説明

半導体装置の製造方法

【課題】表面状態および膜質の均一性を保って有機半導体層をパターニングすることが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】先ず第1の工程では、基板1上に有機半導体膜9を成膜する。次の第2工程では、有機半導体膜9上に保護パターン11を形成する。その後第3工程では、保護パターン11をマスクにして、有機半導体層9を有機溶媒に溶解させるかまたは昇華させることにより、パターニング表面を変質させることなく有機半導体層9をパターニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特にはパターニングされた有機半導体層を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コストで大面積化が可能な半導体装置として、活性層に有機半導体層を用いた半導体装置が注目されている。このような有機半導体装置の製造においては、素子分離のためにフォトレジストをマスクに用いて有機半導体層をパターンエッチングすると、フォトレジスト中の溶剤が有機半導体層にダメージを与え、電気的な性質が劣化する問題があった。
【0003】
そこで、有機半導体層上に、溶媒に対して安定な材料からなる保護膜を設け、この保護膜上にフォトレジストからなるマスクをパターン形成する方法が提案されている。この場合、先ずフォトレジストをマスクにしたエッチングによって保護膜をエッチングした後、酸素プラズマによって有機半導体層をエッチングする(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、インクジェット法のような印刷法を適用し、有機半導体層を予め所定の形状にパターン印刷することにより、フォトレジスト形成の際の有機半導体層に対する溶媒の影響を防止する方法も提案されている。この場合、パターン印刷された有機半導体層を覆う状態で、例えばシロキサン化合物を含有する保護膜を形成することにより、以降のプロセスにおいての有機半導体層のダメージも防止される(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−41317(特に段落0057−0058参照)
【特許文献2】特開2008−300580(特に段落0174−−0176参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に代表されるような、保護膜を介してフォトレジスト上から有機半導体層をエッチングする方法では、有機半導体層のエッチング表面が化学反応をともなって変質する。この変質によって形成された変質層は、寄生容量を発生する要因となったり、有機半導体層の特性を劣化させる要因となる。
【0007】
また特許文献2に代表されるような、有機半導体層を予め所定の形状にパターン印刷する方法では、パターン印刷された有機半導体層の表面状態が不均一である。例えばインクジェット法によって有機半導体層をパターン印刷した場合であれば、パターンサイズに依存して有機半導体層の周縁が中心部よりも厚膜化する、いわゆるコーヒーステイン現象による膜厚ばらつきが発生する。このような有機半導体層の膜厚ばらつきは、素子特性の劣化を招く要因となる。
【0008】
そこで本発明は、表面状態および膜質の均一性を保って有機半導体層をパターニングすることが可能で、これにより特性良好に素子分離が可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の半導体装置の製造方法は、次の工程を順次行うことを特徴としている。先ず第1の工程では、基板上に有機半導体膜を成膜する。次の第2工程では、有機半導体膜上に保護パターンを形成する。その後第3工程では、保護パターンをマスクにして、有機半導体層を有機溶媒に溶解させるかまたは昇華させることにより、当該有機半導体層をパターニングする。
【0010】
このような製造方法では、基板上に成膜した有機半導体層をパターニングする手順であるため、有機半導体層の表面状態が均一なものとなる。また、有機半導体層のパターニングは、有機溶媒に対する溶解かまたは昇華によって行われるため、有機半導体層のパターニング面が変質することはなく、周縁部を含めて均一な膜質の有機半導体層のパターンが得られる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、表面状態および膜質の均一性を保ってパターニングされた有機半導体層を得ることができるため、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の製造方法を示す断面工程図(その1)である。
【図2】第1実施形態の製造方法を示す断面工程図(その2)である。
【図3】第2実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図4】第3実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図5】第4実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図6】第5実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて、次に示す順に実施の形態を説明する。
1.第1実施形態(ボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造例)
2.第2実施形態(トップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造例)
3.第3実施形態(有機半導体層を相分離させたボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造例)
4.第4実施形態(有機半導体層を相分離させたトップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造例)
5.第5実施形態(保護膜を2層設けたボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造例)
尚、各実施形態においては共通する構成要素に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
≪1.第1実施形態≫
図1および図2は本発明に係る第1実施形態の製造方法を示す断面工程図である。以下、これらの図面に基づいて、本発明をボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造に適用した第1実施形態を説明する。
【0015】
先ず図1(1)に示すように、基板1上にゲート電極3を形成し、これを覆う状態でゲート絶縁膜5を成膜し、この上部にソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成するまでを通常の手順で行う。
【0016】
例えば、基板1は少なくとも表面が絶縁性に保たれていれば良く、例えばPES(ポリエーテルスルフォン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等からなるプラスチック基板が用いられる。またステンレス(SUS)等の金属箔を樹脂でラミネートした基板、さらにはガラス基板等を用いても良い。フレキシブルな屈曲性を得るためには、プラスチック基板や金属箔を用いた基板が適用される。
【0017】
ゲート電極3のパターン形成は、例えば先ず、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属材料膜を成膜する。この金属材料膜の成膜は、例えばスパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法によって成膜する。その後、フォトリソグラフィーにより金属材料膜上にレジストパターン(図示省略)を形成し、これをマスクにして金属材料膜をエッチングし、ゲート電極3を得る。尚、ゲート電極3の形成方法が限定されることはなく、例えば印刷法を適用しても良い。
【0018】
ゲート絶縁膜5の成膜は、例えば酸化シリコンや窒化シリコン等の無機材料からなるゲート絶縁膜5であれば、CVD法やスパッタリング法による成膜を行う。一方、ポリビニルフェノール(PVP)、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の有機高分子材料からなるゲート絶縁膜5であれば、塗布法や印刷法による成膜を行なう。ここでは例えば架橋ポリマーPVPを用いてゲート絶縁膜5を塗布成膜する。
【0019】
ソース電極7sおよびドレイン電極7dの形成は、ゲート電極3の形成と同様に行われる。これらのソース電極7sおよびドレイン電極7dは、ゲート電極3gの幅方向両脇において、それぞれの端縁を対向配置した状態で形成される。ここでは例えば金(Au)からなるソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成する。
【0020】
次に図1(2)に示すように、ソース電極7sおよびドレイン電極7dが形成された基板1上の全面に、有機半導体層9を成膜する。ここでは特に、有機溶媒Aに溶解する有機半導体材料を用いて有機半導体層9を成膜することとする。一例として、有機溶媒Aに1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを用いた場合、これに溶解するエチルフェニルペリキサンテノキサンテン(EtPhPXX)からなる有機半導体層9を成膜する。
【0021】
このような有機半導体層9の成膜は、真空蒸着やCVD等の真空プロセス、さらにはスピンコート、スリットコート、グラビアコート等の塗布プロセスを適用することができる。真空プロセスのメリットは膜厚や膜質の面内ばらつきが小さく、また下地の濡れ性に成膜が左右されない観点から下地材料および有機半導体材料の選択の幅が広がる。一方、塗布法のメリットは簡便で低コスト、さらに大面積基板上への成膜が可能である。
【0022】
次に図1(3)に示すように、有機半導体層9上においてソース電極7s−ドレイン電極7d間のゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン11を形成する。ここでは、先に成膜した有機半導体層9に対してダメージを与えることのなく保護パターン11を形成することが重要である。このため例えば、有機半導体層9を溶解させたり変質させたりすることのない溶媒Bと、この溶媒Bに対して溶解する材料とを用いた印刷法によって保護パターン11を形成する。
【0023】
このような溶媒Bとしては、水やフッ素系溶媒を用いることができる。溶媒Bとして水を用いた場合、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。また溶媒Bとしてフッ素系溶媒を用いた場合、サイトップ(登録商標)のようなアモルファスフッ素樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。
【0024】
このような保護パターン11の形成に適用する印刷法が特に限定されることはなく、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、乾式スタンプ印刷などから適宜の印刷法を選択して良い。このような印刷法により、高スループット、低コストで保護パターン11の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン11の形成が可能であり、さらに薄膜平坦であるため、保護パターン11を残した場合に上層の作製が容易になる。
【0025】
次に図1(4)に示すように、保護パターン11をマスクにして、有機半導体層9を有機溶媒Aに溶解させてパターニング除去する。有機半導体層9が、EtPhPXXからなる場合であれば、有機溶媒Aとして1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンに有機半導体層9を溶解させてパターニングする。
【0026】
この際、例えば浸漬法、スピン塗布法、スプレー法等の方法で有機半導体層9に対して有機溶媒Aを供給する。尚、有機半導体層9を溶解させた有機溶媒Aからは、精製によって有機半導体材料を回収して再利用することもできる。
【0027】
以上により、基板1上にボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1が得られる。この薄膜トランジスタTr1は、有機半導体層9を用いて基板1上に形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0028】
次に図1(5)に示すように、保護パターン11を有機半導体層9上にそのまま残し、さらに保護パターン11上および有機半導体層9の側面を覆う形状で絶縁性の保護膜13を形成しても良い。このような保護膜13の形成においては、保護パターン11がマスクとなって有機半導体層9にダメージが加わることが防止される。このため、保護膜13の形成方法が限定されることはない。また、保護膜13は、ソース電極7sやドレイン電極7dまたはこれらと同一層からなる電極配線の必要部分を露出する形状に形成する。このため例えばここでは、印刷法によって保護膜13をパターン形成する。
【0029】
以上の後には例えば図2に示すように、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜15を成膜し、この層間絶縁膜15にドレイン電極7dに達する接続孔15aを形成し、さらに層間絶縁膜15上に、第3層目の配線17を形成する。層間絶縁膜15は、例えばフォトジストを用い、スピンコート法によって成膜したフォトレジス膜に対して、リソグラフィー処理を行うことで接続孔15aを形成しても良い。この場合、保護膜13によって有機半導体層9の側面が保護されるため、フォトレジスト中の溶剤が有機半導体層にダメージを与えることが防止される。また層間絶縁膜15は、スクリーン印刷法により、予め接続孔15aを備えた形状として形成しても良い。配線17は、接続孔15aを介して薄膜トランジスタTr1のドレイン電極7dに接続する形状に形成する。このような配線17は、先ず蒸着法によって配線膜を成膜し、次にリソグラフィー法によって形成したレジストパターンをマスクにして配線膜をパターンエッチングして形成するか、またはスクリーン印刷法やインクジェット法のような印刷法を適用して形成する。
【0030】
以上により半導体装置19を完成させる。尚、この半導体装置19を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線17を画素電極として形成すれば良い。
【0031】
以上説明した第1実施形態によれば、図1(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9を、保護パターン11をマスクにしてパターニングする手順である。このため、印刷によって予めパターン形成された有機半導体層と比較して、パターニング後の有機半導体層9の表面状態が均一なものとなる。また、有機半導体層9のパターニングは、有機溶媒に対する溶解によって行われるため、パターニング面が変質した変質層が形成されることはなく、周縁部を含めて均一な膜質の有機半導体層9のパターンを得ることができる。この結果、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0032】
<第1実施形態の変形例>
次に、先の図1に基づいて第1実施形態の変形例を説明する。
【0033】
先ず、上述した第1実施形態において図1(1)を用いて説明したと同様に、基板1上にゲート電極3、ゲート絶縁膜5、ソース電極7s/ドレイン電極7dを形成するまでを行う。
【0034】
次に、図1(2)に示すように、ソース電極7sおよびドレイン電極7dが形成された基板1上の全面に、有機半導体層9’を成膜する。ここで成膜する有機半導体層9’は、次に行う保護パターンの形成プロセスに対する耐性を有するとともに、保護パターンの構成材料よりも昇華温度が低い材料を用いて構成することが重要である。
【0035】
このような有機半導体層9’の成膜は、第1実施形態と同様に、真空蒸着やCVD等の真空プロセス、さらにはスピンコート、スリットコート、グラビアコート等の塗布プロセスで行うことができる。ここでは例えば真空蒸着によって、ペンタセンからなる有機半導体層9’を成膜する。
【0036】
次に、図1(3)に示す工程では、有機半導体層9’上においてソース電極7s−ドレイン電極7d間のゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン11’を形成する。ここでは、第1実施形態と同様に、先に成膜した有機半導体層9’に対してダメージを与えることのなく保護パターン11’を形成することが重要である。またこれと共に、有機半導体層9’よりも昇華温度が高い材料を用いて保護パターン11’を形成することが重要である。
【0037】
このような保護パターン11’は、第1実施形態と同様に、有機半導体層9’を溶解させたり変質させることのない溶媒Bと、この溶媒Bに対して溶解する材料を用いた印刷法によって保護パターン11’を形成する。このような溶媒Bとしては、水やフッ素系溶媒を用いることができる。溶媒Bとして水を用いた場合、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂からなる保護パターン11’を印刷法によって形成する。また溶媒Bとしてフッ素系溶媒を用いた場合、サイトップ(登録商標)のようなアモルファスフッ素樹脂からなる保護パターン11’を印刷法によって形成する。印刷法の適用により、高スループット、低コストで保護パターン11の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン11の形成が可能であり、さらに薄膜平坦であるため、保護パターン11を残した場合に上層の作製が容易になる。
【0038】
次に、図1(4)に示す工程では、保護パターン11’をマスクにして、保護膜パターン11’の昇華温度よりも低い温度で有機半導体層9’を昇華させてパターニング除去する。例えば保護パターン11’がポリビニルアルコール(PVA)からなり、有機半導体層9’がペンタセンからなる場合であれば、150℃に設定した真空オーブンで12時間のアニール処理を行う。これにより、ポリビニルアルコール(PVA)からなる保護パターン11’が設けられていない部分において、ペンタセンからなる有機半導体層9’を昇華させて除去し、パターニングされた有機半導体層9’を得る。
【0039】
尚、アニール処理の際に真空オーブン内において発生したガスから、有機半導体材料(ペンタセン)を回収して再利用することもできる。
【0040】
以上により、基板1上にボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1が得られる。この薄膜トランジスタTr1は、有機半導体層9’を用いて形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0041】
以降は、第1実施形態において図1(5)および図2を用いて説明したと同様に、必要に応じて保護パターン11’を有機半導体層9’上にそのまま残し、さらに有機半導体層9’の側面を覆う形状で絶縁性の保護膜13を形成しても良い。そして、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜15を成膜し、この層間絶縁膜15にドレイン電極7dに達する接続孔15aを形成し、さらに層間絶縁膜15上に、第3層目の配線17を形成し、半導体装置19を完成させる。尚、この半導体装置19を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線17を画素電極として形成すれば良い。
【0042】
以上説明した第1実施形態の変形例であっても、図1(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9’を、保護パターン11’をマスクにしてパターニングする手順である。このため、印刷によって予めパターン形成された有機半導体層と比較して、パターニング後の有機半導体層9’の表面状態が均一なものとなる。また、有機半導体層9’のパターニングは、有機半導体層9’の昇華によって行われるため、パターニング面が変質した変質層が形成されることはなく、周縁部を含めて均一な膜質の有機半導体層9’のパターンを得ることができる。この結果、第1実施形態と同様に、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0043】
≪2.第2実施形態≫
図3は本発明に係る第2実施形態の製造方法を示す断面工程図である。以下、この図面に基づいて、本発明をトップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造に適用した第2実施形態を説明する。
【0044】
先ず図3(1)に示すように、基板1上にゲート電極3を形成し、これを覆う状態でゲート絶縁膜5を成膜するまでを、第1実施形態と同様に通常の手順で行う。
【0045】
その後、このゲート絶縁膜5上に、有機半導体層9を成膜する。この有機半導体層9は、第1実施形態と同様であり、特定の有機溶媒Aに溶解する有機半導体材料を用いて適宜選択された方法にて成膜することとする。ここでは一例として、特定の有機溶媒Aとして1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを用いた場合、これに溶解するエチルフェニルペリキサンテノキサンテン(EtPhPXX)からなる有機半導体層9を成膜する。
【0046】
次に図3(2)に示すように、有機半導体層9上においてゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン11を形成する。この保護パターン11は、第1実施形態と同様であり、有機半導体層9に対してダメージを与えることなく形成されることが重要であり、有機半導体層9を溶解させたり変質させたりすることのない溶媒Bを用いた印刷法によって形成さえる。例えば溶媒Bとして水を用いた場合、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。また溶媒Bとしてフッ素系溶媒を用いた場合、サイトップ(登録商標)のようなアモルファスフッ素樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。印刷法の適用により、高スループット、低コストで保護パターン11の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン11の形成が可能である。
【0047】
次に図3(3)に示すように、保護パターン11をマスクにして、有機半導体層9を有機溶媒Aに溶解させてパターニング除去する。有機半導体層9が、EtPhPXXからなる場合であれば、有機溶媒Aとして1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンに有機半導体層9を溶解させてパターニングする。ここでは、たとえば浸漬、スピン塗布、スプレー等の方法で有機半導体層9に対して有機溶媒Aを供給する。尚、有機半導体層9を溶解させた有機溶媒Aからは、精製によって有機半導体材料を回収して再利用することもできる。
【0048】
有機半導体層9のパターニング後には、保護パターン11を除去する。ここでは、上述した溶剤Bを用いることにより、有機半導体層9に対してダメージを与えることなく、溶剤Bに保護パターン11を溶解させて除去する。尚ここでは、有機半導体層9に対してダメージを与えることなく保護パターン11を溶解できる溶剤であれば、印刷に用いた溶剤B以外であっても保護パターン11の除去に用いることができる。また保護パターン11を溶解させた溶剤Bからは、精製によって保護パターン11の構成材料を回収して際利用することもできる。
【0049】
次に、図3(4)に示すように、ソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成する。これらのソース電極7sおよびドレイン電極7dは、ゲート電極3を幅方向両脇の有機半導体層9の上部において、それぞれの端縁をゲート電極3を挟んで対向配置した状態で形成される。これらのソース電極7sおよびドレイン電極7dは、印刷法やその他の公知のターニング方法によって形成でき、例えばメタルマスクを用いた金属材料の蒸着や、銀(Ag)ペーストを用いたスクリーン印刷などによって形成する。
【0050】
以上により、基板1上にトップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr2が得られる。この薄膜トランジスタTr2は、有機半導体層9を用いて基板1上に形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0051】
以降は、第1実施形態において図1(5)および図2を用いて説明したと同様に、必要に応じて有機半導体層9を覆う絶縁性の保護膜13を形成しても良い。そして、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜を成膜し、この層間絶縁膜にドレイン電極7dに達する接続孔を形成し、さらに層間絶縁膜上に、第3層目の配線を形成し、半導体装置を完成させる。尚、この半導体装置を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線を画素電極として形成すれば良い。
【0052】
以上説明した第2実施形態であっても、図3(3)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9を、保護パターン11をマスクにして溶解させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層9のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0053】
<第2実施形態の変形例>
以上の第2実施形態に対しても第1実施形態の変形例を適用することができる。この場合、図3(1)を用いて説明した工程において成膜する有機半導体層9’は、有機溶媒Aに対する溶解性が問われることはない。しかしながら、次に行う保護パターンの形成プロセスに対する耐性を有するとともに、保護パターンよりも昇華温度が低い材料を用いて構成することは、第1実施形態の変形例と同様である。
【0054】
次に、図3(2)に示す工程で形成する保護パターン11’は、先に成膜した有機半導体層9’に対してダメージを与えることなく、かつ有機半導体層9’よりも昇華温度が高い材料を用いて形成することが重要であることは、第1実施形態の変形例と同様である。
【0055】
その後、図3(3)に示す工程では、第1実施形態の変形例と同様に、保護パターン11’をマスクにして、保護膜パターン11’の昇華温度よりも低い温度で有機半導体層9’を昇華させてパターニング除去する。
【0056】
以降は、第2実施形態と同様に行うことで、トップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr2を備えた半導体装置を完成させる。
【0057】
以上説明した第2実施形態の変形例であっても、図3(3)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9’を、保護パターン11’をマスクにして昇華させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層9’のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0058】
≪3.第3実施形態≫
図4は本発明に係る第3実施形態の製造方法を示す断面工程図である。この第3実施形態が第1実施形態と異なるところは、相分離によって有機半導体層を形成する手順にある。以下、この図面に基づいて、本発明をボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造に適用した第3実施形態を説明する。
【0059】
先ず、図4(1)に示すように、基板1上にゲート電極3を形成し、これを覆う状態でゲート絶縁膜5を成膜し、さらにソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成するまでを、第1実施形態と同様に通常の手順で行う。
【0060】
その後、ソース電極7sおよびドレイン電極7dが設けられたゲート絶縁膜5上に、有機半導体材料を含有する混合インク層31を成膜する。この混合インク層31は目的とする有機半導体材料と共に、他の有機材料(混合材料)を含有しており、次に行う相分離において有機半導体材料がゲート絶縁膜5側(基板1側)の下方に分離するように材料が組み合わせられていることとする。ここでは有機半導体材料としてTIPSペンタセン(6,13−bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)を用い、有機材料としてポリαメチルスチレン(Poly-α-methylstyrene:PaMS)を用い、これらをトルエンに溶解させたインクを用いた塗布法により、混合インク層31を成膜する。
【0061】
次に図4(2)に示すように、混合インク層(31)内の有機半導体材料と有機材料とを相分離させ、基板1側を有機半導体材料からなる有機半導体層31sとし、その上部に有機材料からなる絶縁層31iを積層させた構成とする。このような相分離は、混合インク層(31)を乾燥させることにより行われる。
【0062】
次に、図4(3)に示すように、有機半導体層31sおよび絶縁層31iの積層部上において、ソース電極7s−ドレイン電極7d間のゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン33を形成する。この際、有機半導体層31sは、絶縁層31iで保護されている。このため、保護パターン33は、有機半導体層31sへのプロセスダメージを考慮して形成する必要はなく、次に行う絶縁層31iおよび有機半導体層31sの除去に対して耐性を有する材料を用いて形成されれば良い。
【0063】
このような保護パターン33は、例えば印刷法によって形成する。ここでは、第1実施形態と同様に、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂またはサイトップ(登録商標)のようなフッ素系溶媒に溶解するアモルファスフッ素樹脂からなる保護パターン33を印刷法によって形成する。印刷法の適用により、高スループット、低コストで保護パターン33の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン33の形成が可能であり、さらに薄膜平坦であるため保護パターン33を残した場合に上層の作製が容易になる。
【0064】
ここで適用する印刷法が特に限定されることはなく、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、乾式スタンプ印刷などから適宜の印刷法を選択して良い。
【0065】
次いで、図4(4)に示すように、保護パターン33をマスクにして、絶縁層31iおよび有機半導体層31sを、有機溶媒Aに溶解させてパターニング除去する。この有機溶媒Aは、絶縁層31iおよび有機半導体層31sは溶解するが、保護パターン33は溶解しないものであり、例えばトルエンであることとする。
【0066】
この際、例えば浸漬法、スピン塗布法、スプレー法等の方法で絶縁層31iおよび有機半導体層31sに対して有機溶媒Aを供給する。尚、絶縁層31iおよび有機半導体層31sを溶解させた有機溶媒Aからは、精製によって有機半導体材料および有機材料を回収して再利用することもできる。
【0067】
以上により、基板1上にボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1が得られる。この薄膜トランジスタTr1は、有機半導体層33sを用いて基板1上に形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0068】
次に図4(5)に示すように、第1実施形態と同様に必要に応じて保護パターン33をそのまま残し、さらに保護パターン33上および有機半導体層31sの側面を覆う形状で絶縁性の保護膜13を形成しても良い。このような保護膜13の形成においては、保護パターン11がマスクとなって有機半導体層9にダメージが加わることが防止される。このため、保護膜13の形成方法が限定されることはない。また、保護膜13は、ソース電極7sやドレイン電極7dまたはこれらと同一層からなる電極配線の必要部分を露出する形状に形成する。このため例えばここでは、印刷法によって保護膜13をパターン形成する。
【0069】
以降は、第1実施形態において図2を用いて説明したと同様に、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜を成膜し、この層間絶縁膜にドレイン電極7dに達する接続孔を形成し、さらに層間絶縁膜上に、第3層目の配線を形成し、半導体装置を完成させる。尚、この半導体装置を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線を画素電極として形成すれば良い。
【0070】
以上説明した第3実施形態であっても、図4(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層31sを、保護パターン33をマスクにして溶解させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層31sのパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0071】
<第3実施形態の変形例>
以上説明した第3実施形態に対しても第1実施形態の変形例を適用することができる。この場合、図4(3)を用いて説明した工程で形成する保護パターン33’は、先に成膜した絶縁層31iおよび有機半導体層31sよりも昇華温度が高い材料を用いて形成することが重要である。
【0072】
その後、図4(4)に示す工程では、第1実施形態の変形例と同様に、保護パターン33’をマスクにして、保護膜パターン33’の昇華温度よりも低い温度で絶縁層31iおよび有機半導体層31sを昇華させてパターニング除去する。
【0073】
以降は、第1実施形態と同様に行うことで、ボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1を備えた半導体装置を完成させる。
【0074】
以上説明した第3実施形態の変形例であっても、図4(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層31sを、保護パターン33’をマスクにして昇華させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層31sのパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0075】
≪4.第4実施形態≫
図5は本発明に係る第4実施形態の製造方法を示す断面工程図である。以下、この図面に基づいて、本発明をトップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造に適用した第4実施形態を説明する。
【0076】
先ず図5(1)に示すように、基板1上にゲート電極3を形成し、これを覆う状態でゲート絶縁膜5を成膜するまでを、他の実施形態と同様に通常の手順で行う。
【0077】
その後、このゲート絶縁膜5上に、有機半導体材料を含有する混合インク層31’を成膜する。この混合インク層31’は目的とする有機半導体材料と共に、他の有機材料(混合材料)を含有していることは第3実施形態と同様である。
【0078】
その後、ソース電極7sおよびドレイン電極7dが設けられたゲート絶縁膜5上に、有機半導体材料を含有する混合インク層31’を成膜する。この混合インク層31’は目的とする有機半導体材料と共に、他の絶縁性有機材料(混合材料)を含有しており、次に行う相分離において絶縁性有機材料がゲート絶縁膜5側(基板1側)の下方に分離するように材料が組み合わせられていることとする。ここでは有機半導体材料としてペリキサンテノキサンテン(PXX)を用い、有機材料としてポリαメチルスチレン(Poly-α-methylstyrene:PaMS)を用い、これらをトルエンに溶解させたインクを用いた塗布法により、混合インク層31’を成膜する。
【0079】
次に図5(2)に示すように、混合インク層(31’)内の有機半導体材料と絶縁性有機材料とを相分離させ、基板1側を絶縁性有機材料からなる絶縁層31i’とし、その上部に有機半導体材料からなる絶縁層31s’を積層させた構成とする。このような相分離は、混合インク層(31’)を乾燥させることにより行われる。尚、相分離によって得られた絶縁層31i’は、ゲート絶縁膜5と共に、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜の一部を構成する層となる。
【0080】
次いで、図5(3)に示すように、有機半導体層31s’上においてゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン11を形成する。この保護パターン11は、第1実施形態と同様であり、有機半導体層31s’に対してダメージを与えることのなく形成されることが重要であり、有機半導体層31s’を溶解させたり変質させたりすることのない溶媒Bを用いた印刷法によって形成さえる。例えば溶媒Bとして水を用いた場合、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。また溶媒Bとしてフッ素系溶媒を用いた場合、サイトップ(登録商標)のようなアモルファスフッ素樹脂からなる保護パターン11を印刷法によって形成する。印刷法の適用により、高スループット、低コストで保護パターン11の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン11の形成が可能である。
【0081】
その後、保護パターン11をマスクにして、有機半導体層31s’を有機溶媒Aに溶解させてパターニング除去する。有機半導体層31s’が、PXXからなる場合であれば、有機溶媒Aとして1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンに有機半導体層31s’を溶解させてパターニングする。ここでは、たとえば浸漬、スピン塗布、スプレー等の方法で有機半導体層31s’に対して有機溶媒Aを供給する。この際、有機半導体層31s’と共に、絶縁層31i’がパターニングされても良い。尚、有機半導体層31s’を溶解させた有機溶媒Aからは、精製によって有機半導体材料を回収して再利用することもできる。
【0082】
次に図5(4)に示すように、有機半導体層31s’のパターニング後には、保護パターン(11)を除去する。ここでは、上述した溶剤Bを用いることにより、有機半導体層31s’および絶縁層31i’に対してダメージを与えることなく、溶剤Bに保護パターン(11)を溶解させて除去する。尚ここでは、有機半導体層31s’に対してダメージを与えることなく保護パターン(11)を溶解できる溶剤であれば、印刷に用いた溶剤B以外であっても保護パターン(11)の除去に用いることができる。
【0083】
以上の後には図5(5)に示すように、ソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成する。これらのソース電極7sおよびドレイン電極7dは、ゲート電極3を幅方向両脇の有機半導体層31s’の上部において、それぞれの端縁をゲート電極3を挟んで対向配置した状態で形成される。これらのソース電極7sおよびドレイン電極7dは、印刷法やその他の公知のターニング方法によって形成でき、例えばメタルマスクを用いた金属材料の蒸着や、銀(Ag)ペーストを用いたスクリーン印刷などによって形成する。
【0084】
以上により、基板1上にトップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr2が得られる。この薄膜トランジスタTr2は、有機半導体層31s’を用いて基板1上に形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0085】
以降は、第1実施形態において図1(5)および図2を用いて説明したと同様に、必要に応じて有機半導体層31s’を覆う絶縁性の保護膜13を形成しても良い。そして、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜を成膜し、この層間絶縁膜にドレイン電極7dに達する接続孔を形成し、さらに層間絶縁膜上に、第3層目の配線を形成し、半導体装置を完成させる。尚、この半導体装置を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線を画素電極として形成すれば良い。
【0086】
以上説明した第4実施形態であっても、図5(3)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層31s’を、保護パターン11をマスクにして溶解させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層31s’のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0087】
<第4実施形態の変形例>
以上説明した第4実施形態に対しても第1実施形態の変形例を適用することができる。この場合、図5(3)を用いて説明した工程で形成する保護パターン11’は、先に成膜した絶縁層31i’および有機半導体層31s’よりも昇華温度が高い材料を用いて形成することが重要である。
【0088】
その後、他の実施形態の変形例と同様に、保護パターン11’をマスクにして、保護膜パターン11’の昇華温度よりも低い温度で絶縁層31i’および有機半導体層31s’を昇華させてパターニング除去する。
【0089】
以降は、第1実施形態と同様に行うことで、トップコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr2を備えた半導体装置を完成させる。
【0090】
以上説明した第4実施形態の変形例であっても、図5(3)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層31s’を、保護パターン11’をマスクにして昇華させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層31s’のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0091】
≪5.第5実施形態≫
図6は本発明に係る第5実施形態の製造方法を示す断面工程図である。この第5実施形態が第1実施形態と異なるところは、保護パターンの下層に保護膜を設けて2層構造としたところにある。以下、この図面に基づいて、本発明をボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタの製造に適用した第5実施形態を説明する。
【0092】
先ず、図6(1)に示すように、基板1上にゲート電極3を形成し、これを覆う状態でゲート絶縁膜5を成膜し、さらにソース電極7sおよびドレイン電極7dを形成し、これを覆う状態で有機半導体層9を成膜するまでを、第1実施形態と同様に通常の手順で行う。ここでは有機半導体層9の成膜の一例として、例えばエタノールに溶解させたTiPSペンタセンをエタノールに溶解させたインクを用いて塗布成膜されることとする。
【0093】
次に図6(2)に示すように、有機半導体層9の全面を覆う状態で保護膜41を成膜する。ここでは先に成膜した有機半導体層9に対してダメージを与えることのなく保護膜41を形成することが重要である。このため例えば、有機半導体層9を溶解させたり変質させたりすることのない溶媒Bと、この溶媒Bに対して溶解する材料とを用いた塗布法や印刷法によって保護膜41を形成する。
【0094】
このような溶媒Bとしては、水やフッ素系溶媒を用いることができる。溶媒Bとして水を用いた場合、ポリビニルアルコール(PVA)やシアノエチルプルラン(CyEPL)等の水溶媒系樹脂からなる保護膜41を印刷法によって形成する。また溶媒Bとしてフッ素系溶媒を用いた場合、サイトップ(登録商標)のようなアモルファスフッ素樹脂からなる保護膜41を印刷法によって形成する。
【0095】
ここでは例えば、PVA水溶液をインク溶液として用いた塗布法によって保護膜41を成膜することとする。
【0096】
次に図6(3)に示すように、保護膜41上において、ソース電極7s−ドレイン電極7d間のゲート電極3上に重なる位置に、保護パターン43を形成する。この際、有機半導体層9は、保護膜41で保護されている。このため、保護パターン43は、有機半導体層9へのプロセスダメージを考慮して形成する必要はなく、次に行う保護膜41および有機半導体層9の除去に対して耐性を有する材料を用いて形成されれば良い。
【0097】
このような保護パターン43は、例えば印刷法によって形成する。ここでは、例えばポリスチレン(polystyrene:PS)をトルエンに溶解させたインクを用いた印刷法によって保護パターン43を形成する。ここで適用する印刷法が特に限定されることはなく、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、乾式スタンプ印刷などから適宜の印刷法を選択して良い。印刷法の適用により、高スループット、低コストで保護パターン43の形成が可能である。また特に、乾式スタンプ法を適用することにより、薄膜で高繊細な保護パターン43の形成が可能であり、さらに薄膜平坦であるため保護パターン43を残した場合に上層の作製が容易になる。
【0098】
次に図6(4)に示すように、保護パターン43をマスクにして、PVAからなる保護膜41を水に溶解させてパターニング除去する。続いて、保護パターン43をマスクにして、TiPSペンタセンからなる有機半導体層9をエタノール(有機溶媒A)に溶解させてパターニング除去する。
【0099】
この際、例えば浸漬法、スピン塗布法、スプレー法等の方法で保護膜41および有機半導体層9に対して水またはエタノール(有機溶媒A)を供給する。尚、有機半導体層9を溶解させた有機溶媒Aからは、精製によって有機半導体材料を回収して再利用することもできる。
【0100】
以上により、基板1上にボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1が得られる。この薄膜トランジスタTr1は、有機半導体層9を用いて基板1上に形成された他の薄膜トランジスタやその他の素子に対して素子分離されたものとなる。
【0101】
以降は、他の実施形態と同様に、例えば図6(5)に示すように必要に応じて保護パターン41を有機半導体層9上にそのまま残し、さらに有機半導体層9の側面を覆う形状で絶縁性の保護膜13を形成しても良い。そして、基板1上の全面を覆う状態で層間絶縁膜を成膜し、この層間絶縁膜にドレイン電極7dに達する接続孔を形成し、さらに層間絶縁膜上に、第3層目の配線を形成し半導体装置を完成させる。尚、この半導体装置を表示装置のパックプレーンとして用いる場合であれば、配線を画素電極として形成すれば良い。
【0102】
以上説明した第5実施形態であっても、図6(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9を、保護パターン43をマスクにして溶解させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層9のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0103】
<第5実施形態の変形例>
以上説明した第5実施形態に対しても第1実施形態の変形例を適用することができる。この場合、図6(3)を用いて説明した工程で形成する保護パターン43’は、先に成膜した保護膜41および有機半導体層9よりも昇華温度が高い材料を用いて形成することが重要である。
【0104】
その後、図6(4)に示す工程では、第1実施形態の変形例と同様に、保護パターン43’をマスクにして、保護膜パターン43’の昇華温度よりも低い温度で保護膜41および有機半導体層9を昇華させてパターニング除去する。
【0105】
以降は、第1実施形態と同様に行うことで、ボトムコンタクト・ボトムゲート構造の薄膜トランジスタTr1を備えた半導体装置を完成させる。
【0106】
以上説明した第5実施形態の変形例であっても、図6(4)を用いて説明したように、基板1上に成膜した有機半導体層9を、保護パターン43’をマスクにして昇華させてパターニングする手順である。このため第1実施形態と同様に、表面状態および膜質が均一な有機半導体層9のパターンを得ることができ、特性良好に素子分離を行うことが可能になる。
【0107】
尚、以上の各実施形態およびその変形例においては、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタを備えた半導体装置の製造方法に本発明を適用した手順を説明した。しかしながら本発明はこれに限定されることはなく、有機半導体層をパターニングする工程を有する半導体装置の製造に広く適用可能であり、例えばトップゲート構造の薄膜トランジスタを有する半導体装置や、受光素子を有する半導体装置の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…基板、9,9’,31s,31s’…有機半導体層、11,11’,33,43,43’…保護パターン、19…半導体装置、Tr1…薄膜トランジスタ(ボトムコンタクト・ボトムゲート構造)、Tr2…薄膜トランジスタ(トップコンタクト・ボトムゲート構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に有機半導体層を成膜する第1工程と、
前記有機半導体層上に保護パターンを形成する第2工程と、
前記保護パターンをマスクにして前記有機半導体層を有機溶媒に溶解させるかまたは昇華させることにより、当該有機半導体層をパターニングする第3工程とを行う
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記保護パターンを印刷法によってパターン形成する
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護パターンは、フッ素系樹脂または水溶性ポリマーからなる
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2工程では、前記有機半導体層よりも昇華温度が高い材料を用いて前記保護パターンを形成し、
前記第3工程では、前記保護パターンの昇華温度よりも低い温度で前記有機半導体層を昇華させる
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程の後、
前記有機半導体層に対して前記保護パターンを選択的に除去する第4工程を行う
請求項1〜4の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程では、前記有機半導体層を有機溶媒に溶解させ、
前記第3工程の後に、前記有機半導体層を溶解させた有機溶媒中から有機半導体材料を回収する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程では、前記有機半導体層を昇華させると共に昇華させた当該有機半導体層の構成材料を回収する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−77470(P2011−77470A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230234(P2009−230234)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】