説明

半導体集積回路装置の解析方法

【課題】半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定する。
【解決手段】半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々の電位変動量が登録された素子電位変動情報(11)と回路素子および寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報(12)とを入力する。素子電位変動情報(11)および素子配置情報(12)を参照して、回路素子および寄生素子の中から予め設定された電位変動閾値よりも大きい電位変動量に対応する素子を選別し、選別された素子の電位変動量および配置位置を示す情報を素子選別情報(10)に登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路装置の解析技術に関し、さらに詳しくは、電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の解析に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積技術の向上により、1つの半導体集積回路装置に様々な回路が搭載されている。このような半導体集積回路装置では、回路間における電位変動の伝播による回路特性や回路動作への影響を低減することが要求されている。特に、アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路装置では、デジタル回路の動作により発生する電位変動がアナログ回路の回路特性に影響を与えやすいので、その影響を極力低減することが重要となっている。このような電位変動は、半導体集積回路が形成される基板,パッケージ,およびボードや半導体集積回路に含まれる配線などを経由して伝播される。したがって、半導体集積回路装置のレイアウトを修正することによって、回路間における電位変動の伝播による回路特性や回路動作への影響を低減することが可能である。例えば、配線間に形成された寄生容量が回路間における電位変動の伝播経路の要因となっている場合、配線間に寄生容量が形成されないように半導体集積回路装置のレイアウトを変更すれば、電位変動の伝播による回路特性や回路動作への影響を低減できる。
【0003】
また、このような電位変動は、半導体集積回路装置の設計段階において電位変動解析によって推定することが可能である。このような電位変動解析は、特許文献1と特許文献2などに記載されている。特許文献1には、大規模な半導体集積回路であっても電位変動解析が可能な基板回路網を生成する方法が記載されている。特許文献2には、基板を伝播する電位変動による回路特性への影響を解析して影響を受けやすいデバイスを特定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−368116号公報
【特許文献2】特開2002−270696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電位変動解析では、半導体集積回路装置のレイアウトに基づいて回路網(半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子によって構成される回路網)を抽出し、回路網に設けられた電位変動の発生源に電流変化パターンを代入することにより過渡解析を実行し、観測点(例えば、電位変動の伝播による影響を無視できない回路上の任意の点)における電位変動量を観測する。しかしながら、従来の解析方法では、半導体集積回路が形成される基板,パッケージ,およびボードや半導体集積回路に含まれる配線などを複雑に組み合わせて観測点における電位変動量を推定しているので、電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定することが困難である。
【0006】
また、従来の解析方法では、電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となるレイアウト形状を推定し、電位変動の伝播による観測点への影響が低減されるようにレイアウト形状を修正し、電位変動解析によって観測点における電位変動量を求めるという一連の作業を観測点における電位変動量が予め設定された許容量になるまで繰り返し実行することになるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮することが困難である。
【0007】
そこで、この発明は、上記課題を鑑み、電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる半導体集積回路装置の解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の1つの局面に従うと、半導体集積回路装置の解析方法は、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、上記回路素子および上記寄生素子の各々の電位変動量が登録された素子電位変動情報と上記回路素子および上記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報とを入力するステップ(a)と、上記ステップ(a)によって入力された素子電位変動情報および素子配置情報を参照して、上記回路素子および上記寄生素子の中から予め設定された第1の電位変動閾値よりも大きい電位変動量に対応する素子を選別し、選別された素子の電位変動量および配置位置を示す情報を素子選別情報に登録するステップ(b)とを備える。
【0009】
上記半導体集積回路装置の解析方法では、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる。したがって、素子選別情報を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路装置のレイアウトを修正することが容易となる。また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0010】
この発明の別の局面に従うと、半導体集積回路装置の解析方法は、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、上記回路素子および前記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報と、上記回路素子および上記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、上記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、上記観測点の配置位置が登録された観測位置情報とを参照して、上記回路素子および上記寄生素子の各々について、当該素子を上記回路網から削除するとともに上記電位変動の発生源に上記電流変化パターンを代入した場合に上記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(a)と、上記ステップ(a)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(b)とを備える。
【0011】
上記半導体集積回路装置の解析方法では、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる。したがって、素子抽出情報を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路装置のレイアウトを修正することが容易となる。また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0012】
この発明の別の局面に従うと、半導体集積回路装置の解析方法は、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、上記回路素子および前記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報と、上記回路素子および上記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、上記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、上記観測点の配置位置が登録された観測位置情報と、上記回路素子および上記寄生素子に関するパラメータ変化量が登録された感度解析設定情報とを参照して、上記回路素子および上記寄生素子の各々について、上記パラメータ変化量に応じて上記回路網に含まれる当該素子のパラメータを変化させるとともに上記電位変動の発生源に上記電流変化パターンを代入した場合に上記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(a)と、上記ステップ(a)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(b)とを備える。
【0013】
上記半導体集積回路装置の解析方法では、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる。したがって、素子抽出情報を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路装置のレイアウトを修正することが容易となる。また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0014】
この発明の別の局面に従うと、半導体集積回路装置の解析方法は、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子によって構成された回路網が登録された回路網情報と、上記回路素子および寄生素子の各々の電位変動量が登録された素子電位変動情報とを入力するステップ(a)と、上記ステップ(a)によって入力された回路網情報および素子電位変動情報を参照して、上記回路網情報に登録された回路網から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を削除することによって、新たな回路網が登録された新たな回路網情報を生成するステップ(b)とを備える。
【0015】
上記半導体集積回路装置の解析方法では、回路網情報に登録された回路網を構成する素子の個数を削減できる。したがって、回路網情報を用いた解析処理に要する時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定でき、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1による半導体集積回路装置の解析方法を示す図。
【図2】素子電位変動情報の一例を示す図。
【図3】素子配置情報の一例を示す図。
【図4】素子選別条件の一例を示す図。
【図5】素子選別ステップについて説明するための図。
【図6】半導体集積回路装置における素子配置の一例を示す図。
【図7】発生源周辺領域およびパッケージ領域について説明するための図。
【図8】素子選別情報の一例を示す図。
【図9】実施形態2による半導体集積回路装置の解析方法を示す図。
【図10】回路網情報に登録された回路網の一例を示す図。
【図11】電流情報に登録された電流値の時系列変化の一例を示す図。
【図12】観測位置情報の一例を示す図。
【図13】素子抽出条件の一例を示す図。
【図14】電位変動解析ステップについて説明するための図。
【図15】解析用回路網の一例を示す図。
【図16】電位変動解析結果情報の一例を示す図。
【図17】素子抽出ステップについて説明するための図。
【図18】素子抽出情報の一例を示す図。
【図19】実施形態3による半導体集積回路装置の解析方法を示す図。
【図20】感度解析設定情報の一例を示す図。
【図21】電位変動解析ステップについて説明するための図。
【図22】解析用回路網の一例を示す図。
【図23】解析用回路網の別の一例を示す図。
【図24】電位変動解析結果情報の一例を示す図。
【図25】パラメータ変化に伴う電位変動量の変化について説明するための図。
【図26】実施形態4による半導体集積回路装置の解析方法を示す図。
【図27】回路網変更条件の一例を示す図。
【図28】回路網変更ステップについて説明するための図。
【図29】変更前の回路網の一例を示す図。
【図30】素子電位変動情報の一例を示す図。
【図31】変更後の回路網の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1による半導体集積回路装置の解析方法を示す。この方法は、図1に示すフローをコンピュータに実行させるためのプログラムによって、あるいは、当該フローを実行する装置(例えば、上記プログラムを実行するコンピュータ)によって実現される。なお、後述する他の実施形態についても同様である。実施形態1による半導体集積回路装置の検証方法は、素子電位変動情報11,素子配置情報12,素子選別条件13を入力して素子選別情報10を生成する素子選別ステップST11を備える。
【0020】
〔素子電位変動情報〕
図2のように、素子電位変動情報11には、半導体集積回路装置に含まれる回路素子(半導体集積回路を構成する素子)および寄生素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子の電位変動量とが登録されている。
【0021】
〔素子配置情報〕
図3のように、素子配置情報12には、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子のレイアウト上の始点座標および終点座標と、その素子が形成されるレイヤとが登録されている。例えば、M1,M2,M3は、それぞれ、第1メタル配線層,第2メタル配線層,第3メタル配線層を示し、NW,PWは、N型基板層,P型基板を示し、Pは、パッケージ層を示す。また、“M1−M2”は、第1メタル配線層と第2メタル配線層との間を意味する。すなわち、素子配置情報には、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々の配置位置が登録されている。
【0022】
〔素子選別条件〕
図4のように、素子選別条件13には、除外領域,除外レイヤ,除外素子,および電位変動閾値が登録されている。除外領域,除外レイヤ,および除外素子は、それぞれ、選別対象から除外される領域,レイヤ,および素子の種類を示す。電位変動閾値は、選別対象として選択される素子の電位変動量を示す。図4では、除外領域として「電位変動発生源セルから20μm以内の領域」および「パッケージ領域」が登録され、除外レイヤとして「N型基板層(NW)」および「P型基板層(PW)」が登録され、除外素子として「インダクタ(L)」が登録され、電位変動閾値として「50mV以上」が登録されている。例えば、電位変動源セルから一定距離内に配置された素子の電位変動量は、他の場所に配置された素子の電位変動量よりも大きいので、電位変動源セルから一定距離内に配置された素子は、選別対象として適切でない。そこで、電位変動源セルから一定距離内(図4では、20μm以内)の領域を選別対象から除外することにより、選別対象として適切でない素子を除外できる。
【0023】
〔素子選別ステップ〕
次に、図5を参照して、素子選別ステップST11について説明する。ここでは、図6のように、半導体集積回路装置を構成する半導体集積回路111およびパッケージ112に着目し、半導体集積回路111には、抵抗R1〜R3,容量C1〜C3,およびインダクタL2が配置され、パッケージ112には、インダクタL2が配置されているものとする。また、図6において、セル101は、電位変動の発生源であり、観測点102は、電位変動の観測点(例えば、電位変動の伝播による影響を無視できない回路上の任意の点)であるものとする。すなわち、素子選別ステップST11では、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から、電位変動の発生源から観測点に至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を選別する。
【0024】
《ST101》
まず、素子電位変動情報11および素子配置情報12の中から(すなわち、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から)処理対象となる素子を選択する。ここでは、抵抗R1〜R3,容量C1〜C3,およびインダクタL1,L2の中から処理対象となる素子を選択する。
【0025】
《ST102》
次に、素子電位変動情報11および素子選別条件13を参照して、素子電位変動情報11に登録された処理対象となる素子の電位変動量が素子選別条件13に登録された電位変動閾値よりも大きいか否かを判定する。処理対象となる素子の電位変動量が電位変動閾値よりも大きい場合にはステップST103へ進み、そうでない場合にはステップST105へ進む。
【0026】
《ST103》
次に、素子配置情報12および素子選別条件13を参照して、素子配置情報12に登録された処理対象となる素子が素子選別条件13に登録された除外条件に該当するか否かを判定する。ここでは、処理対象となる素子の始点座標および終点座標が素子選別条件13に登録された除外領域内に存在する場合,処理対象となる素子が形成されるレイヤが素子選別条件13に登録された除外レイヤである場合,および処理対象となる素子の種類が素子選別条件13に登録された除外素子の種類に一致する場合のうち少なくとも1つの場合に該当すると、処理対象となる素子が素子選別条件13に登録された除外条件に該当することになる。除外条件に該当しない場合にはステップST104へ進み、除外条件に該当する場合にはステップST105へ進む。
【0027】
《ST104》
次に、素子電位変動情報11および素子配置情報12を参照して、処理対象となる素子に関する情報(ここでは、その素子のインスタント名,その素子のレイアウト上の始点座標および終点座標,その素子が形成されるレイヤ,その素子の電位変動量)を素子選別情報10に登録する。
【0028】
《ST105》
次に、素子電位変動情報11および素子配置情報12の中に処理対象として選択されていない素子が残っているか否かを判定する。処理対象として選択されていない素子が残っている場合にはステップST101へ進み、そうでない場合には素子選別ステップST11を終了する。
【0029】
このようして、素子選別情報10が生成される。ここでは、図2に示した素子電位変動情報11によれば、抵抗R,容量C1,C3,およびインダクタL1の電位変動量は、電位変動閾値「50mV」よりも大きい。また、図6に示したレイアウト配置によれば、容量C2は「電位変動発生源セルから20μm以内の領域(図7のハッチング領域113)」に配置され、インダクタL1は「パッケージ領域(図7のハッチング領域114)」に配置されている。さらに、素子選別条件13によれば、インダクタL1,L2は除外素子に該当する。したがって、図8のように、抵抗R1および容量C1,C3に関する情報が素子選別情報10に登録されることになる。
【0030】
〔素子選別情報〕
図8のように、素子選別情報10には、素子選別ステップST11によって選別された素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子のレイアウト上の始点座標および終点座標と、その素子が形成されるレイヤと、その素子の電位変動量とが登録されている。
【0031】
以上のように、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子(以下、要因素子と表記)を容易に特定できる。したがって、素子選別情報10を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路装置のレイアウトを修正することが容易となる。また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0032】
また、素子選別条件13に除外条件(ここでは、除外領域,除外レイヤ,および除外素子)を登録することにより、限定された範囲の中から要因素子を選出できるので、要因素子の選出を容易にできる。なお、素子選別条件13に除外条件が登録されていなくても良い。
【0033】
また、素子電位変動情報11において、素子のインスタント名の代わりに、素子の配置位置(素子のレイアウト上の始点座標および終点座標や、素子が形成されるレイヤなど)が登録されても良い。
【0034】
(実施形態2)
図9は、実施形態2による半導体集積回路装置の解析方法を示す。この方法は、素子選別情報10,回路網情報21,電流情報22,および観測位置情報23を入力して電位変動解析結果情報24を生成する電位変動解析ステップST21と、電位変動解析結果情報24および素子抽出条件25を入力して素子抽出情報20を生成する素子抽出ステップST22とを備える。
【0035】
〔回路網情報〕
回路網情報21には、図10のような回路網が登録されている。回路網は、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子を含む。図10に示した回路網には、抵抗R1,容量C1,C3,およびインダクタL1と、電位変動発生源SSとが含まれている。また、回路網情報21には、回路網を構成する素子の各々について、その素子の配置位置(例えば、その素子のインスタント名,その素子のレイアウト上の始点座標および終点座標,その素子が形成されるレイヤなど)や素子のパラメータ値(例えば、抵抗値,容量値,インダクタンス値)などが登録されても良い。
【0036】
〔電流情報,観測位置情報〕
電流情報22には、図11のような電流値の時系列変化が登録されている。すなわち、電流情報22には、電位変動の発生源の電流変化パターンが登録されている。また、図12のように、観測位置情報23には、電位変動の観測点のレイアウト上の座標と、電位変動の観測点が配置されるレイヤとが登録されている。
【0037】
〔素子抽出条件〕
図13のように、素子抽出条件25には、電位変動閾値が登録されている。電位変動閾値は、抽出対象として選択される素子の電位変動量を示す。図13に示した素子抽出条件25では、電位変動閾値として「20mV以下」が登録されている。
【0038】
〔電位変動解析ステップ〕
次に、図14を参照して、電位変動解析ステップST21について説明する。ここでは、図8のように、素子選別情報10には、抵抗R1および容量C1,C3に関する情報が登録されているものとする。
【0039】
《ST201》
まず、素子選別情報10の中から処理対象となる素子を選択する。ここでは、回路網情報21に登録された回路網を構成する素子(図10に示された抵抗R1,容量C1,C3,インダクタL1など)のうち抵抗R1および容量C1,C3が処理対象として選択されることになる。
【0040】
《ST202》
次に、回路網情報21に登録された回路網から処理対象となる素子を削除して解析用回路網を生成する。例えば、抵抗R1が処理対象として選択された場合、図10に示した回路網の中から抵抗R1が削除されることにより、図15に示した解析用回路網が生成される。図15に示した解析用回路網では、抵抗R1が配置されていた部分201が開放された状態となっている。
【0041】
《ST203》
次に、電流情報22,観測位置情報23,およびステップST202によって生成された解析用回路網を参照して、解析用回路網に含まれる電位変動発生源SSに電流情報22に登録された電流変化パターンを代入することにより、観測位置情報23に登録された観測点における電位変動量を解析する。このようにして、処理対象となる素子を回路網から削除した場合に観測点において観測される電位変動量を解析する。
【0042】
《ST204》
次に、ステップST203による解析結果と素子選別情報10とを参照して、処理対象となる素子に関する情報(その素子のインスタント名,その素子の始点配置位置(レイアウト上の始点座標および始点が配置されるレイヤ)と、その素子の終点配置位置(レイアウト上の終点座標および終点が配置されるレイヤ))とステップST203によって解析された観測点における電位変動量とを電位変動解析結果情報24に登録する。
【0043】
《ST205》
次に、素子選別情報10の中に処理対象として選択されていない素子が残っているか否かを判定する。処理対象として選択されていない素子が残っている場合には、ステップST201へ進み、そうでない場合には、電位変動解析ステップST21を終了する。
【0044】
このようにして、電位変動解析結果情報24が生成される。ここでは、図16のように、抵抗R1および容量C1,C3に関する情報が電位変動解析結果情報24に登録されることになる。
【0045】
〔電位変動解析結果情報〕
図16のように、電位変動解析結果情報24には、電位変動解析ステップST31によって解析された素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子の始点配置位置(レイアウト上の始点座標および始点が配置されるレイヤ)と、その素子の終点配置位置(レイアウト上の終点座標および終点が配置されるレイヤ)と、回路網情報21に登録された回路網からその素子を削除した場合の観測点における電位変動量とが登録されている。
【0046】
〔素子抽出ステップ〕
次に、図17を参照して、素子抽出ステップST22について説明する。ここでは、電位変動解析結果情報24に登録された素子の中から、電位変動の発生源から観測点に至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を抽出する。
【0047】
《ST206》
電位変動解析結果情報24の中から処理対象となる素子を選択する。ここでは、抵抗R1および容量C1,C3が処理対象として選択されることになる。
【0048】
《ST207》
次に、電位変動解析結果情報24および素子抽出条件25を参照して、処理対象となる素子に対応する電位変動量(処理対象となる素子を削除した場合の観測点における電位変動量)が素子抽出条件25に登録された電位変動閾値よりも小さいか否かを判定する。処理対象となる素子に対応する電位変動量が電位変動閾値よりも小さい場合には、ステップST208へ進み、そうでない場合には、ステップST209へ進む。
【0049】
《ST208》
次に、電位変動解析結果情報24を参照して、処理対象となる素子に関する情報(ここでは、その素子のインスタント名,その素子の始点配置情報および終点配置情報,その素子を削除した場合の観測点における電位変動量)を素子抽出情報20に登録する。
【0050】
《ST209》
次に、電位変動解析結果情報24の中に処理対象として選択されていない素子が残っているか否かを判定する。処理対象として選択されていない素子が残っている場合には、ステップST206へ進み、そうでない場合には、素子抽出ステップST22を終了する。
【0051】
このようにして、素子抽出情報20が生成される。ここでは、図16に示した電位変動解析結果情報24によれば、抵抗R1および容量C1に対応する電位変動量(観測点における電位変動量)は電位変動閾値「20mV」よりも小さい。したがって、図18のように、抵抗R1および容量C1に関する情報が素子抽出情報20に登録されることになる。このように、電位変動閾値よりも大きい電位変動量に対応する素子を除外して電位変動閾値よりも大きい電位変動量に対応する素子を選択することにより、観測点における電位変動量を一定値以下(ここでは、20mV以下)にすることができる。
【0052】
〔素子抽出情報〕
図18のように、素子抽出情報20には、素子抽出ステップST22によって抽出された素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子の始点配置情報および終点配置情報と、その素子を回路網から削除した場合の観測点における電位変動量とが登録されている。
【0053】
以上のように、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる。これにより、素子抽出情報20を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路装置のレイアウトを修正することが容易となる。例えば、図18に示した素子抽出情報20に登録された容量C1の配置情報を参照すれば、容量C1が第1メタル配線層M1と第2メタル配線層M2との間に形成される寄生容量に相当することを容易に把握できる。すなわち、容量C1の配置部分において第1メタル配線層M1と第2メタル配線層M2との重複が解消されるように(または、少なくなるように)半導体集積回路のレイアウトを修正することによって観測点における電位変動量を低減できることを容易に把握できる。
【0054】
また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0055】
なお、ステップST201において、素子選別情報10の中からではなく回路網情報21に登録された素子の中から処理対象となる素子を選択しても良い。すなわち、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々について電位変動解析ステップST21が実行されても良い。この場合、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々の配置位置を取得するために、素子配置情報12を参照しても良い。
【0056】
(実施形態3)
図19は、実施形態3による半導体集積回路装置の解析方法を示す。この方法は、素子選別情報10,回路網情報21,電流情報22,観測位置情報23,感度解析設定情報31,および素子電位変動情報11を入力して電位変動解析結果情報34を生成する電位変動解析ステップST31と、電位変動解析結果情報34および素子抽出条件25を入力して素子抽出情報30を生成する素子抽出ステップST32とを備える。
【0057】
〔感度解析設定情報〕
図20のように、感度解析設定情報31には、素子の種類とパラメータ変化量とが対応付けて登録されている。図20では、抵抗のパラメータ変化量(すなわち、抵抗値の変化量)は“±10%”とされ、容量のパラメータ変化量(すなわち、容量値の変化量)は“±15%”とされ、インダクタのパラメータ変化量(すなわち、インダクタンス値の変化量)は“±10%”とされている。
【0058】
〔電位変動解析ステップ〕
次に、図21を参照して、電位変動解析ステップST31について説明する。ここでは、図8のように、素子選別情報10には、抵抗R1および容量C1,C3に関する情報が登録されているものとする。
【0059】
《ST301》
まず、素子選別情報10の中から処理対象となる素子を選択する。ここでは、回路網情報21に登録された回路網を構成する素子(図10に示された抵抗R1,容量C1,C3,インダクタL1など)のうち抵抗R1および容量C1,C3が処理対象として選択されることになる。
【0060】
《ST302》
次に、回路網情報21および感度解析設定情報31を参照して、回路網情報21に登録された回路網のうち処理対象となる素子のパラメータを感度解析設定情報31に登録された素子パラメータ変化量に応じて変更して解析用回路網を生成する。例えば、抵抗R1が処理対象として選択された場合、図10に示した抵抗R1の抵抗値を10%減少させる(すなわち、“50Ω”から“45Ω”に減少させる)ことにより、図22に示した解析用回路網が生成される。また、図10に示した抵抗R1の抵抗値を10%増加させる(すなわち、“50Ω”から“55Ω”に増加させる)ことにより、図23に示した解析用回路網が生成される。なお、図22および図23に示した抵抗R1の抵抗値“45Ω”および“55Ω”は、それぞれ、図10に示した抵抗R1(抵抗値“50Ω”)についてのパラメータ変化量の下限値および上限値に相当する。
【0061】
《ST303》
次に、電流情報22,観測位置情報23,およびステップST302によって生成された解析用回路網を参照して、解析用回路網に含まれる電位変動発生源SSに電流情報22に登録された電流変化パターンを代入することにより、観測位置情報23に登録された観測点における電位変動量を解析する。このようにして、回路網に含まれる素子(処理対象となる素子)のパラメータを変化させた場合に観測点において観測される電位変動量を解析する。
【0062】
《ST304》
次に、ステップST303による解析結果,素子選別情報10,および素子電位変動情報11を参照して、処理対象となる素子に関する情報(その素子のインスタント名,その素子の始点配置位置と、その素子の終点配置位置)とステップST303において解析された観測点における電位変動量とを電位変動解析結果情報34に登録する。
【0063】
《ST305》
次に、処理対象となる素子のパラメータを感度解析設定情報31に登録されたパラメータ変化量に応じた値(ここでは、パラメータ変化量の上限および下限の両方)に設定したか否かを判定する。すなわち、処理対象となる素子について未設定のパラメータが残っているか否かを判定する。未設定の素子パラメータが残っている場合には、ステップST302へ進み、そうでない場合には、ステップST306へ進む。
【0064】
《ST306》
次に、素子選別情報10の中に処理対象として選択されていない素子が残っているか否かを判定する。処理対象として選択されていない素子が残っている場合には、ステップST301へ進み、そうでない場合には、電位変動解析ステップST31を終了する。
【0065】
このようにして、電位変動解析結果情報34が生成される。なお、素子電位変動情報11に登録された電位変動量を、処理対象となる素子のパラメータを変化させない場合の観測点における電位変動量として電位変動解析結果情報34に登録しても良い。ここでは、図24のように、抵抗R1および容量C1に関する情報が電位変動解析結果情報24に登録されるものとする。
【0066】
〔電位変動解析結果情報〕
図24のように、電位変動解析結果情報34には、電位変動解析ステップST31によって解析された素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子の始点配置位置と、その素子の終点配置位置と、その素子のパラメータ変化量に応じた観測点における電位変動量とが登録されている。ここでは、観測点における電位変動量として、回路網情報21に登録された回路網において素子パラメータを変化させない場合の電位変動量と、素子パラメータを下限値(−10%、または、−15%)に設定した場合の電位変動量と、素子パラメータを上限値(+10%,または、+15%)に設定した場合の電位変動量とが登録されている。
【0067】
図25は、図24に示した電位変動解析結果情報34におけるパラメータ変化量と観測点の電位変動量との対応関係を示す。容量C1および抵抗R1の各々の特性線の傾きの大きさから、容量C1の感度よりも抵抗R1の感度のほうが高いことがわかる。また、容量C1および抵抗R1の各々の特性線の傾きの符号から、容量C1の容量値を小さいほど観測点の電位変動量が低くなり、抵抗R1の抵抗値が大きくなるほど観測点の電位変動量が低くなることがわかる。
【0068】
〔素子抽出ステップ〕
実施形態3における素子抽出ステップST32は、実施形態2における素子抽出ステップST22(図17)と同様である。すなわち、電位変動解析結果情報34の中から処理対象となる素子を選択し(ST206)、処理対象となる素子に対応する電位変動量が素子抽出条件25に登録された電位変動閾値よりも小さいか否かを判定する(ST207)。処理対象となる素子に対応する電位変動量が電位変動閾値よりも小さい場合には、電位変動解析結果情報34を参照して処理対象となる素子に関する情報(ここでは、その素子のインスタント名,その素子の始点配置位置および終点配置位置,その素子のパラメータ変化量に応じた観測点における電位変動量)を素子抽出情報30に登録する。ここで、電位変動解析結果情報34に登録された電位変動量の全てが素子抽出条件25に登録された電位変動閾値よりも小さい場合(例えば、素子抽出条件25に登録された電位変動閾値が「100mV」である場合)、素子抽出情報30の登録内容は、電位変動解析結果情報34の登録内容と等しくなる。
【0069】
〔素子抽出情報〕
素子抽出情報30には、素子抽出ステップST32によって抽出された素子の各々について、その素子のインスタント名と、その素子の始点配置位置および終点配置位置と、その素子のパラメータ変化量に応じた観測点における電位変動量とが登録されている。
【0070】
以上のように、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できる。これにより、素子抽出情報30を参照すれば、観測点における電位変動量が低減されるように半導体集積回路のレイアウトを修正することが容易となる。
【0071】
また、素子パラメータの増減と観測点における電位変動量の増減との関係を容易に把握できる。例えば、素子抽出情報30に登録された「パラメータ変化量に応じた観測点における電位変動量」を参照すれば、その素子の特性線の傾き(パラメータ変化量に対する観測点の電位変動量の割合)の符号を容易に把握できる。したがって、特性線の傾きが“正”である場合には、素子パラメータが減少するように半導体集積回路のレイアウトを修正することにより、観測点における電位変動量を低減でき、特性線の傾きが“負”である場合には、素子パラメータが増加するように半導体集積回路のレイアウトを修正することにより、観測点における電位変動量を低減できる。
【0072】
また、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、半導体集積回路装置の解析に要する時間を短縮できる。
【0073】
なお、ステップST301において、素子選別情報10の中からではなく回路網情報21に登録された素子の中から処理対象となる素子を選択しても良い。すなわち、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々について電位変動解析ステップST31が実行されても良い。この場合、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の各々の配置位置を取得するために、素子配置情報12を参照しても良い。
【0074】
(実施形態4)
図26は、実施形態4による半導体集積回路装置の解析方法を示す。この方法は、回路網情報41,素子電位変動情報11,および回路網変更条件42を入力して回路網情報40を生成する回路網変更ステップST41を備える。
【0075】
〔回路網情報〕
回路網情報21と同様に、回路網情報41には、半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子によって構成された回路網が登録されている。また、回路網情報41には、回路網を構成する素子の各々について、その素子の配置位置(例えば、その素子のレイアウト上の始点座標および終点座標や、その素子が形成されるレイヤなど)や素子のパラメータ値(例えば、抵抗値,容量値,インダクタンス値)などが登録されても良い。
【0076】
〔回路網変更条件〕
図27のように、回路網変更条件42には、電位変動閾値と、削除レイヤとが登録されている。電位変動閾値は、削除対象として選択される素子の電位変動量(ここでは、電位変動量の上限値)を示す。削除レイヤは、削除対象として選択される素子が形成されるレイヤを示す。一般的に、電位変動量が極めて小さい素子を削除しても、観測点における電位変動量は、ほとんど変化しない。図27では、電位変動閾値として「0.1mV」が登録され、削除レイヤとして「パッケージ層(P)」が登録されている。
【0077】
〔回路網変更ステップ〕
次に、図28を参照して、回路網変更ステップST41について説明する。ここでは、図29のように、回路網情報41には、抵抗R101〜R105,R201〜R213,R301〜R313,容量C101,C102,C201〜C205,インダクタL101を含む回路網が登録されているものとする。また、回路網情報41には、抵抗R101〜R104が“配線層401”に形成され、インダクタL101および抵抗R105が“パッケージ402”に形成され、抵抗R201〜R213,R301〜R313および容量C201〜C205が“基板403”に形成され、容量C101,C102が“配線層401と基板403との間”に形成されていることが登録されているものとする。また、図30のように、素子電位変動情報11には、抵抗R101〜R105,R201〜R213,R301〜R313,容量C101,C102,C201〜C205、インダクタL101の電位変動量が登録されているものとする。
【0078】
《ST401》
まず、回路網情報41に登録された素子の中から処理対象となる素子を選択する。ここでは、回路網情報41および回路網変更条件42を参照して、回路網情報41に登録された素子のうち回路網変更条件42に登録された削除レイヤに形成されない素子の中から処理対象となる素子を選択する。すなわち、図29に示した回路網を構成する素子のうちパッケージ402に形成されたインダクタL101および抵抗R105は、処理対象として選択されない。
【0079】
《ST402》
次に、素子電位変動情報11および回路網変更条件42を参照して、素子電位変動情報11に登録された処理対象となる素子の電位変動量が回路網変更条件42に登録された電位変動閾値よりも小さいか否かを判定する。処理対象となる素子の電位変動量が電位変動閾値よりも小さい場合には、ステップST403へ進み、そうでない場合には、ステップST404へ進む。
【0080】
《ST403》
次に、回路網情報41を参照して、処理対象となる素子の種類に応じて回路網情報41に登録された回路網を変更する。例えば、処理対象となる素子が抵抗(または、インダクタ)である場合には、回路網情報41に登録された回路網において処理対象となる素子が配置された部分を短絡された状態にし、処理対象となる素子が容量である場合には、回路網情報41に登録された回路網において処理対象となる素子が配置された部分を開放された状態にする。
【0081】
《ST404》
次に、回路網情報41に登録された素子の中に処理対象として選択されていない素子が残っているか否かを判定する。処理対象として選択されていない素子が残っている場合には、ステップST401へ進み、そうでない場合には、回路網変更ステップST41を終了する。
【0082】
このようにして、回路網情報41が変更されて新たな回路網情報40が生成される。ここでは、図30に示した素子電位変動情報11によれば、抵抗R301〜R313および容量C201〜C205の電位変動量は、電位変動閾値「0.1mV」よりも小さい。したがって、図29に示した回路網から抵抗R301〜R313および容量C201〜C205が削除されることによって、図31のような回路網が回路網情報40に登録される。
【0083】
以上のように、回路網を構成する素子の個数を削減できるので、回路網情報41を用いて解析処理(例えば、電位変動解析ステップST21,ST31など)を実行する場合よりも、回路網情報40を用いて解析処理を実行するほうが解析処理に要する時間を短縮できる。なお、回路網情報21の代わりに回路網情報40を用いて、電位変動解析ステップST21(または、ST31)を実行しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、上述の半導体集積回路装置の解析方法は、電位変動の発生源から観測点へ至る電位変動の伝播経路の要因となる素子を容易に特定できるので、デジタル回路とアナログ回路とが混載する半導体集積回路装置の解析方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0085】
11 素子電位変動情報
12 素子配置情報
13 素子選別条件
10 素子選別情報
21,41,40 回路網情報
22 電流情報
23 観測位置情報
24,34 電位変動解析結果情報
25 素子抽出条件
20,30 素子抽出情報
31 感度解析設定情報
42 回路網変更条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、
前記回路素子および前記寄生素子の各々の電位変動量が登録された素子電位変動情報と前記回路素子および前記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報とを入力するステップ(a)と、
前記ステップ(a)によって入力された素子電位変動情報および素子配置情報を参照して、前記回路素子および前記寄生素子の中から予め設定された第1の電位変動閾値よりも大きい電位変動量に対応する素子を選別し、選別された素子の電位変動量および配置位置を示す情報を素子選別情報に登録するステップ(b)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ステップ(b)は、前記回路素子および前記寄生素子のうち予め設定された除外条件に該当する素子を処理対象から除外する
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記除外条件は、処理対象となる素子が予め設定された除外領域内に配置されているという条件である
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記除外領域は、前記電位変動の発生源から予め設定された距離内の領域である
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記除外条件は、処理対象となる素子が予め設定された除外レイヤに配置されているという条件である
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項6】
請求項2において、
前記除外条件は、処理対象となる素子が予め設定された除外素子の種類に該当するという条件である
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記ステップ(b)によって得られた素子選別情報と、前記回路素子および前記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、前記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、前記観測点の配置位置が登録された観測位置情報とを参照して、前記素子選別情報に登録された素子の各々について、当該素子を前記回路網から削除するとともに前記電位変動の発生源に前記電流変化パターンを代入した場合に前記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(c)と、
前記ステップ(c)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された第2の電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(d)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記ステップ(b)によって得られた素子選別情報と、前記回路素子および前記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、前記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、前記観測点の配置位置が登録された観測位置情報と、前記回路素子および前記寄生素子に関するパラメータ変化量が登録された感度解析設定情報とを参照して、前記素子選別情報に登録された素子の各々について、前記パラメータ変化量に応じて前記回路網に含まれる当該素子のパラメータを変化させるとともに前記電位変動の発生源に前記電流変化パターンを代入した場合に前記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(c)と、
前記ステップ(c)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された第2の電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(d)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記回路網情報と前記素子電位変動情報とを参照して、前記回路網情報に登録された回路網から予め設定された第3の電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を削除することによって、新たな回路網が登録された新たな回路網情報を生成するステップ(e)をさらに備え、
前記ステップ(c)は、前記ステップ(e)によって得られた新たな回路網情報を参照する
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記ステップ(e)は、前記回路網情報に登録された回路網から前記第3の電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子と予め設定された削除レイヤに配置された素子とを削除することによって、新たな回路網が登録された新たな回路網情報を生成する
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項11】
半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、
前記回路素子および前記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報と、前記回路素子および前記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、前記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、前記観測点の配置位置が登録された観測位置情報とを参照して、前記回路素子および前記寄生素子の各々について、当該素子を前記回路網から削除するとともに前記電位変動の発生源に前記電流変化パターンを代入した場合に前記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(a)と、
前記ステップ(a)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(b)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項12】
半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子の中から電位変動の発生源から観測点への電位変動の伝播経路の要因となる素子を特定する方法であって、
前記回路素子および前記寄生素子の各々の配置位置が登録された素子配置情報と、前記回路素子および前記寄生素子を含む回路網が登録された回路網情報と、前記電位変動の発生源の電流変化パターンが登録された電流情報と、前記観測点の配置位置が登録された観測位置情報と、前記回路素子および前記寄生素子に関するパラメータ変化量が登録された感度解析設定情報とを参照して、前記回路素子および前記寄生素子の各々について、前記パラメータ変化量に応じて前記回路網に含まれる当該素子のパラメータを変化させるとともに前記電位変動の発生源に前記電流変化パターンを代入した場合に前記観測点において観測される電位変動量を解析し、当該素子の配置位置と当該電位変動量とを電位変動解析結果情報に登録するステップ(a)と、
前記ステップ(a)によって得られた電位変動解析結果情報に登録された素子の中から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を抽出し、抽出された素子に対応する電位変動量および配置位置を示す情報を素子抽出情報に登録するステップ(b)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項13】
半導体集積回路装置に含まれる回路素子および寄生素子によって構成された回路網が登録された回路網情報と、前記回路素子および寄生素子の各々の電位変動量が登録された素子電位変動情報とを入力するステップ(a)と、
前記ステップ(a)によって入力された回路網情報および素子電位変動情報を参照して、前記回路網情報に登録された回路網から予め設定された電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子を削除することによって、新たな回路網が登録された新たな回路網情報を生成するステップ(b)とを備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記ステップ(b)は、前記回路網情報に登録された回路網から前記電位変動閾値よりも小さい電位変動量に対応する素子と予め設定された削除レイヤに配置された素子とを削除することによって、新たな回路網が登録された新たな回路網情報を生成する
ことを特徴とする半導体集積回路装置の解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−8143(P2013−8143A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139546(P2011−139546)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】