説明

半導体集積回路装置および発振周波数較正方法

【課題】発振器の発振周波数の較正作業を短縮することができる半導体集積回路装置および発振周波数較正方法を提供する。
【解決手段】DCO50と、温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源20から得られる電位に応じたDCO50に設定すべき発振周波数の温度係数および発振周波数の絶対値を記憶する記憶部42と、を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器を備えた半導体集積回路装置および発振周波数較正方法に関し、特に検査時に発振器の発振周波数を較正する半導体集積回路装置および発振周波数較正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において発振器は広く用いられている。この発振器の出荷時には製造過程で生じた発振周波数の誤差を較正する必要があり、従来から発振周波数を較正する手法が知られている。近年では、温度変化に対しての発振周波数の変動許容率が小さいものを要求されるものも多く、このようなニーズを満たす解決手段が求められている。
【0003】
解決手段の一例としては、絶対温度に対する発振周波数の対応関係を測定して較正値を決定するという手段が考えられる。ただし、この較正作業は、精度よく温度変化(例えばT1からT2へ変化)をさせる際、極めて長い収束時間がかかるため、較正にかかる費用を増加させる一因となる。時には、温度補償範囲の全域の温度にて較正をかけなければ出荷時の発振器の性能が保証出来ず、更なる較正費用の増大を招く場合もある。そのため、発振周波数の較正作業を短時間で終わらせることができる手法が求められていた。
【0004】
下記特許文献1に代表される従来技術では、温度が変化したときの発振周波数を、応答性よく所定の基準周波数に調整し発振周波数を一定に保つことができる発振周波数の制御方法が開示されている。
【0005】
ただし、特許文献1に代表される従来技術は、発振器の出荷後における温度変化に対する発振周波数の制御に関するものであり、発振周波数の較正作業に要する時間を短縮するというニーズを満たすことができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−311884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発振器の発振周波数の較正作業を短縮することができる半導体集積回路装置および発振周波数較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様によれば、発振器と、前記発振器の発振周波数を決める情報および温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源から得られる電位情報に基づいて、前記発振器を制御する制御信号を出力する発振周波数較正部とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発振器の発振周波数の較正作業を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成図である。
【図2】発振周波数および電位の関係を示す図である。
【図3】DCOを較正する際の動作を説明するための図である。
【図4】DCOの出荷後の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成図である。
【図6】図5の制御部の内部構成を示す図である。
【図7】図5のDCOの出荷後における制御信号を説明するための図である。
【図8】図7の電流源と温度特性との関係を示す図である。
【図9】図7の電流源の構成例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成図である。
【図11】図10のDCOの出荷後における制御信号を説明するための図である。
【図12】リングオシレータに電流源を接続した場合の構成例を示す図である。
【図13】図12の電流源と温度特性との関係を示す図である。
【図14】DCOの出力端と制御部の入力端との間に接続された分周器を示す図である。
【図15】DCOの入力端に接続された分周器を示す図である。
【図16】制御部の出力端に接続された分周器を示す図である。
【図17】発振周波数較正部で線形補間されたデータを示す図である。
【図18】複数の測定点による補完処理を説明するための図である。
【図19】容量および基準電位の関係を示す図である。
【図20】第7の実施の形態にかかるLUTを示す図である。
【図21】第7の実施の形態をLC発振器に適用した場合の較正動作を説明するための図である。
【図22】DCOの出荷後における制御信号を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる半導体集積回路装置および発振周波数較正方法を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成図であり、図2は、発振周波数および電位の関係を示す図であり、図3は、DCOを較正する際の動作を説明するための図であり、図4は、DCOの出荷後の動作を説明するための図である。
【0013】
図1の半導体集積回路装置は、発振周波数較正部40と、温度に対して単調な特性を持つ電圧源20と、アナログデジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)30と、較正対象の発振器(DCO:Digital Controlled Oscillator)50と、DCO50を制御する制御部10と、を有する。
【0014】
DCO50の出力端は、制御部10に入力端に接続されている。制御部10には、図示しない基準発振器(温度に関わらず一定のある決まった発振周波数で発振しているもの)が接続されている。制御部10は、基準発振器からの基準発振周波数REFとDCO50の出力(発振周波数)とが一致するように制御し、その結果をデジタル情報としてDCO50に出力する。なお、安定状態になることをLockした状態であると一般的に表現をする。DCO50、制御部10、および基準発振周波数REFは、全体として例えばDLL(Delay Locked Loop)、PLL(Phase Locked Loop)、またはFLL(Frequency Locked Loop)の様なものを構成している。制御部10の出力は、DCO50からの発振周波数を決めるための情報(data)として発振周波数較正部40に入力される。
【0015】
電圧源20は、温度に対して単調な特性を持つ電圧源である。例えば、図示しない基準電位BGR(Band-gap Reference)によって、温度に対して線形に変化する電流Iptat(proportional to absolute temperature)を抵抗負荷としたものである。ADC30は、電圧源20からの電位をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された電位情報(addr)は、発振周波数較正部40に入力される。
【0016】
発振周波数較正部40は、LUT(Look-Up Table)41と、発振周波数設定部45と、記憶部42と、を有する。LUT41には、DCO50に対応した発振周波数を決めるための情報および電位情報が予め格納されている。発振周波数設定部45は、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrに基づいて、予めLUT41に格納されたdataおよびaddrを参照して発振周波数の温度係数および発振周波数の絶対値を設定する。記憶部42は、設定された発振周波数の温度係数および絶対値を記憶する。
【0017】
次に、図2を用いて、発振周波数の較正にかかる絶対温度T(以下単に「温度T」と称する)、基準電位V、および発振周波数Fの関係を説明する。図2(a)には、温度Tに対する発振周波数Fが示されており、この発振周波数Fは発振周波数を決めるための情報に対応している。図2(b)には、温度Tに対する基準電位Vが示されており、この基準電位Vは電圧源20からの電位情報に対応している。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置では、温度に対して単調な特性を持つ基準電位Vと、発振周波数Fとを用いてDCO50を較正するものである。
【0018】
例えば、温度T1に対応する基準電位および発振周波数は、基準電位V1および発振周波数F1であり、温度T2に対応する基準電位および発振周波数は、基準電位V2および発振周波数F2である。すなわち、基準電位Vおよび発振周波数Fは、ある温度に対して一対一の対応関係になる。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置は、任意の温度に対するDCO50の発振周波数と、任意の温度に対する電圧源20の電位とを測定し、予めDCO50の発振周波数および電位が格納されたLUT41を参照し、所望の発振周波数になるような較正を実行する。
【0019】
以下、LUT41に格納された発振周波数を決めるための情報および電位情報を用いて、DCO50を較正するための手順を具体的に説明する。
まず、ある適当な温度(以下「第1の温度」と称する)における発振周波数を決めるための情報(data)および電位情報(addr)を測定する。なお、電圧源20およびDCO50は、略同一の温度変化の環境に設置されているものとする。第1の温度は、DCO50の動作範囲内であれば基本的に何℃でも構わない。そして、第1の温度の状態で、DCO50をLockさせ、発振周波数較正部40に第1の温度におけるdataおよびaddrを入力する。
【0020】
次に、電圧源20およびDCO50の雰囲気温度を変化させて、変更後の温度(以下「第2の温度」と称する)での測定を行う。なお、第2の温度は、第1の温度より低い温度でも高い温度でもよい。すなわち、温度を変化させること自体が重要であるので、例えば、ヒータの様なものを当て続けるだけでも構わないし、抵抗のような熱源を設置しても構わない。そして、第2の温度の状態で、DCO50をLockさせ、発振周波数較正部40に第2の温度におけるdataおよびaddrを入力する。
【0021】
その結果、発振周波数設定部45は、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrを得たことになる。発振周波数設定部45は、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrに基づいて、予めLUT41に格納されたdataおよびaddrを参照して発振周波数の温度係数および発振周波数の絶対値を設定する。設定された発振周波数の温度係数および絶対値は、記憶部42に保存される。DCO50の出荷後は、図4のように、記憶部42に記憶された発振周波数の温度係数および絶対値から導出される制御信号(data)がDCO50に出力され、DCO50の発振周波数が制御される。
【0022】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる半導体集積回路装置は、温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源20から得られる電位に応じて変化する発振周波数の温度係数および絶対値に基づいて、DCO50の発振周波数を較正するようにしたので、DCO50の較正に伴う温度操作が不要である。本実施の形態にかかる半導体集積回路装置によれば、較正作業に伴う時間が大幅に短縮されるため、その結果、DCO50の較正に伴うコストを大幅に削減することが可能である。
【0023】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成図であり、図6は、図5の制御部の内部構成図であり、図7は、図5のDCOの出荷後における制御信号を説明するための図であり、図8は、図7の電流源と温度特性との関係を示す図であり、図9は、図7の電流源の構成例を示す図である。以下、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0024】
図5の半導体集積回路装置は、第1の実施の形態のDCO50をLC発振器(平衡型発振器)で実現したものである。このDCO50の出力VoutpおよびVoutnは、制御部10に出力される。図6の制御部10は、差動単相変換器12およびTDC(Time-to-Digital Converter)11を有している。差動単相変換器12は、DCO50からの出力VoutpおよびVoutnを単相信号に変換する。TDC11は、差動単相変換器12からの単相信号と外部からの基準発振周波数REFとを比較し、その差分をデジタル情報として出力する。TDC11から出力された情報は、dataとして発振周波数較正部40に入力される。また、図5では、電圧源がVptat(proportional to absolute temperature)として示されている。図5のOn−Chipと示された部分は、出荷される発振器に搭載される部位である。
【0025】
以下、DCO50の較正手順を説明する。第1の温度でDCO50をLockさせる。制御部10の出力は、DCO50からの発振周波数を決めるための情報(data)として発振周波数較正部40に入力される。ADC30は、Vptatをデジタル信号(電位情報addr)に変換し、発振周波数較正部40に入力される。次に、第2の温度の状態でDCO50をLockさせる。そして、第2の温度におけるdataおよびaddrを取得する。その結果、発振周波数較正部40は、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrを得たことになる。
【0026】
発振周波数設定部45は、LUT41を参照し、LUT41に予め格納されたdataおよびaddrと第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrに基づいて、発振周波数の温度係数および絶対値を設定する。設定された発振周波数の温度係数および絶対値は、記憶部42に保存される。DCO50の出荷後は、記憶部42の発振周波数の温度係数および絶対値から導出される制御信号がDCO50に出力され、DCO50の発振周波数が制御される。
【0027】
以下、発振周波数較正部40の構成を具体的に説明する。
【0028】
図7の記憶部42には、発振周波数設定部45で設定された発振周波数の温度係数および絶対値が記録されている。発振周波数の温度係数は、電流源43に入力される。電流源43は、記憶部42に記憶された温度係数に対応したDCO50の制御量を示す制御信号d1を生成し、DCO50の可変容量51に出力される。発振周波数の絶対値は、この絶対値に対応したDCO50の制御量を示す制御信号d2として、DCO50のスイッチ52を制御する。
【0029】
図8には、図7の電流源43で2次の温度補正を行う場合の概念が示されている。例えば、0次の温度係数を持った電流源Icと、1次の温度係数を持った電流源Ipと、2次の温度係数を持った電流源Isとを足し合わせることによって、2次の温度特性をもった電流源を実現可能である。図9(a)は、図8の電流源Isの等価回路である。電流源Isは、トランジスタの2次特性を利用することで実現可能である。また、図9(b)は、図8の電流源43の等価回路であり、電流源Ic、Ip、およびIsを利用することで実現可能である。その結果、第1の実施の形態と同様の効果に加え、LC発振器を構成しているトランジスタの非線形特性を考慮した発振周波数の較正が可能となる。なお、Ic、Ip、Is、α、β、γの係数は、正負を問わない。
【0030】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態にかかる半導体集積回路装置の構成を示す図であり、図11は、図10のDCOの出荷後における制御信号を説明するための図であり、図12は、リングオシレータに電流源を接続した場合の構成例を示す図であり、図13は、図12の電流源と温度特性との関係を示す図である。以下、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0031】
図10の半導体集積回路装置は、第1の実施の形態のDCO50をリングオシレータで実現したものである。このDCO50の出力Voutは、制御部13に出力される。
【0032】
図10の制御部13は、図6のTDCと同様の機能であり、DCO50からの出力Voutと基準発振周波数REFとを比較し、その差分をデジタル情報として出力する。制御部13から出力された情報は、dataとして発振周波数較正部40に入力される。なお、図10のOn−Chipと示された部分は、出荷される発振器に搭載される部位である。このリングオシレータは、単相型のリングオシレータの例を示しているが、差動型のリングオシレータでもよい。差動型のリングオシレータの場合、制御部13は、図6の制御部10と同等の構成となる。
【0033】
以下、DCO50の較正手順を説明する。第1の温度でDCO50をLockさせる。制御部13の出力は、DCO50からの発振周波数を決めるための情報dataとして発振周波数較正部40に入力される。ADC30は、Vptatをデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換されたADC30からの電位情報addrは、発振周波数較正部40に入力される。次に、第2の温度の状態でDCO50をLockさせる。そして、第2の温度におけるdataおよびaddrを取得する。その結果、発振周波数較正部40は、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrを得たことになる。
【0034】
発振周波数設定部45は、LUT41に予め格納されたdataおよびaddrと、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrとに基づいて、発振周波数の温度係数および絶対値を設定する。設定された発振周波数の温度係数および絶対値は、記憶部42に保存される。DCO50の出荷後は、記憶部42の温度係数および絶対値から導出される制御信号(data)がDCO50に出力される。
【0035】
以下、発振周波数較正部40の構成を具体的に説明する。
【0036】
図11において、記憶部42には、発振周波数設定部45で設定された発振周波数の温度係数および絶対値が記録されている。この発振周波数の温度係数および絶対値は、電流源43に入力され、電流源43は、記憶部42からの温度係数および絶対値に対応したDCO50の制御量を示す制御信号d3を生成し、DCO50のトランジスタ53、54に出力する。なお、図12のように、トランジスタ53、54を介さず電流源43を直接リングオシレータに接続する構成であってもよい。
【0037】
図13(a)は、図8の電流源Isの等価回路である。電流源Isは、トランジスタの2次特性を利用することで実現可能である。また、図13(b)は、図8の電流源43の等価回路であり、電流源Ic、Ip、およびIsを利用することで実現可能である。その結果、第2の実施の形態と同様に、リングオシレータを構成しているトランジスタの非線形特性を考慮した高精度な発振周波数の較正が可能となる。なお、Ic、Ip、Is、α、β、γの係数は、正負を問わない。
【0038】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態にかかる半導体集積回路装置は、第1の実施の形態とほぼ同一の構成であるが、分周器80、81、82を備えている点が異なる。図14は、DCOの出力端と制御部の入力端との間に接続された分周器を示す図であり、図15は、DCOの入力端に接続された分周器を示す図であり、図16は、制御部の出力端に接続された分周器を示す図である。以下、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0039】
図14の分周器80は、DCO50の出力端と制御部10(または制御部18)の入力端との間に接続され、DCO50の発振周波数を分周し制御部10に出力する。この構成にすることで、制御部10を構成するデジタル変換器(例えばTDCにあたるもの)などの周波数動作範囲を狭くすることが可能となる。また、図15の分周器81は、DCO50の入力端に接続され、DCO50に入力される信号を分周する。また、図16の分周器82は、制御部10の出力端に接続され、制御部10からの信号を分周し、分周された発振周波数を決めるための情報をDCO50および発振周波数較正部40に出力する。図15および図16の構成は、図14の構成と同等の機能を有し、同等の効果を得ることができる。なお、分周器80、81、82を制御部10の内部に設置する構成であってもよい。
【0040】
(第5の実施の形態)
第1〜4の実施の形態では、2つの温度T1、T2に対する、基準電位V1、V2と発振周波数F1、F2を測定した。第5の実施の形態では、線形近似によりこの2点間の基準電位および発振周波数を求める。
【0041】
図17は、発振周波数較正部で線形補間されたデータを示す図である。発振周波数設定部45は、測定した発振周波数F1と発振周波数F2、および、測定した基準電位V1と基準電位V2との間を線形補間する。発振周波数設定部45は、線形補間後の発振周波数と基準電位とに基づいて、電流源43に対する温度係数を演算する。その結果、DCO50の較正を精度よく行うことが可能である。
【0042】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態では、3つ以上の温度に対する、基準電位Tと発振周波数Fとを測定し、二次関数などの高次の温度係数を演算する。
【0043】
図18は、複数の測定点による補間を説明するための図である。発振周波数設定部45は、温度T1〜Tnで測定された、複数の発振周波数F1〜Fnおよび複数の基準電位V1〜Vnの補間処理を行う。複数の温度T1〜Tnを用いて補間することにより、高次の温度係数を得ることができるため、第5の実施の形態に比して、より高い精度でDCO50を較正することが可能である。
【0044】
(第7の実施の形態)
図19は、容量および基準電位の関係を示す図である。図19(a)には、温度に対して一定の発振周波数F0と、所定の容量Cに設定されたDCO50の発振周波数の温度特性が示されている。なお、図19(a)には、一例として、5種類の容量に対する温度特性が示されている。図19(b)には、温度に対して一定の発振周波数F0となるような複数の容量が示されている。例えば、温度T1〜T3で発振周波数FがF0となる容量はC1〜C3である。また、図19(c)には、温度に対応する基準電位Vが示されている。図19(b)と(c)において、温度が共通するため、基準電位Vおよび容量Cは温度の変化に対して一対一の関係になる。
【0045】
図20は、第7の実施の形態にかかるLUTを示す図である。LUT41には、発振周波数Fの代わりに測定された発振周波数FがF0となるような制御量を示す容量C(data)が格納されている。
【0046】
図21は、第7の実施の形態をLC発振器に適用した場合の較正動作を説明するための図である。第1の実施の形態と同様に、発振周波数較正部40には、第1および第2の温度における発振周波数を決めるための情報(data)および電位情報(addr)が入力される。
LUT41には、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrに基づいて、温度に対して一定の発振周波数F0となる容量Cと電位Vが対応付けて格納される。
【0047】
図22は、DCOの出荷後における制御信号を説明するための図である。図22において、LUT41には容量Cが記録されている。電流源43は、容量Cから温度係数を設定するための制御信号を生成し、容量部55に出力する。また、容量Cの絶対値に対応した制御量である制御信号が、容量部55に出力される。この容量部55は、図7で説明した可変容量51あるいはスイッチ52に相当するものであり、LC発振器には、この容量部55が少なくとも1つ設置されているものとする。図22の発振周波数較正部40は、DCO50の発振周波数を補償する発振周波数補償部として機能する。この構成にすることで、DCO50における温度Tの変動に対する発振周波数の温度補償が可能である。
【0048】
なお、第7の実施の形態では、容量Cが格納されたLUT41をLC発振器に用いた場合を説明したが、リングオシレータにも適用可能である。この場合、LUT41の容量Cは、電流源43に入力され、電流源43は、温度係数および絶対温度を設定するための制御信号を生成し、DCO50のトランジスタ53、54に出力する。また、図12のように、トランジスタ53、54を介さず、電流源43を直接リングオシレータに接続する構成であってもよい。
【0049】
また、DCO50を制御するdataには、容量Cの代わりに電流値を用いてもよい。すなわち、LUT41には、第1および第2の温度に対応するdataおよびaddrに基づいて、温度に対して一定の発振周波数F0となる電流Iと電位Vとが対応付けて格納される。この電流値は、電流源43からの電流の大きさを示し、リングオシレータの発振周波数を変化させる。電流源43からの電流とリングオシレータの発振周波数は、ほぼ比例の関係にある。発振周波数設定部45は、LUT41を参照し、発振周波数の温度係数および絶対値を設定する。設定された発振周波数の温度係数および絶対値は記憶部に保存される。電流源43は、記憶部に記憶された温度係数に対応した制御信号を生成し、DCO50の容量部55に出力する。記憶部に記憶された絶対値は、この絶対値に対応した制御信号として容量部55に出力される。このように、容量Cの代わりに電流値を用いた場合でも、発振周波数の温度係数を設定するための制御信号を生成することが可能である。
【0050】
また、図21の発振周波数較正部40は、図18で説明した補間処理を行う構成でもよい。この場合、図21の発振周波数較正部40は、発振周波数設定部45の補間処理機能を備えているものとする。
【符号の説明】
【0051】
10、13 制御部、11 TDC、12 差動単相変換器、20 電圧源、30 ADC、40 発振周波数較正部、41 LUT、42 記憶部、43 電流源、45 発振周波数設定部、50 DCO、51 可変容量、53、54 トランジスタ、55 容量部、80、81、82 分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器と、
前記発振器の発振周波数を決める情報および温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源から得られる電位情報に基づいて、前記発振器を制御する制御信号を出力する発振周波数較正部と
を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記発振周波数較正部は、
前記発振周波数を決める情報および前記電位情報に基づいて、所望の発振周波数の温度係数および絶対値を求め、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記発振周波数較正部は、
前記発振周波数を決める情報および前記電位情報に基づいて、前記発振周波数が温度に対して一定の発振周波数となる容量または電流を求め、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
発振器の発振周波数を較正する発振周波数較正方法において、
前記発振器の発振周波数を決める情報と、温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源から得られる電位情報に基づいて、制御信号を生成する制御信号生成ステップと、
前記制御信号で前記発振器を制御する制御ステップと
を含むことを特徴とする発振周波数較正方法。
【請求項5】
前記制御信号生成ステップは、
任意の第1および第2の温度における、前記発振器の発振周波数を決める情報と、温度に対して単調な特性を持って変化する電圧源から得られる電位情報基づいて、制御信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の発振周波数較正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−155489(P2011−155489A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15676(P2010−15676)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】