説明

半導体装置

【課題】モールド樹脂のクラックの発生および剥離を防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】プリント基板11と、プリント基板に搭載された磁性体12と、磁性体の側面周囲からプリント基板の表面に至る部分に形成された応力緩和樹脂層14と、プリント基板、磁性体および応力緩和樹脂層の上に接着された樹脂強化層31と、樹脂強化層を覆うように形成された樹脂封止体15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をモールド樹脂で封止することによりモジュール化した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュール化された半導体装置として、特許文献1は、半導体パッケージを開示している。この半導体パッケージは、ガラスエポキシ樹脂などからなるプリント基板上に形成されたダイパターンにICチップを固着し、リードパターンとICチップとをワイヤで接続した後に、ICチップおよびワイヤを熱硬化型のエポキシ樹脂からなる封止樹脂で封止する。
【0003】
さらに、封止樹脂の上面部にプリント基板と略等しい線膨張係数を有するガラスクロスをエポキシ樹脂で固めたガラスエポキシ板を積層し、または、封止樹脂中にガラス繊維からなるガラスクロスを埋設して構成されている。
【0004】
この構成により、封止樹脂のICチップからの剥離、封止樹脂のクラック、ICチップのアルミニウムの腐食または断線、ワイヤの断線または剥離、ダイボンドの剥離などの発生を防止できる。その結果、信頼性に優れた半導体パッケージを得ることができる。
【0005】
また、特許文献2は、第1の基板と、第1の基板に搭載されたコア(磁性体)と、第1の基板およびコアを被覆する樹脂封止体を備え、樹脂封止体内部で樹脂封止体がコアに与える応力を減少するために、さらに、コアの側面周囲から第1の基板に渡って配設された硬化型応力緩和材を備えた電子回路装置を開示している。この電子回路装置によれば、磁性体に発生する応力を減少させることができ、かつ薄型化および小型化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−124363号公報
【特許文献2】特開2010−141077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は、特許文献2に示されている電子回路装置の特徴的な部分を簡略化して示す断面図である。この電子回路装置は、図示しない一次巻線および二次巻線が形成されたプリント基板11の一部をフェライトコア12で挟み込む構造のトランス13を、図示しない他のプリント基板に形成された開口に嵌め込み、フェライトコア12の側面周囲からプリント基板11の表面に至る部分に硬化型応力緩和材としてのラバー14を設けている。
【0008】
これらプリント基板11、ラバー14およびフェライトコア12を樹脂封止体としてのモールド樹脂15で封止し、1つの電源モジュールとして構築されている。ラバー14は、モールド樹脂15がフェライトコア12に与える応力を減少させるように作用する。
【0009】
ところで、モールド樹脂15とラバー14の界面Bにおける接着力が弱く、また、モールド樹脂15の熱膨張係数とフェライトコア12の熱膨張係数が大きく異なるため、モールド樹脂15とフェライトコア12の界面Aに生じる応力も大きい。
【0010】
このため、フェライトコア12の上部のモールド樹脂15に厚さのバラツキがあると、界面Aおよび界面Bに剥離が発生し、その結果、モールド樹脂15に、例えばモールド樹脂内部の部品の角のような応力集中箇所を起点とするクラック20が発生する。
【0011】
また、特許文献1に開示された技術では、モールド樹脂による封止後に、モールド樹脂の厚さが薄い部分でクラックが発生し易く、モールド樹脂内部の部品の角を起点とするクラックの発生を防止できない。また、このクラックによりモールド樹脂の内部が露出するためにモールド樹脂の剥離が促進される。
【0012】
本発明の課題は、モールド樹脂のクラックの発生および剥離を防止できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、プリント基板と、プリント基板に搭載された磁性体と、磁性体の側面周囲から前記プリント基板の表面に至る部分に形成された応力緩和樹脂層と、プリント基板、磁性体および応力緩和樹脂層の上に接着された樹脂強化層と、樹脂強化層を覆うように形成された樹脂封止体を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、磁性体への応力緩和を目的とした応力緩和樹脂層とモールド樹脂との間にモールド樹脂のクラックを防止するための樹脂強化層を設けたので、モールド樹脂のクラックの発生および剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の特徴的な部分を簡略化して示す断面図である。
【図2】従来の半導体装置を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体装置の特徴的な部分を簡略化して示す断面図である。本発明は、主にモジュール製品に適用することができ、図1は、モジュール製品として提供されるDC−DCコンバータの構造のうちのトランスの周辺の断面を示している。
【0018】
なお、図2に示した従来の電子回路装置と同一または相当する部分には、図2で使用した符号と同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0019】
また、図1、図2の下側は、上側と対称な形状が省略されている。
【0020】
この半導体装置は、図2に示した従来の電子回路装置の磁性体としてのフェライトコア12とモールド樹脂15との界面A、応力緩和樹脂層としてのラバー14とモールド樹脂15との界面Bおよびプリント基板11とモールド樹脂15との界面Cの上に樹脂強化層31を接着したことを特徴とする。
【0021】
この樹脂強化層31の接着によって樹脂強化層31で覆われたプリント基板11、ラバー14およびフェライトコア12を、樹脂強化層31の上から樹脂封止体としてのモールド樹脂15でさらに覆って封止し、1つの電源モジュールとして構築されている。
【0022】
この構造により、フェライトコア12と樹脂強化層31との界面A’、ラバー14と樹脂強化層31との界面B’、プリント基板11と樹脂強化層31との界面C’および樹脂強化層31とモールド樹脂15との界面Dが形成される。
【0023】
樹脂強化層31としては、ガラスクロス、または、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを使用できる。なお、ガラスクロスを用いる場合は、ガラスクロス自体は接着性を有しないので、接着剤が使用される。このプリプレグを樹脂強化層31として使用することにより、モールド樹脂15とプリント基板11との熱膨張係数をバランスさせることができる。
【0024】
また、プリプレグは、モールド樹脂15との接着力が界面A’および界面B’に較べて大きく、ガラスクロスは、縦横に繊維が編まれているため引き裂きの力に強い。
【0025】
さらに、シート状の樹脂強化層31でフェライトコア12、ラバー14およびプリント基板11を覆うことにより、モールド樹脂15の形状に顕著な凹凸部分(角)がなくなるため応力を分散させることができる。これらの複合効果により、結果としてモールド樹脂15のクラックの発生を防ぐことができる。
【0026】
すなわち、樹脂強化層31が、モールド樹脂15およびプリント基板11と同程度の熱膨張係数を有し、モールド樹脂15との接着力が少なくとも界面Aおよび界面Bより大きく、モールド樹脂15が引き裂かれる力に抗い、また、モールド樹脂15の形状として顕著な応力集中箇所を作らないという条件を満たせば、モールド樹脂15にクラックは発生しない。
【0027】
この実施例1に係る半導体装置によれば、フェライトコア12への応力緩和を目的としたラバー14とモールド樹脂15との間に樹脂強化層31を設けたので、モールド樹脂15のクラックの発生および剥離を防止することができる。
【0028】
また、樹脂強化層31を設けることにより、界面A、BおよびCの断面形状が角張ったクランク形状から緩やかなS字形状に変わるので、クラックが発生する起点となる角を無くすることができる。その結果、クラックの発生を防止することができる。
【0029】
なお、ラバー14は、次の手順で設けることができる。すなわち、ラバー14を予めフェライトコア12の側面周囲からプリント基板11の表面に至る部分に設けるのではなくて、樹脂強化層31をフェライトコア12とプリント基板11に貼り付けた後に、フェライトコア12の側面周囲からプリント基板11の表面に至る部分に形成される空間にラバー14を充填するように構成することもできる。
【0030】
また、樹脂強化層31は、フェライトコア12の上面積より大きければよく、少なくともフェライトコア12のエッジ周辺に設けるだけであってもよい。
【0031】
また、樹脂強化層31は図示していない下側に設けても、両側に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、種々の電子部品をモールド樹脂で覆ってモジュール化する半導体装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 プリント基板
12 フェライトコア
13 トランス
14 ラバー
15 モールド樹脂
20 クラック
31 樹脂強化層
A,B,C 界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、
前記プリント基板に搭載された磁性体と、
前記磁性体の側面周囲から前記プリント基板の表面に至る部分に形成された応力緩和樹脂層と、
前記プリント基板、前記磁性体および前記応力緩和樹脂層の上に接着された樹脂強化層と、
前記樹脂強化層を覆うように形成された樹脂封止体と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記樹脂強化層は、少なくとも前記磁性体の上面のエッジ周辺に設けられることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記樹脂強化層の断面形状は、緩やかなS字形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記樹脂強化層は、前記樹脂封止体との接着力が、前記磁性体および前記応力緩和樹脂層との接着力より大きい接着性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−244084(P2012−244084A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115452(P2011−115452)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】