説明

半導体装置、その製造方法及び半導体装置の個別管理情報認識方法

【課題】通常のウエハ製造工程のみで、追加マスク、追加工程なしに、チップサイズが増大することなく、またレーザービームによるダメージ無しに、製造工程中におけるチップの個別管理情報を直接全てのチップに付与でき、トレーサビリティを確保することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】矩形の基板上に、集積回路が形成された半導体集積回路部17と、前記半導体集積回路部の周囲に位置する、ダイシングの切り残し領域であるスクライブ部18とを備えた半導体装置において、前記スクライブ部に、複数のレイヤがパターン形成され、各レイヤのパターンの組み合わせにより、製造工程における個別管理情報を表示する情報表示部19を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、製造工程中における個別管理情報が付加された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、ダイシング工程により切り離されたチップ状態の従来の半導体装置(半導体チップ、以下単にチップと呼ぶ)の構成の一例を示す平面図である。図6に示すチップは、半導体集積回路17と、ダイシング後の残し領域18(以降スクライブ部と呼ぶ)から構成される。また、半導体集積回路17の領域内に該当チップの製品型名を表示する製品型名等表示部20を有する。製品型名等表示部20には、製品型名、マスク名称、製造者名等(以下、製品型名等と称す)が、たとえばMN××××××と書き込まれている。製品型名等は、露光マスク上にパターン形成され、チップ上にこれらの名称を転写して書き込まれる。
【0003】
このように、従来チップ上に書き込まれる製品型名等は、品種ごとに全て同一の名称であるので、当該チップのマスク作成の際、チップの空きスペースに前記名称をパターン形成しておけば、そのマスクを用いたチップに、容易に全て同一の名称を付与することが出来る。
【0004】
従来、チップ上に付与される製品型名等は、社名、製品型名、マスク名称などの単なる名称のみであって、例えばチップのロット番号、ウエハ番号、ウエハ内位置座標等のような製造工程におけるチップの個別管理情報をチップに付与する取り組みはあまりされていない。また、個別管理情報がチップに付与されていても、その個別管理情報は、組み立てロット番号程度である。
【0005】
従って、チップのパッケージや、その中に組み込まれた個別のチップでは、例えば出荷試験や使用現場における故障のように、組み立て工程後に発生した故障の原因を追及しようとしても、組み立てロット番号を手掛かりとして工程管理情報やテスト情報を検索する方法がないのが実情である。
【0006】
しかし、一般にチップの製造工程において、ウエハ工程におけるロット構成と、ウエハ・ダイシング(ウエハをチップに分離する工程)後の組み立て工程におけるロット構成は異なり、例えば組み立て工程における1ロットが、ウエハ工程における数ロットから構成される場合も多い。
【0007】
チップの製造工程で得られた工程管理情報としてロット番号がチップに付与されている場合は、主として製造現場のある工程で一時的に生じたロット不良の原因追及等において、製造ロットが特定でき、有効である。しかし、工程管理情報がロット番号のみでは、組み立て工程以降における出荷試験や使用現場での故障発生に対し、ウエハ工程におけるロット管理データと故障チップとの間の一義的な対応関係が失われる。そのため、組み立てロット番号を手掛かりとして工程管理情報やテスト情報を検索する方法がなく、故障発生の原因を十分に追及することができず、いわゆるトレーサビリティに欠けることが問題となっている。
【0008】
また、カスタマーで組み立て工程を行う、チップ売りという形態においては、カスタマー毎に工程管理手法が異なる為、不良が発生した場合においても実質的に追跡不可能となることが問題となっている。
【0009】
近年、半導体集積回路の微細化に伴う各種製造工程の複雑化、プロセス条件設定の高精度化により、同一製造ロット内であっても、ウエハごと、チップごとに半導体集積回路の特性差が大きくなっている。従って、故障チップが発生した場合、当該故障チップが本来工程不良を生じやすいウエハ周辺部に存在したのか、あるいは、良品となるべきウエハの中央部に存在したかにより故障対策が大きく異なる。
【0010】
つまり、チップに付与された社名、製品型名等のほか、組み立てロット番号がパッケージに印字される程度の管理情報では、製造現場における不良発生や使用現場での故障発生の原因追及の立場から極めて不十分である。そのため、例えばウエハ工程におけるロット構成と組み立て工程におけるロット構成との間に完全な対応関係が存在する場合でも、チップ個別の識別情報として、例えばウエハ内におけるチップの位置座標が不明である場合は、良好な故障対策を立てることが難しい。
【0011】
この問題を解決する為に、例えば特許文献1には、チップの製造のための露光工程で、各チップの表面または裏面にロット番号、ウエハ番号、ウエハ内位置座標などの個別管理情報を露光装置を用いてパターン形成することにより書き込む方法が記載されている。また、ダイソート・テスターにレーザーを装着し、各チップの表面または裏面に個別管理情報をレーザービームを用いて書き込む方法も記載されている。
【特許文献1】特開2000−228341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のチップは、チップ単位で個別管理情報が書き込みが可能であるという点においてメリットがあるが、露光装置で個別管理情報を書き込む場合には、特殊レチクルが必要である。また、チップ内に書き込む為のデータ領域が必要な為、従来よりもチップサイズが増大するという問題がある。
【0013】
また、レーザービームを用いる場合には、スポット状にデータを書き込むので、ウエハ製造工程にレーザービームを照射する工程が追加で必要となる。また、レーザービームを施すと、チップに多少なりともダメージが発生するという懸念がある。また、チップ内にレーザービームを施すための領域が必要となり、従来よりもチップサイズが増大するという問題がある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑み、追加マスク、追加工程なしに、通常のウエハ製造工程のみで、チップサイズが増大することなく、またレーザービームによるダメージ無しに、製造工程中におけるチップの個別管理情報を直接全てのチップに付与でき、トレーサビリティを確保することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体装置は、矩形の基板上に、集積回路が形成された半導体集積回路部と、前記半導体集積回路部の周囲に位置する、ダイシングの切り残し領域であるスクライブ部とを備えた半導体装置において、前記スクライブ部に設けられ、複数のレイヤのパターンの組み合わせにより、製造工程における個別管理情報を表示する情報表示部を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記半導体装置の製造方法であって、前記半導体集積回路を形成するレイヤと同一工程により、前記情報表示部のレイヤの形成、パターニングを実行し、レイヤを積層形成して前記情報表示部を形成する。
【0017】
また、本発明の第1の半導体装置の個別管理情報認識方法は、上記半導体装置の個別管理情報認識方法であって、前記情報表示部の断面形状から、各レイヤの個別管理情報を識別し、各レイヤの個別管理情報を組み合わせることにより、前記半導体装置の個別管理情報を認識する。
【0018】
また、本発明の第2の半導体装置の個別管理情報認識方法は、上記半導体装置の個別管理情報認識方法であって、前記情報表示部の表面形状から、各レイヤの個別管理情報を識別し、各レイヤの個別管理情報を組み合わせることにより、前記半導体装置の個別管理情報を認識する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、設備、工程の追加なしに、半導体装置のトレーサビリティを確保することができる。その結果、顧客出荷後の製品不良発生時などに、半導体装置の製造工程に対する追跡調査の労力低減と製造工程へのフィードバックの早期化が実現できる。
【0020】
また、半導体装置の製造時の個別管理情報は、チップ内部ではなく、スクライブ部を利用するものであり、半導体装置のサイズ変更はない。従って、個別管理情報を記載追加によるコストアップも発生しない。
【0021】
また、レーザービーム工程の追加もないため、ダメージの懸念がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記本発明の半導体装置において、前記情報表示部は、積層された各レイヤのパターンにより形成された断面形状により、前記個別管理情報を表示する構成にすることもできる。
【0023】
また、前記各レイヤのパターンは、物理的形状に基づいて識別可能であるように形成されている構成にすることもできる。個別管理情報を容易に判別することができる。
【0024】
また、前記各レイヤは、パターンが視覚的に識別可能である構成にすることもできる。この構成に個別管理情報を視覚的に読み出すことができる。
【0025】
また、前記各レイヤは、隣接するレイヤと構成材料が異なる構成にすることもできる。レイヤの識別が容易となる。
【0026】
また、前記情報表示部を構成するレイヤは、パターンが形成された情報記載領域が、他のレイヤの情報記載領域と重ならないように、積層されている構成にすることもできる。この構成により、情報表示部の表面形状から個別管理情報を読み出すことができる。
【0027】
また、前記基板は、少なくとも一辺にショット端を有し、前記スクライブ部は、前記ショット端に接する領域に前記情報表示部を有する構成にすることもできる。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかわる半導体装置を示す平面図である。図1(a)はシリコンウエハ14に対するショット16の位置関係を示す平面図である。シリコンウエハ14の上には、リソグラフィー工程により形成された半導体集積回路を有したショット16が縦横に規則的に形成されている。ここで、シリコンウエハ14内のショット16の位置は、図1(a)のように定義される。すなわち、ノッチ15方向を基準に、第1座標軸、第2座標軸をウエハ面内に定め、これを用いて図1(a)に示すようにショット16の位置(ウエハ内位置座標)を定める。
【0030】
図1(b)は、図1(a)の1ショット16を拡大表示した平面図であり、本実施形態では10チップ構成を例にしている。ショット16は、後工程において図1(b)に示すチップ間のダイシング・ライン18aに沿って切断され、個別のチップに分離される。
【0031】
次に個別に分離された半導体装置(半導体チップ、以下単にチップと呼ぶ)を拡大した平面図を図1(c)に示す。ウエハ状態からダイシングされたチップは、図1(c)に示すように、基板上に製品型名等表示部20を含む半導体集積回路17と、チップの個別データ部19(情報表示部)を含む、ダイシング後の切り残し領域18(以後スクライブ部と呼ぶ)から形成される。
【0032】
本実施の形態のチップは、このスクライブ部18を積極的に活用し、ショット16単位でのチップの個別管理情報を残すというものである。
【0033】
半導体集積回路17の製造工程(リソグラフィー工程)において、ショット16端領域はブラインド機能を使えば、ショット16ごとに露光範囲の設定を変えることができる。従ってレチクルの個別データ部19に対応する場所に対して、ショット16ごとに露光範囲を変更することにより、ショット16ごとの個別データ部19に異なる個別管理情報を付与することができる。1レイヤにおけるブラインドの精度だけでは個別管理情報数が限られるが、レイヤを複数組み合わせることにより情報量が増し、製造工程中の個別管理情報、たとえばロット番号、ウエハ番号、ウエハ内位置座標などを表現することが可能となる。
【0034】
つまり、スクライブ部18のうち少なくとも1辺にショット16端を含むチップについては、レチクルを用いて、ショット16単位で、チップの個別データ部19を形成することが可能になる。
【0035】
以下、図2を参照しながらチップの個別データ部について説明する。図2(a)は(b)に示す個別データ部19aに個別管理情報を書き込むためのレチクルを示す平面図であり、(b)はチップの個別データ部19aを示す平面図であり、(c)は(b)の個別データ部19aのX−X断面を示す断面図である。
【0036】
まず、製造工程中の個別管理情報について具体的に例を挙げて説明する。ここでは、個別管理情報として、ロット番号、ウエハ番号およびウエハ内位置座標を用いる。個別管理情報として、製造工程におけるチップの状態を追跡するために必要なデータの具体的な数は、次のとおりである。
【0037】
ロット番号は、生産開始から生産終了までのロット数全てを指定する必要があり、1000から3000程度必要である。ウエハ番号とは、1ロット内でのウエハ順等を示す情報であり、カセット単位で想定すると一般に最大25まで指定できればよい。ウエハ内位置座標とは、ウエハ面内で当該ショット16がどの位置に配置されていたかを示す情報である。不良発生の際、チップ単位の位置追跡が出来るにこしたことはないが、ショット単位まで追跡できれば、不良原因は充分に絞りこめる。6インチレチクルを使って8インチウエハを製造する場合、ショット数はウエハ端部を含む無効ショットを含めても約70から100程であり、これが指定できればよい。
【0038】
次に、チップの個別データ部19aについて具体的に説明する。チップ本体のサイズが横方向に2mm、縦方向に1mmである。半導体集積回路17同士の間隔は約40μmである。その中でもダイシング後の切り残し領域(スクライブ部)18は、半導体集積回路17から約25μmの領域である。
【0039】
このスクライブ部18を利用して、20μm幅のチップの個別データ部19aを形成するために、レチクルにレイヤパターン21aを配置する。具体的なレイヤパターンを図2(a)に示す。
【0040】
ステッパーのブラインド機能の最小精度が5μmであり、個別データ部19aが20μmの幅を有するので、各レイヤにおいて5通りのパターン設定が可能である。本実施の形態では、図2(a)に示すように、0、1、2、3、4の5通りのブラインド位置設定23を行う。
【0041】
図2(c)は、図2(b)の個別データ部19aのX断面を示す断面図である。チップの個別データ部19aは、基板11上に、下のレイヤから順にフィールド酸化膜1a、ゲート電極2a、第1層間絶縁膜3a、第1配線層4a、第2層間絶縁膜5a、第2配線層6a、第3層間絶縁膜7a、第3配線層8a、第1保護膜9a、第2保護膜10aの10レイヤが積層されて構成されている。最下レイヤでは、フィールド酸化膜1aが形成されていない活性層12aがこのレイヤの個別管理情報を形成している。また、第1層間絶縁膜3a、第2層間絶縁膜5a、第3層間絶縁膜7aには、コンタクトホール13a−1、13a−2、13a−3が形成され、レイヤの個別管理情報を形成している。各レイヤは、設定されたブラインド位置まで形成され、レイヤの個別管理情報を形成している。
【0042】
ブラインド位置は、0から4までの5つの設定があり、レイヤが10あるため、個別管理情報として、最大5の10乗の情報を設定することができる。そこで、最初の5レイヤをロット名、次の2レイヤをウエハ番号、残りの3レイヤをウエハ内位置座標の表現に使用すると、ロット数は最大3125、ウエハ番号は最大25、ウエハ内位置座標は最大125まで指定できる。この情報量は、上述したように個別管理情報としては十分な量である。
【0043】
次にチップの個別データ部19aの解読方法を図2(c)を参照しながら説明する。まず、チップの個別データ部19aの断面を解析し、各レイヤがチップの個別データ部19aにおいて、半導体集積回路17側から何μmの範囲まで形成されているかを読み取る。図2(c)では、フィールド酸化膜1aのレイヤで形成される活性領域12aは20μm、ゲート電極2aは10μm、第1層間絶縁膜3aにおけるコンタクトホール13a−1は0μm、第1配線層4aは20μm、第2層間絶縁膜5aにおけるコンタクトホール13a−2は15μmの領域まで形成されている。同様に、第2配線層6aは15μm、第3層間絶縁膜7aにおけるコンタクトホール13a−3は10μm、第3配線層8aは10μm、第1保護膜9aの開口は5μm、第2保護膜10aの開口は0μmまで形成されている。
【0044】
次に、読み取った各レイヤの長さから各レイヤが形成される際のブラインド位置設定値を求める。つまり、ブラインドの精度は5μmであるため、各レイヤの長さを5μmで割った値を求める。求めたブラインド位置設定値は、フィールド酸化膜1aの形成レイヤでは4、ゲート電極2aの形成レイヤでは2、第1層間絶縁膜3aの形成レイヤでは0、第1配線層4aの形成レイヤでは4、第2層間絶縁膜5aの形成レイヤでは3、第2配線層6aの形成レイヤでは3、第3層間絶縁膜7aの形成レイヤでは2、第3配線層8aの形成レイヤでは2、第1保護膜9aの形成レイヤでは1、第2保護膜10aの形成レイヤでは0である。
【0045】
次に、求めた値を最下層レイヤから順に並べた値4204332210を、ロット番号、ウエハ番号、ショット番号に分ける。本実施の形態では、ロット番号は最初の5レイヤ、すなわちフィールド酸化膜1a、ゲート電極2a、第1層間絶縁膜3a、第1配線層4a、第2層間絶縁膜5aで表現するため、42043となる。これを5進数から10進数に換算して、ロット番号は、2773であると読むことができる。
【0046】
次にウエハ番号は次の2レイヤ、すなわち第2配線層6a、第3層間絶縁膜7aで表現するため、32となる。同様に5進数から10進数に換算して、ウエハ番号は17と読むことができる。ウエハ内位置座標は、残りの3レイヤ、すなわち第3配線層8a、第1保護膜9a、第2保護膜10aで表現するため、210となる。同様に5進数から10進数に換算してウエハ内位置座標は55と読むことができる。
【0047】
本実施の形態においてウエハ番号は1から25までの25個であるが、5進数では厳密にいえば0から24までしか表現できない。しかし、実質ウエハ番号0はなく、5進数の00は欠番となるため、これを利用してウエハ番号25を00と表現する。25のみを表現するために桁数、すなわちレイヤ数を増やすよりも、サンプル作成、解析手間がかからないからである。
【0048】
次に、以上のように構成されたチップの個別データ部19の製造方法について説明する。
【0049】
半導体集積回路17のリソグラフィー工程において、図2(a)に示すレチクルを使い、パターンを形成する。たとえば、あるショットにおいては、ステッパー装置のブラインド機能を用いて、チップの個別データ部19aに対してブラインド位置設定値が4の領域まで選択して露光する。また別のショットにおいては、ブラインド位置設定値が3の領域まで選択してパターン形成する、というように特に、ウエハ内位置座標を形成するレイヤに対して、ショット毎に形成パターンを変更しながら個別データ部19を形成する。
【0050】
同一ショットに着目した場合を説明する。前述の要領で、ブラインド位置設定値をフィールド酸化膜1aの形成レイヤでは4、ゲート電極2aの形成レイヤでは2、第1層間絶縁膜3aの形成レイヤでは0、第1配線層4aの形成レイヤでは4、第2層間絶縁膜5aの形成レイヤでは3、第2配線層6aレイヤでは3、第3層間絶縁膜7aレイヤでは2、第3配線層8aレイヤでは2、第1保護膜9aの形成レイヤでは1、第2保護膜10aの形成レイヤでは0の領域まで選択し、露光して、パターンを形成し、個別データ部19aを形成する。以上のように、異なるレイヤとパターンの組み合わせにより、ショット単位でチップの個別管理情報を個別データ部19aに書き込むことができる。
【0051】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、設備、工程の追加なしに、チップに個別データ部を形成することができ、半導体装置のトレーサビリティを確保することができる。
【0052】
さらに、図2(c)に示すX−X断面は、どの位置でも同じ形状である。従って、ダイシング工程後のチップが破損していた場合でも、チップの個別データ部19aにおいてブラインド位置設定0〜4を記載した部分が一部でも残っていれば、個別管理情報の読み取りが可能である。また、たとえ個別データ部19aのブラインド位置設定23の設定4に関する領域が欠けている場合においても、情報は限られるがチップの個別管理情報が得られる。
【0053】
また、上記個別データ部の製造方法により、特殊レチクルを必要としない為、半導体装置を安価に実現することが出来る。
【0054】
なお、個別管理情報を載せるレイヤは、注入等により形成されたレイヤにおいても同様に使用できる。しかし、追跡を容易にするという観点では、本実施の形態なフィールド酸化膜、活性領域、ゲート電極、層間絶縁膜、コンタクトホール、配線層、保護膜など、形状が物理的に残り、顕微鏡等で外観が確認しやすい方が望ましい。
【0055】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、本実施の形態に係るチップを形成するためのレチクルであり、(b)はチップの平面図、(c)は(b)のX断面図である。
【0056】
図3(b)に示す本実施の形態に係るチップの個別データ部19bは、図3(a)に示すレチクルのパターン領域21b形成されたレイヤパターン22bを用い、レイヤを連続して形成するのではなく、分割形成した構成である。従って、フィールド酸化膜1bが形成されない活性層12b、ゲート電極2b、第1配線層4b、第2配線層6b、第3配線層8b、第1保護膜9b、第2保護膜10bについても、分割形成されている。他の構成については、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。分割方法は、ブラインド機能の精度が5μmであるため、図3(a)に示すように、レイヤパターン22bに4μmの窓を4本配置したレチクルを用いてパターンを形成する。
【0057】
この構成により、レイヤパターン22bがブラインド機能の精度に合わせて分割されているため、解析時には図3(c)に示すように、各レイヤの本数を読み取ることにより、寸法とブラインド機能の精度との関係が分からない場合においても容易にレイヤの情報を読み取ることが出来る。
【0058】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について、図4を参照しながら説明する。図4(a)は、本実施の形態に係るチップを形成するための各レイヤのレチクルを示す平面図であり、(b)はチップの平面図である。
【0059】
本実施の形態に係るチップは、個別管理情報を載せた個別データ部19cを、図4(b)に示すように、レイヤ毎の情報記載領域が重ならないように形成した点に特徴がある。
【0060】
この個別データ部19cは、図4(a)に示すように、パターン領域21c−1〜21c−10に、レイヤパターン22c−1〜22c−10が形成されたレチクルを用い、ステッパー装置のブラインド機能を使い、形成される。
【0061】
以上のような構成により、本実施の形態に係るチップは、個別データ部19cの断面形状を見なくても外観のパターン数を数えるだけで個別管理情報を読み取ることができる。
【0062】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4について、図5を参照しながら説明する。図5(a)は、本実施の形態に係るチップを形成するためのレイヤ毎のレチクルを示す平面図であり、(b)、(c)はチップの平面図である。
【0063】
本実施の形態に係るチップは、図5(b)に示すように、個別データ部19dの各レイヤに文字を配置した点に特徴がある。
【0064】
この個別データ部19dは、図5(a)に示すように、パターン領域21d−1〜21d−10に、レイヤパターン22d−1〜22d−10が形成されたレチクルを用い、ステッパー装置のブラインド機能を使い、形成される。
【0065】
以上のような構成により、本実施の形態に係るチップは、個別データ部19dの断面形状を見なくても外観を見ただけで情報を読み取ることができる。更に文字の場合、レイヤ毎の判別がつきやすいので、チップサイズならびにチップの個別データ部の配置領域が縦方向に小さい場合には、図5(c)のように、一つのブラインド位置に文字を複数配列した個別データ部19eとすることも可能である。
【0066】
なお、本実施の形態ではアルファベットを例に用いたが、アルファベットに限らず数字でもよいし、形状の異なる分割されたパターンであれば同じ効果が得られることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体装置のスクライブ部に個別管理情報を形成するため、半導体装置を大きくすることなく、半導体装置のトレーサビリティが向上するという利点を有し、半導体装置の製造業において、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のチップを形成するための(a)シリコンウエハとショット位置の関係を示す図、(b)ショットとチップとの関係を示す図、(c)チップの構成を示す平面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1におけるチップを形成するためのレチクルを示す図、(b)チップの個別データ部の平面図、(c)チップの個別データ部の断面図
【図3】(a)本発明の実施の形態2におけるチップを形成するためのレチクルを示す図、(b)チップの個別データ部の平面図、(c)チップの個別データ部の断面図
【図4】(a)本発明の実施の形態3におけるチップを形成するためのレチクルを示す図、(b)チップの個別データ部の平面図
【図5】(a)本発明の実施の形態2におけるチップを形成するためのレチクルを示す図、(b)(c)チップの個別データ部の平面図
【図6】従来のチップの構成を示す平面図
【符号の説明】
【0069】
1a、1b フィールド酸化膜
2a、2b ゲート電極
3a、3b 第1層間絶縁膜
4a、4b 第1配線層
5a、5b 第2層間絶縁膜
6a、6b 第2配線層
7a、7b 第3層間絶縁膜
8a、8b 第3配線層
9a、9b 第1保護膜
10a、10b 第2保護膜
11 基板
12a、12b 活性領域
13a−1〜13a−3、13b−1〜13b−3 コンタクトホール
14 シリコンウエハ
15 ノッチ
16 ショット
17 半導体集積回路
18 スクライブ部
18a ダイシング・ライン
19a、19b、19c、19d、19e 個別データ部
20 製品名等表示部
21a、21b、21c−1〜21c−10、21d−1〜21d−10 パターン領域
22b、22c−1〜22c−10、22d−1〜22d−10 レイヤパターン
23 ブラインド位置設定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の基板上に、集積回路が形成された半導体集積回路部と、前記半導体集積回路部の周囲に位置する、ダイシングの切り残し領域であるスクライブ部とを備えた半導体装置において、
前記スクライブ部に設けられ、複数のレイヤのパターンの組み合わせにより、製造工程における個別管理情報を表示する情報表示部を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記情報表示部は、積層された各レイヤのパターンにより形成された断面形状により、前記個別管理情報を表示する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記各レイヤのパターンは、物理的形状に基づいて識別可能であるように形成されている請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記各レイヤは、パターンが視覚的に識別可能である請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記各レイヤは、隣接するレイヤと構成材料が異なる請求項3または4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記情報表示部を構成するレイヤは、パターンが形成された情報記載領域が、他のレイヤの情報記載領域と重ならないように、積層されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板は、少なくとも一辺にショット端を有し、
前記スクライブ部は、前記ショット端に接する領域に前記情報表示部を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体集積回路を形成するレイヤと同一工程により、前記情報表示部のレイヤの形成、パターニングを実行し、レイヤを積層形成して前記情報表示部を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5、7のいずれか一項に記載の半導体装置の個別管理情報認識方法であって、
前記情報表示部の断面形状から、各レイヤの個別管理情報を識別し、
各レイヤの個別管理情報を組み合わせることにより、前記半導体装置の個別管理情報を認識する半導体装置の個別管理情報認識方法。
【請求項10】
請求項6または7に記載の半導体装置の個別管理情報認識方法であって、
前記情報表示部の表面形状から、各レイヤの個別管理情報を識別し、
各レイヤの個別管理情報を組み合わせることにより、前記半導体装置の個別管理情報を認識する半導体装置の個別管理情報認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−42882(P2007−42882A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225687(P2005−225687)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】