半導体装置
【課題】Sn−Pb系はんだが使用されておらず、反りが少ない半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、回路基板2と、電子部品3と、鉛フリーはんだ接続部材4とを有している。回路基板2は、基板側電極5を有している。電子部品3は、回路基板2に載置されている。鉛フリーはんだ接続部材4は、鉛以外の金属からなり、回路基板2の基板側電極5と電子部品3とを接続している。回路基板2の熱膨張を抑制する熱膨張抑制部材6が、回路基板2内に設けられている。さらに、回路基板2の基板側電極5内に生じる応力を緩和する応力緩和部材7が、基板側電極5に設けられている。
【解決手段】半導体装置1は、回路基板2と、電子部品3と、鉛フリーはんだ接続部材4とを有している。回路基板2は、基板側電極5を有している。電子部品3は、回路基板2に載置されている。鉛フリーはんだ接続部材4は、鉛以外の金属からなり、回路基板2の基板側電極5と電子部品3とを接続している。回路基板2の熱膨張を抑制する熱膨張抑制部材6が、回路基板2内に設けられている。さらに、回路基板2の基板側電極5内に生じる応力を緩和する応力緩和部材7が、基板側電極5に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板と電子部品とで構成された半導体装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、回路基板および回路基板に載置された電子部品で構成されており、回路基板と電子部品とは、はんだによって接合されている。はんだに供給される熱によって、はんだと接続されている回路基板および電子部品は熱膨張する。通常、電子部品は基板としてシリコンを含んでおり、回路基板にはシリコンの熱膨張係数(3×10-6[/℃])より大きい熱膨張係数(15×10-6[/℃])を有する樹脂材料が多く使用されている。熱膨張係数が異なる部材同士を接合し、その接合された材料に温度変化を与えた場合には、部材に反りが生じる。部材間の熱膨張係数の差が大きく、かつ温度変化量が大きいほど、部材の反りの量は大きくなる。半導体装置は、電子部品と回路基板をはんだで接続後、室温まで冷却して使用する。このため、半導体装置には、回路基板と電子部品との間の熱膨張係数の差に起因する反りが生じる。
【0003】
この反りをなくすために、変形しやすい(すなわち応力緩和しやすい)Sn−Pb系はんだを接合材として使用することで、回路基板および電子部品の内部に生じる応力を好適に緩和させることが広く行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1で開示される半導体装置(図4参照)は、Sn−Pb系はんだ105によってデイスク102と接合される半導体素子101と、Sn−Pb系はんだ105によってデイスク102と接合される絶縁基板103とで構成されている。デイスク102にはCu−C材が用いられ、炭素繊維の含有量を変えることで熱膨張係数を半導体素子101または絶縁基板103に近付けている。さらに、デイスク102の内部で生じる応力を緩和させる機能を有するCuメッキをデイスク102の表面に施している。以上のように半導体装置を構成することで、半導体素子101と絶縁基板103との間の熱膨張係数の差に基づいて生じる半導体装置全体の反りをなくすことができている。
【特許文献1】特開昭57−130441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された半導体装置には次のような問題がある。すなわち、接合材としてSn−Pb系はんだが使えないという問題である。その理由は、Pb(鉛)は人体に有害であり、近年は欧州連合や中国などで規制が厳しく日本国内でも使用を自粛しているためである。
【0006】
上記事情により、電子部品と電子部品が載置される回路基板とを有する従来の代表的な半導体装置の接合には、鉛を含まない鉛フリーはんだが用いられている。
【0007】
しかしながら、鉛フリーはんだは通常、Sn−Pb系はんだよりも固く、力を受けても変形しにくい(すなわち応力緩和しにくい)。はんだに外部熱源から供給される熱が回路基板および電子部品に伝導されることで、回路基板および電子部品は熱膨張する。しかし、回路基板(例えば、構成材料が樹脂)の熱膨張係数は電子部品(例えば、構成材料がシリコン)の熱膨張係数より大きいため、回路基板の熱膨張量は、電子部品の熱膨張量よりも大きくなる。すなわち、回路基板と電子部品との間に熱膨張量の差が生じる。また、電子部品が載置される側の回路基板の一部とその反対側の回路基板の他部とに供給される熱量に非均一性がなければ、回路基板は一様に熱膨張し、変形しようとする。しかし、電子基板が載置される側の回路基板の一部の熱膨張に伴う変形は、上記の変形しにくい鉛フリーはんだによって拘束される。そのため、この回路基板の一部は、その反対側にある回路基板の他部よりも熱膨張量は小さくなる。ゆえに、回路基板内において熱膨張量の差が発生する。さらに、回路基板および電子部品の熱膨張に伴う変形が変形しにくい鉛フリーはんだにより拘束されるため、上記の回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差が緩和されない。したがって、回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差と回路基板内における熱膨張量の差とにより、回路基板には電子部品側に湾曲するような反りが発生する。
【0008】
また、鉛フリーはんだは通常、Sn−Pb系はんだよりも融点が約40℃高い。これにより、鉛フリーはんだを溶融させるには、外部熱源から鉛フリーはんだに供給される熱量をSn−Pb系はんだの場合に比べて大きくする必要がある。そのため、鉛フリーはんだと接続された回路基板にこの熱の一部が伝導されることで、回路基板は、この熱伝導の熱量に比例して内部温度が上昇する。回路基板内のこの温度上昇によって、回路基板は熱膨張する。したがって、回路基板のこの熱膨張は、先に回路基板に発生した反りをさらに増大させてしまうことになる。この湾曲した回路基板を常温まで冷却した際、回路基板は弾性体であるため回路基板には元の形状(反りがない形状)に戻ろうとする復元力が働く。しかし、鉛フリーはんだは変形しにくいという性質があるため、回路基板の変形は鉛フリーはんだに拘束され、回路基板は元の形状に戻ることができない。これにより、回路基板の反りは維持されてしまう。その結果、回路基板を含む半導体装置全体には常温においても大きな反りが生じることになる。反りが大きな半導体装置は、電極を設けてさらに他の回路基板等の部品にはんだ等で接続する場合に、接続不良の原因となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、Sn−Pb系はんだが使用されておらず、反りが少ない半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の半導体装置は、電極を有している回路基板と、回路基板に載置されている電子部品と、鉛以外の金属からなり、回路基板の電極と電子部品とを接続している接続手段と、を有し、回路基板の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段が回路基板内に設けられているとともに、回路基板の電極内に生じる応力を緩和する応力緩和手段が電極に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板内に熱膨張抑制手段が設けられていることにより、回路基板内における熱膨張量の差に起因する半導体装置の反りが少なくなる。さらに、応力緩和手段が回路基板の電極に設けられていることにより、回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差に起因する半導体装置の反りが少なくなる。したがって、鉛以外の金属からなる接続手段、熱膨張抑制手段および応力緩和手段により、Sn−Pb系はんだが使用されておらず、反りが少ない半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。半導体装置1は、回路基板2と、電子部品3と、鉛以外の金属からなる鉛フリーはんだ接続部材4とで構成されている。
【0014】
回路基板2は、電子部品3が載置されている側である第1の面21と、第1の面21の反対側に位置する第2の面22とを有している。第2の面21と第2の面22とが平行であることで、回路基板2は薄板の形状を有している。さらに、回路基板2は、基板側電極5と、回路基板2の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段として機能する熱膨張抑制部材6とを有している。
【0015】
電子部品3は、トランジスタ、電界効果トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、発光ダイオードなどの能動素子として機能する半導体素子8を含む電子回路素子と、部品電極9とにより構成されている。電子部品3は、回路基板2に載置されている。電子部品3の部品電極9は、鉛フリーはんだ接続部材4によって回路基板2の基板側電極5に接合されている。さらに、回路基板2の基板側電極5と電子部品3の部品電極9とを介して、半導体素子8には外部電源(不図示)から電力が供給される。半導体素子8にはシリコンが使用されている。一方、回路基板2には、シリコンの熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有する樹脂材料が使用されている。
【0016】
基板側電極5は、鉛フリーはんだ接続部材4を向いて開放した内側空間を有する凹部を有する。この凹部は、基板側電極5の略U字状の表面51によって形成されている。開放した内側空間には、基板側電極5内に生じる応力を緩和する応力緩和手段として機能する応力緩和部材7が充填されている。基板側電極5は、回路基板2の第1の面21上に設けられており、鉛フリーはんだ接続部材4を介して電子部品3の部品電極9と電気的に接続する。
【0017】
応力緩和部材7は、導電性を有しており、鉛フリーはんだ接続部材4と電気的に接続する充填部材である。さらに、応力緩和部材7のヤング率は、基板側電極5のヤング率よりも低い。そのため、応力緩和部材7は、基板側電極5よりも変形しやすい。応力緩和部材7は、融点がSn−Pb系はんだ並みに低いSn―In系、Sn―Cu系、Sn―Zn系またはSn―Bi系等のはんだ材料でできているのが好ましい。または、応力緩和部材7は、金属が混入されることで導電性を発揮する粘弾性高分子(すなわちエラストマー)材料でできているのが好ましい。外部熱源から供給される熱によって鉛フリーはんだ接続部材4は熱膨張する。鉛フリーはんだ接続部材4の熱膨張に伴い、鉛フリーはんだ接続部材4と接続している基板側電極5内には、その熱膨張に抵抗するように応力が生じる。しかし、応力緩和部材7は、ヤング率が基板側電極5よりも低いので、基板側電極5よりも変形しやすい。応力緩和部材7が基板側電極5よりも容易に変形することで、従来の応力緩和部材7が設けられておらず、鉛フリーはんだ接続部材4の熱膨張が直接的に基板側電極5の変形を促す場合に比べ、基板側電極5内に生じる応力は緩和される。ゆえに、基板側電極5内に生じる応力が緩和されることにより、基板側電極5の変形量は小さくなる。そのため、基板側電極5を有する電子部品3側の回路基板2の変形量も小さくなる。ゆえに、電子部品3側の回路基板2と電子部品3との間の変形量の差は従来に比べ減少する。したがって、熱せられた状態での半導体装置1の反りを少なくすることができる。熱間時の半導体装置1を常温まで冷却した際には、回路基板2は弾性体であるため回路基板2には元の形状(反りがない形状)に戻ろうとする復元力が働く。応力緩和部材7は、常温時でも変形しやすい性質を有しているため、回路基板2内の基板側電極5の復元力による変形を受容できる。したがって、回路基板2は元の形状へ復元することができ、回路基板2と電子部品3との間の熱膨張量の差に起因する回路基板2の常温時の反りを低減することができる。
【0018】
熱膨張抑制部材6は、回路基板2の熱膨張係数より低い熱膨張係数を有しており、例えばシリコンを好適に用いることができる。熱膨張抑制部材6は、回路基板2の厚さ方向と直交する方向に回路基板2内に板状部材として設けられている。熱膨張抑制部材6は、回路基板2内において第1の面21よりも第2の面22に近い位置に配置されている。さらに、熱膨張抑制部材6は、単層の板に限定されず、一つの板の上に別の板が載置された複数の層の板で構成された板状部材であってもよい。熱膨張抑制部材6の位置には、熱膨張係数に関わりなく、回路基板2のヤング率より高いヤング率の材料を用いてもよい。この場合、電子部品3と回路基板2との間の熱膨張係数の違いにより半導体装置1の反りが大きくなろうとして、応力緩和部材7に高い応力が生じることになる。しかし、一般に応力が高いほど応力緩和が生じやすくなるため、回路基板2の反りの増大を抑えることができる。また、板状部材の厚さを変化させたり、板状部材の位置を厚さ方向にずらしたりする(図1のずらし量10を参照)ことにより、半導体装置1の反り量を調整することができる。回路基板2に電子部品3を載置し、鉛フリーはんだ接続部材4により回路基板2と電子部品3とを接合する際に、外部熱源から鉛フリーはんだ接続部材4に供給される熱により回路基板2は膨張する。しかし、回路基板2の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有する熱膨張抑制部材6が、回路基板2内の第1の面21よりも第2の面22に近い位置に設けられている。これにより、同じ温度差の状況下では熱膨張抑制部材6の熱膨張量は、回路基板2の熱膨張量よりも小さくなる。さらに、従来の熱膨張量が大きかった第2の面22側の回路基板2は、熱膨張抑制部材6によって変形が拘束される。ゆえに、第2の面22側の回路基板2の熱膨張量は、従来の熱膨張抑制部材6がない場合に比べて減少する。そのため、第1の面21側の回路基板2の一部と第2の面22側の回路基板2の他部との間の熱膨張量の差は小さくなることで、従来に比べ回路基板2の電子部品3側へ湾曲するような反りは少なくなる。したがって、回路基板2内における熱膨張量の差に起因する熱間時の半導体装置1の反りを低減することができる。
【0019】
鉛フリーはんだ接続部材4は、回路基板2の基板側電極5と電子部品3の部品電極9とを接続する接続手段として機能している。鉛フリーはんだ接続部材4には、一般的に広く用いられるSn−3Ag−0.5Cu組成のはんだが使用されている。この組成のはんだは、Sn−Pb系はんだよりも固く、力を受けても変形しにくい(すなわち、応力緩和しにくい)。
【0020】
図2は、従来の代表的なSn−37Pbはんだに加わる外力によるはんだの変形しやすさと、本発明の実施形態で規定するSn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだのそれとを比較した応力緩和試験の結果である。応力緩和試験は室温において、ひずみ速度10-3[1/sec]の条件で、ひずみが1.5%に達するまで引っ張った後に、クロスヘッドを停止させて応力を測定した。ここで、ひずみは伸び量を元の長さで割った比であり、応力は荷重を断面積で割った比である。6時間後の応力は、Sn−37Pbはんだが5[MPa]であるのに対して、Sn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだは15[MPa]と、3倍高い応力が残っている様子がわかる。このため、電子部品3と回路基板2とをSn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだを用いた鉛フリーはんだ接続部材4で接続した場合には、はんだが力によって変形し難い。そのため、半導体装置1には従来の半導体装置よりも大きな反りが生じやすい。
【0021】
この課題を解決するために、本発明の実施形態の半導体装置1では、応力緩和部材7として、Sn−In系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Bi系はんだ等が使用されている。応力緩和試験を行うことで、残留応力が少ない特性を有する応力緩和材料を選択している。こうすることにより、電子部品3と回路基板2との間の熱膨張の違いによって、半導体装置1に反りが生じる。しかし、応力緩和部材7が力を受けて変形するため、半導体装置1の反りは従来に比べ格段に小さくなる。なお、応力緩和部材7に最も効率よく応力緩和を生じさせるために、半導体装置1の反りの中立面が鉛フリーはんだ部材9の高さの範囲内に来るように調整することができるようにした。
【0022】
半導体装置1の反りや中立面の様子は、汎用の有限要素法解析ソフト等を用いた熱応力解析により調べた。
(実施例1、2)
次に、具体的な実施例により本発明の実施形態の構造を説明する。
【0023】
半導体素子18がシリコンであり、鉛フリーはんだ接続部材14がSn−Ag−Cu系はんだである場合の例を図3に示した。応力緩和部材17にSn−In系はんだを、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用した。汎用の有限要素法解析ソフトANSYSを用いて、Sn−Ag−Cu系はんだの融点220℃で電子部品13と回路基板12とを接続し、室温まで冷却したときの半導体装置11の反りを計算した。この反りが最も小さくなるように、ずらし量20を調整した。なお、熱応力解析の応力シミュレーションに用いる有限要素法解析ソフトはANSYSに限るものではない。すなわち、I−DEAS、N
astran、ABAQUS、MARC、Pro/ENGINEER等の有限要素法解析ソフトを用いてもよい。
【0024】
図5は、有限要素法計算用の解析モデルである。要素と呼ばれる微小領域により、約6000に分割している。熱膨張抑制部材16の幅は、半導体素子18と同じであり、厚さは半導体素子18の1/5である。回路基板12の下面の中央の点を反りの基準点21とし、上下方向に移動しないように拘束した。
【0025】
図6は、汎用の有限要素法解析ソフトANSYSを用いて、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示した。わかりやすくするために、変形量を実際の5倍にして表示した。回路基板12の反りは60μm程度と小さなものである。
【0026】
比較のために、応力緩和部材17も熱膨張抑制部材16も使用しない従来の場合の反り量を図7に示した。図6と同様に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示した。変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は凸に反り、最も反りが大きいのは回路基板12の端部であり、460μm程度であった。
【0027】
図8は、本発明の実施例2の説明図である。実施例1(図6)と同様に、応力緩和部材17にSn−In系はんだを用い、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用しているが、熱膨張抑制部材16を回路基板12の厚さ中央に設けた場合の例である。図6と同様に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示した。変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は従来(図7)と同様に凸に反っている。最も反りが大きい回路基板12の端部では、反り量は280μm程度であった。従来(図7)に比べて、回路基板12の反りが40%低減している。応力緩和部材17にSn−In系はんだを用い、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用することにより、回路基板12の反りは低減できることがわかる。この回路基板12の反りは、熱膨張抑制部材16を設ける厚さ方向の位置によって変化する。反りが最も小さくなるように、ずらし量20を調整したものが実施例1(図5、図6)である。実施例1では、図5に示すように、回路基板12の厚さ中央から下方へ30μmずらしている。これは、回路基板12の厚さの1/3に相当する。こうすることにより、実施例1は従来に比べて回路基板12の反り量が1/8に低減している。
【0028】
このように、電極に応力緩和手段を設け、回路基板内の適切な位置に熱膨張抑制手段を設けることにより、回路基板の反りを大幅に低減することができる。
(実施例3、4)
次に、他の実施例により本発明の実施形態の構造を説明する。
【0029】
図9は、応力緩和部材24にゴム系の樹脂を用い、熱膨張抑制部材25に熱膨張係数が小さいSi3N4を使用した半導体装置であり、鉛フリーはんだ接続部材14の間に、アンダーフィルと呼ばれる補強のための樹脂を充填した場合の、有限要素法計算用の解析モデルである。約7000の要素に分割している。熱膨張抑制部材25の幅は電子部品13とほぼ同じであり、厚さは半導体素子18の1/5である。補強用樹脂26は、電子部品13の端まで充填されており、ぬれ性により端部では回路基板12との間でフィレット形状を成している。
【0030】
図10は、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示し、変形量は実際の5倍にして表示した。半導体装置11は全体的に凸に反っており、回路基板12の反りは端部で最も大きく、90μm程度である。
【0031】
比較のために、実施例3(図9、図10)において、応力緩和部材24も熱膨張抑制部材25も使用しない従来の場合の反り量を図11に示した。半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示し、変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は凸に反り、最も反りが大きいのは回路基板12の端部であり、350μm程度であった。
【0032】
図12は、本発明の実施例4の説明図である。実施例3(図9、図10)において、熱膨張抑制部材25の幅を電子部品13ではなく半導体素子18と同じにした場合の有限要素法計算用の解析モデルである。
【0033】
図13は、本発明の実施例4の場合に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示し、変形量は実際の5倍にして表示した。半導体装置11は全体的に凸に反っており、回路基板12の反りは端部で最も大きく、140μm程度であった。従来(図11)に比べて、回路基板12の反りが半分以下に低減している。応力緩和部材24にゴム系の樹脂を用い、熱膨張抑制部材25にSi3N4を使用することにより、鉛フリーはんだ接続部材14の間に補強用樹脂を充填した場合であっても、回路基板12の反りを低減できることがわかる。この回路基板12の反りは、熱膨張抑制部材25を設ける幅によって変化する。
【0034】
反りが最も小さくなるように、この熱膨張抑制部材25の幅を調整したものが実施例3(図9、図10)である。実施例3では、図9に示すように、熱膨張抑制部材25の幅を電子部品13とほぼ同じにしている。こうすることにより、実施例3は従来(図11)に比べて回路基板12の反り量が1/3以下に低減している。
【0035】
このように、電極に応力緩和手段を設け、回路基板内の適切な位置に熱膨張抑制手段を設けることにより、回路基板の反りを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の応力緩和部材の材料試験結果を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図4】従来の半導体装置の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図7】従来の半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図8】本発明の実施例2に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図9】本発明の実施例3に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図10】本発明の実施例3に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図11】従来の半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図12】本発明の実施例4に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図13】本発明の実施例4に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1、11 半導体装置
2、12 回路基板
3、13 電子部品
4、14 鉛フリーはんだ接続部材
5、15 基板側電極
6 熱膨張抑制部材
7 応力緩和部材
21 反りの基準点
22 変形図
23 変形前の外郭線図
24 ゴム系樹脂
25 Si3N4
26 補強用樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板と電子部品とで構成された半導体装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、回路基板および回路基板に載置された電子部品で構成されており、回路基板と電子部品とは、はんだによって接合されている。はんだに供給される熱によって、はんだと接続されている回路基板および電子部品は熱膨張する。通常、電子部品は基板としてシリコンを含んでおり、回路基板にはシリコンの熱膨張係数(3×10-6[/℃])より大きい熱膨張係数(15×10-6[/℃])を有する樹脂材料が多く使用されている。熱膨張係数が異なる部材同士を接合し、その接合された材料に温度変化を与えた場合には、部材に反りが生じる。部材間の熱膨張係数の差が大きく、かつ温度変化量が大きいほど、部材の反りの量は大きくなる。半導体装置は、電子部品と回路基板をはんだで接続後、室温まで冷却して使用する。このため、半導体装置には、回路基板と電子部品との間の熱膨張係数の差に起因する反りが生じる。
【0003】
この反りをなくすために、変形しやすい(すなわち応力緩和しやすい)Sn−Pb系はんだを接合材として使用することで、回路基板および電子部品の内部に生じる応力を好適に緩和させることが広く行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1で開示される半導体装置(図4参照)は、Sn−Pb系はんだ105によってデイスク102と接合される半導体素子101と、Sn−Pb系はんだ105によってデイスク102と接合される絶縁基板103とで構成されている。デイスク102にはCu−C材が用いられ、炭素繊維の含有量を変えることで熱膨張係数を半導体素子101または絶縁基板103に近付けている。さらに、デイスク102の内部で生じる応力を緩和させる機能を有するCuメッキをデイスク102の表面に施している。以上のように半導体装置を構成することで、半導体素子101と絶縁基板103との間の熱膨張係数の差に基づいて生じる半導体装置全体の反りをなくすことができている。
【特許文献1】特開昭57−130441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された半導体装置には次のような問題がある。すなわち、接合材としてSn−Pb系はんだが使えないという問題である。その理由は、Pb(鉛)は人体に有害であり、近年は欧州連合や中国などで規制が厳しく日本国内でも使用を自粛しているためである。
【0006】
上記事情により、電子部品と電子部品が載置される回路基板とを有する従来の代表的な半導体装置の接合には、鉛を含まない鉛フリーはんだが用いられている。
【0007】
しかしながら、鉛フリーはんだは通常、Sn−Pb系はんだよりも固く、力を受けても変形しにくい(すなわち応力緩和しにくい)。はんだに外部熱源から供給される熱が回路基板および電子部品に伝導されることで、回路基板および電子部品は熱膨張する。しかし、回路基板(例えば、構成材料が樹脂)の熱膨張係数は電子部品(例えば、構成材料がシリコン)の熱膨張係数より大きいため、回路基板の熱膨張量は、電子部品の熱膨張量よりも大きくなる。すなわち、回路基板と電子部品との間に熱膨張量の差が生じる。また、電子部品が載置される側の回路基板の一部とその反対側の回路基板の他部とに供給される熱量に非均一性がなければ、回路基板は一様に熱膨張し、変形しようとする。しかし、電子基板が載置される側の回路基板の一部の熱膨張に伴う変形は、上記の変形しにくい鉛フリーはんだによって拘束される。そのため、この回路基板の一部は、その反対側にある回路基板の他部よりも熱膨張量は小さくなる。ゆえに、回路基板内において熱膨張量の差が発生する。さらに、回路基板および電子部品の熱膨張に伴う変形が変形しにくい鉛フリーはんだにより拘束されるため、上記の回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差が緩和されない。したがって、回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差と回路基板内における熱膨張量の差とにより、回路基板には電子部品側に湾曲するような反りが発生する。
【0008】
また、鉛フリーはんだは通常、Sn−Pb系はんだよりも融点が約40℃高い。これにより、鉛フリーはんだを溶融させるには、外部熱源から鉛フリーはんだに供給される熱量をSn−Pb系はんだの場合に比べて大きくする必要がある。そのため、鉛フリーはんだと接続された回路基板にこの熱の一部が伝導されることで、回路基板は、この熱伝導の熱量に比例して内部温度が上昇する。回路基板内のこの温度上昇によって、回路基板は熱膨張する。したがって、回路基板のこの熱膨張は、先に回路基板に発生した反りをさらに増大させてしまうことになる。この湾曲した回路基板を常温まで冷却した際、回路基板は弾性体であるため回路基板には元の形状(反りがない形状)に戻ろうとする復元力が働く。しかし、鉛フリーはんだは変形しにくいという性質があるため、回路基板の変形は鉛フリーはんだに拘束され、回路基板は元の形状に戻ることができない。これにより、回路基板の反りは維持されてしまう。その結果、回路基板を含む半導体装置全体には常温においても大きな反りが生じることになる。反りが大きな半導体装置は、電極を設けてさらに他の回路基板等の部品にはんだ等で接続する場合に、接続不良の原因となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、Sn−Pb系はんだが使用されておらず、反りが少ない半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の半導体装置は、電極を有している回路基板と、回路基板に載置されている電子部品と、鉛以外の金属からなり、回路基板の電極と電子部品とを接続している接続手段と、を有し、回路基板の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段が回路基板内に設けられているとともに、回路基板の電極内に生じる応力を緩和する応力緩和手段が電極に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板内に熱膨張抑制手段が設けられていることにより、回路基板内における熱膨張量の差に起因する半導体装置の反りが少なくなる。さらに、応力緩和手段が回路基板の電極に設けられていることにより、回路基板と電子部品との間の熱膨張量の差に起因する半導体装置の反りが少なくなる。したがって、鉛以外の金属からなる接続手段、熱膨張抑制手段および応力緩和手段により、Sn−Pb系はんだが使用されておらず、反りが少ない半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。半導体装置1は、回路基板2と、電子部品3と、鉛以外の金属からなる鉛フリーはんだ接続部材4とで構成されている。
【0014】
回路基板2は、電子部品3が載置されている側である第1の面21と、第1の面21の反対側に位置する第2の面22とを有している。第2の面21と第2の面22とが平行であることで、回路基板2は薄板の形状を有している。さらに、回路基板2は、基板側電極5と、回路基板2の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段として機能する熱膨張抑制部材6とを有している。
【0015】
電子部品3は、トランジスタ、電界効果トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、発光ダイオードなどの能動素子として機能する半導体素子8を含む電子回路素子と、部品電極9とにより構成されている。電子部品3は、回路基板2に載置されている。電子部品3の部品電極9は、鉛フリーはんだ接続部材4によって回路基板2の基板側電極5に接合されている。さらに、回路基板2の基板側電極5と電子部品3の部品電極9とを介して、半導体素子8には外部電源(不図示)から電力が供給される。半導体素子8にはシリコンが使用されている。一方、回路基板2には、シリコンの熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有する樹脂材料が使用されている。
【0016】
基板側電極5は、鉛フリーはんだ接続部材4を向いて開放した内側空間を有する凹部を有する。この凹部は、基板側電極5の略U字状の表面51によって形成されている。開放した内側空間には、基板側電極5内に生じる応力を緩和する応力緩和手段として機能する応力緩和部材7が充填されている。基板側電極5は、回路基板2の第1の面21上に設けられており、鉛フリーはんだ接続部材4を介して電子部品3の部品電極9と電気的に接続する。
【0017】
応力緩和部材7は、導電性を有しており、鉛フリーはんだ接続部材4と電気的に接続する充填部材である。さらに、応力緩和部材7のヤング率は、基板側電極5のヤング率よりも低い。そのため、応力緩和部材7は、基板側電極5よりも変形しやすい。応力緩和部材7は、融点がSn−Pb系はんだ並みに低いSn―In系、Sn―Cu系、Sn―Zn系またはSn―Bi系等のはんだ材料でできているのが好ましい。または、応力緩和部材7は、金属が混入されることで導電性を発揮する粘弾性高分子(すなわちエラストマー)材料でできているのが好ましい。外部熱源から供給される熱によって鉛フリーはんだ接続部材4は熱膨張する。鉛フリーはんだ接続部材4の熱膨張に伴い、鉛フリーはんだ接続部材4と接続している基板側電極5内には、その熱膨張に抵抗するように応力が生じる。しかし、応力緩和部材7は、ヤング率が基板側電極5よりも低いので、基板側電極5よりも変形しやすい。応力緩和部材7が基板側電極5よりも容易に変形することで、従来の応力緩和部材7が設けられておらず、鉛フリーはんだ接続部材4の熱膨張が直接的に基板側電極5の変形を促す場合に比べ、基板側電極5内に生じる応力は緩和される。ゆえに、基板側電極5内に生じる応力が緩和されることにより、基板側電極5の変形量は小さくなる。そのため、基板側電極5を有する電子部品3側の回路基板2の変形量も小さくなる。ゆえに、電子部品3側の回路基板2と電子部品3との間の変形量の差は従来に比べ減少する。したがって、熱せられた状態での半導体装置1の反りを少なくすることができる。熱間時の半導体装置1を常温まで冷却した際には、回路基板2は弾性体であるため回路基板2には元の形状(反りがない形状)に戻ろうとする復元力が働く。応力緩和部材7は、常温時でも変形しやすい性質を有しているため、回路基板2内の基板側電極5の復元力による変形を受容できる。したがって、回路基板2は元の形状へ復元することができ、回路基板2と電子部品3との間の熱膨張量の差に起因する回路基板2の常温時の反りを低減することができる。
【0018】
熱膨張抑制部材6は、回路基板2の熱膨張係数より低い熱膨張係数を有しており、例えばシリコンを好適に用いることができる。熱膨張抑制部材6は、回路基板2の厚さ方向と直交する方向に回路基板2内に板状部材として設けられている。熱膨張抑制部材6は、回路基板2内において第1の面21よりも第2の面22に近い位置に配置されている。さらに、熱膨張抑制部材6は、単層の板に限定されず、一つの板の上に別の板が載置された複数の層の板で構成された板状部材であってもよい。熱膨張抑制部材6の位置には、熱膨張係数に関わりなく、回路基板2のヤング率より高いヤング率の材料を用いてもよい。この場合、電子部品3と回路基板2との間の熱膨張係数の違いにより半導体装置1の反りが大きくなろうとして、応力緩和部材7に高い応力が生じることになる。しかし、一般に応力が高いほど応力緩和が生じやすくなるため、回路基板2の反りの増大を抑えることができる。また、板状部材の厚さを変化させたり、板状部材の位置を厚さ方向にずらしたりする(図1のずらし量10を参照)ことにより、半導体装置1の反り量を調整することができる。回路基板2に電子部品3を載置し、鉛フリーはんだ接続部材4により回路基板2と電子部品3とを接合する際に、外部熱源から鉛フリーはんだ接続部材4に供給される熱により回路基板2は膨張する。しかし、回路基板2の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有する熱膨張抑制部材6が、回路基板2内の第1の面21よりも第2の面22に近い位置に設けられている。これにより、同じ温度差の状況下では熱膨張抑制部材6の熱膨張量は、回路基板2の熱膨張量よりも小さくなる。さらに、従来の熱膨張量が大きかった第2の面22側の回路基板2は、熱膨張抑制部材6によって変形が拘束される。ゆえに、第2の面22側の回路基板2の熱膨張量は、従来の熱膨張抑制部材6がない場合に比べて減少する。そのため、第1の面21側の回路基板2の一部と第2の面22側の回路基板2の他部との間の熱膨張量の差は小さくなることで、従来に比べ回路基板2の電子部品3側へ湾曲するような反りは少なくなる。したがって、回路基板2内における熱膨張量の差に起因する熱間時の半導体装置1の反りを低減することができる。
【0019】
鉛フリーはんだ接続部材4は、回路基板2の基板側電極5と電子部品3の部品電極9とを接続する接続手段として機能している。鉛フリーはんだ接続部材4には、一般的に広く用いられるSn−3Ag−0.5Cu組成のはんだが使用されている。この組成のはんだは、Sn−Pb系はんだよりも固く、力を受けても変形しにくい(すなわち、応力緩和しにくい)。
【0020】
図2は、従来の代表的なSn−37Pbはんだに加わる外力によるはんだの変形しやすさと、本発明の実施形態で規定するSn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだのそれとを比較した応力緩和試験の結果である。応力緩和試験は室温において、ひずみ速度10-3[1/sec]の条件で、ひずみが1.5%に達するまで引っ張った後に、クロスヘッドを停止させて応力を測定した。ここで、ひずみは伸び量を元の長さで割った比であり、応力は荷重を断面積で割った比である。6時間後の応力は、Sn−37Pbはんだが5[MPa]であるのに対して、Sn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだは15[MPa]と、3倍高い応力が残っている様子がわかる。このため、電子部品3と回路基板2とをSn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだを用いた鉛フリーはんだ接続部材4で接続した場合には、はんだが力によって変形し難い。そのため、半導体装置1には従来の半導体装置よりも大きな反りが生じやすい。
【0021】
この課題を解決するために、本発明の実施形態の半導体装置1では、応力緩和部材7として、Sn−In系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Bi系はんだ等が使用されている。応力緩和試験を行うことで、残留応力が少ない特性を有する応力緩和材料を選択している。こうすることにより、電子部品3と回路基板2との間の熱膨張の違いによって、半導体装置1に反りが生じる。しかし、応力緩和部材7が力を受けて変形するため、半導体装置1の反りは従来に比べ格段に小さくなる。なお、応力緩和部材7に最も効率よく応力緩和を生じさせるために、半導体装置1の反りの中立面が鉛フリーはんだ部材9の高さの範囲内に来るように調整することができるようにした。
【0022】
半導体装置1の反りや中立面の様子は、汎用の有限要素法解析ソフト等を用いた熱応力解析により調べた。
(実施例1、2)
次に、具体的な実施例により本発明の実施形態の構造を説明する。
【0023】
半導体素子18がシリコンであり、鉛フリーはんだ接続部材14がSn−Ag−Cu系はんだである場合の例を図3に示した。応力緩和部材17にSn−In系はんだを、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用した。汎用の有限要素法解析ソフトANSYSを用いて、Sn−Ag−Cu系はんだの融点220℃で電子部品13と回路基板12とを接続し、室温まで冷却したときの半導体装置11の反りを計算した。この反りが最も小さくなるように、ずらし量20を調整した。なお、熱応力解析の応力シミュレーションに用いる有限要素法解析ソフトはANSYSに限るものではない。すなわち、I−DEAS、N
astran、ABAQUS、MARC、Pro/ENGINEER等の有限要素法解析ソフトを用いてもよい。
【0024】
図5は、有限要素法計算用の解析モデルである。要素と呼ばれる微小領域により、約6000に分割している。熱膨張抑制部材16の幅は、半導体素子18と同じであり、厚さは半導体素子18の1/5である。回路基板12の下面の中央の点を反りの基準点21とし、上下方向に移動しないように拘束した。
【0025】
図6は、汎用の有限要素法解析ソフトANSYSを用いて、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示した。わかりやすくするために、変形量を実際の5倍にして表示した。回路基板12の反りは60μm程度と小さなものである。
【0026】
比較のために、応力緩和部材17も熱膨張抑制部材16も使用しない従来の場合の反り量を図7に示した。図6と同様に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示した。変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は凸に反り、最も反りが大きいのは回路基板12の端部であり、460μm程度であった。
【0027】
図8は、本発明の実施例2の説明図である。実施例1(図6)と同様に、応力緩和部材17にSn−In系はんだを用い、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用しているが、熱膨張抑制部材16を回路基板12の厚さ中央に設けた場合の例である。図6と同様に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示した。変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は従来(図7)と同様に凸に反っている。最も反りが大きい回路基板12の端部では、反り量は280μm程度であった。従来(図7)に比べて、回路基板12の反りが40%低減している。応力緩和部材17にSn−In系はんだを用い、熱膨張抑制部材16にベアのシリコンを使用することにより、回路基板12の反りは低減できることがわかる。この回路基板12の反りは、熱膨張抑制部材16を設ける厚さ方向の位置によって変化する。反りが最も小さくなるように、ずらし量20を調整したものが実施例1(図5、図6)である。実施例1では、図5に示すように、回路基板12の厚さ中央から下方へ30μmずらしている。これは、回路基板12の厚さの1/3に相当する。こうすることにより、実施例1は従来に比べて回路基板12の反り量が1/8に低減している。
【0028】
このように、電極に応力緩和手段を設け、回路基板内の適切な位置に熱膨張抑制手段を設けることにより、回路基板の反りを大幅に低減することができる。
(実施例3、4)
次に、他の実施例により本発明の実施形態の構造を説明する。
【0029】
図9は、応力緩和部材24にゴム系の樹脂を用い、熱膨張抑制部材25に熱膨張係数が小さいSi3N4を使用した半導体装置であり、鉛フリーはんだ接続部材14の間に、アンダーフィルと呼ばれる補強のための樹脂を充填した場合の、有限要素法計算用の解析モデルである。約7000の要素に分割している。熱膨張抑制部材25の幅は電子部品13とほぼ同じであり、厚さは半導体素子18の1/5である。補強用樹脂26は、電子部品13の端まで充填されており、ぬれ性により端部では回路基板12との間でフィレット形状を成している。
【0030】
図10は、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示し、変形量は実際の5倍にして表示した。半導体装置11は全体的に凸に反っており、回路基板12の反りは端部で最も大きく、90μm程度である。
【0031】
比較のために、実施例3(図9、図10)において、応力緩和部材24も熱膨張抑制部材25も使用しない従来の場合の反り量を図11に示した。半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反り量を等高線図で示し、変形量は実際の5倍にして表示している。回路基板12は凸に反り、最も反りが大きいのは回路基板12の端部であり、350μm程度であった。
【0032】
図12は、本発明の実施例4の説明図である。実施例3(図9、図10)において、熱膨張抑制部材25の幅を電子部品13ではなく半導体素子18と同じにした場合の有限要素法計算用の解析モデルである。
【0033】
図13は、本発明の実施例4の場合に、半導体装置11全体の温度をはんだの融点から室温まで低下させたときに生じる半導体装置11の反りを計算した例である。反り量を等高線図で示した変形図22に、変形前の外郭線図23を重ねて示し、変形量は実際の5倍にして表示した。半導体装置11は全体的に凸に反っており、回路基板12の反りは端部で最も大きく、140μm程度であった。従来(図11)に比べて、回路基板12の反りが半分以下に低減している。応力緩和部材24にゴム系の樹脂を用い、熱膨張抑制部材25にSi3N4を使用することにより、鉛フリーはんだ接続部材14の間に補強用樹脂を充填した場合であっても、回路基板12の反りを低減できることがわかる。この回路基板12の反りは、熱膨張抑制部材25を設ける幅によって変化する。
【0034】
反りが最も小さくなるように、この熱膨張抑制部材25の幅を調整したものが実施例3(図9、図10)である。実施例3では、図9に示すように、熱膨張抑制部材25の幅を電子部品13とほぼ同じにしている。こうすることにより、実施例3は従来(図11)に比べて回路基板12の反り量が1/3以下に低減している。
【0035】
このように、電極に応力緩和手段を設け、回路基板内の適切な位置に熱膨張抑制手段を設けることにより、回路基板の反りを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の応力緩和部材の材料試験結果を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図4】従来の半導体装置の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図7】従来の半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図8】本発明の実施例2に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図9】本発明の実施例3に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図10】本発明の実施例3に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図11】従来の半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図12】本発明の実施例4に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【図13】本発明の実施例4に係る半導体装置の有限要素法計算の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1、11 半導体装置
2、12 回路基板
3、13 電子部品
4、14 鉛フリーはんだ接続部材
5、15 基板側電極
6 熱膨張抑制部材
7 応力緩和部材
21 反りの基準点
22 変形図
23 変形前の外郭線図
24 ゴム系樹脂
25 Si3N4
26 補強用樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有している回路基板と、
前記回路基板に載置されている電子部品と、
鉛以外の金属からなり、前記回路基板の前記電極と前記電子部品とを接続している接続手段と、
を有し、
前記回路基板の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段が該回路基板内に設けられているとともに、前記電極内に生じる応力を緩和する応力緩和手段が該電極に設けられている、
半導体装置。
【請求項2】
前記熱膨張抑制手段は、前記回路基板の厚さ方向と直交する方向に設けられた板状部材であり、
前記板状部材は、前記回路基板の熱膨張係数より低い熱膨張係数を有しているとともに、該回路基板内において前記電子部品が載置されている面の反対側の面に近い位置に配置されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記板状部材は、前記回路基板のヤング率より高いヤング率の材料でできている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記板状部材は、単層または複数の層で構成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電極は、前記接続手段を向いて開放した内側空間を有する凹部を有し、
前記応力緩和手段は、前記内側空間内に充填された導電性の充填部材であり、
前記充填部材は、前記接続手段と電気的に接続し、前記電極のヤング率より低いヤング率を有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記充填部材は、Sn―In系、Sn―Cu系、Sn―Zn系またはSn―Bi系のはんだ材料でできている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記充填部材は、粘弾性高分子材料でできている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項1】
電極を有している回路基板と、
前記回路基板に載置されている電子部品と、
鉛以外の金属からなり、前記回路基板の前記電極と前記電子部品とを接続している接続手段と、
を有し、
前記回路基板の熱膨張を抑制する熱膨張抑制手段が該回路基板内に設けられているとともに、前記電極内に生じる応力を緩和する応力緩和手段が該電極に設けられている、
半導体装置。
【請求項2】
前記熱膨張抑制手段は、前記回路基板の厚さ方向と直交する方向に設けられた板状部材であり、
前記板状部材は、前記回路基板の熱膨張係数より低い熱膨張係数を有しているとともに、該回路基板内において前記電子部品が載置されている面の反対側の面に近い位置に配置されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記板状部材は、前記回路基板のヤング率より高いヤング率の材料でできている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記板状部材は、単層または複数の層で構成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電極は、前記接続手段を向いて開放した内側空間を有する凹部を有し、
前記応力緩和手段は、前記内側空間内に充填された導電性の充填部材であり、
前記充填部材は、前記接続手段と電気的に接続し、前記電極のヤング率より低いヤング率を有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記充填部材は、Sn―In系、Sn―Cu系、Sn―Zn系またはSn―Bi系のはんだ材料でできている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記充填部材は、粘弾性高分子材料でできている、請求項5に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−33100(P2009−33100A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53316(P2008−53316)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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