説明

半導体装置

【課題】熱伝導性および接着性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、基材2と、半導体素子3と、基材2および半導体素子3の間に介在し、両者を接着する接着層1と、を備えている。この半導体装置10は、接着層1中に、金属からなる中空粒子が分散している。接着層1は、金属からなる中空粒子を含有するペースト状の樹脂組成物を、半導体素子3と基材2とで圧着することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペーストを使用して作製した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、半導体素子がリードフレームやヒートシンク、基板などの基材上に接着層を介して固定されている。このような接着層は、接着性に加えて、導電性や熱伝導性が要求され、金属粒子を含む樹脂ペーストによって形成できることが知られている。例えば、特許文献1、2には、銀粒子を含有させた樹脂ペーストによって上記の接着層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−89721号公報
【特許文献2】特開平7−118616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような金属粒子を含む樹脂ペーストは、金属粒子が樹脂成分に比べて比重が大きいため、使用中や放置中に金属粒子の沈降が起こりやすく、金属粒子が接着層の下部に偏在したものが得られやすい。金属粒子が下部に偏在すると、接着層の導電性や熱伝導性だけでなく、接着性まで低下するとされている。
【0005】
特許文献2では、銀粒子を熱硬化性樹脂中に分散させた樹脂ペーストに、平均粒径0.1〜1.0μmの球状シリカを含有させることにより、銀粒子の沈降を抑制できるとされている。しかしながら、このような平均粒径が小さい粒子を含有させると接着層の接着性が低下してしまう場合があった。また、球状シリカは絶縁性であるため、接着層に含有させると導電性が悪化してしまう場合があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、熱伝導性および接着性に優れた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記事情に鑑みて鋭意研究したところ、金属からなる中空粒子を含有させた樹脂ペーストを用いると、金属粒子の偏在が抑制された接着層が得られることを見出して本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
基材と、
半導体素子と、
前記基材および前記半導体素子の間に介在し、両者を接着する接着層と、
を備え、
前記接着層中に、金属からなる中空粒子が分散されている、半導体装置が提供される。
【0009】
金属からなる中空粒子を用いると、金属粒子の偏在が抑制された接着層が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のような理由が考えられる。金属からなる中空粒子は、非中空の金属粒子に比べて見掛けの比重が小さくなり、樹脂ペースト中で浮力がつきやすい。そのため、接着層形成段階で沈降が起こりにくいと考えられる。よって、金属からなる中空粒子を含有させた樹脂ペーストを用いると、金属粒子の偏在が抑制された接着層が得られると推察される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱伝導性および接着性に優れた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(半導体装置)
はじめに、本実施形態における半導体装置の構成について説明する。図1は、本実施形態における半導体装置10の構成を示す断面図である。
本実施形態における半導体装置10は、基材2と、半導体素子3と、基材2および半導体素子3の間に介在し、両者を接着する接着層1と、を備えている。
【0014】
接着層1は、金属からなる中空粒子を含有するペースト状の樹脂組成物(以下、樹脂ペーストと呼ぶ)を、半導体素子3と基材2とで圧着することにより形成され、得られる接着層1中には、金属からなる中空粒子が分散している。
【0015】
接着層1が良好な熱伝導性および接着性を発現する理由は必ずしも明らかではないが、以下のような理由が考えられる。金属からなる中空粒子は、非中空の金属粒子に比べて体積が増えるため比重が小さくなり、樹脂ペースト中で浮力がつきやすい。そのため、接着層形成段階で沈降や浮き上がりが起こりにくいと考えられる。よって、金属からなる中空粒子を含有させた樹脂ペーストを用いると、金属粒子の偏在が抑制された接着層1が得られると推察される。よって、接着層1は優れた導電性、熱伝導性および接着性を実現できると推察される。
【0016】
接着層1の厚さは、特に限定されないが、好ましくは6μm以上200μm以下であり、より好ましくは8μm以上100μm以下である。下限値以上とすることにより、接着強度をより一層発揮させることができる。また、上限値以下とすることにより、導電性および熱伝導性をより一層向上させることができる。
【0017】
基材2は、特に限定されないが、42アロイリードフレーム、銅リードフレームなどのリードフレーム、ヒートシンク、ヒートスプレッダーなどの放熱部材、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)、などの有機基板、他の半導体素子、半導体ウエハ、スペーサーなどが挙げられる。これらの中でも、接着層1の導電性や熱伝導性をより一層効果的に発揮することが可能なリードフレーム、ヒートシンクまたは有機基板が好ましい。さらに、有機基板はBGA(Ball Grid Array)基板であることが好ましい。
【0018】
半導体素子3は、特に限定されないが、例えば、接着層1の導電性や熱伝導性をより一層効果的に発揮することが可能な消費電力1.7W以上のパワーデバイスであることが好ましい。半導体素子3は、パッド7およびボンディングワイヤ6を介して、リード4に電気的に接続している。また、半導体素子3は、その周囲が封止材層5により封止されている。
【0019】
(樹脂ペースト)
つぎに、接着層1を形成する樹脂ペーストについて説明する。本実施形態における樹脂ペーストは、(A)熱硬化性樹脂、(B)金属からなる中空粒子を含有している。
【0020】
(熱硬化性樹脂)
(A)熱硬化性樹脂としては、加熱により3次元的網目構造を形成する一般的な熱硬化性樹脂である。(A)この熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、液状樹脂組成物を形成する材料であることが好ましく、室温で液状であることが望ましい。例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0021】
(A)熱硬化性樹脂に係るシアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂であり、硬化する多官能シアネート化合物又はその低分子重合体である。(A)熱硬化性樹脂に係るシアネート樹脂としては、特に限定されないが、例えば1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4'−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも挙げられる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0022】
(A)熱硬化性樹脂に係るシアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般的に公知のものが挙げられる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種単独または2種以上の併用であってもよい。
また、シアネート樹脂と、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、マレイミド樹脂などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0023】
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する化合物である。(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂には、グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂のうち、グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるが、これらに限定されない。また樹脂組成物として室温で液状であることが好ましいので、(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂は、単独でまたは混合物として室温で液状のものが好ましい。ジオールまたはその誘導体をエポキシ化する方法としては、ジオールまたはその誘導体の2つの水酸基と、エピクロルヒドリンとを反応させて、グリシジルエーテルに変換することにより、エポキシ化する方法などが挙げられる。また、3官能以上のものについても、同様である。
通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性の希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0024】
(A)熱硬化性樹脂として、上記(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂を硬化させるために、本実施形態における樹脂ペーストは、硬化剤を含む。
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0025】
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂の硬化剤としてのジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としての酸無水物としては、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸などが挙げられる。
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂は1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物である。1分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の場合には架橋構造をとることができないため硬化物特性が悪化し使用できない。また、(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有していればよいが、1分子内にフェノール性水酸基を2以上5以下有することが好ましく、1分子内のフェノール性水酸基を2つまたは3つ有することがより好ましい。これより多い場合には分子量が大きくなりすぎるので樹脂ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類およびその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類およびその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのものおよびその誘導体などが挙げられる。
【0026】
(A)熱硬化性樹脂に係るエポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物およびその塩類などが挙げられるが、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物が好適である。中でも、特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。また、エポキシ樹脂は、シアネート樹脂、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0027】
(A)熱硬化性樹脂に係るラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂とは、分子内に炭素−炭素二重結合を有する化合物であり、炭素−炭素二重結合が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。
【0028】
(A)熱硬化性樹脂に係るラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂において(A)の分子量は500以上50,000以下であることが好ましい。上記範囲より小さい場合には接着層の弾性率が高くなりすぎ、上記範囲より大きい場合には樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるためである。
以下に好ましいラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂を例示するがこれらに限定されるわけではない。
【0029】
アクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500以上5,0000以下のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物である。
【0030】
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合にはアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50,000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、5,000以下であり、特に好ましいのは500以上、2,000以下である。上記範囲であれば作業性が良好で、弾性率が低い接着層が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有するポリエーテル化合物は、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0031】
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合にはアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50,000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、5,000以下であり、特に好ましいのは500以上、2,000以下である。上記範囲であれば作業性が良好で、弾性率が低い接着層が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有するポリエステル化合物は、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0032】
ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。芳香族環を含む場合にはアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上、50,000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上、5,000以下であり、特に好ましいのは500以上2,000以下である。この範囲であれば作業性が良好で、弾性率が低い接着層が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有するポリカーボネート化合物は、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0033】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。またアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物の分子量は上述のように500以上50,000以下が好ましいが、より好ましいのは500以上25,000以下である。この範囲であれば作業性が良好で、弾性率が低い接着層が得られるからである。このようなアクリル基を1分子内に2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物は、カルボキシ基を有する共重合体の場合は水酸基を有する(メタ)アクリレートあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリレートと反応することで、水酸基を有する共重合体の場合は(メタ)アクリル酸およびその誘導体と反応することで、グリシジル基を有する共重合体の場合は(メタ)アクリル酸およびその誘導体と反応することで得ることが可能である。
【0034】
ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸及びその誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることも可能である。
【0035】
ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることが可能である。
【0036】
アリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500以上50,000以下のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアリル基を有する化合物、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体といったジカルボン酸及びその誘導体とアリルアルコールを反応することで得られるジアリルエステル化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールといったジオールとの反応物などである。
【0037】
マレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、例えば、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド化合物が挙げられる。より好ましいものは、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。芳香族環を含む場合にはマレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。
【0038】
また本実施形態における樹脂組成物の諸特性を調整するために以下の化合物を(A)熱硬化性樹脂の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0040】
さらに(A)熱硬化性樹脂に係るラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂の重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定されないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40℃以上140℃以下となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、樹脂ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。
これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α,α'−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、上記のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0041】
(A)熱硬化性樹脂に係るマレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する化合物である。例えば、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましい(A)熱硬化性樹脂に係るマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0042】
(A)熱硬化性樹脂の配合量は、全樹脂組成物中に、2重量%以上29.9重量%以下であり、好ましくは、5重量%以上20重量%以下である。この範囲とすることにより、樹脂組成物の作業性や耐熱性などがより一層優れる。
【0043】
(金属からなる中空粒子)
(B)金属からなる中空粒子としては、金属からなり中空構造を有する粒子ならば特に限定されないが、導電性や熱伝導性に優れるため、好ましくは銀からなる中空粒子が挙げられる。また、銀以外には、例えば銅、金、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、スズ、亜鉛などからなる中空粒子、またはこれら金属の合金粒子などから少なくとも1種以上を使用することができる。
【0044】
(B)金属からなる中空粒子の形状は、特に限定されないが、鱗片形状または楕円球形状であると、導電性がさらに向上できるため好ましい。鱗片形状または楕円球形状であると、金属からなる中空粒子は重力方向に対して垂直に配列する傾向があるため、樹脂ペースト中での沈降がより一層起こりにくい。そのため、鱗片形状または楕円球形状の(B)金属からなる中空粒子を用いると、より一層偏在が抑制された接着層1を得ることができる。
【0045】
また、(B)金属からなる中空粒子のアスペクト比は、特に限定されないが、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。アスペクト比が上記下限以上であると、(B)金属からなる中空粒子は重力方向に対してより一層垂直に配列する傾向があるため、樹脂ペースト中での沈降がより一層起こりにくい。そのため、より一層偏在が抑制された接着層1を得ることができる。
また、(B)金属からなる中空粒子のアスペクト比は、特に限定されないが、好ましくは10以下であり、より好ましくは9以下である。アスペクト比が上記上限を超えると、樹脂ペーストとして、マウント時の作業性が悪くなる可能性が生じるため、好ましくない。
ここで、(B)金属からなる中空粒子のアスペクト比とは、(A)熱硬化性樹脂と(B)金属からなる中空粒子を熱で固め、その後、研磨した断面をSEM(Scanning electon microscope)の10000倍で観察して得られる画像にて確認される鱗片形状または楕円球形状の(B)金属からなる中空粒子の平均粒子径と平均厚みの比であり、粒子100個の平均である。
【0046】
また、(B)金属からなる中空粒子は、特に限定されないが、球状の中空部を有することが好ましい。中空部が球状であると、樹脂ペースト中での沈降がより一層起こりにくい。そのため、より一層偏在が抑制された接着層1を得ることができる。
【0047】
また、(B)金属からなる中空粒子の粒子径は、必要とする樹脂組成物の粘度により異なるが、通常は中空粒子のフロー式粒子像分析装置(FPIA-3000シスメックス社製)による体積基準粒度分布におけるメジアン径d50が、0.1μm以上10μm以下であるのが好ましい。メジアン径d50が0.1μm未満の場合には粘度が高くなり、メジアン径d50が10μmを越えると塗布または硬化時に樹脂成分が流出しやすくなりブリードが発生するため好ましくない。また、メジアン径d50が10μmを越えるとディスペンサーで樹脂組成物を塗布するときに、ニードルの出口を塞ぎ長時間の連続使用ができない場合がある。
【0048】
また、(B)金属からなる中空粒子の粒子径は、必要とする樹脂組成物の粘度により異なるが、通常は中空粒子のフロー式粒子像分析装置(FPIA-3000シスメックス社製)による体積基準粒度分布におけるd90が、20μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがさらに好ましい。d90が20μmを超えると塗布または硬化時に樹脂成分が流出しやすくなりブリードが発生するため好ましくない。また、d90が20μmを越えるとディスペンサーで樹脂組成物を塗布するときに、ニードルの出口を塞ぎ長時間の連続使用ができない場合がある。
【0049】
また、使用する(B)金属からなる中空粒子は、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオンなどのイオン性不純物の含有量は10ppm以下であることが好ましい。なお、本発明で使用する(B)金属からなる中空粒子は、予め表面をアルコキシシラン、アシロキシシラン、シラザン、オルガノアミノシランなどのシランカップリング材などで処理したものを用いてもよい。
【0050】
また、(B)金属からなる中空粒子の含有量は、樹脂ペーストに含まれる(A)熱硬化性樹脂100重量部に対して、300重量部以上1900重量部以下であることが好ましく、この範囲とすることで良好な熱伝導性を得ることができ、作業性にも優れる。樹脂ペースト中の(B)金属からなる中空粒子が300重量部以下である場合には、(B)金属からなる中空粒子が(A)熱硬化性樹脂で覆われ、(B)金属からなる中空粒子に重力方向と平行な配列を付与できない可能性があり、1900重量部を超えると樹脂ペーストの粘度が高くなり作業性が低下したり、樹脂ペーストの硬化物が脆くなったりするため、耐半田性が低下する可能性があり好ましくない。
【0051】
本実施形態における樹脂ペーストには、さらにエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤をさらに含有させることが好ましい。
【0052】
本実施形態における樹脂ペーストには、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤など、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0053】
また、本実施形態における樹脂ペーストには、硬化物としたときの(B)金属からなる中空粒子の配列に影響を与えない範囲で有機化合物を必要により添加することが可能である。例として、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、ブチルベンゼン、p−シメン、ジエチルベンゼン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、アビエチノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、安息香酸メチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、エチレングリコールモノアセタート、二酢酸エチレン、モノアセチン、炭酸ジエチル、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、2−メトキシメタノール、2−エトキシメタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(シオペンチルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、モルホリン、N−エチルモルホリン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどが挙げられる。これらは特に限定されず利用でき、2種以上併用してもよい。
【0054】
本実施形態における樹脂ペーストは、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0055】
(半導体装置)
本実施形態における樹脂ペーストを用いて半導体装置10を作製する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、基材2の所定の部位に樹脂ペーストをディスペンス塗布した後、半導体素子3をマウントし、加熱硬化して接着層1を形成する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いて封止材層5を形成することによって半導体装置10を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などの半導体チップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどである。
【実施例】
【0056】
以下、本実施形態に関して具体的に実施例を示すが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
下記の成分を配合し、3本ロールを用いて混練し、真空チャンバーにて2mmHgで15分脱泡後脱泡することで樹脂ペーストを作製した。配合割合は重量部である。
(A)熱硬化性樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、SB−403S)を50部と、クレジルグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、m,p−CGE、エポキシ当量165、以下m,p−CGE)を30部と、ビスフェノールF(大日本インキ化学工業社製、DIC−BPF、水酸基当量100)を10部使用した。
(B)金属からなる中空粒子として、鱗片形状で銀からなる中空粒子(DOWAエレクトロニクス社製、FA−SSB−112、メジアン径d50:3.3μm、d90:5.2μm、アスペクト比7.4)を520部使用した。
硬化剤として、ジシアンジアミド(旭電化工業社製、アデカハードナーEH−3636AS)を1.0部使用した。
硬化促進剤として、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、キュアゾール2P4MHZ)を1.0部使用した。
【0057】
(評価試験)
上記より得られた樹脂ペーストについて以下の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
(沈降試験)
樹脂ペースト30gを充填したシリンジ(10cc)を0℃に調整した恒温槽内でシリンジの先が下になるように30日間保管した。保管後の外観を目視で確認し変化がなければ○、金属粒子と樹脂成分の分離が少し確認されれば△、顕著に観察されれば×とした。
【0059】
(耐リフロー性)
上記より得られた樹脂ペーストを用いて、下記のリードフレームと、半導体素子であるシリコンチップを175℃60分間硬化し接着した。さらに、封止材料(スミコンEME−G700、住友ベークライト社製)を用いて封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を用いて、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を○とした。剥離面積の単位は%である。
半導体装置:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:銀スポットメッキした銅リードフレーム
チップサイズ:5×5mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中175℃、60分
○:シリコンチップ剥離発生なし。
×:シリコンチップ剥離発生あり。
【0060】
(ヒートサイクル(密着性))
上記より得られた樹脂ペーストを用いて、上記のリードフレームとシリコンチップを175℃、60分間硬化し接着した。ヒートサイクル処理(25℃/160℃ 各30分間を1サイクルとした)を行った。これを10サイクル実施するごとに、チップと接着層と間に剥離部分が生じているか、また、リードフレームと接着層との間に剥離部分が生じているか確認した。
チップと接着層と間の剥離が無い、かつリードフレームと接着層との間の剥離が無い場合には、○/○と示す。
チップと接着層と間の剥離が有る、かつリードフレームと接着層との間の剥離が無い場合には、×/○と示す。
チップと接着層と間の剥離が無い、かつリードフレームと接着層との間の剥離が有る場合には、○/×と示す。
チップと接着層と間の剥離が有る、かつリードフレームと接着層との間の剥離が有る場合には、×/×と示す。
【0061】
[実施例2、3]
実施例2、3では、実施例1と同様の樹脂ペーストを用いた。また、接着層の厚みを表1に示す値に変えた以外は、実施例1と同様に各評価をおこなった。
【0062】
[比較例1〜3]
銀からなる中空粒子を銀からなる非中空粒子(福田金属箔粉工業社製、HKD−13、メジアン径d50:14.1μm、d90:23.2μm、アスペクト比9.7)に変更し、樹脂層の厚みを表1に示す値に変えた以外は、実施例1と同様に樹脂ペーストを作製し、各評価をおこなった。
[比較例4〜6]
銀からなる中空粒子を銀からなる非中空粒子(福田金属箔粉工業社製、HKD−12、メジアン径d50:20.2μm、d90:39.6μm、アスペクト比15.5)に変更し、樹脂層の厚みを表1に示す値に変えた以外は、実施例1と同様に樹脂ペーストを作製し、各評価をおこなった。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から明らかなように、銀からなる中空粒子を含む樹脂ペーストは、粒子が沈降しづらく、安定していた。また、銀からなる中空粒子を含む樹脂ペーストを用いて形成された半導体装置は、耐リフロー性、ヒートサイクルが優れていた。
【符号の説明】
【0065】
1 接着層
2 基材
3 半導体素子
4 リード
5 封止材層
6 ボンディングワイヤ
7 パッド
10 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
半導体素子と、
前記基材および前記半導体素子の間に介在し、両者を接着する接着層と、
を備え、
前記接着層中に、金属からなる中空粒子が分散されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記中空粒子は鱗片形状または楕円球形状を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記中空粒子は球状の中空部を有する、半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の半導体装置において、
前記中空粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布におけるメジアン径d50が、0.1μm以上10μm以下である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の半導体装置において、
前記中空粒子のフロー式粒子像分析装置による体積基準粒度分布におけるd90が、1μm以上20μm以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の半導体装置において、
前記基材が、リードフレーム、ヒートシンクまたはBGA基板である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の半導体装置において、
前記半導体素子が、消費電力1.7W以上のパワーデバイスである、半導体装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−253088(P2012−253088A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122641(P2011−122641)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】