半導体素子の温度をより早く正確に計測することにより、半導体素子の出力をより正確に制御することのできる半導体素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、半導体素子と、前記半導体素子と熱的に接続した放熱フィンと、前記放熱フィンを冷却する冷却ファンとを備え、前記放熱フィンの前記半導体素子と反対側の面に窪みを設け、前記窪みに温度検出素子を配置し、前記温度検出素子と前記放熱フィンを熱伝導グリスで熱的に接続したものである。
【0008】
この構成により、熱伝導グリスは放熱フィンと温度検出素子の接触面の凹凸のすきまを埋めるため、相互の接触面積が大きくなる。さらにグリス層は薄いため放熱フィンと温度検出素子間の熱伝導効率がより高くなる。
【0009】
そして、半導体素子と温度検出素子間の熱抵抗を小さくでき、また各半導体素子モジュール毎の熱抵抗のばらつきも小さくできるため、半導体素子の温度をより正確に検出でき、温度計測値の遅延を小さくできる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明は前記温度検出素子を配置する窪みを設け、前記温度検出素子と前記放熱フィンを熱伝導グリスで熱的に接続したことにより、前記半導体素子と前記温度検出素子間の熱抵抗を小さくでき、半導体素子の温度をより正確に検出でき、温度計測値の遅延を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における要部を破断した構成図である。
【0013】
図1に示す本発明の実施の形態1の半導体素子モジュールは、レーザ出力を伝送する光ファイバ(図示せず)と内部の光学系をカップリングしているレーザダイオードなどの半導体素子1、サーミスタなどの温度検出素子2、熱伝導グリスを内部に配置した窪み3、放熱フィン4、冷却ファン5、半導体素子を固定する基板6、冷却ファン駆動部7、半導体素子駆動部8を備えており、半導体素子1は基板6に接続し、基板6は放熱フィン6に当接して、半導体素子1と放熱フィン4とを熱的に接合している。この放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側に冷却ファン5を配置し、冷却ファン5の駆動を制御する冷却ファン駆動部7を接続している。
【0014】
そして、本実施の形態1の特徴とする構成は、放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に窪み3を配置し、その窪み3の内部に熱伝導グリスを入れ、その上に温度検出素子2を配置したことである。
【0015】
そして、温度検出素子2の検出信号は冷却ファン駆動部7に入力するように接続している。
【0016】
以上のように構成された半導体モジュールの動作を説明する。
【0017】
半導体素子駆動部8は半導体素子1に電力を供給することで半導体素子1が機能する。また冷却ファン駆動部7が冷却ファン5に電力を供給することで冷却ファン5が回転する。半導体素子1は電力を供給されると内部に熱が発生する。この熱は基板6から放熱フィン4に伝わり、冷却ファン5により発生する風で強制的に空気中に逃がされる。また半導体素子1に発生した熱の一部は放熱フィン4から熱伝導グリスを経て温度検出素子2に伝わる。
【0018】
この半導体素子1から温度検出素子2までの熱抵抗が小さいほど早く、正確に半導体素子1の温度を検出することができる。
【0019】
なお、半導体素子1と放熱フィン4との当接面に窪みを設け、その窪みに温度検出素子を設けることも考えられるが、この場合、半導体素子と放熱フィンの当接面積が減少して冷却効果が下がるのと、温度検出素子の故障などによる交換時に、半導体素子と放熱フィンを引き剥してから取り出す必要があり、手間がかかるものとなる。
【0020】
これに対して本発明のように温度検出素子2を放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に配置することで、半導体素子1の冷却効果を下げることなく半導体素子1と温度検出素子2との距離を短縮することができ、熱抵抗の大きい基板6を通る熱伝導経路を最小にすることができるとともに、温度検出素子2の不具合などによる交換時にも容易に交換することができる。また、熱伝導グリスは温度検出素子2と放熱フィン4の接触面の凹凸部を埋め、放熱フィン4と温度検出素子2の接触面積を均一、かつ大きくする働きがあり、検出精度を高めることができる。
【0021】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における要部を破断した構成図である。
【0022】
図2に示す本発明の実施の形態2の半導体素子モジュールは、レーザ出力を伝送する光ファイバ(図示せず)と内部の光学系をカップリングしているレーザダイオードなどの半導体素子1、サーミスタなどの温度検出素子2、熱伝導グリスを内部に配置した窪み3、放熱フィン4、冷却ファン5、半導体素子を固定する基板6、冷却ファン駆動部7、半導体素子駆動部8を備えており、半導体素子1は基板6に接続し、基板6は放熱フィン6に当接して、半導体素子1と放熱フィン4とを熱的に接合している。この放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側に冷却ファン5を配置し、冷却ファン5の駆動を制御する冷却ファン駆動部7を接続している。
【0023】
そして、本実施の形態2の特徴とする構成は、放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に窪み3を配置し、その窪み3の内部に熱伝導グリスを入れ、その中に熱伝導グリスに埋まるように温度検出素子2を配置したことである。
【0024】
そして、温度検出素子2の検出信号は冷却ファン駆動部7に入力するように接続している。
【0025】
すなわち、図1に示す実施の形態1との違いは温度検出素子2が放熱フィン4の窪み3の中に入っており、熱伝導グリスでその周囲が包まれていることである。
【0026】
この構成により放熱フィン4と温検出素子4の接触面積が図1の実施の形態1の場合よりもさらに大きくなり、より早く正確に半導体素子の温度を検出することが可能となる。
【0027】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における要部を破断した構成図である。
【0028】
図3に示す本発明の実施の形態3の半導体素子モジュールは、レーザ出力を伝送する光ファイバ(図示せず)と内部の光学系をカップリングしているレーザダイオードなどの半導体素子1、サーミスタなどの温度検出素子2、熱伝導グリスを内部に配置した窪み3、放熱フィン4、冷却ファン5、半導体素子を固定する基板6、冷却ファン駆動部7、半導体素子駆動部8、冷却ファン駆動制御部9を備えており、半導体素子1は基板6に接続し、基板6は放熱フィン6に当接して、半導体素子1と放熱フィン4とを熱的に接合している。この放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側に冷却ファン5を配置し、冷却ファン5の駆動を制御する冷却ファン駆動部7を接続している。
【0029】
そして、放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に窪み3を配置し、その窪み3の内部に熱伝導グリスを入れ、その中に熱伝導グリスに埋まるように温度検出素子2を配置している。
【0030】
そして、温度検出素子2の検出信号は冷却ファン駆動制御部9に入力し、この冷却ファン駆動制御部9の出力を冷却ファン駆動部7に入力するように接続している。
【0031】
すなわち、図2に示す実施の形態2との違いは、冷却ファンの駆動制御部9を備えていることである。ここで半導体素子1の出力は温度依存性を持つため、その温度を安定させることが必要である。
【0032】
冷却ファン駆動制御部9は温度検出素子2の信号が一定温度以上になるまで冷却ファン5を駆動しないことにより、半導体素子1の温度をより早く一定温度に立ち上げることができる。したがって、電源投入後の半導体素子1のウォーミングアップ時間を短縮することが可能となる。
【0033】
なお、立ち上げ時の温度検出は温度検出素子2を用いる以外に、規定温度を検知する専用の温度検出素子を別に取り付けてもよい。
【0034】
さらに、冷却ファン駆動制御部9は温度検出素子2の信号から、その温度に応じて冷却ファン5の速度を変化させる信号を冷却ファン駆動部7に送り、温度が低い時は回転数を下げ、高い時は回転数を上げることで冷却能力を可変させるように構成してもよい。
【0035】
これにより半導体素子の温度を規定温度範囲に抑えることができる。
【0036】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における要部を破断した構成図である。
【0037】
図4に示す本発明の実施の形態4の半導体素子モジュールは、レーザ出力を伝送する光ファイバ(図示せず)と内部の光学系をカップリングしているレーザダイオードなどの半導体素子1、サーミスタなどの温度検出素子2、熱伝導グリスを内部に配置した窪み3、放熱フィン4、冷却ファン5、半導体素子を固定する基板6、冷却ファン駆動部7、半導体素子駆動部8、冷却ファン駆動制御部9、半導体素子制御部10を備えており、半導体素子1は基板6に接続しており、基板6は放熱フィン6に当接して、半導体素子1と放熱フィン4とを熱的に接合している。この放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側に冷却ファン5を配置し、冷却ファン5の駆動を制御する冷却ファン駆動部7を接続している。
【0038】
そして、放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に窪み3を配置し、その窪み3の内部に熱伝導グリスを入れ、その中に熱伝導グリスに埋まるように温度検出素子2を配置している。
【0039】
そして、温度検出素子2の検出信号は半導体素子制御部10に入力し、この半導体素子制御部10の出力を半導体素子駆動部8と冷却ファン駆動制御部9にそれぞれ入力するように接続し、この冷却ファン駆動制御部9の出力を冷却ファン駆動部7に入力するように接続している。
【0040】
半導体素子制御部10は温度検出素子2から得られる信号から半導体素子1の温度が設定値以上になったと判断すると、半導体素子駆動部8から半導体素子1への電力供給を遮断する。
【0041】
この構成により半導体素子1の温度が定格を超えて破損することを自動的に防ぐことができる。
【0042】
なおこの判断は温度検出素子2以外に専用の温度検出素子を取り付けて、その信号により行ってもよい。
【0043】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5における要部を破断した構成図である。
【0044】
図5に示す本発明の実施の形態5の半導体素子モジュールは、レーザ出力を伝送する光ファイバ(図示せず)と内部の光学系をカップリングしているレーザダイオードなどの半導体素子1、サーミスタなどの温度検出素子2、熱伝導グリスを内部に配置した窪み3、放熱フィン4、冷却ファン5、半導体素子を固定する基板6、冷却ファン駆動部7、半導体素子駆動部8、冷却ファン駆動制御部9、半導体素子制御部10、半導体素子の各温度における電力と出力の関係を保持する記憶部11を備えており、半導体素子1は基板6に接続しており、基板6は放熱フィン6に当接して、半導体素子1と放熱フィン4とを熱的に接合している。この放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側に冷却ファン5を配置し、冷却ファン5の駆動を制御する冷却ファン駆動部7を接続している。
【0045】
そして、放熱フィン4の基板6との当接面とは反対側で、かつ、半導体素子1の位置に一番近い場所、例えば半導体素子1の中央部分に対向する位置に窪み3を配置し、その窪み3の内部に熱伝導グリスを入れ、その中に熱伝導グリスに埋まるように温度検出素子2を配置している。
【0046】
そして、温度検出素子2の検出信号は半導体素子制御部10に入力し、この半導体素子制御部10の出力を半導体素子駆動部8と冷却ファン駆動制御部9にそれぞれ入力するように接続し、この冷却ファン駆動制御部9の出力を冷却ファン駆動部7に入力するように接続している。
【0047】
また、半導体素子制御部10には記憶部11からの信号を入力するようにしている。
【0048】
そして、半導体素子制御部10は温度検出素子2から得られる半導体素子1の温度と現在の目標出力を、記憶部11から得られる温度特性からその目標電力を計算して、その出力が目標出力になるように半導体素子駆動部8に対して電力を調整する信号を送る。
【0049】
この構成により半導体素子の温度が変動しても、その出力の変動を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の半導体モジュールは、半導体素子の温度変動による出力変動を軽減することができ、半導体モジュールとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1における要部を破断した構成図
【図2】本発明の実施の形態2における要部を破断した構成図
【図3】本発明の実施の形態3における要部を破断した構成図
【図4】本発明の実施の形態4における要部を破断した構成図
【図5】本発明の実施の形態5における要部を破断した構成図
【図6】従来の半導体素子モジュールの構成を示す概要図
【符号の説明】
【0052】
1 半導体素子
2 温度検出素子
3 熱伝導グリス
4 放熱フィン
5 冷却ファン
6 半導体素子を固定する基板
7 冷却ファン駆動部
8 半導体素子駆動部
9 冷却ファン制御部
10 半導体素子制御部
11 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、前記半導体素子と熱的に接続した放熱フィンと、前記放熱フィンを冷却する冷却ファンとを備え、前記放熱フィンの前記半導体素子と反対側の面に窪みを設け、前記窪みに温度検出素子を配置し、前記温度検出素子と前記放熱フィンを熱伝導グリスで熱的に接続した半導体素子モジュール。
【請求項2】
前記温度検出素子を配置する窪みとして、前記温度検出素子よりも大きな窪みを設けた請求項1記載の半導体素子モジュール。
【請求項3】
前記温度検出素子の信号を入力し、前記温度検出素子から設定された第1の温度以上の信号が入力された場合に前記冷却ファンを駆動する冷却ファン駆動制御部を設けた請求項1または2に記載の半導体素子モジュール。
【請求項4】
前記温度検出素子の信号を入力し、前記温度検出素子から設定された第1の温度以上の信号が入力された場合に前記信号に応じた回転数で前記冷却ファンを駆動する冷却ファン駆動回転数制御部を設けた請求項1から3の何れかに記載の半導体素子モジュール。
【請求項5】
前記温度検出素子の信号を入力し、前記温度検出素子から設定された第2の温度以上の信号が入力された場合に前記半導体素子への電力供給を停止する半導体素子駆動制御部を設けた請求項3または4に記載の半導体素子モジュール。
【請求項6】
前記半導体素子としてレーザを出力する半導体素子を用いた請求項1から5の何れかに記載の半導体素子モジュール。
【請求項7】
前記温度検出素子の信号と前記半導体素子への供給電力と半導体素子のレーザ出力の関係を保持する記憶部を設け、前記記憶部の出力から前記レーザ出力が一定になるように前記半導体素子への電力供給を制御する半導体素子駆動制御部を設けた請求項6記載の半導体素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−212477(P2010−212477A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57699(P2009−57699)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】