説明

半導体製造装置

【課題】ウェハの電気的特性を精度よく測定することができると共に、ウェハの破損を防止することができる技術を提供する。
【解決手段】プローブ針18を用いた検査時において、プローブ針18をステージ4の溝6に対応する位置に接触させるときは、ウェハ支持部材10を移動機構16によって、ステージ4の載置面4a方向へ押し上げる。これによって、載置面4aとウェハ支持部材10が同一平面を形成し、ウェハ20を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に関する。特に、ウェハの電気的特性をテストするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブ等の試験冶具を用いて、ウェハの電気的特性をテストする半導体製造装置が知られている。この種の半導体製造装置によりウェハをテストする場合は、ステージに設けられた溝から空気を吸引して、ウェハをステージに吸着固定する。そして、ステージに吸着固定されたウェハにプローブ等の試験冶具を押し付け、ウェハの電気的特性を測定する。電気的特性の測定は、プローブの位置を変えながら、ウェハの複数の部位において行われる。このため、ステージに設けられた溝の位置に対応する部分にプローブが押し付けられることがある。かかる場合、プローブからの圧力によって、ウェハが破損してしまうことがあった。
かかる問題を解決するための従来技術としては、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1では、ウェハの載置面に緩衝材を配設したステージを用いてプローブテストを行っている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−337580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ウェハとステージとの間に、ウェハの全面を覆うようにしてゴム等の弾性変形材料が配設され、これが緩衝材として機能し、ウェハの破損をある程度は防止することができる。しかしながら、この緩衝材には、ウェハを緩衝材に吸着するための吸着穴(空気を吸引するための吸着穴)が形成されている。このため、プローブが吸着穴に対応する位置に押し付けられた場合には、ウェハが破損する可能性がある。また、ウェハの電気的特性を正確に測定するためには、ウェハとステージとの間に電気的抵抗を生じさせる部材(すなわち、緩衝材)が介在しないことが望ましい。このため、この種の半導体製造装置においては、電気的特性を精度よく測定することができ、かつ、テスト時のウェハの破損防止を実現することができる技術が必要とされている。
本発明は、ウェハの電気的特性を精度よく測定することができると共に、ウェハの破損を防止することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に係る半導体製造装置は、ウェハを載置する載置面と、載置面上に形成される溝とを備えるステージと、溝内の空気を吸引する空気吸引手段と、溝内の異なる位置にそれぞれ配設され、溝内を溝の高さ方向に移動可能なウェハ支持部材と、ウェハ支持部材の上面が載置面から退避した第1位置からウェハ支持部材の上面が載置面と同一平面となる第2位置に、ウェハ支持部材を移動させる移動機構とを備えている。この装置は、移動機構が複数のウェハ支持部材の少なくとも一つを第2位置に移動させたときに、残りのウェハ支持部材が第1位置にあることを特徴としている。
【0006】
この半導体製造装置では、ステージに形成された溝内の異なる位置にそれぞれウェハ支持部材が配設されている。そして、移動機構は、複数のウェハ支持部材の少なくとも一つを、その上面が載置面と同一平面となるように移動させることができる。即ち、移動機構が溝内に配設された所定のウェハ支持部材を溝の高さ方向(上方)へ押し出すことで、ウェハ支持部材の上面とステージの載置面とを同一平面上に位置させることができる。このとき、残りのウェハ支持部材は載置面から退避した状態で維持される。このため、プローブが溝に対応する位置に当接する際には、その場所に配設されたウェハ支持部材を移動させ、ウェハを支持することができる。また、残りのウェハ支持部材は、載置面から退避した状態なので、ウェハを載置面に吸着することができる。したがって、ウェハを載置面に吸着しながらウェハの破損を防止することができる。また、ウェハと載置面の間には緩衝材等が配されないため、そのような中間部材が電気的抵抗となり、ウェハの電気的特性の測定に影響してしまうといった不具合が生じることがない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ウェハの電気的特性のテストの際のウェハの破損を防止するとともに、ウェハの電気的特性を精度良く測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
下記の実施例の技術的な特徴について列記する。
(特徴1)ステージと移動機構の相対的な位置関係を変化させる手段を備えている。
(特徴2)ウェハ支持部材はステージを貫通しており、その上面は溝の底面の一部を形成しており、ウェハ支持部材は、溝の高さと同じ長さだけステージ裏面側から突出している。
(特徴3)。ウェハ支持部材のステージ裏面側の端部には、ウェハ支持部材が移動機構によって載置面方向(第1位置から第2位置に向かう方向)へ移動させられたときに、その上面がステージの載置面よりも突出することを禁止するストッパが設けられている。
(特徴4)ウェハ支持部材をステージの裏面方向(第2位置から第1位置に向かう方向)へ退避させる手段が設けられている。
【実施例】
【0009】
(第1実施例)
本願発明を具現化した第1実施例に係る半導体製造装置を図1〜3を参照して説明する。図1は第1実施例の半導体製造装置2の概略平面図であり、図2は図1の半導体製造装置2のII−II断面図である。図3は、本実施例の半導体製造装置2を用いたプロービングテストの様子を表わす図である。
【0010】
半導体製造装置2は、ステージ4を備えている。ステージ4は図示しないアームに接続されており、そのアームによって移動させることができる。ステージ4は、導電性の高い材料によって形成されている。ステージ4には、外部のテスタが電気的に接続されている。プロービングテスト時は、このテスタによってウェハ20の電気的特性が測定される。ステージ4はウェハを載置するための載置面4aを備えている。載置面4a上には、溝6が三重のリング状に形成されており、これら3重のリング状の溝がステージ中心から半径方向に伸びる溝によって接続されている。半径方向に伸びる溝6のステージ4の中心に位置する底部には、吸引用貫通孔8が設けられている。吸引用貫通孔8は、溝6内の空気を吸引する吸引機構(吸引ポンプ)14に接続されている。ステージ4は、吸引機構14によって溝6内の空気を吸引することで、載置面4aに載置されたウェハ20(図3参照)を真空吸着して固定するものである。なお、溝6の形状は、図1に示すパターンに限定されるものではない。
【0011】
溝6の底部には、複数の貫通孔がそれぞれ異なる位置に形成されている。貫通孔が形成されている位置は、プロービングテスト時にプローブ針18でウェハ20を押圧する位置に対応している。それぞれの貫通孔には、ウェハ支持部材10がスライド可能に挿入されている。ウェハ支持部材10は、ヘッド10aと、ヘッド10aから伸びる軸部10bを備えている。ステージ4の上記複数の貫通孔のそれぞれは、ウェハ支持部材10のヘッド10aと軸部10bの形状に対応して形成されている。また、本実施例のウェハ支持部材10のヘッド10aは、ステージ4と同一の材料によって形成されており、ステージ4と同程度の導電性を有している。なお、ヘッド10aの全体をステージ4と同一の材料によって形成する必要はなく、少なくともウェハ20及びステージ4と接触する部分において、ステージ4の載置面4aと同程度の導電性を有していればよい。
また、プロービングテストの精度を保つためには、ウェハ支持部材10がステージ4とともにウェハを支持したときに、ステージ4の電位を一定に保持する必要がある。このため、ステージ4が後述するカム部材12と電気的に接続されることは好ましくない。このため、ウェハ支持部材10は、ヘッド10aの上面よりも下方の少なくとも一部が絶縁性の高い材料によって形成されている。例えば、軸部10bの一部を絶縁物によって形成することができる。このような構成により、ヘッド10aとカム部材12との絶縁を図ることができる。
【0012】
各ウェハ支持部材10は、溝6内を図2の上下方向(即ち、溝6の高さ方向)にそれぞれ独立して移動可能となっている。ウェハ支持部材10に外部から力が加えられていないとき(即ち、ウェハ支持部材10の上面が載置面4aから退避した位置にあるとき)には、ヘッド10aの上面は、溝6の底面と同一平面上に位置している(図2)。ウェハ支持部材10は、この状態からヘッド10aの上面が載置面4aと同一平面上に位置する高さ(図3を参照)まで、上下に移動可能となっている。なお、図1ではウェハ支持部材10の図示を省略している。
なお、本実施例では、ウェハ支持部材10を、プロービングテスト時にプローブ針18でウェハ20を押圧する位置に対応して配置しているが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、図4に示すように、ウェハ支持部材10を、溝6の全周にわたって配置するようにしてもよい。図4に示す例では、ウェハ支持部材10のヘッド10aが、溝6の周方向に伸びている。図示しないが、軸部10bは、ヘッド10aのほぼ中央に形成されている。上記の構成により、プローブ針18でウェハを押圧する位置が溝6のどの位置にあったとしても、ウェハ支持部材10でウェハを支持することができる。即ち、ウェハのサイズやウェハ上のプロービングテストを実施する位置を問わず、良好にプロービングテストを実施することができる。これによって、複数種類のウェハを一の装置で検査することができる。
また、本発明は図2及び図4に示すウェハ支持部材10の個数や形状に限定されるものではない。例えば、ウェハ支持部材10は、溝6の内部に所定の間隔をおいて配設されていてもよいし、連続して配設されていてもよい。ウェハ支持部材10を配設する位置やヘッド10aの形状等は、ウェハ20に対して行われるテスト内容(プロービング位置、プローブ針18の大きさ)に応じて適宜設計することができる。
【0013】
ステージ4の下方には、カム部材12が配置されている。カム部材12の上面にはカム面16が形成されている。カム面16は、平坦な頂部と、その頂部からカム部材12の基準上面へと傾斜する傾斜面を備えている。ステージ4が図示しないアームによって移動されることで、ステージ4とカム面16との相対的位置関係を変化させることができる。カム部材12についても、ウェハ支持部材10と同様に、ウェハ20の電気的特性に影響を及ぼさないよう、高い絶縁性を有する材料で形成されている。
なお、カム面16の上方には、プローブ針18が配置されている。カム面16とプローブ針18の水平面内の位置関係は固定されている。
【0014】
図3に示すように、ステージ4に載置されたウェハ20に対してプロービングテストを実施する際は、ウェハ20の所定の部分(例えば、ウェハ20に形成された各ICチップの電極パッド等)に順次プローブ針18を押し当てていく。即ち、このテストでは、プローブ針18が接触する位置を変えながら、ウェハ20の複数の部位において、ウェハ20の電気的特性を測定する。この検査は、測定位置のずれやプローブ針18の押圧に起因するウェハ20の反り等を防ぐために、溝6内の空気を吸引することでウェハ20をステージ4に吸着固定して行われる。また、プローブ針18をウェハ20に押圧するため、プローブ針18の接触部分には圧力が作用する。このため、プローブ針18が接触するウェハ20の部分の下に吸着固定用の溝6が位置し、その部分が下方から支えられていないと、ウェハ20が破損することがある。
【0015】
本実施例の半導体製造装置2では、プローブ針18を接触させるウェハ20の部分の下に溝6がある場合には、その部分にはウェハ支持部材10が配置されている。また、プローブ針18とカム部材12のカム面16との水平面内の位置関係は変化しない。このため、ステージ4を水平方向に動かして、その該当部分にプローブ針18を位置決めすると、その該当部分の下方にはカム部材12のカム面も位置決めされる。このため、プローブ針18を押圧する際には、まず、アームの動作によってステージ4を水平方向に移動させ、プローブ針18とカム面16をウェハ20に対して位置決めする。次いで、ステージ4をカム部材12に向かって移動させる。これによって、ウェハ支持部材10の下端がカム部材12のカム面16に当接する。さらに、ステージ4を下方に移動させると、これに伴って、ウェハ支持部材10のヘッド10aが載置面4aの方向へと上昇していく。カム部材12のカム面16の頂部がステージ4の下面に当接すると(図3に示す状態)、ヘッド10aの上面は載置面4aと同一平面上にまで押し上げられてウェハ20の裏面と接触する。このとき、ヘッド10aの上面は、その周辺部分において、載置面4aとも接触している。これにより、ウェハ20がヘッド10a及びステージ4を介してテスタに接続されることとなる。この状態で、プローブ針18がウェハ20を押圧し、ウェハ20の電気的特性が測定される。電気的特性の測定が終了すると、ステージ4がカム部材12から離間する方向(すなわち、上方)に移動する。これにより、ウェハ支持部材10は自重によって図2に示す状態へと移動する。なお、ウェハ支持部材10が図2に示す状態に確実に戻るように、溝6内にばね機構を備えていてもよい。すなわち、ばねによってウェハ支持部材10を下方に付勢するようにしてもよい。
【0016】
上記のように、ウェハ支持部材10が下方からウェハ20を支持した状態でプローブ針18がウェハ20に接触すると、プローブ針18からウェハ20に作用する力をウェハ支持部材10で受けることができるため、ウェハ20の破損等の不具合が生じることがない。また、溝6をウェハ支持部材10で塞いでも、溝6の全体が塞がれないため、ウェハ20をステージ4に吸着固定することができる。これによって、プロービングテスト時のウェハ20のずれを好適に防止することができる。さらに、ウェハ支持部材10とカム部材12は絶縁性の材料で形成されているため、ウェハ支持部材10がウェハ20に接触しても、ウェハ20の電気的特性には影響しない。本実施例の半導体製造装置2によると、ウェハ20の電気的特性に影響を及ぼすことなく、ウェハ20のプロービングテスト時の破損を良好に防止することができる。
【0017】
(第1実施例の変形例)
図5に、第1実施例の半導体製造装置の変形例を表わす。この半導体製造装置30では、各ウェハ支持部材10の軸部10bの下端に、磁石で形成されるストッパ22が設けられている。さらに、ステージ4の下方には駆動部材26が配置され、この駆動部材26の上面には磁石24が固定されている。ストッパ22と磁石24は、同一の磁極で形成されている。即ち、ステージ4が移動してウェハ支持部材10が磁石24上に位置決めされると、ストッパ22と磁石24が反発し合い、この磁力によってヘッド10aが上部へと押し上げられる。即ち、第1実施例では、ウェハ支持部材10の高さ位置がカム部材16によって機械的に変化したのに対して、本実施例では、ウェハ支持部材10の高さ位置が磁石24の磁力によって非接触で変化する。
【0018】
図5に示す状態(磁石24の磁力によってウェハ支持部材10が押し上げられた状態)では、ストッパ22がステージ4の裏面に接触しており、ウェハ支持部材10のヘッド10aが図示する高さ位置(即ち、載置面4aと同一平面)よりもさらに上方に押し上げられることを防止する。そして、ステージ4が磁石24から離されると、ストッパ22と磁石24の磁気的な反発力が小さくなり、ウェハ支持部材10は自重によってもとの状態へと復帰する。また、駆動部材26の上面の磁石24の周辺には、ストッパ22の下面側の磁極とは反対の磁極の引き戻し用磁石をさらに配設しておいてもよい。この構成によると、ストッパ22と引き戻し用磁石の間に発生する吸引力によって、ウェハ支持部材10のヘッド10aが溝6の底面に当接する位置まで確実に移動させることができる。
【0019】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で或いは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。例えば、第1実施例のウェハ支持部材10の軸部10bの下端にストッパを設けてもよい。また、このような場合、ストッパは磁性を有する部材でなくともよい。
また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例の半導体製造装置の概略平面図。
【図2】図1の半導体製造装置のII−II断面図。
【図3】第1実施例の半導体製造装置を用いたプロービングテストの様子を表わす図。
【図4】図1の半導体製造装置のステージを変形した変形例に係るステージの一部を拡大して示す図。
【図5】第1実施例の半導体製造装置の変形例を表わす図。
【符号の説明】
【0021】
2,30:半導体製造装置
4:ステージ
6:溝
8:吸引用貫通孔
10:ウェハ支持部材
10a:ヘッド
10b:軸部
12:カム部材
14:吸引機構
16:カム面
18:プローブ針
20:ウェハ
22:ストッパ
24:磁石
26:駆動部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを載置する載置面と、載置面上に形成される溝とを備えるステージと、
溝内の空気を吸引する空気吸引手段と、
溝内の異なる位置にそれぞれ配設され、溝内を溝の高さ方向に移動可能なウェハ支持部材と、
ウェハ支持部材の上面が載置面から退避した第1位置からウェハ支持部材の上面が載置面と同一平面となる第2位置に、ウェハ支持部材を移動させる移動機構とを備えており、
その移動機構が複数のウェハ支持部材の少なくとも一つを第2位置に移動させたときに、残りのウェハ支持部材が第1位置にあることを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−103238(P2010−103238A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272030(P2008−272030)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】