説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】接着シートごとダイシングして接着シートが貼着された半導体チップを形成することができ、接着シートの熱応力緩和機能を確保しつつ半導体チップの実装信頼性の低下を抑制できる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体ウェハ(70)の一面(72)に接着シート(50)を貼着した状態で、接着シート(50)ごと半導体ウェハ(70)をダイシングすることにより、接着シート(50)が貼着された半導体チップ(40)を形成するダイシング工程と、貼着された接着シート(50)により、半導体チップ(40)を支持部材(30)の一面に接着固定する固定工程を備える。そして、接着シート(50)として、空隙(51a)の形成された多孔質層(51)を少なくとも有するとともに、空隙(51a)の直径が、水蒸気の粒子径よりも大きく、ダイシング時に供給される切削水(W1)の粒子径よりも小さいものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材に半導体チップを接着固定するための接着シートごと半導体ウェハをダイシングすることにより、接着シートが貼着された半導体チップを形成するダイシング工程を備えた半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、支持部材に半導体チップを接着固定するための接着シートごと半導体ウェハをダイシングすることにより、接着シートが貼着された半導体チップを形成するダイシング工程を備えた半導体装置の製造方法が知られている。
【0003】
特許文献1では、接着シート(接着フィルム)として、第1の層と第2の層の2層構造をなし、半導体チップ側の第1の層が第2の層よりも低い弾性を有するとともに、第2の層が第1の層よりも吸水性が小さいものを用いる。そして、ダイシング工程後、半導体チップ(センサチップ)を支持部材(パッケージ)上に搭載し、第2の層にて接着することで、半導体装置(半導体力学量センサ装置)を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−163215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、低弾性の第1の層により、支持部材側から半導体チップへ伝わる熱応力が緩和される。このため、熱応力の緩和機能を高めようとすると、低弾性の第1の層を厚くすることとなり、接着シートごと半導体ウェハをダイシングするのが困難となる。
【0006】
また、吸水性の小さい第2の層により、第1の層がダイシング時の切削水から保護される。これにより、接着シート(第1の層)の弾性の劣化が抑制される。しかしながら、第1の層は第2の層よりも吸湿しやすいため、例えばリフロー実装時に吸湿した水分が気化(水蒸気化)すると、ボイドが生じて支持部材に対する半導体チップの実装信頼性が低下する。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、接着シートごとダイシングして接着シートが貼着された半導体チップを形成することができ、接着シートの熱応力緩和機能を確保しつつ半導体チップの実装信頼性の低下を抑制できる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、
半導体ウェハ(70)の一面(72)に接着シート(50)を貼着した状態で、接着シート(50)ごと半導体ウェハ(70)をダイシングすることにより、接着シート(50)が貼着された半導体チップ(40)を形成するダイシング工程と、
貼着された接着シート(50)により、半導体チップ(40)を支持部材(30)の一面に接着固定する固定工程と、を備える半導体装置の製造方法であって、
接着シート(50)として、空隙(51a)の形成された多孔質層(51)を少なくとも有するとともに、空隙(51a)の直径が、水蒸気の粒子径よりも大きく、ダイシング時に供給される切削水(W1)の粒子径よりも小さい接着シートを用いることを特徴とする。
【0009】
本発明では、多孔質層(51)を有する接着シート(50)を採用するため、ヤング率の高い(高弾性)の材料を選択して半導体ウェハ(70)との一括ダイシングを可能としつつ、多孔質構造により接着シート(50)に熱応力緩和機能をもたせることができる。
【0010】
また、多孔質層(51)の空隙(51a)の直径が水蒸気の粒子径よりも大きいため、接着シート(50)が吸湿した水分を、後工程の例えばリフロー時に、水蒸気として接着シート(50)の側面から外部に逃がし、ボイドの発生を抑制することができる。これにより、支持部材(30)に対する半導体チップ(40)の実装信頼性の低下を抑制することができる。
【0011】
また、多孔質層(51)の空隙(51a)の直径はダイシング時に供給される切削水(W1)の粒子径よりも小さいため、ダイシング時において切削水(W1)が多孔質層(51)内に浸入するのを抑制することができる。このため、吸湿による水分量に較べて大量の水(切削水)が多孔質層(51)内に浸入し、これにより接着シート(50)において熱応力緩和機能を発揮する多孔質層(51)部分の弾性が劣化するのを抑制することができる。これによっても、接着シート(50)の熱応力緩和機能を確保することができる。
【0012】
以上により、接着シート(50)ごとダイシングして接着シート(50)が貼着された半導体チップ(40)を形成することができ、接着シート(50)の熱応力緩和機能を確保しつつ半導体チップ(40)の実装信頼性の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載のように、接着シート(50)として、多孔質層(51)の両面に、樹脂接着層(52,53)が形成された3層構造の接着シートを用いると良い。
【0014】
これによれば、多孔質層(51)の材料選択の自由度が向上する。なお、多孔質層(51)が、接着性を有する樹脂材料からなる場合には、樹脂接着層(52,53)を不要とすることもできる。
【0015】
請求項3に記載のように、多孔質層(51)が、樹脂接着層(52,53)のうちの少なくとも半導体チップ(40)側の樹脂接着層(52)よりも厚いことが好ましい。
【0016】
半導体チップ(40)側の樹脂接着層(52)は多孔質層(51)と半導体チップ(40)の間に位置するため、この樹脂接着層(52)が厚いと、例えば樹脂接着層(52)と半導体チップ(40)の線膨張係数の相違による熱応力が大きくなる。これに対し、本発明によれば、樹脂接着層(52)の影響を極力小さくすることができる。
【0017】
具体的には、請求項4に記載のように、多孔質層(51)がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる接着シート(50)を採用することができる。
【0018】
請求項5に記載のように、半導体チップ(40)として、力学量の印加に応じた信号を出力するセンサチップを採用することができる。このようなセンサチップ(40)は、熱応力の影響を受けやすい(特性が変動しやすい)が、上記発明によれば、接着シート(50)により熱応力を低減することができる。
【0019】
次に、請求項6に記載の発明は、
支持部材(30)と、
支持部材(30)の一面上に位置する半導体チップ(40)と、
支持部材(30)と半導体チップ(40)の間に配置され、半導体チップ(40)を支持部材(30)に接着固定する接着シート(50)と、を備える半導体装置であって、
接着シート(50)は、空隙(51a)の形成された多孔質層(51)を少なくとも有するとともに、空隙(51a)の直径が、水蒸気の粒子径よりも大きく、半導体ウェハ(70)をダイシングして半導体チップ(40)とする際の切削水(W1)の粒子径よりも小さいことを特徴とする。
【0020】
本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同じであるのでその記載を省略する。
【0021】
また、請求項7〜10に記載の発明の作用効果は、請求項2〜5に記載の発明の作用効果とそれぞれ同じであるので、その記載を省略する。
【0022】
請求項11に記載のように、支持部材(30)として回路チップを採用することができる。また、請求項12に記載のように、パッケージ(20)上に搭載された回路チップ(30)の一面上に、接着シート(50)を介して半導体チップ(40)が固定された構成に好適である。なお、支持部材(30)としてのパッケージに半導体チップ(40)が接着固定される構成を採用することもできる。また、半導体チップ(40)が、支持部材(30)としての配線基板に接着固定される構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】接着シートの概略構成を示す断面図である。
【図3】半導体ウェハに接着シートを貼り付けた状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)の側面図である。
【図4】ダイシング工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図相互において互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。
【0025】
図1に示すセンサ装置10は、要部として、パッケージ20と、パッケージ20に搭載された回路チップ30と、この回路チップ30に接着シート50を介して接着固定されたセンサチップ40と、を備える。このように、パッケージ20内に、回路チップと30とセンサチップ40が収容されてセンサ装置10が構成されている。
【0026】
なお、センサチップ40が、特許請求の範囲に記載の半導体チップに相当し、回路チップ30が特許請求の範囲に記載の支持部材に相当する。すなわち、センサ装置10のうち、センサチップ40と回路チップ30とを接着シート50により接着してなる構造体の部分が、特許請求の範囲に記載の半導体装置に相当する。
【0027】
パッケージ20は、センサチップ40及び回路チップ30を収容するものである。このパッケージ20は、セラミックや樹脂などからなる。本実施形態では、パッケージ20が、アルミナなどのセラミック層が複数積層されてなる積層パッケージとして構成されており、各セラミック層の表面や各セラミック層に形成されたスルーホールの内部などに、図示しない配線が形成されている。そして、この配線を介してセンサ装置10と外部機器とが電気的に接続可能となっている。
【0028】
なお、図1に示す符号21は、パッケージ20の開口周縁部に、溶接やロウ付けなどにより取り付けられたリッド(蓋)である。リッド21の構成材料としては、特に限定されず、金属、樹脂、セラミックなどを採用することができる。そして、このリッド21の取付けにより、パッケージ20の内部が封止されている。
【0029】
パッケージ20の内部底面には、回路チップ30が搭載され、接着剤60により固定されている。この回路チップ30は、センサチップ40から出力された信号を処理するための回路などが形成されたものであり、シリコン等の半導体基板にMOSFETなど素子を形成して構成されている。
【0030】
回路チップ30におけるパッケージ搭載面と反対の面上には、接着シート50を介してセンサチップ40が配置されている。そして、センサチップ40は、接着シート50により回路チップ30に接着固定されている。また、センサチップ40や回路チップ30の図示しないパッドと、パッケージ20の配線が、金やアルミニウムなどのボンディングワイヤ61により、電気的に接続されている。
【0031】
センサチップ40は、力学量の印加に応じた信号を出力するとともに、回路チップ30側からの熱応力を受けると、その出力が変動する力学量検出部を有する。具体的には、力学量の印加を受けて変位する可動部を備えるもの、例えば静電容量式加速度センサチップ、角速度センサチップ、圧力センサチップなどを採用することができる。また、ピエゾ抵抗効果を利用したセンサチップ、CMOSなどのイメージセンサチップを採用することもできる。本実施形態では、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いた周知の静電容量式加速度センサチップを採用している。
【0032】
接着シート50は、センサチップ40と回路チップ30を接着するものであり、少なくとも多孔質層51を有する。本実施形態では、図1に示されるように、センサチップ40におけるセンシング部(可動部)が形成された面41と反対の面42に接着されている。また、空隙51aの形成された多孔質層51だけでなく、多孔質層51の両面に形成された樹脂接着層52,53を有する3層構造となっている。
【0033】
このように多孔質層51とは別に樹脂接着層52,53を有する構成を採用すると、多孔質層51の構成材料として、接着作用を有さない材料を選択することも可能となる。このため、多孔質層51の材料選択の自由度が向上する。
【0034】
多孔質層51及び樹脂接着層52,52は、ともに比較的ヤング率の高い材料を用いて形成される。具体的には、G(ギガ)Paオーダーの材料を用いて形成される。このため、後述する半導体ウェハと一括でダイシングを行うことができる。
【0035】
また、接着シート50は、センサ装置10として中間層である多孔質層51の形状を保持している。すなわち、多孔質層51の形状を保持した状態で樹脂接着層52,53を溶融、硬化し、センサチップ40を回路チップ30に接着固定する。このため、多孔質層51の構成材料としては、センサチップ40を回路チップ30に接着固定した後においてもその形状が保持されるような材料(センサ装置10として、空隙51aを有する構成)が好ましい。一方、樹脂接着層52,53の構成材料としては、センサチップ40を回路チップ30に接着すべく、接着作用を有する樹脂材料であって、多孔質層51の形状保持の観点から多孔質層51の構成材料よりも融点が低い材料が好ましい。
【0036】
本実施形態では、一例として、多孔質層51がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり、樹脂接着層52,53がエポキシ樹脂からなる。このような3層構造の接着シート50としては、PTFEからなる多孔質シートをエポキシ樹脂に含浸し、空隙51aが樹脂にて埋められた部分を樹脂接着層52,53、樹脂接着層52,53間の空隙51aが残った部分を多孔質層51としたものを採用することができる。また、PTFEからなるシート状の多孔質層51に、樹脂接着フィルムを貼り付けして樹脂接着層52,53としたものを採用することもできる。
【0037】
また、接着シート50を構成する多孔質層51の空隙51aの直径は、水蒸気の粒子径よりも大きく、後述する半導体ウェハ70をダイシングしてセンサチップ40とする際の切削水W1の粒子径よりも小さいものとなっている。
【0038】
ここで、水蒸気の粒子径とは、気体状態の水の粒子径である。本実施形態では、水蒸気の粒子径を水分子の直径(約0.38nm)で置き換え、空隙51aの直径を水分子の直径よりも大きくしている。一方、切削水W1の粒子径とは、ダイシング時に用いる切削水W1の粒子径である。ダイシング時の切削水W1の粒子径は数十μm程度であるため、本実施形態では、ダイシング時の切削水W1の粒子径を約20μmとし、空隙51aの直径をこの切削水W1の粒子径よりも小さくしている。
【0039】
上記したように、空隙51aを有する多孔質層51は、比較的ヤング率の高い材料を用いて形成されるものの多孔質構造を有するため、接着シート50の厚さ方向及び厚さ方向に垂直な方向に弾性を有する。したがって、センサ装置10に温度変化が生じ、センサチップ40、回路チップ30、パッケージ20の線膨張係数の相違により、センサチップ40に熱応力が加わろうとしても、多孔質層51の弾性によりセンサチップ40に伝達する熱応力が緩和される。すなわち、接着シート50によってセンサ特性の変動を抑制することができる。
【0040】
また、センサチップ40側の樹脂接着層52は多孔質層51とセンサチップ40の間に位置する。このため樹脂接着層52が厚いと、樹脂接着層52とセンサチップ40の線膨張係数の相違による熱応力が大きくなる。これに対し、本実施形態では、樹脂接着層52の厚さを、多孔質層51の厚さよりも薄くしている。したがって、樹脂接着層52の影響を極力小さくすることができる。なお、樹脂接着層53については、樹脂接着層52の厚さと同等としており、2つの樹脂接着層52,53の厚さの和よりも、多孔質層51のほうが厚くなっている。
【0041】
次に、上記したセンサ装置10、特にセンサチップ40と回路チップ30とを接着シート50により接着してなる構造体(半導体装置)の製造方法について、図1、図3、及び図4を用いて説明する。
【0042】
先ず、半導体ウェハ70を準備する。半導体ウェハ70は、上記したSOI基板などの半導体基板を周知の半導体製造技術を用いて加工してなるもので、図3(a)に示されるように、センサチップ40がチップ単位毎に複数個形成されている。なお、各センサチップ40は、スクライブ領域、すなわちカットされる部位であるダイシングラインDLによって区画されている。
【0043】
また、多孔質層51及び樹脂接着層52,53を有する3層構造の接着シート50を準備する。そして、図3(b)に示されるように、半導体ウェハ70のセンシング部形成面71と反対の面72に対して樹脂接着層52が接するように接着シート50を半導体ウェハ70の一面72に貼り付ける。このとき、接着シート50の半導体ウェハ70への貼り付けは、加熱圧着により行われる。具体的には、接着シート50を介してセンサチップ40を回路チップ30に接着固定する際の加熱加圧条件よりも少ない熱量で実施する。これにより、回路チップ30に接する樹脂接着層53の接着性が低下するのを抑制することができる。
【0044】
なお、半導体ウェハ70の一面72に対し、樹脂接着層52、多孔質層51、樹脂接着層53の順に貼り付けることで、半導体ウェハ70の一面72上で3層構造の接着シート50としても良い。このときも、多孔質層51への樹脂接着層52,53の貼り付けは、加熱圧着により行われる。したがって、樹脂接着層53を多孔質層51に貼り付ける際には、接着シート50を介してセンサチップ40を回路チップ30に接着固定する際の加熱加圧条件よりも少ない熱量で実施することが好ましい。
【0045】
次いで、図4に示されるように、接着シート50が貼り付けられた半導体ウェハ70をダイシング装置の支持台80にセットする。ここで、半導体ウェハ70は、センサチップ40におけるセンシング部を保護するなどの目的から、接着シート50側を上に向けて(一面71を搭載面として)セットされる。このため、接着シート50側からダイシングされる。
【0046】
また、半導体ウェハ70は、マスク81を介して支持台80上にセットされる。このマスク81は金属からなり、上記ダイシングラインDLに対応した形状を有し、且つ、センサチップ40に対応した開口部82を有する。
【0047】
そして、図4に示されるセット状態において、ダイシングソー83を用いて、半導体ウェハ70を接着シート50ごとチップ単位に切り分ける。本実施形態では、上記したように、接着シート50を構成する各層51〜53が、いずれもG(ギガ)Paオーダーのヤング率を有する材料を用いて構成されるため、半導体ウェハ70と一括で好適にダイシングを行うことができる。これにより、組み付け工数を低減することができる。また、低弾性の接着シートを用いないので、シートのちぎれなどが生じにくく、これにより製造コストを低減することもできる。
【0048】
このダイシングでは、接着シート50側から切削水W1が供給される。これに対し、本実施形態では、多孔質層51の空隙51aが、切削水W1の粒子径(例えば20μm)よりも小さい直径を有している。このため、接着シート50の側面やダイシングソー83による切削箇所などから、応力緩和機能を果たす多孔質層51に切削水W1が浸入しない。したがって、切削水W1の浸入による多孔質層51、ひいては接着シート50の弾性の劣化を抑制することができる。
【0049】
そして、このダイシングにより、接着シート50が貼り付けられたセンサチップ40が形成される。
【0050】
一方、図1に示されるように、パッケージ20の内部底面に回路チップ30を搭載し、接着剤60により固定する。そして、上記接着シート50が貼り付いたセンサチップ40を、樹脂接着層53側を搭載面として回路チップ30上に配置する。このとき、マウンタなどを用いて加熱加圧を行う。その後、オーブンなどを用いて加熱を行い、接着シート50を本硬化する。これにより、センサチップ40は、接着シート50により、パッケージ20上の回路チップ30に接着固定される。
【0051】
次いで、アルミや金等の一般的なボンディングワイヤ61により、センサチップ40及び回路チップ30のパッド間、又は、これらパッドとパッケージ20の配線を、電気的に接続する。そして、パッケージ20に、リッド21を溶接することにより、図1に示されるセンサ装置10を得ることができる。
【0052】
得られたセンサ装置10においては、接着シート50の多孔質層51の空隙51aの直が、水蒸気の粒子径よりも大きいため、接着シート50(各層51〜53)が吸湿した水分を、例えばセンサ装置10を回路基板にリフロー実装する際に、水蒸気として接着シート50の側面から外部に逃がすことができる。このため、回路チップ30とセンサチップ40の間にボイドが生じるのを抑制し、ひいては回路チップ30に対するセンサチップ40の実装信頼性の低下を抑制することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0054】
本実施形態では、接着シート50として、多孔質層51の両面に、樹脂接着層52,53が形成された3層構造の接着シートの例を示した。しかしながら、多孔質層51が、接着性を有する樹脂材料からなる場合には、樹脂接着層52,52を不要、すなわち多孔質層51単層の接着シート50を採用することもできる。
【0055】
本実施形態では、センサチップ40が、支持部材としての回路チップ30を介して、パッケージ20に搭載される例を示した。しかしながら、回路チップ30を省略し、センサチップ40が、支持部材としてのパッケージ20に接着固定される構成を採用することもできる。また、センサチップ40が、支持部材としての配線基板に接着固定される構成を採用することもできる。
【0056】
本実施形態では、半導体チップとしてセンサチップ40の例を示したが、特にセンサチップ40に限定されるものではない。半導体チップとして例えば回路チップを採用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
10・・・センサ装置
20・・・パッケージ
30・・・回路チップ(支持部材)
40・・・センサチップ(半導体チップ)
50・・・接着シート
51・・・多孔質層
51a・・・空隙
52,53・・・樹脂接着層
70・・・半導体ウェハ
83・・・ダイシングソー
W1・・・切削水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ(70)の一面(72)に接着シート(50)を貼着した状態で、前記接着シート(50)ごと前記半導体ウェハ(70)をダイシングすることにより、前記接着シート(50)が貼着された半導体チップ(40)を形成するダイシング工程と、
貼着された前記接着シート(50)により、前記半導体チップ(40)を支持部材(30)の一面に接着固定する固定工程と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記接着シート(50)として、空隙(51a)の形成された多孔質層(51)を少なくとも有するとともに、前記空隙(51a)の直径が、水蒸気の粒子径よりも大きく、前記ダイシング時に供給される切削水(W1)の粒子径よりも小さい接着シート(50)を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記接着シート(50)として、前記多孔質層(51)の両面に、樹脂接着層(52,53)が形成された3層構造の接着シートを用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質層(51)が、前記樹脂接着層(52,53)のうちの少なくとも前記半導体チップ(40)側の樹脂接着層(52)よりも厚いことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質層(51)は、ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体チップ(40)は、力学量の印加に応じた信号を出力するセンサチップであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
支持部材(30)と、
前記支持部材(30)の一面上に位置する半導体チップ(40)と、
前記支持部材(30)と前記半導体チップ(40)の間に配置され、前記半導体チップ(40)を前記支持部材(30)に接着固定する接着シート(50)と、を備える半導体装置であって、
前記接着シート(50)は、空隙(51a)の形成された多孔質層(51)を少なくとも有するとともに、前記空隙(51a)の直径が、水蒸気の粒子径よりも大きく、半導体ウェハ(70)をダイシングして前記半導体チップ(40)とする際の切削水(W1)の粒子径よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記接着シート(50)は、前記多孔質層(51)の両面に、樹脂接着層(52,53)が形成された3層構造の接着シートであることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記多孔質層(51)が、前記樹脂接着層(52,53)のうちの少なくとも前記半導体チップ(40)側の樹脂接着層(52)よりも厚いことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記多孔質層(51)は、ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体チップ(40)は、力学量の印加に応じた信号を出力するセンサチップであることを特徴とする請求項6〜9いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記支持部材(30)は回路チップであることを特徴とする請求項6〜10いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
パッケージ(20)上に搭載された前記回路チップ(30)の一面上に、前記接着シート(50)を介して前記半導体チップ(40)が固定されていることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−164771(P2012−164771A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23050(P2011−23050)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】