説明

半導体装置の電源供給方法、半導体装置の制御方法、半導体装置及び半導体チップ

【課題】同一パッケージ内に複数の半導体チップが搭載された半導体装置において、一部の半導体チップに対する電源供給を、その内部回路を保護しつつ停止することができる、半導体装置の電源供給方法、半導体装置の制御方法、半導体装置及び半導体チップを提供すること。
【解決手段】本発明は、通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子21を有する半導体チップ1と、半導体チップ1と同一パッケージ内に搭載される半導体チップ2と、に電源を供給する。そして、双方向端子21の動作モードを入力側から出力側に切り替える。次いで、半導体チップ1から半導体チップ2にLow信号を出力する。続いて、半導体チップ2の電源供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の電源供給方法、半導体装置の制御方法、半導体装置及び半導体チップに関し、特に半導体装置に複数の半導体チップが搭載される場合の半導体装置の電源供給方法、半導体装置の制御方法、半導体装置及び半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置に搭載されている集積回路において、同一パッケージ内に複数の半導体チップが搭載されるシステムインパッケージ(以下SiP:System in Package)が実用化されている。例えば、既存の半導体チップを1つのSiPに組み込むことにより、半導体装置を容易に小型化することができる。また、SoC(System on Chip)に比べて開発期間を短縮することも可能である。近年、SiPは例えばモバイル機器などに使用されており、その消費電力の低減が求められている。
【0003】
SiPにおける消費電力を低減する方法として、SiPに搭載された半導体チップの一部への電源供給を停止することが知られている(特許文献1及び特許文献2)。一般に、SiPが搭載されている機器の動作状態によっては、SiPに搭載されている複数の半導体チップの一部は機能していない(非活性化)場合がある。この非活性化チップへの電源供給を遮断することで、SiPが搭載されている機器への影響なく、消費電力を低減することができるとしている。
【0004】
また、電源制御用チップと電源オン/オフ用チップが搭載されたSiPが提案されている(特許文献3)。このSiPでは、電源オン/オフ用チップを介して、SiP内の電源制御用チップ以外の半導体チップに電源が供給される。電源制御用チップが電源オン/オフ用チップを制御することで、他の半導体チップへの電源供給をコントロールする。
【0005】
次に、複数の半導体チップが搭載されたSiPの一例について説明する。図5は、2つの半導体チップが搭載された一般的なSiP200における、半導体チップ間の接続関係を示す配線図である。SiP200は、図5に示すように、バックエンド部である半導体チップ3とフロントエンド部である半導体チップ2とを有する。半導体チップ3と半導体チップ2とは、7組の端子対が配線11〜17で接続されている。
【0006】
半導体チップ3は、入力端子28、入力端子22、入力端子23、出力端子24、出力端子25、双方向端子26及び双方向端子27を有する。入力端子28は抵抗31を介して電源電位と接続されることにより、プルアップされている。入力端子22及び入力端子23は、それぞれ抵抗32及び抵抗33を介してグランド電位と接続されることにより、プルダウンされている。また、双方向端子26及び双方向端子27の通常時における動作モードは出力側に設定されている。
【0007】
半導体チップ2は、出力端子41〜43、入力端子44、入力端子45、双方向端子46及び双方向端子47を有する。入力端子24及び双方向端子47、それぞれ抵抗51及び抵抗52を介して電源電位と接続されることにより、プルアップされている。また、双方向端子26及び双方向端子27の通常時における動作モードは入力側に設定されている。
【0008】
SiP200において消費電力を低減するには、フロントエンド部である半導体チップ2の電源供給を停止することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−90921号公報
【特許文献2】特開2001−35146号公報
【特許文献3】特開2005−18240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SiPでは、必ずしも電源供給が停止されることを想定して設計された半導体チップが搭載されるとは限らない。電源供給が停止されることを想定していない半導体チップをSiPに搭載して電源供給を停止すると、この半導体チップに予期しない過電流が流れるなどして、半導体チップの内部回路が破壊される場合がある。以下、破壊のメカニズムについて、図5に示すSiP200を例として説明する。
【0011】
例えばSiP200の半導体チップ3の電源を保持したまま、半導体チップ2に対する電源供給を停止する場合について説明する。半導体チップ2に対する電源供給が停止された状態では、ノイズなどの何らかの原因で、半導体チップ2の出力端子(図5の出力端子41)から、半導体チップ3のプルダウンされていない入力端子(図5の入力端子28)へ電流が流れる場合が有り得る。この場合には、半導体チップ2の電源供給は停止されているので、半導体チップ2に過電流が流れることにより、内部回路が破壊されることが考えられる。
【0012】
また、半導体チップ3の出力端子(図5の出力端子24及び出力端子25)から半導体チップ2の入力端子(図5の入力端子44、入力端子45、双方向端子46及び双方向端子47)には信号が出力される。半導体チップ3の出力端子から半導体チップ2の入力端子にHigh信号が出力されれば、電源供給を停止されている半導体チップ2にとっては過大な負荷となる場合があり、内部回路の破壊に繋がる恐れがある。
【0013】
従って、半導体チップ2のように、電源供給が停止されることを想定していない半導体チップに対する電源供給を停止する場合には、当該半導体チップに対してLow信号を出力するような保護回路を設ける必要がある。保護回路を半導体チップ間に挿入する、又は、当該半導体チップに追加することは可能であるが、いずれの場合にもSiPの大型化や半導体チップの設計変更が生じる。その結果、開発期間の増大や製造工程の複雑化などを招き、コスト増加に繋がってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様である半導体装置の電源供給方法は、通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、に電源を供給し、前記双方向端子の動作モードを入力側から出力側に切り替え、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力させ、前記第2の半導体チップに対する電源供給を停止するものである。この半導体装置の電源供給方法では、前記双方向端子が出力側に切り替わるので、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップへ電流は流れない。また、前記第1の半導体チップの前記双方向端子及び出力端子から前記第2の半導体チップへLow信号が出力されるので、前記第2の半導体チップから前記第1の半導体チップへ電流は流れない。これにより、電源供給を停止した際の前記第2の半導体チップに過電流が流れることが防止される。
【0015】
本発明の一態様である半導体装置の制御方法は、通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、を少なくとも備えた半導体装置の制御方法であって、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップに電源を供給している状態で、前記第2の半導体チップに対する電源供給を停止するのに先立って前記双方向端子の動作モードを入力側から出力側に切り替え、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力させるものである。この半導体装置の制御方法では、前記双方向端子が出力側に切り替わるので、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップへ電流は流れない。また、前記第1の半導体チップの前記双方向端子及び出力端子から前記第2の半導体チップへLow信号が出力されるので、前記第2の半導体チップから前記第1の半導体チップへ電流は流れない。これにより、電源供給を停止した際の前記第2の半導体チップに過電流が流れることが防止される。
【0016】
本発明の一態様である半導体装置は、通常時に動作モードが入力側に設定される双方方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、を少なくとも備え、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップに電源が供給された状態で、前記双方向端子の動作モードが入力側から出力側に切り替えられ、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力した後に、前記第2の半導体チップに対する電源供給が停止されるものである。この半導体装置では、前記双方向端子が出力側に切り替わるので、前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップへ電流は流れない。また、前記第1の半導体チップの前記双方向端子及び出力端子から前記第2の半導体チップへLow信号が出力されるので、前記第2の半導体チップから前記第1の半導体チップへ電流は流れない。これにより、電源供給を停止した際の前記第2の半導体チップに過電流が流れることが防止される。
【0017】
本発明の一態様である半導体チップは、他の半導体チップとともに同一パッケージ内に搭載される半導体チップであって、通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも備え、前記半導体チップ及び前記他の半導体チップに電源が供給された状態で、前記他の半導体チップに対する電源供給が停止されるのに先立って前記双方向端子の動作モードが入力側から出力側に切り替えられ、前記他の半導体チップにLow信号を出力するものである。この半導体チップでは、前記双方向端子が出力側に切り替わるので、前記半導体チップから前記他の半導体チップへ電流は流れない。また、前記半導体チップの前記双方向端子及び出力端子から前記他の半導体チップへLow信号が出力されるので、前記他の半導体チップから前記半導体チップへ電流は流れない。これにより、電源供給を停止した際の前記他の半導体チップに過電流が流れることが防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同一パッケージ内に複数の半導体チップが搭載された半導体装置において、一部の半導体チップに対する電源供給を、その内部回路を保護しつつ停止することができる、半導体装置の電源供給方法、半導体装置の制御方法、半導体装置及び半導体チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかるSiPにおける半導体チップ間の配線図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体チップに対する電源供給を停止する手順を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1にかかる半導体チップに対して電源を供給する手順を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1にかかるSiPの電源供給方法と半導体チップの電圧の関係を示すタイミングチャートである。
【図5】通常のSiPにおける半導体チップ間の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態では、2つの半導体チップを有するSiPにおいて、一方の半導体チップの電源供給を停止する場合について説明する。図1は、本実施の形態にかかるSiP100における半導体チップ間の接続関係を示す配線図である。なお、図1と図5とでは、同一の構成要素には同一の符号を付している。SiP100は、図1に示すように、バックエンド部である半導体チップ1とフロントエンド部である半導体チップ2とを有する。半導体チップ1と半導体チップ2とは、7組の端子対が配線11〜17で接続されている。本実施の形態では、フロントエンド部である半導体チップ2に対する電源の供給及び停止を行う。
【0021】
半導体チップ1は、図5に示す半導体チップ3における入力端子28を、双方向端子21に置き換えたものである。双方向端子21は抵抗31を介して電源電位と接続されることにより、プルアップされている。また、双方向端子21の通常時における動作モードは入力側に設定されている。半導体チップ1のその他の構成は、図5に示す半導体チップ3と同様であるので説明を省略する。
【0022】
半導体チップ2は、SiP100と図5に示すSiP200とで共通であるので、説明を省略する。
【0023】
次に、SiP100の電源供給方法及び半導体チップの制御方法について説明する。まず、半導体チップ2に対する電源供給を停止場合について説明する。図2は、半導体チップ2に対する電源供給を停止する手順を示すフローチャートである。初期状態では、半導体チップ1及び半導体チップ2は、両方とも電源が供給されている。
【0024】
図2に示すように、まず、半導体チップ2に対する電源供給を停止するための準備作業として、半導体チップ1と半導体チップ2との間の通信を停止し、半導体チップ2をアイドル状態に遷移させる(ステップS11)。
【0025】
続いて、半導体チップ1から半導体チップ2にスリープコマンドを発行する(ステップS12)。
【0026】
続いて、半導体チップ1から半導体チップ2にリセット信号を送信し、半導体チップ2の動作を停止させる(ステップS13)。
【0027】
続いて、例えばレジスタ設定により、半導体チップ1の双方向端子21の動作モードを入力側から出力側に切り替える(ステップS14)。
【0028】
続いて、半導体チップ1の出力端子(出力側に切り替えられた双方向端子21、出力端子24及び出力端子25)から、半導体チップ2へLow信号を出力する(ステップS15)。
【0029】
最後に、半導体チップ2に対する電源供給を停止する。この際、半導体チップ2に対する電源供給が確実に停止されるまで待機する(ステップS16)。
【0030】
次いで、半導体チップ2に電源を供給する場合について説明する。図3は、半導体チップ2の電源をオンにする手順を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、半導体チップ2に電源を供給する(ステップS21)。
【0031】
続いて、例えばレジスタ設定により、半導体チップ1の双方向端子21の動作モードを、出力側から入力側に切り替える(ステップS22)。
【0032】
続いて、半導体チップ1から半導体チップ2に信号を送信し、半導体チップ2のリセットを解除する(ステップS23)。
【0033】
続いて、半導体チップ2の初期化を行う。その後、半導体チップ1と半導体チップ2との通信を開始し、半導体チップ2は通常動作を開始する(ステップS24)。
【0034】
図4は、半導体チップ2に印加される電圧V2と各ステップとの関係を示すタイミングチャートである。この電源供給方法によれば、半導体チップ2に対する電源供給を停止(ステップS16)するのに先立ち、双方向端子21の動作モードを出力側に切り替えている(ステップS14)。よって、何らかの原因により電源供給が停止されている半導体チップ2の電位が上がっても、半導体チップ2から半導体チップ1へ過電流が流れることはない。
【0035】
また、半導体チップの出力端子(出力側に切り替えられた双方向端子21、出力端子24及び出力端子25)からは、半導体チップ2へ向けてLow信号が出力される(ステップS15)。よって、半導体チップ1から半導体チップ2へ過電流が流れることはない。
【0036】
すなわち、本方法及び本構成によれば、SiPに搭載された一部の半導体チップに対する電源供給を停止しても、内部回路の破壊を確実に防止することができる。
【0037】
なお、半導体チップ1には、入力端子22及び入力端子23が存在する。これらの入力端子はプルダウンされているので、半導体チップ3に対する電源供給を停止にしても影響はない。つまり、プルアップされた入力端子につては、これを双方向端子に置き換えるなどの特段の処置を行う必要はない。
【0038】
また、本方法及び本構成によれば、電源供給が停止される半導体チップの構造に特別の工夫を加える必要がないので、既存の半導体チップの利用が可能である。さらに、保護回路を追加する必要もないので、SiPを小型化することが可能である。従って、SiPの開発期間の短縮とSiPの小型化を併せて実現することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、図1に示したSiP100における端子数や配線数は例示であり、図1の通りに限定されるものではない。
【0040】
また、SiP100は2つの半導体チップが搭載されているが、SiPに搭載される半導体チップは3以上であってもよい。さらに、電源供給が停止される半導体チップは、複数の常時電源が供給される半導体チップに接続されてもよい。さらにまた、常時電源が供給されている半導体チップは、複数の電源供給が停止される半導体チップに接続されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1〜3 半導体チップ
21、26、27 双方向端子
22、23、28 入力端子
24、25 出力端子
31〜33 抵抗
41〜43 出力端子
44、45 入力端子
46、47 双方向端子
51、52 抵抗
S11〜S16、S21〜S24 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、に電源を供給し、
前記双方向端子の動作モードを入力側から出力側に切り替え、
前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力させ、
前記第2の半導体チップに対する電源供給を停止する、
半導体装置の電源供給方法。
【請求項2】
電源供給が停止された前記第2の半導体チップに電源を供給し、
前記双方向端子の動作モードを入力側から出力側に切り替える、
請求項1に記載の半導体装置の電源供給方法。
【請求項3】
通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、を少なくとも備えた半導体装置の制御方法であって、
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップに電源を供給している状態で、前記第2の半導体チップに対する電源供給を停止するのに先立って前記双方向端子の動作モードを入力側から出力側に切り替え、
前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力させる、
半導体装置の制御方法。
【請求項4】
通常時に動作モードが入力側に設定される双方方向端子を少なくとも有する第1の半導体チップと、
前記第1の半導体チップと同一パッケージ内に搭載される第2の半導体チップと、を少なくとも備え、
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップに電源が供給された状態で、前記双方向端子の動作モードが入力側から出力側に切り替えられ、
前記第1の半導体チップから前記第2の半導体チップにLow信号を出力した後に、前記第2の半導体チップに対する電源供給が停止される、
半導体装置。
【請求項5】
他の半導体チップとともに同一パッケージ内に搭載される半導体チップであって、
通常時に動作モードが入力側に設定される双方向端子を少なくとも備え、
前記半導体チップ及び前記他の半導体チップに電源が供給された状態で、前記他の半導体チップに対する電源供給が停止されるのに先立って前記双方向端子の動作モードが入力側から出力側に切り替えられ、
前記他の半導体チップにLow信号を出力する、
半導体チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81696(P2011−81696A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235011(P2009−235011)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】