説明

半導体装置

【課題】半導体素子の底面に突起を形成することなく、半導体素子の位置決めを確実かつ簡単に行うことが出来る半導体装置を提供する。
【解決手段】ヒートシンク3に表面実装型パッケージの半導体素子1と配線部材2を取り付けて構成される半導体装置において、配線部材2に半導体素子1が嵌合される嵌合部22を形成し、配線部材2に形成された嵌合部22に半導体素子1を嵌合することによって半導体素子1の位置決めを行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば表面実装型パッケージの半導体素子を備えてなる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置においては、表面実装型パッケージの半導体素子(以下、半導体素子と称す)の底面には突起部が形成されており、この半導体素子が実装されるプリント基板やヒートシンクには、前記突起部が嵌合される嵌合孔が開設され、前記半導体素子の突起部を実装側であるプリント基板やヒートシンクに設けられた前記嵌合孔に嵌合して装着することで、半導体素子が位置決めされる構造となっている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−268086号公報
【特許文献2】特表2008−543266号公報(特願2008−514162号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の半導体装置では、半導体素子の底面に突起部を配設しているため、半導体素子の底面に電極や半導体素子の発熱を拡散させるためのヒートスプレッダを備えた半導体素子では、突起部を形成することが難しかった。
【0005】
また、半導体素子が実装されるプリント基板やヒートシンクにおいても、嵌合孔の加工が必要であり、作業工数が増えるという問題があった。
【0006】
また、半導体素子を装着する際にも、半導体素子の突起部が確実に嵌合孔に挿入されているかの判断が半導体素子の上面側から見たときに判別し難いという問題もあった。
【0007】
特に、半導体素子がヒートシンクに実装されてなる半導体装置の場合は、半導体素子の底面の突起部とヒートシンクの嵌合孔によって半導体素子は位置決めされ、半導体素子の配線部材も同様にヒートシンクと位置決めされることになる。
【0008】
すなわち、半導体素子の接続端子と、それが接続される配線部材の位置決めはヒートシンクを介して行われることになり、精度良く位置決めすることが難しいという問題点もあった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、半導体装置の半導体素子の底面に突起部を形成することなく、半導体素子の位置決めを確実かつ簡単に行うことが出来る半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係わる半導体装置は、ヒートシンクに表面実装型パッケージの半導体素子と配線部材を取り付けて構成される半導体装置において、前記配線部材に前記半導体素子が嵌合される嵌合部を形成し、前記配線部材に形成された前記嵌合部に前記半導体素子を嵌合することによって前記半導体素子の位置決めを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係わる半導体装置は、半導体素子を精度良く位置決めすることができ、位置決め部を確認しながら組立てられるので、組立性が向上し、半導体素子の実装不良を低減させることができる半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す縦断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す横断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる半導体装置における半導体素子を示す平面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係わる半導体装置を示す平面図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係わる半導体装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1ないし図3に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す平面図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す縦断面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係わる半導体装置を示す横断面図である。
【0014】
これら図1ないし図3において、この発明の実施の形態1における半導体装置は、半導体素子1と配線部材2とヒートシンク3とを備えている。この半導体装置の半導体素子1は、表面実装型パッケージタイプであり、偏平な樹脂製パッケージ本体12を有しており、このパッケージ本体12の内部には、図示は省略するが半導体素子チップが内装され、この半導体チップに電気接続された多数本の金属材からなるリードがパッケージ本体12の側面から2方向に延びるアウターリード4a,4bから構成されるものである。
【0015】
また、この半導体素子1が接続される配線部材2は、導電性の金属からなる電気配線を絶縁樹脂によってモールド成形されたものである。そして、配線部材2には半導体素子1が嵌合される嵌合部22を形成し、配線部材2に形成された嵌合部22に半導体素子1を嵌合することによって半導体素子1の位置決めを精度良く行うようにしている。
【0016】
また、この半導体素子1と配線部材2とが装着されるヒートシンク3は、半導体素子1の発熱を拡散させるため、アルミや銅などの熱伝導率が高い金属で構成されている。
【0017】
このように構成された半導体装置は、ヒートシンク3に嵌合部22が形成された配線部材2を装着したのち、半導体素子1のパッケージ本体12の側面を配線部材2の嵌合部22のガイド部6に嵌合させてヒートシンク3上に設置し、あらかじめ塗布されていた高熱伝導接着剤などによって固定される。その際、配線部材2の嵌合部22のガイド部6の半導体素子1が接する位置にテーパ部7を設けることで、半導体素子1の落とし込みを極めてスムーズに行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0018】
そして、半導体素子1のリードであるアウターリード4bと配線部材2の電極5とは、半田または溶接などを使用して電気的に接続されることになる。
【0019】
したがって、この実施の形態1の半導体装置では、アウターリード4bと配線部材2の電極5の接合は、前記半導体素子1のパッケージ本体12の相対向する側面と配線部材2の
嵌合部22のガイド部6とで直接位置決めされているので、半導体素子1の位置決めを精度良く行うことができ半導体素子1の実装不良を低減させることができるとともに、接合位置のずれ量が極めて少なく、接合しやすくなり、接合精度の向上ならびに接合作業性の向上を図ることができる。
【0020】
また、半導体素子1のパッケージ本体12の側面で位置決めされるため、半導体素子1の底面を平坦にすることができ、半導体素子1のヒートシンク3への伝熱面積を大きくとることができ、半導体素子1からヒートシンク3への熱の伝導効率が高められ、放熱効果を著しく向上させることができる。
【0021】
さらに、上面方向から配線部材2の嵌合部22のガイド部6が容易に確認できるため、組立性が向上するとともに半導体素子1と配線部材2との組立不良を未然に防ぐことができる。
【0022】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図4ないし図6に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図4はこの発明の実施の形態2に係わる半導体装置における半導体素子を示す平面図である。図5はこの発明の実施の形態2に係わる半導体装置を示す平面図である。図6はこの発明の実施の形態2に係わる半導体装置を示す縦断面図である。
【0023】
これら図4ないし図6において、この半導体装置の半導体素子1は、表面実装型パッケージタイプであり、偏平な樹脂製パッケージ本体12を有しており、このパッケージ本体12の内部には、図示は省略するが半導体素子チップが内装され、この半導体チップに電気接続された多数本の金属材からなるリードがパッケージ本体12の側面から2方向に延びるアウターリード4a,4bから構成されるものである。また、このパッケージ本体12に設けられた吊りリード8はパッケージ本体12の相対向する側面12aから突出して設けられている。おり、配線部材2には、この半導体素子1の吊リード8に対応したガイド部6が形成されている。
【0024】
また、この半導体素子1が接続される配線部材2は、導電性の金属からなる電気配線を絶縁樹脂によってモールド成形されたものである。そして、配線部材2には半導体素子1が嵌合される嵌合部22を形成し、配線部材2に形成された嵌合部22に半導体素子1を嵌合することによって半導体素子1の位置決めを精度良く行うようにしている。また、配線部材2に形成された嵌合部22には、パッケージ本体12に設けられた吊りリード8が係合される係合部22aが設けられている。
【0025】
このように構成された半導体装置は、ヒートシンク3に嵌合部22および係合部22aが形成された配線部材2を装着したのち、半導体素子1のパッケージ本体12の側面12aを配線部材2の嵌合部22のガイド部6に嵌合させるとともに吊りリード8を係合部22aに係合させてヒートシンク3上に設置し、あらかじめ塗布されていた高熱伝導接着剤などによって固定される。
【0026】
この実施の形態2においては、パッケージ本体12の相対向する側面12aに設けられた吊りリード8と配線部材2の嵌合部22に設けられた係合部22aとの係合によって、アウターリード4a,4bの延出方向へのずれが拘束され、吊りリード8の延出方向のずれはパッケージ本体12の側面12aと配線部材2の嵌合部22のガイド部6との嵌合によって拘束されている。
【0027】
このような構成にすることで、半導体素子1はパッケージ本体12の相対向する2側面1
2aと配線部材2の嵌合部22のガイド部6との嵌合、およびパッケージ本体12の側面12aに配設された吊りリード8と配線部材2の嵌合部22に設けられた係合部22aとの係合によって精度良く位置決めされ、半導体素子1のアウターリード4a,4bの配設されている側面にガイド部を設ける必要がなくなる。
【0028】
すなわち、パッケージ本体12の相対向する2側面12aのみで半導体素子1の位置決めを行うことができるので、アウターリード4a,4bは、その配設された側面の端まで配設が可能になる。
【0029】
また、この吊りリード8は半導体素子1を製造する上で必要な部材であるので、従来と同じトランスファーモールドを用いて製造でき、設計変更や新規設備などは不要で非常に安価にこれを実現することができる。
【0030】
また、左右の吊りリード8の数やピッチを変えることで非対称形状のガイドとすれば、装着時に極性の違いを直ちに発見することができ、後工程に極性相違のまま流れることがない。
【0031】
なお、この実施の形態2においても、半導体素子1の位置決めを精度良く行うことができるとともに、接合位置のずれ量が極めて少なく、接合しやすくなり、接合精度の向上ならびに接合作業性の向上を図ることができる。また、半導体素子1のパッケージ本体12の側面で位置決めされるため、半導体素子1の底面を平坦にすることができ、半導体素子1のヒートシンク3への伝熱面積を大きくとることができ、放熱効果を著しく向上させることができる。さらに、上面方向から配線部材2の嵌合部22のガイド部6が容易に確認できるため、半導体素子1と配線部材2との組立不良を未然に防ぐことができる。
【0032】
ところで、この発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0033】
例えば、配線部材2のガイド部6は上述した実施の形態1においては半導体素子1のパッケージ本体12の2側面と角部に設けた場合を示しているが、この形状に限定されるものではなく、半導体素子1のパッケージ本体12の配設される面内の移動を拘束するガイド形状であれば良く、例えば、鉤型のガイド部を半導体素子1のパッケージ本体12のコーナ部に形成するようにしてもよく同様の効果を奏することができる。
【0034】
また、上述した実施の形態2においても、半導体素子1の吊りリード8の数は半導体素子1の内部構成によって様々であり、この実施の形態2の数に限定されるものではない。
【0035】
ところで、上述した各実施の形態における半導体装置は、例えば、インバータ制御等を行うパワー回路部を搭載した回転電機、特にモータジェネレータ、パワーステアリングに用いられる車両用回転電機に使用することができる。このように、エンジンルームという高温で寸法的な制約が厳しく、かつ、大電流が流れる車両用回転電機には適しており、上述した各実施の形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、半導体装置の半導体素子の底面に突起を形成することなく、半導体素子の位置決めを確実かつ簡単に行うことが出来る半導体装置の実現に好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体素子
2 配線部材
3 ヒートシンク
6 ガイド部
7 テーパ部
8 吊りリード
12 パッケージ本体
12a パッケージ本体の側面
16 ガイド部
22 嵌合部
22a 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクに表面実装型パッケージの半導体素子と配線部材を取り付けて構成される半導体装置において、前記配線部材に前記半導体素子が嵌合される嵌合部を形成し、前記配線部材に形成された前記嵌合部に前記半導体素子を嵌合することによって前記半導体素子の位置決めを行うようにしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子の相対向する側面と前記配線部材に形成された前記嵌合部との嵌合により、前記半導体素子の位置決めを行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子のパッケージに設けられた吊りリードと前記配線部材の前記嵌合部に設けられた係合部との係合により、前記半導体素子の位置決めを行うようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子が位置決めされる前記配線部材に形成された前記嵌合部のガイド部にはテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子は相対向する側面に設けられた非対称形状のガイド部と前記配線部材の前記嵌合部に形成された係止部との係合により、前記半導体素子の位置決めを行うようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子の底面には電極あるいは前記半導体素子の発熱を拡散させるためのヒートスプレッダの金属面が露出されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
インバータ制御を行うパワー回路部を搭載した車両用回転電機に使用されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228335(P2011−228335A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93925(P2010−93925)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】