説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】MEMS技術をベースとして加速度センサを製造する場合、複雑構成の加速度センサを得ることができるものの、MEMS特有の製造プロセスを経る必要があり、通常の半導体製造プロセスとの親和性は低い。
【解決手段】半導体装置100は、凹状のガス流路22が設けられた積層体10と、積層体10に対して設けられると共に、ガス流路22の底面にて露出するヒータ40と、積層体10に対して設けられると共に、ガス流路22の底面にて露出し、かつガス流路22の延在方向においてヒータ40を挟み込むように配置された複数の熱センサ30、50と、を有する。通常の半導体製造プロセスに対して親和性が高い加速度センサを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、例えば、ガス式加速度センサに適用される。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報機器の高性能化に伴って、これらの機器に各種センサが搭載されるようになっている。加速度センサは、ゲーム機のコントローラ、携帯電話等の移動体通信端末等にとって必須のデバイスとなっている。
【0003】
加速度センサは、光学式、静電容量式、ピエゾ抵抗式、ガス温度分布方式等が知られている。光学式の加速度センサは、光ファイバを構成要素とするため、小型化/集積化には限界がある。他の3方式は、MEMS技術をベースとして製造される。なお、小型な電子機器に対して加速度センサを組み込む場合、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術をベースとして製造された加速度センサを用いることが一般的である。
【0004】
特許文献1には、次の熱型加速度センサが開示されている。半導体基板上に熱分離された3本の梁を設け、中央の梁にヒータを設ける。左側の梁と中央の梁上に熱電対を設ける。同様に、右側の梁と中央の梁にも熱電対を設ける。各熱電対の起電力は、増幅器で増幅され、演算処理される。各熱電対の出力の差分を求めることで、加速度出力信号が生成される。
【0005】
特許文献2にも、ガス式角速度検出器が開示されている。絶縁板に穴を設け、絶縁板の一面側にて絶縁板の穴を跨ぐように加熱ワイヤを設け、絶縁板の他面側にて絶縁板の穴を跨ぐようにヒートセンサを設ける構成が特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献3には、発熱体を交流駆動によって加熱することで、一組のヒータの出力波形の位相差を検知し、これに基づいて角速度を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−65850号公報
【特許文献2】特開平6−27124号公報
【特許文献3】特開平6−174738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MEMS技術をベースとして加速度センサを製造する場合、複雑構成の加速度センサを得ることができるものの、MEMS特有の製造プロセスを経る必要があり、通常の半導体製造プロセスとの親和性は低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、凹状のガス流路が設けられた積層体と、前記積層体に対して設けられると共に、前記ガス流路の底面にて露出する発熱部と、前記積層体に対して設けられると共に、前記ガス流路の前記底面にて露出し、かつ前記ガス流路の延在方向において前記発熱部を挟み込むように配置された複数の感温部と、を備える。
【0010】
ガス流路、発熱部及び複数の感温部を積層体に設け、ガス流路の底面にて発熱部及び複数の感温部を露出させる。これによって、通常の半導体プロセスに対して親和性が高い加速度センサを提供することが可能になる。
【0011】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、積層体に対して発熱部を形成し、前記積層体に対して、前記発熱部を挟み込む態様にて、複数の感温部を形成し、前記発熱部及び複数の前記感温部の配置方向に沿って延在し、前記発熱部及び複数の前記感温部を底面において露出させる凹状のガス流路を設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常の半導体製造プロセスに対して親和性が高い加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の概略的な上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるヒータの概略的な上面図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるヒータの駆動回路を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる加速度の検出原理の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる加速度の検出原理の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる加速度の検出構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の概略的な上面図である。
【図12】本発明の実施の形態2にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図13】本発明の実施の形態3にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図14】本発明の実施の形態3にかかる熱検出回路の動作原理を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態4にかかるヒータの駆動回路を示す回路図である。
【図16】本発明の実施の形態4にかかるヒータの駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図17】本発明の実施の形態5にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図18】本発明の実施の形態6にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図19】本発明の実施の形態7にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図20】本発明の実施の形態8にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図21】本発明の実施の形態9にかかるヒータを示す概略図である。
【図22】本発明の実施の形態10にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図23】本発明の実施の形態11にかかる加速度の検出構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の実施の形態12にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図25】本発明の実施の形態12にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図26】本発明の実施の形態13にかかる半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図27】参考例による加速度センサの概略的な模式図である。
【図28】本発明の実施の形態14にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図29】本発明の実施の形態14にかかる半導体装置の製造方法を示す断面模式図である。
【図30】本発明の実施の形態15にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図31】本発明の実施の形態16にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図32】本発明の実施の形態16にかかる半導体装置の製造方法を示す断面模式図である。
【図33】本発明の実施の形態17にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図34】本発明の実施の形態18にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図35】本発明の実施の形態19にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図36】本発明の実施の形態20にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図37】本発明の実施の形態21にかかる半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図38】本発明の実施の形態22にかかるヒータまたは熱センサの概略的な上面模式図である。
【図39】本発明の実施の形態23にかかるヒータ及び熱センサの概略的な上面模式図である。
【図40】本発明の実施の形態24にかかるヒータまたは熱センサの概略的な斜視図である。
【図41】参考例による半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図42】本発明の実施の形態25にかかる半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図43】本発明の実施の形態25にかかる半導体装置の概略的な断面模式図である。
【図44】本発明の実施の形態26にかかる半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図45】本発明の実施の形態27にかかる半導体装置の概略的な上面模式図である。
【図46】本発明の実施の形態28にかかる抵抗読み出し回路を示す回路図である。
【図47】本発明の実施の形態29にかかる抵抗読み出し回路を示す回路図である。
【図48】本発明の実施の形態29にかかる抵抗読み出し回路の概略的な断面模式図である。
【図49】本発明の実施の形態30にかかる抵抗読み出し回路を示す回路図である。
【図50】本発明の実施の形態31にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図51】本発明の実施の形態32にかかる半導体装置の概略的な模式図である。
【図52】本発明の実施の形態33にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図53】本発明の実施の形態33にかかる熱検出回路の検出原理の説明図である。
【図54】本発明の実施の形態34にかかる半導体装置の測定構成を示すブロック図である。
【図55】本発明の実施の形態34にかかる読み出し回路を示す回路図である。
【図56】本発明の実施の形態34にかかる半導体装置の測定結果を示すグラフである。
【図57】本発明の実施の形態35にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図58】本発明の実施の形態36にかかる熱検出回路を示す回路図である。
【図59】本発明の実施の形態37にかかる比較器を示す回路図である。
【図60】本発明の実施の形態37にかかる比較器を示す回路図である。
【図61】本発明の実施の形態37にかかる比較器を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以降説明する各実施形態は、個々に独立したものではなく、適宜、組み合わせることが可能であり、かつ、その組み合わせの効果も主張可能なものとする。同一の要素には同一の符号を付し、重複説明は省略する。図面は、発明説明を目的として作成されたものであり、これを理由として本願発明を限定解釈することは許されない。
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、半導体装置の概略的な上面図である。図2及び図3は、半導体装置の概略的な断面模式図である。図4は、ヒータの概略的な上面図である。図5は、ヒータの駆動回路を示す回路図である。図6は、熱検出回路を示す回路図である。図7及び図8は、加速度の検出原理の説明図である。図9は、加速度の検出構成を示すブロック図である。
【0016】
後述の説明から明らかになるが、本実施形態では、ガス流路、発熱部及び複数の感温部を積層体に設け、ガス流路の底面にて発熱部及び複数の感温部を露出させる。ガス流路は、通常の半導体プロセス技術(層堆積、フォトリソグラフィー、エッチング、リフトオフ、基板の貼り合せ、スピンコート、メッキ等)を活用して積層体に対して設けることができる。発熱部及び感温部も、同様、通常の半導体プロセス技術を活用して、積層体に対して設けることができる。これによって、MEMS特有のプロセスを経る必要なく、通常の半導体プロセスを活用して加速度センサを製造することができる。また、半導体回路チップに対して加速度センサを集積化することも可能になる。
【0017】
半導体回路チップに対する加速度センサの集積化により得られるメリットは、様々なものが考えられる。例えば、半導体回路チップに対する加速度センサの集積化によって、その全体コストを低下させることが可能になると共に、従来必要であった加速度センサのアセンブリ手間を省くことが可能になる。なお、ガス流路、発熱部、感温部の具体的構成、個数等は任意であり、後述の開示に限定されるべきものではない。積層体の具体的な構成についても同様である。発熱部に対する感温部の間隔等も適宜変更可能である。
【0018】
以下、具体的に説明する。図1に示すように、半導体装置100は、積層体10、配線層(最上層配線構造)20、少なくとも2つの熱センサ(感温部)30及び熱センサ(感温部)50、及びヒータ(発熱部)40を有する。図2に示すように、積層体10は、半導体基板SUB、及び配線構造層L1〜L3を含む。なお、配線層20は、積層体10の構成層であり、積層体10に含まれる。図3に示すように、配線構造層L3の上面S10は、保護層21によって被覆されている。保護層21は、壁配線20a、20b間の上面S10には形成されていない。積層体10に保護層21が含まれると把握しても良い。図3に示すように、半導体基板SUBには、MOSトランジスタM100が形成されている。なお、図2は、図1に示すX2−X2に沿う概略的断面模式図であり、図3は、図1に示すX3−X3に沿う部分を含む概略的な断面模式図である。
【0019】
図1乃至図3に示した半導体装置100は、任意の大きさの半導体IC(Integrated Circuit)チップに設けられており、かつ、不活性ガス(窒素ガス等)が充填されたパッケージ内に気密封止状態で収納されている。パッケージング構成、気密封止方法等は、既存の様々な技術を活用して実現することができる。
【0020】
積層体10は、通常の半導体プロセスによって半導体基板上に複数の層が積層されたものである。積層体10は、半導体基板SUB上に、配線構造層L1〜L3、配線層20、及び保護層21を順に形成することによって形成される。配線構造層L1は、絶縁層に対して配線層を設けたものであり、その余の配線構造層L2、L3についても同様である。なお、図1乃至図3に示す構成は、通常の半導体プロセス(層堆積、フォトリソグラフィー、エッチング、リフトオフ、アニール、スピンコート等)の活用により製造されるものであるが、当業者には自明のため、詳細説明は省略する。
【0021】
配線層20は、フォトリソグラフィー等によってパターニングされた導電層である。配線層20は、凸状の壁配線20a、および壁配線20bを有する。壁配線20aと壁配線20b間には、ガス流路22が形成されている。壁配線20aは、y軸に沿って延在する長尺な線状配線である。壁配線20bも同様である。ガス流路22も、y軸に沿って延在する。壁配線、及びガス流路は、積層体10の積層方向(z軸方向)に対して直交する軸線に沿って延在する。壁配線は、ヒータやセンサと同じ配線層、若しくはこれらよりも上層の配線層であり、ヒータやセンサを囲うように配置される。これにより、壁配線が配線層構造の上部に形成する凸状の段差が壁となり、その内側にガス流路が形成される。この壁配線は、その表面に酸化膜・ポリイミドなどの絶縁物の皮膜が形成されていてもよく、皮膜がなくとも良い。この場合、特許文献1との比較において、積層体10に対して貫通穴を設ける必要なく、ガス流路を追加の工程なしに設けることができる。また、壁配線を長尺形状とすることによって、同一の半導体基板SUB上に設けられる他の素子の配線空間を十分に確保することができる。換言すれば、同一基板上に設けられる他の素子の配線空間の空きの空間を活用して、一組の壁配線を形成することができるため、チップサイズの大型化は抑制される。
【0022】
熱センサ30、ヒータ40、および熱センサ50は、露出した態様で、ガス流路22の底面に設けられる。熱センサ30、ヒータ40、および熱センサ50は、配線構造層L3上においてパターニング形成された導電層(好適には、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、金(Au)、白金(Pt)、バナジウム(V)等の金属配線、若しくはそれらの合金、それらの酸化物、窒化物)である。ヒータ40は、熱センサ30、50によって挟まれる。ヒータ40から見て、熱センサ30、50は略等しい位置に配置されている。熱センサ30、50は、ガス流路22に存在するガスを介して、ヒータ40に対して熱接続されている。ヒータ40に対する各熱センサ30、50の間隔を完全に等しいものとする必要はなく、加速度センサのコントローラ側の処理によって、適宜、オフセット調整がされ得るものである。
【0023】
ここで、望ましくは、熱センサ30、ヒータ40、および熱センサ50の表面は極力多くの部分がガスに接することが望ましい。図2をみると、熱センサ30、ヒータ40、および熱センサ50は底面のみが、絶縁物である配線層構造に接しているのみで、側面および上面はガスに接している。この表面積をさらに大きくするために、熱センサ30、ヒータ40、および熱センサ50の表面をエッチングもしくはCVD、もしくはメッキにより凸凹の形状とすると良い。
【0024】
熱センサ30は、上面視矩形状の配線部分(以下、これを単にランドと呼ぶ場合がある)31、上面視矩形状のランド32、およびパターン配線部33を有し、パターニング領域R30に配置される。パターン配線部33は、凸状の配線がy軸に沿って波状に引き回された部分である。パターン配線部は、必ずしも波状でなくとも良い。パターン配線部33を構成する配線の一端は、島状のランド31に対して接続され、その他端は、島状のランド32に対して接続される。パターニング領域R30は、一組の壁配線間に設けられる。
【0025】
熱センサ30と同様に、ヒータ40は、ランド41、ランド42、およびパターン配線部43を有し、パターニング領域R40に配置される。熱センサ30と同様に、熱センサ50は、ランド51、ランド52、およびパターン配線部53を有し、パターニング領域R50に配置される。パターン配線部43、53の構成は、パターン配線部33と同様である。パターニング領域R30〜R50は、略等しい面積を有するが、これに限られるべきものではない。ランド31、32、41、42、51、52は、直線状に配置されているが、ランドの配置態様は任意であり、本開示に限定されるべきものではない。パターニング領域R30、R40、R50は、縦幅及び横幅10μM〜30μM程度の大きさの矩形領域である。より高精度な加速度検知を実現するべく、各パターニング領域は、このように微小領域に形成される。
【0026】
図2に模式的に示すように、配線構造層L3上に設けられた各ランドは、配線構造層L3に設けられたトレンチ配線を介して、配線構造層L2上に設けられた配線層に対して接続される。一例をあげると、ランド31は、トレンチ配線T31を介して、配線層ML31に接続される。なお、トレンチ配線は、絶縁層に対して貫通穴を形成し、この貫通穴に対して導電性材料を充填することによって形成される。
【0027】
図3に模式的に示すように、半導体基板SUBに形成されたトランジスタM100は、ソース領域(S)、ゲート構造(G)、ドレイン領域(D)を有する。ソース領域は、トレンチ配線Tsを介して、ソース配線層Msに接続される。ゲート電極は、トレンチ配線Tgを介して、ゲート配線層Mgに接続される。ドレイン領域は、トレンチ配線Tdを介して、ドレイン配線層Mdに接続される。ソース配線Msは、不図示の配線接続を介して、他の回路素子に接続される。ゲート配線Mg、ドレイン配線Md、についても同様である。配線構造層L3上には、制御信号入力パッドP1、基準電位供給パッドP2、及び信号出力パッドP3が設けられる。例えば、トランジスタM100が回路素子として含む機能回路は、制御信号入力パッドP1から入力した制御信号に応じて動作する。なお、パッドp1〜p3の配置位置は、通常、チップの周縁部分に配置されるが、ここでは説明の便宜上簡略的な表示している。
【0028】
図1乃至図3を参酌すれば明らかなように、熱センサ30、ヒータ40、及び熱センサ50を構成する配線パターンは、他の配線構造(例えば、図3に示すパッドP1〜P3)と同層、若しくは、壁配線よりも下層に形成される。これによって、既存の製造プロセスを大幅に変更することなく、熱センサ30、ヒータ40、及び熱センサ50を積層体10に対して組み込むことが可能になる。配線空間の空き空間を活用して上述の配線パターンを形成すれば、既存のチップサイズの拡大を伴うことなく既存のICチップに対して加速度センサを組み込むことができる。
【0029】
図4に、ヒータ40の上面視構成を示す。図4に示すように、パターン配線部43に存在する配線の幅は、ヒーターとヒーター駆動回路を結ぶ配線部分の幅よりも狭い。この幅狭配線は、上下に引き回されながら、y軸に沿って波状に延在する。幅狭配線は、通電に応じて発熱する発熱部材であり、上述のように幅狭配線が高密度に敷設されることによって、ガス流路22の底部に微小な熱源が設けられることになる。電源電圧をV、ヒータの抵抗値をRとすると、ヒータの消費電力Pは、P=V/Rであるため、ヒータの抵抗値をある程度確保することがヒータの消費電力の低下につながる。従って、幅狭配線によってヒータの抵抗値を大きくすることで、ヒータの消費電力を低減することが可能になる。なお、ヒータのパターニング構造を単層にて構成する必要はなく、多層(例えば、4層)の配線層を活用してヒータを構成しても良い。これによって、より微小領域にヒータを設けることができ、加速度センサの精度向上を期待できる。
【0030】
本実施形態では、パターン配線部43自体は、配線構造層L1〜L3に存在する絶縁層を介して、半導体基板SUBから熱分離されている。ヒータ40のパターン配線部43で生じる熱が半導体基板SUBに対して伝達してしまうと、半導体基板SUBに設けられる素子の動作に影響を与えてしまうおそれがある。本実施形態では、上述のように、パターン配線部43は、配線構造部L1〜L3に存在する絶縁層を介して半導体基板SUB上に形成されているため、半導体基板SUBから見て、パターン配線部43が熱分離された状態となる。パターン配線部43から半導体基板SUBへの熱伝達を抑制することによって、半導体装置100の動作の信頼性を効果的に高めることができる。グランド配線層を活用して、パターン配線部43から半導体基板SUB側への接続配線を介した熱伝達を妨げても良い。
【0031】
熱センサ30、50は、図4に示したヒータ40と略同様の構成を有する。ただし、熱センサ30、50は、熱を生じさせる必要はないが、周囲の温度変化による抵抗値の変化を検出可能とするために、ヒータ40と同様に幅狭な配線を引き回す構成とする。
【0032】
図5を参照してヒータの駆動回路の構成例について説明する。なお、本駆動回路は、図2に示す半導体基板SUB上に設けられるものとする。図5に示すように、ヒータ駆動回路は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続されたMOSトランジスタM1及び抵抗R1を有する。MOSトランジスタのオン/オフは、コントローラ60によって制御される。図1乃至図3に示したヒータ40は、図5の抵抗R1に相当する。例えば、コントローラ60は、駆動パルスをMOSトランジスタM1のゲート端子に供給する。MOSトランジスタM1は、駆動パルスに応じてオンする。MOSトランジスタM1がオンしている期間、抵抗R1には電流が流れ、ヒータ40は発熱する。
【0033】
図6を参照して、熱検出回路の構成例について説明する。なお、本熱検出回路は、図2に示す半導体基板SUB上に設けられるものとする。熱検出回路は、熱センサの構成配線の抵抗の温度変化を検出する。シリコン基板上に形成されるメタル配線(銅、アルミニウム等)は、温度1℃について、シート抵抗が1〜2%上昇する。熱検出回路は、この抵抗変化をセンスして、温度を検出する。また、より熱に対する温度変化の大きい酸化バナジウムを使用することも出来る。
【0034】
図6に示すように、熱検出回路は、電流源CS1、抵抗R2、増幅器AMP、演算処理部61を有する。電流源CS1、および抵抗R2は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続される。増幅器AMPの正入力には、電流源CS1と抵抗R2間の接点が接続される。増幅器AMPの負端子には、参照電圧VREFが接続される。増幅器AMPの出力は、演算処理部61に供給される。図1乃至図3に示した熱センサ30は、図6に示した抵抗R2に相当する。抵抗R2の温度は、ガスを介して伝達するヒータ40の温度に応じて変化する。増幅器AMPの正端子に入力する電圧は、抵抗R2の抵抗値の変化に応じて変動する。増幅器AMPは、参照電圧VREFと入力電圧の差分値を増幅して出力する。なお、図6に示した熱検出回路は、熱センサ50に対しても適用されるものとする。演算処理部61は、各熱センサ30、50に接続された回路から出力される値を演算処理し、加速度を算出する。
【0035】
図7及び図8を参照して加速度の算出原理/方法について説明する。なお、上述のように、ヒータ40から見て、各熱センサ30、50は略等しい距離をあけて配置されている。従って、半導体装置100が移動してしないとき、各熱センサ30、50は、略同じ熱量を感知する。なお、ヒータに対する熱センサの配置間隔のバラツキの影響を低減するため、熱センサ30、50間に生じるオフセットを調整することが望ましい。これによって、より精度良く加速度を検出することが可能になる。
【0036】
図7に示すように、各熱センサ30、50の温度差に基づいて加速度を算出しても良い。図7に模式的に示すように、半導体装置100が移動すると、半導体装置100から見て、実線で示された熱分布は、点線で示された熱分布へと推移する。熱センサ30の温度は増加し、熱センサ50の温度は減少する。静止時の時刻t1と移動時の時刻t2間では、熱センサ30に温度差が生じる。静止時の時刻t1と移動後の時刻t2間では、熱センサ50に温度差が生じる。各熱センサ30、50が感じる温度差から加速度が算出される。なお、加速度の算出式は、実験的に求められるものであり、その詳細な説明は省略する。
【0037】
ここで、静止時の各熱センサ30、50よりの出力電圧は、センサの位置や、素子ばらつき等で必ずしも一致しない。この場合、加速がかかっていない時の各熱センサの出力を保存しておき、加速がかかっている状態ではこの保存した値との差によって加速を検知する。
【0038】
ヒータから熱センサへの熱の伝達経路は、ガスによる経路以外にも層間絶縁膜やシリコン基板を経由するものがある。しかし、ガス以外の経路による熱伝導は本チップに加速がかかっている状態と加速がかかっていない状態で変わらないので、加速がかかっていない時の各熱センサの出力を基準に加速を検知することでこれらの影響を排除できる。
【0039】
図8に示すように、ヒータ40をパルス駆動させて、各熱センサ30、50の温度変化波形の位相差に基づいて加速度を算出しても良い。図8に模式的に示すように、ヒータ40をパルス駆動すると、ヒータ40を中心として周囲に波状の熱分布が形成される。熱波形の頂部は、オン状態のヒータ40に対応し、熱波形の底部は、オフ状態のヒータ40に対応する。熱センサ30の温度は、時間的に変化する熱波形に応じて変化する。熱センサ50の温度についても同様である。
【0040】
図8に模式的に示すように、半導体装置100が移動すると、半導体装置100から見て、実線で示された熱分布は、点線で示された熱分布へと推移する。これに応じて、熱センサ30の温度変化は、実線に示された熱分布に対応する位相から、点線で示された熱分布に対応する位相へと変化する。図8に模式的に示す熱分布の位相差は、熱センサ30の温度変化の位相変化として検知される。各熱センサ30、50の温度変化の位相差に基づいて、加速度が算出される。なお、加速度の算出式は、実験的に求められるものであり、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図9を参酌して、図8に示した方式にて加速度を算出する場合の回路構成例について説明する。図9に示すように、基準クロック71は、ヒータ40に対して供給され、位相検出器72、73に個別供給される。ヒータ40は、供給される基準クロック71に応じてパルス駆動される。熱センサ30の温度変化の位相は、基準クロックとの比較に基づいて、位相検出器73により検出される。熱センサ50の温度変化の位相は、基準クロックとの比較に基づいて、位相検出器72により検出される。なお、位相検出器72、73には、図6に示した増幅器AMPの出力が供給されるものとする。位相比較部74は、位相検出器72から供給される波形と位相検出器73から供給される波形間の位相差を検出する。
【0042】
図9に示すように、半導体装置100が移動すると、半導体装置100から見て、ガスは逆方向に流れる。従って、ヒータ40からみて移動方向にある熱センサ30に対してヒータ40からの熱が伝達する時間は、逆側に対する熱センサ50に対してヒータ40から熱が伝達するまでの時間よりも長くなる。図9に示す場合には、この時間差を熱センサの温度変化の位相差として検出し、これに基づいて加速度を算出する。熱センサ30に対する伝達時間(位相検出器73から出力されるパルスの立ち上がりタイミング等から検知する)と熱センサ50に対する伝達時間(位相検出器72から出力されるパルスの立ち上がりタイミング等から検知する)との差分に基づいて加速度を算出することによって、絶対的な温度の検出精度バラツキ等の影響を低減した態様で加速度を算出することができる。図8及び図9に示す方式では、温度の交流的な時間変化検出するため、温度の絶対値は加速度の算出精度に影響を与えない。従って、温度の絶対値を検出する方式に比べて、より精度高く加速度を算出することが可能になる。
【0043】
なお、半導体装置100の具体的な製造手順は任意であり、当業者であれば、適宜、変更等を為すことができる。図1乃至図3に開示した構成は、あくまで例示的なものである。図1乃至図3は、ICチップの部分的な構成を簡略表示したものであり、様々な機能回路/素子が集積されたICチップの全体を表示するものではない。
【0044】
冒頭で説明したように、本実施形態では、ガス流路22、ヒータ40及び熱センサ30、50を積層体10に設け、ガス流路22の底面にてヒータ40及び熱センサ30、50を露出させる。ガス流路22は、通常の半導体プロセス技術(層堆積、フォトリソグラフィー、エッチング、リフトオフ、基板の貼り合せ、スピンコート、メッキ等)を活用して積層体10に対して設けることができる。ヒータ40及び熱センサ30、50も、同様、通常の半導体プロセス技術を活用して、積層体10に対して設けることができる。これによって、MEMS特有プロセスを経ることなく、通常の半導体プロセスを活用して加速度センサを製造することができる。また、半導体回路チップに対して加速度センサを集積化することも可能になる。
【0045】
半導体回路チップに対する加速度センサの集積化により得られるメリットは、様々なものが考えられる。例えば、半導体回路チップに対する加速度センサの集積化によって、その全体コストを低下させることが可能になると共に、従来必要であった加速度センサのアセンブリの手間を省くことが可能になる。なお、ガス流路、ヒータ、熱センサの具体的構成、個数等は任意である。積層体の具体的な構成についても同様である。
【0046】
実施の形態2
図10乃至図12を参照して、実施の形態2について説明する。本実施形態では、実施の形態1とは異なり、熱センサに接続されたPN接合の順方向電圧の変化を検出することによって、熱センサの温度変化、すなわち、熱センサ上に存するガスの温度変化を検出する。抵抗に代えて、PN接合を活用することによって、より精度良く温度変化を検出することが可能になる。なお、PN接合から成るダイオードの順方向電圧は、温度1℃あたり2mV程度変化する。従って、10℃程度の温度変化が生じると、20mV程度の信号を得ることができる。
【0047】
図10は、半導体装置の概略的な断面模式図である。図11は、半導体装置の概略的な上面図である。図12は、熱検出回路を示す回路図である。
【0048】
図10に示すように、半導体基板SUB(p型基板)には、Nウェル領域11、13が不純物の熱拡散により形成される。Nウェル領域11内には、不純物の熱拡散によりPウェル領域12が形成される。Nウェル領域13内には、Pウェル領域14が形成される。熱センサ30のランド31は、配線構造層に設けられたトレンチ配線T31、T31_2、T31_1、配線ML31、ML31_2を介して、Pウェル領域12に接続される。熱センサ50のランド51は、配線構造層に設けられたトレンチ配線T51、T51_2、T51_1、配線ML51、ML51_2を介して、Pウェル領域14に接続される。
【0049】
図11に示すように、Pウェル領域12は、ランド31の直下に形成される。Pウェル領域12の形成範囲は、ランド31の形成範囲よりも広い。Pウェル領域14は、ランド51の直下に形成される。Pウェル領域14の形成範囲は、ランド51の形成範囲よりも広い。なお、Pウェル領域とランド間の相対的な位置関係は任意であり、この例に限られるべきものではない。
【0050】
図12に示す熱検出回路は、図6と比較すると、抵抗R2がダイオードD1に置き換えられている。このようにダイオードD1のカソード電圧の変動に基づいて温度変化を検出することで、より高精度に熱センサの温度を検出することが可能になる。なお、図12において、図11に示す各熱センサ30、50の配線部分は、ダイオードD1のカソード端子と電流源CS1間にある接点N1と電流源CS1間に設けられるものとする。
【0051】
本実施形態においても、パターン配線部43は、配線構造層L1〜L3に存在する絶縁層を介して、半導体基板SUBから熱分離されている。ヒータ40のパターン配線部43で生じる熱が半導体基板SUBに対して伝達してしまうと、半導体基板SUBに設けられるダイオードの動作に影響を与えてしまうおそれがある。本実施形態では、上述のように、パターン配線部43は、配線構造部L1〜L3に存在する絶縁層を介して半導体基板SUB上に形成されているため、半導体基板SUBから見て、パターン配線部43が熱分離された状態となる。パターン配線部43から半導体基板SUBへの熱伝達を抑制することによって、半導体装置100の動作の信頼性を効果的に高めることができる。
【0052】
実施の形態3
図13及び図14を参照して、実施の形態3について説明する。本実施形態では、熱検出回路は、参照電圧生成回路を含む。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
図13は、熱検出回路を示す回路図である。図14は、熱検出回路の動作原理を示す図である。
【0054】
図13に示すように、電流源CS3と抵抗R3間の接点が増幅器(比較器)AMPの負端子に接続される。抵抗R3の熱容量は、抵抗R2と比較して大幅に大きい。抵抗R3は、抵抗R2に対して近接配置され、同タイミングに略同じ温度となる。図14の実線は、ヒータ40の間欠的駆動に応じた抵抗R2の温度変化を示す。図14の破線は、ヒータ40の間欠的駆動に応じて抵抗R3の温度変化を示す。図14から明らかなように、熱容量が大きな抵抗R3は、ガスを介して伝わる熱の影響をあまり受けない。増幅器AMPの負端子に入力する電圧は、略一定なものとなる。抵抗R2、R3の抵抗値の大小は、温度変化に追従して入れ替わるため、増幅器AMPは、温度変動の位相を検出することができる。これによって、比較的単純な構成で熱検出回路を形成することができる。抵抗R2と抵抗R3の相違点は、主として、ガス流路22内での露出面積であり、製造プロセス的に考慮しても大きな負担とはならない。
【0055】
実施の形態4
図15及び図16を参照して、実施の形態4について説明する。本実施形態では、抵抗R1、つまり、ヒータ40は、時分割して順方向及び逆方向に通電される。上述の実施形態において説明したように、ヒータ40は、通電発熱する幅狭配線を有するため、通電方向を固定した場合には、エレクトロマイグレーションによって幅狭配線が劣化してしまうおそれがある。本実施形態では、この点に考慮し、ヒータ40の通電方向を適当な間隔で逆方向として、ヒータ40の構成配線の劣化を抑制する。これによって、ヒータ40の寿命を延ばし、より信頼性高い加速度センサを提供することが可能になる。
【0056】
図15は、ヒータの駆動回路を示す回路図である。図16は、ヒータの駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【0057】
図15に示すように、ヒータ40の駆動回路は、MOSトランジスタM2〜M5、抵抗R1、コントローラ65を有する。MOSトランジスタM2、M4は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続される。MOSトランジスタM3、M5は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続される。抵抗R1は、MOSトランジスタM2とMOSトランジスタM4間の接点とMOSトランジスタM3とMOSトランジスタM5間の接点との間に設けられる。各MOSトランジスタのオン/オフは、コントローラ65によって図16に示すように制御される。
【0058】
図16に示すように、時刻t1と時刻t2の期間、トランジスタM3、M4がオンし、トランジスタM2、M5がオフする。図15を正面視して、抵抗R1には、左から右方向へ(順方向へ)電流が流れる。時刻t2と時刻t3の期間、トランジスタM2〜M5がオンし、抵抗R1には電流が流れない。時刻t3と時刻t4の期間、トランジスタM3、M4がオフし、トランジスタM2、M5がオンする。図15を正面視して、抵抗R1には、右から左方向へ(逆方向へ)電流が流れる。時刻t4と時刻t5の期間、トランジスタM2〜M5がオンし、抵抗R1には電流が流れない。このようなサイクルを繰り返すことによって、抵抗R1、すなわちヒータ40には時分割して順方向/逆方向に電流が流れ、ヒータ40の経年劣化を抑制することができる。
【0059】
実施の形態5
図17を参照して、実施の形態5について説明する。本実施形態では、上述の実施形態の構成に加えて、図17に示すように、保護層21上にカバー板(カバー部材)80を配置し、ガス流路22を上方から被覆する。これによって、ガス流路22の上方が閉じた状態となり、ヒータ40からガス流路22内のガスに伝達した熱が上方へ拡散してしまうことを効果的に抑制することができる。好適には、熱導電性が半導体よりも低いガラス板、セラミック板をカバー板80として採用すると良い。ガス流路22を覆うカバー部材は、カバー板80のような平板状部材に限られるべきものではない。
【0060】
実施の形態6
図18を参照して、実施の形態6について説明する。本実施形態では、上述の実施形態の構成に加えて、図18に示すように、壁配線20aと壁配線20b間に存在する保護層21によってガス流路22を形成する。壁配線間へ保護層が侵入できないと、壁配線間には図18に示すように、ガス流路として機能する空洞が形成される。図18に示すように、ガス流路22の幅は、半導体基板SUBから離間する方向に沿って幅狭くなる(W1>W2)。これによって、ガス流路22の上方を絞った状態とすることができ、ヒータ40により加熱されたガスが上方へ逃げることを抑制することができる。ガス流路22内にヒータ40により加熱されたガスを閉じ込めることによって、熱センサ30、50によるガス温度の検出精度を高めることができる。
【0061】
実施の形態7
図19を参照して、実施の形態7について説明する。本実施形態では、上述の実施形態とは異なり、配線層20のパターニングによりガス流路22を形成するのではなく、長尺な開口が設けられた板状部材を基板上(配線構造層上)に配置することによってガス流路22を形成する。このような場合であって、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
図19に示すように、基板(半導体基板SUB、配線構造層L1〜L3)上には、板状部材(最上層配線構造)25が配置される。板状部材25は、例えば、ガラス板、セラミック板等である。板状部材25には、開口が設けられており、これがガス流路22として機能する。なお、図19では、説明の便宜上、ヒータ、熱センサ等の図示は省略されている。基板上に板状部材を積層する具体的な方法は任意である。例えば、基板に対して板状部材を貼り合わせることによって、基板上に板状部材を積層すると良い。基板に対する板状部材の固定方法は任意である。例えば、板状部材は、接着剤を介して、基板上に固定される。この場合、接着剤は、ガス流路22には侵入しない範囲で塗布される。
【0063】
実施の形態8
図20を参照して、実施の形態8について説明する。本実施形態では、図19に対して図17に開示のカバー板80を適用する。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
実施の形態9
図21を参照して、実施の形態9について説明する。本実施形態では、図4とは異なる態様にて配線を施してヒータを構成する。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。図21に示すように、ヒータは、渦巻き状に巻かれた配線から構成される。配線の一端は、トレンチを介して、配線構造層内の配線に接続される。配線の他端についても同様である。図21に示すヒータは、一辺が9.6μM程度の大きさの矩形領域に設けられる。熱センサの配線引き回し態様についても、図21と同様としても良い。
【0065】
実施の形態10
図22を参照して、実施の形態10について説明する。本実施形態では、熱検出回路及びヒータ駆動回路は、ヒータ40の発熱による特性変動を回避するために、熱センサ30、ヒータ40、熱センサ50から離れた位置に設ける。より好適には、図22に模式的に示した配置間隔から読み取れるように、ヒータ40と熱センサ30との間隔(例えば、間隔W90)よりも、ヒータ40とヒータ駆動回路間の間隔(例えば、間隔W91)のほうが広い。同様に、ヒータ40と熱センサ30との間隔よりも、熱センサ30と熱検出回路間の間隔(例えば、間隔W92)のほうが広い。これによって、好適に、ヒータ40で生じる熱影響によって、各回路特性が変動してしまうことを抑制することが可能になる。なお、その余の点は、上述の実施形態と同様であり、重複説明は省略する。本実施形態においても上述の実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態11
図23を参照して、実施の形態11について説明する。本実施形態では、図23に示す検出構成を採用する。図23に示すように、熱センサ50の出力とヒータ40のクロック信号をミキシングし、ミキサー172の出力信号からローパスフィルタ174を介して低周波成分を選択通過させる。また、熱センサ30の出力とヒータ40のクロック信号をミキシングし、ミキサー173の出力信号からローパスフィルタ175を介して低周波成分を選択通過させる。電圧比較部176は、ローパスフィルタ174、175からの各入力電圧値を比較する。
【0067】
熱センサ30、50の出力信号は、半導体装置100に加速がかかっていない状態では、ヒータ40のクロック信号にほぼ一致するが、半導体装置100に加速がかかっている状態では、ガスによる熱伝導分だけクロック信号が変調される。熱センサ30、50から出力される変調信号を、クロック信号とミキシングすると、クロック信号の2倍の周波成分を持つ信号とDC近辺の低周波信号とが合成された信号となる。ローパスフィルタによって低域通過させるとDC近辺の信号を抽出することができる。ローパスフィルタの出力電圧値は、ガスによる熱伝導による変調分だけ変化する。この原理に基づいて、電圧比較部176は、各ローパスフィルタ174、175の出力電圧値を比較する。電圧比較部176による比較結果に基づいて加速度を検知することが可能になる。なお、その余の点は、上述の実施形態と同様であり、重複説明は省略する。本実施形態においても上述の実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0068】
実施の形態12
図24及び図25を参照して、実施の形態12について説明する。本実施形態では、図24に示すように、N領域13とP領域14間の接合位置を熱センサ30から離れた位置とする。同様に、N領域11とP領域12間の接合位置を熱センサ50から離れた位置とする。このようにダイオード間の距離を確保することによって、半導体基板SUBを介したダイオード間の熱伝導の影響を低減することができる。なお、W200<W201<W202<W204の関係が成立している。
【0069】
図25に示すように、ヒータ40と半導体基板SUB間、端的にはヒータ40の直下に放熱用の配線ML200を配置すると良い。これによって、ヒータ40から半導体基板SUBを介してダイオードに伝わる熱伝導の経路を遮断することができ、ガス経由で伝わる熱による熱センサの感度を高めることができる。好適には、配線ML200は、グランド若しくは一定電位に固定することが望ましい。配線ML200の電位固定用の引き出し配線は、熱伝導の経路となるため、ヒータ駆動用配線に近付けて配置することが望ましく、この引き出し配線をグランド又は一定電位に接続する接続点はヒータ駆動回路近辺に配置することが望ましい。その余の点は、上述の実施形態と同様であり、重複説明は省略する。本実施形態においても上述の実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態13
図26を参照して、実施の形態13について説明する。本実施形態では、図26に示すように、ヒータ40の周囲に4つの熱センサ30(50)を配置する。4つの熱センサ30は、ヒータ40を中心として、ある熱センサを90度ずつ回転させた位置に配置されている。
【0071】
換言すると、次のように説明できる。熱センサ30aと熱センサ30cは、ヒータ40を中心に挟んで対称配置されている。熱センサ30bと熱センサ30dは、ヒータ40を中心に挟んで対称配置されている。熱センサ30aと熱センサ30cの組の配置方向は、熱センサ30bと熱センサ30dの配置方向に対して略直交する。
【0072】
この構成を採用することによって、熱センサ30aと熱センサ30cの組の出力の比較によってx軸方向の加速度を検出し、熱センサ30bと熱センサ30dの組の出力の比較によってy軸方向の加速度を検出することが可能となる。これにより、よりコンパクトな構成にて複数方向の変位を検出することが可能となる。なお、その余の点は、上述の実施形態と同様であり、重複説明は省略する。本実施形態においても上述の実施形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。最上層配線構造の具体的な材質は任意であり、絶縁層により構成しても良い。ヒータ、熱センサ等の構成配線をポリシリコン等により構成しても良い。ガス流路の延在態様は、任意であり、直線状に限られない。
【0074】
実施の形態14
ここで、本発明と従来技術との相違を明確にするために、本発明適用前の参考例について説明する。図27(a)及び(b)は、特許文献1に記載された熱型加速度センサを封止形成した参考例の上面断面図及び側面断面図である。
【0075】
参考例の加速度センサ900では、シリコン基板901の内部に、ガスを封入するチャンバー(空洞部)902が掘りこまれて形成されている。チャンバー902の上面視中央かつ側面視中央には、ヒータ903が配置されている。ヒータ903は、加速度センサ900の一方の側面から対向する他方の側面まで延在配置されている。ヒータ903の両側には、熱センサ904、905が配置されている。熱センサ904,905は、ヒータ903と平行に加速度センサ900の一方の側面から対向する他方の側面まで延在配置されている。すなわち、参考例の加速度センサ900では、シリコン基板901を削り取って形成しているため、内部のチャンバー902は、シリコン基板901の外形と同様、上面断面及び側面断面が長方形状である。また、ヒータ903、熱センサ904、905は、チャンバー902の中空に浮いた状態で形成されている。
【0076】
参考例の加速度センサ900では、ヒータ903によりチャンバー902内のガスが加熱され、ガスの温度を熱センサ904、905が検出する。参考例の加速度センサ900が移動するとチャンバー902内のガスは、加速度センサ900の動きに追従できないため、加速度センサ900の移動方向とは逆に流れる。そうすると、ガスの温度分布が、ヒータ903の両側の熱センサ904の位置と熱センサ905の位置とで非対称となる。そこで、参考例の加速度センサ900では、熱センサ903、904の出力を比較することで、加速度センサ900に印加される加速度を検出している。
【0077】
次に、図28を用いて、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。図28(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0078】
図1では、半導体装置100の一部を記載していたため、Y方向に延びる壁配線20a、20bのみが記載されていたが、図28では、ガスを封入する空洞部を形成するための壁配線の全体が記載されている。
【0079】
図28に示すように、半導体装置100は、積層体10、最上層配線構造20(壁配線20a、20b)、熱センサ30、熱センサ50、及びヒータ40を有する。なお、壁配線は連続した配線として形成されるため、以下では、壁配線全体を20aもしくは20bと称する。
【0080】
積層体10は、シリコン基板である半導体基板SUB、及び配線構造層Lを含む。配線構造層Lは、図2等と同様に、配線構造層L1〜L3を含み、各配線構造層は層間絶縁膜及び配線層を含んでいる。また、最上層配線構造20は、最上層に形成されたメタル配線(配線層)であり、壁配線20aを構成している。
【0081】
この例では、壁配線20a、ヒータ40及び熱センサ30、50は、同じ最上層に形成されている。積層体10の最上層に、ヒータ40を配置し、そのY方向両側に熱センサ30、50を配置する。なお、ヒータ40、熱センサ30及び50の各配線あるいは全ての配線をヒータ・熱センサ配線110とも称する。
【0082】
上面視で、ヒータ・熱センサ配線110の周囲を略長方形状に囲うように、ガス流を制限する壁配線20a(20b)が配置される。配線構造層Lの上面S10及び壁配線20aは、保護層(カバー膜)21によって被覆されている。保護層21は、壁配線20aの内側の上面S10には形成されていない。すなわち、ヒータ・熱センサ配線110は、保護層21に覆われていない状態であり、配線の表面がガスに露出している。
【0083】
また、図17と同様に、突出した保護層21上にカバー板80が配置される。カバー板80は、ガラス基板やシリコン基板等である。壁配線20aの上面全体に、保護層21を介してカバー板80が張り付けられている。
【0084】
壁配線20aがカバー板80と接触すると、壁配線20aで囲まれた領域は閉鎖された空洞部24となる。すなわち、空洞部24は、上面側をカバー板80に覆われ、底面側を最上層に接する配線構造層L(L3)の層間絶縁膜に覆われ、側面側を壁配線20aに覆われて封止形成されている。空洞部24の空間のうち、ヒータ・熱センサ配線110近傍の領域をガス流路22、ガス流路22のY方向(ガスの流れる方向)両側の領域をキャビティ23(23a、23b)と称する。この空洞部24に、大気、窒素、もしくはアルゴンなどのガスが封入されている。
【0085】
図28のような構造の半導体装置100において、図7や図8で示したように、ヒータ40で空洞部24内のガスを加熱し、ガスの温度分布を熱センサ30、50で測定し、熱センサ30,50の温度差により、加速度を検知することができる。
【0086】
次に、図29を用いて、図28で示した半導体装置100の製造方法について説明する。まず、S101において、半導体基板SUBを用意し、半導体基板SUB上に、不図示の熱検出回路等を構成するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を形成する。
【0087】
次いで、S102において、S101で形成した半導体基板SUB上に配線構造層L及び最上層配線構造20を形成する。すなわち、半導体基板SUB上に配線層及び層間絶縁膜を含む配線構造層Lを積層形成し、配線構造層L上に最上層配線として、壁配線20a、ヒータ・熱センサ配線110を形成する。層間絶縁膜にはシリコン酸化物もしくはシリコン酸化物に炭素を混入させたものを使用する。
【0088】
次いで、S103において、S102で形成した積層体10の上面全体に保護層21を堆積させる。すなわち、配線構造層L、壁配線20a及びヒータ・熱センサ配線110の上面全体を覆うように保護層21を形成する。ここで保護層21の材料はポリイミドとする。
【0089】
次いで、S104において、S103で形成した積層体10の上面に対し露光を行うことにより、ヒータ・熱センサ配線110周辺の保護層21を除去する。すなわち、壁配線20aの内側における配線構造層L及びヒータ・熱センサ配線110の上面を露光し保護層21を除去することで、配線構造層Lの層間絶縁膜及びヒータ・熱センサ配線110を露出させる。
【0090】
次いで、S105において、S104で形成した積層体10の上部に、張り合わせによりカバー板80を接合する。すなわち、保護層21のうち、壁配線20aによって、他の部分よりも突出している部分に、カバー板80を接触させ接合する。以上の工程により、図28の半導体装置100が形成される。
【0091】
このように、本実施形態の半導体装置では、積層体最上層の壁配線によりガスを封入する空洞部を形成し、空洞部内にヒータと複数の熱センサを配置する。積層体上部の空気をヒータで加熱し、熱センサで温度を検知することにより、半導体装置に加えられた加速度を検出することができる。
【0092】
上記のように、図27のような参考例の加速度センサでは、シリコン基板を削り取ってチャンバーを形成し、チャンバーの中空にヒータ及び熱センサを配置する必要があるため、加速度センサの製造が非常に困難であった。本発明では、加速度センサを図28のような半導体装置の構成とすることにより、加速度センサを図29のように一般的な半導体プロセスで製造することができるため、製造効率の向上や高集積化を図ることができる。
【0093】
実施の形態15
図30を用いて、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。図30(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0094】
図30の半導体装置100では、図28の半導体装置100と比べて、ヒータ・熱センサ配線110上にカバー膜111が形成されている。その他の構成は、図28と同様である。
【0095】
すなわち、ヒータ・熱センサ配線110表面の露出部分を、ヒータ・熱センサ用のカバー膜111で囲う。ヒータ・熱センサ配線110のガスに触れる上面及び側面の全体を覆うようにカバー膜111を形成する。カバー膜111の材料には、ポリイミドなどの有機物や、SiOなどの酸化膜、SiN、TiN、TaNなどの窒化膜を使用する。
【0096】
上記のように、ヒータ・熱センサ配線110上にカバー膜を形成することにより、ヒータ・熱センサ配線110が直接ガスに触れることがない。したがって、ガスに触れることによるヒータ・熱センサ配線110のメタル材料の腐食、断線を防ぐことができる。
【0097】
また、カバー膜111は、壁配線20a等の他の部分の保護層(保護膜)よりも薄く形成することが好ましい。カバー膜111を薄膜とすることで、熱伝導がよくなるため、ヒータの発熱効率や熱センサの検出感度を向上することができる。
【0098】
実施の形態16
図31を用いて、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。図31(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。図31の半導体装置100と図28の半導体装置とを比べると、ヒータ・熱センサ配線110が形成される配線層の階層が異なっており、その他の構成は同様である。図28の半導体装置100では、ヒータ・熱センサ配線110は壁配線20aと同じ最上層に形成されており、図31に示す本実施形態の半導体装置100では、ヒータ・熱センサ配線110は、壁配線20aよりも下層の配線層に形成される。
【0099】
例えば、配線構造層Lは、配線構造層L1〜L3を含んでおり、最上層の1つ下層である配線構造層L3(中間層)の配線層に、ヒータ・熱センサ配線110が形成される。壁配線20aの内側では、配線構造層L2の上面まで、積層体の表面が掘り下げられている。
【0100】
空洞部24は、上面側をカバー板80に覆われ、底面側を中間層の配線構造層L(L2)の層間絶縁膜に覆われ、側面側を壁配線20a及び最上層に接する配線構造層L(L3)の層間絶縁膜に覆われて封止形成されている。すなわち、図31の空洞部24は、図28の空洞部24に比べて、配線構造層L3の厚さ分だけ深く形成されている。
【0101】
次に、図32を用いて、図31で示した半導体装置100の製造方法について説明する。なお、図32では、図29と比べて、ヒータ・熱センサ配線110の形成位置と、ヒータ・熱センサ配線110を露出するためのエッチング工程とが異なっており、その他については同様である。
【0102】
まず、S201において、半導体基板SUBを用意し、半導体基板SUB上に、不図示の熱検出回路等を構成するMISFETを形成する。
【0103】
次いで、S202において、S201で形成した半導体基板SUB上に配線構造層L及び最上層配線構造20を形成する。すなわち、半導体基板SUB上に配線層及び層間絶縁膜を含む配線構造層Lを積層形成し、配線構造層L3の配線層に中間層配線としてヒータ・熱センサ配線110を形成する。ヒータ・熱センサ配線110上には層間絶縁膜が形成され、その層間絶縁膜上に、最上層配線として壁配線20aを形成する。
【0104】
次いで、S203において、S202で形成した積層体10の上面全体に保護層21を堆積させる。すなわち、配線構造層L及び壁配線20a上面全体を覆うように保護層21を形成する。
【0105】
次いで、S204において、S203で形成した積層体10の上面に対し露光により、ヒータ・熱センサ配線110の上部周辺の保護層21を除去する。すなわち、壁配線20aの内側における配線構造層Lの上面を露光し保護層21を除去することで、配線構造層Lの層間絶縁膜を露出させる。
【0106】
次いで、S205において、S204で形成した積層体10の上面に対し、保護層21をマスクとして、配線構造層Lの層間絶縁膜をドライエッチングにより除去する。すなわち、壁配線20aの内側について、配線構造層L3の層間絶縁膜をエッチングし、配線構造層L3の配線層であるヒータ・熱センサ配線110と、配線構造層L2の層間絶縁膜とを露出させる。
【0107】
次いで、S206において、S205で形成した積層体10の上部に、張り合わせによりカバー板80を接合する。以上の工程により、図31の半導体装置100が形成される。
【0108】
このように、本実施形態の半導体装置では、積層体最上層の壁配線及び下層の層間絶縁膜による段差でガスを封入する空洞部を形成した。この空洞部内にヒータと複数の熱センサを配置し、積層体上部の空気をヒータで加熱して熱センサで温度を検知することにより、図28と同様に、半導体装置の移動速度を検出することができる。また、図29と同様に、一般的な半導体プロセスにより加速度センサを製造することができる。
【0109】
さらに、ヒータ・熱センサ配線110を、掘り下げた配線構造層Lに形成することにより、空洞部24をより広くすることができる。本実施形態では、壁配線20aの厚みや上面視の面積が図28と同様であっても、空洞部24の容積を図28よりも大きくすることができる。空洞部が狭いとガスが流れ難くなるため、空洞部を広くすることによって、ガスが流れやすくなり、加速度センサの感度を向上することができる。
【0110】
実施の形態17
図33を用いて、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。図33(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0111】
図33の半導体装置100では、図31の半導体装置100と比べて、壁配線20aの配置パターン及び壁配線20aにより区画されて形成される空洞部24の形状が異なっている。その他の構成については、図31と同様である。図33の半導体装置100では、図31の半導体装置100と同様に、ヒータ・熱センサ配線110は、最上層よりも下層の配線層に形成されている。これにより、ヒータ・熱センサ配線110の上部にガスを流すための空間を広く設けることが出来る。
【0112】
本実施形態における、壁配線20aの配置パターンにより形成される空洞部24の形状について説明する。図31の半導体装置100では、空洞部24の上面断面がY方向を長辺方向とする略長方形状であり、キャビティ23aからガス流路22を介してキャビティ23bまでの上面断面の幅が同じである。
【0113】
これに対し、図33に示す本実施形態の半導体装置100では、空洞部24は、熱センサ30,50の近傍と他の部分とで、上面断面のX方向(ガスの流れと垂直方向)の幅が大きく異なる。すなわち、熱センサ30,50が配置されているガス流路22では幅が狭く、ガス流路22の両側に幅の広いキャビティ23a、23bが形成されている。
【0114】
図33では、キャビティ23a、23bは、上面断面がX方向を長辺方向とする略長方形状であり、長辺の長さが、ガス流路22の幅よりも長い。なお、キャビティ23a、23bは、ガス流路22よりも幅が広ければよいため、長方形に限らず、略正方形でもよいし、その他の多角形状等であってもよい。また、少なくとも、熱センサ30、50の近傍において、ガス流路22の幅が狭くなればよい。例えば、ヒータ40の近傍が、熱センサ30、50の近傍よりも、幅が広くなっていてもよい。
【0115】
半導体装置100が移動すると、空洞部24内のガスは半導体装置100の動きに追従できないため、半導体装置100の動きと逆の方向にガスの流れが発生する。キャビティ23aのガスがキャビティ23bへ移動するには、熱センサ30,50近傍のガス流路22を通る必要がある。広い空間であるキャビティ23aのガスが、狭い空間(隘路)のガス流路22を通過しようとすると、体積の大きいガスが狭い隘路に急激に入り込むためガスの圧力が高まる。
【0116】
したがって、ガス流路22を通るときのガスの流速は、キャビティ23a、23bの部分よりも速くなる。ガス流路22においてガスの流速が速くなると、ガスの流れによって熱も速く伝わり、かつ、伝わる熱量も大きくなる。よって、狭い隘路が無い場合に比べると、センサの温度変化がより速く、かつ、より大きくなるため、加速度センサの感度を高めることが出来る。
【0117】
上記のように、図27の参考例や図31等のような加速度センサでは、熱センサの部分と他の部分とでガスを密閉する空洞部の形状に変化はなく、ガスの流速にも変化はなかった。したがって、ガスの流速を制御することはできず、加速度センサの感度を向上させるためには、空洞部やヒータ・熱センサ配線を大きくする必要があった。
【0118】
本実施形態では、積層体上部のガスの流れを検出する加速度センサにおいて、ガスの流れる領域を局所的に狭くすることで、その部分のガスの流速を他の部分よりも速くする。この流速の速い部分に熱センサを配置することで、ガスの温度の検出感度を高めることができる。
【0119】
実施の形態18
図34を用いて、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。図34(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0120】
図34の半導体装置100では、図33の半導体装置100と比べて、壁配線20aの配置パターン及び壁配線20aにより区画されて形成される空洞部24のうちのキャビティの形状が異なっている。その他の構成については、図33と同様である。
【0121】
図33の半導体装置100では、キャビティ23a、23bがX方向を長辺方向とする略長方形状である。ガス流路22の辺(壁配線)に対し、キャビティ23a、23bの辺(壁配線)が直角に接している。
【0122】
これに対し、図34の本実施形態の半導体装置100では、ガス流路22の辺(壁配線)に対し、キャビティ23a、23bの辺(壁配線)が、直角よりも緩やかな角度で接している。すなわち、壁配線20aにより形成される空洞部24の幅が、熱センサ30,50を配置するガス流路22近傍が最も狭く、熱センサ30,50から離れるに従って徐々に広くなっている。また、空洞部24の幅が、熱センサ30,50から最も遠い部分が最も広く、熱センサ30,50に近づくに従って徐々に狭くなっているとも言える。少なくとも、ガス流路22に接するキャビティ23a、23bの辺が、X方向(ガスの流れる方向)に対し、斜めであればよく、キャビティ23a、23bの形状は、どのような形状であってもよい。
【0123】
このように、本実施形態では、キャビティの形状を熱センサに近づくに従って徐々に変化するようにした。これにより、図33のようにキャビティの角がガス流路に対し直角な形状の場合よりも空気抵抗が小さくなり、ガスの流れがスムーズとなるため、加速度センサの感度をより向上することができる。例えば、空洞部24に封入される物質が、壁配線による抵抗を受けやすい物の場合、キャビティの辺をガス流路に対し斜めにし、空気抵抗を減らすことで、流れを大幅に速くすることができる。
【0124】
実施の形態19
図33や図34では、空洞部24の上面断面の形状が熱センサ近傍で変化する例について説明した。本実施形態では、空洞部24の側面断面の形状が熱センサ近傍で変化する例について説明する。
【0125】
図35(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0126】
図35の半導体装置100では、図28や図31の半導体装置100と比べて、ヒータもしくは熱センサが形成される配線層の位置(階層)が異なっている。その他の構成については、図28や図31と同様である。
【0127】
図28や図31の半導体装置100では、ヒータ40と熱センサ30、50とは、同じ配線層に形成されている。これに対し、図35の本実施形態の半導体装置100では、ヒータ40と熱センサ30、50とは、別の配線層に形成される。
【0128】
図35に示すように、熱センサ30、50は壁配線20aと同じ最上層に形成され、ヒータ40は、壁配線20aよりも下の配線構造層Lに形成される。例えば、配線構造層Lは、配線構造層L1〜L3を含んでおり、最上層の1つ下層である配線構造層L3(中間層)の配線層に、ヒータ40が形成される。熱センサ30と熱センサ50に挟まれたヒータ40近傍では、配線構造層L2の層間絶縁膜上面まで、積層体の表面が掘り下げられている。すなわち、ヒータ40近傍では、空洞部24のZ方向の深さが深く、熱センサ30、50近傍では、空洞部24のZ方向の深さが浅くなっている。
【0129】
このように、本実施形態では、熱センサ30,50を最上層に形成し、ヒータ40を最上層より掘り下げた下層の配線層に形成するようにした。これにより、空洞部の空間が、ヒータ40近傍で広くなり、熱センサ30,50近傍で狭くなる。したがって、図33や図34と同様に、熱センサ近傍におけるガスの流速を速くすることができ、加速度センサの感度を向上することができる。
【0130】
実施の形態20
本実施形態では、空洞部24の側面断面の形状が熱センサ近傍で変化する他の例について説明する。図36(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。
【0131】
図36の半導体装置100では、図28の半導体装置100と比べて、キャビティが接する層が異なっている。また、図36の半導体装置100では、図31の半導体装置100と比べて、ヒータ・熱センサ配線が形成される層の位置が異なっている。その他の構成については、図28や図31と同様である。
【0132】
図28や図31の半導体装置100では、ヒータ・熱センサ配線110が配置される配線層と、キャビティ23a、23bが接する層とが同じ階層である。これに対し、図36の本実施形態の半導体装置100では、ヒータ・熱センサ配線110が配置される配線層と、キャビティ23a、23bが接する層とが、別の階層である。
【0133】
図36に示すように、ヒータ・熱センサ配線110は壁配線20aと同じ最上層に形成されている。キャビティ23a、23bは壁配線20aよりも下層の配線構造層Lに接している。例えば、配線構造層Lは、配線構造層L1〜L3を含んでおり、壁配線20aと熱センサ30、50とに挟まれたキャビティ23a、23bでは、配線構造層L2の層間絶縁膜上面まで、積層体の表面が掘り下げられている。すなわち、キャビティ23a、23b近傍では、空洞部24のZ方向の深さが深く、熱センサ30、50近傍では、空洞部24のZ方向の深さが浅くなっている。
【0134】
このように、本実施形態では、ヒータ・熱センサ配線110を最上層に形成し、キャビティ23a、23bに接する配線構造層を下層まで掘り下げるようにした。これにより、空洞部の空間が、キャビティ23a、23b近傍で広く、熱センサ30,50近傍で狭くなる。したがって、図35と同様に、熱センサ近傍におけるガスの流速を速くすることができ、加速度センサの感度を向上することができる。
【0135】
実施の形態21
本実施形態では、空洞部24の上面断面の形状が熱センサ近傍で変化する他の例について説明する。図37は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図である。なお、半導体装置100の側面断面図については、図33(b)等と同様である。
【0136】
図33の半導体装置100では、X方向に延びるガス流路を形成し、その両端にキャビティを形成している。これに対し、図37の本実施形態の半導体装置100では、図33の構成に加えて、Y方向に延びるガス流路を形成し、その両端にキャビティを形成する。
【0137】
図37に示すように、ヒータ40を中心に配置し、そのX方向及びY方向に隣接して4つの熱センサ30(50)を配置する。Y方向では、熱センサ30a(50)、ヒータ40、熱センサ30b(50)の順に並ぶように配置し、X方向では、熱センサ30c(50)、ヒータ40、熱センサ30d(50)の順に並ぶように配置する。
【0138】
熱センサ30a、30bの配置される位置に、Y方向に延びるガス流路22a、22bが形成される。ガス流路22aとガス流路22bとからガス流路22yが構成され、ガス流路22yの両端にキャビティ23a、23bが形成される。
【0139】
また、熱センサ30c、30dの配置される位置に、X方向に延びるガス流路22c、22dが形成される。ガス流路22cとガス流路22dとからガス流路22xが構成され、ガス流路22xの両端にキャビティ23c、23dが形成される。
【0140】
ガス流路22yとガス流路22xは、十字型に直交交差し、ガス流路が交差する位置にヒータ40が配置されるとも言える。ヒータ40から一定距離の各ガス流路内に4つの熱センサ30が配置されている。なお、キャビティの形状は、図33や図34と同様にその他の形状であってもよい。
【0141】
このように、本実施形態では、X方向にヒータを挟むように熱センサを配置するとともに、Y方向にヒータを挟むように熱センサを配置することにより、図26と同様に、4つ熱センサでX方向及びY方向の2軸の加速度を検出することができる。
【0142】
また、本実施形態では、空洞部の幅を、4つの熱センサの配置されるX方向及びY方向のガス流路部分では狭く、その外側の4つのキャビティでは広くしている。これにより、図33等と同様に、ガス流路部分のガスの流速を速くすることができ、加速度センサとしての感度を高めることが出来る。
【0143】
実施の形態22
図38を用いて、本実施形態に係るヒータ・熱センサ配線110の配線パターンについて説明する。図38は、ヒータ40もしくは熱センサ30,50の上面視の配線パターンである。
【0144】
上述のように半導体装置100では、ヒータ40及び熱センサ30,50はメタルの配線で構成され、配線の寄生抵抗を利用することによりヒータ及び熱センサとして動作する。このため、ヒータ40及び熱センサ30,50を効果的に動作させるためには、メタル配線の抵抗値を大きくする必要がある。
【0145】
そこで、配線の抵抗値を大きくするため、図38に示すように、本実施形態では、ヒータ・熱センサ配線110を細長く配置する。図38は、ミアンダ形状の配線の3つの配線パターン例を示している。
【0146】
図38に示すように、ヒータ・熱センサ配線110をミアンダ形状に配置することで、細長い配線を狭い面積に効率よく配置することができる。ミアンダ形状の配線とは、ジグザグ状の配線パターンの配線であり、一方向と反対の他方向とに交互に折り返しながら敷設された配線である。
【0147】
図38(a)、(b)は、Y軸正方向及びY軸負方向(ガスの流れる方向)に向かって左右非対称の配線パターンであり、図38(c)は、Y軸正方向及びY軸負方向に向かって左右対称の配線パターンである。
【0148】
図38(a)の配線パターン120では、ヒータ・熱センサ配線110は、ミアンダ形状のミアンダ配線部110aと直線状の戻り配線部110bとを有している。配線パターン120では、Y軸方向正側に、ミアンダ配線部110aが配置され、Y軸方向負側に、戻り配線部110bが配置されている。
【0149】
ミアンダ配線部110aは、一端が太幅配線113aを介してトレンチ配線(ビア)112aに接続され、他端が戻り配線部110bに接続される。ミアンダ配線部110aは、ガスの流れる方向(Y方向)に沿って延在配置する配線を交互に折り返しながら形成される。
【0150】
戻り配線部110bは、一端がミアンダ配線部110aに接続され、他端が太幅配線113bを介してトレンチ配線112bに接続される。戻り配線部110bは、ガスの流れる方向と直交する方向(X方向)に向かって、ミアンダ配線部110aの他端から、トレンチ配線112a近傍のトレンチ配線112bまで直線状に延在配置される。
【0151】
例えば、配線パターン120を実際に形成する場合の一例として、配線材料を銅とし、配線幅0.2μm、配線間隔0.2μm、膜厚0.3μm、配線長1m、抵抗値は700Ωとする。このとき、配線パターン120全体のX方向の長さを50μm、Y方向の長さを15μmとして形成する。
【0152】
図38(b)の配線パターン121では、配線パターン120と同様のミアンダ配線部110aと戻り配線部110bとを有している。配線パターン121では、ミアンダ配線部110a及び戻り配線部110bの配置位置が、配線パターン120と反対になっている。すなわち、Y軸方向負側に、ミアンダ配線部110aが配置され、Y軸方向正側に、戻り配線部110bが配置されている。
【0153】
図38(c)の配線パターン122では、ヒータ・熱センサ配線110は、2つのミアンダ配線部110a、110cを有している。2つのミアンダ配線部110a、110cがY方向に並んで配置される。
【0154】
一方のミアンダ配線部110aは、一端が太幅配線113aを介してトレンチ配線112aに接続され、他端がミアンダ配線部110cに接続される。同様に他方のミアンダ配線部110cは、一端が太幅配線113bを介してトレンチ配線112bに接続され、他端がミアンダ配線部110aに接続される。
【0155】
このように、ヒータ40、熱センサ30,50を構成するヒータ・熱センサ配線110をミアンダ形状に配置することにより、効率よく配線を敷設することができる。そして、配線が延在配置される方向(長辺方向)をガスの流れる方向と平行になるようにすることで、配線によるガスの流れの乱れが低減するため、ガスの流れを乱すことが無くなり、加速度センサの感度を向上することができる。
【0156】
また、ヒータ・熱センサ配線と他の回路の間をつなぐ接続配線は、ヒータ・熱センサ配線よりも下層のメタル配線とし、ヒータ・熱センサ配線と下層の配線とはトレンチ配線を介して接続する。ヒータ・熱センサ配線以外の配線は、下層配線としガスに露出しないようにすることで、ガスの流れに対する影響を抑え、加速度センサの感度向上を図ることができる。
【0157】
さらに、ヒータ・熱センサ配線は、トレンチ配線との接続部分の幅を、他の部分の幅よりも太くする。これにより、トレンチ配線部分のEM(Electro Migration)耐性を保つことができる。
【0158】
実施の形態23
図39を用いて、本実施形態に係るヒータ・熱センサ配線110の配線パターンの組み合わせについて説明する。図39は、ヒータ40及び熱センサ30,50の上面視の配線パターンであり、図38で示した配線パターン120〜122を半導体装置100に適用する場合の配線パターンの組み合わせの例を示している。
【0159】
図39(a)は、ヒータ40を、配線パターン122による配線とし、熱センサ30を、配線パターン120による配線とし、熱センサ50を、配線パターン121による配線とした例である。図39(b)は、ヒータ40を、配線パターン122による配線とし、熱センサ30を、配線パターン121による配線とし、熱センサ50を、配線パターン120による配線とした例である。
【0160】
ヒータ40は、熱センサ30、50に向かって、ほぼ等しく熱を伝える必要があるため、ガスの流れる方向に向かって左右対象な配線パターン122を採用することが好ましい。
【0161】
熱センサ30、50は、ヒータ40から発生される熱を、同程度の感度で検出する必要があるため、ヒータ40から見て対象となる配線パターンが好ましい。すなわち、図39(a)では、熱センサ30,50は、ヒータ40に近い側にミアンダ配線部110aが配置され、ヒータ40から遠い側に戻り配線部110bが配置されており、ヒータ40から見て対象になっている。
【0162】
図39(b)では、熱センサ30,50は、ヒータ40に近い側に戻り配線部110bが配置され、ヒータ40から遠い側にミアンダ配線部110aが配置されており、ヒータ40から見て対象になっている。なお、左右対称の配線パターン122を、ヒータ40、熱センサ30,50に採用しても同様の効果が得られる。
【0163】
特に、図39(a)のように、熱センサ30,50のミアンダ配線部110aを、ヒータ40に近くに配置することで、ヒータ40の熱をより近くで検出できるため、熱センサの感度を向上することができる。
【0164】
実施の形態24
図40を用いて、本実施形態に係るヒータ・熱センサ配線110の配線パターンの他の例について説明する。図40は、ヒータ・熱センサ配線110の配線パターンの斜視図であり、図38で示したミアンダ形状の配線パターンの折れ曲がり部分を示している。
【0165】
図40(a)は、単一の配線層のみでヒータ・熱センサ配線110の折れ曲がり部分を形成する例である。この場合、折れ曲がり部分はガスの流れに対して垂直に配置されることになり、ガスの流れを妨げる可能性がある。
【0166】
図40(b)は、折れ曲がり部分に下層配線を使用する例である。この場合、折れ曲がり部分でトレンチ配線T110を介し、下層配線ML110に接続する。下層配線ML110により、ヒータ・熱センサ配線110が折り返すように、トレンチ配線T110間を接続する。これにより、ガスの流れを妨げる部分に壁配線が形成されないため、ガスの流速を速くすることができる。
【0167】
ただし、トレンチ配線部分はEM耐性が劣り断線の可能性があるため、図40(a)のように単一の配線層で折れ曲がり部を形成することが好ましい。すなわち、ヒータ・熱センサ配線110は、図38のように細長く敷設することから、EM耐性を保つために、極力トレンチ配線(ビア)を設けないことが望ましい。なお、図40(b)のようにトレンチ配線を使用する場合には、断線を防ぐために、ヒータに流しうる最大の電流を図40(a)よりも小さくすることが好ましい。
【0168】
実施の形態25
本実施形態では、半導体装置100にダミーメタルを配置する場合における、ダミーメタルの配線パターン(ダミーパターン)について説明する。
【0169】
Cu配線プロセスでは微細配線を形成するために、ダミーメタルをチップ全面に配置する必要がある。通常、一定領域に配線がレイアウトされない場合、ダミーメタルが所定のパターンで配置される。
【0170】
図41は、図28や図31で示した半導体装置100に、単純にダミーメタルを配置した参考例である。この参考例では、キャビティ23a、23bに配線が形成されないため、キャビティ23a、23bに複数のダミーメタルが配置される。図41のように、通常は粒状(略正方形状)のダミーパターンが使用され、キャビティ23a、23bを埋めるように粒状のダミーメタル130a、130bが配置される。
【0171】
しかしながら、図41のように粒状のダミーパターンを使用すると、ダミーメタルによりガスの流れが妨げられてガスの流れが乱れるため、加速度センサの感度が低下してしまう。
【0172】
そこで、本実施形態では、図42に示すようなダミーパターンとした。図42は、図28や図31と同様の半導体装置100の上面断面図である。
【0173】
図42に示すように本実施形態の半導体装置100では、長方形状に長く延びるダミーパターンによりダミーメタルを形成する。半導体装置100で配線の無いキャビティ23a、23bに、長方形のダミーメタル131a、131bを、ガスの流れるY方向に沿って延びるように配置する。ダミーメタル131a、131bは、長辺がY方向に延びる長方形である。キャビティ23a、23bには、複数のダミーメタル131a、131bが所定間隔で平行に配置されている。なお、個々のダミー配線をダミーメタルと呼ぶ場合もあるし、複数のダミー配線をダミーメタルと呼ぶ場合もある。
【0174】
図43は、図42に示した半導体装置100の側面断面図であり、ダミーメタル131とヒータ・熱センサ配線110の深さ方向(Z方向)の位置関係の例を示している。
【0175】
図43(a)は、ヒータ・熱センサ配線110を最上層よりも下層の配線層に形成し、ダミーメタルを形成しない例である。すなわち、図31の半導体装置100と同様の構成である。例えば、ヒータ・熱センサ配線110をAl配線とする場合には、ダミーメタルが必要ないため、図43(a)のような構成となる。
【0176】
図43(b)は、ヒータ・熱センサ配線110を最上層配線に形成し、ダミーメタル131も同じ最上層配線に配置した例である。すなわち、図28の半導体装置100の構成において、キャビティ23a、23bに、ダミーメタル131a、131bを最上層に形成した例である。なお、この場合、配線構造層Lの中の配線層にもダミーメタルを配置する場合があるが、図では省略している。
【0177】
図43(c)は、ヒータ・熱センサ配線110を最上層よりも下層の配線層に形成し、同じ下層の配線層にのみダミーメタル131を形成した例である。すなわち、図31の半導体装置100の構成において、キャビティ23a、23bに、ヒータ・熱センサ配線110と同じ配線層でダミーメタル131a、131bを形成した例である。最上層配線にダミーメタルが必要ないプロセスの場合にはこのような配置となる。
【0178】
図43(d)は、ヒータ・熱センサ配線110を最上層よりも下層の配線に形成し、最上層配線層及び下層配線層にダミーメタル131を配置する場合の例である。すなわち、図31の半導体装置100の構成において、キャビティ23a、23bに、ヒータ・熱センサ配線110と同じ下層配線層(配線構造層L3の配線層)でダミーメタル131a、131bを形成し、さらに最上層配線でもダミーメタル131a、131bを形成する。最上層のダミーメタル131a、131bと下層のダミーメタル131a、131bとの間には、配線構造層L3の層間絶縁膜132a、132bが形成されている。各配線層のダミーメタルは同じ形状であり、ダミーメタル同士は層間絶縁膜を介して上下(Z方向)に重なる位置に配置される。なお、この場合、ヒータ・熱センサ配線110の直上にはダミーメタルは配置しなくてもよい。
【0179】
このように、本実施形態では、長方形の細長いダミーメタルを使用し、ダミーメタルの長辺方向がガスの流れる向きと平行になるように配置した。これにより、ダミーパターンによるガスの流れの乱れが低減されるので、ガスの流速を上げることができ、加速度センサの感度を向上することができる。
【0180】
実施の形態26
本実施形態では、半導体装置100にダミーメタルを配置する場合の他の例について説明する。図44は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図であり、図33の半導体装置100に対し、図25と同様のダミーメタルを適用した例である。
【0181】
図44に示すように、キャビティ23a、23b及びガス流路22を含む空洞部24のうちで、ヒータ・熱センサ配線110が形成されない空き領域に、長方形の細長いダミーメタルを配置する。図44では、X方向及びY方向に向かってダミーメタルを配置している。
【0182】
キャビティ23aには、ダミーメタル131aが、ガスの流れるY方向に複数平行に配置される。ダミーメタル131aは、キャビティ23aのY方向端部(長方形の長辺側)からガス流路22の熱センサ30近傍まで延在配置されている。空洞部24の幅が、ガス流路22では狭く、キャビティ23aでは広くなっているため、ダミーメタル131aの本数はガス流路22から離れるに従って増えている。このように、ダミーメタル131aを配置することにより、キャビティ23a内のガスが、キャビティ23aのY方向端部からガス流路22側へ流れやすくなる。
【0183】
さらに、キャビティ23aの熱センサ30側の角部に、ダミーメタル131c、131dが、X方向に複数平行に配置される。ダミーメタル131c、131dは、キャビティ23aのX方向端部(長方形の短辺側)から、キャビティ23aの中央部へ向かって、ダミーメタル131a近傍まで延在配置されている。このように、ダミーメタル131c、131dを配置することにより、キャビティ23a内のガスが、キャビティ23aのX方向端部からガス流路22側へ流れやすくなる。
【0184】
なお、キャビティ23aの他の角部等、空いている領域にさらにダミーメタルを配置してもよい。
【0185】
キャビティ23aと同様に、キャビティ23bには、Y方向にダミーメタル131bが配置され、X方向にダミーメタル131e、131fが配置される。これらのダミーメタルにより、キャビティ23b内のガスが、キャビティ23bのY方向端部及びX方向端部から、ガス流路22側へ流れやすくなる。
【0186】
実施の形態27
本実施形態では、半導体装置100にダミーメタルを配置する場合の他の例について説明する。図45は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図であり、図34の半導体装置100に対し、図25と同様のダミーメタルを適用した例である。
【0187】
図45に示すように、ヒータ・熱センサ配線110が形成されないキャビティ23a、23bの空き領域に、長方形の細長いダミーメタルを配置する。図45では、X軸及びY軸に対し斜め方向に向かってダミーメタルを配置している。
【0188】
図45では、キャビティ23a、23bが、熱センサ30,50を配置する部分が最も狭く、熱センサ30,50から離れるに従って徐々に広くなっている。ダミーメタル131a、131bは、キャビティ23a、23bの形状に合わせて、ダミーメタルの間隔が、熱センサ30,50近傍では狭く、熱センサ30,50から離れるに従って広くなるように配置されている。すなわち、キャビティの内側の幅に合わせてダミーメタルのビッチを変化させている。
【0189】
このように、ダミーメタル131a、131bを、熱センサ30,50へ向かって斜め方向に配置することにより、キャビティ23a、23b内のガスが、キャビティ23a、23bのY方向端部からガス流路22側へより流れやすくなる。
【0190】
実施の形態28
本実施形態では、半導体装置100の熱検出回路に含まれる抵抗読み出し回路の構成について説明する。抵抗読み出し回路とは、熱センサの抵抗値を読み出すための回路である。例えば、図6で示した熱検出回路のうち、抵抗R2の抵抗値を読み出すための電流源CS1及び増幅器AMPが抵抗読み出し回路である。
【0191】
図46は、本実施形態に係る抵抗読み出し回路の構成を示している。図46に示すように、この抵抗読み出し回路410は、センサ抵抗Rの抵抗値を読み出すための負荷抵抗R及び比較器CMPを有している。図46と図6の対応関係を説明すると、図46の負荷抵抗R、センサ抵抗R、比較器CMPは、図6の電流源CS1、抵抗R2、増幅器AMPに相当する。
【0192】
負荷抵抗R及びセンサ抵抗Rは、電源電位VDDと接地電位GND間に直列に接続されており、負荷抵抗R及びセンサ抵抗Rの接点N1が、比較器CMPの正端子(CIN)に入力される。センサ抵抗Rは、熱センサ30もしくは熱センサ50の配線による抵抗である。負荷抵抗Rは、センサ抵抗Rにバイアス電圧を印加するための抵抗である。比較器CMPは、接点N1から読み出す電圧VN1と参照電圧VREFとを比較し、その差分値を増幅して読み出し電圧COUTを出力する。
【0193】
図46では、センサ抵抗Rを温度係数の大きい抵抗とし、負荷抵抗Rを温度係数の小さい抵抗とする。温度係数の大きいセンサ抵抗Rは、熱センサ30,50として、ガスに触れる部分に配置される。温度係数の小さい負荷抵抗Rは、ガスに触れない部分ならばどこに配置しても良い。シリコンチップ上で一般的に用いられる抵抗体の中で、CuやAlなどの金属配線は比較的温度係数が大きいので、温度係数の大きいセンサ抵抗Rとして使用し、温度係数が金属の1/10程度であるポリシリコンを温度係数の小さい負荷抵抗Rとして使用する。
【0194】
図46で、センサ抵抗Rと負荷抵抗Rは、直列に接続されているため、ガスに触れているセンサ抵抗Rから負荷抵抗Rに熱が伝わる。
【0195】
ここで、温度変化による図46の接点N1での電圧VN1を以下に計算する。まず、センサ抵抗Rと負荷抵抗Rの抵抗値は、それぞれ以下の数1、数2で与えられるものとする
【数1】

【数2】

数1、数2において、RS0とRL0は、センサ抵抗Rと負荷抵抗Rの基準となる温度での抵抗値であり、KとKは、センサ抵抗Rと負荷抵抗Rの温度係数である。ΔTは基準となる温度からの差分の温度である。
【0196】
数1、数2を用いて、基準となる温度からΔTだけの温度変化があったとき、図46の接点N1の電圧VN1を求めると以下の数3のようになる。
【数3】

数3より、もしも、K=Kならば電圧VN1は温度によらず一定となる。つまり、K=Kの場合、この抵抗読み出し回路は出力が一定となるため、温度を検知することができない。本実施形態では、K>>Kとしたため、センサ抵抗Rにより熱に応じて電圧VN1を出力でき、負荷抵抗Rによる感度の低下を防ぐことができる。
【0197】
このように、本実施形態では、温度係数の大きい抵抗素子と温度係数の小さい抵抗素子を直列に接続し、温度係数の大きい抵抗素子でガスの温度を検出するようにした。温度係数の大きい抵抗素子から、温度係数の小さい抵抗素子に熱が伝わるが、温度係数の小さい抵抗素子は抵抗値変化が小さいため、ガスの温度検出に与える影響を抑えることができ、確実に温度を検出することができる。
【0198】
実施の形態29
本実施形態では、半導体装置100の抵抗読み出し回路の他の構成例について説明する。図47は、本実施形態に係る抵抗読み出し回路の構成を示している。図47の抵抗読み出し回路410では、図46の読み出し回路に対し、抵抗RI1が追加されており、その他の構成は、図46と同様である。
【0199】
図47では、センサ抵抗R及び負荷抵抗Rの接点N1(電圧出力端子)と、比較器CMPの正端子(CIN)との間に、抵抗RI1を接続する。抵抗RI1は、センサ抵抗Rよりも熱伝導率の低い抵抗である。例えば、熱伝導率の低い抵抗体として、ポリシリコンやTiN、TaNを使用する。
【0200】
ここで、本実施形態の動作原理の理解を助けるため、比較器CMPをMISFETで構成する場合の半導体チップ断面を図48に示す。図48のように比較器CMPを構成するMISFETは、半導体基板SUBの上面内部にソース領域S、ドレイン領域Dが形成され、ソース領域Sとドレイン領域Dに挟まれた領域の半導体基板SUB上にゲート端子(ゲート構造)Gが形成される。ここで、比較器CMPの正端子CINは、ゲート端子Gとなる。
【0201】
ゲート端子Gは直接はシリコン基板に接しないが、ゲート端子Gとシリコン基板の間の絶縁膜は配線の層間絶縁膜の1/100以下の厚さであるため、熱を伝えやすい。さらに、シリコンは熱伝導率が高いため、シリコン基板は熱を逃がしやすい。したがって、図46のようにセンサ抵抗RSと比較器CMPの正端子CINを直接接続すると、センサ抵抗RSの熱が、図48の熱経路の方向へ向かって、比較器CMPの正端子Cから半導体基板SUBへ逃げてしまう。このため、熱センサ30,50により温度を精度よく検出することができない。
【0202】
そこで、本実施形態では、接点N1と比較器CMP(MISFET)の入力端子の間を、図47のように熱伝導率の低い抵抗RI1を挟むようにした。これにより、センサ抵抗Rの熱が比較器CMP側へ逃げることを防ぐことができるため、熱センサの感度を向上させることができる。
【0203】
実施の形態30
本実施形態では、半導体装置100の抵抗読み出し回路の他の構成例について説明する。図49は、本実施形態に係る抵抗読み出し回路の構成を示している。図49の抵抗読み出し回路410では、図47の抵抗読み出し回路に対し、抵抗RI2が追加されており、その他の構成は、図47と同様である。
【0204】
図49では、センサ抵抗R及び負荷抵抗Rの接点N1(電圧出力端子)と、比較器CMPの正端子(CIN)との間に、熱伝導率の低い抵抗RI1を接続する。
【0205】
本実施形態では、さらに、センサ抵抗Rと接地電位GNDとの間に、抵抗RI2を接続する。抵抗RI2は、抵抗RI1と同様に、センサ抵抗RSよりも熱伝導率の低い抵抗である。例えば、熱伝導率の低い抵抗体として、ポリシリコンやTiN、TaNを使用する。
【0206】
接地電位GNDに接続される配線は、通常、ウェルコンタクト(Well Contacts)を介してシリコン基板に接続されている。したがって、図47のように、センサ抵抗Rと接地電位GNDとを直接接続すると、センサ抵抗Rの熱が接地電池GNDへ逃げてしまう。このため、熱センサ30,50により温度を精度よく検出することができない。
【0207】
そこで、本実施形態では、センサ抵抗Rと接地電位GNDとの間に熱伝導率の低い抵抗RI2を接続するようにした。これにより、センサ抵抗RSから接地電位GNDへの経路の熱伝導率が低くなり、センサ抵抗Rの熱が接地電位GND側へ逃げることを防ぐことができるため、熱センサの感度を向上させることができる。
【0208】
実施の形態31
本実施形態では、半導体装置100における、ヒータ・熱センサ配線から抵抗読み出し回路(比較器)までの配線例について説明する。
【0209】
図50(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。図50は、図31の半導体装置100に、ヒータ・熱センサ配線から比較器CMPまでの配線が追加されており、その他の構成は、図31と同様である。
【0210】
図50は、図31と同様に、ヒータ・熱センサ配線110を最上層より下層に形成した例である。なお、図28のように、ヒータ・熱センサ配線110を最上層に形成していてもよい。
【0211】
図50では、配線構造層Lは、図2と同様に、複数の層の配線構造層を含み、各配線構造層は、配線層及び層間絶縁膜を含んでいる。ここでは、配線構造層Lは、配線構造層L1〜L4を含んでいるものとして説明する。
【0212】
半導体装置100では、最上層に最上層配線構造20が形成され、その下層の配線構造層L4の配線層にヒータ・熱センサ配線110が形成されている。ヒータ・熱センサ配線110より下層の配線構造層L3の配線層に、配線ML210(ML210a、ML210b)が形成されている。配線ML210より下層の配線構造層L2の配線層に、配線ML200、配線ML220(ML220a、ML220b)が形成されている。配線ML200、配線ML220より下層の配線構造層L1及び半導体基板SUBに、抵抗読み出し回路である比較器CMPを構成するトランジスタM230(M230a,M230b)が形成されている。
【0213】
なお、ヒータ40の下方の配線ML200は、図25と同様に、ヒータ40からシリコン基板への熱伝導を遮断するための配線である。
【0214】
熱センサ30、50は、図38に示したような配線構造となっており、熱センサ30、50の配線端部が、トレンチ配線(ビア)T210a、T210bを介して下層の配線ML210a、ML210bの一端に接続されている。ML210a、ML210bの他端は、トレンチ配線T220a、T220bを介して、さらに下層の配線ML220a、ML220bの一端に接続されている。ML220a、ML220bの他端は、トレンチ配線(コンタクト)T230a、T230bを介してトランジスタM230a、ML230bのゲート端子Gに接続されている。
【0215】
抵抗読み出し回路(M230a,M230b)は、ヒータ40による熱の影響を避けるため、ヒータ40から離れた位置に配置される。そのため、配線ML210a、ML210bは、側面視でヒータ40から離れる方向に向かって形成されるとともに、上面視でヒータ40と反対側に折れ曲がって形成され、熱センサ30,50と読み出し回路とを接続している。
【0216】
このように、熱センサと抵抗読み出し回路とを、熱センサよりも下層の配線を介して接続することにより、配線が空洞部に露出しないため、加速度センサの感度に影響を与えることなく、自由に配線を敷設することができる。
【0217】
実施の形態32
本実施形態では、半導体装置100における、ヒータ・熱センサ配線から抵抗読み出し回路(比較器)までの他の配線例について説明する。
【0218】
図51(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置100の上面断面図及び側面断面図である。図51では、図50の構成に対し、さらに、抵抗R231を追加した例である。抵抗R231は、図47の抵抗RI1に相当し、熱センサと比較器CMPとの間に接続される、熱伝導率の低い抵抗である。抵抗R231には、熱伝導率の小さい抵抗としてポリシリコンを用いるため、上層の配線層からトレンチ配線(コンタクト)を経由して下層のポリシリコン層まで下がって接続され、さらに、下層のポリシリコン層から上層の配線層に引き上げて接続される。
【0219】
半導体装置100では、最上層に最上層配線構造20が形成され、その下層の配線構造層L4の配線層にヒータ・熱センサ配線110が形成されている。ヒータ・熱センサ配線110より下層の配線構造層L3の配線層に、配線ML210(ML210a、ML210b)、ML211(ML211a、ML211b)が形成されている。配線ML210より下層の配線構造層L2の配線層に、配線ML200、配線ML220(ML220a、ML220b)、配線ML221(ML221a、ML221b)、配線ML222(ML222a、ML222b)が形成されている。配線ML200、配線ML220より下層の配線構造層L1及び半導体基板SUBに、抵抗読み出し回路である比較器CMPを構成するトランジスタM230(M230a,M230b)が形成されている。
【0220】
熱センサ30、50は、その配線端部が、トレンチ配線T210a、T210bを介して下層の配線ML210a、ML210bの一端に接続されている。ML210aの他端は、トレンチ配線T221a、下層の配線ML221a、トレンチ配線T231aを介して、最下層の抵抗R231aの一端に接続されている。抵抗R231aの他端は、トレンチ配線T232a、上層の配線ML222a、トレンチ配線T232aを介して上層の配線ML211aの一端に接続されている。同様に、ML210bの他端は、トレンチ配線T221b、下層の配線ML221b、トレンチ配線T231bを介して、最下層の抵抗R231bの一端に接続されている。抵抗R231bの他端は、トレンチ配線T232b、上層の配線ML222b、トレンチ配線T232bを介して上層の配線ML211bの一端に接続されている。ML211a、ML211bの他端は、トレンチ配線T220a、T220bを介して、下層の配線ML220a、ML220bの一端に接続されている。配線ML220a、ML220bの他端は、トレンチ配線T230a、T230bを介してトランジスタM230a、M230bのゲート端子Gに接続されている。
【0221】
このように、熱センサ30,50と抵抗読み出し回路との間に、ポリシリコンによる熱伝導率の低い抵抗を接続することにより、熱センサ30,50の熱が逃げることを防ぎ、熱センサの感度を向上することができる。
【0222】
実施の形態33
本実施形態では、半導体装置100の熱検出回路の構成について説明する。半導体装置100では、例えば、図6等で示したような熱検出回路を用いることで、熱センサによる温度を検出することができる。
【0223】
しかし、熱センサの出力電圧には、半導体装置の素子のばらつきや周囲の環境等によりオフセットが生じる。特に、周囲の温度変化などの環境の変化により、出力電圧に生じるオフセットが時間と共に大きく変化するため、加速度を安定的に検出することが困難である。
【0224】
そこで、本実施形態では、熱センサのオフセットを動的に補正可能とするため、図52に示すような回路構成とする。
【0225】
図52は、本実施形態に係るヒータ駆動回路及び熱検出回路の回路構成例を示している。ヒータ駆動回路300は、図5のヒータ駆動回路に相当し、熱検出回路400は、図6の熱検出回路に相当する。
【0226】
ヒータ駆動回路300は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続された抵抗R1及びスイッチ回路SW1を有する。スイッチ回路SW1のオン/オフは、コントローラ60によって制御される。抵抗R1はヒータ40に相当し、スイッチ回路SW1は図5のトランジスタM1に相当する。スイッチ回路SW1がオンのとき、抵抗R1に電流が流れてヒータ40が発熱し、スイッチ回路SW1がオフのときヒータ40は発熱しない。
【0227】
熱検出回路400は、熱センサ30もしくは50に相当する抵抗R2、抵抗R2の抵抗値を読み出す抵抗読み出し回路410、抵抗読み出し回路410の出力に対しオフセット補正を行うオフセット補正回路420を備えている。
【0228】
抵抗読み出し回路410は、電流源CS1、抵抗R2、比較器CMP1を備えている。オフセット補正回路420は、スイッチ回路SW2、記憶素子MEM1、比較器CMP2を備えている。
【0229】
電流源CS1及び抵抗R2は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列に接続されており、電流源CS1及び抵抗R2の接点N1が、比較器CMP1の正端子(CIN)に入力される。比較器CMP1は、接点N1から読み出す電圧VN1と参照電圧VREFとを比較し、その差分値を増幅して読み出し電圧COUTを出力する。
【0230】
スイッチ回路SW2は、比較器CMP1の出力端子と、比較器CMP2の正端子もしくは記憶素子MEM1とを接続する。スイッチ回路SW2のオン/オフは、コントローラ60によって制御される。スイッチ回路SW2がオンのとき、比較器CMP1の出力端子と、比較器CMP2の正端子とが接続され、スイッチ回路SW2がオフのとき、比較器CMP1の出力端子と記憶素子MEM1とが接続される。
【0231】
記憶素子MEM1は、比較器CMP1と接続された場合に、比較器CMP1の出力電圧(読み出し電圧)COUTをオフセット電圧VOFFSETとして記憶する。比較器CMP2は、比較器CMP1と接続された場合に、比較器CMP1の出力電圧COUTと、記憶素子MEM1が記憶しているオフセット電圧VOFFSETとを比較し、その差分値を出力電圧VOUTとして出力する。
【0232】
コントローラ60によって、ヒータ駆動回路300のスイッチ回路SW1のオン/オフと、熱検出回路400のスイッチ回路SW2のオン/オフとが同期して切り替えられる。すなわち、ヒータ40のオン/オフのタイミングと、熱センサによる熱検出の出力もしくはオフセット記憶のタイミングを同期させる。
【0233】
スイッチ回路SW1及びSW2をオフすることにより、ヒータがオフの時、抵抗(センサ抵抗)R2による出力電圧COUTが、オフセット値VOFFSETとして記憶素子MEM1に記憶される。スイッチ回路SW1及びSW2をオンすることにより、ヒータがオンの時、抵抗R2による電圧COUTからオフセット値VOFFSETを差し引いた電圧を、出力電圧VOUTとして出力する。
【0234】
図53は、ヒータ40がオンの時とオフの時のヒータ40、熱センサ30、熱センサ50近傍の温度分布を示している。
【0235】
ヒータ40がオンの場合、図53(a)に示すように、半導体装置100の静止時と移動時とで温度分布が異なる。すなわち、半導体装置100が静止していると、温度分布は、ヒータ40を中心として熱センサ30側と熱センサ50側とで左右対称である。一方、半導体装置100が移動すると、ガスの流れが発生するため、温度分布は、ヒータ40を中心として熱センサ30側と熱センサ50側とで左右非対称となる。このため、熱センサ30と熱センサ50付近の温度差によって、加速度が検出できる。
【0236】
これに対して、ヒータ40がオフの場合、図53(b)に示すように、半導体装置100の静止時と移動時とで温度分布は同じである。すなわち、ヒータ40が発熱せずガスの温度が一定のため、半導体装置100が静止していても動作していても、温度分布は変化しない。このため、熱センサ30と熱センサ50付近の温度差が発生しないため、加速度は検出されない。したがって、ヒータがオフのときの熱センサの温度差は、加速度を含まないオフセット値となる。つまり、オフセット値は、ヒータ40による発熱の影響を受けない状態の熱センサの出力である。
【0237】
本実施形態では、ヒータ40をオフにした時に、このオフセット値を、図52の記憶素子MEM1に記憶させ、ヒータ40をオンにした時に、比較器CMP2でオフセット値を差し引くことにより、オフセット補正を行う。これにより、精度よく安定して加速度を検出することができる。
【0238】
また、ヒータを間欠的に動作させ、熱センサのオフセットの記憶と、熱センサの検出値のオフセット補正とを繰り返すことで、特性変動をリアルタイムに補正することができる。
【0239】
実施の形態34
本実施形態では、図52で示した熱検出回路を用いた半導体装置100の実際の測定結果について説明する。
【0240】
図54は、加速度センサである半導体装置100による加速度の検出動作を測定するための測定システムの構成を示している。ここでは、本発明の半導体装置100の出力を、他の加速度センサの出力と比較することで、検出動作を確認する。このため、比較対象としてリファレンスとなる加速度センサ501の出力も同時に測定する。加速度センサ501は、検出する加速度に応じた信号を出力する一般的な加速度センサである。
【0241】
図54に示すように、本発明の半導体装置100と加速度センサ501を同じ評価ボード502上に実装し、この評価ボード502に水平方向の振動を加える。
【0242】
評価ボード502上では、熱センサの抵抗値を読み出す抵抗読み出し回路410が半導体装置100に接続される。上述のように、抵抗読み出し回路410は、半導体装置100の内部に形成することもできるし、図54のように半導体装置100の外部に設けることもできる。
【0243】
図55は、図54の読み出し回路410の回路構成を示している。センサ抵抗Rs1及びRs2は、半導体装置100の熱センサ30,50に相当する抵抗である。センサ抵抗Rs1及びRs2の両端の計4端子を、読み出し回路410に接続する。
【0244】
読み出し回路410は、抵抗Rr1〜Rr4、オペアンプ411、帰還抵抗Rfを備えている。抵抗Rr1〜Rr4は、抵抗Rr4、Rr3、Rr2、Rr1の順に、電源電位VDDと接地電位GND間に直列接続されている。
【0245】
抵抗Rr4と抵抗Rr3の間の接点が、抵抗Rs1の一端に接続され、この接点電圧V1が抵抗Rs1に与えられる。抵抗Rr2と抵抗Rr1の間の接点が、抵抗Rs2の一端に接続され、この接点電圧V2が抵抗Rs2に与えられる。
【0246】
抵抗Rr3と抵抗Rr2の間の接点(電圧Vm)が、オペアンプ411の正端子に接続され、この接点電圧Vmがオペアンプ411に与えられる。抵抗Rs1の他端と抵抗Rs2の他端とが共通接続され、この接点がオペアンプ411の負端子に接続され、この接点電圧Vsがオペアンプ411に与えられる。さらに、オペアンプ411の出力端子が、帰還抵抗Rfを介して負端子にフィードバック接続される。
【0247】
読み出し回路410は、抵抗Rs1と抵抗Rs2の抵抗値の変化によって発生した電圧Vsを、オペアンプ411が増幅し、検出電圧(読み出し電圧)Vsensとして出力する。ここでは、各抵抗の抵抗値を、抵抗Rr1=Rr4=1kΩ、Rr2=Rr3=100Ω、Rf=10kΩとし、VDD=5Vを供給して読み出し回路410を動作させ、測定を行った。
【0248】
さらに、図54に示すように、半導体装置100のヒータ40にはパルスジェネレータ507を接続する。パルスジェネレータ507には、Agilent社の33250Aを用いた。パルスジェネレータ507から出力されるパルス信号により、間欠的にヒータ40のオンオフを繰り返す。ヒータ40のオンオフの周波数は4Hzとした。また、パルスジェネレータ507の発生するパルス信号は、パルス測定用のデジタルマルチメータ503で測定する。
【0249】
そして、半導体装置100に接続される読み出し回路410の出力電圧をTEG(Test Element Group)測定用のデジタルマルチメータ504で測定し、同時に加速度センサ501の出力電圧をリファレンス測定用のデジタルマルチメータ505で測定する。デジタルマルチメータ503〜505には、Agilent社の34410Aを用いた。デジタルマルチメータ503〜505の測定結果は、GPIB(General Purpose Interface Bus)を介して、制御用パソコン506に出力する。
【0250】
制御用パソコン506は、デジタルマルチメータ503で測定されたヒータのオンオフのパルスと、デジタルマルチメータ504で測定された読み出し回路410の電圧により、検出された加速度を求める。ヒータがオフの期間に、読み出し回路410の出力電圧の測定値の平均値を計算して、求めた平均値をオフセット値として記憶する。ヒータがオンの期間に、読み出し回路410の出力電圧の測定値から、記憶してあるオフセット値を差し引いてオフセット補正し、オフセット補正後の電圧を検出した加速度とする。
【0251】
すなわち、この測定例では、制御用パソコン506がオフセット補正を行っており、図52で示したオフセット補正回路420は、制御用パソコン506に相当する。
【0252】
なお、加速度センサ501の出力信号は、デジタルマルチメータ505で測定され、制御用パソコン506が、この測定結果を演算処理し、検出された加速度を求める。
【0253】
図56は、図54の測定システムの測定結果を示している。図56では、横軸は時間となっており、時間的に変化する加速度に対する半導体装置100及び加速度センサ501の応答を示している。横軸に対し、図面左側の縦軸は読み出し回路410が出力する出力電圧の目盛りであり、図面右側の縦軸は加速度センサ501が検出する加速度の目盛りである。
【0254】
点線の折れ線(a)は、リファレンスとなる加速度センサ501により検出された加速度であり、これが評価ボード502に加えられた加速度である。一点鎖線の折れ線(b)は、読み出し回路410から出力されたオフセット補正前の本発明の出力電圧である。図55のVSENS(図52のCOUT)に相当する。実線の折れ線(c)は、折れ線(b)の出力電圧に対しオフセット補正したオフセット補正後の本発明の出力電圧である。図52のVOUTに相当する。
【0255】
リファレンスである折れ線(a)と、本発明の折れ線(b)とを比較すると、折れ線(b)に示されるように、オフセット補正前は、オフセット量の時間変化によって出力電圧のドリフトが起こり、加速度センサ501の検出する加速度との差が大きい。これに対し、本発明の折れ線(c)に示されるように、オフセット補正後は、オフセット補正によってドリフトが解消し、加速度センサ501の検出する加速度に近い出力波形が得られていることが分かる。したがって、図52のようなオフセット補正回路によりリアルタイムに補正を行うことで、図56に示すように、通常の加速度センサと同様に、加速度検出動作を行うことができた。
【0256】
実施の形態35
本実施形態では、半導体装置100のオフセット補正回路をアナログ回路により構成した例について説明する。
【0257】
図57は、本実施形態に係る半導体装置100における熱検出回路の回路構成例を示している。図57は、図52で示した記憶素子MEM1の具体的な回路構成を示しており、その他の構成は図52と同様である。
【0258】
図57では記憶素子MEM1として、容量Cref及び入力抵抗Rrefを用いる。入力抵抗Rrefの一端が、スイッチ回路SW2を介して比較器CMP1の出力端子に接続され、入力抵抗Rrefの他端が、容量Crefの一端及び比較器CMP2の負端子に接続される。容量Crefの他端が接地電位GNDに接続される。
【0259】
容量Crefと入力抵抗Rrefは、ローバスフィルタを構成する。したがって、出力電圧COUTのオフセット値のうち、高周波成分を除去し低周波成分のみを取り出して、容量Crefに記憶する。
【0260】
このように、本実施形態では、図52と同様の構成により、リアルタイムなオフセット補正が可能である。さらに、記憶素子MEM1を、容量Crefと入力抵抗Rrefで構成することにより、簡易に回路を構成できるとともに、ローパスフィルタとして出力電圧COUTに含まれる高周波ノイズの影響を防ぐことができる。
【0261】
実施の形態36
本実施形態では、半導体装置100のオフセット補正回路をデジタル回路により構成した例について説明する。
【0262】
図58は、本実施形態に係る半導体装置100における熱検出回路の回路構成例を示している。図58は、図52で示したオフセット補正回路420をデジタル回路で構成しており、その他の構成は図52と同様である。
【0263】
図58では、オフセット補正回路420は、AD変換器ADC1、記憶素子MEM1、デジタルフィルタDF1、減算器SU1を有している。
【0264】
AD変換器ADC1は、比較器CMP1の出力信号をデジタル信号に変換し、減算器SU1もしくは記憶素子MEM1へ出力する。
【0265】
ヒータがオフの時、このデジタル信号を記憶素子MEMに記憶させる。デジタルフィルタDF1は、記憶素子MEMが記憶したデジタル信号のうち、高周波成分を除去し低周波成分だけをオフセット値として減算器SU1へ出力する。ヒータがオンの時、減算器SU1は、AD変換器ADC1の出力するデジタル信号から、記憶素子MEM1で記憶したオフセット値を減算し、減算結果をデジタル信号の出力DOUTとして出力する。
【0266】
このように、本実施形態では、図52と同様の構成により、リアルタイムなオフセット補正が可能である。さらに、オフセット補正回路をデジタル回路により構成することで、デジタル信号処理により実現できるため、マイクロコンピュータ等を用いて構成することができる。マイクロコンピュータ等ではソフトウェアによる演算処理を行うため、アナログ回路を形成することなく、実現が可能である。
【0267】
実施の形態37
本実施形態では、半導体装置100の抵抗読み出し回路で用いられる比較器の構成例について説明する。図46,47,49,52,55等で示したように半導体装置100の抵抗読み出し回路410は比較器CMP(もしくはCMP1)を有している。この比較器CMPには、例えば通常のオペアンプを使用することができる。
【0268】
本実施形態では、比較器CMPとして、オペアンプの代わりにチョッパ式アンプを使用する。図59は、本実施形態の比較器CMPの構成を示している。図59に示すように、比較器CMPは、チョッパ式アンプにより構成されており、2つの切り替えスイッチ601,603、差動アンプ602、低域通過フィルタ604を有している。切り替えスイッチ601、差動アンプ602、切り替えスイッチ603、低域通過フィルタ604の順に直列に接続されている。切り替えスイッチ601,603は、2入力2出力のスイッチ回路である。切り替えスイッチ601と切り替えスイッチ603は同一のクロック信号(切替信号)で同時に切り替えが行われる。
【0269】
切り替えスイッチ601は、参照電圧VREFとCIN(比較器CMPの入力)のそれぞれを、差動アンプの負入力AINBと正入力AINTとのいずれかに接続する。差動アンプ602は、切り替えスイッチ601から負入力AINB、正入力AINTに入力される信号を差動増幅し、増幅された信号を負出力AOUB、正出力AOUTに出力する。切り替えスイッチ603は、差動アンプ602の負出力AOUBと正出力AOUTのそれぞれを、低域通過フィルタ604の負入力FINBと正入力FINTとのいずれかに接続する。低域通過フィルタ604は、切り替えスイッチ603から負入力FINB、正入力FINTに入力される信号から高周波成分を除去し、低周波成分の信号をCOUT(比較器CMPの出力)に出力する。
【0270】
図60は、図59で示したチョッパ式アンプで構成された比較器CMPの動作を示している。チョッパ式アンプは切り替えスイッチ601,603の状態により、正相と逆相の2つの状態を有している。切り替えスイッチ601,603に供給されるクロック信号により、正相と逆相とを交互に繰り返す。
【0271】
図60(a)は正相の場合の信号の流れを示している。正相の場合、切り替えスイッチ601は、VREFとAINBとを接続し、CINとAINTとを接続する。そして、切り替えスイッチ603は、AOUBとFINBとを接続し、AOUTとFINTとを接続する。したがって、正相の場合、CINから入力された信号は、実線矢印610に示すように、CIN−AINT−AOUT−FINT−COUTと伝わる。
【0272】
また、図60(b)は逆相の場合の信号の流れを示している。逆相の場合、切り替えスイッチ601は、VREFとAINTとを接続し、CINとAINBとを接続する。そして、切り替えスイッチ603は、AOUBとFINTとを接続し、AOUTとFINBとを接続する。したがって、逆相の場合、CINから入力された信号は、点線矢印611に示すように、CIN−AINB−AOUB−FINT−COUTと伝わる。つまり、正相と逆相ではCINから入力された信号が、差動アンプ602の正入力AINTと負入力AINBとのいずれを通るのかが異なる。
【0273】
ここで、差動アンプ602が素子ばらつきなどの影響で入力にオフセット電圧ΔVを持ち、差動アンプ602のゲインをGAMPとする。そうすると、CINに信号が全く入力されていない、つまり、CIN=VREFとしたとき、チョッパ式アンプが正相の期間では、差動アンプ602の出力にはΔV×GAMPの電圧が出力され、チョッパ式アンプが逆相の期間では、差動アンプ602の出力には−ΔV×GAMPの電圧がオフセットとして出力される。
【0274】
図61、図59、60のFINTとCOUTでの信号波形を模式的に表したものである。チョッパ式アンプが正相と逆相を繰り返すことに応じて、FINTでの信号は、ΔV×GAMPと−ΔV×GAMPを交互に繰り返す。このFINTの信号が、低域通過フィルタ604を通ると、繰り返されている信号は平均化されて、ΔV×GAMPと−ΔV×GAMPの平均値、つまり0VがCOUTに出力される。
【0275】
このように、比較器CMPをチョッパ式アンプにより構成することにより、差動アンプのオフセットの影響が出力に現れないので、差動アンプのオフセット電圧よりも小さい微小な信号を正確に増幅することができる。したがって、半導体装置100の抵抗読み出し回路にこの比較器CMPを用いることで、熱センサの温度を正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0276】
100 半導体装置

10 積層体
20 配線層
20a 壁配線
20b 壁配線
21 保護層
22 ガス流路
25 板状部材
30 熱センサ
31 ランド
32 ランド
33 パターン配線部
40 ヒータ
41 ランド
42 ランド
43 パターン配線部
50 熱センサ
51 ランド
52 ランド
53 パターン配線部
60 コントローラ
61 演算処理部

SUB 半導体基板
L1-L3 配線構造層
R30-R50 パターニング領域

23 キャビティ
24 空洞部
110 ヒータ・熱センサ配線
110a ミアンダ配線部
110b 戻り配線部
111 カバー膜
120−122 配線パターン
130−131 ダミーメタル
300 ヒータ駆動回路
400 熱検出回路
410 抵抗読み出し回路
420 オフセット補正回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状のガス流路が設けられた積層体と、
前記積層体に対して設けられると共に、前記ガス流路の底面にて露出する発熱部と、
前記積層体に対して設けられると共に、前記ガス流路の前記底面にて露出し、かつ前記ガス流路の延在方向において前記発熱部を挟み込むように配置された複数の感温部と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記積層体は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、絶縁層と配線層とを含む配線構造層と、
前記配線構造層上に設けられ、前記ガス流路が設けられた最上層配線構造と、
を備え、
前記発熱部は、前記配線構造層に含まれる前記絶縁層を介して、前記半導体基板に対して熱分離されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹状のガス流路の周囲には、配線構造の凸形状で形成された壁配線を持つことを特徴とした請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記発熱部及び前記感温部は、前記ガス流路の前記底面においてパターニングされた導電線を含み、
前記ガス流路を上面視すると、前記ガス流路には、前記導電線のパターニングによって形成された複数のパターニング領域が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記発熱部及び前記感温部は、アルミニウム、銅、タングステン、金、白金、バナジウム、チタン、鉄、ニッケルもしくはこれらの合金や酸化物もしくは窒化物で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記発熱部及び前記感温部は、前記ガス流路の前記底面においてパターニングされた導電線を含み、
前記ガス流路を上面視すると、前記ガス流路には、前記導電線のパターニングによって形成された少なくとも1つの発熱部と少なくとも2つの感温部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記発熱部及び前記感温部は、前記ガス流路の前記底面においてパターニングされた導電線を含み、
前記ガス流路を上面視すると、前記ガス流路には、前記導電線のパターニングによって形成された少なくとも1つの発熱部と少なくとも2つの感温部を有し、前記感温部は前記発熱部に対して対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記発熱部及び前記感温部は、前記ガス流路の前記底面においてパターニングされた導電線を含み、
前記ガス流路を上面視すると、前記ガス流路には、前記導電線のパターニングによって形成された少なくとも1つの発熱部と少なくとも4つの感温部を有し、前記感温部は前記発熱部に対して4回回転対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記感温部もしくは前記発熱部もしくは両者の表面は凸凹の形状となっていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記感温部もしくは前記発熱部と絶縁層との接触面積は、前記感温部もしくは前記発熱部の絶縁層に接しない部分の表面積よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記発熱部を駆動する駆動部と前記発熱部との間の距離は、前記発熱部と前記感熱部の間の距離より大きいことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記感温部に接続される検出回路と前記感温部の間の距離は、前記発熱部と前記感熱部の間の距離より大きいことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記発熱部を構成する配線層と半導体基板との中間の配線層にグラウンドもしくは一定電位に固定された配線領域を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記配線領域は前記発熱部を駆動する駆動部を含む回路ブロックでグラウンドもしくは一定電位に固定されていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記発熱部は、当該発熱部の発熱量が周期的に変化する態様にて駆動されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記発熱部は、導電線によって構成され、
当該導電線は、時分割して異なる方向に通電されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記発熱部を駆動する駆動部を更に備え、
前記駆動部は、スイッチング信号に基づいて、前記発熱部に対する電流の供給状態を制御することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
複数の前記感温部は、複数のPN接合部に対して個別接続されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記複数の感温間の距離は、前記複数のPN接合部間の距離よりも小さいことを特徴とする請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
複数の前記感温部は、前記感温部の温度変化を検出する複数の検出回路に個別接続されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項21】
複数の前記感温部のうち、2つの感温部での温度に対応する前記検出回路の出力電圧を比較する比較回路を有することを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記比較回路は、半導体装置に加速がかかっていない時の前記検出回路の出力電圧を基準とし、その基準電圧よりも加速がかかっている時の検出回路の出力電圧が高いか低いかで、加速度を検知することを特徴とする特徴とする請求項21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記発熱部の発熱量が周期的に変化する態様にて駆動される請求項20乃至22のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記感温部での温度に対応する前記検出回路の出力電圧の発熱の周期的変化に対する位相差を検出して加速度を検知することを特徴とする特徴とする半導体装置。
【請求項24】
前記発熱部の発熱量が周期的に変化する態様にて駆動される請求項20乃至22のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記感温部での温度に対応する前記検出回路の周期的に変化する出力電圧を発熱の周期と同じ周期の信号でミキシングした信号の中の低周波の成分の位相差を検出することを特徴とする特徴とする半導体装置。
【請求項25】
前記積層体上に設けられ、前記ガス流路を上方から覆うカバー部材を更に備えることを特徴とする請求項1乃至24のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記最上層配線構造は、前記配線構造層に含まれる前記絶縁層及び前記配線層の少なくとも一方と同材料から成る層を含むことを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記積層体上に設けられ、前記ガス流路を上方から覆う前記カバー部材は前記配線構造により形成された凸部が延長したものであることを特徴とする請求項25に記載の半導体装置。
【請求項28】
積層体に対して発熱部を形成し、
前記積層体に対して、前記発熱部を挟み込む態様にて、複数の感温部を形成し、
前記発熱部及び複数の前記感温部の配置方向に沿って延在し、前記発熱部及び複数の前記感温部を底面において露出させる凹状のガス流路を設ける、
半導体装置の製造方法。
【請求項29】
前記発熱部及び前記感温部は、前記ガス流路の前記底面においてパターニングされた導電線を含み、
前記ガス流路を上面視すると、前記ガス流路には、前記導電線のパターニングによって形成された複数のパターニング領域が設けられることを特徴とする請求項28に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図58】
image rotate

【図59】
image rotate

【図60】
image rotate

【図61】
image rotate


【公開番号】特開2012−189571(P2012−189571A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190906(P2011−190906)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】