説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ビアホール内のコンタクト材料としてカーボンナノチューブ(CNT)を用いつつ、ビア抵抗の低減及びプロセスの容易化をはかる。
【解決手段】配線層間のビアにCNTを用いた半導体装置であって、表面にCu配線17を有する基板上に設けられた層間絶縁膜19と、層間絶縁膜19に形成されCu配線17に接続されるビアホールと、ビアホール内に露出するCu配線17上に選択的に形成され、Cu配線17に対するバリアとなり、且つCNTの成長の助触媒となる第1の金属膜21と、ビアホール内の少なくとも第1の金属膜21上に形成された、CNTの成長の触媒となる第2の金属膜22と、第1及び第2の金属膜21,22が形成されたビアホール内に形成されたCNT23と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを用いた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線のビアホール内にカーボンナノチューブ(CNT)を形成することにより、配線抵抗の低減をはかる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、予めCNTの触媒層となるTaN/Ti(N)/Coを成膜した後、CNTをCVD法により成膜するが、触媒層はウェハ全面に成膜させているため、CNTはビアホールだけでなくウェハ全面から成長が起こる。次に、ビアホール内部のみにCNTを残すため、CMP処理によってビア以外の余分なCNTを除去する。ここで、CNTは横方向、即ちビアに対して水平方向にフレキシブルに屈曲する性質がある。そこで、CMPを行うためには、例えばSOD(Spin on Direct;塗布膜)のSiO2 膜などをCNT中に含浸させ、CNTを固定してからCMPを行う必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、CNTが高密度に成長すると、SOD膜が含浸されない、或いは含浸されにくくCNTを十分に固定するだけのSOD膜が含浸されない状態となり、CMP処理が行えない。ビアの抵抗値はCNTの単位面積当たりの密度で決まるので、ビア抵抗を低減するためにはCNTの高密度化が不可欠であり、従ってCMP処理との両立が困難である。さらに、CNT自体が薬液処理に非常に耐性があるため、CNT自体をCMPでエッチングすることも非常に難しい。
【0004】
また、CNTが全面成長する場合には、ビアホールの側壁からのCNTの成長があり、ビアホールの側面から成長したCNTはビア側面のバリアメタルの伝導を介した電気伝導になる。このため、ビア抵抗を大幅に上昇させてしまう、或いはビアの上面が側壁から成長したCNTで埋まってしまい、回路が事実上断線してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−258187号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mizuhisa Nihei et.al., Extended Abstracts of the 2006 International Conference on Solid State Devices and Materials, Yokohama, 2006, pp.140-141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ビアホール内のコンタクト材料としてカーボンナノチューブを用いつつ、ビア抵抗の低減及びプロセスの容易化をはかり得る半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係わる半導体装置は、Cu配線を有する基板上に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜に形成され、前記Cu配線に接続されるビアホールと、前記ビアホール内に露出する前記Cu配線上に選択的に形成され、前記Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブの成長の助触媒となる第1の金属膜と、前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上に形成された、前記カーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜と、前記第1及び第2の金属膜が形成された前記ビアホール内に形成されたカーボンナノチューブと、を具備したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の一態様に係わる半導体装置の製造方法は、Cu配線の上に形成された層間絶縁膜に該Cu配線に接続するためのビアホールを設ける工程と、前記のビアホール内に露出する前記Cu配線上に、前記Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブ成長の助触媒となる第1の金属膜を形成する工程と、前記第1の金属膜が形成された前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上にカーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜を形成する工程と、前記第1及び第2の金属膜が成長された前記ビアホールの底面からカーボンナノチューブを選択的に成長させ、前記ビアホール内部に該カーボンナノチューブを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の一態様に係わる半導体装置の製造方法は、Cu配線の上に形成された層間絶縁膜に該Cu配線に接続するためのビアホールを設け、且つ該層間絶縁膜上に形成された配線用絶縁膜に該ビアホールに繋がる配線溝を設ける工程と、前記のビアホール内に露出する前記Cu配線上に、Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブ成長の助触媒となる第1の金属膜を形成する工程と、前記第1の金属膜が形成された前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上にカーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜を形成する工程と、前記第1及び第2の金属膜が成長された前記ビアホールの底面からカーボンナノチューブを選択的に成長させ、前記ビアホール内部に該カーボンナノチューブを形成する工程と、前記配線溝内に前記カーボンナノチューブに接続される配線金属を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビアホール内のコンタクト材料としてカーボンナノチューブを用いつつ、ビア抵抗の低減及びプロセスの容易化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係わる半導体装置の素子構造を示す断面図。
【図2】第2の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3】第2の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】第2の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】第4の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】第5の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
CNTは触媒に対し基本的に垂直方向に成長する性質があり、LSIデバイスのビアのコンタクト材料に適用することが提案されている。具体的には、コンタクトを開口後、触媒金属を成膜してCNTを成長させる。続いて、ビア内のみにCNTを残すため、余剰なCNTを除去する。しかし、CNTのCMPプロセスが極めて困難であるため、CMP法に代わるプロセス方法或いはCMPを使わない構造が必要である。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる半導体装置を説明するためのもので、(a)は素子構造を示す断面図、(b)はビア部分を拡大して示す断面図である。
【0015】
図中の10はトランジスタやキャパシタ等の半導体素子が形成された基板である。基板10上にTEOSからなる第1の層間絶縁膜12が堆積され、この絶縁膜12にはW,Cu,又はAlからなるコンタクト13が形成されている。
【0016】
絶縁膜12及びコンタクト13の上には、SiCNからなるストッパー絶縁膜14を介してSiOCからなる第1の配線層絶縁膜15が堆積されている。絶縁膜15にはコンタクト13に繋がる配線溝が設けられ、この配線溝内にCu等の第1配線17がバリアメタル16を介して埋め込み形成されている。
【0017】
絶縁膜15及び第1配線17の上には、SiCNからなるストッパー絶縁膜18を介してTEOSなどの第2の層間絶縁膜19が形成されている。絶縁膜19には、第1配線17に繋がるビアホールが形成されている。ビアホールの底部には、Ta又はその窒化物からなり、CNT成長の助触媒となる第1の金属膜21が選択的に形成されている。例えば、第1配線17としてのCu膜にTaN膜が選択CVD法等により成長されている。金属膜21上及びビアホールの側面には、CNT成長の触媒となる第2の金属膜22が形成されている。そして、ビアホール内にCNT23が埋め込み形成されている。
【0018】
ここで、第2の金属膜22は、図1(b)に示すように、Ti膜22aとCo膜22bの積層構造となっている。Co膜22bはCNTの成長の触媒であり、Coの代わりにNiやFeを用いることも可能である。Ti膜22aはCNT23と第1配線17とのオーミックコンタクトを抵抗の低減のためであり、TiN膜であっても良い。
【0019】
絶縁膜19及びCNT23の上には、ストッパー絶縁膜24を介して第2の配線層絶縁膜25が形成されている。絶縁膜25にはCNT23に繋がる配線溝が形成され、配線溝内にCu等の第2配線27がバリアメタル26を介して埋め込み形成されている。そして、絶縁膜25及び第2配線27上にはキャップ層28が形成されている。
【0020】
このように本実施形態では、ビアホール底面のCu配線17上のみに選択形成させたTa又はその窒化物からなる第1の金属膜21が、CNT成長の助触媒として作用するので、CNT23は基本的に全てビアホールの底面部より成長し、ビアホールの側面からの成長が抑制される。側壁から成長するCNTはバリアメタルを介した電気伝導になるので、側壁成長がない方がビア抵抗の低抵抗化の観点から望ましい。CNTをビア底面からのみ成長させることにより、電子伝導に直接寄与するCNT本数が従来例よりも大幅に増加し、ビア抵抗の低抵抗化が実現できる。
【0021】
また、TaN膜はビアホールの側面には形成されず、ビアホールの側面にはTi/Co層のみを形成している。ここで、TaN膜はバリア性確保の観点から連続膜であるのが必須であり、ある程度の膜厚が必要である。一方、Ti/Co層は分散状態となった不連続膜であり、膜厚0.5nm程度と非常に薄くてよい。なお、Ti層に関しては連続膜になる場合もあるが、何れにせよ膜厚は薄くて良い。従って、ビアホールの側面に形成するTi/Co層によるビア開口面積の低減を少なくすることができ、電気伝導を担うCNTの占有面積が増えるので、ビア抵抗のより一層の低減化が可能となる。
【0022】
(第2の実施形態)
図2〜図4は、本発明の第2の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、トランジスタやキャパシタ等の半導体素子が形成された基板10上に、TEOSなどからなる第1の層間絶縁膜12を形成し、この絶縁膜12内に半導体素子と上層配線を接続するためのWやCu等のコンタクト13を形成する。続いて、絶縁膜12上に、CVD法などにより、配線層の加工制御のためのSiCN膜などストッパー絶縁膜14を成膜し、その上にSiOCなどの第1の配線層絶縁膜15を形成する。
【0024】
続いて、図示しないが、絶縁膜15上にRIE及びCMPのダメージの保護膜となるSiO2 などのキャップ膜を成膜する。その後、図示しないレジスト塗布・リソグラフィの工程を経て、RIE加工によりシングルダマシン配線構造を形成する。
【0025】
続いて、ダマシン配線構造にバリアメタルとしてTa膜16を成膜する。さらに、電界めっきのカソード極となるCuシード膜を成膜した後、電界めっき法などにより導電性材料となるCu膜(第1配線)17を成膜する。その後、CMP処理を行い余剰なCu膜17を研磨して除去する。最後に、Cuの表面拡散を防止し、且つ上層配線構造の加工ストッパー層となる拡散防止膜18を成膜して、下層配線を完成させる。
【0026】
以上までのプロセスは、既存のCu配線形成の方法と変わるものではない。従って、絶縁膜12,14,15,18、コンタクト13、バリアメタル16、第1配線17の材料及び製法は、仕様に応じて適宜変更可能である。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、拡散防止膜18上に第2の層間絶縁膜19を成膜する。この絶縁膜19は、例えばSiOC膜からなり、例えばCVD法や塗布法により成膜される。また、絶縁膜19は、誘電率を下げる目的で微小空孔を含んだ膜であっても良い。その後、絶縁膜19のRIEダメージ及びCMPダメージの保護膜となるキャップ膜20を成膜する。キャップ膜20は、例えばSiO2 やSiOC膜である。なお、絶縁膜19がRIEダメージに強い膜、例えばTEOSや微小空孔を含まないSiOC膜の場合、キャップ膜20は特に成膜しなくても良い。続いて、図示しないレジスト塗布・リソグラフィの工程を経て、RIE加工によりCu膜17に繋がるビアホールを開孔する。
【0028】
次に、図2(c)に示すように、ビアホールの底部に露出するCu膜17の表面上に、例えばTaNからなる第1の金属膜21を選択的に形成する。ここで、既存のプロセスでは、CNT成長の触媒層となるTaN/Ti(N)/Coを成膜するが、前述の通り、この構造ではCNTがウェハ全面に成長してしまうため、CNTのCMP処理を行うことが極めて難しい。
【0029】
そこで本実施形態では、図2(c)に示すように、ビアホール開孔後、ビア底面のCu上のみに選択成長する金属の選択CVD法を行い、ビアホールの底部に露出するCu膜17上のみに金属膜21を選択成長させる。選択成長させる金属は、Cuに対して選択CVDが可能な金属種であり、配線層のCu及び触媒金属に対して拡散バリア性を有し、且つCNT成長を促進する助触媒作用を有するものであればよい。これら条件を満たす金属として、Ta,W,Ru,或いはCoが挙げられる。これらの金属材料は、Cu上にCVD法により選択成長することが知られている(C.-C.Yang, et al., IEEE Int. Interconnect Technology Cof.,4.40 (2009))。さらに、CNT成長のための触媒効果があることが既知であり、これらの膜を連続膜として用いる場合にCNTの助触媒となる。
【0030】
なお、Coに関しては単体金属状態では触媒金属となるCoと同じ組成であるため、触媒金属のCoに対してバリア性がなく、触媒金属Coを分散成膜することができない。よって、Coを選択成長させる場合には成膜後、或いは成膜中に窒化処理を行い、選択成長させたCo膜の表面、或いは全部を窒化させてCo窒化物を形成する。この窒化処理に関して、代わりに酸化処理を用いてCoの酸化物を形成しても良い。Ta,Ru,Wに関しては単体金属にて用いることができるが、よりバリア性を向上させる観点から、Coと同様に窒化或いは酸化処理を行っても良い。窒化膜を形成する場合は、CVD法による金属膜の選択成長時にガス中に窒素を導入しても良いし、金属膜を選択成長した後に表面を窒化してもよい。選択成長させる金属膜は拡散バリア性の観点から少なくとも連続膜となっている必要があり、膜厚1nm以上必要である。
【0031】
次に、図3(d)に示すように、第2の金属膜22としてTiN/Coを全面に成膜する。TiNは、CNTの端面をTi炭化物として終端する役割を持ち、良好なCNTの界面コンタクトに必要である。TiN自体にもCNTの成長を促進させる助触媒効果がある。なお、TiNの代わりにTiを用いることも可能である。CoはCNTの本触媒であり、CNTの成長に必要不可欠である。なお、CNT成長の触媒は、Co以外にNiやFeを用いることも可能である。高密度なCNTを成長させるためには、Coが分散状態となった不連続膜となっていることが望ましい。
【0032】
次に、図3(e)に示すように、電気伝導層となるCNT23の成膜を行う。この成膜にはCVD法を用いる。従来構造では助触媒となるTaN/TiN及び触媒金属であるCoがウェハの全面に成膜されているため、CNTはウェハ全面に成長する。これに対し本実施形態では、助触媒となるTaNがビアホールの底面のみに選択成膜されているので、この助触媒の成膜されていない上部の平坦部と比較して、ビアホール底面の方がCNTの成長速度が高く、且つ高密度に成長する。この特性を利用することにより、ビアホール内のみにCNT23を選択成長させることができる。
【0033】
CNTを成膜するCVD法の炭素源にはメタン,アセチレン等の炭化水素系ガス又はその混合ガスを使用し、キャリアガスには水素や希ガスをそれぞれ使用する。処理温度の上限は1000℃程度、下限は200℃程度であり、成長温度は特に350度程度が望ましい。リモートプラズマを使用し、更にイオン,電子を除去するために、基板上部に電極を設置し電圧を印加するのも効果的である。印加電圧は0〜±100V程度が好ましい。成長温度、印加電圧の制御により、ビアホール内と上部平坦部のCNT成長速度により明確な差を作ることができ、ビアホール内のみにCNT23を選択成長させることができる。
【0034】
次に、SOD(Spin on Direct;塗布膜)のSiO2 膜などを、CNT23中に含浸させて、CNT23のCMPを行う。ビアホール内のCNT23は高密度に成長しているのでSOD膜が含浸されにくいが、上部の平坦部には基本的にCNTは成長していない、或いは成長していたとしても、成長速度が遅く且つCNT密度は低い。このため、図3(f)に示すように、上部の平坦部にはSOD膜31が成膜され、ビアホール内に成長したCNT23がSOD膜31で固定される。
【0035】
この構造により、従来例では困難であったCNT23のCMP処理をより容易に行うことができる。また、ビアホール内のCNT23の成長速度、或いは成長時間の管理により、上部に余剰に突出するCNT23の長さを短くすることができるので、CNT23をCMPで除去する量が減少し、CMPの薬液処理に耐性の強いCNTでも、機械研磨成分を主として容易にCMP処理を行うことができる。また、上部に余剰に突出するCNT23の長さを短くすることで、CNT23は絶縁膜19でその殆どが固定されるので、SODを含浸させることなく、直接CMPを行うこともできる。図4(g)はCMP処理後の断面図を示す。
【0036】
次に、図4(h)に示すように、配線層の加工制御ストッパー層24、第2の配線層絶縁膜25、ダメージの保護膜となるキャップ膜32を成膜する。それぞれの詳細は下層配線層工程と同様であり、その説明は省略する。続いて、図示していないレジスト塗布・リソグラフィの工程を経て、RIE加工によりダマシン配線構造を形成する。
【0037】
これ以降は、下層配線工程と同様に、配線溝内への金属膜の成膜(バリアメタル26,Cu膜27の成膜)、熱安定化処理、CMP処理を行い、更に拡散バリア膜28を形成することによって、前記図1に示す構造が完成する。
【0038】
このように本実施形態では、CNT23を成長する前段階として、図2(c)に示すように、ビアホール内に露出する下地Cu配線17の表面のみに助触媒となるTaN膜21を形成すると共に、ビアホールの側壁面に触媒となるTiN/Co膜22を形成することにより、CNT23をビアホール内のみに選択的に形成することができる。従って、CNT23が全面に形成された場合に比して、CNT23のCMPが極めて容易となる。また、ビアホールの側壁面からのCNT23の成長を抑制できることから、ビア抵抗の低抵抗化が実現でき、素子特性の向上に寄与することが可能となる。
【0039】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図2〜図4と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0040】
本実施形態が先に説明した第2の実施形態と異なる点は、CNTのCMPの前処理として、SOD膜の代わりに金属膜を成膜したことにある。
【0041】
前記図3(e)に示す工程までは第2の実施形態と同様であり、図5(a)に示すように、ビアホール内にCNT23を成長し、CNT23の上端をビアホールの上端より上まで突出させる。次いで、図5(b)に示すように、SOD膜ではなく、金属膜51を全面に成膜する。即ち、CNT23及びTiN/Co膜24上に金属膜51を成膜する。金属51は、例えばWやAl,Tiなどである。CNT23は絶縁膜19で固定されるので、金属51をCNT23の内部まで成膜させる必要は特になく、直接CNT23をCMPで研磨することができる。
【0042】
このように本実施形態では、CMP含浸材であるSOD膜の代わりに金属膜51を用いることにより、メタルCMPの処理条件を用いることもできる。これは、プロセス設計の自由度を増し、製造コストの低減に繋がる。
【0043】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図2〜図4と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0044】
本実施形態が先の第1の実施形態と異なる点は、CNTの成長をビアホールの途中までにし、残りを金属膜で形成したことにある。
【0045】
前記図3(d)に示す工程までは第2の実施形態と同様である。本実施形態においてはこの後、図6(a)に示すように、CNT23の成長をビアホールの途中までになるように、CNT23の成長速度及び成長時間を制御する。続いて、全面に金属膜61の成膜を行い、残りのビアホール部分を金属膜61にて充填する。成膜する金属膜61はCNT23と反応し、金属炭化物を形成しやすい金属が望ましく、例えばTiなどである。このような金属炭化物を形成することにより、良好なカーボンナノチューブの界面コンタクト構造が形成され、コンタクト抵抗の低減ができる。
【0046】
また、金属膜の成膜の工程において、前処理としてCNT23の先端部を、O2 やCOによるアッシング処理、或いはHeやArによるミリング処理をすると、CNT23の先端部が開端しCNTのマルチウォール全てが電気伝導に寄与できるので、よりビア抵抗を低減することができる。
【0047】
次いで、図6(b)に示すように、上部に積層している余剰な金属膜61をCMPすることで、ビア構造が完成される。このCMP処理は単純なメタルのCMPであり、既存のメタルCMP処理で対応できるので、よりCMP処理が容易である。
【0048】
このように本実施形態では、CNT23の成長をビアホールの途中までにし、残りを金属膜61で埋め込むことにより、CNT膜23のCMPが不要となる。従って、プロセスの容易性が向上し、製造コストの更なる低減をはかることができる。
【0049】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図2〜図4と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0050】
本実施形態は、第2〜第4の実施形態のようなビア構造と上層配線構造を別々に作るプロセス方法とは異なり、ビア構造と上層配線構造を同時に形成するデュアルダマシン法を適用したものである。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、下層Cu配線上にビアホールと上層配線溝を形成する。形成方法は既存のLSIプロセス技術のデュアルダマシン法に順ずる。具体的には、前記図2(a)に示す下層Cu配線17を形成した後、第2の層間絶縁膜19及び第2の配線層絶縁膜25を形成する。続いて、絶縁膜25に配線溝を形成した後、絶縁膜19に下地Cu配線17に繋がるビアホールを形成する。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、ビアホールの底面のCu配線17上のみに第1の金属21をCVD法により選択成長させ、第2の実施形態と同様の方法にてCNT23の成長工程までを行う。ここで、CNT23はビアホールの上端より上まで成長し、配線溝内に突出させる。これにより、デュアルダマシン配線構造のビア部のみにCNT23が成長した構造となる。なお、CNT23は必ずしもビアホールの上端より上まで成長させる必要はなく、ビアホールの上端と同じ高さ又はビアホールの途中まで成長させるようにしても良い。
【0053】
次に、図7(c)に示すように、配線溝内にバリアメタル26を形成した後、全面に金属膜を形成した後にCMPを行う上層配線の金属膜形成プロセスを行うことで、配線溝内に第2配線としてのCu膜27が埋め込み形成された配線構造を完成できる。
【0054】
このように本実施形態では、ビア工程でのCMP処理を必要としないので、プロセス容易性の向上、並びに製造コストの低減となる。CNT成長後、金属膜の成膜処理前に第4の実施形態と同様に、CNT先端部の開端工程を行うことにより、ビア抵抗を更に低減することができる、また、上層配線のバリアメタルとして金属炭化物を形成する金属(例えばTi)を用いることにより、良好なカーボンナノチューブの界面コンタクト構造が形成され、コンタクト抵抗の更なる低減が可能となる。
【0055】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。CNT成長のための助触媒としての第1の金属膜は、必ずしもTa又はTaNに限るものではなく、Ru,W,又はこれらの窒化物を用いることも可能である。さらに、Coの窒化物を用いることも可能である。さらに、CNT成長のための触媒としての第2の金属膜は、Coに限らずNiやFeを用いることも可能である。
【0056】
また、第2の金属膜は、必ずしも全面に形成されている必要はなく、第1の金属膜の表面のみに選択的に形成されるようにしても良いが、製造プロセスの観点からは全面に形成させる方が容易である。本発明では、第1の金属膜がビアホール底部のみに形成されていることから、第2の金属膜が全面に形成されても、ビアホール底部からのCNTの選択成長が可能となる。つまり、プロセスの容易化をはかることができる。
【0057】
また、第1及び第2の金属膜の成膜条件、更にはCNTの成膜条件(CVDガス,温度)等は、仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…基板、12…第1の層間絶縁膜、13…コンタクト、14,18,24…ストッパー絶縁膜、15…第1の配線層絶縁膜、16,26,71…バリアメタル、17…Cu膜(第1配線)、19…第2の層間絶縁膜、20,28…キャップ層、21…TaN膜(第1の金属膜:助触媒層)、22…第2の金属膜、22a…TiN膜、22b…Co膜(触媒層)、23…カーボンナノチューブ(CNT)、25…第2の配線層絶縁膜、27…Cu膜(第2配線)、31…SOD膜、51,61…金属膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu配線を有する基板上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に形成され、前記Cu配線に接続されるビアホールと、
前記ビアホール内に露出する前記Cu配線上に選択的に形成され、前記Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブの成長の助触媒となる第1の金属膜と、
前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上に形成された、前記カーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜と、
前記第1及び第2の金属膜が形成された前記ビアホール内に形成されたカーボンナノチューブと、
を具備したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の金属膜は、前記ビアホール内の側壁面及び前記層間絶縁膜の上面にも形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の金属膜は、Ta,Ru,W,若しくはこれらの窒化物膜であり、前記第2の金属膜は、Ti若しくはTi窒化物とCoとの積層膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
Cu配線の上に形成された層間絶縁膜に該Cu配線に接続するためのビアホールを設ける工程と、
前記のビアホール内に露出する前記Cu配線上に、前記Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブ成長の助触媒となる第1の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜が形成された前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上にカーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1及び第2の金属膜が成長された前記ビアホールの底面からカーボンナノチューブを選択的に成長させ、前記ビアホール内部に該カーボンナノチューブを形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
Cu配線層の上に形成された層間絶縁膜に該Cu配線に接続するためのビアホールを設け、且つ該層間絶縁膜上に形成された配線用絶縁膜に該ビアホールに繋がる配線溝を設ける工程と、
前記のビアホール内に露出する前記Cu配線上に、Cu配線に対するバリアとなり、且つカーボンナノチューブ成長の助触媒となる第1の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜が形成された前記ビアホール内の少なくとも前記第1の金属膜上にカーボンナノチューブの成長の触媒となる第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1及び第2の金属膜が成長された前記ビアホールの底面からカーボンナノチューブを選択的に成長させ、前記ビアホール内部に該カーボンナノチューブを形成する工程と、
前記配線溝内に前記カーボンナノチューブに接続される配線金属を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−204769(P2011−204769A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68430(P2010−68430)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】