説明

半導体製造装置のガス供給システム

【課題】半導体製造装置に腐食性ガスを供給する際に,ガスフィルタでは除去できない揮発性金属成分の混入を防止する。
【解決手段】半導体製造装置(例えば熱処理装置110)にガス供給流路220を介して腐食性の高いガスを供給可能なガス供給システムであって,ガス供給流路220に設けたガスフィルタ240と,ガス供給流路220のガスフィルタ240の配設位置よりも下流側に設けられ,ガス供給流路220を流通するガスに含まれる揮発性金属成分を液化させて除去する金属成分除去器250とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体製造装置のガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば拡散装置,エッチング装置,スパッタリング装置などの半導体製造装置においては,ガスボンベなどの処理ガス供給源からのガスを半導体製造装置に供給するガス供給システムを備え,このガス供給システムから供給するガスを用いた半導体デバイスを製造するための工程例えば所定のガスを用いた成膜工程,エッチング工程を行うことによって,被処理基板例えば半導体ウエハに対して表面処理などを施すようになっている。
【0003】
このような半導体ウエハの製造工程においては,処理の種類によって塩素ガスやシラン系のガスなど腐食性の強いガスが使用されるため,ガス供給流路を構成するガス配管材料としては,従来より比較的耐食性の大きい例えばSUS316Lを用いるなど,クリーンなガスを供給するために種々の工夫がなされている。例えば塩素系ガス,シラン系ガスを流通させるガス配管の溶接部における腐食対策として,ガス流路の一部又は全部を所定のオーステナイトステンレス鋼で構成するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら,上述のようにガス供給流路を構成するガス配管の構成材料としてステンレス鋼を用いても,腐食性ガスの種類によっては,ガス配管の腐食を完全に抑えることはできず,腐食性ガスがガス配管を構成する金属と反応して不所望の金属化合物が発生したり,ガス配管を腐食させてそのガス配管を構成する金属成分(Fe,Cr,Niなど)が腐食性ガスに混入したりするという問題があった。特にフッ素系の腐食性ガス(HFガス,Fガス,ClFガスなど)は腐食性が極めて強く,ガス配管にステンレス鋼を用いたとしても,ガス配管の腐食は完全には避けられず,金属成分が腐食性ガスに混入するとともに,ガス配管を構成する金属と反応して不所望の金属化合物(金属フッ化物)を生成する。
【0005】
こうしてガス供給流路で発生する金属化合物や金属成分などは,ガス供給流路にガスフィルタを設けることで,そのガスフィルタで捕捉させて,半導体製造装置内へ入り込むことを防止することができるとも考えられる。熱処理装置のガス供給路にガスフィルタを設け,そのガスフィルタでパーティクルを捕捉するものとしては特許文献2に記載のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−68865号公報
【特許文献2】特開平5−68826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,上述したようなガス供給流路内における金属化合物や金属成分は,ガスフィルタで捕捉できる固体金属粒子の状態(例えばパーティクルの状態)で存在するもののみならず,ガスフィルタで捕捉できない揮発性金属成分の状態(例えば気化した状態)で存在するものもあることがわかった。従って,ガス供給流路にガスフィルタを設けただけでは,ガス供給流路で発生した金属化合物や金属成分を十分に除去することはできない。
【0008】
このようにガスフィルタを通り抜けた揮発性金属成分は,腐食性ガスとともに半導体製造装置内へ入り込んで半導体ウエハ上のパーティクル発生原因になるなどメタルコンタミネーションの問題を引き起こす。
【0009】
特に,近年では半導体デバイスが高集積化,高性能化が益々進み,このような揮発性金属成分によるメタルコンタミネーションでも製品の歩留まりや品質,信頼性に益々大きな影響を与えるようになってきている。メタルコンタミネーションによるデバイスの不良原因としては,パターン欠陥や電気的特性劣化などがある。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,半導体製造装置に腐食性ガスを供給する際に,ガスフィルタでは除去できない揮発性金属成分の混入を防止できる半導体製造装置のガス供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,半導体製造装置にガス供給流路を介して所定のガスを供給する半導体製造装置のガス供給システムであって,前記ガス供給流路に設けたガスフィルタと,前記ガス供給流路の前記ガスフィルタの配設位置よりも下流側に設けられ,前記ガス供給流路を流通するガスに含まれる揮発性金属成分を液化させて除去する金属成分除去器とを備えたことを特徴とする半導体製造装置のガス供給システムが提供される。
【0012】
このような本発明によれば,ガス供給流路のガスフィルタよりも下流側に金属成分除去器を設けたことにより,ガス供給流路を例えば極めて腐食性の強いガスが流通したときに発生する被処理基板に対する金属性の汚染物質が,固体金属粒子の状態で流通するものについてはガスフィルタで捕捉され除去されるとともに,ガスフィルタで捕捉できずに通過してしまった揮発性金属成分の状態で流通するものについては金属成分除去器内で液化して除去されるので,これらが半導体製造装置に混入することを防止できる。
【0013】
また,上記金属成分除去器は,例えば前記ガス供給流路の一部を構成するガス流路と,このガス流路の外側に冷媒を流通させて,そのガス流路を外側から冷却する流路冷却手段とを備える。これによれば,金属成分除去器内のガス流路に流入した揮発性金属成分の状態で流通する金属性の汚染物質を,冷却により液化することができる。
【0014】
この場合には,上記金属成分除去器の流路冷却手段は,例えば前記金属成分除去器内のガス流路の外側を巻回するように設けられたコイル状冷媒流路に前記冷媒を流通させるようにしてもよい。これにより,ガス流路を効率よく冷却することができ,またコイル状冷媒流路自体がガス流路を流通する腐食性の高いガスと接触することを防止することができる。
【0015】
また,上記金属成分除去器内のガス流路は,例えば鉛直に配設し,前記ガス供給流路を流通するガスが,前記ガス流路の下方の側部から流入して上方の側部から流出されるようにするとともに,前記ガス流路の下端を開口して液溜り室を連通させるようにしてもよい。このように金属成分除去器のガス流路を鉛直に設けてその外側からガス流路を冷却することによって,液化した揮発性金属成分をその自重で落下させることができるので,揮発性金属成分を効率よく除去することができる。
【0016】
また,上記金属成分除去器内のガス流路は,例えば流入側流路と流出側流路に分けてそれぞれ鉛直に配設し,前記流入側流路の上方の側部からガスが流入するようにし,前記流入側流路の下方は液溜り室に連通させるように構成し,前記流出側流路の下方は前記液溜り室に連通させて,前記流出側流路の上方の側部からガスが流出するように構成するようにしてもよい。これにより,液化した揮発性金属成分をその自重で落下させることができるので,揮発性金属成分を効率よく除去することができる。
【0017】
また,上記ガス供給流路から供給するガスは,例えばフッ素系の腐食性ガスである。このような腐食性ガスとしては,例えばHFガス,Fガス,ClFガスのいずれか又はこれらを含む混合ガスである。
【0018】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,半導体製造装置にガス供給流路を介して所定のガスを供給する半導体製造装置のガス供給システムであって,前記ガス供給流路に設けたガスフィルタと,前記ガス供給流路の前記ガスフィルタの配設位置よりも上流側に設けられ,前記ガス供給流路を流通するガスに含まれる揮発性金属成分を前記ガスフィルタで捕捉可能な固体金属化合物に化学変化させるガスを添加する添加ガス供給手段と,を備えたことを特徴とする半導体製造装置のガス供給システムが提供される。上記ガス供給流路から供給するガスは,例えばフッ素系の腐食性ガスである。また,例えば添加ガスは例えばOガスである。
【0019】
このような本発明によれば,ガス供給流路のガスフィルタよりも上流側から添加ガスが供給されるので,ガス供給流路を例えば極めて腐食性の強いガスが流通したときに発生する被処理基板に対する金属性の汚染物質が,揮発性金属成分の状態で流通する場合でも,その添加ガスと反応して固体金属化合物(例えば固体金属酸化物)に変化する。この固体金属化合物の状態であれば,固体金属粒子の状態で流通するものとともにガスフィルタで捕捉できるので,ガスフィルタでの除去が可能となるので,これらが半導体製造装置に混入することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,ガス供給流路を例えば極めて腐食性の強いガスが流通したときに発生する被処理基板に対する金属性の汚染物質が,固体金属粒子の状態で流通している場合のみならず,揮発性金属成分の状態で流通している場合でも,半導体製造装置に流入する前に除去することができる。このように,ガス供給流路を流通する金属性の汚染物質の状態如何に拘らず半導体製造装置に混入することを防止できる。
装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態にかかる半導体製造装置の構成例)
まず,本発明を第1実施形態にかかる半導体製造装置について図面を参照しながら説明する。ここでは,半導体製造装置として,基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」とも称する。)に対して所定の熱処理を行う熱処理装置を例に挙げて説明する。図1は,第1実施形態にかかる熱処理装置の構成例を示す図である。熱処理装置100は,ウエハWに対して処理(例えば熱処理)を行う処理部としての熱処理部110を備える。熱処理部110は例えば図1に示すように反応容器(処理容器)又は反応室(処理室)を構成する縦型の反応チューブ112で構成される。この反応チューブ112内にはウエハWを多数枚搭載した保持具114を搬入できるようになっている。熱処理部110には,反応チューブ112内の排気を行う排気系120と,反応チューブ112内に所定のガスをガス供給流路220を介して供給するためのガス供給系200と,反応チューブ112の外側に配設された図示しない加熱手段(例えばヒータ)とを備える。
【0023】
熱処理部110は,反応チューブ112内にウエハWを多数枚搭載した保持具114を搬入した状態で,ガス供給系200により反応チューブ112内に所定のガスを供給するとともに排気系120により反応チューブ112内の排気を行いながら,加熱手段により反応チューブ112の外側から加熱することによりウエハWに対して所定の熱処理を行うようになっている。
【0024】
排気系120は,例えば真空ポンプなどで構成される真空排気手段124を反応チューブ112の天井に排気管122を介して接続して構成される。なお,図1では図示を省略しているが,排気系120の排気管122は,バイパスラインを介してガス供給系200に迂回して接続している。このバイパスラインは,例えばガス供給流路220の上流側部位にバイパス管で接続して構成される。バイパス管の排気系側には排気側バイパス遮断弁が接続しており,バイパス管のガス供給系200側には供給側バイパス遮断弁が接続している。
【0025】
(第1実施形態にかかるガス供給システムの構成例)
次に,第1実施形態にかかるガス供給システムの1例としてのガス供給系200について説明する。ガス供給系200は,例えばHF,Fガス,ClFなどのフッ素系の腐食性ガスを充填したボンベよりなるガス供給源210を備える。この腐食性ガスは,例えばウエハWに処理を行う処理ガスとして用いたり,クリーニングガスとして用いたりすることができる。このガス供給源210にはガス供給流路220の一端が接続しており,このガス供給流路220の他端は反応チューブ112にガスを導入するためのノズル(例えばインジェクタ)202に接続されている。これにより,ガス供給源210からのガスは,ガス供給流路220を介して反応チューブ112内に供給される。
【0026】
ガス供給流路220には複数の流体制御機器が介装されている。本実施形態はこのような流体制御機器として例えば,図1に示すガス供給流路220の上流側から下流側へ向けて順番に,減圧弁(レギュレータ)230,圧力計(PT)232,第1遮断弁(バルブ)234,マスフローコントローラ(MFC)236,第2遮断弁(バルブ)238,ガスフィルタ(FE)240などが設けられている。
【0027】
マスフローコントローラ(MFC)236は,ガス供給源210から反応チューブ112内に供給するガス流量を調整するものである。ガスフィルタ(FE)240は,ガス供給流路220を流通するガスに含まれる固体の金属粒子などのパーティクルを捕捉する。
【0028】
さらに,第1実施形態にかかるガス供給流路220には,ガスフィルタ240よりも下流側に金属成分除去器250が設けられている。この金属成分除去器250は,ガス供給流路220を流通するガスに含まれる揮発性の金属成分を液化させて捕集するものであり,その具体的な構成例は後述する。
【0029】
これらの流体制御機器は,例えばガス配管や内部に流路を形成した流路ブロックなどで接続されて,ガス供給流路220が構成される。これらのガス配管や流路ブロックは,例えば比較的耐食性の大きいSUS316Lで構成される。
【0030】
このように構成された第1実施形態にかかるガス供給系200では,例えば反応チューブ112内のクリーニングを行う際に,ガス供給源210からフッ素系ガス例えばFガスがマスフローコントローラ(MFC)236により所定の流量に調整されて反応チューブ112に供給される。
【0031】
このとき,ガス供給流路220のガス配管や流路ブロックの流路内を流通するFガスは極めて腐食性が高いので,ガス配管や流路ブロックを構成する金属を腐食させて,不所望の金属化合物(金属フッ化物)が発生したり,そのガス配管や流路ブロックを構成する金属成分(Fe,Cr,Niなど)がFガスに混入したりする。
【0032】
このようなガス供給流路220内に含まれる金属化合物や金属成分は,例えば図2に示すように,固体金属粒子Pの状態(パーティクルの状態)で存在するものと,揮発性金属成分qの状態(例えば気化した状態)で存在するものとがある。これらのうち,固体金属粒子Pについては,ガスフィルタ240で捕捉されるので,ガスフィルタ240よりも下流側には流出しないのに対して,揮発性金属成分qについては,ガスフィルタ240で捕捉できないので,ガスフィルタ240よりも下流側に流出してしまう。
【0033】
このため,もし仮に従来のようにガス供給流路220にガスフィルタ240を設けただけでは,ガスフィルタ240を通り抜けた揮発性金属成分qは,Fガスとともに反応チューブ112内へ入り込んでウエハW上のパーティクル発生原因になるなどメタルコンタミネーションの問題を引き起こす。
【0034】
そこで,本実施形態では,ガスフィルタ240の他に,その下流側に金属成分除去器250を設けて,ガスフィルタ240を通り抜けた揮発性金属成分qを除去することにより,揮発性金属成分qが反応チューブ112内に混入することを防止できるようになっている。
【0035】
金属成分除去器250は,例えば図2に示すように,パイプ状の枠体252と,その枠体252の内部に設けられ,ガス供給流路220の一部を構成するガス流路254と,このガス流路254の外側に冷媒を流通させて,そのガス流路254を外側から冷却する流路冷却手段256とを備える。流路冷却手段256は,例えば図示しない媒体供給源から所定の温度に調整された冷媒がガス流路254の外周を流通するようになっている。この冷媒は,ガス流路254内に含まれる揮発性金属成分qのみが液化される温度に調整される。
【0036】
ガス流路254の途中には,流路冷却手段256により冷却されて液化した揮発性金属成分をガス流路254から排出するドレーン257が形成されている。このドレーン257には液状の揮発性金属成分を溜める液溜り室258が連通されており,液溜り室258に溜った液状の揮発性金属成分を排出する排出口259が形成されている。排出口259には例えば排出パイプが接続されており,液状の揮発性金属成分が再び気化してガス流路254に逆流しないように排出される。
【0037】
このような金属成分除去器250においては,例えば図2に示すように,ガスフィルタ240を通り抜けた揮発性金属成分qは,金属成分除去器250のガス流路254内で流路冷却手段256によって冷却されて液化される。これに対して,ガス流路254内のFガスのガス成分は液化されることなく,金属成分除去器250のガス流路254を通り抜ける。そして,ガス流路254内で液化した揮発性金属成分qは,ドレーン257を介して液溜り室258に溜り,排出口259からガス流路254の外に排出される。
【0038】
こうして,ガスフィルタ240では除去できずに通り抜けた揮発性金属成分qは,金属成分除去器250により液化されて除去されるので,揮発性金属成分qが反応チューブ112内に混入することを防止できる。
【0039】
なお,金属成分除去器250の流路冷却手段256は,図2に示すものに限られるものでなく,例えば図3に示すようにガス流路254の外側を巻回するコイル状冷媒流路255に冷媒を流通させるように構成してもよい。このようなコイル状冷媒流路255を冷媒が流通することにより,ガス流路254を効率よく冷却することができる。なお,図3では,ガス流路254内の作用説明を分かり易くするため,コイル状冷媒流路255の巻回部分を点線で表している(後述する図4,図5についても同様)。
【0040】
また,このように冷媒を流通させるコイル状冷媒流路255をガス流路254の外側に設けることにより,コイル状冷媒流路255自体がガス流路254を流通する腐食性の高いガスと接触することを防止することができる。これにより,金属成分除去器250内で腐食性ガスがコイル状冷媒流路255を腐食させて別のコンタミネーションが発生することを防止できる。
【0041】
ここで,金属成分除去器250の他の構成例について図面を参照しながら説明する。図4は,金属成分除去器250の他の構成例を示す図である。上述した図2,図3に示すものは,金属成分除去器250内のガス流路254を水平に設けた場合の構成例であるが,図4に示すものは,金属成分除去器250内のガス流路254を鉛直に設けた場合の構成例である。
【0042】
具体的には図4に示す金属成分除去器250は,その枠体252内に鉛直にガス流路254を設け,その下端の開口部に液溜り室258を連通するとともに,ガス流路254の上端は水平に屈曲して,金属成分除去器250の側部に開口するようになっている。このガス流路254には,冷媒を流通させるコイル状冷媒流路255が鉛直方向に巻回して設けられている。
【0043】
ガスフィルタ240を通ってガス供給流路220を流通するガスは,ガス流路254の下方の側部から金属成分除去器250内に流入し,ガス流路254に沿って鉛直上方に向い,ガス流路254の上端の水平屈曲部に沿って,金属成分除去器250の側部から流出し,反応チューブ112に向けて流通する。このとき,コイル状冷媒流路255に冷媒が流通することにより,ガス流路254内を流通するガスに含まれる揮発性金属成分qは冷却されて液化し,その自重でガス流路254の下方の液溜り室258に落下して溜り,排出口259からガス流路254の外に排出される。
【0044】
このように,金属成分除去器250のガス流路254を鉛直に設けてその外側からコイル状冷媒流路255で冷却することによって,液化した揮発性金属成分qをその自重で落下させることができるので,揮発性金属成分qを効率よく除去することができる。
【0045】
なお,このような鉛直にガス流路254を設ける金属成分除去器250としては,図4に示すものに限られるものではなく,例えば図5に示すようにガス流路254をさらに流入側流路262と流出側流路264に分けて構成するようにしてもよい。
【0046】
具体的には,例えば図5に示すように,流入側流路262の上端を水平に屈曲させて金属成分除去器250の側部からガスが流入するようにし,流入側流路262の下端は液溜り室258に連通させるように構成する。一方,流出側流路264の下端は液溜り室258に連通させて,流出側流路264の上端を水平に屈曲させて金属成分除去器250の側部からガスが流出するように構成する。この場合,コイル状冷媒流路255は,図5に示すように流入側流路262の外側に設けるようにしてもよく,また流出側流路264の外側に設けるようにしてもよい。さらに,流入側流路262の外側と流出側流路264の外側の両方にコイル状冷媒流路255を設けるようにしてもよい。
【0047】
このような図5に示す金属成分除去器250によれば,ガスフィルタ240を通ってガス供給流路220を流通するガスは,流入側流路262の上端の水平屈曲部から金属成分除去器250内に流入し,流入側流路262に沿って鉛直下方に向い,液溜り室258の空間を介して,流出側流路264の下端に流入する。そして,流出側流路264に沿って鉛直上方に向い,流出側流路264の上端の水平屈曲部に沿って金属成分除去器250の側部から流出し,反応チューブ112に向けて流通する。このとき,コイル状冷媒流路255に冷媒が流通することにより,流入側流路262内を流通するガスに含まれる揮発性金属成分qは冷却されて液化し,その自重で流入側流路262の下方の液溜り室258に落下して溜り,排出口259からガス流路254の外に排出される。
【0048】
図5に示す金属成分除去器250においても,図4に示す金属成分除去器250と同様に,液化した揮発性金属成分qをその自重で落下させることができるので,液化した揮発性金属成分qを効率よく除去することができる。
【0049】
(第2実施形態にかかるガス供給システムの構成例)
次に,第2実施形態にかかるガス供給システムの構成例について図面を参照しながら説明する。図6は第2実施形態にかかるガス供給システムを適用した半導体製造装置としての熱処理装置の構成例を示す図である。図6において,図1に示すものと実質的に同一の機能を有するものについては,同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
第1実施形態では,ガス供給流路220のガスフィルタ240よりも下流側にコンタミネーションの原因となる揮発性金属成分を除去する金属成分除去器250を設けた場合について説明したが,第2実施形態では,金属成分除去器250を設ける代りに,ガス供給流路220のガスフィルタ240よりも上流側に,揮発性金属成分qをガスフィルタ240で捕捉可能な固体金属化合物に変化させるガスを添加する添加ガス供給手段を設けた場合について説明する。
【0051】
具体的には添加ガス供給手段は,図6に示すように,添加ガスを充填したボンベよりなる添加ガス供給源310を備える。この添加ガスは,ガス供給流路220に含まれる揮発性金属成分(Fe,Cr,Niなど)と酸化反応,還元反応などの化学反応を起して固体金属化合物に変化させるガスが使用される。このような添加ガスとしては,酸素(O)ガスが挙げられる。このOガスは,揮発性金属成分を酸化させて固体金属化合物である固体金属酸化物に変化させることができる。
【0052】
添加ガス供給源310には添加ガス供給流路320の一端が接続しており,この添加ガス供給流路320の他端は,ガス供給流路220のガスフィルタ240よりも上流側例えばガス供給流路220の第1遮断弁(バルブ)234とマスフローコントローラ(MFC)236との間に接続される。
【0053】
添加ガス供給流路320には,複数の流体制御機器が介装されている。例えば,図6に示す添加ガス供給流路320の上流側から下流側へ向けて順番に,減圧弁(レギュレータ)330,圧力計(PT)332,第1遮断弁(バルブ)334,マスフローコントローラ(MFC)336,逆止弁337,第2遮断弁(バルブ)338などが設けられている。マスフローコントローラ(MFC)336は,添加ガス供給流路320を介してガス供給流路220に添加する添加ガスの流量を調整するものである。
【0054】
このように構成された第2実施形態にかかるガス供給系200では,例えば反応チューブ112内のクリーニングを行う際に,ガス供給源210からは,フッ素系ガス例えばFガスがマスフローコントローラ(MFC)236により流量が調整されて反応チューブ112に供給される。また,添加ガス供給源310からは,添加ガス例えばOガスがマスフローコントローラ(MFC)336により所定の流量に調整されて,ガス供給流路220のガスフィルタ240よりも上流側(ここでは第1遮断弁(バルブ)234とマスフローコントローラ(MFC)236との間)に供給される。
【0055】
すると,腐食性の高いFガスがガス供給流路220を流通するので,第1実施形態と同様にFガスがガス供給流路220を構成するガス配管や流路ブロックを構成する金属を腐食させて,ガス供給流路220内には例えば図7に示すように,金属化合物や金属成分が固体金属粒子Pの状態(例えばパーティクルの状態)で存在するとともに,揮発性金属成分qの状態(例えば気化した状態)で存在する。
【0056】
このとき,ガス供給流路220のガスフィルタ240よりも上流側から添加ガスとしてOガスが供給されるので,図7に示すように,揮発性金属成分qは酸化して固体金属酸化物Qに変化する。この固体金属酸化物(固体金属化合物)の状態であれば,ガスフィルタ240で捕捉できるので,ガスフィルタ240での除去が可能となる。
【0057】
このように,揮発性金属成分qをガスフィルタ240で捕捉可能な固体金属酸化物Qに変化させて除去することができるので,ガスフィルタ240よりも下流側の反応チューブ112内に揮発性金属成分qが混入することを防止することができる。
【0058】
なお,添加ガスは揮発性金属成分の化学反応でそのほとんどは使用されることになるが,クリーニングガスやプロセスガスとともに反応チューブ112内に混入される虞もあるので,多少反応チューブ112内に混入されても,反応チューブ112内で行われる処理に影響を与えないような種類のガスを添加ガスとして選択することが好ましい。また,添加ガスの流量は,揮発性金属成分qを固体金属化合物Qに変化させる程度の微量で足りる。これにより,添加ガスがクリーニングガスやプロセスガスとともに反応チューブ112内に混入しても,反応チューブ112内で行われるクリーニングやプロセス処理に影響を与えることはない。
【0059】
上述した第1,第2実施形態にかかるガス供給系200には,これらの配管や反応チューブ112内をパージするNガスなどのパージガスを供給する図示しないパージガス供給系を設けてもよい。
【0060】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば上記実施形態では,半導体製造装置として熱処理装置を例に挙げて説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,ガスを導入して基板などの処理を行う半導体製造装置であれば,様々な種類の半導体製造装置に適用することができる。例えば半導体製造装置として熱処理装置の他に,エッチング装置や成膜装置などに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は,半導体製造装置のガス供給システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる熱処理装置の構成例を示す図である。
【図2】同実施形態における金属成分除去器の概略構成と作用を説明するための図である。
【図3】図2に示す金属成分除去器の変形例を説明するための図である。
【図4】同実施形態における金属成分除去器でガス配管を鉛直に配設した場合の概略構成と作用を説明するための図である。
【図5】図4に示す金属成分除去器の変形例を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる熱処理装置のガス供給系の構成例を示す図である。
【図7】同実施形態における作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
100 熱処理装置
110 熱処理部
112 反応チューブ
114 保持具
120 排気系
122 排気管
124 真空排気手段
200 ガス供給系
202 ノズル
210 ガス供給源
220 ガス供給流路
230 減圧弁(レギュレータ)
232 圧力計(PT)
234 第1遮断弁(バルブ)
236 マスフローコントローラ(MFC)
238 第2遮断弁(バルブ)
240 ガスフィルタ
250 金属成分除去器
252 枠体
254 ガス流路
255 コイル状冷媒流路
256 流路冷却手段
257 ドレーン
258 液溜り室
259 排出口
262 流入側流路
264 流出側流路
310 添加ガス供給源
320 添加ガス供給流路
330 減圧弁(レギュレータ)
332 圧力計(PT)
334 第1遮断弁(バルブ)
336 マスフローコントローラ(MFC)
337 逆止弁
338 第2遮断弁(バルブ)
P 固体金属粒子
q 揮発性金属成分
Q 固体金属酸化物
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置にガス供給流路を介して所定のガスを供給する半導体製造装置のガス供給システムであって,
前記ガス供給流路に設けたガスフィルタと,
前記ガス供給流路の前記ガスフィルタの配設位置よりも下流側に設けられ,前記ガス供給流路を流通するガスに含まれる揮発性金属成分を液化させて除去する金属成分除去器と,
を備えたことを特徴とする半導体製造装置のガス供給システム。
【請求項2】
前記金属成分除去器は,前記ガス供給流路の一部を構成するガス流路と,このガス流路の外側に冷媒を流通させて,そのガス流路を外側から冷却する流路冷却手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記金属成分除去器の流路冷却手段は,前記金属成分除去器内のガス流路の外側を巻回するように設けられたコイル状冷媒流路に前記冷媒を流通させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記金属成分除去器内のガス流路は鉛直に配設し,前記ガス供給流路を流通するガスが,前記ガス流路の下方の側部から流入して上方の側部から流出されるようにするとともに,前記ガス流路の下端を開口して液溜り室を連通させたことを特徴とする請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記金属成分除去器内のガス流路は,流入側流路と流出側流路に分けてそれぞれ鉛直に配設し,
前記流入側流路の上方の側部からガスが流入するようにし,前記流入側流路の下方は液溜り室に連通させるように構成し,
前記流出側流路の下方は前記液溜り室に連通させて,前記流出側流路の上方の側部からガスが流出するように構成することを特徴とする請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記ガス供給流路から供給するガスは,フッ素系の腐食性ガスであることを特徴とする請求項5に記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記腐食性ガスは,HFガス,Fガス,ClFガスのいずれか又はこれらを含む混合ガスであることを特徴とする請求項6に記載のガス供給システム。
【請求項8】
半導体製造装置にガス供給流路を介して所定のガスを供給する半導体製造装置のガス供給システムであって,
前記ガス供給流路に設けたガスフィルタと,
前記ガス供給流路の前記ガスフィルタの配設位置よりも上流側に設けられ,前記ガス供給流路を流通するガスに含まれる揮発性金属成分を前記ガスフィルタで捕捉可能な固体金属化合物に化学変化させるガスを添加する添加ガス供給手段と,
を備えたことを特徴とする半導体製造装置のガス供給システム。
【請求項9】
前記ガス供給流路から供給するガスは,フッ素系の腐食性ガスであることを特徴とする請求項8に記載のガス供給システム。
【請求項10】
前記添加ガスは,Oガスであることを特徴とする請求項8に記載のガス供給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−262965(P2008−262965A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102556(P2007−102556)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】