説明

半導体装置及びその作製方法

【課題】静電気破壊に対する耐性を向上させると共に、外部ストレスに対する耐性を向上させることを目的の一とする。又は、作製工程を簡略化し低コスト化を図ることを目的の一とする。
【解決手段】表面に第1の導電膜が形成された第1の有機樹脂層と表面に第2の導電膜が形成された第2の有機樹脂層の間に素子形成層を設け、当該第1の導電膜と第2の導電膜を有機樹脂層内に形成されたコンタクト用の導電体を用いて電気的に接続させる工程において、当該第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層内に設けるコンタクト用の導電体を、有機樹脂を硬化させる前にペーストを浸透させ、その後有機樹脂層を硬化させることにより作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその作製方法に関し、特に、非接触で外部と信号の送受信を行う半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを介した無線通信により信号の送受信を行う半導体装置(非接触信号処理装置、半導体集積回路チップ)において、静電気放電による半導体装置の破壊(静電気破壊)問題は、半導体装置の作製工程時から、検査、製品としての使用に至るまで信頼性や生産性の低下を招く重要な問題であり、その対策が重要となっている。
【0003】
例えば、静電気破壊の対策として、上記半導体装置において基板や接着剤に導電性ポリマー層を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、静電気破壊の対策と共に小型化及び薄膜化が求められている半導体装置の外的ストレスに対する強度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−241999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の市場が拡大するに伴い、その形状や必要とされる特性の要求は様々である。また、市場の拡大により様々な場面での使用を想定すると、さらに静電気破壊に対する高い耐性を有すると共に、外的ストレスに対する耐性を備えた半導体装置が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、静電気破壊に対する耐性を向上させると共に、外部ストレスに対する耐性を向上させることを目的とする。又は、本発明の一態様は、作製工程を簡略化し低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、表面に第1の導電膜が形成された第1の有機樹脂層と表面に第2の導電膜が形成された第2の有機樹脂層の間に素子形成層を設け、当該第1の導電膜と第2の導電膜を有機樹脂層内に形成された導電体を用いて電気的に接続させる工程において、当該第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層内に設ける導電体を、有機樹脂を硬化させる前にペーストを浸透させ、その後有機樹脂層を硬化させることにより作製する。
【0009】
また、本発明の一態様は、基板上に剥離層を形成し、剥離層上に半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層を形成し、素子形成層を覆うように第1の有機樹脂層を形成し、第1の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第1のペーストを、第1の有機樹脂層の第1の面上であって少なくとも素子形成層と重ならない領域に形成し、第1のペーストを第1の有機樹脂層内に浸透させた後に第1の有機樹脂層を硬化させることにより、第1の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達する第1の導電体を形成し、第1の導電体と電気的に接続し且つ素子形成層と重なるように第1の有機樹脂層上に第1の導電膜を形成し、基板から素子形成層を剥離し、剥離面において第1の有機樹脂層に形成された第1の導電体を露出させ、剥離面に第2の有機樹脂層を形成し、第2の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第2のペーストを、第2の有機樹脂層の第1の面上であって少なくとも剥離面において露出した第1の導電体と重なる領域に形成し、第2のペーストを第2の有機樹脂層内に浸透させた後に第2の有機樹脂層を硬化させることにより、第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達し、且つ第1の導電体と電気的に接続する第2の導電体を形成し、第2の導電体と電気的に接続し且つ素子形成層と重なるように第2の有機樹脂層上に第2の導電膜を形成することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の一態様は、基板上に剥離層を形成し、剥離層上に第1の保護膜を形成し、第1の保護膜上に半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層を形成し、素子形成層上に第2の保護膜を形成し、第2の保護膜を覆うように第1の有機樹脂層を形成し、第1の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第1のペーストを、第1の有機樹脂層の第1の面上に網目状に形成し、第1のペーストを第1の有機樹脂層内に浸透させた後に第1の有機樹脂層を硬化させることにより、第1の有機樹脂層の第1の面から第1の面と反対側の第2の面に達する第1の導電体を形成し、基板から素子形成層を剥離し、剥離面において第1の保護膜及び第2の保護膜を選択的に除去することにより、第1の有機樹脂層に形成された第1の導電体を露出させ、剥離面に第2の有機樹脂層を形成し、第2の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第2のペーストを、第2の有機樹脂層の第1の面上に網目状に形成し、第2のペーストを第2の有機樹脂層内に浸透させた後に第2の有機樹脂層を硬化させることにより、第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達し、且つ第1の導電体と電気的に接続する第2の導電体を形成することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の一態様は、互いに対向するように設けられた第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層と、第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層との間に設けられた半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層と、第1の有機樹脂層の第1の面に設けられた第1の導電膜と、第2の有機樹脂層の第1の面に設けられた第2の導電膜と、第1の導電膜と電気的に接続され第1の有機樹脂層の第1の面から該第1の面の反対側の第2の面に達する第1の導電体と、第2の導電膜と電気的に接続され第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面の反対側の第2の面に達する第2の導電体とを有し、少なくとも第1の有機樹脂層は繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を有し、第1の導電体は、繊維体を破壊せずに繊維体の隙間を介して第1の有機樹脂層内に設けられており、第1の導電膜と第2の導電膜は、第1の導電体と第2の導電体を介して電気的に接続されていることを特徴としている。
【0012】
なお、本明細書において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置を指す。本発明を用いて半導体素子(トランジスタ、メモリ素子やダイオードなど)を含む回路を有する装置や、プロセッサ回路を有するチップなどの半導体装置を作製することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、素子形成層を挟持する第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層上にそれぞれ設けられた導電膜を当該第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層内に設けられたコンタクト用の導電体を介して電気的に接続することにより、静電気破壊に対する耐性を向上させることができる。また、有機樹脂層に貫通孔を設けずに当該有機樹脂層内に導電体を設けることができるため、外部ストレスに対する耐性を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、素子形成層を挟持する第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層上にそれぞれ形成された導電膜を当該第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層内に設けられた導電体を用いて電気的に接続する場合であっても、第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層に貫通孔を設ける工程を省略することができるため作製工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図2】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図3】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図4】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図5】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図6】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図7】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図8】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図9】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図10】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図11】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図12】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図13】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図14】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図15】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図16】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図17】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図18】半導体装置の作製方法の一例を説明する図。
【図19】半導体装置の使用形態を説明する図。
【図20】半導体装置の使用形態を説明する図。
【図21】繊維体に有機樹脂が含浸された構造体内に導電膜を設けた場合の断面SEM像。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法及び当該作製方法により形成された半導体装置の一例に関し図面を参照して説明する。
【0018】
まず、基板101上に剥離層102を介して半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層103を形成する(図1(A)参照)。
【0019】
基板101としては、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、表面に絶縁層が形成された金属基板などを用いることができる。また、基板101として、本実施の形態の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0020】
剥離層102は、後に基板101から素子形成層103を剥離する際に用いられる膜であり、例えば、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素、又は元素を主成分とする合金材料、又は前記元素を主成分とする化合物材料からなる層を単層又は積層して形成する。珪素を含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。なお、ここでは、塗布法は、スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法を含む。
【0021】
なお、後の工程において、基板101から素子形成層103を分離できるのであれば、剥離層102を設けなくてもよい。
【0022】
素子形成層103には、トランジスタや容量素子等の半導体集積回路が設けられている。また、素子形成層103に設けられるアンテナの形状や長さは用いる周波数等に基づいて選択すればよい。また、半導体集積回路上に形成した導電膜をアンテナとしてもよく、この場合、半導体集積回路上に設けられたアンテナをオンチップアンテナとも呼ぶ。
【0023】
次に、素子形成層103を覆うように第1の有機樹脂層104を形成する(図1(B)参照)。
【0024】
第1の有機樹脂層104は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて形成することができる。また、第1の有機樹脂層104として、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。第1の有機樹脂層104は、素子形成層103を基板101から剥離する際の支持体として機能すると共に、外的ストレスが加わることによる素子形成層103の破損を抑制する保護層として機能する。
【0025】
次に、第1の有機樹脂層104を硬化させる前に、当該第1の有機樹脂層104の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト105を選択的に形成し(図1(C)参照)、少なくともペースト105の一部を第1の有機樹脂層104に浸透させた(しみこませた)後、当該第1の有機樹脂層104を硬化する(図1(D)参照)。その結果、第1の有機樹脂層104内に第1の導電体106を設けることができる。
【0026】
なお、ペースト105は、第1の有機樹脂層104の表面において素子形成層103と重ならない領域に形成し、第1の有機樹脂層の下方の面(第2の面(第1の面と反対側の面))まで浸透させる。したがって、第1の導電体106は、第1の有機樹脂層104の第1の面から第2の面まで達した(連続して設けられた)構造となる。また、第1の導電体106は、コンタクト用導電体として機能する。
【0027】
導電性を有するペースト105は、スクリーン印刷法等の印刷法や液滴吐出法を用いて第1の有機樹脂層104上に選択的に形成することができる。本実施の形態では、素子形成層103を避けた領域にペースト105を形成する場合を示したが、素子形成層103上に保護膜等が設けられている場合には素子形成層103の上方(例えば、第1の有機樹脂層104の全面)にペースト105形成してもよい。また、ペースト105を設ける箇所は1つでもよいし、複数箇所にペースト105を設けてもよい。
【0028】
導電性を有するペースト105としては、少なくとも導電体粒子、当該導電体粒子を溶解又は分散させる有機樹脂及び硬化前の第1の有機樹脂層104を溶解させる溶剤を有する導電性ペーストを用いることができる。硬化前の第1の有機樹脂層104を溶解させる溶剤をペースト105に含有させることにより、第1の有機樹脂層104内にペースト105を効果的にしみこませることができる。
【0029】
導電体粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。
【0030】
また、ペースト105に含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。
【0031】
また、硬化する前の第1の有機樹脂層104を溶解させる溶剤として、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等の有機溶剤等を当該第1の有機樹脂層104の材料を考慮して、適宜選択して用いることができる。
【0032】
また、第1の有機樹脂層104内にペースト105を浸透させた後、第1の有機樹脂層104の硬化前、硬化と同時又は硬化後に焼成を行うことによりペーストを硬化させることが好ましい。
【0033】
一例として、第1の有機樹脂層104として熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を用いる場合、ペースト105として銀ペースト(銀粉、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、エポキシ樹脂)を用いることができる。この場合、第1の有機樹脂層104が硬化する前(仮硬化状態時)に当該第1の有機樹脂層104上にペースト105を形成すると、ペースト105に含まれる酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチルが硬化前の第1の有機樹脂層104を溶解し、ペースト105を第1の有機樹脂層104内に浸透させることができる。その後、加熱処理を行うことにより、第1の有機樹脂層104を硬化すると共に、ペースト105に含まれる銀を硬化させ、第1の有機樹脂層104内に銀を含有する導電体106を設けることができる。
【0034】
このように、第1の有機樹脂層104として、熱硬化性樹脂を用いた場合、加熱処理により、第1の有機樹脂層104の硬化とペースト105の焼成を同時に行うことができるため、工程を簡略化することができる。なお、加熱処理の際に圧力を加えても(加圧しても)よい。
【0035】
次に、第1の有機樹脂層104の第1の面に第1の導電膜107を形成する(図1(E)参照)。第1の導電膜107は、第1の導電体106と電気的に接続するように設ける。
【0036】
第1の導電膜107は、例えば、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉄、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウム、バリウムから選ばれた元素、又は前記元素を主成分とする合金材料、化合物材料、窒化物材料、酸化物材料を用いて形成すればよい。
【0037】
窒化物材料としては、窒化タンタル、窒化チタンなどを用いることができる。
【0038】
酸化物材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛等を用いることができる。また、酸化亜鉛(ZnO)を含むインジウム亜鉛酸化物(IZO(Indium Zinc Oxide))、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム(Ga)を含む酸化亜鉛、酸化スズ(SnO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物なども用いてもよい。
【0039】
第1の導電膜107を設けることによって、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がす、又は電荷の局部的な存在(局在化)を防ぐ(半導体装置上で局部的な電位差が発生しないようにする)ことができるため、素子形成層103を構成する半導体集積回路の静電気破壊を抑制することができる。
【0040】
そのため、第1の導電膜107は、少なくとも素子形成層103と重なる領域に設ければよい。一例として、図1(E)に示すように、第1の有機樹脂層104の表面の全面に第1の導電膜107を設けた構成とすることができる。全面に設けた場合、静電気に対して広い領域にわたって保護することができる。
【0041】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、外部からの電磁波により誘導起電力を発生させて動作を行う(無線機能を有する)ものである。このため、第1の導電膜107は、静電気による半導体集積回路の破壊を防ぐと共に、電磁波を透過させる導電材料を用いて形成する必要がある。
【0042】
一般に、電磁波は物質中において減衰することが知られており、この減衰は、特に導電材料において顕著となる。このため、第1の導電膜107を電磁波が透過できるように膜厚を十分に薄くする。第1の導電膜107の膜厚は、通信に利用される電磁波の周波数、第1の導電膜107として用いる導電材料の抵抗率や透磁率に基づいて定めればよい。
【0043】
一例として、電磁波の周波数を13.56MHzとして、第1の導電膜107としてチタン(抵抗率ρ:5.5×10−7(Ω・m))を用いる場合には、膜厚を少なくとも500nm以下程度とする。これにより、静電気放電に起因する半導体装置の破壊を抑制するとともに、外部との通信を良好に行うことが可能となる。
【0044】
また、チタンより抵抗率が高い酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSOとも呼ぶ)を用いる場合には、膜厚が少なくとも700nm以下程度の厚さとなるように形成すればよい。
【0045】
また、第1の導電膜107の膜厚の下限は、抵抗率に基づいて決めることが好ましい。第1の導電膜107として用いる導電材料の抵抗率が高い場合には、静電気を効果的に拡散させるために、第1の導電膜107を厚く形成することが好ましい。
【0046】
静電気による半導体装置の破壊を効果的に防止するためには、第1の導電膜107のシート抵抗が1.0×10Ω/□以下、好ましくは1.0×10Ω/□以下、より好ましくは1.0×10Ω/□以下となるように第1の導電膜107の膜厚を定めることが好ましい。
【0047】
つまり、静電気破壊を抑制するという観点からは第1の導電膜107の抵抗率を低減することが好ましく、電磁波を透過させるという観点からは第1の導電膜107の膜厚を小さくすることが好ましい。そのため、第1の導電膜107のシート抵抗が上述の範囲となるのであれば、膜厚をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0048】
なお、導電材料として抵抗率が低いチタン等を用いる場合には、膜厚を極めて薄く設けた場合であっても、シート抵抗を十分に小さくし且つ電磁波を透過しやすくすることができるが、作製プロセス等を考慮すると、第1の導電膜107の膜厚を少なくとも1nm以上(好ましくは3nm以上)とすればよい。また、比較的抵抗率が高いインジウム錫酸化物等を用いる場合には、少なくとも5nm以上の厚さとすることが好ましい。
【0049】
上述のように、静電気破壊を抑制するという観点及び電磁波を透過させる観点を考慮して、第1の導電膜107に用いる材料と膜厚を制御することにより、静電気放電に起因する半導体装置の破壊を効果的に抑制するとともに、外部との通信を良好に行うことができる半導体装置を得ることができる。
【0050】
次に、剥離層102を用いて、素子形成層103及び第1の有機樹脂層104を基板101から剥離する(図2(A)参照)。その結果、素子形成層103は、第1の有機樹脂層104側に設けられた構造となる。また、剥離工程により、剥離された面(以下、「剥離面115」と記す)において、第1の有機樹脂層104の第2の面(ここでは、剥離面115)に達した第1の導電体106が露出する。なお、第1の導電体106が第2の面まで達していない場合や、剥離層102が剥離面115に残存する等により第1の導電体106が露出していない場合には、剥離面115側からエッチング、研磨又はレーザー光を照射して第1の導電体106を露出させればよい。
【0051】
次に、剥離面115に接するように第2の有機樹脂層108を形成する(図2(B)参照)。
【0052】
第2の有機樹脂層108は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて形成することができる。また、第2の有機樹脂層108として、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。また、第1の有機樹脂層104と第2の有機樹脂層108を同じ材料を用いて形成してもよい。
【0053】
次に、第2の有機樹脂層108を硬化させる前に、当該第2の有機樹脂層108の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト109を選択的に形成し(図2(C)参照)、少なくともペースト109の一部を第2の有機樹脂層108に浸透させた後、当該第2の有機樹脂層108を硬化する(図2(D)参照)。その結果、第2の有機樹脂層108内に第2の導電体110を設けることができる。
【0054】
また、ペースト109は、剥離面115において露出した第1の導電体106と重なる領域に形成し、第2の有機樹脂層108の第2の面(第1の有機樹脂層104と接する面)まで浸透させる。したがって、第2の導電体110は、第2の有機樹脂層108の第1の面から第2の面まで達した(連続して設けられた)構造となり、且つ第1の導電体106と電気的に接続される。また、第2の導電体110は、コンタクト用導電体として機能する。
【0055】
本実施の形態では、素子形成層103を避けた領域にペースト109を形成する場合を示したが、素子形成層103上に保護膜等が設けられている場合には素子形成層103の上方(例えば、第2の有機樹脂層108の全面)にもペースト109を形成してもよい。
【0056】
ペースト109の材料や作製方法は、上記ペースト105の説明で例示したいずれかの材料や作製方法を用いることができる。もちろん、ペースト105と同じ材料を用いてもよい。
【0057】
次に、第2の有機樹脂層108の第1の面に第2の導電膜111を形成する(図2(E)参照)。第2の導電膜111は、第2の導電体110と電気的に接続するように設ける。その結果、第1の導電膜107と第2の導電膜111は、第1の導電体106と第2の導電体110を介して電気的に接続された構成となる。
【0058】
第2の導電膜111の材料や作製方法は、上記第1の導電膜107の説明で例示したいずれかの材料や作製方法を用いることができる。もちろん、第1の導電膜107と同じ材料を用いてもよい。
【0059】
第2の導電膜111を設けることによって、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がす、又は電荷の局部的な存在(局在化)を防ぐ(半導体装置上で局部的な電位差が発生しないようにする)ことができるため、素子形成層103を構成する半導体集積回路の静電気破壊を抑制することができる。
【0060】
そのため、第2の導電膜111は、少なくとも素子形成層103と重なる領域に設ければよい。一例として、図2(E)に示すように、第2の有機樹脂層108の表面の全面に第2の導電膜111を設けた構成とすることができる。全面に設けた場合、静電気に対して広い領域にわたって保護することができる。
【0061】
特に、第1の有機樹脂層104上に設けられた第1の導電膜107と第2の有機樹脂層108上に設けられた第2の導電膜111を電気的に接続し等電位面とすることにより、第1の導電膜107と第2の導電膜111を電気的に接続しないで設けた場合や、第1の有機樹脂層104又は第2の有機樹脂層108の一方にだけ導電膜を設けた場合と比較して、静電気の拡散を効果的に行い、電荷の局在化を効果的に防ぐことができる。その結果、半導体集積回路の静電気破壊をより効果的に抑制することができる。
【0062】
また、第2の導電膜111も第1の導電膜と同様に、電磁波が透過できるように膜厚を十分に薄く形成する。
【0063】
以上の工程により、半導体装置が得られる。本実施の形態で示した作製方法を用いることにより、第1の有機樹脂層104と第2の有機樹脂層108を介して電気的な接続を行う場合であっても、第1の有機樹脂層104と第2の有機樹脂層108に貫通孔を形成するためのエッチング工程が不要となるため、作製工程を簡略化することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、第1の導電膜107と第2の導電膜111との電気的な接続を、第1の有機樹脂層104内に設けられた第1の導電体106と第2の有機樹脂層108内に設けられた第2の導電体110を用いて行うため、摩擦等により半導体装置の側面や端部が選択的に摩耗した場合であっても、第1の導電膜107と第2の導電膜111の電気的な接続不良を抑制することができる。
【0065】
また、第1の有機樹脂層104が硬化する前に当該第1の有機樹脂層104にペースト105を浸透させ、その後硬化することにより第1の有機樹脂層104に貫通孔を設ける工程が不要となる。その結果、第1の導電膜107と第2の導電膜111の電気的な接続を、第1の有機樹脂層104内に設けられた第1の導電体106と第2の有機樹脂層108内に設けられた第2の導電体110を用いて行う場合であっても、第1の有機樹脂層104、第2の有機樹脂層108にクラック等の亀裂が生じることを抑制できる。また、作製工程を簡略化することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、基板101上に剥離層102を介して素子形成層103を設ける場合を示したが、剥離工程にかえて基板101を研磨することにより除去してもよい。この場合、基板101上に剥離層102を設けずに素子形成層103を設け、その後基板101を選択的に除去すればよい。
【0067】
本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態で示した構成又は作製方法と適宜組み合わせて実施することができる。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態1で示した構成において、第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層に代えて、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を用いる場合に関し図面を参照して説明する。
【0069】
まず、図3(A)を参照して、構造体の構成について説明する。
【0070】
構造体は、一定間隔をあけた経糸と一定間隔をあけた緯糸とで織られた繊維体160に、有機樹脂161を含浸させた構成とすることができる(図3(A)参照)。図3(A)で示す構造体は、繊維体160に当該経糸及び緯糸が存在しない領域を有しており、当該領域に有機樹脂161を形成することができる。
【0071】
繊維体160は、有機化合物または無機化合物の高強度繊維を用いた織布または不織布であり、部分的に重なるように配置する。高強度繊維としては、具体的には引張弾性率またはヤング率の高い繊維である。高強度繊維の代表例としては、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維が挙げられる。なお、繊維体160は、一種類の上記高強度繊維で形成されてもよい。また、複数の上記高強度繊維で形成されてもよい。
【0072】
また、繊維体160として、繊維(単糸)の束(以下、糸束と呼ぶ)を経糸及び緯糸に使って製織した織布、または複数種の繊維の糸束をランダムまたは一方向に堆積させた不織布を用いることができる。織布の場合、平織り、綾織り、しゅす織り等を適宜用いることができる。
【0073】
糸束の断面は、円形でも楕円形でもよい。繊維糸束として、高圧水流、液体を媒体とした高周波の振動、連続超音波の振動、ロールによる押圧等によって、開繊加工をした繊維糸束を用いてもよい。開繊加工をした繊維糸束は、糸束幅が広くなり、厚み方向の単糸数を削減することが可能であり、糸束の断面が楕円形または平板状となる。また、繊維糸束として低撚糸を用いることで、糸束が扁平化やすく、糸束の断面形状が楕円形状または平板形状となる。このように、断面が楕円形または平板状の糸束を用いることで、繊維体160を薄くすることが可能となり、結果的に薄型の半導体装置を作製することができる。
【0074】
また有機樹脂161として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて形成することができる。また、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いて形成してもよい。上記有機樹脂を用いることで、熱処理により繊維体を半導体集積回路に固着することができる。なお、有機樹脂161はガラス転移温度が高いほど、局所的押圧に対して破壊しにくいため好ましい。
【0075】
有機樹脂161又は繊維の糸束内に、高熱伝導性フィラーを分散させてもよい。高熱伝導性フィラーとしては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、アルミナ等が挙げられる。また、高熱伝導性フィラーとしては、銀、銅等の金属粒子がある。導電性フィラーが有機樹脂または繊維糸束内に含まれることにより半導体集積回路での発熱を外部に放出しやすくなるため、半導体装置の蓄熱を抑制することが可能であり、半導体装置の破壊を低減することができる。
【0076】
また、繊維体160に有機樹脂161が含浸された構造体は、プリプレグとも呼ばれる。プリプレグは、具体的には繊維体にマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥して有機溶剤を揮発させてマトリックス樹脂を半硬化させたものである。
【0077】
上記実施の形態において、第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層に代えて、繊維体に有機樹脂が含侵された構造体を用いる場合、当該構造体の厚さは、10μm以上100μm以下、さらには10μm以上30μm以下とすることが好ましい。このような厚さの構造体を用いることで、薄型で湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。例えば、弾性率13GPa以上15GPa以下、破断係数140MPaの構造体を用いることができる。
【0078】
次に、第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層に代えて、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を用いる場合に関して図3(B)〜図3(D)を参照して説明する。
【0079】
まず、基板101上に剥離層102を介して半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層103を形成し、当該素子形成層103を覆うように第1の構造体204を形成する(図3(B)参照)。
【0080】
第1の構造体204としては、繊維体160に有機樹脂161が含浸された構造体を用いることができる。
【0081】
次に、繊維体160に含浸された有機樹脂161を硬化させる前に、当該第1の構造体204の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト105を選択的に形成し(図3(C)参照)、少なくともペースト105の一部を第1の構造体204に浸透させた後、当該第1の構造体204における有機樹脂161を硬化する(図3(D)参照)。
【0082】
有機樹脂161を硬化する前の状態では、ペースト105が繊維体160の隙間を通り抜けて有機樹脂161に浸透する。つまり、本実施の形態では、ペースト105を浸透させた後に加熱処理により有機樹脂161を硬化することによって、繊維体160に貫通孔を設けずに(繊維体160を破壊せずに)、第1の構造体204の第1の面から第2の面に達する第1の導電体106を設けることができる。その結果、第1の構造体204内に第1の導電体106を設けたとしても、第1の構造体204の強度を維持することが可能となる。
【0083】
その後、第2の有機樹脂層108に代えて繊維体に有機樹脂が含浸された第2の構造体を用いて、上記図1(E)〜図2(E)と同様の工程を経ることによって、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体により素子形成層103が保護される構成とすることができる。なお、第2の構造体も繊維体に有機樹脂が含浸された構造体で設けることができる。
【0084】
このように、素子形成層103を覆うように繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を設けることによって、半導体装置に局所的荷重(点圧、線圧等)がかかっても、繊維体で圧力が分散されるため、実装工程や湾曲による破壊を低減することができる。また、本実施の形態を適用することによって、繊維体160を破壊(断線)せずに第1の導電体106と第2の導電体110を設けることができるため、第1の構造体と第2の構造体の強度を維持しつつ、第1の導電膜107と第2の導電膜111を電気的に接続することができる。
【0085】
また、通常、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体に貫通孔を設ける場合には、有機樹脂と繊維体を除去する必要があるが、本実施の形態では、エッチング等により貫通孔を設ける必要がないため、作製工程を簡略化することができる。
【0086】
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態で示した構成又は作製方法と適宜組み合わせて実施することができる。
【0087】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる半導体装置の作製方法及び当該作製方法により得られる半導体装置の一例に関し図面を参照して説明する。具体的には、第1の有機樹脂層と第2の有機樹脂層上に形成する第1の導電膜と第2の導電膜を導電性ペーストで形成する場合について示す。
【0088】
まず、基板101上に剥離層102及び第1の保護膜121を介して半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層103を形成した後、当該素子形成層103を覆うように第2の保護膜122を形成する(図4(A)参照)。
【0089】
第1の保護膜121、第2の保護膜122は、無機材料を有する絶縁層で形成することができる。例えば、第1の保護膜121、第2の保護膜122として、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等を用いて形成することができる。
【0090】
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多い物質のことを指し、窒化酸化物とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多い物質のことを指す。例えば、酸化窒化珪素膜とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多く、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化珪素膜とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多く、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化珪素を構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0091】
次に、第2の保護膜122を覆うように第1の有機樹脂層104を形成する(図4(B)参照)。
【0092】
第1の有機樹脂層104に代えて、上記実施の形態2で示したように繊維体に有機樹脂が含浸された第1の構造体を用いてもよい。
【0093】
次に、第1の有機樹脂層104を硬化させる前に、当該第1の有機樹脂層104の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト105を選択的に形成し(図4(C)参照)、少なくともペースト105の一部を第1の有機樹脂層104に浸透させた後、当該第1の有機樹脂層104を硬化する(図4(D)参照)。その結果、第1の有機樹脂層104内に第1の導電体106を設けることができる。
【0094】
本実施の形態では、ペースト105を、第1の有機樹脂層104の表面において素子形成層103と重ならない領域及び素子形成層103と重なる領域に形成し、第1の有機樹脂層104の下方の面(第2の面(第1の面と反対側の面))まで浸透させる。したがって、第1の導電体106は、第1の有機樹脂層104の第1の面から第2の面に連続した構造となる。
【0095】
例えば、第1の有機樹脂層104上にペースト105を網目状に形成することができる(図6(A)参照)。この場合、素子形成層103上の第1の有機樹脂層104にもペースト105が浸透するが、第2の保護膜122を設けることによって、素子形成層103にペースト105が浸透することを防止できる。
【0096】
本実施の形態において、第1の有機樹脂層104の表面及び内部において網目状に設けられた第1の導電体106は、コンタクト用導電体として機能すると共に、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がす、又は電荷の局部的な存在(局在化)を防ぐ導電体として機能する。また、網目状に形成することによって、第1の導電体106を厚く形成した場合であっても、電磁波を十分に透過させることができる。
【0097】
また、第1の導電体106は、コンタクト用導電体として機能すると共に、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がし、電荷の局在化を防ぐ膜として機能する。
【0098】
次に、剥離層102を用いて、素子形成層103を基板101から剥離する(図4(E)参照)。その結果、素子形成層103は、第1の有機樹脂層104側に設けられた構造となる。
【0099】
次に、剥離面115側からレーザー光を照射して第1の保護膜121及び第2の保護膜122を選択的に除去し、第1の有機樹脂層104内に設けられた第1の導電体106を露出させる開口部123を形成する(図5(A)参照)。なお、レーザー光を用いて第1の保護膜121及び第2の保護膜122を除去する代わりに、エッチングや研磨を行うことにより第1の導電体106を露出させる開口部123を形成してもよい。
【0100】
次に、剥離面115側に第2の有機樹脂層108を形成する(図5(B)参照)。
【0101】
第2の有機樹脂層108に代えて、上記実施の形態2で示したように繊維体に有機樹脂が含浸された第2の構造体を用いてもよい。
【0102】
次に、第2の有機樹脂層108を硬化させる前に、当該第2の有機樹脂層108の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト109を選択的に形成し(図5(C)参照)、少なくともペースト109の一部を第2の有機樹脂層108に浸透させた後、当該第2の有機樹脂層108を硬化する(図5(D)参照)。その結果、第2の有機樹脂層108内に第2の導電体110を設けることができる。
【0103】
本実施の形態では、ペースト109を、剥離面115において露出した第1の導電体106と重なる領域及び素子形成層103と重なる領域にも形成し、第2の有機樹脂層108の下方の面(第2の面(第1の面と反対側の面))まで浸透させる。したがって、第2の導電体110は、第2の有機樹脂層108の第1の面から第2の面に達した構造となり、素子形成層103が重ならない領域において第1の導電体106と電気的に接続される。
【0104】
例えば、第2の有機樹脂層108上にペースト109を網目状に形成することができる(図6(B)参照)。この場合、素子形成層103上の第2の有機樹脂層108にもペースト109が浸透されるが、保護膜121を設けることによって、素子形成層103にペースト109が浸透することを防止できる。
【0105】
第2の導電体110は、コンタクト用導電体として機能すると共に、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がし、電荷の局在化を防ぐ膜として機能する。
【0106】
以上の工程により、半導体装置が得られる。本実施の形態で示した作製方法を用いることにより、第1の有機樹脂層104、第2の有機樹脂層108を硬化させた後に当該第1の有機樹脂層104と第2の有機樹脂層108の表面に導電膜を設ける工程を省略することができるため、作製工程を簡略化することができる。
【0107】
なお、上記説明では、ペースト105、ペースト109を網目状に設ける場合を示したが、ペースト105、ペースト109の形状はこれに限られない。例えば、第1の有機樹脂層104、第2の有機樹脂層108の全面にペースト105、ペースト109を形成してもよい。
【0108】
また、第1の有機樹脂層104、第2の有機樹脂層108の領域毎に形成するペースト105、ペースト109の量を制御してもよい。この場合について図7を参照して説明する。
【0109】
まず、基板101上に剥離層102を介して半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層103を形成し、当該素子形成層103を覆うように第1の有機樹脂層104を形成する。続いて、第1の有機樹脂層104を硬化させる前に、当該第1の有機樹脂層104の表面(第1の面)上に導電性を有するペースト105を形成する(図7(A)参照)。
【0110】
ここでは、ペースト105を、第1の有機樹脂層104の表面において素子形成層103と重なる領域119の全面と、素子形成層103と重ならない領域118に形成する。また、素子形成層103と重なる領域119に形成する単位面積当たりのペースト105の量を素子形成層103と重ならない領域118に形成する単位面積当たりのペースト105量より少なくする。つまり、素子形成層103と重ならない領域118においては、ペースト105を第1の有機樹脂層104の下方の面(第2の面)まで浸透させ、素子形成層103と重なる領域119においては、ペースト105を第1の有機樹脂層104の下方の面(第2の面)まで浸透させない。
【0111】
その結果、素子形成層103と重ならない領域118においては、第1の導電体106が第1の有機樹脂層104の第1の面から第2の面に達し、素子形成層103と重なる領域119においては、第1の導電体106が第1の有機樹脂層104の表面(第1の面)側に設けられた構造となる(図7(B)参照)。
【0112】
その後、剥離層102を用いて、素子形成層103及び第1の有機樹脂層104を基板101から剥離し(図7(C)参照)、剥離面115側に第2の有機樹脂層108を形成した後、第2の有機樹脂層108の表面においても、素子形成層103と重なる領域119に形成する単位面積当たりのペースト109の量を素子形成層103と重ならない領域118に形成する単位面積当たりのペースト109の量より少なくする(図7(D)参照)。
【0113】
その結果、素子形成層103と重ならない領域118においては、第2の導電体110が第2の有機樹脂層108の第1の面から第2の面に達して第1の導電体106と電気的に接続し、素子形成層103と重なる領域119においては、第2の導電体110が第2の有機樹脂層108の表面(第1の面)側に設けられた構造となる(図7(E)参照)。
【0114】
図7に示すように、ペーストを形成する領域によって量を制御することによって、有機樹脂層に浸透させるペーストの位置を制御することができる。
【0115】
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態で示した構成又は作製方法と適宜組み合わせて実施することができる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では、同一基板上に半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層を複数設け、一枚の基板から複数(ここでは、縦4×横3)の半導体装置(半導体集積回路チップ)を作製する方法に関して図面を参照して説明する。以下の説明において、図8、図9は上面図の模式図であり、図10〜図15は図8、図9におけるA−B間の断面図の模式図である。
【0117】
まず、基板701の一表面に剥離層702を形成し、続けて下地となる絶縁膜703および非晶質半導体膜704(例えば非晶質珪素を含む膜)を形成する(図8(A)、図10(A)参照)。剥離層702、絶縁膜703および非晶質半導体膜704は、連続して形成することができる。連続して形成することにより、大気に曝されないため不純物の混入を防ぐことができる。なお、以下の工程において、図8(A)に示された複数の点線の領域750にそれぞれ半導体集積回路部及びアンテナを有する素子形成層が形成される。
【0118】
基板701は、ガラス基板、石英基板、金属基板やステンレス基板、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用いるとよい。このような基板であれば、その面積や形状に大きな制限はないため、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。従って、半導体集積回路部を大きく形成した場合であっても、シリコン基板を用いる場合と比較して低コスト化を実現することができる。
【0119】
なお、本工程では、剥離層702を基板701の全面に設けているが、必要に応じて、基板701の全面に剥離層を設けた後に、フォトリソグラフィ法により剥離層702を選択的に設けてもよい。また、基板701に接するように剥離層702を形成しているが、必要に応じて、基板701に接するように酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜等の絶縁膜を形成し、当該絶縁膜に接するように剥離層702を形成してもよい。
【0120】
剥離層702は、金属膜や金属膜と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属膜としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる膜を単層又は積層して形成する。また、これらの材料は、スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法等を用いて形成することができる。金属膜と金属酸化膜の積層構造としては、上述した金属膜を形成した後に、酸素雰囲気下またはNO雰囲気下におけるプラズマ処理、酸素雰囲気下またはNO雰囲気下における加熱処理を行うことによって、金属膜表面に当該金属膜の酸化物または酸化窒化物を設けることができる。また、金属膜を形成した後に、オゾン水等の酸化力の強い溶液で表面を処理することにより、金属膜表面に当該金属膜の酸化物又は酸化窒化物を設けることができる。
【0121】
絶縁膜703は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜を、単層又は積層で形成する。下地となる絶縁膜が2層構造の場合、例えば、1層目として窒化酸化珪素膜を形成し、2層目として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜が3層構造の場合、1層目の絶縁膜として酸化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。または、1層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜は、基板701からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
【0122】
半導体膜704は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25〜200nm(好ましくは30〜150nm)の厚さで形成する。半導体膜704としては、例えば、非晶質珪素膜を形成すればよい。
【0123】
次に、半導体膜704にレーザー光を照射して結晶化を行う。なお、レーザー光の照射と、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とを組み合わせた方法等により半導体膜704の結晶化を行ってもよい。その後、得られた結晶質半導体膜を所望の形状にエッチングして、結晶質半導体膜704a〜704dを形成し、当該半導体膜704a〜704dを覆うようにゲート絶縁膜705を形成する(図10(B)参照)。
【0124】
結晶質半導体膜704a〜704dの作製工程の一例を以下に簡単に説明すると、まず、プラズマCVD法を用いて、膜厚50〜60nmの非晶質半導体膜(例えば、非晶質珪素膜)を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体膜上に保持させた後、非晶質半導体膜に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体膜を形成する。その後、レーザー発振器からレーザー光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いることよって結晶質半導体膜704a〜704dを形成する。なお、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化を行わずに、レーザー光の照射だけで非晶質半導体膜の結晶化を行ってもよい。
【0125】
次に、結晶質半導体膜704a〜704dを覆うゲート絶縁膜705を形成する。ゲート絶縁膜705は、CVD法やスパッタ法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む膜を、単層又は積層して形成する。具体的には、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜を、単層又は積層して形成する。
【0126】
また、ゲート絶縁膜705は、半導体膜704a〜704dに対しプラズマ処理を行い、表面を酸化又は窒化することで形成しても良い。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波の導入により行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することができる。
【0127】
このような高密度プラズマを用いた処理により、1〜20nm、代表的には5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と半導体膜との界面準位密度はきわめて低くすることができる。このような、プラズマ処理は、半導体膜(結晶性シリコン、或いは多結晶シリコン)を直接酸化(若しくは窒化)するため、形成される絶縁膜の厚さは理想的には、ばらつきをきわめて小さくすることができる。加えて、結晶性シリコンの結晶粒界でも酸化が強くされることがないため、非常に好ましい状態となる。すなわち、ここで示す高密度プラズマ処理で半導体膜の表面を固相酸化することにより、結晶粒界において異常に酸化反応をさせることなく、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。
【0128】
ゲート絶縁膜705は、プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それに加えてプラズマや熱反応を利用したCVD法で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積し、積層させても良い。いずれにしても、プラズマ処理により形成した絶縁膜をゲート絶縁膜の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができる。
【0129】
また、半導体膜に対し、連続発振レーザー光若しくは10MHz以上の周波数で発振するレーザー光を照射しながら一方向に走査して結晶化させて得られた半導体膜704a〜704dは、そのレーザー光の走査方向に結晶が成長する特性がある。その走査方向をチャネル長方向(チャネル形成領域が形成されたときにキャリアが流れる方向)に合わせてトランジスタを配置し、上記ゲート絶縁層を組み合わせることで、特性ばらつきが小さく、しかも電界効果移動度が高い薄膜トランジスタ(TFT)を得ることができる。
【0130】
次に、ゲート絶縁膜705上に、導電膜を積層して形成する。ここでは、プラズマCVD法やスパッタ法等により、20〜100nmの厚さで形成した導電膜上に、100〜400nmの厚さで形成した導電膜を積層して形成する。用いる導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成する。または、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成する。積層させる導電膜の組み合わせの例を挙げると、窒化タンタル膜とタングステン膜、窒化タングステン膜とタングステン膜、窒化モリブデン膜とモリブデン膜等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、導電膜を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層構造ではなく、3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0131】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート配線を形成するためのエッチング処理を行って、半導体膜704a〜704dの上方にゲート電極707を形成する。
【0132】
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成して、結晶質半導体膜704a〜704dに、イオンドープ法またはイオン注入法により、n型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。n型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、例えばリン(P)、砒素(As)を用いる。
【0133】
次に、ゲート絶縁膜705とゲート電極707を覆うように、絶縁膜を形成する。絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタ法等により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層又は積層して形成する。次に、絶縁膜を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、ゲート電極707の側面に接する絶縁膜708(サイドウォールともよばれる)を形成する。絶縁膜708は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。
【0134】
次に、フォトリソグラフィ法により形成したレジストからなるマスクと、ゲート電極707および絶縁膜708をマスクとして用いて、結晶質半導体膜704a〜704dにn型を付与する不純物元素を添加して、チャネル形成領域706aと、第1の不純物領域706bと、第2の不純物領域706cを形成する(図10(C)参照)。第1の不純物領域706bは薄膜トランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能し、第2の不純物領域706cはLDD領域として機能する。第2の不純物領域706cが含む不純物元素の濃度は、第1の不純物領域706bが含む不純物元素の濃度よりも低い。
【0135】
続いて、ゲート電極707、絶縁膜708等を覆うように、絶縁膜を単層または積層して形成し、当該絶縁膜上に薄膜トランジスタのソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜731を形成する。(図10(D)参照)。なお、薄膜トランジスタ等の素子は、領域750の全面に設けた構成としても良いし、上記実施の形態で示したように、領域750の一部(例えば、中心部)を除いた部分に設けた構成としても良い。
【0136】
絶縁膜は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法、スクリーン印刷法等により、珪素の酸化物や珪素の窒化物等の無機材料、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料やシロキサン材料等により、単層または積層で形成する。ここでは、絶縁膜を2層で設けた例を示しており、1層目の絶縁膜709として窒化酸化珪素膜で形成し、2層目の絶縁膜710として酸化窒化珪素膜で形成することができる。
【0137】
なお、絶縁膜709、710を形成する前、または絶縁膜709、710のうちの一方又は両方を形成した後に、半導体膜704の結晶性の回復や半導体膜に添加された不純物元素の活性化、半導体膜の水素化を目的とした加熱処理を行うとよい。加熱処理には、熱アニール、レーザーアニール法またはRTA法などを適用するとよい。
【0138】
導電膜731は、フォトリソグラフィ法により絶縁膜709、710等をエッチングして、第1の不純物領域706bを露出させるコンタクトホールを形成した後、コンタクトホールを充填するように導電膜を形成し、当該導電膜を選択的にエッチングして形成する。なお、導電膜を形成する前に、コンタクトホールにおいて露出した半導体膜704a〜704dの表面にシリサイドを形成してもよい。
【0139】
また、導電膜731は、CVD法やスパッタリング法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素と珪素の一方又は両方とを含む合金材料に相当する。
【0140】
次に、導電膜731を覆うように、絶縁膜711を形成し、当該絶縁膜711上に開口部712a、712bを形成する(図11(A)参照)。ここでは、薄膜トランジスタ730b、730dのソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜731が露出するように開口部712a、712bを形成する。絶縁膜711は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法またはスクリーン印刷法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁膜711は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。
【0141】
次に、絶縁膜711上にアンテナとして機能する導電膜713を形成し、当該導電膜713上に絶縁膜714を形成する(図11(B)参照)。その結果、薄膜トランジスタ及びアンテナを含む素子形成層751が得られる(図8(B)参照)。ここでは、半導体集積回路上に導電膜を直接作り込んでアンテナ(オンチップアンテナ)を形成した場合を示している。
【0142】
導電膜713は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等から選択された元素、又は元素を主成分とする合金材料、又は前記元素を主成分とする化合物材料からなる層を単層又は積層して形成する。
【0143】
また、導電膜713の形状は、伝送方式に応じて適宜選択すればよい。ここでは、導電膜713をコイル状として電磁結合方式または電磁誘導方式(例えば13.56MHz帯)を適用する場合を示しているがこれに限られない。
【0144】
絶縁膜714は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等を用いることができる。
【0145】
次に、絶縁膜703、709、711、714を選択的に除去することにより開口部715を形成し、剥離層702又は基板701を露出させる(図8(C)、図11(C)参照)。開口部715は、半導体集積回路及びアンテナが設けられた領域を避けた領域に形成する。
【0146】
次に、絶縁膜714を覆うように第1の構造体721を形成する(図12(A)参照)。
【0147】
第1の構造体721は、繊維体721aに有機樹脂721bが含浸された構造とすることができる。
【0148】
有機樹脂721bは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて形成することができる。また、有機樹脂721bとして、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0149】
図12(A)では、開口部715に有機樹脂721bが充填されるように設ける。
【0150】
次に、有機樹脂721bを硬化させる前に、第1の構造体721の表面(第1の面)上に導電性を有するペーストを選択的に形成し、少なくともペーストの一部を有機樹脂721bに浸透させた後、当該有機樹脂721bを硬化する(図9(A)、図12(B)参照)。その結果、第1の構造体721内に第1の導電体722を設けることができる。
【0151】
ここでは、ペーストを第1の構造体721の第1の面上において開口部715と重なる領域に選択的に形成し、開口部715に設けられた有機樹脂721bまで浸透させる。
【0152】
ペーストの材料や作製方法は、上記実施の形態1においてペースト105の説明で例示したいずれかの材料や作製方法を用いることができる。
【0153】
また、有機樹脂721b内にペーストを浸透させた後、有機樹脂721bの硬化と同時又は硬化の前後に焼成を行うことによりペーストを硬化させることが好ましい。なお、有機樹脂721bとしてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた場合、ペーストを浸透させた後、加熱処理を行うことにより、有機樹脂721bを硬化すると共に、ペーストに含まれる導電体を硬化させることができる。有機樹脂721bとして、熱硬化性樹脂を用いた場合、加熱処理により、有機樹脂721bの硬化とペーストの焼成を同時に行うことができるため、工程を簡略化することができる。
【0154】
次に、第1の構造体721の第1の面に第1の導電膜723を形成する(図9(B)、図13(A)参照)。第1の導電膜723は、第1の導電体722と電気的に接続するように設ける。
【0155】
第1の導電膜723の材料や作製方法は、上記実施の形態1において第1の導電膜107の説明で例示したいずれかの材料や作製方法を用いることができる。
【0156】
第1の導電膜723を設けることによって、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がす、又は電荷の局部的な存在(局在化)を防ぐことができるため、半導体集積回路の静電気破壊を防ぐことができる。
【0157】
そのため、第1の導電膜723は、少なくとも半導体集積回路と重なる領域に設ければよく、例えば、図13(A)に示すように、第1の構造体721の表面の全面に第1の導電膜723を設けた構成とすることができる。全面に設けた場合、静電気に対して広い領域にわたって保護することができる。
【0158】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、外部からの電磁波により誘導起電力を発生させて動作を行う(無線機能を有する)ものである。このため、第1の導電膜723は、静電気による半導体集積回路の破壊を防ぐと共に、電磁波を透過させる導電材料を用いて形成する必要がある。
【0159】
本実施の形態では、第1の導電膜723を電磁波が透過できるように十分に薄くする。第1の導電膜723の膜厚は、通信に利用される電磁波の周波数、第1の導電膜723として用いる導電材料の抵抗率や透磁率に基づいて定めればよい。
【0160】
例えば、第1の導電膜723として、チタンを用い、膜厚を5nm〜100nm、好ましくは10nm〜30nmで形成する。
【0161】
次に、薄膜トランジスタ730a〜730dやアンテナとして機能する導電膜713等を含む素子形成層751を基板701から剥離する(図13(B)参照)。
【0162】
剥離する際に水やオゾン水等の水溶液で剥離する面を濡らしながら行うことによって、薄膜トランジスタ730a〜薄膜トランジスタ730d等の素子が静電気等によって破壊されることを防止できる。また、素子形成層が剥離された基板701を再利用することによって、低コスト化を実現することができる。
【0163】
次に、剥離により露出した面(絶縁膜703の表面)を覆うように、第2の構造体725を形成する(図14(A)参照)。
【0164】
第2の構造体725は、繊維体725aに有機樹脂725bが含浸された構造とすることができる。
【0165】
有機樹脂725bは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂又はシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて形成することができる。また、有機樹脂725bとして、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0166】
次に、有機樹脂725bを硬化させる前に、第2の構造体725の表面(第1の面)上に導電性を有するペーストを選択的に形成し、少なくともペーストの一部を有機樹脂725bに浸透させた後、有機樹脂725bを硬化する(図14(B)参照)。その結果、有機樹脂725b内に第2の導電体726を設けることができる。
【0167】
ペーストは、剥離面において露出した第1の導電体722と重なる領域に形成し、第2の構造体725の第2の面(剥離により露出した面(絶縁膜703の表面)と接する面)まで浸透させる。したがって、第2の導電体726は、第2の構造体725の第1の面から第2の面に達した構造となり、第1の導電体722と電気的に接続される。
【0168】
次に、第2の構造体725の第1の面に第2の導電膜727を形成する(図15(A)参照)。第2の導電膜727は、第2の導電体726と電気的に接続するように設ける。その結果、第1の導電膜723と第2の導電膜727は、第1の導電体722と第2の導電体726を介して電気的に接続された構成となる。
【0169】
第2の導電膜727を設けることによって、静電気放電により印加される静電気を拡散して逃がす、又は電荷の局部的な存在(局在化)を防ぐことができるため、半導体集積回路の静電気破壊を防ぐことができる。
【0170】
そのため、第2の導電膜727は、少なくとも半導体集積回路と重なる領域に設ければよく、例えば、図15(A)に示すように、第2の構造体725の表面の全面に第2の導電膜727を設けた構成とすることができる。全面に設けた場合、静電気に対して広い領域にわたって保護することができる。
【0171】
特に、第1の構造体721上に設けられた第1の導電膜723と第2の構造体725上に設けられた第2の導電膜727を電気的に接続し等電位面とすることにより、第1の導電膜723と第2の導電膜727を電気的に接続しないで設けた場合や、第1の構造体721又は第2の構造体725の一方にだけ導電膜を設けた場合と比較して、静電気の拡散を効果的に行い、電荷の局在化を効果的に防ぐことができる。その結果、静電気による半導体集積回路の破壊をより効果的に防ぐことができる。
【0172】
また、第2の導電膜727も第1の導電膜723と同様に、電磁波が透過できるように膜厚を十分に薄く形成する。
【0173】
次に、第1の導電膜723が設けられた第1の構造体721と第2の導電膜727が設けられた第2の構造体725に挟まれた複数の半導体集積回路及びアンテナをダイシング、スクライビング又はレーザーカット法等により選択的に分断することによって、複数の半導体装置を得ることができる(図9(C)、図15(B)参照)。
【0174】
なお、上記説明では、第1の構造体721を形成する前に開口部715を設けた場合を示したが、これに限られない。例えば、図16〜図18に示すように形成してもよい。
【0175】
まず、図11(B)まで形成した後、絶縁膜714上に第1の構造体721を形成し(図16(A)参照)、有機樹脂721bにペーストを浸透させて第1の導電体722を形成する(図16(B)参照)。続いて、第1の導電体722と電気的に接続するように第1の構造体721上に第1の導電膜723を形成した後、薄膜トランジスタ730a〜730dやアンテナとして機能する導電膜713等を含む素子形成層を基板701から剥離する(図17(A)参照)。
【0176】
次に、剥離面側からレーザー光を選択的に照射して、第1の導電体722を露出させる(図17(B)参照)。
【0177】
次に、剥離により露出した面(絶縁膜703の表面)を覆うように、第2の構造体725を形成し(図18(A)参照)、有機樹脂725bにペーストを浸透させて第2の導電体726を形成し、当該第2の導電体726と電気的に接続するように第2の構造体725上に第2の導電膜727を形成する(図18(B)参照)。
【0178】
その後、第1の導電膜723が設けられた第1の構造体721と第2の導電膜727が設けられた第2の構造体725に挟まれた複数の半導体集積回路及びアンテナをダイシング、スクライビング又はレーザーカット法等により選択的に分断することによって、複数の半導体装置を得ることができる。
【0179】
本実施の形態で示した半導体装置の作製方法は、本明細書の他の実施の形態で示した半導体装置の作製に適用することができる。
【0180】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態を用いて形成された非接触でデータの入出力が可能である半導体装置の適用例に関して図面を参照して以下に説明する。非接触でデータの入出力が可能である半導体装置は利用の形態によっては、RFIDタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。
【0181】
半導体装置800は、非接触でデータを交信する機能を有し、高周波回路810、電源回路820、リセット回路830、クロック発生回路840、データ復調回路850、データ変調回路860、他の回路の制御を行う制御回路870、記憶回路880およびアンテナ890を有している(図19(A)参照。)。高周波回路810はアンテナ890より信号を受信して、データ変調回路860より受信した信号をアンテナ890から出力する回路であり、電源回路820は受信信号から電源電位を生成する回路であり、リセット回路830はリセット信号を生成する回路であり、クロック発生回路840はアンテナ890から入力された受信信号を基に各種クロック信号を生成する回路であり、データ復調回路850は受信信号を復調して制御回路870に出力する回路であり、データ変調回路860は制御回路870から受信した信号を変調する回路である。また、制御回路870としては、例えばコード抽出回路910、コード判定回路920、CRC判定回路930および出力ユニット回路940が設けられている。なお、コード抽出回路910は制御回路870に送られてきた命令に含まれる複数のコードをそれぞれ抽出する回路であり、コード判定回路920は抽出されたコードとリファレンスに相当するコードとを比較して命令の内容を判定する回路であり、CRC判定回路930は判定されたコードに基づいて送信エラー等の有無を検出する回路である。
【0182】
次に、上述した半導体装置の動作の一例について説明する。まず、アンテナ890により無線信号が受信される。無線信号は高周波回路810を介して電源回路820に送られ、高電源電位(以下、VDDと記す)が生成される。VDDは半導体装置800が有する各回路に供給される。また、高周波回路810を介してデータ復調回路850に送られた信号は復調される(以下、復調信号)。さらに、高周波回路810を介してリセット回路830およびクロック発生回路840を通った信号及び復調信号は制御回路870に送られる。制御回路870に送られた信号は、コード抽出回路910、コード判定回路920およびCRC判定回路930等によって解析される。そして、解析された信号にしたがって、記憶回路880内に記憶されている半導体装置の情報が出力される。出力された半導体装置の情報は出力ユニット回路940を通って符号化される。さらに、符号化された半導体装置800の情報はデータ変調回路860を通って、アンテナ890により無線信号に載せて送信される。なお、半導体装置800を構成する複数の回路においては、低電源電位(以下、VSS)は共通であり、VSSはGNDとすることができる。
【0183】
このように、通信装置から半導体装置800に信号を送り、当該半導体装置800から送られてきた信号を通信装置で受信することによって、半導体装置のデータを読み取ることが可能となる。
【0184】
また、半導体装置800は、各回路への電源電圧の供給を電源(バッテリー)を搭載せず電磁波により行うタイプとしてもよいし、電源(バッテリー)を搭載して電磁波と電源(バッテリー)により各回路に電源電圧を供給するタイプとしてもよい。
【0185】
次に、非接触でデータの入出力が可能な半導体装置の使用形態の一例について説明する。表示部3210を含む携帯端末の側面には、通信装置3200が設けられ、品物3220の側面には半導体装置3230が設けられる(図19(B))。品物3220が含む半導体装置3230に通信装置3200をかざすと、表示部3210に品物の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商品に関する情報が表示される。また、商品3260をベルトコンベアにより搬送する際に、通信装置3240と、商品3260に設けられた半導体装置3250を用いて、該商品3260の検品を行うことができる(図19(C))。このように、システムに半導体装置を活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。
【0186】
以上の様に、上記実施の形態で示した半導体装置の適用範囲は極めて広く、広い分野の電子機器に用いることが可能である。
【0187】
(実施の形態6)
上記実施の形態で示した半導体装置は、プロセッサ回路を有するチップ(以下、プロセッサチップ、無線チップ、無線プロセッサ、無線メモリ、無線タグともよぶ)として利用することができる。上記実施の形態で示した半導体装置の用途は広範にわたり、非接触で対象物の履歴等の情報を明確にし、生産・管理等に役立てる商品であればどのようなものにも適用することができる。例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することができる。これらの例に関して図20を用いて説明する。
【0188】
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するもの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指し、プロセッサ回路を有するチップ190を設けることができる(図20(A)参照)。証書類とは、運転免許証、住民票等を指し、プロセッサ回路を有するチップ191を設けることができる(図20(B)参照)。身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指し、プロセッサ回路を有するチップ197を設けることができる(図20(C)参照)。無記名債券類とは、切手、おこめ券、各種ギフト券等を指す。包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル等を指し、プロセッサ回路を有するチップ193を設けることができる(図20(D)参照)。書籍類とは、書物、本等を指し、プロセッサ回路を有するチップ194を設けることができる(図20(E)参照)。記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指し、プロセッサ回路を有するチップ195を設けることができる(図20(F)参照)。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指し、プロセッサ回路を有するチップ196を設けることができる(図20(G)参照)。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
【0189】
このような半導体装置の設け方としては、物品の表面に貼る、或いは物品に埋め込んで設ける。例えば、本の場合は紙に埋め込めばよく、有機樹脂からなるパッケージであれば有機樹脂に埋め込めばよい。
【0190】
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に半導体装置を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類に半導体装置を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物にセンサーを備えた半導体装置を埋め込む又は取り付けることによって、生まれた年や性別または種類等はもちろん体温等の健康状態を容易に管理することが可能となる。
【実施例1】
【0191】
本実施例では、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体に、導電性を有するペーストを浸透させることにより、当該構造体内に導電体を設けた場合について説明する。
【0192】
まず、プリプレグを2枚用意した。プリプレグとして、ガラス繊維体に臭素化エポキシ樹脂が含浸されたものを用いた。
【0193】
次に、プリプレグを2枚重ねた後、プリプレグに含まれる臭素化エポキシ樹脂を硬化させる前に、プリプレグの表面にスクリーン印刷法を用いて銀ペーストを形成し、当該プリプレグの内部に銀ペーストを浸透させた。銀ペーストとして、銀粉、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、エポキシ樹脂が含まれているものを用いた。
【0194】
その後、3MPaの圧力を加えながら195℃で60分間の熱処理を行った後、構造体の断面から査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)による観察を行った。
【0195】
図21に査電子顕微鏡で観察した構造体の断面を示す。
【0196】
図21に示すように、2枚貼り合わされた構造体の上面から下面に渡って銀が設けられていることが観察された。また、繊維体が破壊されておらず、銀ペーストが繊維体の隙間を通り抜けて臭素化エポキシ樹脂内に浸透したことが確認できた。つまり、有機樹脂を硬化させる前にペーストを浸透させ、その後に有機樹脂を硬化させることによって、繊維体を破壊することなく構造体の内部に導電体を設けることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0197】
101 基板
102 剥離層
103 素子形成層
104 有機樹脂層
105 ペースト
106 導電体
107 導電膜
108 有機樹脂層
109 ペースト
110 導電体
111 導電膜
115 剥離面
118 領域
119 領域
121 保護膜
122 保護膜
123 開口部
160 繊維体
161 有機樹脂
190 チップ
191 チップ
193 チップ
194 チップ
195 チップ
196 チップ
197 チップ
204 構造体
701 基板
702 剥離層
703 絶縁膜
704 半導体膜
705 ゲート絶縁膜
707 ゲート電極
708 絶縁膜
709 絶縁膜
710 絶縁膜
711 絶縁膜
713 導電膜
714 絶縁膜
715 開口部
721 構造体
722 導電体
723 導電膜
725 構造体
726 導電体
727 導電膜
731 導電膜
750 領域
751 素子形成層
800 半導体装置
810 高周波回路
820 電源回路
830 リセット回路
840 クロック発生回路
850 データ復調回路
860 データ変調回路
870 制御回路
880 記憶回路
890 アンテナ
910 コード抽出回路
920 コード判定回路
930 CRC判定回路
940 出力ユニット回路
3200 通信装置
3210 表示部
3220 品物
3230 半導体装置
3240 通信装置
3250 半導体装置
3260 商品
704a 半導体膜
706a チャネル形成領域
706b 不純物領域
706c 不純物領域
712a 開口部
721a 繊維体
721b 有機樹脂
725a 繊維体
725b 有機樹脂
730a 薄膜トランジスタ
730b 薄膜トランジスタ
730d 薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層を形成し、
前記素子形成層を覆うように第1の有機樹脂層を形成し、
前記第1の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第1のペーストを、前記第1の有機樹脂層の第1の面上であって少なくとも前記素子形成層と重ならない領域に形成し、
前記第1のペーストを前記第1の有機樹脂層内に浸透させた後に前記第1の有機樹脂層を硬化させることにより、前記第1の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達する第1の導電体を形成し、
前記第1の導電体と電気的に接続し且つ前記素子形成層と重なるように前記第1の有機樹脂層上に第1の導電膜を形成し、
前記基板から素子形成層を剥離し、剥離面において前記第1の有機樹脂層に形成された第1の導電体を露出させ、
前記剥離面に第2の有機樹脂層を形成し、
前記第2の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第2のペーストを、前記第2の有機樹脂層の第1の面上であって少なくとも前記剥離面において露出した前記第1の導電体と重なる領域に形成し、
前記第2のペーストを前記第2の有機樹脂層内に浸透させた後に前記第2の有機樹脂層を硬化させることにより、前記第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達し、且つ前記第1の導電体と電気的に接続する第2の導電体を形成し、
前記第2の導電体と電気的に接続し且つ前記素子形成層と重なるように前記第2の有機樹脂層上に第2の導電膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に第1の保護膜を形成し、
前記第1の保護膜上に半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層を形成し、
前記素子形成層上に第2の保護膜を形成し、
前記第2の保護膜を覆うように第1の有機樹脂層を形成し、
前記第1の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第1のペーストを、前記第1の有機樹脂層の第1の面上に形成し、
前記第1のペーストを前記第1の有機樹脂層内に浸透させた後に前記第1の有機樹脂層を硬化させることにより、前記第1の有機樹脂層の第1の面から前記第1の面と反対側の第2の面に達する第1の導電体を形成し、
前記基板から素子形成層を剥離し、剥離面において前記第1の保護膜及び前記第2の保護膜を選択的に除去することにより、前記第1の有機樹脂層に形成された第1の導電体を露出させ、
前記剥離面に第2の有機樹脂層を形成し、
前記第2の有機樹脂層を硬化させる前に、導電体を有する第2のペーストを、前記第2の有機樹脂層の第1の面上に形成し、
前記第2のペーストを前記第2の有機樹脂層内に浸透させた後に前記第2の有機樹脂層を硬化させることにより、前記第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面と反対側の第2の面に達し、且つ前記第1の導電体と電気的に接続する第2の導電体を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の有機樹脂層の第1の面上に形成する前記第1のペーストを網目状に形成し、
前記第2の有機樹脂層の第1の面上に形成する前記第2のペーストを網目状に形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の有機樹脂層又は前記第2の有機樹脂層の少なくとも一方に代えて、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記有機樹脂としてエポキシ樹脂を用い、
前記第1のペースト及び前記第2のペーストとして銀ペーストを用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
互いに対向するように設けられた第1の有機樹脂層及び第2の有機樹脂層と、
前記第1の有機樹脂層と前記第2の有機樹脂層との間に設けられた半導体集積回路及びアンテナを有する素子形成層と、
前記第1の有機樹脂層の第1の面に設けられた第1の導電膜と、
前記第2の有機樹脂層の第1の面に設けられた第2の導電膜と、
前記第1の導電膜と電気的に接続され且つ前記第1の有機樹脂層の第1の面から該第1の面の反対側の第2の面に達する第1の導電体と、
前記第2の導電膜と電気的に接続され且つ前記第2の有機樹脂層の第1の面から該第1の面の反対側の第2の面に達する第2の導電体とを有し、
少なくとも前記第1の有機樹脂層は繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を有し、
前記第1の導電体は、前記繊維体の隙間を介して前記第1の有機樹脂層内に設けられており、
前記第1の導電膜と前記第2の導電膜は、前記第1の導電体と前記第2の導電体を介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の導電体及び前記第2の導電体が銀であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−15550(P2010−15550A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127681(P2009−127681)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】