説明

半導体装置の製造方法、半導体電子部品の製造方法、および半導体電子部品

【課題】半導体装置の製造技術において使用する吸着治具を、300℃以上の熱に耐えられるようにする。
【解決手段】コレットホルダ61に設けられたコレット60等の吸着治具を、高耐熱性とする。かかる構成を採用することで、これまでは金錫共晶接合等で使用される温度では、熱劣化等を起こしていたコレット60を、熱劣化等を起こさずに使用することができる。かかる高耐熱性には、特定の高耐熱性シリコーン樹脂を使用すればよい。例えば、株式会社ADEKAのFX−T154等を例として挙げることができる。かかる高耐熱性シリコーン樹脂は、さらに、ショアA硬度が10以上90以下の性質のものを使用すればよい。さらには、導電剤を添加して、高耐熱性シリコーン樹脂に適度な導電性を付与しても構わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置等を含む半導体電子部品の技術に関し、特に半導体チップ等の電子部品を吸着する際、または加圧する際に適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
以下に説明する技術は、本発明を完成するに際し、本発明者によって検討されたものであり、その概要は次のとおりである。
【0003】
半導体装置の製造分野では、表面に突起電極(バンプと呼ぶ場合もある)を設けた半導体チップを、テープ基材上に設けたリードとはんだ接続する技術が知られている。例えば、液晶駆動用のLCD(Liquied Crystal Display)ドライバ等では、かかる方式の接続技術が使われている。液晶パネルと、駆動回路を形成したプリント基板との間を、TCP(Tape Carrier Package)構造のLCDドライバを用いて接続している。かかるTCP構造で、上記LCDドライバがテープ上に設けたリードとはんだ接続されているのである。
【0004】
例えば、かかる接続に際しては、LCDドライバに構成した半導体チップをコレット等に構成した吸着治具で、予め加熱された加熱ステージまで搬送する。併せて、TAB(Tape Automated Bonding)テープに設けたリードが搬送され、半導体チップのバンプ位置に合わせられる。その状態で、TABテープの背面から加熱加圧治具を押し当てて、半導体チップのバンプにリードを加熱加圧して接続を行っている。
【0005】
かかる搬送に際しては、吸着治具のコレットに熱が伝わるため、コレット自体の耐熱性が要求される。そのため、コレットの材質には、耐熱性が考慮された素材が使われている。例えは、特許文献1では、新規なポリイミド樹脂成型体が、コレットチャックに使用できることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−129001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記吸着治具のコレットに関しては、次のような課題があることを本発明者は見出した。すなわち、これまでのコレットでは、一般的な耐熱ゴムが使用されていた。耐熱温度が約300℃以下のフッ素系ゴムである。しかし、半導体組立プロセスによっては、例えば300℃を超える温度で使用される場合もあり、これまでのコレットの使用では、熱劣化等を引き起こすことが指摘されていた。
【0007】
例えば、現在、使用されているコレットには、耐熱温度が260℃のフッ素系ゴムが使用されている。そのため、組立プロセスが330℃以上の温度になる場合には、基本的にはかかるコレットは使用できないものである。しかし、これまでは、半導体装置の製造に際しては、耐熱温度が330℃以上の最適なコレット素材が見つからず、上記高温に長時間連続してさらされるのではないため、やむなく上記のようなフッ素系ゴムが使用されていた。
【0008】
かかるフッ素系ゴムは、上述のように、耐熱温度を超える温度で使用されると、長時間連続してその温度にさらされなくても、次第に熱劣化を引き起こす。その結果、コレットの一部が破損して脱落したり、あるいは溶融して吸着対象に転写したり等、種々の不具合を発生させることとなった。
【0009】
特に、半導体装置の製造等では、そのクリーンな環境下での製造であるだけに、その問題は大きい。ゴムコレットの熱劣化等により貼付付着異物や脱落異物が発生し、その対応に追われるのが現状である。例えば、LCDドライバの組立時のコレット材の異物付着により、マイグレーション劣化不良を発生させる等の問題が指摘されている。
【0010】
半導体装置の製造に際しての使用では、コレットの材質としては、上述の如く、一方では高耐熱性が重要であるが、他方では素材の硬さも重要である。例えば、コレットで吸着する対象の半導体チップを傷つけないようにするためである。すなわち、表面吸着におけるソフトハンドリングが求められているのである。かかる両方の性質を考慮した場合には、現状では、軟質フッ素系ゴムコレットの使用が妥当とされていたのである。
【0011】
しかし、本発明者は、これまでの吸着治具としてのコレットで妥協するのではなく、今まで使用されていた軟質系フッ素ゴムコレット以外の材質の検討が急務であると考えた。
【0012】
尚、前記特許文献1に示すようなポリイミド樹脂成型体は、フッ素系ゴムに比べ、高耐熱性を有するものの、強靭性を有する。つまり、素材の硬さがフッ素系ゴムよりも硬く、クッション性を求めるショア硬度が高い(例えば、100以上)。そのため、半導体チップを傷つける虞があり、コレットに適用することはあまり好ましくない。
【0013】
本発明の目的は、330℃以上の耐熱性を有する吸着治具の技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
すなわち、半導体チップ等の電子部品の吸着を、耐熱温度が330℃以上のシリコーン樹脂製の吸着治具を用いて行う。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
半導体チップを含めた電子部品の吸着を、耐熱温度が330℃以上のシリコーン樹脂製の吸着治具を用いて行う。それにより、例えば、共晶接合を用いたボンディング時の吸着治具のコレットの熱劣化を防止して、半導体チップの異物付着等による障害を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法における半導体チップを模式的に示す要部平面図である。図2は、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を模式的に示す要部断面図である。図3は、本発明の一実施の形態であるコレットを用いて半導体装置の製造を行っている様子を模式的に示す説明図である。図4は、本発明の一実施の形態であるコレットを用いて搬送した半導体チップのリードボンディングの様子を模式的に示す説明図である。図5は、本発明の一実施の形態であるコレットを用いた半導体装置の製造方法の工程手順を示すフロー図である。図6は、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法により製造された半導体装置をモジュールに組み立てた様子を模式的に示す説明図である。図7は、本発明に係わるコレットを模式的に示す断面図である。
【0021】
本発明は、半導体装置、あるいはより広くは半導体電子部品の技術に関するものである。例えば、半導体装置の製造に際して、半導体チップの表面に設けたバンプ等の突起電極で接続を形成する際に、共晶接合等の高温雰囲気での接続に適用して有効な技術である。かかるバンプ等の突起電極の接続は、例えば、TABテープ上に設けたインナーリード等への接続が挙げられる。また、かかる半導体チップとしては、例えば、LCDドライバ等が挙げられる。
【0022】
かかる接続に際しては、半導体チップはコレット等の吸着治具で吸着され、ボンディング工程に搬送される。ボンディング工程では、半導体チップの表面に設けたバンプ等の突起電極を用いて、例えば、金錫(Au/Sn)共晶接合により接続が行われる。そのため、ボンディング工程では、かかる接続部分を330℃以上に加熱することが求められる。例えば、350℃に加熱して、金錫共晶接合を行っている。
【0023】
上記の如く、金錫共晶接合では、必要な温度加熱は330℃以上である。例えば、LCDドライバのリードボンディング時における金錫共晶接合では、350℃の温度が適用される。すなわち、かかるリードボンディング工程では、コレットに吸着されたLCDドライバ等の半導体チップは、予め350℃に加熱されて温められた治具としての加熱ステージ上に載置されることとなる。載置された半導体チップは、そのバンプ上に、TABテープ上に設けられたインナーリードが位置合わせさせられ、やはり治具である加熱加圧ツールで押圧されてその接続が金錫共晶接合で行われる。
【0024】
かかるコレットには、これまで使用されていた軟質フッ素系ゴムとは異なり、耐熱温度が330℃以上の高耐熱性のシリコーン系樹脂が用いられている。そのため、耐熱温度を330℃以上に設定することで、330℃以上の温度にさらされても、熱劣化を起こさないコレットにすることができるのである。かかる耐熱温度が330℃以上のコレットの提供は、半導体装置を含めた半導体電子部品の製造においては初めてである。
【0025】
尚、本発明に係るコレットは、例えば、LCDドライバ、PDPドライバ、プリンタ用ドライバ、X線モニタ用ドライバ、CMOSロジック等のTCP構造、COF構造、T−BGA製品のAu/Sn共晶接続、またはAu/Au接続プロセスのフェイスアップ方式組立、フェイスダウン方式組立等に適用できる。以下、本発明を、実施の形態により詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
本発明に係る半導体装置Aには、半導体チップ10として、例えば図1にその平面構成を模式的に示すLCDドライバ10aが用いられている。LCDドライバ10aに形成された半導体チップ10は、図2に示すように、TABテープ20a等の基材テープ20側に接続されて、半導体装置Aが構成されている。接続に際しては、半導体チップ10の表面上に設けられたバンプ30a等に構成された突起電極30が用いられている。バンプ30aは、基材テープ20上に設けられたインナーリード40aと接続されることで、基材テープ20側に半導体チップ10が設けられることとなる。
【0027】
かかる接続には、金錫(Au/Sn)共晶接合が使用されている。すなわち、LCDドライバ10a上に設けたバンプ30aを金(Au)で形成し、バンプ30aと接続させる側のインナーリード40a部を銅板の錫(Sn)メッキした構成になっている。かかるバンプ30aと、インナーリード40aとを加圧接触させて、その状態で温度を350℃に維持して、金錫共晶接合で接続している。このように金錫共晶接合で接続した後は、ほぼ全体を接合部分も含めて保護するように封止樹脂50で封止されている。
【0028】
かかる半導体装置Aは、例えば、フェイスアップ方式で組立て製造することができる。すなわち、ウエハ上に形成された多数の半導体チップ10は、ウエハの状態で複数のバンプ30aを各半導体チップ10に対して形成した後に、ダイシングされて個々のLCDドライバ10aに構成された半導体チップ10となる。例えば、図3に示すように、ダイシングテープ100上に、複数の半導体チップ10が個片化されている。かかる個片化された半導体チップ10は、それぞれコレット60で吸着してピックアップされ、リードボンディング工程に供給される。
【0029】
図3では、かかるコレットホルダ61に支持されたコレット60の動きを矢印で示した。すなわち、矢印a1に示すように、コレット60は吸着してピックアップしようとする当該半導体チップ10の真上の所定位置から下降して、半導体チップ10を吸着する。コレット60に吸着された半導体チップ10は、矢印b1に示すように、ピックアップされて所定位置まで上昇する。その後、矢印c1に示すように、コレット60は半導体チップ10を吸着保持した状態で横方向に移動して、リードボンディング工程に移る。
【0030】
リードボンディング工程では、コレット60は、加熱治具200としての加熱ステージ200aの上方の所定位置に移動する。次に、図3の矢印d1に示すように、コレット60は半導体チップ10を保持した状態で下降し、加熱ステージ200a上の所定位置に半導体チップ10を置く。かかる半導体チップ10を置く工程は、コレット60が保持していた半導体チップ10を加熱ステージ200a上の所定位置に載置して、その後、半導体チップ10の吸着を解除して離すことで行われる。
【0031】
このようにして、半導体チップ10の吸着を解除したコレット60は、矢印e1のように、所定の上方位置まで上昇し、その後矢印f1のように横方向に移動する。横方向に移動したコレット60は、次の半導体チップ10の吸着ピックアップに備える。
【0032】
上記リードボンディング工程では、例えば、図4に示すように、加熱ステージ200a上にコレット60により搬送されてきた半導体チップ10が載置されている。フェイスアップの状態で載置された半導体チップ10には、図4に模式的に示すように、突起電極30としてのバンプ30aが設けられている。
【0033】
一方、加熱ステージ200aに半導体チップ10が載置されると、半導体チップ10の上方には、バンプ30aから所定高さ離されて、インナーリード40aが搬送されてくる。かかるインナーリード40aは、TABテープ20a上に設けられている。図示はしないが、かかるTABテープ20aは、その一端側が送り出し用のリールに巻かれ、他端側が巻き取り用のリールに巻かれている。TABテープ20aを必要量巻き取り用リールで巻き取ることにより、TABテープ上に設けられたインナーリード40a部分を所要量引き出し、半導体チップ10のバンプ30aの位置に合わせて搬送するのである。
【0034】
このようにして、TABテープ20aに設けたインナーリード40aが、バンプ30aと接続できる位置に搬送される。その状態で、TABテープ20aの背面側から、やはり治具である加熱加圧ツール300が、図4に示す矢印のように下降する。加熱加圧ツール300で背面のTABテープ20aが押圧されたインナーリード40aは、加熱ステージ200a上に載置された半導体チップ10のバンプ30aと合わせられる。インナーリード40aとバンプ30aとは、加熱加圧ツール300と加熱ステージ200aとの間で合わせられて、その状態で350℃の温度で所定時間加熱されることで接続が完成させられるのである。かかる接続は、例えば、金錫共晶接合で行われるのである。
【0035】
かかる金錫共晶接合に必要な温度は、前記の如く、加熱ステージ200aを予め3500℃以上に温めておくことで、必要な温度に短時間で達するよう熱供給が行われるのである。
【0036】
一方、予め350℃以上に温められている加熱ステージ200aに半導体チップ10を載置したコレット60には、薄い半導体チップ10を通して、加熱ステージ200aの熱が瞬時に伝えられることとなる。そのため、耐熱温度が300℃以下の、例えば260℃の軟質のフッ素系ゴムを用いていたこれまでのコレットでは、使用するうちに段々と熱劣化が生じたのである。耐熱温度が例えば300℃以下と低いために、かかるリードボンディング工程への半導体チップの搬送を繰り返すうちに、次第にコレットが熱劣化を起こすのである。熱劣化を起こしたコレットは、その一部が破損等し、破損した屑は、半導体チップ10に付着して、マイグレーション不良等の原因となった。
【0037】
一方、かかるリードボンディング工程への搬送を繰り返すコレットでは、上記耐熱性と共に、併せて、半導体チップを傷つけない柔らかさも求められていた。これまでのコレットとしては、一般には、かかる条件を満たすものとして、耐熱性のフッ素系ゴムの内、軟質系のものが使用されていた。しかし、基本的には、上記の如く耐熱性が300℃以下であるため、上記のような不良原因を引き起こしていた。
【0038】
本発明に係わるコレット60では、その材質に、特定の性質を有する高耐熱シリコーン系樹脂を使用することで、これまでのとは異なり、加熱温度が350℃でも、熱劣化を防ぐことができる。かかるコレット60の材質は、元々は、プラスチックレンズ、プラスチックファイバ、封止剤として開発されたものである。コレット等とは全く異なる分野での使用目的のために開発されたものである。その耐熱性に着目して開発されたものではなかった。
【0039】
しかし、本発明者が、初めてコレットに使用できることを見出したのである。かかるシリコーン樹脂としては、株式会社ADEKAの高耐熱シリコーン系樹脂のFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等で特定される樹脂である。あるいは、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等と同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂であっても、勿論構わない。
【0040】
かかる樹脂を半導体チップ10の移送用のコレット60に適用することで、リードボンディング時の熱の影響による劣化異物、及び貼付異物の発生がないクリーンな環境での搬送、組立が可能となることを、本発明者は見出したのである。かかる樹脂を用いることで、コレット60の耐熱温度を330℃以上に引き上げることができた。かかるシリコーン樹脂は、現在のところ、耐熱温度を550℃まで上げることができる。
【0041】
併せて、かかる素材は、吸着する半導体チップ10を傷つけない程度に十分な柔らかさも備えている。柔らかさに関しては、ショアA硬度が10以上、90以下の範囲内のものを選定すればよい。
【0042】
因みに、上記説明の吸着治具としてのコレットを用いた半導体装置の製造手順は、図5に示すフロー図のようになる。すなわち、ステップS100で個片化した半導体チップを準備し、併せて、ステップ200でTABテープ上に設けたインナーリードを準備する。ステップS110で、個片化した半導体チップを、耐熱温度が330℃以上の例えば高耐熱性シリコーン樹脂製のコレットで吸着して搬送する。ステップS120で、コレットで吸着保持した半導体チップを加熱ステージ上に載置する。ステップS130で、加熱ステージ上の半導体チップのバンプに、先にステップS200で準備したインナーリードを搬送して位置合わせする。
【0043】
ステップS140で、インナーリードを設けたTABテープの背面から加熱加圧ツールを押圧する。押圧して、加熱加圧ツールと加熱ステージとの間で、バンプとインナーリードとを加熱加圧接続させる。このようにして、半導体チップのバンプとインナーリードとを金錫共晶接合でリードボンディングする。その後、ステップS150で、樹脂封止して、半導体装置Aを製造する。
【0044】
かかるLCDドライバ10aに構成された半導体チップ10を有する半導体装置Aは、例えば、図6に示すように、電子部品として適宜に液晶パネル等に組み付けられ、液晶モジュールが構成される。すなわち、半導体装置Aの一方のインナーリード40aは、その他端のアウターリード側が、はんだ400aで、LCDドライバ10aを制御するコントローラや、その他の電子部品等が組み込まれたプリント基板400に接続されている。
【0045】
さらに、別のインナーリード40aは、その他端側が、例えば間に液晶層をはさみ込んだガラス基板500からなるセル(液晶パネル)に、異方性導電膜500aで接続されている。より詳しくは、ガラス基板500上に設けられた透明電極(ITO)に、異方性導電膜500aを用いてインナーリード40aの他端側が接続されているのである。
【0046】
かかる半導体装置Aを製造するために半導体チップ10を吸着した本発明に係るコレット60は、図7に模式的に示すような概略構成を有している。すなわち、コレット60の本体は、図示はしない吸引装置により、本体を支持するコレットホルダ61を介して真空引きが行えるようになっている。内部が真空引きされて負圧になったコレット60は、吸着面60a側で半導体チップ10を吸着できるようになっている。コレット60の周囲面60bには負圧が伝わらないように、周囲面60b上をコーティング材等で被覆する等して吸引漏れが発生しないように構成されている。
【0047】
かかるコレット60には、耐熱温度が330℃以上で、プラスチックレンズ、プラスチックファイバ、封止剤として開発された株式会社ADEKAの高耐熱シリコーン系樹脂(FX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等)を用いた。尚、かかる高耐熱性シリコーン樹脂としては、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等と同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂であっても構わない。
【0048】
そのため、コレット60を用いて半導体チップ10を前記の如く、インナーリードボンディング工程へ搬送するに際して、加熱ステージ200aよりの温度の影響を受けることがない。すなわち、半導体等組立治工具の移送コレットに、上記のような高耐熱シリコーン系樹脂を初めて適用することにより、ボンディング時の熱影響による劣化異物及び貼付異物の発生が無いクリーンな環境での搬送および組立が可能となる。
【0049】
また、かかるコレット60を使用することで、半導体組立プロセスの対応温度範囲を330℃以上に拡大することもできるのである。基本的には、かかる高耐熱性シリコーン樹脂は、現状では耐熱温度が550℃まで達成されているので、かかる高耐熱性シリコーン樹脂をコレット材料として使用することで、コレット搬送を伴う半導体組立プロセスの対応温度を550℃まで上げることが可能となる。
【0050】
これまで一般的に使用されているコレットは、その耐熱温度が300℃以下、例えば260℃のフッ素系ゴム等が使用されていた。そのため、かかるフッ素系ゴムを用いたコレットでは、上記の如く350℃もの高温で使用すると吸着対象の半導体チップ等の接触物に溶融貼付したり、劣化して破片が脱落したり等、吸着対象の半導体チップ等から見ると異物付着の原因であった。しかし、上記の如く、株式会社ADEKAのFX−350N等の高耐熱性シリコーン樹脂は、その耐熱温度が550℃もあり、350℃レベルでの半導体の組立プロセスでの使用では温度劣化等の影響を受ける心配がないのである。
【0051】
(実施の形態2)
前記実施の形態では、図7に示すように、コレット60を前記高耐熱性シリコーン樹脂で構成した。しかし、半導体チップの搬送に際しての熱の影響が300℃以上となる範囲にのみ前記高耐熱性シリコーン樹脂を用いるようにしても構わない。すなわち、図8(a)に示すように、コレット60を、非高耐熱性シリコーン樹脂部分62と、高耐熱性シリコーン樹脂部分63とから構成しても構わない。
【0052】
例えば、図8(a)に示すように、コレットホルダ61で非高耐熱性シリコーン樹脂部分62を支持させる。さらに、この非高耐熱性シリコーン樹脂部分62に、高耐熱性シリコーン樹脂部分63を付加する構成にしておけばよい。半導体チップ10の吸着面側に、高耐熱性シリコーン樹脂部分63が設けられている。
【0053】
かかる構成では、図示しない吸引装置で真空引きがなされ、コレットホルダ61を介して非高耐熱性シリコーン樹脂部分62が負圧にされる。さらに、この負圧が高耐熱性シリコーン樹脂部分63の吸着表面側にも伝えられるようになっている。かかる負圧により、吸着面63aで、半導体チップ10を吸着するのである。併せて、非高耐熱性シリコーン樹脂部分62の周囲面62b、高耐熱性シリコーン樹脂63の周囲面63bは、前記構成と同様に、負圧が伝わらないように構成され、吸引漏れが発生しないようになっている。
【0054】
かかる高耐熱性シリコーン樹脂部分63には、前記実施の形態1で述べたように、例えば、株式会社ADEKAの高耐熱シリコーン系樹脂のFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂を使用すればよい。また、非高耐熱性シリコーン樹脂部分62には、例えば、従前の耐熱温度が300℃以下のフッ素系ゴム等を使用すればよい。
【0055】
かかる構成を採用することで、コレット60で吸着した半導体チップを、予め例えば350℃以上に加熱してある加熱ステージ上に搬送載置する動作を繰り返しても、支障が発生しない。すなわち、300℃以上に熱せられる部分には、上記の高耐熱性シリコーン樹脂部分63が設けられているため、吸着対象の半導体チップ等への異物付着等の原因となる熱劣化を引き起こす心配がない。
【0056】
また、高耐熱性シリコーン樹脂部分63が設けられているため、例えばフッ素系ゴム等で形成された非高耐熱性シリコーン樹脂部分62は、熱せられても300℃未満に抑えられるので深刻な熱劣化を引き起こすこともない。
【0057】
すなわち、本実施の形態では、母材が耐熱温度以下になるように、所定厚さの高耐熱性シリコーン樹脂製のゴムで、母材表面をコーティングすることによって、母材の熱劣化を避ける構成である。併せて、コレットの製造コストの低減も図ることができる。コレット60の本体を全部高耐熱性シリコーン樹脂で形成する場合に比べて、コレット60の一部を高耐熱性シリコーン樹脂で構成するだけで済むため、コレット60の生産コストの低減をも図ることができる。
【0058】
また、高耐熱性シリコーン樹脂部分63に異常が起きた場合等には、かかる高耐熱性シリコーン樹脂部分63を交換するだけで対応が可能となる。コレット60の全体の交換は必要がないのである。かかる高耐熱性シリコーン樹脂部分63の交換がし易い構成としては、例えば、図8(b)に示すように、高耐熱性シリコーン樹脂部分63を非高耐熱性シリコーン樹脂部分62の表面を覆うように被せる構成としても構わない。
【0059】
因みに、本実施の形態のコレット60を用いて、半導体チップ10を吸着し、インナーリードボンディング工程に搬送する場合を、模式的に図8(c)に示した。図8(c)では、図8(a)に示した構成のコレット60を使用している。かかるコレット60を使用した半導体装置の製造方法は、図3に示した場合と同様に説明できる。ただ、コレット60が非高耐熱性シリコーン樹脂部分62と高耐熱性シリコーン樹脂63とから構成され、半導体チップ10が高耐熱性シリコーン樹脂部分63で吸着されている点が、違うだけである。
【0060】
(実施の形態3)
前記実施の形態では、LCDドライバ10aに構成した半導体チップ10を用いて、半導体装置Aを、フェイスアップ方式で製造する場合について説明した。しかし、かかる製造は、フェイスアップ方式以外の方法でも製造することができる。例えば、図9(a)、(b)に示すように、フェイスダウン方式で製造しても構わない。
【0061】
かかる半導体装置Aをフェイスダウン方式で組立て製造する場合には、半導体チップ10を準備する。すなわち、ウエハ上に形成された多数の半導体チップ10は、ダイシングされて個々のLCDドライバ10aに構成された半導体チップ10となる。例えば、図9(a)に示すように、ダイシングテープ100上に、複数の半導体チップ10が個片化されている。かかる個片化された半導体チップ10は、それぞれコレット60で吸着してピックアップされ、リードボンディング工程に供給される。
【0062】
リードボンディング工程への半導体チップ10の供給には、加熱加圧ツール300が利用される。すなわち、コレット60で一旦吸着保持させた半導体チップ10は、コレット60を反転させることで、加熱加圧ツール300に半導体チップ10を保持させるのである。
【0063】
図9(a)には、かかるコレットホルダ61に支持されたコレット60の動きを矢印で示した。すなわち、矢印a2に示すように、コレット60は吸着してピックアップしようとする当該半導体チップ10の真上の所定位置から下降して、半導体チップ10を吸着する。コレット60に吸着された半導体チップ10は、矢印b2に示すように、ピックアップされて所定位置まで上昇する。その後、コレット60は半導体チップ10を吸着した状態で、矢印c2に示すように逆さに回転する。回転した状態で、治具である加熱加圧ツール300の所定位置の下方に移動する。
【0064】
下方に移動した後、矢印d2に示すように、コレット60は半導体チップ10を吸着保持した状態で、加熱加圧ツール300の方に向かって上昇し、半導体チップ10を加熱加圧ツール300の所定位置に吸着支持させる。半導体チップ10を加熱加圧ツール300に吸着保持させたコレット60は、吸着を解除して、矢印e2に示すように下降する。その後、コレット60は、矢印f2に示すように、逆さに回転して、次の半導体チップ10の吸着ピックアップに備えて所定位置に移動する。
【0065】
半導体チップを吸着保持する治具の加熱加圧ツール300も、予め350℃に温められている。そのために、コレット60は、吸着保持していた半導体チップ10を、加熱加圧ツール300に吸着保持させる際に、薄い半導体チップ10を介して短時間ではあるが、350℃程度の熱にさらされることとなる。そのため、かかる加熱加圧ツール300に半導体チップ10を吸着保持させる度に、350℃の熱が加えられることとなり、耐熱温度が300℃以下の従来のフッ素系ゴムでは熱劣化が発生するために使用できない。そこで、本実施の形態では、前記実施の形態1と同様に、コレット60には、株式会社ADEKAの高耐熱シリコーン系樹脂のFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂が使用されている。
【0066】
かかる加熱加圧ツール300に吸着保持された半導体チップ10は、図9(b)に示すように、加熱加圧ツール300に保持された状態で、インナーリードボンディング工程まで搬送される。インナーリードボンディング工程の加熱ステージ200aの上方の所定位置に、半導体チップ10は、フェイスダウンの状態で搬送される。かかる半導体チップ10には突起電極30としてのバンプ30aが設けられているが、かかるバンプ30aの位置に合わせて、インナーリード40aが、加熱ステージ200a上に搬送されてくる。
【0067】
インナーリード40aは、図9(b)に示すように、TABテープ20a上に設けられている。図示はしないが、かかるTABテープ20aは、その一端側が送り出し用のリールに巻かれ、他端側が巻き取り用のリールに巻かれている。TABテープ20aを必要量巻き取り用リールで巻き取ることにより、TABテープ上に設けられたインナーリード40a部分を所要量引き出し、半導体チップ10のバンプ30aの位置に合わせて搬送することができるようになっている。
【0068】
このようにして、TABテープ20aに設けたインナーリード40aが、バンプ30aと接続できる位置に搬送される。その状態で、加熱加圧ツール300が半導体チップ10を保持した状態で、図9(b)の矢印で示すように下降し、バンプ30aがインナーリード40aに合わせられる。インナーリード40aとバンプ30aとが、このように加熱加圧ツール300と加熱ステージ200aとの間で合わせられた状態で、350℃の温度で加熱されて接続が完成させられる。かかる接続は、例えば、金錫共晶接合である。
【0069】
かかる金錫共晶接合に必要な温度は、前記の如く、加熱加圧ツール300、加熱ステージ200aを予め350℃以上に温めておくことで、必要な温度に短時間で達するよう熱供給が行われるのである。
【0070】
上記の如く、本実施の形態でも、コレット60には、株式会社ADEKAの高耐熱シリコーン系樹脂のFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等で特定される樹脂、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂を使用した。かかる樹脂を半導体チップ10の移送用のコレット60に適用することで、リードボンディング時の熱の影響による劣化異物、及び貼付異物の発生がないクリーンな環境での搬送、組立を可能とした。かかる樹脂を用いることで、コレット60の耐熱温度を330℃以上に上げることができる。かかる樹脂を用いれば、例えば、耐熱温度を現在のところ、550℃まで上げることができる。
【0071】
また、かかる素材は、吸着する半導体チップ10を傷つけない程度に十分な柔らかさも備えていることが求められる。柔らかさに関しては、ショアA硬度が10以上、90以下の範囲内のものを選定すればよい。
【0072】
(実施の形態4)
前記実施の形態では、高耐熱性シリコーン樹脂製のコレット60を用いた半導体装置の製造について、半導体チップ10としてLCDドライバ10aを用いて金錫共晶接合を行う場合について説明した。
【0073】
しかし、かかる高耐熱性シリコーン樹脂を用いたコレットは、LCDドライバ以外の半導体チップを用いた半導体装置の製造以外の半導体電子部品の製造の場合にも十分に適用できるものである。例えば、特定用途向けのICと呼ばれるAsicマイコン等のAu/Si共晶でも使用することができる。例えば、図10に示すように、ダイシングテープ100上に半導体チップ10としてのLSIチップ10bが個片化されている。かかる個片化したLSIチップ10bを、各々コレット60で吸着して、ボンディング工程に搬送する。
【0074】
搬送したLSIチップ10bは、加熱ステージ200a上に載置されたセラミック基板600上のダイボンディング部に位置合わせされる。かかるダイボンディング部には、図10に示すように、金メッキ610が施されている。このような状態で、図10に示すように、間に金箔620を介して、セラミック基板600上のダイボンディング部にLSIチップ10bをコレット60で押しつけて、ダイボンディングを完成させることができる。かかるダイボンディング時において、セラミック基板600は、加熱ステージ200aで、予め例えば430℃に加熱されている。
【0075】
しかし、コレット60は、例えば、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等高耐熱性シリコーン樹脂、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂で形成しておけばよい。コレット60が、かかる組成の高耐熱性シリコーン樹脂製で形成されているため、コレット60の熱劣化が起きず、半導体チップ10の異物付着によるマイグレーション劣化不良等を防止することができる。
【0076】
また、かかるコレット60には使用する上記成分組成の高耐熱性シリコーン樹脂は、例えば、ショアA硬度が10以上、90以下の範囲内に設定され、吸着時の半導体チップへの傷つきを防止すればよい。
【0077】
コレット60の動きは、図10に示すように、矢印a3〜f3で示した。すなわち、図10の矢印a3に示すように、コレット60は吸着してピックアップしようとする当該半導体チップ10の真上の所定位置から下降して、半導体チップ10を吸着する。矢印b3に示すように、コレット60に吸着された半導体チップ10は、ピックアップされて所定位置まで上昇する。
【0078】
その後、矢印c3に示すように、コレット60は半導体チップ10を吸着保持した状態で横方向に移動して、ダイボンディング工程に移る。ダイボンディング工程では、コレット60は、加熱治具200としての加熱ステージ200aの上方の所定位置に移動する。
【0079】
一方、加熱ステージ200a上には、セラミック基板600が搬送され、所定位置に載置されている。かかるセラミック基板600のダイボンディング部には、金メッキ610が施されている。かかるセラミック基板600上に、先に示したコレット60に吸着保持されている半導体チップ10を、間に金箔620を介して載置する。
【0080】
すなわち、図10の矢印d3に示すように、コレット60は半導体チップ10を保持した状態で下降し、加熱ステージ200a上のダイボンディング部に金箔620を介して、半導体チップ10を置く。かかる半導体チップ10を置く工程は、コレット60が保持していた半導体チップ10を加熱ステージ200a上に載置して、その後、半導体チップ10の吸着を解除して離すことで行われる。
【0081】
このようにして、半導体チップ10の吸着を解除したコレット60は、矢印e3のように、所定の上方位置まで上昇し、その後矢印f3のように横方向に移動する。所定位置まで、横方向に移動して、次の半導体チップ10の吸着ピックアップに備える。
【0082】
(実施の形態5)
前記実施の形態では、コレットで搬送した半導体チップを金錫共晶接合、金シリコン共晶接合等で接合する場合を例にあげて説明したが、勿論、それ以外の接合にも当然に使用することができる。例えば、鉛錫(Pb/Sn)共晶接合の場合にも使用できる。
【0083】
図11(a)に示すように、すなわち、ウエハ上に形成された多数の半導体チップ10は、ダイシングされて個々の半導体チップ10となる。図11(a)に示すように、ダイシングテープ100上に、半導体チップ10が個片化されている。かかる半導体チップ10には、図11(b)に示すように、鉛錫合金メッキのバンプ30aが設けられている。かかる個片化された半導体チップ10は、それぞれコレット60で吸着してピックアップされ、鉛錫共晶接合がなされる。
【0084】
図11(a)では、かかるコレットホルダ61に支持されたコレット60の動きを矢印で示した。すなわち、矢印a4に示すように、コレット60は吸着してピックアップしようとする当該半導体チップ10の真上の所定位置から、下降して、半導体チップ10を吸着する。
【0085】
矢印b4に示すように、コレット60に吸着された半導体チップ10は、ピックアップされて所定位置まで上昇する。その後、コレット60は半導体チップ10を吸着した状態で、矢印c4に示すように逆さに回転する。回転した状態で、加熱加圧ツール300の所定位置の下方に移動する。その後、矢印d4に示すように、コレット60は、加熱加圧ツール300の方に向かって上昇し、半導体チップ10を加熱加圧ツール300の所定位置に吸着支持させる。
【0086】
半導体チップ10を加熱加圧ツール300に吸着保持させたコレット60は、吸着を解除して、矢印e4に示すように下降する。その後、コレット60は、矢印f4に示すように、逆さに回転して、次の半導体チップ10の吸着ピックアップに備えて所定位置に移動する。
【0087】
かかる加熱加圧ツール300も、予め、鉛錫共晶接合に必要な温度の例えば330℃に加熱されている。そのため、コレット60には、吸着保持していた半導体チップ10を、加熱加圧ツール300に吸着保持させる際に、薄い半導体チップ10を介して短時間ではあるが、330℃程度の熱にさらされることとなる。しかし、本実施の形態では、かかるコレット60には、前記実施の形態1と同様に、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等高耐熱性シリコーン樹脂、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂で形成されているため、熱劣化等を引き起こさずに使用できる。
【0088】
加熱加圧ツール300に吸着保持された半導体チップ10は、図11(b)に示すように、加熱加圧ツール300に保持されたまま所定位置まで、加熱ステージ200aの上方の所定位置まで搬送される。併せて、加熱ステージ200aには、セラミック基板600が搬送されてくる。セラミック基板600は、金メッキが施されたバンプ接続部31が設けられている。
【0089】
このようにして、セラミック基板600のバンプ接続部31が、半導体チップ10のバンプ30aと接続できる位置に合わせて搬送される。その状態で、加熱加圧ツール300が半導体チップ10を保持した状態で下降し、バンプ30aがセラミック基板600のバンプ接続部31に合わせられる。バンプ接続部31とバンプ30aとが、このように加熱加圧ツール300と加熱ステージ200aとの間で合わせられた状態で、330℃の温度で加熱されて鉛錫共晶接合が完成させられる。かかる鉛錫共晶接合に必要な加熱は、加熱加圧ツール300、加熱ステージ200aを予め330℃に温めておくことで、短時間の熱供給がなされる。
【0090】
(実施の形態6)
前記実施の形態では、いずれの場合にも、半導体チップをコレット60で搬送して、かかる半導体チップを金錫共晶接合等で接合して半導体装置を製造するものであった。しかし、コレット60で搬送するものは、半導体チップ以外のものでも一向に構わない。例えば、半導体装置を構成する部品を高熱で接合するためにコレット60で搬送する場合でも構わない。そのようにして、半導体チップを有した半導体装置等の半導体電子部品を製造しても構わない。
【0091】
図12に示すように、金属製の蓋を、セラミック基板600に金錫共晶接合で接続するために適用することができる。例えば、図12では、加熱ステージ200aには、予め半導体チップ10がダイボンディングされたセラミック基板600が載置されている。セラミック基板600は、図12に示す場合には、凹部630が設けられている。かかる凹部630内のダイボンディング位置に、半導体チップ10がボンディングされている。
【0092】
さらに、かかる半導体チップ10とセラミック基板600とは、図12に示すように、金線等でワイヤボンディング640が施されている。このようにして凹部630に半導体チップ10が搭載されたセラミック基板600を、別途金属製の蓋650で蓋をする。かかる蓋650は、図12に示すように、別途積み重ねて置いた蓋650の最上段から一個ずつコレット60で吸着して搬送する。
【0093】
搬送された蓋650は、加熱ステージ200a上のセラミック基板600の凹部630を跨いで被せられる。セラミック基板600上には、蓋650と合わせられる位置に、金メッキ610が施されている。一方、かかる金メッキ610と合わせられる蓋650の接続位置には、金錫(Au/Sn)合金660が施されている。
【0094】
コレット60による搬送状況は、図12の矢印で示すようになっている。すなわち、矢印a5で、コレット60が下降して蓋650を吸着する。蓋650を吸着したコレット60は、矢印b5に示すよう、所定の高さにまで上昇する。その後、加熱ステージ200aの上方側に位置するように、矢印c5に示すように、横方向に移動する。加熱ステージ200aの上方位置では、コレット60に吸着されている蓋650の金錫合金660の接続部の位置が、加熱ステージ200a上に載置されているセラミック基板600の金メッキ610の接続位置に合わされている。
【0095】
その後、コレット60は、矢印d5に示すように下降して、蓋650の上記金錫合金660の接続部と、セラミック基板600の金メッキ610の接続部とを合わせる。コレット60は、吸着していた蓋650を離した後、矢印e5に示すように所定位置まで上昇する。所定位置まで上昇したコレット60は、矢印f5に示すように、蓋650の上方位置まで横方向に移動して、次の蓋650を吸着する態勢を整える。
【0096】
かかる場合にも、コレット60は蓋650をセラミック基板600に接続させるために、予め加熱ステージ200aで温度が330℃程度に温められたセラミック基板600上に載置させる。載置の際に吸着面側が高熱となる。そのため、かかる高熱でもコレットの熱劣化が起きないように、前記実施の形態1で説明したように、例えば、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N等高耐熱性シリコーン樹脂、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂が用いられている。
【0097】
本実施の形態では、Au/Sn共晶接合の場合を例に挙げて説明したが、低融点ガラス接合であっても構わない。
【0098】
(実施の形態7)
本実施の形態では、半導体チップの吸着時の静電破壊等を防止するために、コレット60に導電性を付与する構成である。かかる構成により、コレットで半導体チップ等を吸着する工程において、直接コレットで吸着する際の静電破壊を防止することができる。かかる構成は、前記実施の形態のいずれの場合にも、適用できるものである。
【0099】
前記実施の形態で示したコレットには、例えば、株式会社ADEKAのFX−T154、あるいはFX−T121、あるいはFX−350N、あるいはこれらと同様の成分組成を有する高耐熱性シリコーン樹脂が使用されているが、かかる高耐熱性シリコーン樹脂は、電気絶縁性である。そのため、酸化チタン等の導電剤を適宜量混入することで、コレット自体に導電性を付与しても構わない。かかる構成により、コレットの半導体チップと直接触れる側の吸着表面側に、適度な静電防止効果を付与することができる。例えば、静電破壊を防止することができるのである。
【0100】
例えば、コレット60の吸着面60a側の導電性を、表面抵抗率で、105Ω/sq以上、1014 Ω/sq以下に設定すればよい。導電性が105Ω/sq未満では、コレット接触時にコレットへの放電による静電破壊の不都合が発生する虞がある。また、導電性が1014Ω/sqを超える場合であれば、コレット接触時にコレットからの放電またはコレット接触による静電気帯電の不都合が発生する虞がある。よって、導電性は、105Ω/sq以上、1014Ω/sq以下の範囲で設定しておけばよい。例えば、図7、8に示す吸着面60a、63aでの導電性が、上記範囲内に入っていればよい。
【0101】
すなわち、上記表面抵抗率が得られるように、酸化チタン等の導電剤を混入すればよい。導電剤の添加は、例えば、図7に示す場合には、コレット60全体に混ぜる必要はなく、吸着面60a側に所定層厚で混ぜておけばよい。図8(a)、(b)では、高耐熱性シリコーン樹脂部分63に混ぜておけばよい。
【0102】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0103】
例えば、本実施の形態では、コレット60の材料として、耐熱温度が330℃以上の樹脂を適用することについて説明した。しかし、加熱ステージ200aに搬送する半導体チップ10の数(ウエハからの取得数)が少ない場合には、図13に示すように、半導体チップ10を吸着する面(吸着面60a)付近のみがこの樹脂材料(第1樹脂材料)60cで構成され、それ以外の部分が別の樹脂材料(例えば、フッ素系ゴムのような第2樹脂材料)60dで構成されていても、熱劣化を抑制することが可能である。このように、吸着面60a付近のみ330℃以上の耐熱性を有する樹脂材料60cでコレット60を製造することで、他の部分は耐熱性を持たない安価な材料を使用することができ、コレット60のコストを低減することが可能である。この結果、半導体装置の製造コストも低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、コレットを用いる半導体装置の製造分野で有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法における半導体チップを模式的に示す要部平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を模式的に示す要部断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるコレットを用いて半導体装置の製造を行っている様子を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるコレットを用いて搬送した半導体チップのリードボンディングの様子を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるコレットを用いた半導体装置の製造方法の工程手順を示すフロー図である。
【図6】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法により製造された半導体装置をモジュールに組み立てた様子を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明に係わるコレットを模式的に示す断面図である。
【図8】(a)、(b)は本発明に係わるコレットの変形例を模式的に示す断面図であり、(c)は(a)に示すコレットを用いて半導体装置を製造する場合の様子を模式的に示す説明図である。
【図9】(a)は本発明の一実施の形態であるコレットを用いてフェイスダウンの方式で使用する状況を模式的に示す説明図であり、(b)は(a)に示す状況後の半導体チップの接合時の状況を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態であるコレットを用いてフェイスアップの方式で組立を行う状況を模式的に示す説明図である。
【図11】(a)は本発明の一実施の形態であるコレットを用いてフェイスダウンの方式で使用する状況を模式的に示す説明図であり、(b)は(a)に示す状況後の半導体チップの接合時の状況を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法の変形例を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明の変形例であるコレットの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0106】
10 半導体チップ
10a LCDドライバ
10b LSIチップ
20 基材テープ
20a TABテープ
30 突起電極
30a バンプ
31 バンプ接続部
40a インナーリード
50 封止樹脂
60 コレット
60a 吸着面
60b 周囲面
60c 第1樹脂材料
60d 第2樹脂材料
61 コレットホルダ
62 非高耐熱性シリコーン樹脂部分
62b 周囲面
63 高耐熱性シリコーン樹脂部分
63a 吸着面
63b 周囲面
100 ダイシングテープ
200 加熱治具
200a 加熱ステージ
300 加熱加圧ツール
400 プリント基板
400a はんだ
500 ガラス基板
500a 異方性導電膜
600 セラミック基板
610 金メッキ
620 金箔
630 凹部
640 ワイヤボンディング
650 蓋
660 金錫合金
A 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを含む電子部品を吸着治具で吸着する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記吸着治具は、少なくとも前記電子部品を吸着する部分が、耐熱温度が330℃以上の材料から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体チップを含む電子部品を吸着治具で吸着する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記吸着治具は、少なくとも前記電子部品を吸着する部分が、耐熱温度が330℃以上、ショアA硬度が10以上90以下の材料から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
LCDドライバ等の半導体チップを含む電子部品を吸着治具で吸着する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記吸着治具は、少なくとも前記電子部品を吸着する部分が、耐熱温度が330℃以上、ショアA硬度が10以上90以下のシリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
共晶接合に必要な温度に予め加熱させられている治具上に、半導体チップを含む電子部品を吸着治具で吸着して供給する工程を有する半導体電子部品の組立方法であって、
前記吸着治具は、少なくとも前記電子部品を吸着する部分が、耐熱温度が330℃以上、ショアA硬度が10以上90以下のシリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする半導体電子部品の製造方法。
【請求項5】
半導体チップを含む電子部品が共晶接合等の接合により接続されている接続構造を有する半導体電子部品であって、
前記電子部品は、予め加熱された治具上に吸着治具により供給され、
前記接合は、金錫共晶接合、金シリコン共晶接合、金金接合、鉛錫共晶接合、低融点ガラス接合から選ばれた少なくとも一つの接合であり、
前記吸着治具は、少なくとも前記電子部品を吸着する部分が、耐熱温度が330℃以上、ショアA硬度が10以上90以下のシリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする半導体電子部品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−194234(P2009−194234A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35006(P2008−35006)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】