説明

半導体装置の製造方法及半導体製造装置

【課題】 エッチングの終点を精度良く制御する。
【解決手段】エッチング装置1は、処理ユニット2と制御ユニット3とを有する。処理ユニット内のプラズマの発光強度は、OES検出器21で取得され、エッチング制御装置31が非線形回帰分析して回帰式を決定する。非線形回帰分析は、プラズマの発光強度がピークを超えた第1の時間までに取得したプラズマの発光強度を用いて行われ、回帰式を用いてエッチング終点となる第2の時間が算出される。エッチング終点は、第1の時間から発光強度が所定値だけ減少する時間として算出される。エッチング装置1は、エッチング終点に達したら、エッチングを終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上の薄膜をプラズマによってエッチングする場合、エッチングの不足やオーバーエッチングを防止するためには、エッチングの終点を正しく検出する必要がある。エッチングの終点は、分光器を用いてプラズマの発光強度の変化を観測することによって決定できる。
【0003】
例えば、エッチングストッパ膜の上に形成した絶縁膜をエッチングによってパターニングする場合、絶縁膜がエッチングによって除去されると、その下層のエッチングストッパ膜が露出してくる。このとき、エッチング装置内には、エッチングストッパ膜に起因する波長のプラズマが発生し始める。従って、エッチングストッパ膜のエッチング時に発生するプラズマの発光波長を予め調べておけば、この波長の発光強度の変化から絶縁膜のエッチングの終点を判定できる。
【0004】
ここで、エッチング終点を正しく検出するために、複数の波長のプラズマの発光を計測することがある。測定するプラズマの発光波長は、以下のプロセスに従って決定される。最初に、エッチング処理を1回以上実施して複数の波長のプラズマの発光強度を取得する。続いて、複数の波長の発光強度の波形をクラスター分析し、波形の類似性に基づいて複数のグループを分類する。さらに、各グループから代表的な波長を1つずつ選択する。このようにして選択した代表的な波長の発光強度の変化を調べてエッチングの終点を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−235361
【特許文献2】特開2010−219263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、絶縁膜やエッチングストッパ膜に起因するプラズマ発光波長の発光強度により終点を判定する場合、発光強度が変化を観測してからの終点判定となるため、オーバーエッチングやエッチング不足が生じる可能性がある。
【0007】
また、データの一部が欠落したり、データに外部からのノイズが混入したりした場合には、プラズマの発光強度の変動を正しく検出できなくなるので、エッチング終点を正しく検出できない。さらに、データの一部の値が不連続に変化した場合は、プラズマの発光強度の変動を正しく検出できないので、エッチングの終点は正しく検出されない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の一観点によれば、エッチング対象物をプラズマに曝し、前記エッチング対象物のエッチングを開始する工程と、前記プラズマの発光強度を取得し、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定する工程と、前記第1の時間までに取得した前記プラズマの発光強度を用いて非線形回帰分析し、前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を求める工程と、前記第1の時間後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求める工程と、前記第2の時間にエッチングを終了する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
また、実施の形態の別の観点によれば、エッチング対象物を収容可能で、プラズマを発生させる電極を有するチャンバと、前記プラズマの発光強度を取得する発光スペクトル検出器と、非線形回帰分析を用いて前記発光強度の時間変化の回帰式を求め、エッチングの終了時間を決定する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定し、前記第1の時間経過後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求め、前記第2の時間にエッチングを終了することを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
プラズマの発光強度の時間変化から非線形回帰分析を用いてエッチング終点を予測するので、終点を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の一例を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の処理対象物の一例を示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の処理対象物の処理過程の一例を示す図である(その1)。
【図2C】図2Cは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の処理対象物の処理過程の一例を示す図である(その2)。
【図2D】図2Dは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の処理対象物の処理過程の一例を示す図である(その3)。
【図2E】図2Eは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置の処理対象物の処理過程の一例を示す図である(その4)。
【図2F】図2Fは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置を構成する半導体素子の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得したプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得したプラズマの発光強度の時間微分のグラフである。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得したプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図7A】図7Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置のメンテナンス前のプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図7B】図7Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造装置のメンテナンス後のプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体製造装置の一例を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図10A】図10Aは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得した波長405nmのプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図10B】図10Bは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得した波長425nmのプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図10C】図10Cは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得した波長445nmのプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体製造装置の一例を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体製造装置を用いて取得したプラズマの発光強度の時間変化のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0013】
実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、半導体製造装置の概略構成を示す。
エッチング装置1は、半導体製造装置であり、処理ユニット2と制御ユニット3とを有する。処理ユニット2は、シリコン基板5を収容可能なチャンバ4を有する。チャンバ4は、例えば、アルミニウム合金で製造されている。チャンバ4内には、半導体装置を製造するシリコン基板5を載置する下部電極8と、シリコン基板5の上方に配置される上部電極9とを有する。
【0014】
下部電極8は、例えば、シリコン基板5を吸着保持する静電チャックとしても機能する。下部電極8においてシリコン基板5を保持する部分と、シリコン基板5の間には、不図示の隙間が形成されており、隙間にヘリウムガスを導入することでシリコン基板5の熱が下部電極8に逃がされる。下部電極8の内部には、不図示の流路が形成されており、流路に冷却用の流体を通流させると、下部電極8の温度が所定の値に保たれる。
【0015】
上部電極9は、例えば、シリコンや、カーボン、アルミナなど、導電性と熱伝導性に優れた材料から製造されている。上部電極9は、例えば、アルミニウム製の支持体10に支持されている。プラズマの安定性と、上部電極9の過熱防止のために、上部電極9は温度制御されている。上部電極9の温度制御のために、支持体10の内部には冷却用の液体が流される。
【0016】
下部電極8と上部電極9は、高周波電源11に接続されている。高周波電源11は、例えば、400MHz、13.56MHz、27.12MHz、60MHzの高周波を出力可能な装置を用いる。また、チャンバ4には、ガス供給装置12や排気装置13が接続されている。さらに、チャンバ4の側面には、観察窓14が設けられている。ここで、処理ユニット2の放電方式や形状、配置、材料は、図1に限定されない。
【0017】
制御ユニット3は、OES(Optical Emission Spectroscopy)検出部21と、エッチング制御装置31とを有する。OES検出器21は、観察窓14の近傍に配置され、例えば、チャンバ4内のプラズマの発光が観察窓14を通して入射される分光器と、分光後の光の強度を測定する光電素子を有する。OES検出器21は、観察窓14に近接して配置、又は直接取り付けても良い。また、チャンバ4内のプラズマの光は、光ファイバを通してOES検出器21に導いても良い。
【0018】
OES検出器21の出力は、エッチング制御装置31に接続されている。エッチング制御装置31は、チャンバ4の制御や、プラズマ発光のデータを取得してデータ処理をする。ここで、エッチング制御装置31には、CPU(Central Processing Unit)やメモリ
などを有する制御部41と、データの入出力を制御する入出力装置42と、データを表示する表示部43と、データやプログラムを記憶する記憶装置44とが含まれる。
【0019】
制御部41は、記憶装置44に格納されている半導体製造プログラムを実行することで、エッチングの制御と、エッチング終点の予測処理とを行う。ここで、制御部41は、分析部51と、期間判定部52と、処理制御部53と、診断部54に機能分割される。
【0020】
分析部51は、プラズマの発光強度のデータを非線形回帰分析して発光強度の時間変化の回帰式を算出する。さらに、分析部51は、回帰式の残差平方和を算出する。
期間判定部52は、プラズマの発光強度を取得する期間を決定する。発光強度のデータの収集期間は、例えば、プラズマの発光強度の時間微分の符号の変化から決定する。
処理制御部53は、エッチングの開始や終了など、処理ユニット2の制御を行う。
診断部54は、プラズマの発光強度に異常が検出されたときに、異常の原因を判定したり、必要な措置を指令したりする。
【0021】
次に、エッチング装置1を用いたエッチング方法について説明する。
最初に、エッチングの対象物の一例について、図2Aを参照して説明する。エッチング対象物は、半導体ウェハであるシリコン基板5の上方に形成したポリシリコン膜61である。ポリシリコン膜61は、シリコン基板5上のゲート絶縁膜60上に形成されている。ゲート絶縁膜60は、シリコン基板5の表面を熱酸化することによって数nmの厚さに形成される。ポリシリコン膜61は、例えばCVD法を用いて200nmの厚さに形成される。
【0022】
ポリシリコン膜61は、エッチング工程によってパターニングされ、ゲート電極となる。このために、エッチングを開始する前に、ポリシリコン膜61の上に、SIO膜62を形成する。さらに、SIO膜62の上に、レジスト膜を塗布する。レジスト膜をパターニングしてマスク63を形成する。続いてドライエッチング装置にて、例えば、CFガス、Cガス、Cガス、フロロカーボンガス等を用いてSIO膜62をパターニングする。このドライエッチング装置は、続いて行われるポリシリコン膜61のエッチング装置と真空を保持したまま搬送可能なマルチチャンバーで構成されていることが好ましい。また、このSIO膜62のドライエッチングに本発明を用いてもよい。
【0023】
続いて、ポリシリコン膜61のエッチング工程について、図3のフローチャートを参照して説明する。
図3のステップS101に示すように、最初にエッチング装置1がエッチングを開始する。エッチングを行うときには、シリコン基板5がチャンバ4内に搬入される。シリコン基板5の搬入は、不図示のロードロックを経由させる。シリコン基板5は、下部電極8の上に位置決めして載置される。さらに、チャンバ4内を排気装置13を用いて所定の真空度まで減圧する。この後、チャンバ4内にガス供給装置12からエッチングガスを供給する。エッチングで使用するガスは、例えば、臭化水素ガス、酸素ガス、塩素ガス等の混合ガス等がある。
【0024】
ガス流量、チャンバ4内の圧力、シリコン基板5の温度などが安定したら、処理制御部53は、上下の電極8,9の間に高周波電源11から高周波の交流電圧を印加する。これによって、上下の電極8,9の間の空間にプラズマが発生し、プラズマに晒されることでポリシリコン膜61のエッチングが開始される。
【0025】
続く、ステップS102では、エッチング制御装置31が発光強度のデータを収集する。ポリシリコン膜61のエッチングが開始すると、チャンバ4内には、プラズマによる発光が生じる。この発光は、チャンバ4に取り付けられた観察窓14を通してOES検出器
21に取り込まれる。OES検出器21は、所定の波長の光の発光強度のデータを取得し、エッチング制御装置31に出力する。エッチング制御装置31に取り込まれる波長としては、例えば、反応物質Siに起因する200nm〜300nmの波長の光がある。また、反応物質SiBrに起因する400nm〜450nmの波長の光、反応物質Clに起因する600nm〜800nmの波長の光がある。
【0026】
ステップS103に示すように、エッチング制御装置31は、所定のデータ収集期間が経過するまで、光の発光強度のデータを収集する。データは、エッチング開始から例えば、1秒間に5回ずつ測定する。エッチング処理時間とプラズマの発光強度の関係について、図4を参照して説明する。図4は光の発光強度の時間変化の一例を示すグラフであり、横軸が時間である。縦軸が発光強度を示し、○印は非線形回帰分析に使用した実測値である。△印は、非線形回帰分析後に取得した実測値である。曲線は、非線形回帰分析によって得られる回帰式をグラフ化したものである。
【0027】
図4に示すように、プラズマの発光強度は、エッチングの初期段階では、時間の経過に従って増加する。時間の経過と共に発光強度の増加量は減少して4秒経過後でピークを迎え、その後は減少する。ピークを過ぎた後にエッチングの終点が現れる。
【0028】
ここで、エッチングの進捗とプラズマの発光強度の関係について、図2Aから図2Eと図4を参照して説明する。
図4の処理時間0秒では、エッチングは開始されていない。即ち、図2Aに示すように、ポリシリコン膜61がエッチングされていない。
図4の処理時間2秒付近では、発光強度が処理時間の経過に従って増加している。この段階では、図2Bに示すように、レジスト膜をマスクとしてポリシリコン膜61が上部から徐々にエッチングされる。エッチングされていないポリシリコン膜61は、比較的に多い。
【0029】
図4の処理時間4秒付近では、発光強度がピークを迎える。この段階では、図2Cに示すように、ポリシリコン膜61は、殆どエッチングされて、底部などに僅かに残る。
図4の処理時間5秒から6秒の間では、エッチングが終了する。この段階では、図2Dに示すように、ポリシリコン膜61は、マスクされている領域を除いてエッチングによって除去される。マスクによって残されたポリシリコン膜61の幅は、所望のサイズになっている。
【0030】
さらに、図4で6秒を越えるまでエッチングすると、オーバーエッチングになる。この場合は、図2Eに示すように、ポリシリコン膜61の下のゲート絶縁膜60や、シリコン基板5がエッチングされてしまう。さらに、マスク63の下のポリシリコン膜61の側壁のエッチングが進んで、ゲート電極の幅が細くなる。
【0031】
したがって、図2Eに示すようなオーバーエッチングになる前に、エッチングを終了する必要がある。このためには、エッチング終点を精度良く予測する必要がある。
【0032】
ここで、図2Fに示すように、ポリシリコン膜61をエッチングするとゲート電極61Aが形成する。さらに、ゲート電極61Aをマスクにして、シリコン基板5に不純物をイオン注入する。ゲート電極61Aの側部のそれぞれには、絶縁性サイドウォール65が形成される。続いて、絶縁性サイドウォール65とゲート電極61Aをマスクとして用い、シリコン基板5に不純物を再びイオン注入する。これにより、ゲート電極61Aの側方のそれぞれに、ソース/ドレイン領域66が形成される。これによって、シリコン基板5上に半導体素子であるトランジスタT1が形成される。さらに、シリコン基板5の上方に不図示の配線層を形成することで、半導体装置が形成される。
【0033】
さらに、エッチング終点の予測に必要なデータの収集期間について、図4及び図5を参照して説明する。図5は図4の発光強度の実測値を時間微分して得られる勾配の時間変化を示す。横軸は時間を、縦軸は勾配の値をそれぞれ示す。
【0034】
図5に示すように、エッチング開始直後は、プラズマの発光強度の時間変化の勾配はプラスになっている。その後、勾配は徐々に減少し、4秒経過後にゼロを経てマイナスになる。この実施の形態におけるデータの収集期間は、エッチングを開始してから、勾配がプラスからゼロを越えてマイナス領域に突入し、さらに予め定められたマイナスの値k1に達する第1の時間t1までとする。予め定められたマイナスの値k1は、エッチング終点における発光強度の勾配の値k2より大きい値である。データ収集期間が発光強度のピークを越えているのは、非線形回帰分析の精度を向上させるためである。さらに、エッチング終点を迎えるタイミングより早いタイミングでデータ収集を終了するのは、収集したデータを用いて非線形回帰分析を終了させてエッチング終点を予測するためである。
【0035】
期間判定部52は、プラズマの発光強度の時間変化の勾配を算出する。さらに、勾配の符号がプラスからマイナスに変化し、値k1に達したら、データの収集を終了する。
【0036】
ここで、期間判定部52は、プラズマの発光強度の変化の勾配がプラスからゼロになった点でデータ収集を終了しても良い。また、プラズマの発光強度の変化の勾配がプラスからマイナスに符号が変化した点でデータ収集を終了しても良い。プラズマの発光強度の変化の勾配がゼロを含んでプラスとマイナスの間で変化する場合は、勾配が所定回数継続してゼロ又はマイナスになったときを基準にしてデータの収集期間を決定しても良い。
【0037】
続くステップS104では、分析部51が、収集したデータを用いて非線形回帰分析(NLS)を行う。非線形回帰分析を開始するタイミングは、期間判定部52で決定したデータの収集期間が終了したときである。
【0038】
yをプラズマの発光強度、tを処理時間、cを係数としたとき、エッチング終点近傍ではdy/dt=cyが成り立つと考えられる。この微分方程式の一般解はtの指数関数となるため、回帰式にはtの指数関数項を含むことが適当である。
回帰分析のモデルは、例えば、y=a+a×t+a×exp(a×t)とする。ここで、yはプラズマの発光強度を示し、tは処理時間を示す。非線形分析のアルゴリズムには、例えば、ニュートン法や、パターン法を用い、各係数のa、a、a、aと、残差平方和Eを計算する。残差平方和Eは、
【0039】
【数1】

で算出される。xiは実測値である。xeiは予測値で、pはデータ数を示す。実測値xiと予測値xeiの差が大きいと、残差平方和は大きくなり、エッチング装置1の異常や、発光強度の異常値が生じた可能性がある。
【0040】
図4に示す例では、a=256.5、a=2.840、a=−0.067、a=0.952、残差平方和E=0.772という結果が得られた。各係数のa、a、a、aの算出結果から、発光強度と処理時間の関係は、y=256.5+2.840×t−0.067×exp(0.952×t)であると計算される。
【0041】
続くステップS105では、この回帰式を用いてエッチング終点を決定する。エッチング終点は、発光強度yがピーク時の値から所定の割合まで下がった第2の時間t2とする。
【0042】
ここで、エッチング終点は、発光強度yのピーク時から所定時間経過したポイントにしても良い。発光強度yのピークが所定時間継続して平らになるときは、平らになった領域の最初の時間や発光強度を基準にしてエッチング終点を決定しても良いし、平らになった領域の最後の時間や発光強度を基準にしてエッチング終点を決定しても良い。エッチング終点は、エッチング装置1の性能などによって決定される。
【0043】
ステップS108において、非線形回帰分析から得られた回帰式を用いて予測したエッチング終点に達したら、処理制御部53がエッチングを終了させる。図4に示すように、回帰式から得られる曲線と、非線形回帰分析後に得られた発光強度の実測値△とは高い精度で一致している。従って、この半導体装置の製造方法では、エッチングの終点を精度良く予測できる。
【0044】
一方、ステップS104から分岐するステップS106において、分析部51は、残差平方和Eが所定値以下であるか調べる。さらに、診断部54は、残差平方和Eの値を用いて、エッチング中にアーキングを起こしたなど、プラズマ状態に異常が発生したか判定する。例えば、図6の発光強度の時間変化のグラフに矢印D1,D2で示すように、エッチング開始から2秒付近でアーキングによる発光強度の変動があった場合、残差平方和Eが増加する。アーキングが発生しなかったときの残差平方和は図4に示すように0.772程度であるのに対し、図6の例では、残差平方和Eが例えば、8.515に増加する。残差平方和Eが予め定められた所定値以下であれば(ステップS106でNo)、エッチングを継続させる。この場合は、エッチング終点までエッチングを継続した後、ステップS108でエッチングを終了する。
【0045】
これに対し、残差平方和Eが所定値を越えていれば(ステップS106でYes)、ステップS107に進んで、異常対応処理を行う。異常対応処理では、例えば、診断部54の指令に基づいて処理制御部53がエッチング装置1を停止させてエッチングを中断する。
【0046】
また、診断部54の指令に基づいて入出力装置42や表示部43を用いて警告を発するなどして、オペレータに異常発生を連絡する。エッチング装置1に異常が発生した可能性があるので、オペレータはメンテナンスなどの復旧措置を講じる。エッチング中に異常を検出した場合にオペレータに連絡する方法としては、エッチング装置1の制御画面に警告を表示させたり、装置状態を示す表示ランプを点灯させたり、アラームを出力するなどがある。さらに、工場の集中管理室に異常を通知するデータを出力したり、電子メールを送信したりしても良い。
【0047】
エッチング装置1の異常の原因を診断部54で特定できる場合には、推定される異常の原因を併せて通知する。例えば、残差平方和Eの大きさやプラズマ発光強度の値と、エッチング装置1の異常の原因とを関連付けたデータベースを記憶装置44に格納しておき、このデータベースを診断部54が検索することで、異常の原因を特定する。
【0048】
エッチング装置1の異常が回復できる範囲であれば、診断部54は、自動修復を指令する。自動修復の手段としては、高周波電源11の出力、チャンバ4内の圧力、ガス流量の変更などがある。これに対して、異常の原因を特定できないときは、診断部54は、分析結果、例えば、残差平方和Eの異常値などから、エッチング装置1の緊急停止、アイドリ
ング状態での待機など、ダメージを最小限に止める措置を指令する。
【0049】
以上、説明したように、この実施の形態では、プラズマの発光強度の時間変化から、非線形回帰分析を用いてエッチング終点を予測するようにした。これによって、エッチング終点が高精度に予測される。予めエッチング終点を予測することが可能になるので、データの処理落ちなどによるオーバーエッチングが防止される。非線形回帰分析は、プラズマの発光強度がピークに達した後に計算するので、回帰式の精度を向上できる。
【0050】
また、非線形回帰分析を用いたので、一部のデータが欠落していた場合でもエッチング終点を予測できる。収集したデータ中の異常値の有無は、回帰式の残差平方和Eの大きさから判定できるので、エッチング終点の予測精度を向上できる。残差平方和Eが所定値以上のときは、エッチングを停止したり、必要な措置を講じるようにオペレータに指示を出したりすることが可能になる。従って、エッチングの異常が生じたときに早期の発見が可能になる。さらに、エッチング工程を速やかに復旧することができる。
【0051】
ここで、従来のように過去のデータから統計的手法を用いてエッチング終点を決定する場合には、半導体ウェハの処理枚数の累積によるエッチング装置の状態から経時的に変化した場合や、部品交換した場合に、過去のデータから導き出した回帰式が成り立たなくことがある。この場合には、統計処理用のデータを新たに取り直す必要がある。
【0052】
これに対して、図7A及び図7Bに、複数品種に対して非線形回帰分析を行った結果を示す。図7Aは、メンテナンス前のエッチング装置で2品種に対して非線形回帰分析し、合計77枚のシリコン基板5を処理した結果を示す。図7Bは、メンテナンス後のエッチング装置で3品種に対して非線形回帰分析し、合計62枚処理した結果を示す。図7Bに示すメンテナンス後の非線形回帰分析は、メンテナンス前の回帰式を用いて行った。図7A及び図7Bは、横軸が時間、縦軸が発光強度を示す。
【0053】
図7Aに示す品種S1、品種S2は、プラズマの発光強度の実測値が回帰式と高い精度で一致した。また、図7Bに示すように、同じエッチング装置1をメンテナンスした後に、同じ回帰式を用いて係数を変えて品種S3、S4、S5についてプラズマの発光強度を計算したところ、実測値と高い精度で一致した。
【0054】
この結果からは、同じエッチング装置1であれば、メンテナンス前後でも同じ回帰式を用いることができる。このことから、メンテナンス毎に、回帰式を再計算する必要がないことがわかる。回帰式の係数は、品種ごとに異なる値が計算される。この実施の形態では、異なる品種であっても、同じモデルの回帰式を用い、係数を変化させるだけで、エッチング終点の予測を行えた。
(第2の実施の形態)
【0055】
第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
エッチング中に発生するプラズマの発光波長は複数あるので、データ収集する波長の選択によっては、エッチング終点を予測し難いことがある。この実施の形態では、複数の波長のプラズマ発光を測定することで、エッチング終点の予測に最適な波長を選択してエッチングを制御する。
【0056】
図8にエッチング装置71の概略構成を示す。エッチング装置71は、処理ユニット2と制御ユニット3Aとを有する。制御ユニット3Aの制御部41は、分析部51と、期間判定部52と、処理制御部53と、診断部54と、波長選択部55に機能分割される。
【0057】
分析部51は、複数の波長の発光強度のデータを用いて非線形回帰分析する。また、複
数の波長のそれぞれについて、残差平方和Eを算出する。
波長選択部55は、残差平方和Eの値を波長ごとに比較し、エッチング終点の予測をする波長を残差平方和Eが最も小さくなる波長として選択する。これによって、エッチング終点の予測精度が向上する。また、波長選択部55は、残差平方和Eが所定値以下になる波長から選択しても良い。
【0058】
図9のフローチャートに示すように、ステップS101でエッチング装置71がエッチングを開始する。ステップS102及びS103で発光強度のデータを収集する。このとき、データ収集は、処理ユニット2内は発生した複数の波長の光に対して行う。ステップS104では、複数の波長のデータのそれぞれについて、非線形回帰分析する。ステップS104Aでは、複数の波長の中から、エッチング終点の予想に使用する波長を選択する。ステップS105では、選択した波長の回帰式を用いてエッチング終点を予測する。また、ステップS106では、残差平方和Eを調べる。残差平方和Eが所定値以下であれば、予想したエッチング終点でエッチングを終了する。これに対して、残差平方和Eが所定値を越えていれば、エッチングを終了したり、エッチング条件を変更したりする。また、必要に応じて警告を発する。
【0059】
ここで、ステップS104の非線形回帰計算及びステップS104Aの波長選択について詳細に説明する。
最初に、複数の波長のプラズマの発光強度を同時に取得する。取得する波長は、425nmに加えて、例えば、405nm及び445nmとする。図10Aに405nmの発光強度と処理時間のグラフの一例を示す。図10Bに425nmの発光強度と処理時間のグラフの一例を示す。さらに、図10Cに445nmの発光強度と処理時間のグラフの一例を示す。
これら3つの波長のそれぞれに対して、回帰分析のモデルをy=a+a×t+a×exp(a×t)とし、各係数のa、a、a、aと、残差平方和Eを計算する。
図10Aに示すように、波長405nmに対して非線形回帰分析した結果、a=180.2、a=1.51、a=−0.03、a=1.04、残差平方和E=1.25であった。
図10Bに示すように、波長425nmに対して非線形回帰分析した結果、a=270.5、a=3.30、a=−0.09、a=0.96、残差平方和E=1.42であった。
図10Cに示すように、波長445nmに対して非線形回帰分析した結果、a=484.4、a=1.52、a=−0.003、a=1.75、残差平方和E=2.55であった。
【0060】
ここでは、波長445nmの発光は、残差平方和Eが他の2つより大きい。これは、プラズマの揺らぎに起因する。このために、波長選択部55は、波長405nmの発光、又は波長425nmの波長を選択する。分析部51は、波長選択部55で選択された波長のプラズマの発光強度の回帰式を用いてエッチング終点を予想する。
【0061】
この実施の形態では、複数の波長からエッチング終点の予測に最適なプラズマの発光波長を選択することができる。従って、エッチング終点の予測精度をさらに向上できる。
【0062】
(第3の施の形態)
第3の実施の形態について図面を参照して説明する。
この実施の形態は、収集したデータの中に異常な値のデータが含まれていた場合であっても、エッチング終点を精度良く予測することを目的とする。
【0063】
図11にエッチング装置71の概略構成を示す。エッチング装置81は、処理ユニット2と制御ユニット3Bとを有する。制御ユニット3Bの制御部41は、分析部51と、期間判定部52と、処理制御部53と、診断部54と、波長選択部55と、棄却判定部56に機能分割される。
【0064】
分析部51は、複数の波長の発光強度のデータを用いて非線形回帰分析し、残差平方和Eを算出する。また、分析部51は、棄却検定後のデータに対して非線形分析と残差平方和の算出をする。
棄却判定部56は、収集したデータに対して棄却検定を行って、異常値や外れ値を除外する。
【0065】
図12のフローチャートに示すように、ステップS101でエッチング装置71がエッチングを開始する。ステップS102及びS103で発光強度のデータを収集する。このとき、データ収集は、複数の波長の光に対して行う。ステップS104では、複数の波長のデータのそれぞれについて、非線形回帰分析する。ステップS104Aでは、複数の波長の中から、エッチング終点の予想に使用する波長を選択する。ステップS104Bでは、棄却検定を用いて異常値又は外れ値を除去する。続く、ステップS104Cでは、棄却処理後に残ったデータを用いて再度、非線形回帰分析して回帰式を算出する。ステップS105では、回帰式を用いてエッチング終点を予測する。また、ステップS106では、残差平方和Eを調べる。残差平方和Eが所定値以下であれば、予想したエッチング終点でエッチングを終了する。これに対して、残差平方和Eが所定値を越えていれば、エッチングを終了したり、エッチング条件を変更したりする。また、必要に応じて警告を発する。
【0066】
ここで、ステップS104Bの棄却検定について詳細に説明する。
棄却判定部56は、棄却検定によって残差の大きいデータを除去する。残差は、例えば、e=x−xeiで表される。ここで、eは残差、即ち実測値と予測値の差である。xiは実測値であり、xeiは予測値である。さらに、棄却されるデータの範囲としては、
【0067】
【数2】

である。ここで、eは残差eの平均値であり、Sは残差eの標準偏差である。また、t(N−1,α)は、自由度N−1、有意水準αにおけるt値(t分布)を示す。
【0068】
例えば、図13に一例を示すように、従来ではプラズマの発光強度の管理限界線(UCL:上部管理限界線、LCL:下部管理限界線)を予め定め、2つの管理限界線の範囲外となる発光強度が観測された場合に、プラズマの異常が発生した判定していた。この場合には、矢印D3,D4に示すような異常値や外れ値を特定することができなかった。これは、異常値が正常値の変動幅内にあるためである。従って、異常値や外れ値を除外せずに非線形分析することになるので、エッチング終点を精度良く予測できない。これに対して、この実施の形態では、棄却判定部56が、矢印D3,D4に示すような異常発光のデータを除去する。さらに、ステップS104Cにおいて、分析部51は、棄却検定後に残されたデータを用いて再度、非線形回帰分析してエッチング終点を予測する。従って、エッチング終点の予測の精度をさらに向上できる。
【0069】
ここで、各実施の形態は、指標となるデータの時間変化が下向きに凸となるプロファイ
ルを有するプロセスにおいてプロセスの終点の予測に用いることが可能である。
また、図2、図9及び図12のフローチャートの処理は、並列処理を有するが、直列処理、例えばステップS105の後にステップS106を実行し、その後にステップS107を行っても良い。
【0070】
各実施の形態の半導体装置の製造方法は、薄膜のエッチング以外に適用しても良い。例えば、基板の上方に形成した薄膜をCMP法にて研磨するときの研磨の終点の予測に適用できる。この場合は、研磨する薄膜の厚さが光の干渉を利用したセンサで検出される。センサは、研磨布に設けられた光学用窓を通して、基板の研磨面に照射する。さらに、研磨面で反射した光が光学用窓を通して受光素子により入力する。例えば、基板上に形成したCu膜を研磨するときは、Cu膜の研磨が終了すると、研磨面の表面からCuが除去される。その結果、特定の周波数の光が吸収される。この特定の周波数の光の強度の時間変化を測定し、非線形回帰分析によって回帰式を求め、研磨の終点を予測する。
【0071】
各実施の形態には、半導体装置の製造方法をコンピュータに実行させるプログラムが含まれる。さらに、プログラムを保存した記録媒体や、プログラムをダウンロード可能な状態にコンピュータに保管することも各実施の形態の実施に含まれる。
【0072】
回帰式は、各実施の形態に記載したものに限定されない。例えば、y=a+a×t+a×a^t(^はべき乗演算子)であっても良い。
【0073】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができる。
【0074】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) エッチング対象物をプラズマに曝し、前記エッチング対象物のエッチングを開始する工程と、前記プラズマの発光強度を取得し、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定する工程と、前記第1の時間までに取得した前記プラズマの発光強度を用いて非線形回帰分析し、前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を求める工程と、前記第1の時間後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求める工程と、前記第2の時間にエッチングを終了する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記2) 前記発光強度の時間微分の符号が、複数回マイナスとなった場合に前記第1の時間とすることを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
(付記3) yをプラズマの発光強度、tを処理時間とし、各係数をa、a、a、aとしたときに、前記回帰式として、y=a+a×t+a×exp(a×t)を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記回帰式から求めた前記プラズマの発光強度の予測値と、前記プラズマの発光強度の実測値とを用いて残差平方和を求める工程を含むことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5) 前記残差平方和が所定値を越えたら、警告を発する工程を含む付記4に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記警告が発生した際に、前記エッチングを行う装置を停止する工程を含む付記4に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7) 前記プラズマの発光強度を複数の波長について取得する工程と、前記複数の波長毎に求めた前記残差平方和の最も低い波長の前記プラズマの発光強度を用いて前記第
2の時間を決める工程とを含むことを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。(付記8) 取得した前記プラズマの発光強度の実測値と、前記回帰式から求めた同じ時刻の発光強度の計算値との差が所定の範囲より大きい場合は、前記実測値を削除してから再び非線形回帰分析することを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記実測値の削除に棄却検定を用いることを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10) 前記第2の時間は許容範囲外と判定された前記実測値を除いた前記非線形回帰分析から算出することを特徴とする付記8又は付記9に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11) エッチング対象物を収容可能で、プラズマを発生させる電極を有するチャンバと、前記プラズマの発光強度を取得する発光スペクトル検出器と、非線形回帰分析を用いて前記発光強度の時間変化の回帰式を求め、エッチングの終了時間を決定する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定し、前記第1の時間経過後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求め、前記第2の時間にエッチングを終了することを特徴とする半導体製造装置。
(付記12) 前記プラズマの発光強度を取得するデータ収集期間を前記発光強度の時間微分の符号の変化から決定する期間判定部と、前記データ収集期間内の前記プラズマの発光強度を取得し、非線形回帰分析を用いて発光強度の時間変化の回帰式を算出する分析部と、を含むことを特徴とする付記11に記載の半導体製造装置。
(付記13) 前記データ収集期間内に収集した前記プラズマの発光強度から、前記回帰式から外れたデータを棄却検定により取り除く棄却判定部を有し、前記分析部は、棄却されたデータを除いたデータを用いて、発光強度の時間変化の回帰式を算出する付記12に記載の半導体製造装置。
(付記14) 複数の波長について、発光強度の時間変化の回帰式を算出したときの残差平方和を比較し、前記残差平方和が所定値以下の波長を、エッチング終点を決定するデータを取得する波長として選択する波長選択部を有する付記12又は付記13に記載の半導体製造装置。
(付記15) 前記プラズマの発光強度を取得し、非線形回帰分析によって前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を求め、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定し、前記第1の時間後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求める工程と、前記第2の時間にエッチングを終了する処理をコンピュータに実行させる半導体製造装置のプログラム。
(付記16) 前記データ収集期間内に収集した前記プラズマの発光強度から、前記回帰式から外れたデータを棄却検定により取り除き、棄却されたデータを除いたデータを用いて、前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を算出する処理をコンピュータに実行させる付記15に記載の半導体製造装置のプログラム。
(付記17) 複数の波長について、前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を算出したときの残差平方和を比較し、前記残差平方和が所定値以下の波長を、エッチング終点を決定するデータを取得する波長として選択する処理をコンピュータに実行させる付記15又は付記16に記載の半導体製造装置のプログラム。
(付記18) 半導体装置を製造するにあたり、処理時間によって変化するデータを取得する工程と、前記データがピークに達した後、前記データを用いて非線形回帰分析し、前記データの時間変化の回帰式を求める工程と、前記回帰式を用いて、処理の終了点として、処理開始後から前記データがピークを経て所定値に下がるまでに要する時間を算出する工程と、前記処理の終了点において処理を終了する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0075】
1,71,81 エッチング装置
2 処理部
3,3A,3B エッチング制御部
21 OES検出器(発光スペクトル検出器)
31 エッチング制御装置
41 制御部
51 分析部
52 期間判定部
53 処理制御部
54 診断部
55 波長選択部
56 棄却判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象物をプラズマに曝し、前記エッチング対象物のエッチングを開始する工程と、
前記プラズマの発光強度を取得し、前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定する工程と、
前記第1の時間までに取得した前記プラズマの発光強度を用いて非線形回帰分析し、前記プラズマの発光強度の時間変化の回帰式を求める工程と、
前記第1の時間後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求める工程と、
前記第2の時間にエッチングを終了する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
yをプラズマの発光強度、tを処理時間とし、各係数をa、a、a、aとしたときに、前記回帰式として、y=a+a×t+a×exp(a×t)を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記回帰式から求めた前記プラズマの発光強度の予測値と、前記プラズマの発光強度の実測値とを用いて残差平方和を求める工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記プラズマの発光強度を複数の波長について取得する工程と、
前記複数の波長毎に求めた前記残差平方和の最も低い波長の前記プラズマの発光強度を用いて前記第2の時間を決める工程と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
取得した前記プラズマの発光強度の実測値と、前記回帰式から求めた同じ時刻の発光強度の計算値との差が所定の範囲より大きい場合は、前記実測値を削除してから再び非線形回帰分析することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記実測値の削除に棄却検定を用いることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
エッチング対象物を収容可能で、プラズマを発生させる電極を有するチャンバと、
前記プラズマの発光強度を取得する発光スペクトル検出器と、
非線形回帰分析を用いて前記発光強度の時間変化の回帰式を求め、エッチングの終了時間を決定する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記プラズマの発光強度の時間微分の符号が変化する第1の時間を決定し、
前記第1の時間経過後で、エッチングを終了させる第2の時間を前記回帰式から求め、前記第2の時間にエッチングを終了することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項8】
前記プラズマの発光強度を取得するデータ収集期間を前記発光強度の時間微分の符号の変化から決定する期間判定部と、
前記データ収集期間内の前記プラズマの発光強度を取得し、非線形回帰分析を用いて発光強度の時間変化の回帰式を算出する分析部と、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記データ収集期間内に収集した前記プラズマの発光強度から、前記回帰式から外れた
データを棄却検定により取り除く棄却判定部を有し、前記分析部は、棄却されたデータを除いたデータを用いて、発光強度の時間変化の回帰式を算出する請求項8に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
複数の波長について、発光強度の時間変化の回帰式を算出したときの残差平方和を比較し、前記残差平方和が所定値以下の波長を、エッチング終点を決定するデータを取得する波長として選択する波長選択部を有する請求項8又は請求項9に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−238734(P2012−238734A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107025(P2011−107025)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】