説明

半導体装置用のバックエンド工程伝送線路構造(バックエンド工程処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法)

【課題】 半導体装置用のバックエンド工程伝送線路構造を提供する。
【解決手段】 半導体装置用の伝送線路構造(300)を形成する方法は、第1のメタライゼーション層上に層間絶縁膜を形成するステップと、前記層間絶縁膜の一部を除去するステップと、前記層間絶縁膜の一部の除去により生じた一つ以上のボイド(308)内に犠牲材を形成するステップとを含む。前記層間絶縁膜上に形成された第2のメタリゼーション層中に信号伝送線路(302)が形成され、該信号伝送線路(302)は前記犠牲材上に設けられている。前記第2のメタリゼーション層中に含まれる誘電体の一部が除去されて前記犠牲材が露出され、このとき該犠牲材の一部は前記信号伝送線路(302)を貫通して形成された複数のアクセスホール(310)を介して露出される。前記犠牲材は除去され、それにより前記信号伝送線路(302)の下部にエアギャップが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には半導体製造プロセスに関し、より具体的には、半導体装置のバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、MOS(金属・酸化膜・半導体の三層構造)またはシリコンチップのプレーナ型主表面の表層に集積されるバイポーラ・トランジスタで形成されるものが代表的である。さまざまなトランジスタ間、およびある種のトランジスタとチップ周縁部に沿って配置されたアクセスピン間の電気配線は、従来その典型として二層(またはそれ以上)の配線構造の形態、すなわち互いに平行に配置されかつ適切な絶縁膜によって当該チップのプレーナ型表層から絶縁された二つ(またはそれ以上)の本質的に平坦な表面にそって形成されたメタライゼーション・ストリップとして形成された導電ラインの形態を取ってきた。絶縁膜中の配線ビア(窓)は回路の配線要求に応じてどこでも必要な箇所に形成可能である。
【0003】
具体的にはマイクロストリップ構造は、主として配線が密でないラジオ波(RF)CMOS/SiGeチップに用いられている。一般にマイクロストリップ構造は、損失の多い下部の基板材料からの信号の絶縁性に優れている。図1に示すように、典型的なマイクロストリップ伝送線路構造10は信号伝送線路12、シールド用下地グラウンド面14、およびこれらの間に配置された層間絶縁材(ILD)16を備えている。シールド材14と信号伝送線路12は標準的な配線部品として製作されているので、これらは絶縁材16により封入されている。このような絶縁材の材料としては、例えば二酸化シリコン(SiO)、SiCOH、SiLK、FSG、USGなどが挙げられる。これらの材料の誘電率は概ね、約2.5から約4.1の範囲にある。
【0004】
一方、コプレーナ導波路は一般に、例えば信号線の下に明示的なリターンパスを形成するのが困難なCMOSチップといった、配線密度が比較的高いものに用いられている。信号を確実に返送するには、信号線として使われたものと同じルーティング金属層を使用するのが唯一の方法である。それゆえ、図2に示すように、代表的なコプレーナ導波路伝送線路構造20は信号伝送線路22と、この信号伝送線路22と同じ配線層に配置された隣接する2本のシールドライン24を備えている。コプレーナ導波路構造20のシリコン基板26からの距離は一定である。サイドシールドを有するマイクロストリップ伝送線路(すなわちマイクロストリップとコプレーナ構造の双方の特徴を有する)と呼ばれる第3の構造も、従来の伝送線路構造に用いられている。
【0005】
図3に示すように、代表的なサイドシールドを有するマイクロストリップ伝送構造30は、信号伝送線路32、シールド用グラウンド面34、およびこれらの間に配置された層間絶縁材(ILD)36を備えている。ただしこれらに加え、シールドとしては信号伝送線路32と同じ配線層に設けられたシールドライン38も含まれている。シールドライン38は導体が充填されたビア40を介して、グラウンド面34と電気的に接続されている。マイクロストリップ構造10の場合と同様、従来のコプレーナ素子もILD材に封入されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いずれの例においても、上記のようにILD材を使用した場合誘電損失が発生し、BEOL配線の伝送線路のQ値が低下する。したがって、このようなシールド伝送線路構造を誘電率のより低い材料と組み合わせて製作し、それにより伝送線路の性能を向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術の上述した欠点・欠陥は、以下の半導体装置用の伝送線路構造の形成方法により、克服または軽減される。好適な実施形態において、この方法は第1のメタライゼーション層上に層間絶縁膜を形成するステップと、前記層間絶縁膜の一部を除去するステップと、前記層間絶縁膜の一部の除去により生じた一つ以上のボイド内に犠牲材を形成するステップとを含む。前記層間絶縁膜上に形成された第2のメタライゼーション層中に信号伝送線路が形成され、該信号伝送線路は前記犠牲材上に設けられている。前記第2のメタライゼーション層内に含まれる誘電体の一部が除去されて前記犠牲材が露出され、このとき該犠牲材の一部は前記信号伝送線路を貫通して形成された複数のアクセスホールを介して露出される。前記犠牲材は除去され、それにより前記信号伝送線路の下部にエアギャップが形成される。
【0008】
他の実施形態において、半導体装置用のバックエンド工程伝送線路構造は、第1のメタライゼーション層上に形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜中に形成された一つ以上のボイドとを含む。第2のメタライゼーション層中に信号伝送線路が形成され、該信号伝送線路は前記一つ以上のボイド上に配置されている。前記信号伝送線路は、前記一つ以上のボイドの形成に用いられた犠牲材を除去するためアクセス可能となるよう該信号伝送線路を貫通して形成された複数のアクセスホールをさらに有し、前記一つ以上のボイドは前記信号伝送線路の下部にエアギャップを形成する。
【0009】
さらに他の実施形態において、バックエンド工程マイクロストリップ伝送線路構造は、ひとつのメタライゼーション層上に形成された信号伝送線路と、他のメタライゼーション層上に形成されたグラウンド面とを含む。エアギャップが前記信号伝送線路と前記グラウンド面との間に設けられ、前記エアギャップは層間絶縁膜内に形成されている。前記信号伝送線路と前記グラウンド面のいずれかは、前記エアギャップの形成に用いられた犠牲材を除去するためアクセス可能となるよう該信号伝送線路または該グラウンド面を貫通して形成された複数のアクセスホールをさらに有する。
【0010】
さらに他の実施形態において、バックエンド工程コプレーナ導波路伝送線路構造は、第1のメタライゼーション層上に形成された信号伝送線路と、前記第1のメタライゼーション層上の前記信号伝送線路に隣接する一対のコプレーナ・シールドラインとを含む。エアギャップが前記信号伝送線路の下部に設けられ、前記エアギャップは層間絶縁膜内に形成されている。前記信号伝送線路は、前記エアギャップの形成に用いられた犠牲材を除去するためアクセス可能となるよう該信号伝送線路を貫通して形成された複数のアクセスホールをさらに有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここに開示するのは半導体製造のバックエンド工程(BEOL)におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法であり、その集積スキームは結果として、より誘電損失の低い銅をBEOL伝送線路構造として用いることとなる。ただし、ここに記載の方法の実施形態は銅のBEOLそのものに限定されるものではなく、非限定的に例示するアルミニウム、タングステン、金など種々の材料を用いて製造される他の配線にも適用可能であることを理解されたい。一つの実施形態においては、集積方法は配線の誘電率、ひいてはマイクロ波帯で特に増加する容量性クロストークを低減するため信号線とグラウンド面との間にエアギャップを形成することとなる。さらに、これ以降用いられる「エアギャップ」の語は信号線とグラウンド面との間に空気が存在する状態のみならず、あらゆる気相の物質または真空の存在を記述することを意図するものである。
【0012】
図4〜図12全般において、本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程が示されている。まず図4において、シングルダマシン法によってグラウンド面102が形成される。具体的には、絶縁膜106に形成された開口部内にライナー材104(例えば窒化タンタルまたはタンタル)が成膜され、その後BEOLメタライゼーション108(例えば銅)がライナー材上に(例えば)電気めっき、スパッタリング等により成膜され、その後平坦化される。図5に示すように、グラウンド面102はその後、BEOLメタライゼーション108の一部にリセスエッチングをおこない、もう1層のライナー材を成膜しそれを平坦化してトップライナー部110を形成することにより完全に封入される。このように封入されたグラウンド面102はメタライゼーション108の原子の拡散に対し、また後述する後工程による酸化に対しても耐性を持つ。
【0013】
好適な実施形態において、配線108の上部表面は絶縁膜106の上部表面に対し窪んだ位置にある。金属を窪ませるには、時間管理によるウエットエッチングをおこない所望の深さを得る方法がある。例えば、水、酢酸、過酸化水素水(例えば濃度比率をそれぞれ3リットル、15ミリリットル、9ミリリットルとする)からなる溶液に約2分半浸すと約600〜約800オングストローム(Å)の深さが得られる。その後バリアメタル層110が成膜され、これは後工程がおこなわれる間、銅を封入し保護する機能を果たす。具体的な実施例としては、膜厚100Åのタンタル(Ta)層を形成しその後膜厚400Åの窒化タンタル(TaN)層を形成する。または、バリアメタル層110を誘電体またはいかなる数の他の好適な金属バリアで形成してもよい。
【0014】
メタライゼーションを封入するさらに他の方法として、導電体を規定するのに使うものと同じマスクを逆極性のフォトレジストとともに使用してブランケットバリア110をパターニングし、最表層からバリア層をエッチングしてもよい。配線を封入するのに使用できる他の材料としては、例えばコバルト−タングステン−フォスファー(CoWP)およびNi−Au合金があり、これらは例えば電気めっきおよび無電解めっきにより成膜できる。
【0015】
図6はコプレーナ伝送線路の実施形態による層間絶縁(ILD)膜114内のビア112の形成を示す。ILD層114は例えば窒化シリコン(Si)膜116に続いてより厚いSiO層118を形成し、その後リソグラフィによりビアを規定するパターニングをおこなって形成してもよい。その後、ライナー材とメタライゼーション材は開口部内に形成され、公知の方法で平坦化されて充填されたビア112が形成される。
【0016】
図7においては、平行なトレンチ120がILD層114内のビア112の間に形成される。または、元の窒化層116をトレンチ120の底部に残し、上述のようにグラウンド面を封入・保護させてもよい。トレンチは相互間に絶縁支持部材122が形成されるよう配置される。このステップにおけるリソグラフィによるパターニングは、支持部材122がグラウンド面102の長さ方向に延びる連続したレール状となるよう、または支持部材122がグラウンド面102の長さ方向に配列された複数の独立のポスト状となるようデザインしてもよい。言い換えれば、支持部材122をポスト状としたい場合はトレンチ120をグラウンド面102の長さ方向(図の奥行き方向)沿いのいくつかの箇所で相互に「連結」されるよう形成するとよい。さらに、支持部材122は2本またはそれ以上の平行なレール状として、または一連の個別ポスト状として形成してもよいことを付記する。次に図8においては、トレンチ内に犠牲材124が形成され平坦化される。犠牲材124は例えば、後にILD層およびBEOLメタライゼーション材に対して選択的に除去可能なものから選ばれた有機低誘電率誘電ポリマーで形成してもよい。
【0017】
犠牲材として好適に用いられる材料としては、SiLK(R)、ダイアモンドライク・カーボン(DLC)、ポリノルボルネン(PNB)などが挙げられる。SiLK(R)はダウ・ケミカル社が製造する半導体誘電体で、例えばポーラスSiLK(R)などさまざまな組成のものが入手可能である。この独特な誘電体はγ−ブチロラクトン、独占権下のBステージポリマーおよびメシチレンからなるポリマー樹脂である。この目的に供し得るもう一つの材料はDLCで、これはコーティングを含むアモルファス・カーボンで、炭素原子のうちある割合のものがダイアモンドに類似した結合をなしている。これらの材料は酸化され得る材料が露出していない限り、酸素プラズマの露光により除去することができる。このような有機材料を除去する際に酸化され得る材料が露出する可能性がある場合は、H/CO/CO/Nタイプのプラズマによる除去をおこなってもよい。これらの混合ガスは反応性イオンエッチングの現場に通じた当業者には周知のものである。ポリノルボルネンは約400〜425℃で熱分解する犠牲ポリマーである。したがって、簡単な熱処理により、この犠牲材を除去することができる。
【0018】
図9は信号線層メタライゼーション構造の形成を示す。図示の通り、ILD層114の上に別の絶縁膜126が形成され、その後信号伝送線路128とコプレーナ・シールドライン130の形成用に規定された開口部が絶縁膜126中に形成される。ただし、図示のごとく、信号伝送線路のパターニングは絶縁膜126に複数のプラグ132を残すように実行される。したがって、ライナーおよびメタライゼーション材がコプレーナ・シールドライン130および信号伝送線路128に加えられたとき、その結果形成される信号伝送線路メタライゼーションはその長さ方向に完全に連続した形状とはならない。
【0019】
グラウンド面102の場合と同様、信号伝送線路128とコプレーナ・シールドライン132用BEOLメタライゼーションの一部はその上に形成されて信号線層メタライゼーション構造を封入するトップライナー134の形成に備えリセスエッチングされる。これは図10に示されている。図11においては、絶縁膜126の、信号伝送線路128の各側面に隣接する部分を除去するようなパターニング・ステップが実行され、それによりボイド136が形成されて犠牲材124の外側の端面が露出する。加えて、信号伝送線路128のパターニング後残っていた絶縁プラグ132も除去されて、アクセスホール138が形成される。信号伝送線路128に沿っていくつかの箇所でボイド136とアクセスホール138とを連結することにより、図12に示すとおり(例えばOプラズマエッチングにより)犠牲材124の除去が可能となる。
【0020】
犠牲材としてSiLK(R)またはDLCが選択された場合、酸素または水素プラズマの露光によりこれらの材料を分解し除去できる。このプロセスに関する更なる詳細は、米国材料学会発行のJournal of Material Research、1996年第6巻第7号1484ページ掲載のA.JoshiとR.Nimmagadda著「Erosion of diamond films and graphite in oxygen plasma」に記載されており、ここに引用することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。ポリノルボルネンについては約425℃の熱処理により、信号線を除去することができる。この除去プロセスに関する更なる詳細は、Journal of Microelectromechanical Systems、2001年第10巻第3号400ページに掲載のDhananjay Bhusariらによる「Fabrication of Air−Channel Structures for Microfluidic, Microelectromechanical, and Microelectronic Applications」記載されており、ここに引用することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。以上の結果得られる伝送線路構造はこのように、ILD層114中の信号伝送線路128の下部、および信号線層の信号伝送線路128に隣接して(ボイド136に隣接して)低誘電率(エア)ギャップ140を含むものとなる。
【0021】
図13はサスペンデッド伝送線路構造のデザインとマスクレイアウトを示す上方からの(平面)図である。アクセスホール138のデザインにおいては、信号の確実な伝播を可能とするようその配置に特別な注意が払われる。図13の実施形態では、アクセスホールは電流障害を最小限とするため導電体の周縁に沿って直交するように配置されている。また、アクセスホール138の大きさは犠牲材のサイドエッチングが可能な程度に大きく、かつ信号線の抵抗の増大を最小限に抑えるよう小さくするのがよい。
【0022】
犠牲材を除去した後、サスペンデッド伝送線路構造を封入するにはポリイミドまたはカプトンのシート(図示せず)を成膜して装置を完全に覆うという方法がある。ポリイミド/カプトン膜は更なるBEOL処理に求められるテストパッドとの接触をなすようパターニングされる。
【0023】
図18〜図24は(図10以降に形成される構造に相当する段階で)実行可能であり、サスペンデッド伝送線路構造をいかにして封入するかの説明に有用な、別のプロセスの実施形態を示す。図19において、絶縁膜142(好ましくはSi)およびILD層144(好ましくはSiO)が信号線構造上に成膜される。図20に示すように、リソグラフィによるパターニングおよびエッチングの各ステップにより、信号線128の上部にキャビティ146が形成される。このキャビティのエッチングの間、絶縁材も、信号線128の周囲のキャビティ領域から信号線128に含まれる除去孔を通じて除去される。
【0024】
その後、図21において、エッチングされた領域は前述のような犠牲材148(例えばSiLK(R)またはDLC)がさらに充填され、平坦化される。この除去プロセスによってすべての犠牲材の層が除去されるように、はじめにその下部に形成された同じ犠牲材がここで再利用される。図22では、さらに別の絶縁膜152が層150(層142、144を一括した層)の上に形成され、この絶縁膜152中にビア154がパターニングされ、エッチングされる。これらのビア154は犠牲材148へのアクセスを可能とするもので、図23に示す集積スキームの最終ステップの間に除去される。最後に、図24は最終封入ステップを示し、ここでは小さいビア154を閉鎖するまた別の絶縁膜158の形成もおこなわれ、これによりサスペンデッド伝送線路構造は密封される。
【0025】
次に図25〜図28においては、図12以降の段階に相当する、サスペンデッド伝送線路構造を封入するさらに別の方法が示され、ここではキャリア基板が封入プロセスに用いられる。キャリア基板の材料としてはAl、ガラス、シリコンなどが挙げられるが、これらに限定されない。層間絶縁材160(例えばSiO)が図26に示すようにこのようなキャリア基板162上に成膜される。その後キャリア基板162は図27に示すように、例えば低温ボンディング、共晶ボンディングなど多くの周知の標準的なプロセスのいずれかにより、サスペンデッド伝送線路構造に接合される。
【0026】
続いてキャリア基板162は、例えばウエットエッチング、プラズマエッチング、平坦化、研磨など多くのプロセスのいずれかにより除去される。方法を問わず、キャリア基板162の除去は図28に示すようにILD層160上で終了させるのがよい。この封入プロセスに続いて、通常のBEOL処理をおこなってもよい。
【0027】
エア誘電体を持つグラウンド面を有するコプレーナ伝送線路構造のみならず、上述のプロセスを他の種類の伝送線路構造の形成に適用することも有用である。例えば、図14はマイクロストリップ伝送線路構造300の実施形態を示し、これには封入された信号伝送線路302、封入されたグラウンド面304、および支持部材306が含まれている。上記と同様な方法にてILD層と信号線層の双方にボイドを形成することによりエアギャップがさらに形成される。ここにおいても、信号伝送線路302はILD層にボイドを形成するための犠牲材の除去を可能とする複数のアクセスホール310を含んでいる。図15は反転されたマイクロストリップ伝送線路400の実施形態を示し、ここでは信号伝送線路402はグラウンド面404より下部のメタライゼーション層に形成されている。したがって、エアギャップ絶縁体のためのボイド408の形成には、アクセスホールは信号伝送線路402ではなくグラウンド面404にまず形成される。
【0028】
図16においては、別のコプレーナ伝送線路500の実施形態が示され、ここでは信号伝送線路504の直下にグラウンド面は設けられていない。その代わりに、コプレーナ・シールドライン506は相互に電気的に絶縁されているが、それぞれビア510を介して下層ライン508と連結されている。図17はコプレーナ導波路構造600が示され、ここではグラウンド面はサスペンデッド信号線604と同じの2本のシールドライン606を含んでいるのみで、下地金属層とは接続されていない。
【0029】
サスペンデッド信号線の構成のさらに別の実施形態として、図29〜図31の工程図に示すようなストリップライン伝送線路がある。図25〜図28において規定された封入プロセスの最終段階で得られた構造に対しさらにBEOL処理がおこなわれる。図30において、ビアコンタクト164はシングルダマシン集積法を用いて形成され、2本のシールドライン130との電気的コンタクトを得る。続いて、図31においてシングルダマシン集積法にてグラウンド面166が形成されるが、ただしビアコンタクト164とグラウンド面166はデュアルダマシン集積プロセスを用いて形成してもよい。
【0030】
グラウンド面を含む伝送線路の実施形態においては、かかるグラウンド面は、必ずしも信号伝送線路層の直下または上部のメタライゼーション層に形成する必要はない。言い換えればグラウンド面は、例えば異なるラインインピーダンス値を得るために信号伝送線路から数層下に配置されてもよい。グラウンド面をも含むコプレーナ伝送線路構造の場合は、コプレーナ・シールドラインは多層の配線/ビアを介してグラウンド面と電気的に接続されてもよい。
【0031】
最後に、図32〜図35はマイクロストリップ・エアギャップ伝送線路構造(例えば図14に示したもの)と、SiO誘電体を有する従来のマイクロストリップ構造とを比較した種々のシミュレーション結果を示す。図32および図33に示すとおり、サスペンデッド配線はSiO誘電体構造に比べ、マイクロ波帯の広い範囲にわたり低い損失を示している。具体的には、図32のグラフは挿入損失の大きさと周波数の対応(SパラメータS21)をプロットしており、図33は減衰係数と周波数の対応をプロットしている。図34にさらに示すとおり、サスペンデッド配線構造は寄生容量はより低く、また図35に示すようにインピーダンスはより高い。
【0032】
以上から明らかなように、上述の伝送線路構造の実施形態では、信号線とリターンパスとの間にエアギャップを形成したことにより減衰率が低くまた(ラジオ波/マイクロ波帯では通常高いとされる)誘電損失も低減されている。しかも、配線有効誘電率の減少により容量性クロストーク電圧が低下し、これにより信号伝播の遅延が低減されている。更なる利点として、使用可能な特性インピーダンスの範囲の拡大により信号のブロードバンド帯域が拡大することが挙げられる。損失の多い配線では異なる周波数成分を有する信号は異なるスピードで進行し、それゆえエア誘電体を採用すると散乱も低減される。さらには、大部分空気中に集中する電磁波の伝播からの簡易化された信号モデリングからも利点が得られる。構造的観点からは、エアギャップ構造の伝送特性は半導体表面の状態およびバルク基板の物性の影響を受けにくい。
【0033】
本発明を好適な実施形態との関連において説明したが、本発明の範囲を逸脱することなくさまざまな変更が可能であり、また各構成要素は均等物によって置き換えうることは、当業者には理解できるところである。また、特定の条件または材料を適用すべく本発明の教示内容に対し多くの改変を本発明の本質的な趣旨を逸脱することなく加えることも可能である。したがって本発明は、その実施のための最良の方法として開示された具体的な実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲に含まれるあらゆる形態を含むものと解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は半導体装置の分野に資するものであり、より具体的にはサスペンデッド伝送線路構造の形成工程を含む半導体装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
例示的図面において類似の要素には同様の符号を付す。
【0036】
【図1】従来のマイクロストリップ伝送線路構造の断面図である。
【図2】従来のコプレーナ導波路伝送線路構造の断面図である。
【図3】従来のサイドシールドを有するマイクロストリップ伝送線路構造の断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図5】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図6】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図7】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図8】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図9】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図10】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図11】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図12】本発明の実施形態によるバックエンド工程(BEOL)処理におけるサスペンデッド伝送線路構造の形成方法を示す一連の工程図である。
【図13】図4〜図12の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造のデザインとマスクレイアウトを示す上方からの平面図である。
【図14】エアギャップ誘電体を有するマイクロストリップ伝送線路の実施形態の断面図である。
【図15】エアギャップ誘電体を有する反転されたマイクロストリップ伝送線路の実施形態の断面図である。
【図16】エアギャップ誘電体を有し、信号線の直下にグラウンド面を有しないコプレーナ伝送線路の実施形態の断面図である。
【図17】エアギャップ誘電体を有し、下地グラウンド面を有しないコプレーナ導波路伝送線路の実施形態の断面図である。
【図18】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図19】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図20】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図21】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図22】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図23】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図24】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の一例を示す一連の工程図である。
【図25】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の他の例を示す一連の工程図である。
【図26】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の他の例を示す一連の工程図である。
【図27】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の他の例を示す一連の工程図である。
【図28】本発明の実施形態による、図4〜図10の工程により形成されるサスペンデッド伝送線路構造を封入する方法の他の例を示す一連の工程図である。
【図29】信号線の下部にエアギャップ誘電体を有し、下地および上地グラウンド面を有するストリップライン伝送線路の実施形態の形成方法を示す一連の工程図である。
【図30】信号線の下部にエアギャップ誘電体を有し、下地および上地グラウンド面を有するストリップライン伝送線路の実施形態の形成方法を示す一連の工程図である。
【図31】信号線の下部にエアギャップ誘電体を有し、下地および上地グラウンド面を有するストリップライン伝送線路の実施形態の形成方法を示す一連の工程図である。
【図32】マイクロストリップ・エアギャップ伝送線路構造(例えば図14)と、SiO誘電体を有する従来のマイクロストリップ構造とを比較した種々のシミュレーション結果を表すグラフである。
【図33】マイクロストリップ・エアギャップ伝送線路構造(例えば図14)と、SiO誘電体を有する従来のマイクロストリップ構造とを比較した種々のシミュレーション結果を表すグラフである。
【図34】マイクロストリップ・エアギャップ伝送線路構造(例えば図14)と、SiO誘電体を有する従来のマイクロストリップ構造とを比較した種々のシミュレーション結果を表すグラフである。
【図35】マイクロストリップ・エアギャップ伝送線路構造(例えば図14)と、SiO誘電体を有する従来のマイクロストリップ構造とを比較した種々のシミュレーション結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
106 絶縁膜
108 BEOLメタライゼーション
112 ビア
114 ILD層
116 窒化層
120 トレンチ
122 支持部材
124 犠牲材
126 絶縁膜
128 信号伝送線路
130 コプレーナ・シールドライン
132 絶縁プラグ
134 トップライナー
142 絶縁膜
146 キャビティ
148 犠牲材
152 絶縁膜
154 ビア
160 ILD層
300 伝送線路構造
302 信号伝送線路
304 グラウンド面
306 支持部材
308 ボイド
310 アクセスホール
402 信号伝送線路
404 グラウンド面
408 ボイド
506 コプレーナ・シールドライン
510 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメタライゼーション層上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜中に形成された一つ以上のボイドと、
第2のメタライゼーション層中に形成された信号伝送線路とを備え、
前記信号伝送線路は前記一つ以上のボイド上に配置され、前記信号伝送線路は、前記一つ以上のボイドの形成に用いられた犠牲材にその除去のためアクセス可能となるよう該信号伝送線路を貫通して形成された複数のアクセスホールをさらに有し、
前記一つ以上のボイドは前記信号伝送線路の下部にエアギャップを形成する、半導体装置用のバックエンド工程伝送線路構造。
【請求項2】
前記信号伝送線路の下部に配置された支持構造をさらに備え、該支持構造は前記層間絶縁膜を構成する材料と同じ材料を含む、請求項1に記載の伝送線路構造。
【請求項3】
前記支持構造は連続したレールをさらに含む、請求項2に記載の伝送線路構造。
【請求項4】
前記支持構造は複数の独立したポストをさらに含む、請求項2に記載の伝送線路構造。
【請求項5】
前記第1のメタライゼーション層内に形成されたグラウンド面をさらに備え、該グラウンド面はライナー材の内部に完全に封入されたバックエンド工程金属材料をさらに含む、請求項1に記載の伝送線路構造。
【請求項6】
前記第2のメタライゼーション層中の前記信号伝送線路に隣接する一対のコプレーナ・シールドラインをさらに備える、請求項5に記載の伝送線路構造。
【請求項7】
前記一対のコプレーナ・シールドラインおよび前記信号伝送線路も、前記ライナー材によって完全に封入されている、請求項6に記載の伝送線路構造。
【請求項8】
前記一対のコプレーナ・シールドラインと前記グラウンド面とを電気的に接続するため前記層間絶縁膜中に形成されたビアをさらに備える、請求項6に記載の伝送線路構造。
【請求項9】
前記犠牲材は有機誘電体を含む、請求項1に記載の伝送線路構造。
【請求項10】
前記犠牲材はドライプラズマエッチングにより除去される、請求項1に記載の伝送線路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2007−535825(P2007−535825A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510982(P2007−510982)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/014645
【国際公開番号】WO2005/112105
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】