説明

半導体素子用ウェハ

【課題】レーザー光で切削して半導体素子用ウェハをチップ化するときのデブリの飛散による汚染を防止する。
【解決手段】半導体積層部と、前記半導体積層部の第二の面側に設けられる金属層と、前記金属層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる支持基板と、前記半導体積層部の第一の面側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第一電極と、前記支持基板の前記金属層とは反対側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第二電極と、前記半導体積層部の前記第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面を被覆する絶縁性保護膜と、を備える半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光が照射される切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出していることを特徴とする半導体素子用ウェハである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁性保護膜を有する半導体素子用ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子である発光ダイオード(LED)は、近年、GaN系やAlGaInP系の高品質結晶を有機金属気層成長(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy
)法で成長させることによって、青色、緑色、橙色、黄色、赤色の高輝度LEDが製作できるようになった。その用途は、LEDの高輝度化に伴って自動車のブレーキランプや液晶ディスプレイのバックライト等へ広がりその需要は年々増加している。
【0003】
MOVPE法によって高品質の結晶が成長可能となってから、半導体発光素子の内部効率は理論限界値に近づいたが、半導体発光素子からの光取り出し効率はいまだに低いため、光取り出し効率の向上が重要となっている。
【0004】
具体的には、高輝度LEDにおける半導体層は、AlGaInPまたはGaInPから成る発光層(活性層)が、導電性のGaAs基板上に格子整合する組成のAlGaInP系の材料から成るn型AlGaInPクラッド層とp型AlGaInPクラッド層とに挟まれるダブルヘテロ構造を成している。この発光層はGaAs基板と比較してバンドギャップが狭いため、発光層からの光の多くがGaAs基板に吸収され、光取り出し効率が著しく低下することになる。この点、屈折率の異なる半導体層から成る多層反射膜構造を発光層とGaAs基板との間に形成することによって、GaAs基板での光の吸収を低減し、光取り出し効率を向上させる方法が提案されている。しかし、この方法では多層反射膜構造への入射角が限定されるため特定の入射角の光しか反射することが出来ない。
【0005】
そこで、AlGaInP系の材料から成るダブルヘテロ構造の半導体層を光の入射角を限定せず反射率の高い金属層を介してSi支持基板に貼り付け、その後成長用に用いたGaAs基板を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、反射膜として金属層を用いているため、金属層への光の入射角を選ばずに高い反射が可能となり、光取り出し効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−175462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の金属層を備えたLED用ウェハにおいては、ダイシング工程の際にウェハ裏面に裏面チッピングと呼ばれる基板の欠けや割れが生じる。これは、LED用ウェハの金属接合層、金属層などにAuなどの柔らかい金属材料が含まれることにより、切削に用いるダイヤモンドブレードのダイヤモンド砥粒が目詰まりを起こすためである。そこで、Auなどの難削材を含む高輝度LED用ウェハのダイシング加工においては、ブレードダイシングに代わり、レーザー光によるレーザースクライブ法(レーザー切削加工)が採用される。このレーザー光による切削加工に際しては、金属などのアブレーション(蒸発分解)により生じる加工クズ(デブリ)のLED用ウェハ表面への付着を防止するデブリ付着防止用保護膜をLED用ウェハ表面に形成する。そして、LED用ウェハのハーフカット工程としてレーザー光による切削加工を行い、続いてダイシングソーによるフルカット工程を行うことにより裏面チッピングを防止することができる。
【0008】
ところで、AlGaInP系高輝度LEDチップは、その結晶材料であるGaAsやAlGaInPがGaNなどの他の化合物半導体結晶に比べて脆い上に、その結晶材料からなる半導体層の光取出し面に対して粗面加工が施されるため、物理的なダメージに弱いという欠点があった。例えばチップソーティングなどを実施する際のコレットの接触によってダメージを受けリーク電流の発生を招く問題があった。この問題を回避するために、発光層を含むAlGaInP半導体層の表面および側面をSiOなどの絶縁性保護膜で被覆し、機械的強度を高め保護する構造が提案されている(例えば、特願2010−063957号公報、未公開)。
【0009】
しかしながら、半導体積層部の表面をSiOなどの絶縁性保護膜で被覆した場合、LED用ウェハのハーフカット工程時に照射されるレーザー光が絶縁性保護膜にほとんど吸収されず絶縁性保護膜を透過するため、絶縁性保護膜が切断されず、その下に位置する金属層、半導体基板などがアブレーション加工されることになる。そして、絶縁性保護膜が切断されず表面を覆った状態であるにも関わらず、その内部の金属層や半導体基板などが蒸発分解するため、密閉されたデブリが爆発的に飛散することになる。しかも、デブリの爆発的飛散と同時にLED用ウェハの表面を保護していたデブリ付着防止用保護膜も剥離するため、デブリ付着を防止できずデブリによりウェハが汚染されるといった問題があった。
【0010】
本発明の目的は、機械的強度に優れ、かつデブリの飛散による汚染の少ない半導体素子を得ることができる半導体素子用ウェハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様によれば、半導体積層部と、前記半導体積層部の第二の面側に設けられる金属層と、前記金属層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる支持基板と、前記半導体積層部の第一の面側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第一電極と、前記支持基板の前記金属層とは反対側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第二電極と、前記半導体積層部の前記第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面を被覆する絶縁性保護膜と、を備える半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光が照射される切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出している半導体素子用ウェハが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、半導体積層部と、前記半導体積層部の第二の面側に設けられる金属層と、前記金属層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる支持基板と、前記半導体積層部の第一の面側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第一電極と、前記半導体積層部に対して前記第一電極と同一面側に、前記半導体積層部の一部がエッチング除去された部分に設けられ、前記半導体積層部に電気的に接続される第二電極と、前記半導体積層部の前記第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面を被覆する絶縁性保護膜と、を備える半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光が照射される切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出している半導体素子用ウェハが提供される。
【0013】
上記半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜が形成されず、前記半導体積層部の一部が露出している表面の幅が、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光のカーフ幅よりも大きいことが好ましい。
【0014】
上記半導体素子用ウェハにおいて、前記半導体積層部と前記支持基板との間に誘電体層
を備え、前記誘電体層を貫通して前記半導体積層部と前記金属層とを電気的に接続する界面電極が前記誘電体層の一部に配置されることが好ましい。
【0015】
上記半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜がSiO、SiN、SiONのいずれか、もしくはこれらを組み合わせ積層した構造からなるものであることが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様によれば、半導体積層部と、前記半導体積層部の第二の面側に設けられる誘電体層と、前記誘電体層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる金属層と、を有する半導体素子用ウェハにおいて、前記半導体積層部の第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面には、前記半導体積層部を被覆する透明な絶縁性保護膜が設けられ、前記透明な絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するための切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出している半導体素子用ウェハが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機械的強度に優れ、レーザー光で切削して半導体素子用ウェハをチップ化するときのデブリの飛散による汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの断面図である。
【図2】(a)は本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの一部を示す平面図、(b)は(a)のウェハからチップ化された素子の平面図である。
【図3】(a)本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの切断方法を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法における工程図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法における工程図である。
【図4C】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法における工程図である。
【図4D】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法における工程図である。
【図4E】本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法における工程図である。
【図5】(a)は他の実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの断面図、(b)は(a)のウェハからチップ化された素子の平面図である。
【図6】(a)は誘電体層に屈折率1.45の材料を用いた場合の各金属層における平均反射率を示す図、(b)は誘電体層に屈折率2.00の材料を用いた場合の各金属層における平均反射率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の半導体素子用ウェハは、トランジスタなどの電子デバイス用ウェハや発光ダイオードなどの半導体発光素子用ウェハなどとして用いられる。以下では発光ダイオードに適した半導体発光素子用ウェハについて図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの断面図を示す。図1には半導体積層部が素子分離された2つの素子領域を示している。
【0020】
[半導体発光素子用ウェハ]
本実施形態の半導体発光素子用ウェハ1は、n型クラッド層24、発光層25、および
p型クラッド層26を有する半導体積層部2と、半導体積層部2の第一の面を光取り出し面24bとして、その第一の面とは反対側の第二の面側に形成され、発光層25からの光を第一の面側に反射させる金属層3と、金属層3の半導体積層部2とは反対側に設けられる支持基板4と、半導体積層部2の第一の面側に設けられ半導体積層部2に電気的に接続される第一電極5と、支持基板4の金属層3とは反対側に設けられ半導体積層部2に電気的に接続される第二電極6と、光取り出し面24bおよび半導体積層部2における素子加工により露出した表面を被覆する絶縁性保護膜7と、を備えている。そして、本実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1においては、半導体積層部2と金属層3との間に介在する誘電体層8と、誘電体層8を厚さ方向に貫通して誘電体層8の一部に配置され、半導体積層部2と金属層3とを電気的に接続する界面電極9と、金属層3と支持基板4とを接合するための金属接合層10a、10bと、をさらに備えている。
【0021】
[半導体積層部]
半導体積層部2は、図1に示すように、n型コンタクト層23と、n型クラッド層24と、発光層25と、p型クラッド層26と、p型コンタクト層27と、からなる半導体エピタキシャル層である。発光層25は、n型クラッド層24とp型クラッド層26との間に設けられ、ダブルヘテロ構造を成している。また、n型クラッド層24上には第一電極5と接続するn型コンタクト層23が設けられ、p型クラッド層26の誘電体層8側には誘電体層8を厚さ方向に貫通して設けられた界面電極9と接続するp型コンタクト層27がそれぞれ設けられる。そして、半導体積層部2は、その積層の一部が素子加工によりエッチング除去された素子分離領域12が形成されている。本実施形態において素子加工により露出した表面は、n型クラッド層24の側面24a、発光層25の側面25a、p型クラッド層26の側面26a、p型コンタクト層27の表面である。また、n型クラッド層24の表面である光取り出し面24bは光取り出し効率の向上のため凹凸が形成されている。
【0022】
具体的には、半導体積層部2は、p型GaPコンタクト層27と、p型AlGaInPクラッド層26と、アンドープGaInPとアンドープAlGaInPとの多重量子井戸構造の発光層25と、n型AlGaInPクラッド層24と、n型GaAsコンタクト層23と、を順に積層した構成とすることができる。なお、発光層25は、多重量子井戸構造ではなく単層構造としてもよい。また、発光層25の材料としては例えば、AlGaInP系やAlGaAs系がある。その場合、例えば(AlGa1−xIn1−yP(ただし、0≦x≦1、0.4≦y≦0.6)、またはAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)が用いられる。また、上下の各クラッド層とコンタクト層の導電型(n型、p型)を逆にして、光取り出し面側をp型としてもよい。
【0023】
[誘電体層]
誘電体層8は、図1に示すように、半導体積層部2の第二の面に接して設けられている。半導体積層部2と金属層3との間に誘電体層8が設けられることにより、金属層3と半導体積層部2との間の拡散を防止することができる。なお、誘電体層8の材料は例えばSiO2、SiNなどが用いられる。ただし、誘電体層8の屈折率は、発光層25からの光
を光取り出し面24bへと反射する反射率に影響を与える。これについて図6を用いて説明する。誘電体層に屈折率1.45の材料を用いた場合の各金属層における平均反射率の計算結果を図6(a)に示し、誘電体層に屈折率2.00の材料を用いた場合の各金属層における平均反射率の計算結果を示す図6(b)に示す。図6(a)、図6(b)の平均反射率の計算結果には、光取り出し面24bが粗面化され乱反射がある場合と平滑面である場合について示している。なお、図6(a)、図6(b)において、CuとAuの近赤外光に対する反射率はほぼ同じであるため、反射データが重なっている。図6(a)、図6(b)に示すように、誘電体層8に用いられる材料の屈折率が低いほど、その反射率が高く、光取り出し効率も向上する。したがって、誘電体層8には、屈折率が2.2程度の
SiNよりも、屈折率が低いSiOを用いるのが好ましい。しかも、SiO2はSiN
などの材料と比較して、可視光および近赤外光における吸収損失が極めて低いこと、成膜速度が速く成膜が容易であること、エッチングなどの加工が容易でパターニング精度が良好であること、などの多くの利点を有する。
【0024】
[界面電極]
界面電極9は、図1に示すように、半導体積層部2と金属層3とを電気的に接続するように誘電体層8を厚さ方向に貫通して誘電体層8の一部に配置されている。ここで、界面電極9と第一電極5との配置関係について、本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの平面図を示す図2(a)および図2(a)のウェハからチップ化された素子の平面図である図2(b)を用いて説明する。図2(a)は、半導体発光素子用ウェハ上に複数形成される素子のうちの4つの素子を示したものである。図2(a)、図2(b)に示すように、界面電極9は、光取り出し面24b側から見たときに、第一電極5の設けられる領域の直下に配置されないように形成されている。また、界面電極9の形状は第一電極5(表面電極)の形状に対応しており、例えば単一櫛形状とすることができる。なお、界面電極9の形状は、第一電極5の設けられる領域の直下に配置されず、供給された電流を半導体積層部2の発光層25の全域に拡散させることができる形状であれば、特に限定されない。また、界面電極9の材料としては、例えばAuBe合金等の材料を用いた単一層構造としても、或いは積層構造としてもよい。
【0025】
[金属層]
金属層3は、発光層25から支持基板4側へ向かう光を半導体積層部2の光取り出し面24b側へ反射させるものであって、半導体積層部2の光取り出し面24bとは反対側に設けられる。金属層3には、優れた反射率を有する材料が好ましく、例えば、エッチング液に対する耐性、エレクトロマイグレーションを生じない、などの点からAuもしくはAuを主成分とする合金が好ましい。
【0026】
[支持基板]
支持基板4は、図1に示すように、エピタキシャル層側の金属接合層10a、支持基板4側の金属接合層10bを介して金属層3に貼り合わせられている。金属接合層10aのエピタキシャル層側および金属接合層10bの支持基板4側には、金属拡散防止のために合金化バリア層11aと、合金化バリア層11bがそれぞれ設けられている。支持基板4の材料には、抵抗率が0.01Ω・cm以下のSiを使用することが好ましく、さらに好ましくは抵抗率が0.005Ω・cm以下のSiであることが好ましい。これは電極の良
好なオーミック性接触を得られるだけでなく、半導体発光素子に大きな電流を流して使用する際の動作電圧を低減できるためである。
【0027】
[第一電極および第二電極]
第一電極5は、素子加工された光取り出し面24bの中央部のn型GaAsコンタクト層23上に形成され、第一電極5の中央円形部上には第一電極パッド50が形成されている。第一電極5は、例えば図2(a)、図2(b)中の破線で示される櫛形状の界面電極9と相対するような形状をなしており、半導体積層部2の発光層25に対して電流を均一に流すように、第一電極5の中央円形部から四方に延在して形成されている。第一電極5は、例えばAuGe(金・ゲルマニウム合金)、Ni(ニッケル)、Au(金)を積層した構造となっている。一方、第二電極6は、図1に示すように支持基板4の金属層3とは反対側の面(裏面)上に設けられ、支持基板4の全面に形成されている。第二電極6から供給された電流は、誘電体層8を厚さ方向に貫通して設けられた界面電極9を介して、半導体積層部2、第一電極5へと流れ、その間に発光層25で光が発生する。発光層25で発生した光は、主にn型クラッド層24の光取り出し面24bから放出されることになる。第二電極6の構造は、例えばTi(チタン)、Au(金)を積層し、アロイ工程により
合金化されている。
【0028】
[絶縁性保護膜]
そして、本実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1には、図1に示すように、半導体積層部2の光取り出し面24bおよび素子加工により露出した表面を被覆するように絶縁性保護膜7が形成されている。ただし、半導体発光素子用ウェハ1をチップ化するレーザー光による切削領域13(図中の破線領域)上には、絶縁性保護膜7が形成されない非形成領域とするために、半導体積層部2におけるp型コンタクト層27上の絶縁性保護膜7には開口部14が形成され、p型コンタクト層27の表面が露出している。具体的には、絶縁性保護膜7は、第一電極5の側面、n型コンタクト層23の側面23a、n型クラッド層24の光取り出し面24bおよびその側面24a、発光層25の側面25a、p型クラッド層26の側面26a、そして、素子加工により露出したp型コンタクト層27上の開口部14を除く面上に形成されている。この開口部14は、半導体発光素子用ウェハ1をチップ化する際のレーザー切削加工において、レーザー光が照射される領域であって、レーザー切削加工により生じるデブリを外部へ排出する。
【0029】
また、絶縁性保護膜7が形成されず半導体積層部2の一部が露出する面の幅、つまり開口部14の幅は、照射されるレーザー光のカーフ幅よりも大きな幅を有することが好ましい。これは、半導体発光素子用ウェハの切断方法を説明する図3に示すように、開口部14の幅Dがレーザー光のカーフ幅(切削幅)Dよりも大きいことによって、絶縁性保護膜7の縁にレーザー光が照射されることを防止して、レーザー光による切削領域13の幅を所定の数値に安定して形成することができるからである。
【0030】
また、絶縁性保護膜7はSiO、SiN、SiONのいずれか、もしくはこれらを組み合わせて積層した構造からなり、透明であることが好ましい。これは発光層25から発生した光の透過を妨げることなく、半導体積層部2の機械的強度を高め保護することができるからである。しかも、SiOやSiNのような屈折率の異なる膜を複数組み合わせることで、例えば光取り出し面24b側から順に屈折率が低下するように各層を積層すると、光取り出し効率をより向上させることができる。
【0031】
[半導体発光素子用ウェハの製造方法]
続いて、上記実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1の製造方法について説明する。図4Aから図4Eは、本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1の製造方法を示す断面図である。
【0032】
[エピタキシャルウェハの形成]
まず、図4A(a)に示すように、MOVPE法により、結晶の成長用基板としてのn型GaAs基板16上に、n型AlGaInPエッチングストップ層22、n型GaAsコンタクト層23、n型AlGaInPクラッド層24、アンドープGaInPとアンドープAlGaInPとのペアによる多重量子井戸構造を有する発光層25、p型AlGaInPクラッド層26、そしてp型GaPコンタクト層27を順次積層成長させ、エピタキシャルウェハ100を形成する。
【0033】
なお、エピタキシャルウェハ100の製造は、MOVPE法によるエピタキシャル成長に限らず、他の成長方法、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いて成長させてもよい。
【0034】
[誘電体層および界面電極の形成]
次に、図4A(b)に示すように、エピタキシャルウェハ100のp型GaPコンタクト層27上に、例えばプラズマCVD装置でSiOからなる誘電体層8を形成する。そ
して、図4A(c)に示すように、フォトリソグラフィにより、誘電体層8の厚さ方向に貫通する孔を形成し、その孔に真空蒸着法により、例えばAuBe合金(Au:99wt%、Be:1wt%)からなる界面電極9を形成する。なお、界面電極9は、第一電極5(表面電極)の直下以外の領域に配置されるように適宜設定されており、その形状は例えば線幅が2μmの単一櫛形状である。
【0035】
[金属層の形成]
次に、図4B(d)に示すように、エピタキシャルウェハ100の誘電体層8および界面電極9上に、スパッタ法でAu(金)からなる金属層3を形成する。さらに、金属層3上にTi(チタン)からなる合金化バリア層11a、Auからなり支持基板4と接続する金属接合層10aを順次積層形成する。
【0036】
[貼り合わせウェハの形成]
一方、図4B(e)に示すように、半導体発光素子用ウェハ1を支える貼り替え用の支持基板4として、厚さ200μmの導電性p型Si基板を準備して、支持基板4の表面上にTiからなるオーミック性接触する合金化バリア層11b、Auからなる金属接合層10bの順に積層形成する。続いて、図4B(f)に示すように、エピタキシャルウェハ100の金属接合層10aと支持基板4の金属接合層10bとを熱圧着法により貼り合わせ、貼り合わせウェハ110を得る。なお、貼り合わせは、例えばウェハを圧力0.01T
orr雰囲気中で、圧力15Kgf/cm負荷した状態で、温度350℃で30分間加熱保持することにより行われる。
【0037】
[第一電極の形成]
続いて、アンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたエッチングにより、貼り合わせウェハ110の成長用基板としてのGaAs基板16を除去し、n型エッチングストップ層22を露出させる。さらに、塩酸を用いてエッチングすることによりn型エッチングストップ層22を除去し、n型GaAsコンクタ卜層23を露出させる。このときの断面図を図4C(g)に示す。そして、図4C(h)に示すように、露出したn型GaAsコンクタ卜層23上に第一電極5(表面電極)を形成する。第一電極5は、例えばレジスト塗布装置やマスクアライナー、現像装置などを用いてレジストパターンを形成した後、真空蒸着によりAuGe、Ni、Auの順に蒸着し形成される。第一電極5の形状は、図2(a)、図2(b)に示すように櫛形状の界面電極9と相対するような形状をなしており、直径100μmの中央の円形部分から横方向に延伸された太さ15μmの細線と、縦方向に延伸された太さ10μmの4本の細線からなっている。第一電極5の形成後、第一電極5をマスク材として、硫酸と過酸化水素水と水との混合液によりエッチングを行い、第一電極5直下以外のGaAsn型コンタクト層23を除去し、n型クラッド層24を露出させる。
【0038】
[粗面化処理]
続いて、図4D(i)に示すように、露出したn型クラッド層24上にフォトリソグラフィにより直径1μmの周期的ドットパターンを形成し、塩酸によりウェットエッチングすることによって、n型クラッド層24の表面である光取り出し面24bを凹凸化する。この粗面化処理によって、光取り出し効率を向上する。
【0039】
[素子加工]
続いて、各素子間を分離するためのレジストマスクをフォトリソグラフィで形成する。そして、レジストマスクを保持しながら塩酸でエッチングすることにより、半導体積層部2であるn型クラッド層24、発光層25、p型クラッド層26の3層を除去し、素子分離領域12を形成して半導体積層部2を素子加工する。図4D(j)に示すように、この素子分離領域12の形成によって、n型クラッド層24の側面24a、発光層25の側面
25a、p型クラッド層26の側面26a、p型コンタクト層27の表面が露出する。そして、レジストマスクをアッシングによって除去する。
【0040】
[絶縁性保護膜の形成]
続いて、図4E(k)に示すように、プラズマCVD装置を用いて、素子加工された半導体積層部2表面の全面に対して、SiOからなる絶縁性保護膜7を、例えば50nm以上400nm以下の厚さで形成する。そして、フォトリソグラフィによりレジストマスクを形成し、レジストマスクを保持しながら、バッファードフッ酸溶液を用いて、絶縁性保護膜7の一部を除去する。この絶縁性保護膜7の一部除去によって、図4E(l)に示すように、第一電極5上に電極パッドを形成するための開口部15、およびレーザー光により切削される切削領域13上の開口部14を形成し、開口部14を通してp型コンタクト層27の一部を露出させる。これは、レーザー光により切断されず表面に残る絶縁性保護膜7が、レーザー加工により生じるデブリの外部への排出を妨げないためである。なお、開口部14は、その幅が切削するレーザー光のカーフ幅よりも大きな幅となるように形成されている。
【0041】
[第二電極および表面電極パッドの形成]
次に、支持基板4における、金属層3の設けられる面とは反対側の面の全面に対して真空蒸着法により第二電極6(裏面電極)を形成する。第二電極6の形成においては、Ti(チタン)、Au(金)を、それぞれ10nm、300nmの膜厚で順次形成し、アロイ装置を用いたアロイ処理により電極を合金化する。アロイ処理の条件は窒素ガス雰囲気中で貼り合わせウェハ110を400℃で5分間加熱処理する。最後に、フォトリソグラフィにより第一電極パッド50用のレジストパターンを形成し、真空蒸着法でTi(チタン)、Au(金)の順に第一電極5上に積層し第一電極パッド50を形成して、本発明の第一実施形態に係る半導体発行素子用ウェハを形成する。なお、この第一電極パッド50にはアロイ処理を行わず、合金化しない。
【0042】
[切断工程]
次に、本実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1のチップ化するための切断方法について説明する。
【0043】
まず、半導体発光素子用ウェハ1の表面に、レーザー加工により生じるデブリの付着を防止するための保護膜(図示せず)を形成する。次に、半導体発光素子用ウェハ1の絶縁性保護膜7の形成されていない非形成領域、つまり素子分離領域12内の絶縁性保護膜7の開口部14に対してレーザーソーを用いてハーフカットを行う。このハーフカットの際に、図3に示すように、p型GaPコンタクト層27、誘電体層8、および金属層3などが切削され、少なくとも半導体発光素子用ウェハ1の金属接合層10bまでが切削される。レーザー加工において照射されるレーザー光は、p型GaPコンタクト層27や金属層3などで吸収されるが、SiOなどからなる絶縁性保護膜7や誘電体層8ではほとんど吸収されず透過する。すなわち、p型GaPコンタクト層27や金属層3などは、レーザー光により加熱され溶融・蒸発して切削される。一方、誘電体層8はレーザー光により加熱され直接切削されないが、p型GaPコンタクト層27と金属層3との間に介在するため、上下2層の切削にともなう熱により誘電体層8は加熱され、溶融・切削されることになる。
従来の半導体発光素子用ウェハにおいては、絶縁性保護膜に開口部が形成されず、レーザー光の照射される切削領域上に絶縁性保護膜が形成されている。この切削領域上に位置する絶縁性保護膜は、表面側は外気に接しており、内側のp型GaPコンタクト層で生じる熱のみによって加熱されることになる。このため、最表面に位置する絶縁性保護膜は表面に残存してデブリの爆発的な飛散を引き起こす。
【0044】
本実施形態に係る半導体発光素子用ウェハ1においては、絶縁性保護膜7がレーザー切削加工を行う切削領域13上に形成されず、開口部14を通して半導体積層部2の表面の一部を露出させている。このため、レーザー加工により生じるデブリを密閉せず開口部14から外部へ排出することができる。また、絶縁性保護膜7で密閉状態とされることによるデブリの爆発的な飛散を防止するとともに、デブリの爆発的飛散に伴って生じるデブリ付着防止用保護膜の剥離を抑制して、デブリによるウェハの汚染を防止することができる。したがって、本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用ウェハによれば、高輝度かつ機械的強度に優れる半導体発光素子を提供できるとともに、レーザー光で切削して半導体発光素子用ウェハをチップ化するときのデブリの爆発的飛散による汚染を防止することができる。しかも、デブリによる汚染を低減できるため、半導体発光素子の歩留まりを向上することができる。
【0045】
ハーフカット工程後、半導体発光素子用ウェハ1のレーザー光により切削された領域に対してダイシングソーを用いてフルカットを行い、合金化バリア層11b、支持基板4および第二電極6を切削し、半導体発光素子用ウェハ1をチップ化して半導体発光素子を得る。
【0046】
なお、上記実施形態では、レーザー光によるハーフカット工程と、ダイシングソーによるフルカット工程の組み合わせによりチップ化を行ったが、レーザー光によりフルカット工程を行っても良い。また、本発明は上述した半導体発光素子用ウェハだけに限定されず、例えば電子デバイス用ウェハとすることも可能である。
【0047】
[他の実施形態]
本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子の構造について図5を用いて説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子用ウェハを示す図であって、図5(a)は半導体発光素子用ウェハの断面図であり、図5(b)は(a)のウェハからチップ化された素子の平面図である。本実施形態においては、第二電極が第一電極と同様に半導体積層部の第一の面側に形成されている点が第一実施形態と異なる点である。そのほかの構造については第一実施形態と同様であるので、ここでは第一実施形態と異なる点について説明する。
【0048】
本実施形態においては、図5(a)に示すように、半導体積層部2が、p型GaPコンタクト層27まで素子加工され、さらに、その一部分においては誘電体層8まで除去され金属層3が一部領域で露出した状態となっている。図5(b)に示すように円形部分を含む櫛状に形成された界面電極9のうち、誘電体層8の除去に伴って露出した部分の界面電極9が第二電極6(下部表面電極)となり、半導体積層部2の光取り出し面24bには第一電極5(上部表面電極)が円形部分を含む櫛状に形成されている。そして、第一電極5を除く光取り出し面24b、素子加工されて露出した表面、および金属層3の一部露出した面が絶縁性保護膜7で覆われている。このとき絶縁性保護膜7は第一実施形態と同様にして、ウェハをチップ化するレーザー光による切削領域13(図中の破線部領域)上には絶縁性保護膜7が形成されず、金属層3の一部が露出するように開口部14が形成されている。
【0049】
[第一電極]
光取り出し面24b側のn型GaAsコンタクト層23上には、第一電極5が形成されている。n型GaAsコンタクト層23および第一電極5は、図5(b)に示すように、円形部分と円形部分より櫛状に延びた櫛状部分とからなる連続した単一形状をしており、n型クラッド層24の光取り出し面24b全域に分散して配置されている。そして、円形部分の第一電極5上には、第一電極パッド50が形成されている。
【0050】
[界面電極および第二電極]
誘電体層8の一部には、誘電体層8を貫通して、界面電極9が形成されている。界面電極9は、例えば図5(b)の破線で示すように、第一電極5と同様に、円形部分と円形部分より櫛状に延びた櫛状部分とからなる連続した単一形状をしている。界面電極9の円形部分は半導体積層部2が一部除去されて界面電極9が露出した領域に設けられている。露出した界面電極9の部分(円形部分及びその近傍の櫛状部分)が第二電極6となる。第二電極6の円形部分の上には、第二電極パッド60が形成される。第二電極パッド60は、第一電極パッド50と同一の材料、例えばTi、Auの積層構造により形成することができる。界面電極9の円形部分より延出された櫛状部分は、誘電体層8の全域に分散して配置されている。また、界面電極9は、半導体積層部2の光取り出し面24b側からみて、第一電極5とは上下に重ならないように、第一電極5の直下から外れた位置に形成されている。なお、第一電極5と界面電極9は互いに位置ずれさせた櫛状部分を有するが、この櫛状の形状に限られることなく、第一電極5と界面電極9とが上下に重ならないように配置され、供給された電流を発光層に拡散できる構造であれば良い。
【0051】
第一電極5と界面電極9とを分散状に配置することで、露出した界面電極9の部分である第二電極6から供給された電流を、界面電極9の櫛状部分を通じて半導体積層部2の発光層25のほぼ全域に拡散させることができる。これにより、発光層25における電流の偏りが改善され、発光効率が向上する。さらに電流は、界面電極9の櫛状部分と第一電極5とが上下に重ならないように配置されているため、発光層25で発生した光が第一電極5によって、あまり遮られることなく、n型クラッド層24の光取り出し面24bから放出され、光取り出し効率がよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、支持基板として抵抗率が2×10Ω・cmのSi基板を用いているが、少なくとも抵抗率が1×10Ω・cm以上の支持基板を用いることが好ましい。これは、支持基板の抵抗が低くなるにしたがい、Si支持基板に流れる電流が増加し、微小電流がリーク電流として流れる問題が生じるためである。
【0053】
続いて、本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子用ウェハの製造方法を第一実施形態と異なる点について説明する。上記構造を有する半導体発光素子用ウェハの製造において、粗面化処理工程までは第一実施形態の製造方法と同様の工程を行う。
【0054】
続いて、半導体積層部2をエッチングして素子加工を行うが、p型GaPコンタクト層27は臭素、過酸化水素水との混酸を用いて除去し、さらに誘電体層8をフッ酸により除去して金属層3を露出させる。この誘電体層8の除去の際に、界面電極9の円形部分が露出して第二電極6となる。この第二電極6は、図5(b)に示すように第一電極5とは対角位置に配置されている。そして、第一実施形態と同様にして、光取り出し面24bおよび素子加工され露出した面に対して絶縁性保護膜7を形成する。その後、第一電極パッド50と第二電極パッド60の形成位置、およびレーザー光の照射される切削領域13上の絶縁性保護膜7をバッファードフッ酸でエッチング除去して第一電極パッド50および第二電極パッド60用の開口部および開口部14を設ける。そして、第一電極パッド50および第二電極パッド60を第一電極5、第二電極6上のそれぞれに形成して、本実施形態の半導体発光素子用ウェハを得る。
【0055】
なお、本実施形態においては、エッチングにより誘電体層までを除去し、露出した界面電極の円形部分を第二電極としたが、半導体積層部の一部を除去した領域に第二電極を形成する構成でも良い。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の具体的な実施例を説明する。
[実施例1]
【0057】
実施例においては、図1に示す上記第一実施形態と同じ構成で、発光層から生じる発光波長が630nmの赤色となるように形成された半導体発光素子用ウェハを形成した。
【0058】
半導体積層部2は、図1に示すように、光取り出し面側から、Mgドープのp型GaPコンタクト層27、Mgドープのp型(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層26、アンドープGa0.5In0.5Pとアンドープ(Al0.6Ga0.40.5
0.5Pとのペアによる多重量子井戸構造を有する発光層25、HSe(セレン水素
)ドープのn型(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層24、HSe(セレン水素)ドープのn型GaAsコンタクト層23を積層した構造となっており、矩形状に素子加工されている。光取り出し面側の第一電極にはAuGe合金、Ni、Auの積層構造を用いた。第一電極5上の第一電極パッド50は、Ti、Auの積層構造とした。誘電体層8はSiOであり、界面電極9はAuBe合金の単一層構造である。誘電体層8を介して光取り出し面とは反対側に位置する金属層3にはAuが用いられ、Tiからなる合金化バリア層11a、Auからなる金属接合層10aが積層されている。さらに、金属接合層10aを介して、Auからなる金属接合層10b、Tiからなる合金化バリア層11b、Siからなる支持基板4が貼り合わされている。支持基板4の金属層3と反対側の面の全体に形成される第二電極6は、Ti、Auの積層構造とした。そして、本実施例においては、光取り出し面、素子加工により露出した面に対して、レーザー光による切削領域13上を除き、SiOからなる絶縁性保護膜7を形成している。なお、絶縁性保護膜7の厚さは、光取り出し面24b上の膜厚が400nm、半導体積層部2の露出した側面上に形成された絶縁性保護膜7の膜厚が50nmとなっている。また、絶縁性保護膜7の形成されていない面の幅、つまり素子分離領域12内の開口部14の幅は34μmである。
【0059】
次に、上記半導体発光素子用ウェハの絶縁性保護膜7の表面にデブリ付着防止用の加工用水性保護膜(東京応化工業株式会社製、Hogomax002)を塗布して、レーザー加工用保護膜(図示なし)を形成する。そして、絶縁性保護膜7の形成されていない面に対して、レーザーソー(株式会社ディスコ製DEF7160)を用いてハーフカットを行い、切削加工の幅が所定の値となるように金属接合層10bの深さまで除去する。レーザー加工後、水洗してレーザー加工用保護膜を除去して、デブリの付着のないハーフカットウェハを得る。なお、レーザー切削加工の条件は、レーザー光のカーフ幅10μm、レーザー出力1.5W、発信周波数100kHz、送り速度300mm/sとした。また、カ
ーフ幅10μmのレーザー光で3パス切削加工を行うことにより合計30μmのカーフ幅を得る。
【0060】
ハーフカット後、レーザー切削加工によって金属接合層10bまで除去された領域に沿ってダイジングソーを用いてフルカットし、半導体発光素子用ウェハをチップ化し半導体発光素子を得る。ダイシングソーは1軸式セミオートマチックダイシングソー(株式会社ディスコDAD522)にダイヤモンドブレード(ディスコ製のZH05−SD3500−N1−50−AA)を取り付け使用した。このダイヤモンドブレードは、砥粒径が#3500、刃先出し量がおよそ0.4mm、得られるカーフ幅が約20μmのものである。
なお、切削条件は、スピンドル回転数30000rPm、送り速度10mm/sec、切削深さ230μmである。
【0061】
本実施例において得られる半導体発光素子の外観検査を行ったところ、ウェハから作成された約37000個の半導体発光素子のうち、デブリ付着による汚染数は0個であった。また、裏面チッピングの幅が30μmを超える半導体発光素子の数も0個であった。さらに、半導体発光素子の20mA駆動時のLED特性を評価したところ、発光出力10.
2mW、動作電圧1.95Vとなり、高出力かつ低動作電圧の赤色半導体発光素子を得る
ことができた。
[実施例2]
【0062】
本実施例は、上記他の実施形態と同じ構成であって、第二電極を第一電極と同じ側に形成した点以外は同じである。実施例1と同様に、得られた半導体発光素子の外観検査を行ったところ、ウェハから作成された約37000個の半導体発光素子のうち、デブリ付着による汚染数、裏面チッピングの幅が30μmを超える数はともに0個であった。さらに、半導体発光素子の20mA駆動時のLED特性を評価したところ、発光出力10.0m
W、動作電圧2.02Vとなり、高出力かつ低動作電圧の赤色半導体発光素子を得ることができた。
[比較例]
【0063】
比較例においては、レーザー切削領域上の絶縁性保護膜に開口部を形成せず、コンタクト層の表面が露出していない点以外は、実施例1と同様である。実施例1と同様に、比較例1の半導体発光素子の20mA駆動時のLED特性を評価したところ、発光出力10.
1mWV、動作電圧1.96Vと、実施例1の半導体発光素子と同等の特性を得られた。
一方、外観検査を行ったところ、裏面チッピングの幅が30μmを超える半導体発光素子の数は0個であったものの、デブリ付着による汚染数は37000個のうち20000個以上の半導体発光素子においてデブリ付着が確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体発光素子用ウェハ
2 半導体積層部
3 金属層
4 支持基板
5 第一電極
6 第二電極
7 絶縁性保護膜
8 誘電体層
9 界面電極
10a、10b 金属接合層
11a、11b 合金化バリア層
12 素子分離領域
13 切削領域
14 切削領域上の開口部
15 第一電極上の開口部
16 GaAs基板
22 n型エッチングストップ層
23 n型コンタクト層
23a n型コンタクト層の側面
24 n型クラッド層
24a n型クラッド層の側面
24b 光取り出し面
25 発光層
25a 発光層の側面
26 p型クラッド層
26a p型クラッド層の側面
27 p型コンタクト層
50 第一電極パッド
60 第二電極パッド
100 エピタキシャルウェハ
110 貼り合わせウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体積層部と、
前記半導体積層部の第二の面側に設けられる金属層と、
前記金属層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる支持基板と、
前記半導体積層部の第一の面側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第一電極と、
前記支持基板の前記金属層とは反対側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第二電極と、
前記半導体積層部の前記第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面を被覆する絶縁性保護膜と、を備える半導体素子用ウェハにおいて、
前記絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光が照射される切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出していることを特徴とする半導体素子用ウェハ。
【請求項2】
半導体積層部と、
前記半導体積層部の第二の面側に設けられる金属層と、
前記金属層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる支持基板と、
前記半導体積層部の第一の面側に設けられ前記半導体積層部に電気的に接続される第一電極と、
前記半導体積層部に対して前記第一電極と同一面側に、前記半導体積層部の一部がエッチング除去された部分に設けられ、前記半導体積層部に電気的に接続される第二電極と、前記半導体積層部の前記第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面を被覆する絶縁性保護膜と、を備える半導体素子用ウェハにおいて、
前記絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光が照射される切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出していることを特徴とする半導体素子用ウェハ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜が形成されず、前記半導体積層部の一部が露出している表面の幅が、前記半導体素子用ウェハをチップ化するレーザー光のカーフ幅よりも大きいことを特徴とする半導体素子用ウェハ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体素子用ウェハにおいて、前記半導体積層部と前記金属層との間に誘電体層を備え、前記誘電体層を貫通して、前記半導体積層部と前記金属層とを電気的に接続する界面電極が前記誘電体層の一部に配置されることを特徴とする半導体素子用ウェハ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体素子用ウェハにおいて、前記絶縁性保護膜がSiO、SiN、SiONのいずれか、もしくはこれらを組み合わせて積層した構造からなるものであることを特徴とする半導体素子用ウェハ。
【請求項6】
半導体積層部と、
前記半導体積層部の第二の面側に設けられる誘電体層と、
前記誘電体層の前記半導体積層部とは反対側に設けられる金属層と、を有する半導体素子用ウェハにおいて、
前記半導体積層部の第一の面側および前記半導体積層部における素子加工により露出した前記半導体積層部の表面には、前記半導体積層部を被覆する透明な絶縁性保護膜が設けられ、
前記透明な絶縁性保護膜は、前記半導体素子用ウェハをチップ化するための切削領域上には形成されず、前記半導体積層部の表面の一部が露出していることを特徴とする半導体素子用ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142508(P2012−142508A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−922(P2011−922)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】