説明

半導体装置の製造方法

【課題】ダイシング専用装置を用いることなくダイシングが行える半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】SOI基板4を用いてMEMSを形成する場合に、支持基板1のダイシング領域をエッチングにて除去すると共に、シリコン層3のダイシング領域をエッチングにて除去し、その後、埋込酸化膜2におけるダイシング領域もエッチングにより除去することでダイシング工程を行う。このように、ダイシング工程をエッチングのみによって行えるため、ダイシング専用装置を用いることなくダイシングが行える半導体装置の製造方法とすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を形成したウェハをチップ単位に分割する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を形成したウェハをチップ単位に分割する際には、半導体素子の形成完了後のダイシング工程において、ブレードダイザーやレーザダイザーを用いたダイシング専用装置を使用することにより分割を行っている。具体的には、ウェハをダイシングテープに貼り付けた後、ウェハを切断しつつダイシングテープを切断してしまわない程度までダイシング専用装置にて切断を行ったのち、各チップをダイシングテープから剥がすことにより、チップ単位に分割した半導体装置を製造している。
【特許文献1】特開2000−031349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ブレードダイザーを用いたダイシング専用装置を使用する場合、ダイシング時に削れ屑が発生し、これが半導体素子に影響を及ぼすという問題がある。また、ダイシングソーの焼き付き防止のために純水をウェハ表面に供給しながらダイシングカットを行うため、半導体素子として可動部が備えられたような物理量センサ等が備えられたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)では、水によって可動部が固定部に貼り付いてしまうスティッキングも懸念される。これを防止するために、MEMSが構成されたウェハの表面を保護テープで覆うなどの処理を行っており、保護テープで覆うための工程やスティッキング検査のための工程が必要になるという問題がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、ダイシング専用装置を用いることなくダイシングが行える半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、半導体素子として可動部が備えられたような物理量センサ等が備えられた半導体装置を製造するにあたり、ダイシング専用装置を用いることなく、かつ、スティッキングが発生しないようにダイシングが行えるようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、支持基板(1)の上に埋込絶縁膜(2)を介してシリコン層(3)が配置されたSOI基板(4)を用意する工程と、SOI基板(4)における支持基板(1)の表面にダイシング領域が開口したマスク(20)を配置し、該マスク(20)を用いてエッチングを行うことにより、支持基板(1)におけるダイシング領域を除去したのち、マスク(20)を除去する工程と、SOI基板(4)におけるシリコン層(3)の表面にダイシング領域が開口したマスク(21)を配置し、該マスク(21)を用いてエッチングを行うことにより、シリコン層(3)におけるダイシング領域を除去したのち、マスク(21)を除去する工程と、支持基板(1)およびシリコン層(3)におけるダイシング領域を除去したのち、SOI基板(4)を支持器具(23)に固定し、支持基板(1)もしくはシリコン層(3)におけるダイシング領域が除去された部分を通じて埋込絶縁膜(2)を除去することにより、ダイシングを行う工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0007】
このように、SOI基板(4)を用いて半導体装置を形成する場合に、支持基板(1)のダイシング領域をエッチングにて除去すると共に、シリコン層(3)のダイシング領域をエッチングにて除去し、その後、埋込酸化膜(2)におけるダイシング領域もエッチングにより除去することでダイシング工程を行っている。これにより、ダイシング工程をエッチングのみによって行えるため、ダイシング専用装置を用いることなくダイシングが行える半導体装置の製造方法とすることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、シリコン層(3)に可動部(6)を有する梁構造体および固定部(7)を備えたセンサエレメントをパターニングする工程と、梁構造体における可動部(6)と対応する位置において埋込絶縁膜(2)を除去することにより可動部(6)をリリースする工程と、を有し、可動部(6)をリリースする工程と字埋込絶縁膜(2)を除去することによりダイシングを行う工程とを同時に行うことを特徴としている。
【0009】
このように、半導体素子として可動部(6)が備えられたようなセンサエレメントが備えられた半導体装置を製造するにあたり、ダイシング工程とセンサエレメントにおける可動部(6)のリリース工程を同時に行うようにしている。このため、製造工程の簡略化が図れるのに加え、ダイシング専用装置を用いることなく、かつ、スティッキングが発生しないようにダイシングを行うことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、センサエレメントをパターニングする工程とシリコン層(3)におけるダイシング領域を除去する工程とを同時に行うことを特徴としている。
【0011】
このように、センサエレメントのパターニングをシリコン層(3)のダイシング領域を除去する工程と同時に行うようにすることで、より製造工程の簡略化を図ることができる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、MEMSとして加速度センサが備えられた半導体装置を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態にかかる製造方法を用いて製造する半導体装置の概略断面図である。まず、図1を参照して本実施形態にかかる製造方法を用いて製造する半導体装置の構成について説明する。
【0015】
図1(a)は加速度センサを含む半導体装置の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。以下、図1を参照して、半導体装置の構造について説明する。
【0016】
本実施形態の半導体装置は、支持基板1の上に埋込酸化膜2を介してシリコン層3が配置されたSOI基板4を用いて形成されている。このうち、半導体装置の周囲が後述するダイシング工程にて分断されることで、チップ化された半導体装置とされている。そして、シリコン層3がパターニングされると共に、図中破線で示した領域内において埋込酸化膜2が除去されることにより、加速度センサ5を構成するセンサエレメント、具体的には、可動部(梁構造体)6や固定部7等が構成されている。
【0017】
可動部6は、錘部8と、可動電極9と、梁10と、アンカー部11とを有して構成されており、全体の上面形状が略正方形状を為した構造とされている。
【0018】
錘部8は長方形状にて構成されており、可動電極9は錘部8の長辺から垂直方向に複数本延設されている。各可動電極9は、同じ幅、同じ長さとされ、一定間隔に形成されることで櫛歯状に配置されている。
【0019】
梁10は、錘部8の両端をアンカー部11に接続しており、各梁10が長方形状の枠体にて構成されている。各梁10は、錘部8および可動電極9の長辺方向に移動させられるように変位可能な構成とされている。
【0020】
アンカー部11は、各梁10を片持ち支持するものである。アンカー部11の下方において埋込酸化膜2が残されており、アンカー部11が支持基板1に対して固定されている。このため、可動部6は、アンカー部11にて支持された状態で梁10の変位に基づいて移動できるようになっている。なお、アンカー部11の表面にはパッド部11aが形成され、図示しないボンディングワイヤなどが電気的に接続されることで可動部6の電位を取り出すことが可能となる。
【0021】
一方、固定部7は、各可動部6の両側に1つずつ配置されており、錘部8が構成する長方形の長辺に沿って延設された支持部12と、この支持部12の長手方向に対して垂直方向に延設された固定電極13と、パッド部14とを有して構成されている。支持部12の下方には埋込酸化膜2が残されており、支持部12が支持基板1に固定された状態となっている。固定電極13は、各支持部12に複数本ずつ備えられることで櫛歯状に配置されている。各固定電極13の間隔は、一定間隔とされており、各固定電極13の幅、長さも一定とされている。そして、各固定電極13が各可動電極9と対向配置させられることで、各固定電極13と各可動電極9との間に容量が形成されている。このため、基板水平方向の加速度が印加されたときに、容量値の変化に基づいてその加速度を検出することが可能となっている。パッド部14は、支持部12の先端位置に備えられており、表面が金属層とされることで図示しないボンディングワイヤなどを電気的に接続させられるようになっている。このため、ボンディングワイヤを通じて所望の電位を印加することができる。
【0022】
また、シリコン層3のうち、可動部6や固定部7以外の周辺部15は、これら各部から離間されるようにして支持基板1上に残されている。図示しないが、この周辺部15にもパッドが形成されることで、例えばGND電位などに電位固定できる構造にされている。
【0023】
以上のように構成された加速度センサ5を有する半導体装置では、可動部6が加速度(物理量)の印加に伴って移動すると、可動部6における可動電極9と固定部7における固定電極13の間に構成される容量値が変化することから、この容量値の変化に基づいて印加された加速度を検出することが可能となっている。
【0024】
続いて、このように構成される半導体装置の製造方法について説明する。図2および図3は、本実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示した断面図である。この図を参照して、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。なお、図2および図3中では、加速度センサ5の構造を簡略化して記載してあるが、実際には、図1と同様の構造のものを製造している。
【0025】
まず、図2(a)に示すように、支持基板1の上に埋込酸化膜2を介してシリコン層3が配置されたSOI基板4を用意する。そして、シリコン層3に対してパッド部11a、パッド部14等、必要となる製造工程を経たのち、必要に応じて研削などによって支持基板1を薄厚化したのち、フォトリソグラフィ工程等により支持基板1の表面にダイシング領域が開口したマスク20を配置する。次に、図2(b)に示すように、マスク20を用いて、支持基板1に対してドライエッチングを行い、支持基板1のうちのダイシング領域を除去する。
【0026】
続いて、マスク20を除去したのち、図2(c)に示すように、SOI基板4を裏返し、フォトリソグラフィ工程等によりシリコン層3の表面にダイシング領域および加速度センサ5のうちの可動部6と固定部7および周辺部15を区画する溝となる領域が開口したマスク21を配置する。そして、図2(d)に示すように、マスク21を用いて、シリコン層3に対してドライエッチングを行い、シリコン層3のうちのダイシング領域を除去すると共に、シリコン層3をパターニングして加速度センサ5のパターンを構成する。これにより、ダイシング領域のうち埋込酸化膜2以外の部分は除去された状態となり、埋込酸化膜2のによって各チップが繋がっている状態となる。
【0027】
続いて、マスク21を除去した後、図3(a)に示すように、SOI基板4の裏面(支持基板1側)に支持器具となるダイシングテープ23を貼り付けることで固定する。そして、SiO2エッチング装置(ドライエッチング装置)を用いて埋込酸化膜2の不要部分、つまりダイシング領域を除去すると共に、加速度センサ5における可動部6の下部等を除去する。これにより、ダイシング工程を行うと同時に加速度センサ5における可動部6のリリースを同時に行うことができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、SOI基板4を用いてMEMSを形成する場合に、支持基板1のダイシング領域をエッチングにて除去すると共に、シリコン層3のダイシング領域をエッチングにて除去し、その後、埋込酸化膜2におけるダイシング領域もエッチングにより除去することでダイシング工程を行っている。
【0029】
このように、ダイシング工程をエッチングのみによって行えるため、ダイシング専用装置を用いることなくダイシングが行える半導体装置の製造方法とすることが可能となる。
【0030】
また、半導体素子として可動部6が備えられたような加速度センサ5が備えられた半導体装置を製造するにあたり、ダイシング工程と加速度センサ5における可動部6のリリース工程を同時に行うようにしている。このため、製造工程の簡略化が図れるのに加え、ダイシング専用装置を用いることなく、かつ、スティッキングが発生しないようにダイシングを行うことが可能となる。さらに、センサエレメントのパターニングをシリコン層3のダイシング領域を除去する工程と同時に行うようにすることで、より製造工程の簡略化を図ることができる。
【0031】
(他の実施形態)
上記実施形態では、SOI基板4を用いて製造する半導体装置として、加速度センサ5を備えたMEMSを例に挙げて説明したが、加速度センサ5以外の構造に対しても本発明を適用することができる。ただし、加速度センサ5と同様、スティッキングが問題となる角速度センサが含まれる半導体装置を製造する場合に本発明を適用すれば、スティッキングが発生しないようにダイシングを行うことが可能となるという効果も得られる。
【0032】
上記実施形態では、シリコン層4のダイシング領域を除去する工程を支持基板1のダイシング領域を除去する工程の後に行うようにしたが、これらの工程を逆にしても構わない。ただし、加速度センサのような機械的な強度が弱いセンサエレメントがシリコン層3に形成されることになるため、それを形成する前に支持基板1のダイシング領域を除去しておくのが望ましい。また、上記実施形態では、シリコン層4のうち除去したダイシング領域を通じてエッチングを行うことで埋め込み酸化膜2を除去するようにしたが、支持基板1のうち除去したダイシング領域を通じてエッチングを行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる加速度センサを含む半導体装置を示した図であり、(a)が正面図、(b)がA−A断面図、(c)がB−B断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 支持基板
2 埋込酸化膜
3 シリコン層
4 SOI基板
5 加速度センサ
6 可動部
7 固定部
12 支持部
20 マスク
21 マスク
23 ダイシングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板(1)の上に埋込絶縁膜(2)を介してシリコン層(3)が配置されたSOI基板(4)を用意する工程と、
前記SOI基板(4)における前記支持基板(1)の表面にダイシング領域が開口したマスク(20)を配置し、該マスク(20)を用いてエッチングを行うことにより、前記支持基板(1)における前記ダイシング領域を除去したのち、前記マスク(20)を除去する工程と、
前記SOI基板(4)における前記シリコン層(3)の表面にダイシング領域が開口したマスク(21)を配置し、該マスク(21)を用いてエッチングを行うことにより、前記シリコン層(3)における前記ダイシング領域を除去したのち、前記マスク(21)を除去する工程と、
前記支持基板(1)および前記シリコン層(3)における前記ダイシング領域を除去したのち、前記SOI基板(4)を支持器具(23)に固定し、前記支持基板(1)もしくは前記シリコン層(3)における前記ダイシング領域が除去された部分を通じて前記埋込絶縁膜(2)を除去することにより、ダイシングを行う工程と、を含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン層(3)に可動部(6)を有する梁構造体および固定部(7)を備えたセンサエレメントをパターニングする工程と、前記梁構造体における前記可動部(6)と対応する位置において前記埋込絶縁膜(2)を除去することにより前記可動部(6)をリリースする工程と、を有し、
前記可動部(6)をリリースする工程と前記字埋込絶縁膜(2)を除去することによりダイシングを行う工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記センサエレメントをパターニングする工程と前記シリコン層(3)における前記ダイシング領域を除去する工程とを同時に行うことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−295720(P2009−295720A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146603(P2008−146603)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】