説明

半導体装置

【課題】はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供する。
【解決手段】マウント面121を有する実装部材120と、はんだによりマウント面121に接合された半導体チップ140と、を備え、マウント面121の半導体チップ140の周囲には、第1の領域141と、半導体チップ140を囲み、前記はんだに対する濡れ性が第1の領域41よりも低い第2の領域160と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを、はんだによってリードフレーム(ベッド)などの実装部材に接合して形成した半導体装置がある。
このような半導体装置を製造する際の、実装部材のマウント面に半導体チップをはんだ接合するダイボンディング工程は、使用されるはんだによって、大きく分けて2種に分かれる。1つは、ワイヤーはんだやシートはんだを用いる方法であり、還元ガス中で行われる。もう1つは、はんだペーストを用いる方法であり、大気中または窒素雰囲気中で行われる。
【0003】
ワイヤーはんだやシートはんだを用いる方法は、はんだペーストを用いる方法に比べて、ダイボンディング後にフラックス残渣除去が不要であり、ダイボンディングの位置精度に優れる。
一方、はんだペーストを用いる方法は、常温でチップマウントができるため、生産効率が優れている。すなわち、ダイボンディングのインデックスアップが可能である。
【0004】
生産効率を優先し、はんだペーストを用いた場合、ダイボンディングの位置精度、すなわち半導体チップのθ回転を含む位置ずれの制御が困難なことが問題である。
チップの位置ずれを防止するには、はんだペーストの量を減らしたり、実装部材のマウント面上に刻印(溝)を設け余分なはんだを刻印に流れ込ませる手法などが考えられる。しかし、これらの対策では、チップ下のはんだの量が減少するため、はんだ厚の確保が困難である。すなわち、チップ位置ずれ対策とはんだ厚の確保とは、トレードオフの関係があり、両立が難しかった。
【0005】
一方、特許文献1には、支持板の上の銅被膜の表面を選択的に加熱して、半導体チップが固着される領域を残して銅酸化膜を形成し、銅被膜が露出する領域に半導体チップをはんだ付けする方法が開示されている。しかし、チップ搭載部の周囲を酸化させるこの方法を用いた場合、チップ端と銅酸化膜とが近すぎる場合は、ダイボンディング時にはんだが溶融した際、溶融したはんだが銅酸化膜でせき止められ、はんだボールが発生し、はんだの飛散などを引き起こす。逆に、チップ端と銅酸化膜とを遠ざけた場合は、チップのθ回転を含むチップ位置ずれが発生してしまう。すなわち、特許文献1の方法では、はんだボールの発生の防止とチップ位置ずれの防止の両方を同時に実現できなかった。
【特許文献1】特開平8−31848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、マウント面を有する実装部材と、はんだにより前記マウント面に接合された半導体チップと、を備え、前記マウント面の前記半導体チップの周囲には、第1の領域と、前記半導体チップを囲み、前記はんだに対する濡れ性が前記第1の領域よりも低い第2の領域と、が設けられていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、本願明細書及び以下の各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を例示する模式図である。
同図(a)は斜視図であり、同図(b)は平面図、同図(c)は同図(b)のA−A線断面図、同図(d)は、要部を例示する平面図である。
図1に表したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置10は、リードフレーム(実装部材)120と、リードフレーム120の主面(マウント面)121に、はんだ層150によって接合された半導体チップ140と、を備えている。リードフレーム120の主面121の半導体チップ140の周囲には、第1の領域141と、第2の領域160とが設けられている。第2の領域160は、半導体チップ140を囲むように設けられる。そして第2の領域160のはんだに対する濡れ性は、第1の領域141のはんだに対する濡れ性より低い。すなわち、第2の領域160のはんだに対する濡れ性は、第1の領域141のはんだに対する濡れ性より悪い。
【0010】
すなわち、半導体装置10は、半導体チップ140を、はんだ層150によって、リードフレーム120に接合した構造を有する。なお、半導体装置10には、インナーリード110が適宜設けられ、インナーリード110と半導体チップ140とを、内部配線130などで接続するようにしても良い。これらインナーリード110と内部配線130は、図1(b)〜(d)では省略されている。また、リードフレーム120の周りに図示しないモールド樹脂を設けても良い。また、図1には、実装部材の一例としてリードフレーム120を表したが、本発明はこれには限定されず、半導体チップ140をマウントする実装部材としては、基板やカップなど、マウント面を有する各種のものを用いることができる。
【0011】
図1に例示したリードフレーム120は、例えば、銅からなる内部層122と、その周囲を被覆した例えばニッケルメッキ層123と、を有する。ニッケルメッキ層123の厚さは、例えば0.5μm〜1.5μmである。ただし、本発明は、これには制限されず、リードフレーム120の構造や用いられる材料は任意である。
【0012】
図1(d)は、はんだ層150と半導体チップ140を取り除いた状態(または、はんだ層150と半導体チップ140を搭載する前の状態)を例示している。図1(d)に表したように、半導体チップ140の周りに、第1の領域141と第2の領域160が設けられている。
【0013】
図1に例示する半導体装置10においては、第2の領域160は、互いに離間した複数の要素領域169を有す。このように、第2の領域160が、互いに離間した要素領域169からなる場合も、第2の領域160は、半導体チップ140を囲っている。
すなわち、本願明細書において、「囲う」とは、特定の領域の周囲を連続して囲う場合の他、特定の領域の周囲の一部を露出して囲う場合も含み、さらには、互いに離間した複数の要素領域によって、特定の領域を囲う場合も含める。また、囲われる特定の領域の外周の内側に、囲うモノの一部が入る場合も、囲うモノは、囲われる特定の領域を囲っており、この場合も「囲う」に含む。
そして、この例では、第1の領域141は、第2の領域160の要素領域169同士の間に設けられている。これにより、後述するように、第1の領域141の部分が流出路162となり、この流出路162にはんだ層150のはんだが流出可能とされている。
【0014】
第2の領域160は、例えば、第2の領域160の表面に凹凸を形成したり、表面処理層を形成したりすることで、第1の領域141の表面よりもはんだに対する濡れ性を相対的に低く(悪く)することで設けられる。
例えば、炭酸ガスレーザやYAGレーザ等をリードフレーム120のマウント面121の所定の領域に照射することにより、その照射領域の表面に凹凸を形成し、第2の領域160を形成することができる。
また、リードフレーム120のマウント面121の所定の領域に各種の表面処理を施して酸化膜等を形成し、それによって、他の領域(第1の領域141)よりもはんだに対する濡れ性を低くすることによっても、第2の領域160を形成できる。なお、炭酸ガスレーザやYAGレーザ等を照射することによっても、その照射領域の表面に酸化膜等の表面処理層を設けることができ、これにより第2の領域160を設けることもできる。
また、第2の領域160のはんだに対する濡れ性が、第1の領域141よりも相対的に低くなるように、第1の領域141となる面に濡れ性を高める各種の処理を施したり、各種の層を設けても良い。
すなわち、第1の領域141となる面、及び、第2の領域160となる面の少なくともいずれかに表面処理を施したり、各種の表面特性の異なる層を設けても良い。例えば、レジストなどからなるマスクを形成した後に、リードフレーム120の表面の所定の領域に、酸等の各種薬品処理や、プラズマ処理等のような気相による表面処理を施したり、各種カップリング剤層等の層を設けることによって、第1の領域141と第2の領域160とで、はんだに対する濡れ性に差異を設けても良い。
【0015】
なお、第1の領域141の表面は、半導体チップ140が搭載されるマウント領域190の表面と実質的に同じ特性とすることができる。例えば、実装部材120のマウント面121の第2の領域160となる部分に、レーザ照射等の特定の処理を施すことにより、第2の領域160を設けた場合は、第1の領域141は、マウント領域190と実質的に同じ表面状態とすることができる。
【0016】
以下では、第2の領域160をYAGレーザの照射により形成した場合を例に挙げて説明する。そして、この場合、第1の領域141の表面は、マウント領域190の表面と同じ表面状態である。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示する走査型電子顕微鏡写真図である。
すなわち、図2(a)〜(c)は、それぞれ図1(d)に例示した領域211〜213に対応する領域のリードフレーム120の主面121の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
なお、これらの図は、リードフレーム120の主面121に対して斜め45°の角度から撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
図2(a)は、第1の領域141と第2の領域160の表面状態を例示している。同図に表したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置10の第2の領域160の表面は、第1の領域141に比べて粗い。
なお、図2(b)、(c)では、第2の領域160とマウント領域190の表面状態を例示している。図2(a)〜(c)に表したように、マウント領域190の表面状態は、第1の領域141の表面状態と同様である。
このように、第2の領域160の表面は、第1の領域141より粗く、また、この例では、マウント領域190よりも粗い。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)〜(e)は、第2の領域160の表面粗さを例示し、同図(f)〜(h)は、第1の領域141の表面粗さを例示している。横軸は、リードフレーム120の主面121に平行な面内の水平位置(距離)を表し、縦軸は垂直位置(表面の凹凸)を表している。
【0019】
図3に表したように、第1の領域141の表面は実質的に平滑であり、表面凹凸(高さの振幅)は例えば1μm〜2μm程度以下であるのに対して、第2の領域160の表面は粗い凹凸を有しており、表面凹凸(高さの振幅)は、例えば、4μm〜5μm程度である。
例えば、第2の領域160の算術平均粗さRaは、例えば0.3〜0.4μm程度である。また、最大高さRyは、例えば、4μm〜5μm程度である。また、十点平均粗さRzは、例えば2.5μm〜3.3μm程度である。
【0020】
一方、第1の領域141の表面は平滑であり、第1の領域141の算術平均粗さRaは、例えば0.12〜0.13μm程度である。また、最大高さRyは、例えば、1.3μm〜2.2μm程度である。また、十点平均粗さRzは、例えば0.9μm〜1.1μm程度である。
このように、第1の領域141における算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRzは、それぞれ上記の第2の領域160の各値の半分以下である。
ただし、本発明は上記に限らず、第2の領域160の表面粗さが、第1の領域141の表面粗さより相対的に粗ければ良い。
【0021】
これにより、第2の領域160におけるはんだの濡れ性を、第1の領域141におけるはんだの濡れ性より低くすることができる。すなわち、第2の領域160は、第1の領域141に比べて、はんだをはじき易い。
【0022】
これにより、マウント領域190の上に設けられたはんだ層150のはんだが、マウント領域190から流れ出る場合、第1の領域141に流れ出す。すなわち、制御された状態で流れ出させることができる。
すなわち、本実施形態の半導体装置10では、第2の領域160が、互いに離間した複数の要素領域169を有しており、要素領域169同士の間に第1の領域141が設けられている。そして、この第1の領域141に、余分なはんだが流出可能とされている。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を例示する模式図である。すなわち、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。
図4に表したように、本実施形態に係る半導体装置10においては、第2の領域160が、互いに離間した複数の要素領域169を有している。そして、要素領域169同士の間の第1の領域141が流出路162となり、この流出路162から、余分なはんだ151が連続して流出できるようにされている。
【0024】
そして、はんだが溶融した際、はんだ内のフラックスが突沸した場合においても、はんだは、半導体チップ140の外側に位置する流出路162にはみ出すことができる。その結果として、はんだが狭い領域に閉じ込められた状態で突沸した時に生ずるはんだボールの発生を抑制できる。
すなわち、はんだが溶融した際、余分なはんだを流出路162から制御した状態で流出可能とすることで、はんだボールが発生しない。これにより、第2の領域160の内側境界(境界)168(半導体チップ140側の境界)を、半導体チップ140に近接させることができ、半導体チップ140の面内のθ回転を含むチップ位置ずれを低減できる。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、はんだボールの発生を抑制しつつ、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0026】
(第1の比較例)
図5は、第1の比較例の半導体装置の構造を例示する模式図である。
同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。
図5に表したように、第1の比較例の半導体装置90においては、第2の領域160が、半導体チップ140を取り囲む連続した枠状の形状である。そして、本比較例では、半導体チップ140の位置ずれを防止することを重視し、第2の領域160の内側境界168は、半導体チップ140の外形と実質的に同一とされている。そして、第1の領域141は設けられていない。
【0027】
この場合、はんだが溶融して流れ出す余分なはんだは、第2の領域160によってせき止められ、はんだ内のフラックスが突沸した時、はんだが逃げる経路がないため、はんだボール152が発生し、周囲に飛散する。このように飛散したはんだボール152は、他の電気回路などに付着し、電気的短絡や回路の誤動作を引き起こす原因となる。
【0028】
(第2の比較例)
図6は、第2の比較例の半導体装置の構造を例示する模式図である。
同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図である。
図6に表したように、第2の比較例の半導体装置91においては、第2の領域160が、半導体チップ140を取り囲む連続した枠状の形状である。そして、本比較例では、はんだが溶融した際にはんだボール152が発生しないように、第2の領域160の内側境界168は、半導体チップ140に対して外側に配置されている。例えば、第2の領域160の内側境界168は、例えば半導体チップ140の一辺が5mmである時、半導体チップ140の端面から0.8mmの外側に配置されている。
【0029】
この場合、はんだが溶融して流れ出した余分なはんだを溜めておけるだけの容積が、第2の領域160の内側境界168の内側に確保できるので、余分なはんだは、半導体チップ140と第2の領域160との間に連続的に流出することができ、はんだボール152が発生し難い。
【0030】
しかしながら、図6に例示したように、半導体チップ140は、第2の領域160の内側で、面内で回転したり、面内に平行移動し、結果としてチップのθ回転を含む位置ずれが大きくなる。
【0031】
すなわち、はんだが溶融した時、はんだ中のフラックスとはんだ成分とで比重の差異があるため、フラックスとはんだ成分が分離することがある。そして、フラックスが、はんだ層150の半導体チップ140側に偏在し、このフラックスによって半導体チップ140が容易に移動可能な状態となる。そして、はんだのリフローの後に半導体チップ140の位置は、所望の位置から移動し、または、面内角度が所定の角度からずれてしまい、高精度の半導体装置は得られない。
【0032】
なお、これら比較例の半導体装置90、91において、はんだ層150の厚みを薄くすることによって、余分なはんだの量も減少させ、これにより、はんだボール152が発生し難くし、また、これにより、第2の領域160の内側境界168を半導体チップ140に近づけ、半導体チップの位置ずれを減少させることが考えられる。しかしながら、この場合、はんだ層150の厚みが所定の厚さより薄くなる不良が発生し問題となる。すなわち、フラックスの特性のばらつき、リードフレーム120の濡れ性のばらつき、半導体チップ140の濡れ性のばらつき、及び、はんだ塗布量のばらつき等のために、はんだ層150の厚みがばらつき、所定の厚さ以下になる場合が発生し、安定した高品位の半導体装置は得られにくい。
【0033】
これに対して、本実施形態に係る半導体装置10では、第2の領域160が、互いに離間した複数の要素領域169を有しており、要素領域169同士の間の第1の領域141が流出路162となる。そして、この流出路162から、余分なはんだが制御された状態で流出可能とされている。これにより、はんだが溶融した際、余分なはんだは流出路162に流れ出すことかできるので、はんだボールが発生することがなく、第2の領域160の内側境界168を、半導体チップ140に近接させることができ、半導体チップ140の面内のθ回転を含むチップ位置ずれを低減できる。
【0034】
これにより、本実施形態に係る半導体装置10によって、はんだボールの発生を抑制しつつチップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0035】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図7に表したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、まず、実装部材120(例えばリードフレーム)の半導体チップ140が搭載されるマウント領域の周囲に、第1の領域141のはんだに対する濡れ性より低い濡れ性を有する第2の領域160を形成する(ステップS110)。
すなわち、例えば、炭酸ガスレーザやYAGレーザ等をリードフレーム120に照射することにより、その照射領域の表面に凹凸を形成する。また、レジストなどにより適当なマスクを形成した後に、リードフレーム120の表面を各種の表面処理することによっても、他の部分(第1の領域141)に比べてはんだに対する濡れ性が低い表面を形成しても良い。なお、上記のようにレーザを用いる方法は、レジスト等を設けないで処理できるので簡便であり、便利である。
【0036】
そして、実装部材120(例えばリードフレーム)のマウント領域に、はんだ層150となるはんだを設置する(ステップS120)。例えば、ディスペンサにより、はんだペーストを適量塗出して、マウント領域に塗布する。
そして、半導体チップ140をマウント領域の上に設置する(ステップS130)。
そして、はんだ層150となるはんだを溶融して、半導体チップ140をリードフレーム120のマウント面121に接合する(ステップS140)。
【0037】
これにより、第1の領域141が流出路162となり、この流出路162から余分なはんだが連続して流出でき、はんだボールが発生することがない。そして、第2の領域160の内側境界168は、半導体チップ140に近接させることができ、第2の領域160によって、半導体チップ140の位置を制御し、半導体チップ140の面内のθ回転を含むチップ位置ずれを低減できる。
なお、上記において、ステップS120のはんだの設置は、例えばステップS110の前に行っても良い。また、ステップS110の第2の領域160の形成は、例えば、ステップS130の後に実施することもできる。すなわち、上記のステップS110〜ステップS140は、技術的に可能な範囲で、順序を入れ替えることが可能であり、また、同時に実施したり、省略することも可能である。
【0038】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によって、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0039】
このように、本実施形態に係る半導体装置においては、第1の領域141は、余分なはんだを流出させる機能を有し、第2の領域160は、第1の領域141よりもはんだを弾き易いことで、はんだの端面を制御することができ、半導体チップ140の位置を制御する。この第1の領域141と第2の領域160の形状や配置は、以下説明するように各種変形することができる。
【0040】
図8〜図11は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
図8(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置11では、第2の領域160が、半導体チップ140を取り囲むように設けられ、第2の領域160の一部に隙間があり、その隙間の部分が第1の領域141である。そして、この第1の領域141が、はんだの流出路162となる。このように、第1の領域141は、半導体チップ140の周りに少なくとも1つ設けられれば良い。
【0041】
また、図8(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置12では、第2の領域160として、半導体チップ140の図の紙面での上部と下部に、半導体チップ140の横方向の辺と平行な部分と、その部分の左右の端に接続され、半導体チップ140の縦の辺に平行な部分とを有する要素領域169がそれぞれ設けられ、この要素領域169は互いに離間している。そして、この要素領域169の間に2つの第1の領域141が設けられ、この第1の領域141がはんだの流出路162となる。このように、第1の領域141を、半導体チップ140の周りに複数設けても良い。
【0042】
また、図8(c)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置13では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に3つずつの円形状の要素領域169が設けられている。そして、これら要素領域169の間に第1の領域141が設けられ、これが、はんだの流出路162となる。
【0043】
また、図8(d)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置14では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺側に凸形状を有する略半円形状の要素領域169が設けられ、そして、これら要素領域169の間に、第1の領域141が設けられ、この第1の領域141がはんだの流出路162となる。このように、要素領域169の間の幅が、半導体チップ140から離れるに従って狭くなる形状にすると、マウント領域からはんだが流れ出した時に、その流量や流速を制限することができ、これにより、余分なはんだの量が多い時にも所定領域外にはんだが流れ出にくくすることができる。
【0044】
また、図8(e)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置15では、第2の領域160として、半導体チップ140のコーナー部に、略半円形状の要素領域169が設けられている。半導体チップ140が搭載されるマウント領域のコーナー部のみに、要素領域169を設けることによっても、半導体チップ140の位置の制御が可能である。第2の領域160を例えばレーザの走査照射等によって設ける場合、半導体チップ140のコーナー部のみに第2の領域160を設けた半導体装置15は、半導体チップ140の辺の中央部にも第2の領域160を設けた半導体装置14よりも、レーザの走査照射時間が短縮でき、生産性の点で有利である。
【0045】
また、図8(f)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置16では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に、各辺側に凸形状を向けた略半円形状の要素領域169が4つずつ設けられている。各要素領域169の間に第1の領域141が設けられ、この第1の領域141がはんだの流出路162となる。そして、半導体チップ140のコーナー部に設けられた要素領域169aは、半導体チップ140にほぼ接して設けられている。これにより、半導体チップ140の設置位置の高精度な制御が可能である。そして、半導体チップ140の各辺の中央付近に設けられた要素領域169bは、半導体チップ140より外側に離間して設けられている。要素領域169bは、はみ出した余分なはんだをせき止める機能を果たすものであり、半導体チップ140と離れていても良く、すなわち、要素領域169bと半導体チップ140の外周との距離は任意である。このように、要素領域169の内の一部を半導体チップ140と実質的に接して設け、その他の一部を半導体チップ140と離間して設けても良い。
【0046】
また、図9(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置17では、第2の領域160として、半導体チップ140の各コーナー部にL字形状の要素領域169が設けられ、そして、これら要素領域169の間に第1の領域141が設けられ、この第1の領域141がはんだの流出路162となる。そして、さらに、要素領域169の間に、小さい要素領域163が設けられている。この小さい要素領域163は、マウント領域からはんだが流れ出した時に、その流量や流速を制限する機能を持ち、これにより、余分なはんだの量が多い時にも所定領域外にはんだが流れ出さないようにすることができる。
【0047】
また、図9(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置18では、第2の領域160として、半導体チップ140の各コーナー部にL字形状の要素領域169が設けられ、そして、これら要素領域169の間に第1の領域141が設けられている。この第1の領域141がはんだの流出路162となる。そして、要素領域169の間の第1の領域141の流出路162の部分に、交互に突出した要素領域164が要素領域169から突出するように連続して設けられている。そして、突出した要素領域164の間も第1の領域141であり、ここにクランプ状の流出路162が形成される。この突出した要素領域164は、マウント領域からはんだが流れ出した際に、はんだの流量や流速を制限する機能を持ち、これにより、余分なはんだの量が多い時にも所定領域外にはんだが流れ出さないようにすることができる。
【0048】
また、図9(c)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置19では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に長方形状の要素領域169が設けられ、要素領域169は、半導体チップ140の4つのコーナー部で互いに離間している。そして、これら要素領域169の間に第1の領域141が設けられており、この第1の領域141がはんだの流出路162となる。
【0049】
また、図9(d)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置20では、第2の領域160として、半導体チップ140の各コーナー部にL字形状の要素領域169が、各辺に2つずつ、ずれた位置に設けられている。これにより、これら要素領域169の間に、細長い形状の第1の領域141が設けられ、この第1の領域141が、はんだの流出路162となる。このはんだの流出路162は、細長い経路であり、はんだの流量と流速を制御できる。
【0050】
また、図9(e)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置21では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に6個ずつの円形の要素領域169が設けられ、要素領域169の間に第1の領域141が設けられている。そして、第2の領域160の外側に、第1の領域141よりも粗い表面粗さを有する(第1の領域141よりもはんだに対する濡れ性が低い)第3の領域260が、さらに設けられている。この第3の領域260によって、第2の領域160の間に設けられた流出路162から流れ出したはんだを、第3の領域260の外に流出させないようにできる。
【0051】
また、図9(f)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置22では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に1つずつ、半導体チップ140の各コーナーで離間した、長方形の要素領域169が設けられ、要素領域169の間に第1の領域141が設けられている。そして、第2の領域160の外側に、第1の領域141よりも粗い表面粗さを有する第3の領域260が、さらに設けられている。この第3の領域260によって、第2の領域160の間に設けられた流出路162から流れ出したはんだを、第3の領域260の外に流出させないようにできる。
【0052】
なお、半導体装置21、22において、第3の領域260が連続した枠状の形状を有しているが、これに限らず、第3の領域260は、一部に隙間がある形状でも良く、また、互いに離間した独立形状の複数の要素領域に分離されていても良い。
【0053】
また、上記の半導体装置11〜22において、第2の領域160の半導体チップ140側の内側境界168は、半導体チップ140に接して設けることができる。これにより、はんだの広がりによる半導体チップ140の位置ずれを可及的に抑制することが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る半導体装置においては、第2の領域160の半導体チップ140側の内側境界168は、半導体チップ140の外周より内側に設定することもできる。
図10(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置31では、第2の領域160として、要素領域169の一部が、半導体チップ140の外周よりも内側に配置されるように、要素領域169が設けられている。このような構造の場合も、要素領域169の間の第1の領域141による流出路162から、余分なはんだが流出可能であり、はんだボールやはんだの飛散が防止できる。そして、要素領域169の内側境界168が、半導体チップ140の外周よりも内側にあっても、溶融した時のはんだの表面張力によって、半導体チップ140は、要素領域169で囲まれた領域に、高精度で位置制御される。
【0055】
また、図10(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置32では、第2の領域160として、半導体チップ140の各コーナー部において、要素領域169の一部が、半導体チップ140の外周よりも内側に配置されるように、要素領域169が設けられている。
【0056】
また、図10(c)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置33では、半導体チップ140のコーナー部に設けられた要素領域169aの一部が、半導体チップ140の外周より内側に設けられている。そして、半導体チップ140の各辺の中央部の要素領域169bは、半導体チップ140に実質的に接して設けられている。なお、要素領域169bは、半導体チップ140の外周よりも外側に設けられていても良い。
【0057】
また、図10(d)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置34では、第2の領域160として、半導体チップ140の各コーナー部に要素領域169cと169dとが設けられている。そして、半導体チップ140の図面中の縦方向の辺に近接する要素領域169cは、実質的に半導体チップ140と接して設けられている。一方、半導体チップ140の横方向の辺に近接する要素領域169dは、半導体チップ140の外周よりも内側にその一部が設けられている。このように半導体チップ140の上下辺と左右辺とで、第2の領域160と半導体チップ140との位置関係を変えることにより、例えば、高精度で位置制御したい辺と、相対的に位置精度の許容が大きい辺とを、独立して制御することができ、実用上有利である。
【0058】
これら、半導体装置31〜34のように、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140の外周よりも内側にあっても、はんだボールの発生を抑制しつつチップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0059】
さらに、図10(e)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置35では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に、長方形の要素領域169が設けられている。この要素領域169は、半導体チップ140の外周よりも外側に設けられている。はんだが溶融した場合、はんだ中に含まれるフラックスが溶け出すが、要素領域169の間の第1の領域141による流出路162において、フラックスはこの流出路162に流出し易い。このため、流出路162が設けられた場合は、半導体チップ140が搭載されるマウント領域においては、フラックスの量が減少する。
【0060】
一方、例えば、先に説明した第2の比較例の半導体装置91のように、第2の領域160が連続した枠状の形状の場合は、流出路162が設けられていないため、マウント領域におけるフラックスの量が相対的に多く、その上に配置される半導体チップ140はこのフラックスによって容易に滑り、半導体チップ140の位置はずれ易い。
【0061】
これに対し、本実施形態に係る半導体装置35は、要素領域169の間に流出路162が設けられるので、流出路162にフラックスが溶け出せるため、マウント領域におけるフラックス量が相対的に減少し、第2の比較例よりも半導体チップ140は動き難くなる。これにより、第2の領域160と半導体チップ140との距離が同じ場合には、本実施形態に係る半導体装置35においては、比較例の半導体装置91に比べて、半導体チップ140の位置精度が向上する。
【0062】
すなわち、本実施形態の半導体装置35のように、第2の領域160の間にはんだを流出可能とする第1の領域141を設けることにより、第2の領域160が連続して設けられ第1の領域141を有さない場合よりも、半導体チップ140が動き難くなり、半導体チップ140の位置精度が向上する効果がある。これにより、第2の領域160の内側境界168と半導体チップ140との距離の制約が緩和され、第2の領域160の内側境界168の設置位置の自由度が拡大する。
ただし、内側境界168が半導体チップ140の外周に近接(内側でも外側でも)している場合、半導体チップ140の位置精度はより精密に制御できるので、内側境界168は半導体チップ140の外周に近接していることがより望ましい。なお、ここでいう「近接」は、接している場合も含む。
【0063】
また、図11(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置41では、第2の領域160として、半導体チップ140の各辺に、円周の一部の形状を有する要素領域169が3つずつ設けられている。第2の領域160(要素領域169)の半導体チップ140側の内側境界168によって、半導体チップ140の位置が制御されるので、同図に例示したように幅が狭い要素領域169を有する半導体装置41によっても、例えば図8(d)に例示した半導体装置14と同等の精度で半導体チップ140の位置制御が可能である。
【0064】
また、図11(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置42では、第2の領域160として、半導体チップ140のコーナー部に、円周の一部の形状を有する要素領域169が設けられている。この場合も、第2の領域160の内側境界168によって半導体チップ140の位置が制御できるため、例えば図8(e)に例示した半導体装置15と同等の精度で半導体チップ140の位置制御が可能である。
【0065】
なお、第2の領域160を例えばレーザ照射によって形成する等の場合、図11(a)、(b)に例示した、幅が狭く面積が小さい要素領域169は、図8(d)、(e)に例示した、面状に広がった広い面積の要素領域169に比べて、レーザ照射の時間が短縮でき生産性の点で有利である。また、第2の領域160を半導体チップ140のコーナー部のみに設けた半導体装置42は、第2の領域160を半導体チップ140の辺の中央部にも設けた半導体装置41に比べて、レーザ照射の時間が短縮でき、生産性の点でより有利である。なお、図11(a)、(b)に例示した要素領域169の幅170は、例えば、0.05mm〜1.0mmとすることができる。ただし、本発明はこれには限定されず、はんだをせき止めることができることができれば、幅170の太さは任意である。
【0066】
(第2の実施の形態)
図12〜図15は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
図12(a)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置51においては、第2の領域160の半導体チップ140側の内側境界(境界)168(の平面形状)は、半導体チップ140に近接した部分と、半導体チップ140と離間した部分とを有している。この場合、第2の領域160は、半導体チップ140を取り囲むように連続して設けられている。そして、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140と離間した部分における、第2の領域160と半導体チップ140との間に、第1の領域141が設けられている。そして、第2の領域160の表面粗さは、第1の領域141の表面粗さより粗い。すなわち、第2の領域160のはんだに対する濡れ性は、第1の領域141のはんだに対する濡れ性よりも低い(悪い)。なお、第1の領域141の表面は、マウント領域の表面と実質的に同じとすることができる。
【0067】
これにより、半導体装置51においては、半導体チップ140の下のはんだ層150の余分なはんだが、半導体チップ140の外周よりも外側の第1の領域141に流れ出すことができ、実質的にはんだボール152が発生しない。
【0068】
一方、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140と近接する部分があるために、半導体チップ140は、第2の領域160の内側境界168によって位置が制御される。これにより、半導体チップ140の位置ずれは発生しない。
【0069】
これにより、本実施形態に係る半導体装置51によって、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0070】
なお、図2に例示したように、第2の領域160を、例えばレーザを走査して照射することによって形成した場合、第2の領域160の境界の平面形状は、レーザのスポット径に応じた微視的な凹凸を持つことがある。すなわち、図2に例示した例では、レーザのスポット径は、約40μmであり、これに対応するように、図2では、直径40μmの円を微小距離ずつずらせた形状の凹凸を有する境界線が観察される。本実施形態に係る半導体装置20においては、このようなレーザのスポットの径に対応した平面形状の凹凸より大きな振幅を持つ凹凸形状を、第2の領域160の内側境界168に形成する。これにより、半導体チップ140の設置位置を精度良く制御できる。
【0071】
また、図12(b)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置52では、第2の領域160の内側境界168の平面形状に合わせて、第2の領域160の外側の境界も変形させ、第2の領域160の幅170は狭い。第2の領域160の幅170が狭い形状でも、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0072】
また、図12(c)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置53においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各辺に実質的に接する、3個ずつの小さい半円形状の内側に突出した突出部161を有している。
【0073】
また、図12(d)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置54においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各コーナー部に設けられた小さい半円形状の突出部161を有している。この例では、突出部161は、半導体チップ140と実質的に接している。このように突出部161を半導体チップ140のコーナー部に設けることで、半導体チップ140の位置の制御が可能なので、突出部161をレーザ照射によって設ける場合、半導体装置54は、突出部161を半導体チップ140の辺の中央部にも設けた半導体装置53に比べレーザ照射の時間が短縮でき、生産性の点でより有利である。
【0074】
また、図12(e)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置55においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各辺に実質的に接する、3個ずつの大きい半円形状の内側に突出した突出部161を有している。
【0075】
また、図12(f)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置56においては、第2の領域160は、半導体チップ140の外周の各コーナー部に設けられた大きい半円形状の突出部161を有している。この例では、突出部161は、半導体チップ140と実質的に接している。
【0076】
また、図13(a)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置57においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各辺に実質的に接する、6個ずつの小さい円形状の内側に突出した突出部161を有している。
【0077】
また、図13(b)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置58においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各辺に実質的に接する、長方形の突出部161を有している。そして、突出部161は、半導体チップ140の4つのコーナー部分で離間しており、この4つのコーナー部では、第2の領域160の内側境界168は、半導体チップ140より外側である。
【0078】
図12(c)〜(f)及び図13に例示したように、突出部161の大きさと位置によって、突出部161同士の間の第1の領域141の面積と形状を変えることができ、半導体チップ140の位置精度を制御しつつ、はんだの溶出量に合わせた最適の大きさと形状の第1の領域141を形成することができる。
【0079】
これら、半導体装置51〜58においては、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140と離間した部分における、第2の領域160と半導体チップ140との間に、第1の領域141が設けられている。そして、この第1の領域141にはんだが流出でき、はんだボールの発生がない。また、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140に近接した部分(突出部161)を有していることで、半導体チップ140の位置を高精度に制御できる。
【0080】
これらの構造を有する半導体装置51〜58においても、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0081】
また、上記の半導体装置51〜58において、第2の領域160の内側境界168は、半導体チップ140と接する部分を有するが、厳密に接した状態の他、内側境界168は、半導体チップ140と近接していれば良い。
【0082】
さらに、第2の領域160の内側境界168の一部は、半導体チップ140の外周より内側に設定されていても良い。
【0083】
図14(a)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置61においては、第2の領域160の内側境界168の平面形状は、半導体チップ140の外周よりも内側の部分と、半導体チップ140よりも外側の部分とを有している。そして、半導体チップ140と第2の領域160の内側境界168との間に、第1の領域141が設けられている。
この場合も、内側境界168が半導体チップ140よりも外側の部分の第1の領域141に、半導体チップ140の下の余分なはんだが、流れ出すことができ、実質的にはんだボール152が発生せず、はんだボールの飛散もない。
また、内側境界168が、半導体チップ140の外周よりも内側の部分においては、はんだの表面張力によって、半導体チップ140の位置が制御される。これにより、半導体チップ140の位置ずれは実質的に発生しない。
このように、第2の領域160の内側境界168の一部が、半導体チップ140の外周の内側にあり、他の一部が半導体チップ140の外周の外側にある半導体装置61によっても、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0084】
また、図14(b)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置62では、第2の領域160の内側境界168の形状に合わせて、第2の領域160の外側の境界も変形させ、第2の領域160は幅170が狭い形状を有している。この場合も、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
【0085】
また、図14(c)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置63においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各辺に対応して設けられた3個ずつの半円形状の内側に突出した突出部161を有している。この突出部161の一部は、半導体チップ140の外周より内側に入っている。
【0086】
また、図14(d)に表したように、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置64においては、第2の領域160は、半導体チップ140の各コーナー部に設けられた半円形状の突出部161を有している。そして、この突出部161の一部は、半導体チップ140の外周より内側に入っている。
【0087】
上記の本実施形態に係る別の半導体装置61〜64のように、第2の領域160の内側境界168が、半導体チップ140の外周よりも内側の部分と、半導体チップ140の外周よりも外側の部分とを有している場合も、はんだボールの発生がなく、チップのθ回転を含む位置ずれを低減した高精度の半導体装置を提供できる。
このように、本実施形態において、内側境界168は、半導体チップ140に近接する部分と、半導体チップ140の外周と離間した部分を有するが、半導体チップ140と近接する部分は、内側境界168が半導体チップ140の外周の内側に入っていても良い。
【0088】
また、図15(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置71では、第2の領域160は、幅の狭い線状であり、そして、半導体チップ140の各辺に、円周の一部の形状を有する突出部161が3つずつ設けられている。この場合も、第2の領域160の内側境界168によって、半導体チップ140の位置が制御されるので、例えば、図12(c)に例示した半導体装置53と同等の精度で半導体チップ140の位置制御が可能である。
【0089】
また、図15(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置72では、第2の領域160は、幅の狭い線状であり、そして、半導体チップ140のコーナー部に、円周の一部の形状を有する突出部161が設けられている。この場合も、第2の領域160の内側境界168によって半導体チップ140の位置が制御できるため、例えば、図12(d)に例示した半導体装置54と同等の精度で半導体チップ140の位置制御が可能である。
【0090】
なお、第2の領域160を例えばレーザ照射によって形成する等の場合、図15(a)、(b)に例示した、幅が狭く面積が小さい第2の領域160は、図12(c)、(d)に例示した、面状に広がった広い面積の第2の領域160に比べて、レーザ照射の時間が短縮でき有利である。この幅が狭い第2の領域160の幅170は、例えば、0.05mm〜1.0mmとすることができる。ただし、本発明はこれには限定されず、はんだをせき止めることができることができれば、幅170の太さは任意である。
【0091】
なお、本実施形態に係る半導体装置51〜58、半導体装置61〜64及び半導体装置71、72において、内側境界168が、半導体チップ140の外周より外側の部分は、半導体チップ140の位置制御への寄与が小さい部分なので、この部分における内側境界168と外周との距離は任意である。
【0092】
また、上記の各実施形態において、第2の領域160の表面粗さが、第1の領域141の表面粗さよりも粗い例を示したが、本発明はこれに限らず、第2の領域160のはんだに対する濡れ性が、第1の領域141のはんだに対する濡れ性よりも低くければ良い。
【0093】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を例示する模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示する走査型電子顕微鏡写真図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示するグラフ図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を例示する模式図である。
【図5】第1の比較例の半導体装置の構造を例示する模式図である。
【図6】第2の比較例の半導体装置の構造を例示する模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る別の半導体装置の要部の構造を例示する模式的平面図である。
【符号の説明】
【0095】
10〜22、31〜35、41、42、51〜58、61〜64、71、72、90、91 半導体装置
110 インナーリード
120 リードフレーム
121 主面(マウント面)
122 内部層
123 ニッケルメッキ層
130 内部配線
140 半導体チップ
141 第1の領域
145 辺(端面)
150 はんだ層
151 余分なはんだ
152 はんだボール
160 第2の領域
161 突出部
162 流出路
163 小さい要素領域
164 突出した要素領域
168 内側境界(境界)
169、169a、169b、169c、169d 要素領域
170 幅
190 マウント領域
211〜213 領域
260 第3の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウント面を有する実装部材と、
はんだにより前記マウント面に接合された半導体チップと、
を備え、
前記マウント面の前記半導体チップの周囲には、
第1の領域と、
前記半導体チップを囲み、前記はんだに対する濡れ性が前記第1の領域よりも低い第2の領域と、
が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の領域の表面粗さは、前記第1の領域よりも粗いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の領域は、互いに離間した複数の要素領域からなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の領域の前記半導体チップ側の境界は、前記半導体チップに近接した部分と、前記半導体チップと離間した部分とを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の領域は、前記実装部材の前記マウント面をレーザ照射することによって形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−218280(P2009−218280A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58197(P2008−58197)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】