説明

半導体装置およびその製造に用いるスポット摩擦攪拌接合装置

【課題】リードフレームを絶縁基板,ないし半導体チップに接合した組立構造の半導体装置を対象に、信頼性の高い接合強度が確保できるように接合部材の厚さ,形状,材質を最適化したスポット摩擦撹拌接合装置を提供する。
【解決手段】絶縁基板2、該絶縁基板にマウントした半導体チップ3にリードフレーム4,5の接合脚片4a,5aを重ね、ここに回転ツール7を押し込んでスポット摩擦攪拌接合した組立構造になる半導体装置において、リードフレームの接合脚片については、そのスポット接合部の厚さt1を500μm以下に薄肉化して摩擦攪拌接合する際の塑性流動化を促進するようにし、また絶縁基板の導体パターン2bの厚さt2を0.5〜3mmに厚肉化して摩擦攪拌接合時の塑性流動範囲を拡大するとともに、導体パターンの領域まで貫入した回転ツールが絶縁基板のセラミック基板2aに当たるのを防ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBTモジュールなどのパワー半導体装置を対象に、リードフレームを摩擦攪拌接合法により絶縁基板の導体パターン,ないし半導体チップの上面電極にスポット接合した半導体装置、およびその接合に適用するスポット摩擦攪拌接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、IGBTモジュールを例に、従来における半導体装置の組立構造を図7に示す。図において、1は放熱用金属ベース、2は絶縁基板(例えばセラミック基板2aの表裏両面に厚さ0.2〜0.25mm程度の銅箔を直接接合して導体パターン2b,2cを形成したDirect Copper Bonding基板)、3は絶縁基板2の導体パターン2bに半田マウントした半導体チップ(IGBT)、3aは半導体チップ3の電極面に被着した厚さ10μm程度の金属膜(アルミ,あるいは半田との濡れ性を高めるようにアルミ膜の表面にNi−Auメッキを施したメタライズ層)、4は半導体チップ3の上面電極(IGBTのエミッタ電極)と絶縁基板2の導体パターン2bとの間にまたがって接合,配線したリードフレーム、5は絶縁基板2の導体パターン2bに接合して上方に引出したリードフレーム(外部導出端子)である。ここで、リードフレーム4,5は、機種,電流容量などによって異なるが、幅3mm,厚さ0.5〜1.5mm程度の銅合金などで作られた箔状導体片の両端にL字形の接合脚片4a,5aを形成したもので、接合脚片4a,5aを絶縁基板2の導体パターン2b,半導体チップ3の上面側金属膜3aに重ねてリフロー半田接合している。
【0003】
ところで、前記のようにリードフレーム4,5を絶縁基板2,半導体チップ3に半田接合した組立構造では、半田接合時の熱履歴により接合界面に金属間化合物が生成し、これが基で接合強度が劣化して信頼性,寿命が低下する。また、セラミック,シリコンチップとリードフレーム(銅材)との線膨張係数差に起因して半田接合部の接合界面には、温度サイクルにより繰り返し加わる応力で半田層にクラックが発生し、パワーサイクル耐性を低下させるなどの問題がある。
【0004】
そこで、昨今では半田を用いない接合方法として、超音波ボンディング法がワイヤボンディング,リードフレームの接合に多く採用されるようになっている。また、最近では少ない熱入力で金属間を固相接合する摩擦攪拌接合法が注目され、この摩擦攪拌接合法を電子回路部品の接合に適用する(例えば、特許文献1参照)研究も進んでいる。
この摩擦攪拌接合法は、2枚の被接合金属板を突き合わせ,または重ね合わせた上で、その接合部に高速回転するピン状の回転ツール(工具と同様な超硬合金製)を押し込み、その回転により発生する摩擦熱で金属材を軟化,塑性流動させて被接合金属板を固相接合する方法であり、薄板(板厚0.2mm)のアルミ材を重ね合わせて回転ツールにより接合したマイクロスポット摩擦攪拌接合法の実験例も報告されている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−25078号公報(第1−2頁)
【非特許文献1】吉川 勝幸,「マイクロスポット摩擦攪拌接合」,(社)溶接学会マイクロ接合研究委員会,第11回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術シンポジウム論文集, 2005, p421-424
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のマイクロスポット摩擦攪拌接合法を図7の半導体装置の組立に適用し、そのリードフレーム4,5を絶縁基板2,半導体チップ3に接合する方法について発明者等が行った接合実験,考察を通じて得た知見によれば、パワー半導体装置に要求される通電,伝熱性と併せて高いパワーサイクル耐量を確保するための課題として、次記のような問題のあることが明らかになって。
【0006】
すなわち、半導体装置に組み込むリードフレーム4,5に形成した接合脚片4a,5aのサイズは□3mm程度であり、この脚片の微小面積に回転ツールを押し込んでリードフレームを絶縁基板2の導電パターン2b,半導体チップ3の電極面に成膜した金属膜3aとスポット摩擦攪拌接合するには、その接合ツールとして先端径がφ1〜2mmである細い回転ツールを使用する必要がある。
【0007】
しかしながら、先端径の細い回転ツールでは接合部に生じる発熱量も微量であり、板厚が0.5〜1.5mmである在来品のリードフレームにまま適用すると、接合界面の塑性流動化が十分進まずに信頼性の高い接合強度の確保が困難である。
また、塑性流動範囲を拡大するために、回転ツールがリードフレームと重ね合わせた下側の接合相手部材の領域まで達するように深く押し込むようにすると、高速回転する回転ツールが絶縁基板2の導体パターン(厚さ0.2mm程度),半導体チップ3の表面にメタライズした金属膜(厚さ10μm程度)を貫通して絶縁基板2のセラミック基板2a,半導体チップ3のシリコンチップに直接当たって脆い材質のセラミック基板2a,半導体チップ3が破損するおそれがある。
【0008】
さらに加えて、リードフレームの摩擦攪拌接合工程では絶縁基板,半導体チップの上に重ね合わせたリードフレームの接合脚片が動かないように固定治具を用いて固定しておく必要があるが、接合部の周辺にはほかの回路部品が並んでいることもあって、回転ツールと干渉しないように固定治具でリードフレームの接合脚片を所定の接合位置に固定することが実際には困難である。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、スポット摩擦攪拌接合法によりリードフレームを絶縁基板,ないし半導体チップに接合した組立構造の半導体装置を対象として、先記の考察結果を基に接合部材の厚さ,形状,材質の条件を最適化して信頼性の高い接合強度が確保できるようにした半導体装置の構成、およびそのリードフレーム接合に適用するスポット摩擦攪拌接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、絶縁基板と、該絶縁基板にマウントした半導体チップと、絶縁基板の導体パターン,半導体チップの上面電極,半導体チップの上面電極に接合されたヒートスプレッダの上面のいずれかに接合したリードフレームを有し、該リードフレームの端部に形成した接合脚片を接合相手である前記絶縁基板の導体パターン,半導体チップの上面側電極面にメタライズした金属膜,またはヒートスプレッダに重ね合わせ、その上から回転ツールを押し込んでリードフレーム/絶縁基板の導体パターン間,リードフレーム/半導体チップの金属膜間を摩擦攪拌接合法によりスポット接合した半導体装置において、
(1)前記リードフレームの接合脚片について、そのスポット接合部の厚さを500μm以下に薄肉化し、この接合部に回転ツールを押し込んで摩擦攪拌接合する際の塑性流動化を促進するようにする(請求項1)。
(2)リードフレームの接合相手部材である絶縁基板の導体パターンの厚さを0.5〜3mmに厚肉化し、摩擦攪拌接合時の塑性流動範囲を拡大するとともに、導体パターンの領域まで貫入した回転ツールが絶縁基板のセラミック基板に当たるのを防ぐようにする(請求項2)。
(3)リードフレームを接合する半導体チップの電極面にメタライズした金属膜の厚さを30μm以上に厚膜化し、前項(2)と同様に塑性流動範囲の拡大と併せて回転ツールがシリコンチップに当たるのを防ぐようにする(請求項3)。
(4)銅材で作られたリードフレームに対して、少なくとも接合脚片のスポット接合部を銅材に比べて塑性流動性の高いアルミ材で形成する(請求項4)。
(5)配線部品として板厚を0.5〜1.5mmとしたリードフレームに対し、その先端側に形成した接合脚片のスポット接合部には肉厚30〜200μmを残してその上面側に凹状の窪みを形成し、摩擦攪拌接合時に接合部の塑性流動化を高めるようにする(請求項5)。
(6)リードフレームの接合ツールとして先端径が0.5〜2mmの細い回転ツールを使用し、該回転ツールにより接合脚片の複数箇所をスポット接合して所要の通電性,伝熱性,および接合強度を確保するようにする(請求項6)。
(7)前項(6)のリードフレーム接合脚片に対し、スポット接合部の地点から外れた部位に応力緩和ホールを形成し、材質の線膨張係数差に起因して実使用時の熱サイクルで接合界面に加わる熱応力の低減化を図る(請求項7)。
(8)さらに、前記リードフレームのスポット接合に適用する摩擦攪拌接合装置には、回転ツールと組み合わせてリードフレームの接合脚片を接合位置に押さえ込む支持機構を備え、この支持機構でリードフレームの脚片を定位置に保持した状態で回転ツールを接合部に押し込んで摩擦攪拌接合が行うようにする(請求項8)。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、半導体装置の組立工程でリードフレームの接合脚片を絶縁基板の導体パターン,ないし半導体チップの電極面に成膜した金属膜に重ね、この上から先端径の細い回転ツールを押し込んでスポット摩擦攪拌接合する際に、接合部の塑性流動化を促進させ、また回転ツールが絶縁基板のセラミック基板,半導体素子のシリコンチップに当たって破損するのを防いで高信頼性の接合強度を確保できる。
【0012】
また、摩擦攪拌接合装置には、回転ツールと組み合わせてリードフレームの接合脚片を接合位置に押さえ込む支持機構を設けたことにより、半導体装置の組立構造に制約されることなく、リードフレームの接合脚片を定位置に保持して摩擦攪拌接合を作業効率よく行うことができ、かつ機種の異なる半導体装置への適用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図7に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
まず、リードフレームをスポット摩擦攪拌接合法により接合して組み立てた半導体装置の全体構造,および回転ツールを用いてスポット摩擦攪拌接合したリードフレーム接合部の模式図を図1(a)〜(c)に、またリードフレームのスポット接合箇所を図2に示す。図1(a)は図7に示した半導体装置に対応する組立構造図であり、図7の組立構造ではリードフレーム4,5の端部にL形に屈曲形成した接合脚片4a.5aが絶縁基板2,半導体チップ3の上面に半田接合されているのに対し、図1の構造ではリードフレーム4,5の接合脚片4a.5aを絶縁基板2の導体パターン2a,半導体チップ3の上面側金属膜3aに重ね合わせた上で、その上方から高速回転する回転ツール7を押し込んでスポット摩擦攪拌接合するようにしている。
【0014】
ここで、回転ツール7は、図1(a)で示すようなピン7aで構成したもの、あるいは図1(b)で示すように小径なピン7aと大径なショルダー7bを組み合わせた構造であり、そのピン7aの先端径はφ0.5〜2mmである。そして、高速回転している回転ツール7を図示のように上方から接合脚片5aの上に加圧力Fを加えながら押し込むと、摩擦熱によりその周辺の接合部材が軟化、塑性流動して攪拌され、その後に回転ツール7を引き上げるとリードフレーム5の接合脚片5aと絶縁基板2の導体パターン2bとの間がスポット接合(固相接合)されることは周知の通りであり、この摩擦攪拌接合部を符号8で表す。なお、図1(b),(c)はリードフレーム5と絶縁基板2の導体パターン2bとの接合を表しているが、リードフレーム4と絶縁基板2,半導体チップ3との間の接合についても前記と同様な回転ツール7の押し込み操作によりスポット摩擦攪拌接合される。
【0015】
一方、上記の構造になる半導体装置に対して、図1の実施例では、リードフレーム4,5の接合脚片4a,5aの厚さt1,絶縁基板2の導体パターン2aの厚さt2,半導体チップ3の上面に成膜した金属膜3aの膜厚t3をそれぞれ次記のよう規定した上でスポット摩擦攪拌接合を行うようにしている。
まず、板厚が0.5〜1.5mm程度の銅合金で作られたリードフレーム4,5の端部に屈曲形成した接合脚片4a,5aについては、回転ツール7の押し込みにより接合脚片の接合部が短時間で塑性流動化するのを促進するために、プレス加工などにより接合脚片4a,5aの厚さt1が500μm以下(10〜500μmの範囲)となるように薄板化する。
【0016】
一方、リードフレーム4,5と接合する絶縁基板2の導体パターン2bは、前記とは逆に厚さを0.5〜3mm(在来品では導体パターン2bの厚さは0.2mm程度)に厚肉化し、図1(c)のように回転ツール7のピン7aが接合界面を超えて導体パターン2bに貫入して塑性流動範囲を拡大させるとともに、一方では回転ツール7のピン先端が絶縁基板2のセラミック基板2a(図1参照)に当たって破損するのを防ぐようにしている。
【0017】
また、半導体チップ3の上面電極にメタライズした金属膜3a(在来品での膜厚は10μm程度)についてもその膜厚を30μm以上に厚膜化し、図1(b)に示した摩擦攪拌接合時における塑性流動範囲の拡大と併せて、回転ツール7のピン7aが半導体チップ3のシリコンチップに当たって破損するのを防ぐようにしている。
そして、前記条件でリードフレームを接合相手部材にスポット摩擦攪拌接合する際には、図2に示したリードフレーム5の接合脚片5a(外形□3mm程度)に対して、その上面の複数箇所に分けて先端径φ0.5〜2mmの回転ツール7を押し込んで接合する。なお、図中の符号9がスポット接合部を表しており、このようにリードフレーム5の接合脚片5aを複数箇所でスポット接合することで、パワー半導体装置として要求される通電性,放熱性,および接合強度が得られる。
【0018】
次に、前記リードフレームの接合脚片について、いくつかの応用実施例を図3〜図5に示す。まず、本発明の請求項4に対応する実施例を図3(a)〜(d)に示す。この実施例では、銅材で作られたリードフレーム5の接合脚片5aに対して、少なくともスポット摩擦攪拌接合する部分がアルミ材10で形成されており、図3(a),(b)はスポット接合部となる脚片の面域に穿孔した穴にアルミ材10が充填されている。また、図3(c)は接合脚片をアルミ材10で形成し、図3(d)は接合脚片5aの裏面(接合面)にアルミ材10を被着している。すなわち、アルミは銅に比べて導電率,熱伝導率が多少低いが、軟化温度が低くて塑性流動性が高く、銅材に比べて摩擦攪拌接合し易い性質がある。したがって、図示のようにスポット摩擦攪拌接部分をアルミ材で形成しておくことにより、少ない熱入力でもリードフレームを確実にスポット摩擦攪拌接できる。
【0019】
次に、本発明の請求項5に対応する実施例を図4(a),(b)に示す。すなわち、板厚0.5〜1.5mmのリードフレームに対して、その接合脚片の厚さt1を薄肉化して摩擦攪拌接合による塑性流動性を高めるようにしたことは先に述べたところであるが、この実施例では接合脚片5aの全域を薄肉化せず、その代わりにスポット接合部に対応する部分にはt4=30〜200μmの肉厚を残してその上面側に回転ツール7を押し込む凹状の窪み5bを形成している。これにより、リードフレームの部品として要求される通電性,伝熱性および機械的な剛性を確保しつつ、摩擦攪拌接合による接合部の塑性流動性を高めることができる。
【0020】
また、図5(a),(b)は本発明の請求項7に対応する実施例を示すものである。この実施例では、スポット接合を複数箇所に分けて行うようにしたリードフレーム5の接合脚片5a(図2参照)に対して、スポット接合部9の配列と重ならない部位に沿って板面にスリット状のホール5cが形成されている。この構造によれば、半導体装置の熱サイクルに起因してスポット接合部9に加わる面方向の剪断応力をホール5cが吸収緩和して、接合強度の信頼性を向上できる。なお、この応力緩和ホール5cはスリット状のホールに限定されるものではなく、スポット接合部9の配列の間に丸穴を分散穿孔しても同等な効果を奏することができる。
【0021】
次に、本発明の請求項8に対応するスポット摩擦攪拌接合装置の略示構成を図6に示す。このスポット摩擦攪拌接合装置11は半導体装置の組立工程でリードフレーム5の接合脚片5aを所定の接合位置に押え込んで固定する機能を付加したもので、図示のように回転ツール7を下向きに装備した駆動部11aには、回転ツール7を左右から挟んで上下方向に延在する一対のリニアガイド11bおよび押え込み脚11cからなるリードフレーム5の支持機構を備えた構成になる。
【0022】
そして、リードフレームのスポット摩擦攪拌接合工程では、絶縁基板の導体パターン2bの上にリードフレーム5の接合脚片5aを重ね合わせた状態で、上方からスポット摩擦攪拌接合装置11を降ろし、その押え込み脚11cをリードフレームの接合脚片5aに突き当てて所定位置に押さえ込む。続いてリニアガイド11bを下降制御し、高速回転している回転ツール7を接合脚片5aに押し込んでスポット摩擦攪拌接合する(図1(b),(c)参照)。
【0023】
このスポット摩擦攪拌接合装置11を用いることにより、半導体装置の絶縁基板上に並ぶ回路部品に干渉することなく、リードフレームを所定の接合位置に押さえ込んで作業能率よくスポット摩擦攪拌接合を行うことができる。
なお、上記の実施例では、半導体チップ3の上面側金属膜3aにリードフレーム4を摩擦攪拌接合する場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、半導体チップ3の上面側電極にヒートスプレッダを接合した上で、リードフレーム4をヒートスプレッダの上面に摩擦攪拌接合するようにしてもよい。
【0024】
半導体チップ3の上面にヒートスプレッダを接合することにより、半導体チップの上面からも放熱を図ることができる。また、リードフレーム4をヒートスプレッダに摩擦攪拌接合するため、半導体チップ3へのダメージを回避することができる。
なお、ヒートスプレッダの材質としては、リードフレームの材料である銅やアルミニウムに比べて熱膨張係数が半導体チップに近いモリブデンやタングステンなどが好適である。熱膨張係数や融点などの違いから、モリブデンやタングステンと銅やアルミニウムとを接合するのは難しいが、摩擦攪拌接合法によれば良好な接合が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例による半導体装置の構成図で、(a)は半導体装置全体の組立構造図、(b),(c)はそれぞれ異なる形状の回転ツールを使ってリードフレームを接合相手部材に摩擦攪拌接合した状態を模式的に表す接合部の拡大断面図
【図2】図1におけるリードフレームのスポット接合状態を表す斜視図
【図3】リードフレームのスポット接合部分をアルミ材で形成した応用実施例の構造図で、(a)はリードフレームの斜視図、(b)は(a)の断面図、(c),(d)はそれぞれ(a)とは別な応用実施例の断面図
【図4】リードフレームのスポット接合部分に凹状窪みを形成した応用実施例の構造図で、(a)はリードフレームの斜視図(b)は(a)の断面図
【図5】リードフレームの接合脚片に応力緩和ホールを形成した応用実施例の構造図で、(a)はリードフレームの斜視図、(b)は(a)の断面図
【図6】本発明の実施例によるスポット摩擦攪拌接合装置の略示構成図
【図7】リードフレームを半田接合した従来における半導体装置の組立構造図
【符号の説明】
【0026】
2 絶縁基板
2a セラミック基板
2b 導体パターン
3 半導体チップ
3a 金属膜
4,5 リードフレーム
4a,5a 接合脚片
5b 凹状窪み
5c 応力緩和ホール
7 回転ツール
8 摩擦攪拌接合部
9 スポット接合部
10 アルミ材
11 スポット摩擦攪拌接合装置
11c 押え込み脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、該絶縁基板にマウントした半導体チップと、絶縁基板の導体パターン,半導体チップの上面電極,半導体チップの上面電極に接合されたヒートスプレッダの上面のいずれかに接合したリードフレームを有し、該リードフレームの端部に形成した接合脚片を接合相手である前記絶縁基板の導体パターン,半導体チップの上面側電極面にメタライズした金属膜,またはヒートスプレッダに重ね合わせ、その上から回転ツールを押し込んでリードフレーム/絶縁基板の導体パターン間,リードフレーム/半導体チップの金属膜間を摩擦攪拌接合法によりスポット接合した半導体装置において、
前記接合脚片におけるスポット接合部の厚さを500μm以下に定めたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、リードフレームを接合する絶縁基板の導体パターンの厚さを0.5〜3mmに定めたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、リードフレームを接合する半導体チップの電極面に形成した金属膜の厚さを30μm以上に定めたことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、銅材のリードフレームに対し、少なくとも接合脚片のスポット接合部をアルミ材で形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、板厚が0.5〜1.5mmであるリードフレームの接合脚片のスポット接合部に、肉厚30〜200μmを残してその上面側に凹状の窪みを形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、リードフレームの接合ツールとして先端径が0.5〜2mmの回転ツールを使用し、接合脚片の複数箇所をスポット接合したことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項5に記載の半導体装置において、リードフレームの接合脚片に対し、スポット接合部の地点から外れた部位に応力緩和ホールを形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記リードフレームを接合相手部材に摩擦攪拌接合する際に用いる装置であって、回転ツールに組み合わせて、リードフレームの接合脚片を所定の接合位置に押さえ込む支持機構を備えたことを特徴とするスポット摩擦攪拌接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−288095(P2007−288095A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116585(P2006−116585)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】