半導体装置
【課題】クロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく所望の位相遅延を可能にする半導体装置を提供する。
【解決手段】リファレンスクロックと第1のディレイラインで遅延させたリファレンスクロックとの位相比較結果に応じて第1のディレイラインでの遅延量を制御し、制御結果に基づいて第1のクロックを第2のディレイラインで遅延させ所定の位相差を有する制御クロックを生成する半導体装置にて、第1のディレイラインでの遅延量が設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超える場合には、セレクタによりリファレンスクロックとして出力するクロックを第1のクロックから定数倍の周波数を有する第2のクロックに切り替えるようにして、第1のクロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく所定の位相差を有する制御クロックを生成できるようにする。
【解決手段】リファレンスクロックと第1のディレイラインで遅延させたリファレンスクロックとの位相比較結果に応じて第1のディレイラインでの遅延量を制御し、制御結果に基づいて第1のクロックを第2のディレイラインで遅延させ所定の位相差を有する制御クロックを生成する半導体装置にて、第1のディレイラインでの遅延量が設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超える場合には、セレクタによりリファレンスクロックとして出力するクロックを第1のクロックから定数倍の周波数を有する第2のクロックに切り替えるようにして、第1のクロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく所定の位相差を有する制御クロックを生成できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、ディレイ・ロックド・ループ(Delay Locked Loop:DLL)回路に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルDLL(D−DLL)回路は、例えばDDR(Double Data Rate)メモリのインタフェース(以下、DDR−IFとも称す。)に用いられている。DDR−IFにおいては、データストローブ信号(クロック)の周期をTとすると、データ信号によるデータを正確に得るためにはデータストローブ信号に(T/4)の遅延を与える必要がある。そこで、このような遅延を得るためにD−DLL回路が用いられる。
【0003】
例えば、データストローブ信号を(T/4)だけ遅延させるためのD−DLL回路は、遅延制御部(例えば、Delay Line Controlマクロ)及び遅延部(例えば、Delay Lineマクロ)を有する。遅延制御部は、周期Tのリファレンスクロック(データストローブ信号、基準クロック)と、遅延させたリファレンスクロックとの位相比較を行い、遅延量が360°分の位相遅れとなるよう制御を行う。また、遅延部は、遅延制御部での制御の結果に基づいて、データストローブ信号を90°分の位相(すなわち、T/4の期間)だけ遅延させる。
【0004】
ところが、リファレンスクロックの周波数が低くなると、360°分の位相遅れに相当する遅延時間が長くなり、遅延制御部における遅延素子(ディレイ素子)が不足してリファレンスクロックを360°分遅延させることが不可能となる場合がある。このような場合には、D−DLL回路が有する遅延素子の数を増やしたり、遅延素子の1つ当たりの遅延量を増やしたりすることで、前述の不都合を回避することができる。
【0005】
また、リファレンスクロックとして供給されたクロックが低周波数である場合に、そのクロックの定数倍の周波数を有する逓倍クロックを生成し、生成した逓倍クロックをリファレンスクロックとして用いることで、正常動作を行えるようにしたDLL回路が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−49595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のようにD−DLL回路が有する遅延素子の数を増やすと回路面積が増大し、また遅延素子の1つ当たりの遅延量を増やすとジッタが増大するという問題がある。また、特許文献1に記載のDLL回路は、クロックの遅延量がDLL回路における最大遅延量を超えるオーバーフロー状態になった時に、逓倍クロックをリファレンスクロックとして用いるよう切り替えを行うため、処理に多大な時間を要してしまう。
【0008】
本発明の目的は、クロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく所望の位相遅延を可能にする半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、第1のクロック又は第2のクロック(第1のクロックの定数倍の周波数を有する)の一方を基準クロックとして出力する選択部と、選択部より出力された基準クロックと第1の遅延部により遅延させた基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、位相比較結果に応じて、第1の遅延部での遅延量を制御し、その遅延量が第1の遅延部における最大遅延量に応じた遅延量以上かつ最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、制御部の制御結果に基づいて、第1のクロックから所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを有する半導体装置が提供される。選択部は、制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替える。
【発明の効果】
【0010】
第1のクロックの周波数が低く、位相比較結果に応じて制御される第1の遅延部での遅延量が所定の閾値遅延量を超える場合には、定数倍の周波数を有する第2のクロックに切り替えて位相比較を行い、その結果に基づいて第1のクロックから制御クロックを生成する。これにより、第1の遅延部での遅延量がオーバーフロー状態に至る前にクロックを切り替えて処理を行うことができ、第1のクロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく、第1のクロックを基に所定の位相差を有する制御クロックを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるDLL(ディレイ・ロックド・ループ)回路の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態における遅延情報比較回路の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態におけるDLL回路での処理の流れを示す図である。
【図4】本実施形態におけるDLL回路の動作例を示す図である。
【図5】本実施形態におけるDLL回路の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を適用したDLL(ディレイ・ロックド・ループ)回路の構成例を示すブロック図である。本実施形態におけるDLL回路は、直列接続される、単位時間遅延させる複数の遅延回路を有し、接続する遅延回路の段数を調整することによりデジタル量で遅延量が制御されるデジタルDLL(D−DLL)回路である。
【0014】
図1において、11はクロック切り替え用のセレクタ、12は第1のディレイライン、13は位相比較回路、14は第1の制御回路、15は遅延情報比較回路、16は第2の制御回路、17は第2のディレイライン、18はOR(論理和演算)回路である。本実施形態では、DDR−IFに適用されるDLL回路を一例として示しており、データストローブ信号DQSを90°分だけ位相遅延させて(T/4(4分の1周期)遅延させて)制御クロックとして出力させるものとする。
【0015】
セレクタ11は、第1のクロックRCK1及び第2のクロックRCK2が入力され、OR回路18の出力に応じて第1のクロックRCK1又は第2のクロックRCK2のいずれかを選択してリファレンスクロック(基準クロック)として出力する。第1のクロックRCK1は、DDR−IFの×1CLKである。第2のクロックRCK2は、第1のクロックRCK1の定数倍の周波数を有するクロックであり、ここではDDR−IFの×2CLKとする。
なお、本願実施例は、DDR−IFの×2CLKに限定されず、DDR−IFの×4CLKとしてもよく、DDR−IFの×(N×CLK)としてよい(Nは1以上の整数)。
【0016】
また、OR回路18は、遅延情報比較回路15から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1、及び第1の制御回路14から出力される第2のクロック切り替え信号CKC2が入力され、その演算結果を出力する。
【0017】
第1のディレイライン12は、直列接続される複数の遅延回路を有する。遅延回路の各々は、入力を単位時間遅延させ出力する。第1のディレイライン12は、第1の制御回路14から出力される遅延情報(ディレイコード)DLIAに応じ、接続する遅延回路の段数を調整することで遅延量が制御され、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックを所望の遅延量だけ遅延させて出力する。遅延情報(ディレイコード)DLIAは、例えば直列接続する遅延回路の個数に対応する。
【0018】
位相比較回路13は、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックと、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックとの位相を比較し、比較結果を第1の制御回路14に出力する。位相比較回路13は、例えば第1のディレイライン12での遅延量が不足しているか又は過剰であるかについて比較を行う。また、例えば、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたか否かについて比較を行う。
【0019】
第1の制御回路14は、位相比較回路13から出力される比較結果及び遅延情報比較回路15から出力される更新後の遅延情報(ディレイコード)DLINが入力され、それらに応じて遅延情報DLIA、信号OVS及び第2のクロック切り替え信号CKC2を出力する。ここで、信号OVSは、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたことを示す信号である。また、第2のクロック切り替え信号CKC2は、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する信号である。
【0020】
第1の制御回路14は、例えば、遅延情報比較回路15からの更新後の遅延情報DLINを受けると、それを遅延情報DLIAとして第1のディレイライン12に出力する。また、例えば、位相比較回路13からの比較結果により、ロック後にリファレンスクロックが低周波数になったと判断した場合には第2のクロック切り替え信号CKC2を出力する。また、遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えた場合には信号OVSを出力する。
【0021】
遅延情報比較回路15は、第1の制御回路14から出力される遅延情報DLIA及び信号OVSとが入力され、それらに応じて遅延情報DLIN、DLIB及び第1のクロック切り替え信号CKC1を出力する。ここで、第1のクロック切り替え信号CKC1は、第2のクロック切り替え信号CKC2と同様に、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する信号である。
【0022】
第1の制御回路14及び遅延情報比較回路15により、位相比較回路13の比較結果等に応じて、第1のディレイライン12での遅延量を制御し、かつ遅延量(DLIA)が所定の閾値遅延量(hDLI)を超えるか否かを判定する制御部が実現される。例えば、第1の制御回路14及び遅延情報比較回路15によって、遅延されていないリファレンスクロックに対する遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが最終的に360°となるように第1のディレイライン12での遅延量が制御される。
【0023】
遅延情報比較回路15は、例えば図2に示すように構成される。図2は、遅延情報比較回路15の構成例を示すブロック図である。
遅延情報比較回路15は、比較部21、遅延情報更新部22、及び遅延情報出力部23とを有する。
【0024】
比較部21は、第1の制御回路14から出力される遅延情報DLIA及び図示しない設定部(例えばレジスタ等)から出力される閾値hDLIが入力される。遅延情報DLIAは、前述の説明から明らかなように第1のディレイライン12での遅延量を示し、閾値hDLIは、所定の閾値遅延量を示す。例えば、遅延情報DLIA及び閾値hDLIは、8ビットのバイナリ値(バイナリコード)である。
【0025】
比較部21は、遅延情報DLIAと閾値hDLIとを比較して、遅延情報DLIAが閾値hDLIを超えた場合には、第1のクロック切り替え信号CKC1を出力する。すなわち、比較部21は、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えた場合には、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する。なお、遅延情報DLIAと閾値hDLIとの比較は、少なくとも信号OVSが出力されていない(活性化されていない)とき、すなわち第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えていないときに行えば良い。
【0026】
ここで、閾値hDLIにより示される所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)以上かつ最大遅延量未満の遅延量である。例えば、遅延情報DLIA及び閾値hDLIが8ビットのバイナリ値(“00000000”〜“11111111”)で表され、遅延情報DLIAの値が大きいほど遅延量が大きいとすると、閾値hDLIは“10000000”〜“11111110”である。このようにすることで、第1のディレイライン12での遅延量がオーバーフロー状態に至る前に、リファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示することができる。さらに、閾値hDLIにより示される所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることが望ましく、不要な処理を行うことなく速やかにリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示することができる。
【0027】
遅延情報更新部22は、比較部21を介して遅延情報DLIAが入力される。また、遅延情報更新部22は、第1の制御回路14から出力される信号OVS及び比較部21から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1が入力される。
【0028】
遅延情報更新部22は、信号OVS及び第1のクロック切り替え信号CKC1が出力されていない(活性化されていない)場合には、遅延情報DLIAを1増加させて更新後の遅延情報DLINとして出力する。また、遅延情報更新部22は、信号OVSが出力された(活性化された)場合には、遅延情報DLIAを2倍の値にして更新後の遅延情報DLINとして出力する。また、遅延情報更新部22は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力された(活性化された)場合には、遅延情報DLIAを1/2に設定し更新後の遅延情報DLINとして出力する。
【0029】
遅延情報出力部23は、遅延情報更新部22から出力される遅延情報DLINが入力されるとともに、比較部21から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1が入力される。遅延情報出力部23は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力されていない(活性化されていない)場合には、遅延情報DLINを遅延情報DLIBとして出力する。また、遅延情報出力部23は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力された(活性化された)場合には、それ以降遅延情報DLINを2倍にして遅延情報DLIBとして出力する。
【0030】
第2の制御回路16は、遅延情報比較回路15から出力される遅延情報DLIBが入力され、それに応じて第2のディレイライン17における遅延量を制御する。
【0031】
第2のディレイライン17は、直列接続される複数の遅延回路を有する。遅延回路の各々は、入力を単位時間遅延させ出力する。第2のディレイライン17は、第2の制御回路16から出力される遅延情報(ディレイコード)に応じて、接続する遅延回路の段数を調整することで遅延量が制御される。そして第2のディレイライン17は、データストローブ信号DQSを所望の遅延量だけ遅延させ、所定の位相差を有する制御クロックDLLOとして出力する。
【0032】
例えば、ディレイライン12、17が有する遅延回路の各々の単位遅延時間が同じであれば、第2の制御回路16は、第2のディレイライン17によりデータストローブ信号DQSを90°だけ位相遅延させるために、遅延情報DLIBを(1/4)にして第2のディレイライン17に出力する。
【0033】
次に、本実施形態におけるDLL回路の動作について説明する。
図3は、本実施形態におけるDLL回路での処理の流れの概要を示す図である。
【0034】
まず、動作を開始する際には、セレクタ11は、第1のクロックRCK1(×1CLK)をリファレンスクロックとして出力し、遅延情報DLI(DLIA)は初期化されているものとする。なお、以下の説明では、遅延情報は8ビットのバイナリ値とし、遅延情報DLI(DLIA)の初期値は“00000001”とする。
【0035】
セレクタ11から出力されたリファレンスクロックは、第1のディレイライン12により遅延情報DLIAに応じた遅延量だけ遅延されて出力される。位相比較回路13は、セレクタ11から出力されたリファレンスクロックと第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックとの位相を比較して比較結果を出力する。位相比較回路13から出力された比較結果に応じて、遅延情報比較回路15は、次のような遅延情報(遅延量)に係る処理を行う。
【0036】
まず、遅延情報比較回路15は、セレクタ11から出力されたリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたか否かを判定する(S1)。この判定は、例えば信号OVSに基づいて行われる。
【0037】
ステップS1での判定の結果、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えていない場合には(ステップS1のNO)、ステップS2に進む。ステップS2では、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLIAと閾値hDLIと比較し、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えたか否かを判定する。
【0038】
ステップS2での判定の結果、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えていない場合には(ステップS2のNO)、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLI(DLIA)を1増加させて(S3)、ステップS1に戻る。そして、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えるか、あるいは第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えるまで、前述したステップS1〜S3の処理を繰り返す。
【0039】
ここで、ステップS1での判定の結果、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えている場合には(ステップS1のYES)、ステップS4に進む。この場合には、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える前に、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えているので、位相遅れが360°に達するときでも第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量を超えることはない。したがって、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLIを2倍の値にして(S4)、第1のディレイライン12によりリファレンスクロックを360°分位相遅延させるロック検出処理(S6)に移行する。
【0040】
また、ステップS2での判定の結果、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えている場合には(ステップS2のYES)、ステップS5に進む。この場合には、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超える前に、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えていることとなる。ここで、所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)以上かつ最大遅延量未満の間の遅延量である。
【0041】
つまり、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超える前に、設定可能な最大遅延量の(1/2)を超えているので、リファレンスクロックの位相遅れを360°にすることは不可能となる。したがって、遅延情報比較回路15は、第1のクロック切り替え信号CKC1を出力して、リファレンスクロックとして第2のクロックRCK2が出力されるよう切り替えを指示する(S5)。そして、リファレンスクロックとして出力された第2のクロックRCK2を用いて、第1のディレイライン12によりリファレンスクロックを360°分位相遅延させるロック検出処理(S6)に移行する。
【0042】
以上のようにして、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える前に、第1のディレイライン12により遅延された第1のクロックRCK1の位相遅れが180°を超える場合には、第1のクロックRCK1がリファレンスクロックとして用いられる。そして、例えば図4に示すように、第1のディレイライン12により第1のクロックRCK1を時刻T11〜T13に相当する時間分遅延させると360°分の位相遅れとなる場合には、その1/4である時刻T11〜T12に相当する時間分だけ第2のディレイライン17により遅延させることでデータストローブ信号DQSを90°分位相遅延させることができる。なお、図4において、DLC及びDLは、第1のディレイライン12及び第2のディレイライン17が有する遅延回路を模式的に示しており、斜線を施した部分が使用されている部分(接続される遅延回路)に相当する(図5においても同様)。
【0043】
また、第1のディレイライン12により遅延された第1のクロックRCK1の位相遅れが180°を超える前に、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える場合には、クロック切り替えが行われる。例えば、図5に示すように所定の閾値遅延量(ここでは、HDで示す設定可能な最大遅延量の(1/2)とする。)分遅延させたとしても、第1のクロックRCK1の位相遅れが180°に達しない場合には、第2のクロックRCK2がリファレンスクロックとして用いられる。そして、第1のディレイライン12により第2のクロックRCK2を時刻T21〜T23に相当する時間分遅延させると360°分の位相遅れとなる場合には、その1/2(第2のクロックRCK2での180°位相遅延分)である時刻T21〜T22に相当する時間分だけ第2のディレイライン17により遅延させることでデータストローブ信号DQSを90°分位相遅延させることができる。
【0044】
このように第1のクロックRCK1(×1CLK)の周波数が低い場合には、第1のディレイライン12での遅延量がオーバーフロー状態に至る前に逓倍クロックである第2のクロックRCK2をリファレンスクロックとして用いるように切り替える。これにより、DLL回路が正常動作可能な下限周波数を下げることができ、第1のクロックRCK1(×1CLK)の周波数が低くても、多大な時間を要することなく、データストローブ信号DQSを基に所定の位相差を有する制御クロックを出力することができる。例えば、リファレンスクロックとして、通常は第1のクロックRCK1を用い、第1のクロックRCK1の周波数が低い場合には2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2を用いることで、第1のクロックRCK1のみを用いるときに比べて1/2の周波数まで対応することができる。
【0045】
また、ディレイライン12、17が有する遅延回路の数を増やしたり、遅延回路の1つ当たりの遅延量を増やしたりすることなく、低い周波数に対応することができ、回路面積が増大したり、ジッタが増大したりするといった不都合が発生することもない。
【0046】
なお、前述した実施形態では、リファレンスクロックとして第1のクロックRCK1及び第1のクロックRCK1の2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2を用いる場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1のクロックRCK1及び第1のクロックRCK1の2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2に加え、さらに第1のクロックRCK1の4倍の周波数を有するクロックを用いるようにしても良く、この場合にはさらに低い周波数(1/4の周波数)まで対応することが可能となる。
【0047】
また、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0048】
(付記1)第1のクロック及び当該第1のクロックの定数倍の周波数を有する第2のクロックが入力され、前記第1のクロック又は前記第2のクロックの一方を基準クロックとして出力する選択部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックを遅延させる第1の遅延部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックと前記第1の遅延部により遅延した基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部の比較結果に応じて、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量を制御し、当該遅延量が前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ前記最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、
前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを遅延させ当該第1のクロックと所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを備え、
前記選択部は、前記制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替えることを特徴とする半導体装置。
(付記2)前記第2のクロックは、前記第1のクロックの2N(Nは1以上の整数)倍の周波数を有するクロックであることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
(付記3)前記所定の閾値遅延量は、前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることを特徴とする付記1又は2記載の半導体装置。
(付記4)前記選択部より前記第1のクロックを基準クロックとして出力し、前記制御部の判定結果、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量が前記所定の閾値遅延量を超えた場合には、前記選択部より前記第2のクロックを基準クロックとして出力するよう切り替えることを特徴とする付記1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記5)前記制御部は、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量と前記所定の閾値遅延量とを比較し、比較結果に応じて前記選択部にクロック切り替えを指示する信号を出力する比較部を有することを特徴とする付記1〜4の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記6)前記第2の遅延部は、前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを90°分位相遅延させた制御クロックを生成することを特徴とする付記1〜5の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記7)前記第1の遅延部及び前記第2の遅延部の各々は、単位時間遅延させる複数の遅延回路を有し、当該複数の遅延回路が直列接続されていることを特徴とする付記1〜6の何れか1項に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0049】
11 セレクタ
12 ディレイライン
13 位相比較回路
14 第1の制御回路
15 遅延情報比較回路
16 第2の制御回路
17 ディレイライン
21 比較部
22 遅延情報更新部
23 遅延情報出力部
RCK1、RCK2 クロック
DLIA、DLIB、DLIN 遅延情報
CKC1、CKC2 クロック切り替え信号
DQS データストローブ信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、ディレイ・ロックド・ループ(Delay Locked Loop:DLL)回路に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルDLL(D−DLL)回路は、例えばDDR(Double Data Rate)メモリのインタフェース(以下、DDR−IFとも称す。)に用いられている。DDR−IFにおいては、データストローブ信号(クロック)の周期をTとすると、データ信号によるデータを正確に得るためにはデータストローブ信号に(T/4)の遅延を与える必要がある。そこで、このような遅延を得るためにD−DLL回路が用いられる。
【0003】
例えば、データストローブ信号を(T/4)だけ遅延させるためのD−DLL回路は、遅延制御部(例えば、Delay Line Controlマクロ)及び遅延部(例えば、Delay Lineマクロ)を有する。遅延制御部は、周期Tのリファレンスクロック(データストローブ信号、基準クロック)と、遅延させたリファレンスクロックとの位相比較を行い、遅延量が360°分の位相遅れとなるよう制御を行う。また、遅延部は、遅延制御部での制御の結果に基づいて、データストローブ信号を90°分の位相(すなわち、T/4の期間)だけ遅延させる。
【0004】
ところが、リファレンスクロックの周波数が低くなると、360°分の位相遅れに相当する遅延時間が長くなり、遅延制御部における遅延素子(ディレイ素子)が不足してリファレンスクロックを360°分遅延させることが不可能となる場合がある。このような場合には、D−DLL回路が有する遅延素子の数を増やしたり、遅延素子の1つ当たりの遅延量を増やしたりすることで、前述の不都合を回避することができる。
【0005】
また、リファレンスクロックとして供給されたクロックが低周波数である場合に、そのクロックの定数倍の周波数を有する逓倍クロックを生成し、生成した逓倍クロックをリファレンスクロックとして用いることで、正常動作を行えるようにしたDLL回路が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−49595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のようにD−DLL回路が有する遅延素子の数を増やすと回路面積が増大し、また遅延素子の1つ当たりの遅延量を増やすとジッタが増大するという問題がある。また、特許文献1に記載のDLL回路は、クロックの遅延量がDLL回路における最大遅延量を超えるオーバーフロー状態になった時に、逓倍クロックをリファレンスクロックとして用いるよう切り替えを行うため、処理に多大な時間を要してしまう。
【0008】
本発明の目的は、クロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく所望の位相遅延を可能にする半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、第1のクロック又は第2のクロック(第1のクロックの定数倍の周波数を有する)の一方を基準クロックとして出力する選択部と、選択部より出力された基準クロックと第1の遅延部により遅延させた基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、位相比較結果に応じて、第1の遅延部での遅延量を制御し、その遅延量が第1の遅延部における最大遅延量に応じた遅延量以上かつ最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、制御部の制御結果に基づいて、第1のクロックから所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを有する半導体装置が提供される。選択部は、制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替える。
【発明の効果】
【0010】
第1のクロックの周波数が低く、位相比較結果に応じて制御される第1の遅延部での遅延量が所定の閾値遅延量を超える場合には、定数倍の周波数を有する第2のクロックに切り替えて位相比較を行い、その結果に基づいて第1のクロックから制御クロックを生成する。これにより、第1の遅延部での遅延量がオーバーフロー状態に至る前にクロックを切り替えて処理を行うことができ、第1のクロックの周波数が低くても、多大な時間を要することなく、第1のクロックを基に所定の位相差を有する制御クロックを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるDLL(ディレイ・ロックド・ループ)回路の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態における遅延情報比較回路の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態におけるDLL回路での処理の流れを示す図である。
【図4】本実施形態におけるDLL回路の動作例を示す図である。
【図5】本実施形態におけるDLL回路の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を適用したDLL(ディレイ・ロックド・ループ)回路の構成例を示すブロック図である。本実施形態におけるDLL回路は、直列接続される、単位時間遅延させる複数の遅延回路を有し、接続する遅延回路の段数を調整することによりデジタル量で遅延量が制御されるデジタルDLL(D−DLL)回路である。
【0014】
図1において、11はクロック切り替え用のセレクタ、12は第1のディレイライン、13は位相比較回路、14は第1の制御回路、15は遅延情報比較回路、16は第2の制御回路、17は第2のディレイライン、18はOR(論理和演算)回路である。本実施形態では、DDR−IFに適用されるDLL回路を一例として示しており、データストローブ信号DQSを90°分だけ位相遅延させて(T/4(4分の1周期)遅延させて)制御クロックとして出力させるものとする。
【0015】
セレクタ11は、第1のクロックRCK1及び第2のクロックRCK2が入力され、OR回路18の出力に応じて第1のクロックRCK1又は第2のクロックRCK2のいずれかを選択してリファレンスクロック(基準クロック)として出力する。第1のクロックRCK1は、DDR−IFの×1CLKである。第2のクロックRCK2は、第1のクロックRCK1の定数倍の周波数を有するクロックであり、ここではDDR−IFの×2CLKとする。
なお、本願実施例は、DDR−IFの×2CLKに限定されず、DDR−IFの×4CLKとしてもよく、DDR−IFの×(N×CLK)としてよい(Nは1以上の整数)。
【0016】
また、OR回路18は、遅延情報比較回路15から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1、及び第1の制御回路14から出力される第2のクロック切り替え信号CKC2が入力され、その演算結果を出力する。
【0017】
第1のディレイライン12は、直列接続される複数の遅延回路を有する。遅延回路の各々は、入力を単位時間遅延させ出力する。第1のディレイライン12は、第1の制御回路14から出力される遅延情報(ディレイコード)DLIAに応じ、接続する遅延回路の段数を調整することで遅延量が制御され、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックを所望の遅延量だけ遅延させて出力する。遅延情報(ディレイコード)DLIAは、例えば直列接続する遅延回路の個数に対応する。
【0018】
位相比較回路13は、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックと、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックとの位相を比較し、比較結果を第1の制御回路14に出力する。位相比較回路13は、例えば第1のディレイライン12での遅延量が不足しているか又は過剰であるかについて比較を行う。また、例えば、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたか否かについて比較を行う。
【0019】
第1の制御回路14は、位相比較回路13から出力される比較結果及び遅延情報比較回路15から出力される更新後の遅延情報(ディレイコード)DLINが入力され、それらに応じて遅延情報DLIA、信号OVS及び第2のクロック切り替え信号CKC2を出力する。ここで、信号OVSは、セレクタ11から出力されるリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたことを示す信号である。また、第2のクロック切り替え信号CKC2は、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する信号である。
【0020】
第1の制御回路14は、例えば、遅延情報比較回路15からの更新後の遅延情報DLINを受けると、それを遅延情報DLIAとして第1のディレイライン12に出力する。また、例えば、位相比較回路13からの比較結果により、ロック後にリファレンスクロックが低周波数になったと判断した場合には第2のクロック切り替え信号CKC2を出力する。また、遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えた場合には信号OVSを出力する。
【0021】
遅延情報比較回路15は、第1の制御回路14から出力される遅延情報DLIA及び信号OVSとが入力され、それらに応じて遅延情報DLIN、DLIB及び第1のクロック切り替え信号CKC1を出力する。ここで、第1のクロック切り替え信号CKC1は、第2のクロック切り替え信号CKC2と同様に、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する信号である。
【0022】
第1の制御回路14及び遅延情報比較回路15により、位相比較回路13の比較結果等に応じて、第1のディレイライン12での遅延量を制御し、かつ遅延量(DLIA)が所定の閾値遅延量(hDLI)を超えるか否かを判定する制御部が実現される。例えば、第1の制御回路14及び遅延情報比較回路15によって、遅延されていないリファレンスクロックに対する遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが最終的に360°となるように第1のディレイライン12での遅延量が制御される。
【0023】
遅延情報比較回路15は、例えば図2に示すように構成される。図2は、遅延情報比較回路15の構成例を示すブロック図である。
遅延情報比較回路15は、比較部21、遅延情報更新部22、及び遅延情報出力部23とを有する。
【0024】
比較部21は、第1の制御回路14から出力される遅延情報DLIA及び図示しない設定部(例えばレジスタ等)から出力される閾値hDLIが入力される。遅延情報DLIAは、前述の説明から明らかなように第1のディレイライン12での遅延量を示し、閾値hDLIは、所定の閾値遅延量を示す。例えば、遅延情報DLIA及び閾値hDLIは、8ビットのバイナリ値(バイナリコード)である。
【0025】
比較部21は、遅延情報DLIAと閾値hDLIとを比較して、遅延情報DLIAが閾値hDLIを超えた場合には、第1のクロック切り替え信号CKC1を出力する。すなわち、比較部21は、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えた場合には、セレクタ11に対してリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示する。なお、遅延情報DLIAと閾値hDLIとの比較は、少なくとも信号OVSが出力されていない(活性化されていない)とき、すなわち第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えていないときに行えば良い。
【0026】
ここで、閾値hDLIにより示される所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)以上かつ最大遅延量未満の遅延量である。例えば、遅延情報DLIA及び閾値hDLIが8ビットのバイナリ値(“00000000”〜“11111111”)で表され、遅延情報DLIAの値が大きいほど遅延量が大きいとすると、閾値hDLIは“10000000”〜“11111110”である。このようにすることで、第1のディレイライン12での遅延量がオーバーフロー状態に至る前に、リファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示することができる。さらに、閾値hDLIにより示される所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることが望ましく、不要な処理を行うことなく速やかにリファレンスクロックとして出力するクロックの切り替えを指示することができる。
【0027】
遅延情報更新部22は、比較部21を介して遅延情報DLIAが入力される。また、遅延情報更新部22は、第1の制御回路14から出力される信号OVS及び比較部21から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1が入力される。
【0028】
遅延情報更新部22は、信号OVS及び第1のクロック切り替え信号CKC1が出力されていない(活性化されていない)場合には、遅延情報DLIAを1増加させて更新後の遅延情報DLINとして出力する。また、遅延情報更新部22は、信号OVSが出力された(活性化された)場合には、遅延情報DLIAを2倍の値にして更新後の遅延情報DLINとして出力する。また、遅延情報更新部22は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力された(活性化された)場合には、遅延情報DLIAを1/2に設定し更新後の遅延情報DLINとして出力する。
【0029】
遅延情報出力部23は、遅延情報更新部22から出力される遅延情報DLINが入力されるとともに、比較部21から出力される第1のクロック切り替え信号CKC1が入力される。遅延情報出力部23は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力されていない(活性化されていない)場合には、遅延情報DLINを遅延情報DLIBとして出力する。また、遅延情報出力部23は、第1のクロック切り替え信号CKC1が出力された(活性化された)場合には、それ以降遅延情報DLINを2倍にして遅延情報DLIBとして出力する。
【0030】
第2の制御回路16は、遅延情報比較回路15から出力される遅延情報DLIBが入力され、それに応じて第2のディレイライン17における遅延量を制御する。
【0031】
第2のディレイライン17は、直列接続される複数の遅延回路を有する。遅延回路の各々は、入力を単位時間遅延させ出力する。第2のディレイライン17は、第2の制御回路16から出力される遅延情報(ディレイコード)に応じて、接続する遅延回路の段数を調整することで遅延量が制御される。そして第2のディレイライン17は、データストローブ信号DQSを所望の遅延量だけ遅延させ、所定の位相差を有する制御クロックDLLOとして出力する。
【0032】
例えば、ディレイライン12、17が有する遅延回路の各々の単位遅延時間が同じであれば、第2の制御回路16は、第2のディレイライン17によりデータストローブ信号DQSを90°だけ位相遅延させるために、遅延情報DLIBを(1/4)にして第2のディレイライン17に出力する。
【0033】
次に、本実施形態におけるDLL回路の動作について説明する。
図3は、本実施形態におけるDLL回路での処理の流れの概要を示す図である。
【0034】
まず、動作を開始する際には、セレクタ11は、第1のクロックRCK1(×1CLK)をリファレンスクロックとして出力し、遅延情報DLI(DLIA)は初期化されているものとする。なお、以下の説明では、遅延情報は8ビットのバイナリ値とし、遅延情報DLI(DLIA)の初期値は“00000001”とする。
【0035】
セレクタ11から出力されたリファレンスクロックは、第1のディレイライン12により遅延情報DLIAに応じた遅延量だけ遅延されて出力される。位相比較回路13は、セレクタ11から出力されたリファレンスクロックと第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックとの位相を比較して比較結果を出力する。位相比較回路13から出力された比較結果に応じて、遅延情報比較回路15は、次のような遅延情報(遅延量)に係る処理を行う。
【0036】
まず、遅延情報比較回路15は、セレクタ11から出力されたリファレンスクロックに対する第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えたか否かを判定する(S1)。この判定は、例えば信号OVSに基づいて行われる。
【0037】
ステップS1での判定の結果、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えていない場合には(ステップS1のNO)、ステップS2に進む。ステップS2では、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLIAと閾値hDLIと比較し、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えたか否かを判定する。
【0038】
ステップS2での判定の結果、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えていない場合には(ステップS2のNO)、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLI(DLIA)を1増加させて(S3)、ステップS1に戻る。そして、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えるか、あるいは第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えるまで、前述したステップS1〜S3の処理を繰り返す。
【0039】
ここで、ステップS1での判定の結果、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えている場合には(ステップS1のYES)、ステップS4に進む。この場合には、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える前に、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超えているので、位相遅れが360°に達するときでも第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量を超えることはない。したがって、遅延情報比較回路15は、遅延情報DLIを2倍の値にして(S4)、第1のディレイライン12によりリファレンスクロックを360°分位相遅延させるロック検出処理(S6)に移行する。
【0040】
また、ステップS2での判定の結果、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えている場合には(ステップS2のYES)、ステップS5に進む。この場合には、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超える前に、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超えていることとなる。ここで、所定の閾値遅延量は、第1のディレイライン12に設定可能な最大遅延量の(1/2)以上かつ最大遅延量未満の間の遅延量である。
【0041】
つまり、第1のディレイライン12により遅延されたリファレンスクロックの位相遅れが180°を超える前に、設定可能な最大遅延量の(1/2)を超えているので、リファレンスクロックの位相遅れを360°にすることは不可能となる。したがって、遅延情報比較回路15は、第1のクロック切り替え信号CKC1を出力して、リファレンスクロックとして第2のクロックRCK2が出力されるよう切り替えを指示する(S5)。そして、リファレンスクロックとして出力された第2のクロックRCK2を用いて、第1のディレイライン12によりリファレンスクロックを360°分位相遅延させるロック検出処理(S6)に移行する。
【0042】
以上のようにして、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える前に、第1のディレイライン12により遅延された第1のクロックRCK1の位相遅れが180°を超える場合には、第1のクロックRCK1がリファレンスクロックとして用いられる。そして、例えば図4に示すように、第1のディレイライン12により第1のクロックRCK1を時刻T11〜T13に相当する時間分遅延させると360°分の位相遅れとなる場合には、その1/4である時刻T11〜T12に相当する時間分だけ第2のディレイライン17により遅延させることでデータストローブ信号DQSを90°分位相遅延させることができる。なお、図4において、DLC及びDLは、第1のディレイライン12及び第2のディレイライン17が有する遅延回路を模式的に示しており、斜線を施した部分が使用されている部分(接続される遅延回路)に相当する(図5においても同様)。
【0043】
また、第1のディレイライン12により遅延された第1のクロックRCK1の位相遅れが180°を超える前に、第1のディレイライン12での遅延量が所定の閾値遅延量を超える場合には、クロック切り替えが行われる。例えば、図5に示すように所定の閾値遅延量(ここでは、HDで示す設定可能な最大遅延量の(1/2)とする。)分遅延させたとしても、第1のクロックRCK1の位相遅れが180°に達しない場合には、第2のクロックRCK2がリファレンスクロックとして用いられる。そして、第1のディレイライン12により第2のクロックRCK2を時刻T21〜T23に相当する時間分遅延させると360°分の位相遅れとなる場合には、その1/2(第2のクロックRCK2での180°位相遅延分)である時刻T21〜T22に相当する時間分だけ第2のディレイライン17により遅延させることでデータストローブ信号DQSを90°分位相遅延させることができる。
【0044】
このように第1のクロックRCK1(×1CLK)の周波数が低い場合には、第1のディレイライン12での遅延量がオーバーフロー状態に至る前に逓倍クロックである第2のクロックRCK2をリファレンスクロックとして用いるように切り替える。これにより、DLL回路が正常動作可能な下限周波数を下げることができ、第1のクロックRCK1(×1CLK)の周波数が低くても、多大な時間を要することなく、データストローブ信号DQSを基に所定の位相差を有する制御クロックを出力することができる。例えば、リファレンスクロックとして、通常は第1のクロックRCK1を用い、第1のクロックRCK1の周波数が低い場合には2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2を用いることで、第1のクロックRCK1のみを用いるときに比べて1/2の周波数まで対応することができる。
【0045】
また、ディレイライン12、17が有する遅延回路の数を増やしたり、遅延回路の1つ当たりの遅延量を増やしたりすることなく、低い周波数に対応することができ、回路面積が増大したり、ジッタが増大したりするといった不都合が発生することもない。
【0046】
なお、前述した実施形態では、リファレンスクロックとして第1のクロックRCK1及び第1のクロックRCK1の2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2を用いる場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1のクロックRCK1及び第1のクロックRCK1の2倍の周波数を有する第2のクロックRCK2に加え、さらに第1のクロックRCK1の4倍の周波数を有するクロックを用いるようにしても良く、この場合にはさらに低い周波数(1/4の周波数)まで対応することが可能となる。
【0047】
また、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0048】
(付記1)第1のクロック及び当該第1のクロックの定数倍の周波数を有する第2のクロックが入力され、前記第1のクロック又は前記第2のクロックの一方を基準クロックとして出力する選択部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックを遅延させる第1の遅延部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックと前記第1の遅延部により遅延した基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部の比較結果に応じて、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量を制御し、当該遅延量が前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ前記最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、
前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを遅延させ当該第1のクロックと所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを備え、
前記選択部は、前記制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替えることを特徴とする半導体装置。
(付記2)前記第2のクロックは、前記第1のクロックの2N(Nは1以上の整数)倍の周波数を有するクロックであることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
(付記3)前記所定の閾値遅延量は、前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることを特徴とする付記1又は2記載の半導体装置。
(付記4)前記選択部より前記第1のクロックを基準クロックとして出力し、前記制御部の判定結果、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量が前記所定の閾値遅延量を超えた場合には、前記選択部より前記第2のクロックを基準クロックとして出力するよう切り替えることを特徴とする付記1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記5)前記制御部は、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量と前記所定の閾値遅延量とを比較し、比較結果に応じて前記選択部にクロック切り替えを指示する信号を出力する比較部を有することを特徴とする付記1〜4の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記6)前記第2の遅延部は、前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを90°分位相遅延させた制御クロックを生成することを特徴とする付記1〜5の何れか1項に記載の半導体装置。
(付記7)前記第1の遅延部及び前記第2の遅延部の各々は、単位時間遅延させる複数の遅延回路を有し、当該複数の遅延回路が直列接続されていることを特徴とする付記1〜6の何れか1項に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0049】
11 セレクタ
12 ディレイライン
13 位相比較回路
14 第1の制御回路
15 遅延情報比較回路
16 第2の制御回路
17 ディレイライン
21 比較部
22 遅延情報更新部
23 遅延情報出力部
RCK1、RCK2 クロック
DLIA、DLIB、DLIN 遅延情報
CKC1、CKC2 クロック切り替え信号
DQS データストローブ信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック及び当該第1のクロックの定数倍の周波数を有する第2のクロックが入力され、前記第1のクロック又は前記第2のクロックの一方を基準クロックとして出力する選択部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックを遅延させる第1の遅延部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックと前記第1の遅延部により遅延した基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部の比較結果に応じて、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量を制御し、当該遅延量が前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ前記最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、
前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを遅延させ当該第1のクロックと所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを備え、
前記選択部は、前記制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2のクロックは、前記第1のクロックの2N(Nは1以上の整数)倍の周波数を有するクロックであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定の閾値遅延量は、前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量と前記所定の閾値遅延量とを比較し、比較結果に応じて前記選択部にクロック切り替えを指示する信号を出力する比較部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の遅延部は、前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを90°分位相遅延させた制御クロックを生成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項1】
第1のクロック及び当該第1のクロックの定数倍の周波数を有する第2のクロックが入力され、前記第1のクロック又は前記第2のクロックの一方を基準クロックとして出力する選択部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックを遅延させる第1の遅延部と、
前記選択部より出力された前記基準クロックと前記第1の遅延部により遅延した基準クロックとの位相を比較する位相比較部と、
前記位相比較部の比較結果に応じて、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量を制御し、当該遅延量が前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量に応じた遅延量以上かつ前記最大遅延量未満の所定の閾値遅延量を超えるか否かを判定する制御部と、
前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを遅延させ当該第1のクロックと所定の位相差を有する制御クロックを生成する第2の遅延部とを備え、
前記選択部は、前記制御部の判定結果に応じて基準クロックとして出力するクロックを切り替えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2のクロックは、前記第1のクロックの2N(Nは1以上の整数)倍の周波数を有するクロックであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定の閾値遅延量は、前記第1の遅延部に設定可能な最大遅延量の(1/2)であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の遅延部での前記基準クロックの遅延量と前記所定の閾値遅延量とを比較し、比較結果に応じて前記選択部にクロック切り替えを指示する信号を出力する比較部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の遅延部は、前記制御部の制御結果に基づいて、前記第1のクロックを90°分位相遅延させた制御クロックを生成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2010−178201(P2010−178201A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20610(P2009−20610)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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