説明

半導体装置の製造方法

【課題】第1の金属元素および第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する際に、第3の金属酸化膜中の第1の金属元素及び第2の金属元素の組成比の制御性を向上させる。
【解決手段】第1の金属元素を含む第1原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで第1の金属酸化膜を形成する工程と、第2の金属元素を含む第2原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで第2の金属酸化膜を形成する工程と、を交互に所定回数行うことで第3の金属酸化膜を形成する工程を有し、第1原料および第2原料として、第2の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚が、第1の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚よりも小さくなるような原料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に金属酸化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ容量を維持しつつDRAMの微細化を進めるには、例えば、キャパシタ絶縁膜に用いられる高誘電率絶縁膜の膜厚を薄くするか、高誘電率絶縁膜の誘電率を増大させる必要がある。高誘電率絶縁膜の薄膜化は、キャパシタにおけるリーク電流の増大、デバイスにおける消費電力の増加、記憶保持能力の低下を招いてしまうことがある。そのため、より高い誘電率を有する高誘電率絶縁膜の登場が求められている。近年、高誘電率絶縁膜中に他の元素を添加することで誘電率を増大させる手法が研究されている。例えば、酸化ハフニウム(HfO)膜中に他の元素としてアルミニウム(Al)を添加することで、誘電率を増大させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
HfO膜中にAlが添加されたHfAlO膜は、Hf(第1の金属元素)を含むHfO膜(第1の金属酸化膜)を形成する工程と、Al(第2の金属元素)を含む酸化アルミニウム(AlO)膜(第2の金属酸化膜)を形成する工程と、を交互に所定回数行うことで形成できる。HfAlO膜中のHfとAlとの組成比は、上述の各工程1回あたりに形成されるHfO膜及びAlO膜の膜厚により決定される。しかしながら、目標とする組成比によっては、組成比を自由に制御することは困難な場合があった。例えば、Hfに対するAlの組成比を数%以内に低減させるような微量組成制御を行うことは困難であった。
【0004】
そこで本発明は、第1の金属元素および第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する際に、第3の金属酸化膜中の第1の金属元素及び第2の金属元素の組成比の制御性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理室内に、第1の金属元素を含む第1原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素を含む第1の金属酸化膜を形成する工程と、前記処理室内に、第2の金属元素を含む第2原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第2の金属元素を含む第2の金属酸化膜を形成する工程と、を交互に所定回数行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素および前記第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する工程を有し、前記第1原料および前記第2原料として、前記各金属酸化膜を同じ成膜モードで形成した場合に、前記第2の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚が、前記第1の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚よりも小さくなるような原料を用いる半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、第1の金属元素および第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する際に、第3の金属酸化膜中の第1の金属元素及び第2の金属元素の組成比の制御性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるALD飽和モードでの第1原料供給、酸化剤供給およびALD飽和モードでの第2原料供給、酸化剤供給を交互に所定回数行う際のそれぞれの供給のタイミングを例示するタイミングチャートとしてのシーケンス図である。
【図6】ALD飽和モードにおけるウェハ表面への原料ガス分子の吸着状態を示す概略図である。
【図7】膜厚が1.11ÅのHfO膜と膜厚が0.09ÅのAlO膜とをHfO、AlOの順に積層させて形成したHfAlO膜の断面概略図である。
【図8】膜厚が1.11ÅのHfO膜と膜厚が0.09ÅのAlO膜とをHfO、HfO、AlOの順に積層させて形成したHfAlO膜の断面概略図である。
【図9】1サイクルあたりのHf原料供給時間と、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚との関係(CVDモード)を示すグラフ図である。
【図10】1サイクルあたりのHf原料供給時間と、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚との関係(ALD飽和モード)を示すグラフ図である。
【図11】サイクル数とその際形成されるAlO膜の膜厚との関係を示すグラフ図である。
【図12】本発明の他の実施形態にかかる縦型装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の実施形態の説明に先立ち、発明者等が得た知見について説明する。
【0009】
(微量組成制御に関する知見)
第3の金属酸化膜中の第1の金属元素及び第2の金属元素の組成比は、上述の各工程1回あたりに形成される第1の金属酸化膜の膜厚、及び第2の金属酸化膜の膜厚により決定される。
【0010】
第1の金属酸化膜および第2の金属酸化膜の形成には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の他、膜厚を正確に制御するのに有効なALD(Atomic Layer Deposition)法が用いられている。ALD法を用いる場合、第1の金属酸化膜を形成する工程では、基板を収容した処理室内に第1の金属元素を含む第1原料と酸化剤とを交互に供給する工程(サイクル)を1回以上行う。また、第2の金属酸化膜を形成する工程では、基板を収容した処理室内に第2の金属元素を含む第2原料と酸化剤とを交互に供給する工程(サイクル)を1回以上行う。そして、第1の金属酸化膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数と、第2の金属酸化膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数と、をそれぞれ調整することにより、第1の金属酸化膜および第2の金属酸化膜の膜厚をそれぞれ所定の膜厚として、第3の金属酸化膜の組成を制御する。
【0011】
例えば、基板上にHf(ハフニウム)を含むHfO膜(酸化ハフニウム膜。以下、HfO膜ともいう)を形成する工程と、Al(アルミニウム)を含むAl膜(酸化アルミニウム膜。以下、AlO膜ともいう)を形成する工程と、を交互に所定回数行うこと
で、基板上にHfAlO(ハフニウムアルミネート)膜が形成される。なお、Hfが第1の金属元素に、Alが第2の金属元素に、HfO膜が第1の金属酸化膜に、AlO膜が第2の金属酸化膜に、HfAlO膜が第3の金属酸化膜に対応している。ALD法を用いる場合、HfO膜を形成する工程では、基板を収容した処理室内へのHf原料導入→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとし、このサイクルを1回以上行う。また、AlO膜を形成する工程では、基板を収容した処理室内へのAl原料導入→Al原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとし、このサイクルを1回以上行う。
【0012】
仮に、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚、及び1サイクルあたりに形成されるAlO膜の膜厚が共に1Åである場合、HfAlO膜中におけるHfOとAlOとの組成比を1:1とするには、HfO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数、及びAlO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数を同じ回数とすればよい。例えば、HfO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数、及びAlO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数を共に1回とすればよい。そして、HfO膜を形成する工程とAlO膜を形成する工程とを交互にそれぞれ50回ずつ実施して、すなわち、HfO膜を形成する工程とAlO膜を形成する工程とを1セットとしてこのセットを50回実施して、HfO膜とAlO膜とをそれぞれ1Å程度の厚さで交互に積層させることで、HfOとAlOとの組成比が1:1であり、膜厚が100ÅであるようなHfAlO膜を形成することができる。
【0013】
このように、HfO膜とAlO膜とをそれぞれ1Å程度の厚さで交互に積層させる場合には、HfO膜とAlO膜との間でHf及びAlが成膜途中に相互に拡散する。その結果、HfAlO膜の組成比が膜厚方向において均一となる。
【0014】
しかしながら、目標とする第3の金属酸化膜の組成比によっては、第3の金属酸化膜の組成比の制御が困難となる場合があることを発明者等は突き止めた。例えば、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚、及び1サイクルあたりに形成されるAlO膜の膜厚が共に1Åであり、HfOとAlOとの組成比が4:1であるようなHfAlO膜を形成する場合、HfO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数を4回とし、AlO膜を形成する工程におけるサイクルの実施回数を1回とし、膜厚が4ÅのHfO膜と、膜厚が1ÅのAlO膜とを交互に積層させることとなる。しかしながら、HfOとAlOとの組成比が19:1であるようなHfAlO膜を形成する場合には、HfO膜を形成する工程におけるサイクル数が増加し、目標となる組成比を維持することが困難となる。つまり、AlO膜の低濃度を目指すことは、HfO膜を形成する工程のサイクル数の増加、すなわちHfO膜の膜厚の増加につながり、HfO膜とAlO膜との間におけるHfO及びAlOの相互拡散が不十分となってしまい、HfAlO膜中におけるHfOとAlOとの組成比が膜厚方向において不均一となってしまう場合がある。かかる課題は、金属酸化膜を構成する複数の元素のうち1つの元素の組成比(比率)を数%以内、例えば1〜10%となるように制御する場合、すなわち微量組成制御を行う場合において、特に顕在化する。
【0015】
発明者等は、上述の課題を解決する方法について鋭意研究を行った。その結果、CVD法やALD法により基板に対し2種類以上の金属酸化膜を形成する各成膜工程を、交互に所定回数行い、2種類以上の金属元素を含む所定組成の金属酸化膜を形成する場合、1サイクルあたりに形成される各金属酸化膜の膜厚が近いと、すなわち、各金属酸化膜の成膜レートが近いと、金属酸化膜全体における複数の金属元素のうち1つの金属元素の組成比を数%以内とするような微量組成制御を行うことは困難であると分かった。
【0016】
これに対し発明者等は、鋭意研究の結果、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用い、1サイクルあたりに形成される2種類以上の金属酸化膜の膜厚を大きく異ならせることで、第3の金属酸化膜中の金属元素の組成比率の制御性を向上させることができる
と考えた。すなわち、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用いることで、組成比の最も大きい金属元素を含む金属酸化膜の1サイクルあたりに形成される膜厚と比べ、それよりも組成比の小さい金属元素を含む金属酸化膜の1サイクルあたりに形成される膜厚を、およそ1/5〜1/10とする。これにより、上述のような微量組成制御を実現することが可能であるとの知見を得た。
【0017】
例えば、HfOとAlOとの組成比がおよそ10:1であるようなHfAlO膜を形成する場合、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用いることで、図7に示すように、1サイクルあたりに形成されるHfO膜(組成比の最も大きい金属元素を含む金属酸化膜)の膜厚が1.11Åとなり、1サイクルあたりに形成されるAlO膜(Hfよりも組成比の小さい金属元素を含む金属酸化膜)の膜厚が0.09Åとなるようにする。そして、HfO膜を形成する工程でのサイクルの実施回数、及びAlO膜を形成する工程でのサイクルの実施回数を共に1回とし、これらの工程を交互に所定回数行う。その結果、所定組成(HfO:AlO=10:1)の金属酸化膜が得られると共に、HfOとAlOとが成膜途中に相互拡散し、HfAlO膜の組成が基板面内方向、膜厚方向共に均一になる。なお、図7は、便宜上、HfOとAlOとが相互拡散する前の状態を示している。
【0018】
また、HfOとAlOとの組成比がおよそ20:1であるようなHfAlO膜を形成する場合、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用いることで、図8に示すように、1サイクルあたりに形成されるHfO膜(組成比の最も大きい金属元素を含む金属酸化膜)の膜厚が1.11Åとなり、1サイクルあたりに形成されるAlO膜(Hfよりも組成比の小さい金属元素を含む金属酸化膜)の膜厚が0.09Åとなるようにする。そして、HfO膜を形成する工程でのサイクルの実施回数を2回とし、AlO膜を形成する工程でのサイクルの実施回数を1回とし、これらの工程を交互に所定回数行う。その結果、所定組成(HfO:AlO=20:1)の金属酸化膜が得られると共に、HfOとAlOとが成膜途中に相互拡散し、HfAlO膜の組成が基板面内方向、膜厚方向共に均一になる。なお、図8は、便宜上、HfOとAlOとが相互拡散する前の状態を示している。
【0019】
なお、発明者等は、上述のHfO膜の形成は、CVDモード或いはALD飽和モードのいずれを用いてもよく、AlO膜の形成は、ALD飽和モードを用いることが好ましいとの知見を得た。CVDモードとは、処理温度(基板温度)を原料ガスが自己分解する程度の温度として原料ガスを供給して成膜するモードをいう。また、ALD飽和モードとは、処理温度(基板温度)を原料ガスが自己分解しない程度の温度としつつ、基板上への原料ガス分子の吸着量が飽和状態(基板上への原料ガス分子の吸着が飽和し、セルフリミットが効いた状態)となるまで原料ガスを供給して成膜するモードをいう(図6参照)。CVDモードでは、比較的大きな成膜速度が得られるため、薄膜形成の所要時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。また、ALD飽和モードでは、基板上への原料ガス分子の吸着が飽和するという現象を利用することで、極めて薄い薄膜を形成することができる。また、ALD飽和モードでは、基板上への原料ガス分子の吸着量が安定することから、1サイクルあたりに形成される薄膜の膜厚を安定させることができ、サイクル数を制御することで、形成される薄膜の膜厚を再現性よく調整することが可能となる。
【0020】
本発明は、発明者らが見出した上記知見に基づくものである。
【0021】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図3,4を参照しながら説明
する。図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図であり、図4は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0023】
(処理室)
図3,4に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0024】
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0025】
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図4で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図3で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0026】
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させる貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、図4に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、図3に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウェハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0027】
(ウェハ搬送口)
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開くことにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するようになっている。搬送室271は搬送容器(密閉容器)272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、搬送室271のウェハ搬送口250が設けられた側と
反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット273によりロードロック室内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0028】
(排気系)
処理室201(処理容器202)の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0029】
(ガス導入口)
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0030】
(シャワーヘッド)
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させる分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させる第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0031】
(排気ダクト)
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0032】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の
上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0033】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0034】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、ウェハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0035】
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系(ガス供給ライン)の構成図である。
【0036】
(液体原料供給系)
処理室201の外部には、第1の金属元素としてのHf(ハフニウム)を含む第1原料(以下、第1液体原料ともいう)としての有機金属液体原料(以下、Hf原料ともいう)を供給する第1液体原料供給源220hと、第2の金属元素としてのAl(アルミニウム)を含む第2原料(以下、第2液体原料ともいう)としての有機金属液体原料(以下、Al原料ともいう)を供給する第2液体原料供給源220aと、が設けられている。第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)としてそれぞれ構成されている。
【0037】
第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220aには、圧送ガス供給管237h,237aがそれぞれ接続されている。圧送ガス供給管237h,237aの上流側端部には、図示しない圧送ガス供給源が接続されている。また、圧送ガス供給管237h,237aの下流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220a内の上部に存在する空間に連通しており、この空間内に圧送ガスを供給するようになっている。なお、圧送ガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガス等の不活性ガスが用いられる。
【0038】
また、第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220aには、第1液体原料供給管211h、第2液体原料供給管211aがそれぞれ接続されている。ここで、第1液体原料供給管211h、第2液体原料供給管211aの上流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220a内に収容した液体原料内に浸されている。また、第1液体原料供給管211h、第2液体原料供給管211aの下流側端部は、液体原料を気化させる気化部としての気化器229h,229aにそれぞれ接続されている。なお、第1液体原料供給管211h、第2液体原料供給管211aには、液体原料の液体供給流量を制御する流量制御器としての液体流量コントローラ(LMFC)221h,221aと、液体原料の供給を制御する開閉弁としてのバルブvh1,va1と、がそれぞれ設けられている。なお、バルブvh1,va1は、それぞれ気化器229h,229aの内部に設けられている。
【0039】
上記構成により、バルブvh1,va1を開くとともに、圧送ガス供給管237h,237aから圧送ガスを供給することにより、第1液体原料供給源220h、第2液体原料供給源220aから気化器229h,229aへ液体原料を圧送(供給)することが可能となる。主に、第1液体原料供給源220h、圧送ガス供給管237h、第1液体原料供給管211h、液体流量コントローラ221h、バルブvh1により第1液体原料供給系(第1液体原料供給ライン)が構成され、主に、第2液体原料供給源220a、圧送ガス供給管237a、第2液体原料供給管211a、液体流量コントローラ221a、バルブva1により第2液体原料供給系(第2液体原料供給ライン)が構成される。
【0040】
(気化部)
液体原料を気化する気化部としての気化器229h,229aは、液体原料をヒータ23h,23aで加熱して気化させて原料ガスを発生させる気化室20h,20aと、この気化室20h,20a内へ液体原料を吐出するまでの流路である液体原料流路21h,21aと、液体原料の気化室20h,20a内への供給を制御する上述のバルブvh1,va1と、気化室20h,20aにて発生させた原料ガスを後述する第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213aへ供給するアウトレットとしての原料ガス供給口22h,22aと、をそれぞれ有している。上述の第1液体原料供給管211h、第2液体原料供給管211aの下流側端部は、それぞれバルブvh1,va1を介して液体原料流路21h,21aの上流側端部に接続されている。液体原料流路21h,21aには、それぞれキャリアガス供給管24h,24aの下流側端部が接続されており、液体原料流路21h,21aを介して気化室20h,20a内にキャリアガスを供給するように構成されている。キャリアガス供給管24h,24aの上流側端部には、キャリアガスとしてのNガスを供給するNガス供給源230cが接続されている。キャリアガス供給管24h,24aには、Nガスの供給流量を制御する流量制御器としての流量コントローラ(MFC)225h,225aと、Nガスの供給を制御するバルブvh2,va2とが、それぞれ設けられている。主に、Nガス供給源230c、キャリアガス供給管24h,24a、流量コントローラ225h,225a、バルブvh2,va2によりキャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。なお、気化器229h,229aはそれぞれ第1気化部、第2気化部として構成されている。
【0041】
(原料ガス供給系)
上記の気化器229h,229aの原料ガス供給口22h,22aには、処理室201内に原料ガスを供給する第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213aの上流側端部がそれぞれ接続されている。第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213aの下流側端部は、合流するように一本化して原料ガス供給管213となり、原料ガス供給管213はガス導入口210に接続されている。第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213aには、処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブvh3,va3がそれぞれ設けられている。
【0042】
上記構成により、気化器229h,229aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブvh3,va3を開くことにより、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213aから原料ガス供給管213を介して処理室201内へと原料ガスを供給することが可能となる。主に、第1原料ガス供給管213h、バルブvh3により、第1原料ガス供給系(第1原料ガス供給ライン)が構成され、主に、第2原料ガス供給管213a、バルブva3により、第2原料ガス供給系(第2原料ガス供給ライン)が構成される。また、第1液体原料供給系、第1気化部、第1原料ガス供給系により第1原料供給系(Hf原料供給系)が構成され、第2液体原料供給系、第2気化部、第2原料ガス供給系により第2原料供給系(Al原料供給系)が構成される。
【0043】
(酸化剤供給系)
また、処理室201の外部には、酸素(O)ガスを供給する酸素ガス供給源230oが設けられている。酸素ガス供給源230oには、第1酸素ガス供給管211oの上流側端部が接続されている。第1酸素ガス供給管211oの下流側端部には、プラズマにより酸素ガスから反応ガス(反応物)すなわち酸化剤としてのオゾン(O)ガスを生成させるオゾナイザ229oが接続されている。なお、第1酸素ガス供給管211oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御器としての流量コントローラ(MFC)221oが設けられている。
【0044】
オゾナイザ229oのアウトレットとしてのオゾンガス供給口22oには、酸化剤供給管としてのオゾンガス供給管213oの上流側端部が接続されている。また、オゾンガス供給管213oの下流側端部は、原料ガス供給管213に合流するように接続されている。すなわち、オゾンガス供給管213oは、酸化剤(反応ガス)としてのオゾンガスを処理室201内に供給するように構成されている。なお、オゾンガス供給管213oには、処理室201内へのオゾンガスの供給を制御するバルブvo3が設けられている。
【0045】
なお、第1酸素ガス供給管211oの流量コントローラ221oよりも上流側には、第2酸素ガス供給管212oの上流側端部が接続されている。また、第2酸素ガス供給管212oの下流側端部は、オゾンガス供給管213oのバルブvo3よりも上流側に接続されている。なお、第2酸素ガス供給管212oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御器としての流量コントローラ(MFC)222oが設けられている。
【0046】
上記構成により、オゾナイザ229oに酸素ガスを供給してオゾンガスを発生させるとともに、バルブvo3を開くことにより、処理室201内へオゾンガスを供給することが可能となる。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給中に、第2酸素ガス供給管212oから酸素ガスを供給するようにすれば、処理室201内へ供給するオゾンガスを酸素ガスにより希釈して、オゾンガス濃度を調整することが可能となる。主に、酸素ガス供給源230o、第1酸素ガス供給管211o、オゾナイザ229o、流量コントローラ221o、オゾンガス供給管213o、バルブvo3、第2酸素ガス供給管212o、流量コントローラ222oにより酸化剤供給系(酸化剤供給ライン)が構成される。
【0047】
(パージガス供給系)
また、処理室201の外部には、パージガスとしてのNガスを供給するNガス供給源230pが設けられている。Nガス供給源230pには、パージガス供給管214の上流側端部が接続されている。パージガス供給管214の下流側端部は、3本のライン、すなわち、第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214oに分岐している。第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214oの下流側端部は、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a、オゾンガス供給管213oのバルブvh3,va3
,vo3の下流側にそれぞれ接続されている。なお、第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214oには、Nガスの供給流量を制御する流量制御器としての流量コントローラ(MFC)224h,224a,224oと、Nガスの供給を制御するバルブvh4,va4,vo4とが、それぞれ設けられている。主に、Nガス供給源230p、パージガス供給管214、第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214o、流量コントローラ224h,224a,224o、バルブvh4,va4,vo4によりパージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0048】
(ベント系)
また、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a、オゾンガス供給管213oのバルブvh3,va3,vo3の上流側には、第1ベント管215h、第2ベント管215a、第3ベント管215oの上流側端部がそれぞれ接続されている。また、第1ベント管215h、第2ベント管215a、第3ベント管215oの下流側端部は合流するように一本化してベント管215となり、ベント管215は排気管261の原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。第1ベント管215h、第2ベント管215a、第3ベント管215oには、ガスの供給を制御するバルブvh5,va5,vo5がそれぞれ設けられている。
【0049】
上記構成により、バルブvh3,va3,vo3を閉じ、バルブvh5,va5,vo5を開くことで、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a、オゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。
【0050】
また、第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214oのバルブvh4,va4,vo4よりも上流側であって流量コントローラ224h,224a,224oよりも下流側には、第4ベント管216h、第5ベント管216a、第6ベント管216oがそれぞれ接続されている。また、第4ベント管216h、第5ベント管216a、第6ベント管216oの下流側端部は合流するように一本化してベント管216となっている。ベント管216は、排気管261の原料回収トラップ263よりも下流側であって真空ポンプ264よりも上流側に接続されている。第4ベント管216h、第5ベント管216a、第6ベント管216oには、ガスの供給を制御するバルブvh6,va6,vo6がそれぞれ設けられている。
【0051】
上記構成により、バルブvh4,va4,vo4を閉じ、バルブvh6,va6,vo6を開くことで、第1パージガス供給管214h、第2パージガス供給管214a、第3パージガス供給管214o内を流れるNガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。なお、バルブvh3,va3,vo3を閉じ、バルブvh5,va5,vo5を開くことで、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a、オゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気する場合には、バルブvh4,va4,vo4を開くことにより、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a、オゾンガス供給管213o内にNガスを導入して、各原料ガス供給管内をパージするように設定されている。また、バルブvh6,va6,vo6は、バルブvh4,va4,vo4と逆動作を行うように設定されており、Nガスを各原料ガス供給管内に供給しない場合には、処理室201をバイパスしてNガスを排気するようになっている。主に、第1ベント管215h、第2ベント管215a、第3ベント管215o、ベント管215、第4ベント管216h、第5ベント管216a、第6ベント管216o、ベント管216、バルブvh5,va5,vo5、バルブvh6,va6,vo6によりベント系(ベントライン)が
構成される。
【0052】
(コントローラ)
なお、本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、圧力調整器(APC)262、気化器229h,229a、オゾナイザ229o、真空ポンプ264、バルブvh1〜vh6,va1〜va6,vo3〜vo6、液体流量コントローラ221h,221a、流量コントローラ225h,225a,224h,224a,221o,222o,224o等の動作を制御する。
【0053】
(2)基板処理工程
続いて、本発明の実施形態にかかる半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いてウェハ上に薄膜を形成する基板処理工程について、図2、図5を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。また、図5は、本発明の一実施形態にかかるALD飽和モードでの第1原料供給、酸化剤供給およびALD飽和モードでの第2原料供給、酸化剤供給を交互に所定回数行う際のそれぞれの供給のタイミングを例示するタイミングチャートとしてのシーケンス図である。本実施形態では、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料、すなわち第1原料(第1液体原料)としてHf原料を用い、第2原料(第2液体原料)としてAl原料を用い、また、酸化剤としてオゾンガスを用い、ウェハ上に所望組成、例えばHfO:AlO=100:1〜10:1の範囲内の組成の第3の金属酸化膜としてのハフニウムアルミネート(HfAlO)膜を形成する例について説明する。すなわち、HfAlO膜を構成する複数の金属元素(Hf,Al)のうち、組成比の最も大きい第1の金属元素がHfであり、その第1の金属元素を含む第1の金属酸化膜がHfO膜であり、それ(Hf)よりも組成比の小さい第2の金属元素がAlであり、その第2の金属元素を含む第2の金属酸化膜がAlO膜である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によって制御される。
【0054】
(基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2))
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウェハ200は、サセプタ217の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0055】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図3に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没し、ウェハ200はサセプタ217上に載置される(S2)。
【0056】
(圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4))
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200温度を昇温させ、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。
【0057】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4)、および、後述する基板搬出工程(S15)においては、真空ポンプ264を
作動させつつ、バルブvh3,va3,vo3を閉じ、バルブvh4,va4,vo4を開くことで、処理室201内にNガスを常に流しておく。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。なお、真空ポンプ264は、少なくとも基板搬入工程(S1)から後述の基板搬出工程(S15)までの間は、常に作動させた状態とする。
【0058】
工程S1〜S4と並行して、第1液体原料(Hf原料)を気化させた第1原料ガス(Hf原料ガス)を生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブvh3を閉じたまま、バルブvh2を開き気化器229hへキャリアガスを供給しつつ、バルブvh1を開くとともに、圧送ガス供給管237hから圧送ガスを供給して、第1液体原料供給源220hから気化器229hへ第1液体原料を圧送(供給)し、気化器229hにて第1液体原料を気化させて第1原料ガスを生成させておく。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブvh3を閉じたまま、バルブvh5を開くことにより、第1原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。なお、本実施形態では、第1液体原料(Hf原料)として、例えばHf(MMP)を用いる。
【0059】
また、このとき、第2液体原料(Al原料)を気化させた第2原料ガス(Al原料ガス)も生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva3を閉じたまま、バルブva2を開き気化器229aへキャリアガスを供給しつつ、バルブva1を開くとともに、圧送ガス供給管237aから圧送ガスを供給して、第2液体原料供給源220aから気化器229aへ第2液体原料を圧送(供給)し、気化器229aにて第2液体原料を気化させて第2原料ガスを生成させておく。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva5を開くことにより、第2原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。なお、本実施形態では、第2液体原料(Al原料)として、例えばAl(MMP)を用いる。
【0060】
さらに、このとき、酸化剤(反応ガス)としてのオゾンガスも生成させておくことが好ましい。すなわち、酸素ガス供給源230oからオゾナイザ229oへ酸素ガスを供給して、オゾナイザ229oにてオゾンガスを生成させておく。この際、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブvo3を閉じたまま、バルブvo5を開くことにより、オゾンガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。
【0061】
気化器229h,229aにて第1原料ガス、第2原料ガスを安定した状態で生成させたり、あるいはオゾナイザ229oにてオゾンガスを安定した状態で生成させたりするには所定の時間を要する。すなわち、原料ガスやオゾンガスの生成初期は原料ガスやオゾンガスが不安定な状態で供給される。このため、本実施形態では、第1原料ガス、第2原料ガス、オゾンガスを予め生成させておくことで安定供給可能な状態としておき、バルブvh3,vh5,va3,va5,vo3,vo5の開閉を切り替えることにより、第1原料ガス、第2原料ガス、オゾンガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への第1原料ガス、第2原料ガス、オゾンガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0062】
<HfAlO膜形成工程>
(第1原料供給工程(S5))
続いて、バルブvh4,vh5を閉じ、バルブvh3を開いて、処理室201内への第1原料ガスの供給を開始する。第1原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な第1原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第1原料ガスの供給時には、第2原料ガス供給管213aおよびオゾンガス供給管213o内への第
1原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第1原料ガスの拡散を促すように、バルブva4,vo4は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0063】
バルブvh3を開き、第1原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvh3を閉じ、バルブvh4,vh5を開いて、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。また、同時に、バルブvh1を閉じて、気化器229hへの第1液体原料の供給も停止する。
【0064】
(パージ工程(S6))
バルブvh3を閉じ、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止した後は、バルブvh4,va4,vo4は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留している第1原料ガスを除去する。
【0065】
(酸化剤供給工程(S7))
処理室201内のパージが完了したら、バルブvo4,vo5を閉じ、バルブvo3を開いて、処理室201内への酸化剤としてのオゾンガスの供給を開始する。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、バルブvh4,va4は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0066】
バルブvo3を開き、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvo3を閉じ、バルブvo4,vo5を開いて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0067】
(パージ工程(S8))
バルブvo3を閉じ、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止した後は、バルブvh4,va4,vo4は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去する。
【0068】
(サイクル工程(S9))
そして、工程S5〜S8までを1サイクルとしてこのサイクルを所定サイクル、例えば1サイクル行うことにより、ウェハ200上に第1の金属酸化膜としての酸化ハフニウム(HfO)膜を形成する。
【0069】
なお、このとき、ウェハ200の温度はヒータ206により所定の処理温度、例えば140〜450℃、好ましくは200〜300℃となるように制御され、処理室201内の圧力は圧力調整器262により所定の処理圧力、例えば50〜800Pa、好ましくは100〜800Paとなるように制御される。また、第1液体原料としてのHf(MMP)の供給流量は、液体流量コントローラ221hにより所定の供給流量、例えば0.01〜0.2g/minとなるように制御され、酸化剤としてのOガスの供給流量は、流量コントローラ221oにより所定の供給流量、例えば200〜5000sccmとなるよ
うに制御される。
【0070】
また、このとき、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚は、HfAlO膜の組成に従った膜厚とする。例えば、HfAlO膜の組成をHfO:AlO=100:1〜10:1の範囲内の組成とするには、HfO膜形成工程(工程S5〜S9)1回あたりに形成するHfO膜の膜厚を1〜10Åとし、後述するAlO膜形成工程(S10〜S13)1回あたりに形成するAlO膜の膜厚を0.1Åとする。
【0071】
(第2原料供給工程(S10))
続いて、バルブva4,va5を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への第2原料ガスの供給を開始する。第2原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な第2原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第2原料ガスの供給時には、第1原料ガス供給管213hおよびオゾンガス供給管213o内への第2原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第2原料ガスの拡散を促すように、バルブvh4,vo4は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0072】
バルブva3を開き、第2原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4,va5を開いて、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。また、同時に、バルブva1を閉じて、気化器229aへの第2液体原料の供給も停止する。
【0073】
(パージ工程(S11))
バルブva3を閉じ、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止した後は、バルブvh4,va4,vo4は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留している第2原料ガスを除去する。
【0074】
(酸化剤供給工程(S12))
処理室201内のパージが完了したら、バルブvo4,vo5を閉じ、バルブvo3を開いて、処理室201内への酸化剤としてのオゾンガスの供給を開始する。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213h、第2原料ガス供給管213a内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、バルブvh4,va4は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0075】
バルブvo3を開き、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvo3を閉じ、バルブvo4,vo5を開いて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0076】
(パージ工程(S13))
バルブvo3を閉じ、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止した後は、バルブvh4,va4,vo4は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去
する。
【0077】
そして、工程S10〜S13までを1サイクルとしてこのサイクルを1サイクル行うことにより、ウェハ200上に形成されている酸化ハフニウム(HfO)膜上に第2の金属酸化膜としての酸化アルミニウム(AlO)膜を形成する。
【0078】
(サイクル工程(S14))
そして、工程S5〜S13までを1サイクルとしてこのサイクルを所定サイクル、例えば1サイクル行うことにより、ウェハ200上に、HfO膜とAlO膜との積層構造を形成する。すなわちHfO膜形成工程(工程S5〜S9)とAlO膜形成工程(S10〜S13)とを交互に所定回数、例えばそれぞれ1回ずつ行うことにより、ウェハ200上にHfO膜とAlO膜との積層構造を形成する。そして、HfO膜とAlO膜との間でHf及びAlが成膜途中に相互に拡散することにより、ウェハ200上に、第3の金属酸化膜としてのハフニウムアルミネート(HfAlO)膜が形成される。
【0079】
なお、このとき、ウェハ200の温度はヒータ206により所定の処理温度、例えば140〜450℃、好ましくは200〜300℃となるように制御され、処理室201内の圧力は圧力調整器262により所定の処理圧力、例えば50〜800Pa、好ましくは100〜800Paとなるように制御される。すなわち、本実施形態では、AlO膜形成工程におけるウェハ200の温度、処理室201内の圧力が、HfO膜形成工程におけるウェハ200の温度、処理室201内の圧力と、それぞれ同一となるように制御している。なお、Alの微量組成制御(Hfに対するAlの添加量を微量、例えば10%以下に抑える制御)の制御性を高くすることを優先する場合、ウェハ200の温度は、AlO膜の成膜レートが低くなる低温側、例えば140〜200℃とするのがよい。なお、ウェハ200の温度をHfO膜形成工程とAlO膜形成工程とで変えることも可能であり、その場合に、Alの微量組成制御を優先させることを考慮すると、AlO膜形成工程におけるウェハ温度は140〜300℃、好ましくは140〜200℃とするのがよい。なお、処理室201内の圧力も、HfO膜形成工程とAlO膜形成工程とで変えることも可能である。また、第2液体原料としてのAl(MMP)の供給流量は、液体流量コントローラ221aにより所定の供給流量、例えば0.01〜0.2g/minとなるように制御され、酸化剤としてのOガスの供給流量は、流量コントローラ221oにより所定の供給流量、例えば200〜5000sccmとなるように制御される。
【0080】
また、このとき、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚は、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚を基準として、HfAlO膜の組成に従った膜厚とする。例えば、HfAlO膜の組成をHfO:AlO=100:1〜10:1の範囲内の組成とするには、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚を1〜10Åとし、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚を0.1Åとする。
【0081】
なお、AlO膜形成工程と並行して、第1原料ガスを生成(予備気化)させておく。また、次のHfO膜形成工程と並行して、第2原料ガスを生成(予備気化)させておく。
【0082】
以上のように、工程S5〜S9までのHfO膜形成工程と、工程S10〜S13までのAlO膜形成工程とを交互に所定回数行うことにより、ウェハ200上にハフニウムアルミネート(HfAlO)膜を形成する。この際、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚と、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚とをそれぞれ制御することで、HfAlO膜を構成する複数の金属元素(Hf,Al)の組成比を自由に制御する。また、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用いることで、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚と、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚と、を大きく異ならせる。これにより、HfAlO膜を構成する複数
の元素(Hf,Al)のうち、Hfに対するAlの比率を例えば数%以内に低減させるような微量組成制御を行う。また、HfAlO膜の組成を、膜厚方向(深さ方向)においてもウェハ200面内方向においても均一となるようにすることができる。
【0083】
(基板搬出工程(S15))
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所望膜厚・組成のHfAlO膜を形成した後のウェハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。なお、その後、ウェハ200上に形成されたHfAlO膜に対しアニール(熱処理)を施すことで、HfO膜とAlO膜との間でのHf及びAlの相互拡散はより一層促進され、HfAlO膜の組成は、膜厚方向においてもウェハ面内方向においてもより一層均一なものとなる。
【0084】
なお、HfO膜形成工程はCVDモードまたはALD飽和モードにて行う。
【0085】
HfO膜形成工程をCVDモードにて行う場合には、処理温度(ウェハ200の温度)を第1原料ガスが自己分解する程度の温度、例えば300℃となるように制御する。この場合、第1原料供給工程(S5)においては、第1原料ガスが自己分解し、ウェハ200上に例えば1〜5Å程度のHfを含む膜であるHfO膜が形成(堆積)される。酸化剤供給工程(S7)においては、オゾンガスにより、ウェハ200上に形成された1〜5Å程度のHfO膜からC、H等の不純物が除去される。
【0086】
HfO膜形成工程をCVDモードにて行う場合、上述の工程S5〜S8で構成されるサイクルを1サイクル行い、第1原料供給工程(S5)における第1原料ガスの供給時間を制御することで、形成されるHfO膜の膜厚を調整することができる。CVDモードでは、比較的大きな成膜速度が得られるため、HfO膜形成工程の所要時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。なお、HfO膜形成工程1回あたりに形成されるHfO膜の膜厚(成膜速度)は、第1原料ガスの供給時間だけでなく、第1原料ガスの供給流量、ウェハ200の温度、処理室201内の圧力(第1原料ガスの分圧)等を変化させることにより調整可能することも可能である。
【0087】
HfO膜形成工程をALD飽和モードにて行う場合には、処理温度(ウェハ200の温度)を第1原料ガスが自己分解しない程度の温度、例えば200℃となるように制御する。この場合、第1原料供給工程(S5)においては、第1原料ガス分子はウェハ200上に吸着する。そしてこのとき、第1原料ガス分子の吸着量が飽和状態となるまで第1原料ガスの供給を行う。係る様子を図6に示す。図6に示すように、第1原料供給工程(S5)では、ウェハ200上への第1原料ガス分子の吸着量が飽和し、セルフリミットの効いた状態(第1原料ガス分子がそれ以上吸着することの出来ない状態)になってから第1原料ガスの供給を停止している。その後、酸化剤供給工程(S7)においては、ウェハ200上に吸着した第1原料ガス分子とオゾンガスとが反応することにより、ウェハ200上にALD飽和モードの飽和膜厚である1Å程度のHfO膜が形成される。このとき、オゾンガスにより、HfO膜中に混入しようとするC、H等の不純物が脱離する。
【0088】
HfO膜形成工程をALD飽和モードで行う場合、ウェハ200上への第1原料ガス分子の吸着が飽和するという現象を利用することで、極めて薄いHfO膜を形成することができる。また、上述したように、ウェハ200上への第1原料ガス分子の吸着量が飽和してから第1原料ガスの供給を停止しているため、第1原料供給工程(S5)終了時におけるウェハ200上への第1原料ガス分子の吸着量を安定させることができ、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚を安定させることが可能となる。そして、上述の工程S5〜S8で構成されるサイクルのサイクル数を制御することで、形成されるHfO膜
の膜厚を再現性よく調整することが可能となる。例えば、上述のサイクルを3サイクル行うことでHfO膜の膜厚を再現性よく、例えば3Å(=1Å/サイクル×3サイクル)とすることができ、上述のサイクルを4サイクル行うことでHfO膜の膜厚を再現性よく、例えば4Å(=1Å/サイクル×4サイクル)とすることができる。
【0089】
また、AlO膜形成工程はALD飽和モードにて行う。
【0090】
AlO膜形成工程をALD飽和モードにて行う場合には、処理温度(ウェハ200の温度)を第2原料ガスが自己分解しない程度の温度、例えば200℃となるように制御する。この場合、第2原料供給工程(S10)においては、第2原料ガス分子はウェハ200上に吸着する。そしてこのとき、第2原料ガス分子の吸着量が飽和状態となるまで第2原料ガスの供給を行う。係る様子を図6に示す。図6に示すように、第2原料供給工程(S10)では、ウェハ200上への第2原料ガス分子の吸着量が飽和し、セルフリミットの効いた状態(第2原料ガス分子がそれ以上吸着することの出来ない状態)になってから第2原料ガスの供給を停止している。その後、酸化剤供給工程(S12)においては、ウェハ200上に吸着した第2原料とオゾンガスとが反応することにより、ウェハ200上にALD飽和モードの飽和膜厚である例えば0.1Å程度のAlO膜が形成される。このとき、オゾンガスにより、AlO膜中に混入しようとするC、H等の不純物が脱離する。
【0091】
AlO膜形成工程をALD飽和モードにて行う場合、上述したように、極めて薄いAlO膜を形成することができる。また、1サイクルあたりに形成されるAlO膜の膜厚を安定させることが可能となる。なお、本実施形態では、上述の工程S10〜S13で構成されるサイクルを1回だけ実施する例について説明したが、このサイクルのサイクル数を制御することも可能であり、これにより、形成されるAlO膜の膜厚を再現性よく調整することが可能となる。
【0092】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又はそれ以上の効果を奏する。
【0093】
本実施形態によれば、HfO膜形成工程とAlO膜形成工程とを交互に所定回数行うことにより、所望膜厚のハフニウムアルミネート(HfAlO)膜を形成する。これにより、HfAlO膜の組成比の制御性を向上させることが出来る。すなわち、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚と、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚とをそれぞれ調整することで、HfAlO膜を構成する複数の金属元素(Hf,Al)の組成比を自由に制御することが可能となる。なお、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚は、上述の工程S5〜S8を1サイクルとしてこのサイクルの実施回数を調整することで制御できる。また、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚は、上述の工程S10〜S13を1サイクルとしてこのサイクルの実施回数を調整することで制御出来る。
【0094】
本実施形態によれば、成膜レートの大きく異なる2種類以上の原料を用いることで、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜と、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚と、を大きく異ならせ、これにより、HfAlO膜を構成する複数の元素(Hf,Al)のうち、Hfに対するAlの比率を例えば数%以内に低減させるような微量組成制御を行うことが可能となる。例えば、第1液体原料(Hf原料)としてHf(MMP)を、第2液体原料(Al原料)としてAl(MMP)を用いることで、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚を例えば1.0〜10.0Åとなるように制御しつつ、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚を例えば0.1Åとなるように制御する。これにより、HfAlO膜中におけるHfに対するAlの組成比を、例えば1〜10%(HfO:AlO=10:1〜100:1)に低減させるような
微量組成制御を行うことが出来る。
【0095】
本実施形態によれば、HfAlO膜の組成の均一性を、HfAlO膜の膜厚方向(深さ方向)においてもウェハ200の面内方向においてもそれぞれ向上させることが可能となる。例えば、上述の微量組成制御を行う場合であっても、AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚を0.1Åと薄くすることで、HfO膜形成工程1回あたりに形成するHfO膜の膜厚を、積層されたHfO膜とAlO膜との間でのHf及びAlの相互拡散が妨げられない程度の厚さ、例えば1.0〜10Åの厚さとすることができる。これにより、積層されたHfO膜とAlO膜との間でのHf及びAlの相互拡散を促すことができ、HfAlO膜の組成の均一性を、HfAlO膜の膜厚方向(深さ方向)においてもウェハ200の面内方向においてもそれぞれ向上させることが出来る。
【0096】
本実施形態によれば、HfAlO膜を構成する複数の金属元素(Hf,Al)のうち組成比の小さい方の金属元素であるAlを含むAlO膜は、ALD飽和モードにて形成する。ALD飽和モードでは、ウェハ200上への第2原料ガス分子の吸着が飽和するという現象を利用することで、極めて薄い(例えば0.1Å程度)AlO膜を形成することができる。AlO膜形成工程1回あたりに形成するAlO膜の膜厚を、極めて薄くすることで、上述の微量組成制御を容易に実現することが可能となる。また、ウェハ200上への第2原料ガスの吸着量が飽和してから第2原料ガスの供給を停止するため、第2原料ガス供給工程(S10)終了時におけるウェハ200上への第2原料ガスの吸着量を安定させることができ、1サイクルあたりに形成されるAlO膜の膜厚を安定させることが可能となる。そして、上述の工程S10〜S13で構成されるサイクルのサイクル数を制御することで、形成されるAlO膜の膜厚を再現性よく調整することが可能となる。そして、HfAlO膜の組成を安定させ、基板処理の品質を向上させることが出来る。
【0097】
本実施形態によれば、HfAlO膜を構成する複数の金属元素(Hf,Al)のうち組成比の大きい方の金属元素であるHfを含むHfO膜は、CVDモードもしくはALD飽和モードにて形成する。HfO膜形成工程をCVDモードにて行う場合、比較的大きな成膜速度が得られため、HfO膜形成工程の所要時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。また、HfO膜形成工程をALD飽和モードで行う場合、上述したように、ウェハ200上への第1原料ガスの吸着量が飽和してから第1原料ガスの供給を停止するため、第1原料供給工程(S5)終了時におけるウェハ200上への第1原料ガスの吸着量を安定させることができ、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚を安定させることが可能となる。そして、上述の工程S5〜S8で構成されるサイクルのサイクル数を制御することで、形成されるHfO膜の膜厚を再現性よく調整することが可能となる。そして、HfAlO膜の組成を安定させ、基板処理の品質を向上させることが出来る。
【0098】
本実施形態によれば、HfO膜形成工程におけるウェハ200の温度と、AlO膜形成工程におけるウェハ200の温度とを、同一温度とすることができる。すなわち、工程S5〜S8までを1サイクルとしてこのサイクルを所定サイクル行うサイクル工程(S9)と、工程S10〜S13までの工程とを、同一の温度(例えば250〜300℃)で行うことができる。係る場合、基板処理中における温度調整時間(待ち時間)の発生を回避させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0099】
本実施形態によれば、HfO膜形成工程における処理室201内の圧力と、AlO膜形成工程における処理室201内の圧力とを、同一圧力とすることができる。すなわち、工程S5〜S8までを1サイクルとしてこのサイクルを所定サイクル行うサイクル工程(S9)と、工程S10〜S13までの工程とを、同一の圧力(例えば100〜800Pa)で行うことができる。係る場合、基板処理中における圧力調整時間(待ち時間)の発生を
回避させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0100】
本実施形態によれば、酸化剤供給工程(S7)においては、オゾンガスにより、CVDモードで形成したHfO膜からC、H等の不純物を除去させたり、ALD飽和モードで形成するHfO膜中に混入しようとするC、H等の不純物を脱離させたりすることができる。また、酸化剤供給工程(S12)においては、オゾンガスにより、ALD飽和モードで形成するAlO膜中に混入しようとするC、H等の不純物を脱離させることができる。その結果、HfAlO膜の膜質を向上させることが出来る。
【0101】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0102】
例えば、上述の実施形態では、第1の金属元素がHfであり、第2の金属元素がAlである場合について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、第1の金属元素がZr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、La(ランタン)、Si(シリコン)、Nb(ニオブ)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ta(タンタル)、Y(イットリウム)のいずれかであり、第2の金属元素がHf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、La(ランタン)、Si(シリコン)、Nb(ニオブ)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ta(タンタル)、Y(イットリウム)のいずれかである場合にも好適に適用可能である。例えば、第1の金属元素がZrであり、第2の金属元素がAlであり、第3の金属酸化膜としてZrAlO(ジルコニウムアルミネート)膜を形成する場合についても好適に適用できる。
【0103】
また、上述の実施形態では、2種類の金属元素により構成される金属酸化膜の組成比を制御する例について説明したが、本発明は3種類以上の金属元素により構成される金属酸化膜の組成比を制御する場合にも適用できる。
【0104】
また、上述の実施形態では、基板処理装置として1度に1枚の基板を処理する枚葉式の装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型装置について説明する。
【0105】
図12は、本実施形態で好適に用いられる縦型装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図12(a)のA−A線断面図で示す。
【0106】
図12(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0107】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0108】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホール
ド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0109】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿ってウェハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0110】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給管213が接続され、第2ノズル333bにオゾンガス供給管213oが接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガス(第1原料ガス、第2原料ガス)と、オゾンガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、さらに各原料ガスを別々のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0111】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0112】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0113】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複
数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0114】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、バルブvh1〜vh6、va1〜va6、vo3〜vo6、液体流量コントローラ221h,221a、流量コントローラ224h,224a,221o,222o,224o,225h,225a等の動作を制御する。
【0115】
次に、上記構成にかかる縦型装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ウェハ200上に薄膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0116】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図12(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0117】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウェハ200を回転させる。
【0118】
その後、例えば上述の実施形態と同様に、工程S5〜S9までのHfO膜形成工程と、工程S10〜S13までのAlO膜形成工程と、を交互に所定回数行う工程(S14)を実施することにより、ウェハ200上に所望膜厚のハフニウムアルミネート(HfAlO)膜を形成する。
【0119】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所望膜厚のHfAlO膜が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウェハ200をボート317より取り出す(ウェハディスチャージ)。
【実施例】
【0120】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0121】
(CVDモードによるHfO膜の成膜)
まず、ウェハを収容した処理室内へのHf原料導入→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとし、このサイクルを1回以上行うことでウェハ上にHfO膜を形成した。図9に、1サイクルあたりのHf原料供給時間と、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚(成膜速度)との関係を示す。図9の横軸は1サイクルあたりのHf原料供給時間(sec)を示しており、縦軸は1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚(Å/Cycle)を示している。成膜条件としては、各ステップにおけるウェハ温度を450℃とし、各ステップにおける処理室内圧力を100Paとし、Hf原料としてHf(MMP)を用い、酸化剤としてOを用い、Hf(MMP)の供給流量を0.05g/minとし、Oガスの供給流量を2000sccmとし、Hf原料の供給時間を14〜30秒の範囲で変化させた。
【0122】
この図から、ウェハ温度が450℃である場合、1サイクルあたりのHf原料供給時間が14秒であれば、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚は7.27Å程度となり、1サイクルあたりのHf原料供給時間が30秒であれば、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚は10.5Å程度となることが分かる。このように、Hf(MMP)をウェハ温度450℃で用いた成膜は、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚がHf原料の供給時間の経過と共に変化するため、ALD飽和モードではなく、CVDモードであることが分かる。そして、ウェハ温度450℃では、1サイクルあたりのHf原料供給時間によって、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚を少なくとも7.27〜10.5Åの範囲で制御できることが分かる。
【0123】
(ALD飽和モードによるHfO膜の成膜)
次に、ウェハ温度及び処理室内圧力をそれぞれ低下させ、ウェハを収容した処理室内へのHf原料導入→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとし、このサイクルを1回以上行うことでウェハ上にHfO膜を形成した。図10に、1サイクルあたりのHf原料供給時間と、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚との関係を示す。図10の横軸は1サイクルあたりのHf原料供給時間(sec)を示しており、縦軸は1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚(Å/Cycle)を示している。成膜条件としては、各ステップにおけるウェハ温度を250℃とし、各ステップにおける処理室内圧力を100Paとし、Hf原料としてHf(MMP)を用い、酸化剤としてOガスを用い、Hf(MMP)の供給流量を0.05g/minとし、Oガスの供給流量を2000sccmとし、Hf原料の供給時間は2〜30秒の範囲で変化させた。
【0124】
この図から、ウェハ温度が250℃、処理室内圧力が100Paであれば、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚は、Hf原料の供給時間が2〜30秒の範囲では、常に1.1Å程度に安定することが分かる。そして、1サイクルあたりに形成されるHfO膜の膜厚がHf原料の供給時間によらず一定であることから、Hf(MMP)をウェハ温度250℃、処理室内圧力100Paで用いた成膜は、CVDモードではなくALD飽和モードであることが分かる。そして、Hf原料導入→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとするサイクルの実施回数を調整することで、HfO膜の膜厚を再現性よく調整することが可能であることが分かる。
【0125】
(ALD飽和モードによるAlO膜の成膜)
ウェハを収容した処理室内へのAl原料導入→Al原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとし、このサイクルを1回以上行うことでウェハ上にAlO膜を形成した。図11に、サイクル数とその際形成されるAlO膜の累積膜厚との関係を示す。図11の横軸はAlO膜成膜ステップのサイクル数を示しており、縦軸はAlO膜の累積膜厚(Å)を示している。成膜条件としては、各ステップにおけるウェハ温度を140℃とし、各ステップにおける処理室内圧力を100Paとし、Al原料としてAl(MMP)を用い、酸化剤としてOガスを用い、Al(MMP)の供給流量を0.05g/mi
nとし、Oガスの供給流量を500sccmとし、Al原料のサイクル数は5〜40サイクルの範囲で変化させた。
【0126】
図11によれば、サイクル数が5サイクルのときのAlO膜の累積膜厚は2.2Åであり、40サイクルのときのAlO膜の累積膜厚は5.5Åであった。従って、この図から、ウェハ温度が140℃、処理室内圧力が100Paであれば、1サイクルあたりに形成されるAlO膜の膜厚(成膜速度)は、(5.5Å−2.2Å)/(40サイクル−5サイクル)=0.09Å/サイクル程度に安定することが分かる。そして、Al原料導入→Al原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクルとするサイクルの実施回数を調整することで、AlO膜の膜厚を再現性よく調整することが可能であることが分かる。
【0127】
(まとめ)
図10、図11によれば、HfO膜形成ステップにおけるウェハ温度を250℃、AlO膜形成ステップにおけるウェハ温度を140℃、各ステップにおける処理室内圧力が100Paの条件下において、(1)Hf原料導入(導入時間2秒)→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクル実行することによる膜厚1.11ÅのHfO膜の成膜を行い、(2)Al原料導入(導入時間20秒)→Al原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクル実行することによる膜厚0.09ÅのAlO膜の成膜を行い、(1)と(2)とを、交互に所定回数行うことでHfAlO膜の成膜を行うことにより、HfOとAlOとの組成比が92.5:7.5であるようなHfAlO膜(微量AlO組成の膜)を形成することが出来ることが分かる。係る場合、HfAlO膜全体に対するAlOの組成比は7.5%となる。
【0128】
また、図10、図11によれば、HfO膜形成ステップにおけるウェハ温度を250℃、AlO膜形成ステップにおけるウェハ温度を140℃、各ステップにおける処理室内圧力が100Paの条件下において、(1)Hf原料導入(導入時間2秒)→Hf原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1〜10サイクル実行することによる膜厚1.11〜11.1ÅのHfO膜の成膜と、(2)Al原料導入(導入時間20秒)→Al原料パージ→酸化剤導入→酸化剤パージを1サイクル実行することによる膜厚0.09ÅのAlO膜の成膜とを、交互に所定回数行うことでHfAlO膜の成膜を行うことにより、HfOとAlOとの組成比が99.2:0.8〜92.5:7.5であるようなHfAlO膜(微量AlO組成の膜)を形成することが出来ることが分かる。係る場合、HfAlO膜全体に対するAlOの組成比は0.8〜7.5%となる。このように、HfO膜の膜厚は、飽和ALD成膜のサイクル数で調整するようにしてもよい。
【0129】
以上の通り、HfO膜をCVDモードもしくはALD飽和モードにて形成し、AlO膜をALD飽和モードにて形成することにより、少なくともHfO:AlO=99.2:0.8〜92.5:7.5(HfAlO膜全体に対するAlOの組成比は0.8〜7.5%)の間で、微量AlO組成の制御を行うことができると考えられる。
【0130】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0131】
本発明の一態様によれば、
基板を収容した処理室内に、第1の金属元素を含む第1原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素を含む第1の金属酸化膜を形成する工程と、
前記処理室内に、第2の金属元素を含む第2原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第2の金属元素を含む第2の金属酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素および前記第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する工程を有し、
前記第1原料および前記第2原料として、前記各金属酸化膜を同じ成膜モードで形成した場合に、前記第2の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚が、前記第1の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚よりも小さくなるような原料を用いる
半導体装置の製造方法が提供される。
【0132】
好ましくは、前記第2の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚が、前記第1の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚の1/12程度〜1/5程度である。
【0133】
また好ましくは、前記第1の金属元素がHf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、La(ランタン)、Si(シリコン)、Nb(ニオブ)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ta(タンタル)、Y(イットリウム)のいずれかであり、第2の金属元素がHf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、La(ランタン)、Si(シリコン)、Nb(ニオブ)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ta(タンタル)、Y(イットリウム)のいずれかである。
【0134】
また好ましくは、前記第1の金属元素がハフニウムであり、前記第1の金属酸化膜が酸化ハフニウム膜であり、前記第2の金属元素がアルミニウムであり、前記第2の金属酸化膜が酸化アルミニウム膜であり、前記第3の金属酸化膜がハフニウムアルミネート膜である。
【0135】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の前記基板を加熱するヒータと、
前記処理室内に第1の金属元素を含む第1原料を供給する第1原料供給系と、
前記処理室内に第2の金属元素を含む第2原料を供給する第2原料供給系と、
前記処理室内に酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記基板を収容した前記処理室内に、前記第1原料を供給し排気する処理と、前記酸化剤を供給し排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素を含む第1の金属酸化膜を形成する成膜処理と、前記処理室内に、前記第2原料を供給し排気する処理と、前記酸化剤を供給し排気する処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第2の金属元素を含む第2の金属酸化膜を形成する成膜処理と、を交互に所定回数行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素および前記第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成するように、前記第1原料供給系、前記第2原料供給系、前記酸化剤供給系、前記ヒータ、及び、前記排気系を制御するコントローラと、を有しており、
前記第1原料供給系および前記第2原料供給系は、前記第1原料および前記第2原料として、前記各金属酸化膜を同じ成膜モードで形成した場合に、前記第2の金属酸化膜を形成する成膜処理における1サイクルあたりに形成する膜厚が、前記第1の金属酸化膜を形成する成膜処理における1サイクルあたりに形成する膜厚よりも小さくなるような原料を供給するように構成されている基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0136】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
206 ヒータ
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理室内に、第1の金属元素を含む第1原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素を含む第1の金属酸化膜を形成する工程と、
前記処理室内に、第2の金属元素を含む第2原料を供給し排気する工程と、酸化剤を供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回行うことで、前記基板上に前記第2の金属元素を含む第2の金属酸化膜を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、前記基板上に前記第1の金属元素および前記第2の金属元素を含む第3の金属酸化膜を形成する工程を有し、
前記第1原料および前記第2原料として、前記各金属酸化膜を同じ成膜モードで形成した場合に、前記第2の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚が、前記第1の金属酸化膜を形成する工程における1サイクルあたりに形成する膜厚よりも小さくなるような原料を用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−59834(P2012−59834A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200129(P2010−200129)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】