説明

半導体装置の不良解析方法および不良解析装置

【課題】半導体装置の不良解析において、プロービング対象へのアクセスとレイアウトデータ上の座標との関連付けを容易にして、解析のTATを短縮すると共に、オペレータへの負担を軽減することができる技術を提供する。
【解決手段】リアルタイムのSEM画像でのプロービング位置の確認については、SEM画像側の座標系とレイアウト画像側の座標系を対応させる座標系ロックを実施後、レイアウト座標系側でプロービング位置を指定した情報を、SEM画像側に表示し、それをマークとしてプロービング操作を実行するように解析システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の不良解析方法および不良解析装置に関し、特に電子ビーム吸収電流(EBAC)解析技術を用いた半導体装置の不良解析におけるプロービング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、半導体装置の不良解析においては、例えば、以下の技術が考えられる。
【0003】
LSI(Large Scale Integrated Circuit)の微細化・多層化に伴い、各種の手法を駆使してLSIの不良解析を進めることが必要となっている。この中の一つの手法として、電子ビーム吸収電流(以下、「EBAC(Electron Beam Absorbed Current)」という。)解析の活用が進んでいる。
【0004】
図1は、EBAC解析の原理を示す説明図である。EBAC解析は図1に示すように、電子ビーム101がLSI102に照射された場合、表面から電子が一定の深さまで侵入し、LSI102の配線103に吸収されて電流となる。この電流をプローブ(針)104で検出して電子ビーム101の走査と同期させた電流像として表示する原理で働く。この時、電流を検出している配線103にオープン不良がある場合には、オープン箇所から先に電子ビーム101が照射されても、電流が流れ込まず、手前に照射されれば電流が流れ込むため、オープン箇所を境に表示された画像にコントラストが発生し、その部分に不良があることが検出できる。また、解析対象の配線103に対してショートしている配線がある場合は、その配線上に電子ビームが照射されると電子が吸収されてショート部分を通してプローブ104に電流が流れ込むため、ショート相手の配線検出も可能である。
【0005】
図2(a)はオープン不良のEBAC解析例の画像、図2(b)はショート不良のEBAC解析例の画像を示す図である。実際の解析例では、図2の様にEBAC画像とレイアウト上での配線の画像とを比較・対照してオープン不良位置やショート相手配線を調査する。これによりオープン箇所、または、ショート相手を物理的に特定することが可能であり、半導体装置の不良解析で広く使われるようになってきている。
【0006】
これまでの手順では、解析対象の配線に集束イオンビームにより接続穴を穿孔して金属膜を埋め込んだパッドを作製し、そこにプロービングすることで電流を検出していた。直接、配線またはスルーホールにプロービングすることができれば、集束イオンビーム工程を省くことができ、解析TAT(Turn Around Time)を短縮することが可能となる。このようなプロービング精度を向上させた装置の場合、最近の大規模化したLSIに対して、レイアウトデータに基づいてプロービング対象の配線またはスルーホールに速やかにアクセスする機能が不可欠となる。この機能が無い場合には、微細で複雑なパターンの中の特定パターンを目視で探索することになるが、これはオペレータに多大の負担を強いる煩雑な作業となる。また、EBAC解析で検出したオープン位置またはショート相手のレイアウトデータ上での座標等を指定することは、次工程の物理解析、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope)やTEM(Transmission Electron Microscope)による形状観察や、AES(Auger Electron Spectroscopy)やEELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)による元素分析においても必要である。
【0007】
なお、このような半導体装置の不良解析に関する技術としては、例えば、特許文献1〜3に記載される技術などが挙げられる。特許文献1〜3には、レイアウトデータを表示し、それに基づいて解析位置へプローブ(針)をナビゲーション(誘導)する方法が開示されている。しかし、それぞれの技術では下記の部分が不十分であり、現在の解析において、操作性に支障があると考えられる。
【0008】
特許文献1には、レイアウトデータをウィンドウに表示し、その中の解析対象の配線をハイライトさせることで、プロービング位置を速やかに見出せる旨、記載されている。本システムはEB(Electron Beam)テスタのような解析装置を想定して記述されているが、SEM画像のように装置で実際に得られる画像と相関させる方式に関する記載は無く、SEM画像上でのオペレータアシスト機能には言及されていない。したがって、オペレータはレイアウト画像上のハイライトされた配線を見て、その配線に対応するSEM画像内の配線を捜す作業が必要となる。近年のLSIでは配線が込み合っており、この作業が実際には面倒であり、何らかのアシストが不可欠となっている。
【0009】
特許文献2では、レイアウト画像とSEM画像(EBテスタの場合)あるいはSIM(Scanning Ion Microscope)画像(FIB(Focused Ion Beam)加工装置の場合)が連動して視野や位置を互いに合わせるように操作するようにソフトウェアを組んでいる旨、記載されている。しかし、特許文献2においてもSEM画像上でのアシスト機能についての記載は無く、特許文献1と同様にオペレータに面倒な作業を要求するものとなっている。多数個のLSIの解析を進める場合には、さらにオペレータの負担は大きくなる。
【0010】
特許文献3は、上記と同様な荷電粒子線(電子ビーム/イオンビーム)装置でのレイアウトデータを用いた解析位置への速やかなアクセスを狙ったシステムを開示している。本文献ではレイアウト画像をSEM画像に重ねて表示することで、解析位置を明示する方式について記載がある。特許文献3の方式で解析位置へのアクセスは容易になっているが、特許文献1および特許文献2と同様に、オペレータアシストにもう一歩踏み込む必要がある。
【特許文献1】特開平7−240446号公報
【特許文献2】特開平8−054447号公報
【特許文献3】特開2005−210067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記のような半導体装置の不良解析の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0012】
例えば、上記の通り、従来の技術では解析対象へのプローブのアクセスに際して、レイアウト画像をハイライト表示させたり、重畳して表示させたりする方式が採用されている。しかし、実際にリアルタイムに観察しているSEM画像上でアクセスすべき対象を明示する方式については開示しておらず、アクセス位置に対してオペレータの眼と判断に依存する部分が大きい。このため、オペレータの熟練度によっては、プロービング位置を間違える場合もあり得る。少なくとも、プロービング位置を確認しながらの作業となって時間を要し、オペレータに負担を強いることになる。また、従来の技術として公開されている文献においては、解析装置で得られた結果をさらに解析することは想定されておらず、プロービングする所までしか開示されていない。
【0013】
一方、本発明が対象としているEBAC解析装置においては、解析対象の配線にアクセスし、電流の画像を取得した後には、その結果に従って、オープン不良であればその位置、ショート不良であればショート相手の配線を特定して、次の物理解析工程に解析すべき箇所を指示できるレイアウト座標データとする必要がある。これも解析装置とは別のレイアウトツールを駆使すれば、特定作業を進めることは可能であるが、EBAC画像とその場で関連付ける作業に比較すると時間と手間がかかり、非効率的である。
【0014】
そこで、本発明の目的は、半導体装置の不良解析において、プロービング対象へのアクセスとレイアウトデータ上の座標との関連付けを容易にして、解析のTATを短縮すると共に、オペレータへの負担を軽減することができる技術を提供することにある。
【0015】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される実施例のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
リアルタイムのSEM画像でのプロービング位置の確認については、SEM画像側の座標系とレイアウト画像側の座標系を対応させる座標系ロックを実施後、レイアウト座標系側でプロービング位置を指定した情報を、SEM画像側に表示し、それをマークとしてプロービング操作を実行するように解析システムを構成する。
【0018】
反応検出後のオープン位置特定とショート配線特定については、オープン位置はSEM画像側で指定した位置の座標を明示し、ショート配線は反応位置をSEM画像側で指定してその位置を通過する配線を候補として抽出する。複数反応位置指定でこれを繰り返してショート配線を絞り込む。解析システムにこの操作を実行する機能を装備する。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される実施例のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0020】
(1)プロービング支援のマークをリアルタイムSEM画像に表示することで、オペレータがそのマークに向けてプローブを接近させるだけでよく、プロービング操作が容易となる。このため、操作ミスを低減できると共に、操作の負担の軽減が図れる。
【0021】
(2)オープン位置の特定とそのレイアウト座標での表示がその場で可能になり、解析TATの短縮に効果がある。
【0022】
(3)ショート相手の配線の特定とそのレイアウト座標での表示がその場で可能になり、解析TATの短縮に効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図3は本発明の一実施の形態による半導体装置の不良解析装置の構成を示す外観図である。
【0025】
まず、図3により、本実施の形態による不良解析装置の構成の一例を説明する。本実施の形態の不良解析装置は、例えばEBAC解析装置とされ、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)301、SEMコントローラ302、SEMモニタ303、EBACアンプ304、EBACプロセッサ305、EBACプロセッサモニタ306、ステージコントローラ307、ステージモニタ308、プローバコントローラ309、ブローバモニタ310などから構成されている。EBACプロセッサ305とEBACプロセッサモニタ306、ステージコントローラ307およびステージモニタ308、プローバコントローラ309およびブローバモニタ310等は、パーソナルコンピュータなどが利用される。また、各構成要素は、RS232Cやイーサネット(登録商標)などの通信回線で接続されている。
【0026】
図1に示した解析の原理に基づき、実際の解析装置は図3に示すように、SEM301に真空内プロービング機構を装備し、プローバで検出した電流を増幅するEBACアンプ304を設けた構成となっている。このため、この装置のハードウェアとしてはSEM301、プローバ(SEM301内に装備)、EBACアンプ304、及び解析対象物を載せるステージ(SEM301内に装備)が連動したものになる。SEMコントローラ302、EBACプロセッサ305、ステージコントローラ307、プローバコントローラ309などに実装されるソフトウェアは、それらのハードウェアを制御するものとなる。さらに、レイアウトデータに基づいてプロービング対象を明示する、あるいは、オープン位置やショート配線のデータを抽出する機能を装備させるソフトウェアであるレイアウトビューア(図4の401)が必要になる。なお、本装置において、EBACアンプ304はハードウェアのみで構成されている。SEM301はさらに真空排気系を備えている。
【0027】
図4は、本実施の形態による不良解析装置におけるソフトウェア間のデータ授受経路を示す図である。本実施の形態による不良解析装置では、図4のようなデータの授受を通して、解析を支援するようにシステムが構成されている。なお、本システムは、装置開発上の制約によって、各コントローラを別々のパーソナルコンピュータとして製作したが、最終形態としては一つのパーソナルコンピュータ内のシステムとするのが望ましい。その場合には、パーソナルコンピュータ間の通信ではなく、モジュール間の通信、あるいは単に適当なファイルへのデータ書き込みと読み出しによる制御等、採り得る制御方式は種々考えられる。
【0028】
図5は、EBACプロセッサモニタ306に表示されるGUI画面の一例を示す図である。EBACプロセッサ305による解析支援システムのGUI(Graphical User Interface)は、例えば、図5のように設計される。ここでは各種の操作を実行できるが、主要な操作については、それぞれの領域区分に従って下記の操作を可能とするようにコーディングされている。
【0029】
(a)SEM画像表示(SEM/EBAC Image):格納されたSEM画像またはキャプチャーボードで取り込むリアルタイムなSEM画像を表示する。
【0030】
(b)レイアウト画像表示(Layout Image):レイアウトビューア401から取り込んだレイアウト画像を表示する。
【0031】
(c)画像調整(B/C):SEM画像とレイアウト画像のブライトネスとコントラストを調整する。
【0032】
(d)座標系ロック(Coordination Lock):SEM画像とレイアウト画像の適当な3つのマークの座標を順次指定することで、両座標系を相互対照可能とする。
【0033】
(e)画像操作(Image Display & Save):表示されているSEM画像とレイアウト画像に対して配線名やコメントを付加し、必要に応じて格納、読み込む。
【0034】
(f)格納SEM画像取込み(SEM Image Load):最新の格納されたSEM画像または指定したフォルダ内の画像を取り込む。
【0035】
(g)リアルタイムSEM画像取込み(SEM Image Capture):SEMのハード画像出力からキャプチャーボードを介してSEM画像を取り込む。
【0036】
(h)位置倍率調整(Site & FOV Adjust):互いの画像の位置と倍率を合わせる。
【0037】
(i)領域指定(Circle & Box Operation):SEM画像内にサークル(円)を書き込む。書き込まれたサークルはレイアウト画像上にも同じ位置、同じ大きさで表示される。または、レイアウト画像内にボックス(矩形)を書き込む。書き込まれたボックスはSEM画像上には同じ位置、同じ大きさで表示される。それらのサークルやボックスの情報を格納したり、読み出したり、一つずつ消したり、一度に全てを消す操作を実行できるボタンを設けている。
【0038】
(j)配線・位置指定(Net/Site Assign):プロービングする対象の配線を指定、あるいは、配線のレイアウト座標を指定する。指定に従って、レイアウトビューアの表示中心に対象配線・位置を表示する。ここでは、キー入力での指定、ファイル読み込みでの指定の両方が可能としている。
【0039】
(k)レイアウトビューア操作(CAD Image Operation):レイアウトビューアの画面操作(拡大・縮小・移動・全チップ表示・操作復帰)を実行する。
【0040】
(l)配線解析(Net Investigation):上記(i)領域指定で設定したサークルを通過する配線をレイアウトビューアで抽出し、その情報を解析することで、ショート相手の配線を特定する。
【0041】
図6は、EBAC解析の概略フローを示すフローチャートである。上記の各領域を設定したGUIを操作して実際の解析を進める場合、EBAC解析の概略フローは図6の通りであり、その詳細は下記の通りとなる。
【0042】
(1)座標系ロック(ステップS601)
座標系ロックでは、SEM画像とレイアウト画像の座標をそろえるため、座標変換係数を求める。座標系ロック操作部(d)を使用して、SEM画像上での位置設定が可能なマークと、その位置に対応するレイアウト画像上の位置とを交互に3点ずつ指定する。図7は、座標系ロック(ステップS601)の流れを示すフローチャートである。また、図8は、座標系ロック(ステップS601)の画像イメージを示す図である。図7がロック作業の流れ、図8が実際の画像のイメージである。この手順により、SEM画像座標系とレイアウト画像座標系の間の1次変換係数を求める。3点ロックによりチップが傾いている場合にも対処できる。座標系ロックが完了すれば、全ての座標をレイアウト座標系で取り扱うことが可能となる。
【0043】
(2)解析対象配線明示(ステップS602)
(j)配線・位置指定操作部に解析すべき配線または位置の情報をキー入力またはファイルで入力して、プルダウンメニューで複数の対象から所定の対象を選択できるようにする。対象を選択したら、ハイライト(Highlight)ボタンを押下する。この操作により、レイアウトビューア上で対象配線がハイライトされ、その画像がレイアウト画像表示部(b)に取り込まれ、表示される。
【0044】
図9は、解析対象配線明示(ステップS602)からEBAC画像解析(ステップS606)までの流れを示すフローチャートである。また、図10は、解析対象配線明示(ステップS602)からプロービング(ステップS604)までの画像イメージを示す図である。
【0045】
(3)SEM画像取得(ステップS603)
ハイライトした対象配線を表示したレイアウト画像表示部(b)のFOV(Field of View)はレイアウト画像取り込み時に認識可能であり、このFOVに一致または近く表示するSEMの倍率を設定する。また、対象配線の中心座標も取り込み可能であり、レイアウト座標をSEM座標に変換したステージ座標にステージを移動させる。この状態で、格納SEM画像取込み操作部(f)を操作してSEM画像表示部(a)にSEM画像を取り込む。これにより、レイアウト画像と同じ位置、同じ(または近い)倍率での画像が表示できる。
【0046】
(4)プロービング(ステップS604)
(4−1)プロービング位置設定
レイアウト画像上ではプロービングすべき位置が配線のハイライトまたは座標が画像中心に来ていることで認識可能であり、SEM画像でもオペレータが左右の画像を比較すれば、認識可能である。しかし、より確実にプロービングするために、マウスを操作してレイアウト画像中にプロービング位置を矩形でマーキングする。マーキングされた矩形はSEM画像上でも同じ位置に同じ寸法で表示される。
【0047】
(4−2)プロービング
リアルタイムSEM画像取込み操作部(g)を操作することで、SEMコントローラ302に格納されたSEM画像を取り込む。すなわち、EBACプロセッサ305に装備されたビデオキャプチャーボードを介して、SEMからハード的に出力されたNTSC信号を入力し、SEM画像表示部(a)にリアルタイムのSEM画像を表示する。この時、マーキングした矩形は、リアルタイムSEM画像の上の別層に表示したままとして、リアルタイムSEM画像表示中に同じ位置で表示している。
【0048】
図11は、プロービングの画像イメージを示す図である。上記の状態で、図11の様にプローバを矩形マークで示したプロービング位置へ接近させていく。その状態はリアルタイムSEM画像を表示しているので、刻々モニタ可能となっている。最終的にプローブをタッチダウン(対象箇所に接触)させた所で、プローブの移動を停止する。タッチダウンの判定にはパッド等の大きな目標に対してであれば、太いプローバを使用し、歪みゲージ等で接触検知をする場合もある。直接、配線あるいはスルーホールにタッチダウンする場合には、細いプローバを使用するために歪みゲージでの検知がほとんど不可能であるため、プローブ先端画像とSEM画像のコントラスト変化を観察してオペレータが判断する。
【0049】
(5)EBAC画像取得(ステップS605)
EBAC画像は、SEM画像において2次電子信号の代わりにプローブでの検出電流を入力して取得した画像である。読み込む画像はSEM画像と同様にSEMコントローラ302内の特定のフォルダに格納された画像となり、SEM画像表示部(a)に表示される。解析対象の配線のレイアウト上での設計形状に対して、オープン不良の場合には途中で配線の反応が途切れた形状を検出し、ショート不良の場合にはショート相手の配線の形状も検出することになる。
【0050】
図12は、EBAC画像解析の流れを示すフローチャートである。EBAC画像検出から解析までは図12の様な流れとなる。
【0051】
(6)EBAC画像解析(ステップS606)
オープン不良の場合の解析はオープン箇所の詳細解析となる。図13は、オープン不良解析の画像イメージを示す図である。図13の様にEBAC反応が途切れた部分を拡大し、対象配線のその位置にスルーホールが存在すれば、そのスルーホールの断線/高抵抗の可能性が高く、次工程での物理解析ではスルーホールの断面観察が一般的な手順となる。一方、配線の途中でEBAC反応が途切れている場合は配線が異物起因で断線/高抵抗となっている可能性が高く、上層から対象配線上まで膜を剥がし、平面的に対象配線を観察することが多い。どちらにせよ、レイアウト画像を拡大して詳細にレイアウトを調査して上で、観察すべきレイアウト座標を指定することがオープン不良での解析となる。
【0052】
一方、ショート不良の場合、EBAC画像上にショート相手の配線の形状は観察できているが、その配線がレイアウト画像上のどの配線に対応するかは不明である。したがって、まず配線の特定をする必要がある。
【0053】
図14は、ショート不良解析の画像イメージを示す図である。ショート不良解析の手順の画像イメージは図14の通りであり、このために使用するのが領域指定操作部(i)となる。ここでは、EBAC画像上で観察できるショート相手の配線上の適当な位置をオペレータが選択して、マウスを使用してサークル(円)を描画する。描画するサークルの数は通常2〜3個で十分であるが、その数で配線を絞り込めない場合にはサークルを追加することもある。あまり大きなサークルを描画するとその中に含まれる配線数が多くなり、解析に時間を要する場合もあるため、ステージの停止精度を考慮して適当な大きさで描画する。また、描画位置については特に制限は無く、反応している配線上のある程度離れた適当な位置を選択すればよい。
【0054】
この後の解析としては、一度に設定したサークルを全て通過する配線を抽出してもよい。その操作を実行すると時間を要するような場合、つまり、配線の抽出を配線名で抽出するのではなく、配線経路を一つの配線毎に追跡して抽出する方法の場合、抽出を開始すると結果が出るまでに時間を要することがある。その場合、必要以上のサークルを設定していることもあり得る。そこで、サークル1個毎に解析を進める方式を採ることが多い。
【0055】
図15は、ショート相手配線の絞込み手順を示す説明図である。図15の様に、最初に設定したサークルを通過する配線をリストアップした後、次のサークルを通過する配線をリストアップし、その共通の配線を残す。あるいは、リストのトップに配置する方法で、配線解析操作部(l)を使用する。この操作を設定したサークルについて、順次繰り返す。その場合、オペレータは各段階で配線が何本まで絞られたかを確認することができ、オペレータが適当と判断する本数まで絞れた所で次の解析に入るか否かを選択する。
【0056】
さらに、ここまではEBAC解析装置のようなハード的な解析について述べてきたが、テスタのフェイルログを解釈することで不良の可能性のある配線あるいはセルを指摘するソフト的な不良解析手法も近年発達してきており、このようなソフト的な解析の結果を、上記の操作である程度本数が絞り込まれたEBAC解析の結果と対照させることで、ショート相手の配線を最終的に1本に絞り込むことが可能となる。
【0057】
このような操作を実施したことで絞り込まれたショート相手の配線と元々対象であった配線との関係を調査するのが次の段階となる。配線が併走していても、層が異なればショートの確率はほとんど無い。また、配線が上下で交差している場合も、そこでショートする確率は低い。そこで捜す対象は同じ層で最も近接している箇所の探索となる。実際、たまたま近接している1点があり、そこでショートを起こすこともあるが、最も疑わしいのは配線が同じ層で併走している部分である。もし、1点だけが最も近接していれば、その箇所でのショートの確率が高いため、物理解析では上層膜を剥がして、その最近接部分を観察する。
【0058】
一方、配線の併走部の場合には、EBAC解析ではどの部分でショートしているかまでを検出できないため、別の解析装置でショート位置を特定することになる。この時、使用する解析手法は一般的にはOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance CHange)解析である。OBIRCHは、電子−正孔対を発生させない波長1.3μmの赤外レーザを、電流を流している配線に照射し、加熱によって変化する配線抵抗を2次元画像とすることで配線の流れている経路を可視化する方法である。解析対象配線とショート相手の配線にプロービングして電流を流してOBIRCH解析を実行すると、ショート箇所の抵抗が高く、熱に反応し易い場合には、ショート箇所で強いOBIRCH反応を検出できる。もし、渡り廊下のような配線のショートであった場合には、配線経路が反応するが、これはプロービング位置を適当に選ぶことで両配線のOBIRCH反応の折り返し点を確認し、ショート位置を特定することが可能となる。
【0059】
上記の解析手順を実行するためのシステムとしてEBACプロセッサ305を運用している。上記では細かな調整は記載していないが、SEM301、プローバ、ステージ自身の調整以外、連動のための各種調整については、上記に記載した各操作部により可能となっている。
【0060】
したがって、本実施の形態による半導体装置の不良解析装置および不良解析方法によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0061】
上記の解析手順で解析を進めるにあたり、EBACプロセッサのようなシステムを組んだことで、SEM画像の座標系とレイアウトの座標系とを容易に結合し、レイアウト座標系に従って解析対象へ速やかにアクセスできる。
【0062】
さらに、解析対象配線にレイアウト画像上でハイライトされた配線を基準にマークを付け、そのマークをSEM画像に反映させた上で、リアルタイムSEM画像をモニタしながらプロービングを行える。すなわち、プロービング支援のマークをリアルタイムSEM画像に表示することで、オペレータがそのマークに向けてプローバを接近させるだけでよく、プロービング操作が容易となる。このため、操作ミスを低減できると共に、必ずしも明示されていない対象と他の配線またはスルーホールとを両パターンを注視して区別し、それに注意を集中してプロービングする必要が無いため、操作の負担の軽減が図れる。
【0063】
プロービング後はEBAC反応を取得し、取得したEBAC反応に基づいて、オープン位置とその位置でのレイアウト構造を調査する。または、ショート相手の配線を、EBAC反応を通過する共通の配線として特定して、詳細にレイアウト構造を調査することが、解析時に可能となる。
【0064】
これらの機能を装備することによって、解析現場でのレイアウト調査までを可能とし、解析のTAT短縮が図れる。また、解析支援ソフトウェアとしてオペレータの負担を軽減できると共に、別種のCADツール操作方法に習熟する必要が無く、レイアウト調査が可能となるため、特殊技能を持つ技術者で無くても、一定のレベルの解析結果を提示することが可能となり、解析オペレータの幅を広げることもできる。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、前記実施の形態においては、EBAC解析を利用した不良解析について説明したが、これに限定されるものではなく、電子ビーム、荷電粒子等を利用した他の不良解析についても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体装置の不良解析における電子ビームを応用した不良解析装置に適用できる。さらに、荷電粒子としては集束イオンビーム装置も同様にプロービングし、反応を検出するものがあり、その装置にも応用展開が可能である。また、単に反応から配線を絞り込むことを考慮すると、一般的な不良解析手法であり、配線を抽出するような不良解析装置一般への展開の可能性もある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】EBAC解析の原理を示す説明図である。
【図2】(a)はオープン不良のEBAC解析例の画像、(b)はショート不良のEBAC解析例の画像を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態による半導体装置の不良解析装置の構成を示す外観図である。
【図4】本発明の一実施の形態による不良解析装置におけるソフトウェア間のデータ授受経路を示す図である。
【図5】EBACプロセッサモニタに表示されるGUI画面の一例を示す図である。
【図6】EBAC解析の概略フローを示すフローチャートである。
【図7】座標系ロックの流れを示すフローチャートである。
【図8】座標系ロックの画像イメージを示す図である。
【図9】解析対象配線明示からEBAC画像解析までの流れを示すフローチャートである。
【図10】解析対象配線明示からプロービングまでの画像イメージを示す図である。
【図11】プロービングの画像イメージを示す図である。
【図12】EBAC画像解析の流れを示すフローチャートである。
【図13】オープン不良解析の画像イメージを示す図である。
【図14】ショート不良解析の画像イメージを示す図である。
【図15】ショート相手配線の絞込み手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
101 電子ビーム
102 LSI
103 配線
104,105 プローブ
106 2次電子検出器
107,304 EBACアンプ
108 パッド
301 SEM
302 SEMコントローラ
303 SEMモニタ
305 EBACプロセッサ
306 EBACプロセッサモニタ
307 ステージコントローラ
308 ステージモニタ
309 プローバコントローラ
310 ブローバモニタ
401 レイアウトビューア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEM機構と、前記SEM機構で取得したSEM画像を表示するSEM画像表示手段と、解析対象のレイアウト画像を表示するレイアウト画像表示手段と、前記解析対象にプローブを接触させるプロービング機構と、を備えた解析装置における不良解析方法であって、
前記SEM画像の座標系と前記レイアウト画像の座標系とをロックし、
前記レイアウト画像表示手段が、前記レイアウト画像に第1のマークを描画し、
前記SEM画像表示手段が、前記第1のマークと略同一寸法の第2のマークを、前記SEM画像の対応する位置に描画し、
前記第2のマークを基準に解析対象配線にプロービングすることを特徴とする半導体装置の不良解析方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の不良解析方法において、
前記プロービングの際、前記SEM画像を、キャプチャーボードを介してリアルタイムでモニタし、
前記モニタの際、前記第2のマークは、リアルタイムSEM画像とは別の表示層に設定されて常に上層に表示されることを特徴とする半導体装置の不良解析方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の不良解析方法において、
前記SEM画像表示手段が、前記SEM画像に複数の第3のマークを描画し、
前記レイアウト画像表示手段が、前記第3のマークと略同一寸法の第4のマークを、前記レイアウト画像の対応する位置に描画し、
前記第4のマークを通過する配線を解析抽出して格納し、順次前記第4のマークの指定を進めることで、共通の配線を呼び出し可能なリストの上位にソートして表示することを特徴とする半導体装置の不良解析方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の不良解析方法において、
前記SEM画像の座標系と前記レイアウト画像の座標系とのロック、解析対象の配線および座標の指示、前記解析対象のハイライト、前記解析対象のマーク付け、前記解析対象へのプロービング、前記プロービングによる電流画像の取得、取得画像の解析という一連の操作を実行することを特徴とする半導体装置の不良解析方法。
【請求項5】
コンピュータと、
前記コンピュータに、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の不良解析方法を実行させるための解析支援プログラムと、
SEM機構と、
真空内プロービング機構と、
解析対象物を載せるステージと、
真空排気系と、
SEM機構を制御するSEMコントローラと、を有することを特徴とする半導体装置の不良解析装置。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−117774(P2009−117774A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292371(P2007−292371)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】