説明

半導体集積回路

【課題】トランジスタのN型領域が負電位となる半導体集積回路において、寄生電流の影響を効果的に防止できるとともに、チップ面積の増大を防ぐことができる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【解決手段】N領域が負電位となるトランジスタQ1と、そのトランジスタQ1に隣接するトランジスタQ2との間のP型分離領域12中に、N型島領域としてのコンタクト領域11を電源電位とした抵抗領域のP型領域10を配置する。また、P型分離領域12をトランジスタQ1の周囲を取り囲むように配置し、さらにコンタクト領域11を、トランジスタQ1の外側を取り巻くように配置することにより、チップ面積の増加を伴わずに、寄生トランジスタQ3,Q4による影響を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路の構造に関し、特に負電圧入力となる回路素子を含む半導体集積回路での寄生電流による回路誤動作の防止に好適な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リニア回路などを構築した集積回路では、図5に示すように半導体チップとしてのP型基板2の半導体形成領域40に複数のトランジスタを形成し、この半導体形成領域40に隣接して抵抗形成領域41が設けられ、この抵抗形成領域41に形成された抵抗と前記半導体形成領域に形成されたトランジスタとでリニア回路が形成されている。抵抗形成領域41の各抵抗は、P型基板2の上に形成されたN型島領域28の中にP型領域10を形成して構成されている。30は抵抗領域の島電位をとるためのコンタクト領域である。
【0003】
例えば、図6に示すようにラテラルPNPトランジスタQ1と、NPNトランジスタQ2などを図7のようにP型基板2の半導体形成領域40に形成して差動増幅回路を構築する場合には、トランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間に、接地されたP型分離領域1を形成して分離することが行われている。
【0004】
トランジスタQ1は、N型島領域18にベース領域15,コレクタ領域16,エミッタ領域17を横方向に形成して構成されている。3,14はN型埋め込み領域、25は絶縁膜である。トランジスタQ2は、N型島領域7にN+のコレクタ領域6とP+のベース領域5を形成し、ベース領域5の中にN+のエミッタ領域4が形成されている。
【0005】
このように、接地されたP型分離領域1によって分離されたトランジスタQ1,Q2を有する半導体集積回路では、トランジスタQ1のベース領域15をエミッタ、P型分離領域1およびP型基板2をベース、トランジスタQ2のコレクタ領域をコレクタとしたNPN型の寄生トランジスタQ5が発生している。トランジスタQ1のベースが正電圧の場合には、寄生トランジスタQ5があっても正常な増幅動作を得ることができるが、トランジスタQ1のベースが負電圧になる下記の使用形態においては、寄生トランジスタQ5の影響によって異常動作が発生する。
【0006】
具体的には、図6と図7に示すようにこの差動増幅回路の出力信号は、トランジスタQ2のエミッタを接地し、トランジスタQ2のコレクタに電流源42を接続し、トランジスタQ2のコレクタに接続された出力端子43から信号が出力される。
【0007】
ここで、トランジスタQ1のベースが負電圧になる使用形態とは、例えば半導体集積回路のGNDレベルが、それ以外の回路のGNDレベルより高い場合を例に挙げることができる。このような使用形態において、トランジスタQ2がオフ状態で前記出力端子43がハイレベルになる状態であっても、入力端子44,45のうちの入力端子44に負電圧が印加されてトランジスタQ1のベースが負電圧になった場合には、寄生トランジスタQ5のコレクタ−エミッタを通して電流吸い込み動作が生じ、前記出力端子43のレベルが下がるという誤動作を起こす。
【0008】
そこで、上記のような半導体集積回路において寄生トランジスタによる影響を低減させることを目的として、(特許文献1)などでは図8(a),図8(b)に示すように構成されている。
【0009】
図8(a)は図8(b)のA−B断面図で、P型基板2の上に、N型ベース領域15、P型コレクタ領域16、P型エミッタ領域17を持つラテラルPNPトランジスタQ1と、N型コレクタ領域6、P型ベース領域5、N型エミッタ領域4を持つNPNトランジスタQ2が形成されており、トランジスタQ1とNPNトランジスタQ2を電気的に分離するP型分離領域1、およびこれらのトランジスタの間に配置された電位的にフローティングであるN型島領域12から成る。
【0010】
この構成において、トランジスタQ1のベース領域15に負電圧が加えられることがある上記のような使用形態では、トランジスタQ1のベース領域15をエミッタ、P分離領域1およびP型基板2をベース、トランジスタQ2のコレクタ領域6をコレクタとしたNPN型の寄生トランジスタQ3が発生するが、トランジスタQ1,Q2の間に電位的にフローティングであるN型島領域12が設けられているため、N型島領域12がない図7の場合と比較して、P型基板2、すなわち寄生トランジスタQ3のベース幅はN型島領域12の幅の分だけ大きくなり、その結果、寄生トランジスタQ3のhFEは低下し、寄生トランジスタQ3がトランジスタQ2のコレクタ領域6より吸い込む電流量を低減させることができ、回路の異常動作を防止できる。
【特許文献1】特公平6−91193号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術によれば、寄生トランジスタQ3による寄生電流を低減するためにフローティング電位のN型島領域12を設けることになるが、このことはチップ面積の増大を招く。また、チップ面積の増大を抑えようとして、フローティング電位のN型島領域12の面積を小さくすると、寄生トランジスタQ3のベース幅が充分に大きくならないため、寄生トランジスタQ3のhFEは充分に低下せず、寄生電流防止の効果が低くなるため、N型島領域12はある程度の面積を確保しなければならない。
【0012】
本発明はトランジスタのN型領域が負電位となる半導体集積回路において、寄生電流の影響を効果的に防止できるとともに、チップ面積の増大を防ぐことができる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1記載の半導体集積回路は、接地されたP型分離領域により電気的に分離してP型基板上に複数のトランジスタが形成され、前記トランジスタのうちN型領域が入力端子に接続された第一のトランジスタとこれに隣接する第二のトランジスタを電気的に分離する前記P型分離領域中に、電源に接続されたN型島領域およびP型拡散領域を含む抵抗領域を形成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2記載の半導体集積回路は、請求項1において、前記抵抗領域が、第一のトランジスタの周囲を取り囲むように形成したことを特徴とする。
本発明の請求項3記載の半導体集積回路は、請求項2において、前記抵抗領域中のN型島領域を電源に接続するためのコンタクト領域を、前記第一のトランジスタの外側を取り囲むように形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4記載の半導体集積回路は、請求項1において、前記第一のトランジスタを半導体チップのコーナーに配置され、前記第一のトランジスタの周囲のうち前記半導体チップの端に面していない部分をガードするようにL字型に抵抗領域を形成したことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5記載の半導体集積回路は、接地されたP型分離領域により電気的に分離してP型基板上に複数のトランジスタが形成され、前記トランジスタのうちN型領域が入力端子に接続された第一のトランジスタとこれに隣接する第二のトランジスタを電気的に分離する前記P型分離領域中に、電源に接続されたN型島領域およびP型拡散領域を含む抵抗領域を形成し、P型分離領域により電気的に分離してP型基板上に形成された複数のトランジスタと、前記P型分離領域中に形成した抵抗領域の抵抗とで電気回路の少なくとも一部を構築したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、P型基板上にP型分離領域で分離された複数のトランジスタが存在して、そのうちの一つのトランジスタのN型領域が負電位となる半導体集積回路において、チップ面積を不必要に増大させることなく効率的に寄生電流を低減し、回路の異常動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の半導体集積回路を図1〜図4に基づいて説明する。
なお、図8(a)(b)と同様の作用を成すものには同一の符号を付けて説明する。また、リニア回路を構築した集積回路の場合を例に挙げて説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の(実施の形態1)を示す。
図1(b)は平面図、図1(a)は図1(b)のA−B線に沿った断面図であり、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間に形成されたN型島領域12の中にP型領域10を形成して抵抗を形成している点だけが、図8(a)(b)に示した従来例とは異なっている。11は抵抗領域の島電位をとるためのコンタクト領域である。
【0020】
詳しくは、図6に示した差動増幅回路を構築した半導体集積回路は、P型基板2の上に、N型ベース領域15、P型コレクタ領域16、P型エミッタ領域17を持つラテラルPNPトランジスタQ1と、N型コレクタ領域6、P型ベース領域5、N型エミッタ領域4を持つNPNトランジスタQ2が形成されており、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2のそれぞれの素子の周囲はP型分離領域1で電気的に分離されている。N型島領域12には抵抗R1を形成するP型領域10とこのP型領域10を介して導通するコンタクト領域46,47を形成すると共に、N型島領域12はコンタクト領域11を介して電源に接続されている。9はN型埋め込み領域である。
【0021】
この構成によると、トランジスタQ1のベース領域15に負電圧が加えられることがある使用形態では、ベース領域15が負電位となると、ベース領域15に隣接するP型分離領域1およびP型基板2は接地されているので、ベース領域15をエミッタ、P型分離領域1およびP型基板2をベース、コンタクト領域3をコレクタとする寄生トランジスタQ3に加えて、N型ベース領域15をエミッタ、P型分離領域1およびP型基板2をベース、コンタクト領域11およびN型島領域12をコレクタとする寄生トランジスタQ4が発生する。
【0022】
寄生トランジスタQ3がトランジスタQ2のN型コレクタ領域6より電流を吸い込むと回路は異常動作を起こすが、P型領域10によって形成された抵抗が配置されていることによって、寄生トランジスタQ3のベース幅は大きくなっているため、寄生トランジスタQ3のhFEは低下しており、寄生トランジスタQ3がトランジスタQ2のコレクタ領域6より吸い込む電流は低減されており、寄生電流による回路の異常動作を防止できる。
【0023】
また、コンタクト領域11を介してN型島領域12を電源に接続されておりかつ寄生トランジスタQ4のベース幅は寄生トランジスタQ3のベース幅に比べて小さいため、寄生トランジスタQ4によって電源から負電源に供給される電流は多くなり、寄生トランジスタQ3がトランジスタQ2のコレクタ領域6から吸い込む電流をさらに低減することができ、寄生電流による異常動作の防止効果を高めることができる。
【0024】
N型島領域12に形成した抵抗R1は、図6に示した差動増幅回路を構築した半導体集積回路の内部において、抵抗分割によるバイアス電圧や各種の基準電圧の設定用に使用されている。
【0025】
さらに、この実施の形態では、従来では図5に示したように半導体形成領域40とは隣接した抵抗形成領域41に形成されていた抵抗を、その少なくとも一部を、半導体形成領域40のN型島領域12に形成しているので、抵抗形成領域41を従来よりも縮小でき、チップ面積を抑えることができる。
【0026】
(実施の形態2)
図2は本発明の(実施の形態2)を示す。
図2(b)は平面図、図2(a)は図2(b)のA−B線に沿った断面図であり、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間に形成されたN型島領域12が、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間だけでなくラテラルPNPトランジスタQ1の周囲を取り巻くように形成されている点だけが(実施の形態1)とは異なっている。さらに、ラテラルPNPトランジスタQ1の周囲を取り巻いているN型島領域12には、ラテラルPNPトランジスタQ1の周囲に複数のP型領域10を形成して複数の抵抗を形成している。それぞれのP型領域10の近傍に設けられているコンタクト領域11は電源に接続されている。20はN型埋め込み領域である。
【0027】
この構成によると、寄生トランジスタQ4のコレクタ・ベース間の接合面積を増大させ、寄生トランジスタQ4のコレクタ抵抗を小さくすることができ、それによって寄生トランジスタQ4が流す電流を大きくできるため、寄生トランジスタQ3が流す電流をさらに低減させることができ、寄生電流による回路の異常動作を防ぐ効果を高めることができる。また、配置できる抵抗R1の面積が限られる場合でも、上記の形状で抵抗を配置することにより、高い寄生電流の低減効果を得ることが可能である。
【0028】
(実施の形態3)
図3は本発明の(実施の形態3)を示す。
図3(b)は平面図、図3(a)は図3(b)のA−B線に沿った断面図であり、抵抗R1のN型島領域12の電位をとるためのコンタクト領域11を、ラテラルPNPトランジスタQ1の周囲を取り巻くように形成されている点だけが(実施の形態2)とは異なっている。
【0029】
この構造によると、寄生トランジスタQ4のコレクタ領域の不純物濃度が高くなり、寄生トランジスタQ4のコレクタ抵抗を小さくできるため、それによって寄生トランジスタQ4が流す電流を大きくできるため、寄生トランジスタQ3が流す電流をさらに低減させることができ、寄生電流による回路の異常動作を防ぐ効果を高めることができる。また、配置できる抵抗R1の面積が限られる場合でも、上記の形状で抵抗を配置することにより、高い寄生電流の低減効果を得ることが可能である。
【0030】
(実施の形態4)
図4は本発明の(実施の形態4)を示す。
図4(b)は平面図、図4(a)は図4(b)のA−B線に沿った断面図であり、仮想線31はスクライブレーンを表している。
【0031】
ラテラルPNPトランジスタQ1はチップのコーナーに配置されており、ラテラルPNPトランジスタQ1の周囲4辺のうち2辺はチップの端に面している場合の具体例を示している。
【0032】
このような場合には、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間に形成されたN型島領域12が、ラテラルPNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2との間だけでなく、チップ端に面している2辺には素子が存在しないので、チップ端に面している2辺を除く残りの2辺をガードするようにL字型にN型島領域12を形成し、ここに抵抗を形成するP型領域10ならびにコンタクト領域11を設けている。
【0033】
このように、他の2辺方向にのみ抵抗領域R1を配置することで、寄生トランジスタQ3による寄生電流を低減することができる。その他は上記の各実施の形態と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
回路の構築に抵抗を必要とするリニア回路などの半導体集積回路の信頼性の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の(実施の形態1)による半導体集積回路の断面図と平面図
【図2】本発明の(実施の形態2)による半導体集積回路の断面図と平面図
【図3】本発明の(実施の形態3)による半導体集積回路の断面図と平面図
【図4】本発明の(実施の形態4)による半導体集積回路の断面図と平面図
【図5】従来の半導体集積回路における半導体形成領域と抵抗形成領域を示す平面図
【図6】寄生素子による異常動作が起こる回路例を示す図
【図7】寄生素子による異常動作が起こる場合の構成を示す断面図
【図8】従来の半導体集積回路の断面図と平面図
【符号の説明】
【0036】
Q1 ラテラルPNPトランジスタ
Q2 NPNトランジスタ
Q3,Q4 寄生トランジスタ
1 P型分離領域
2 P型基板
4 N型エミッタ領域
5 P型ベース領域
6 N型コレクタ領域
9 N型埋め込み領域
10 P型領域
11 コンタクト領域
12 N型島領域
15 N型ベース領域
16 P型コレクタ領域
17 P型エミッタ領域
31 スクライブレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地されたP型分離領域により電気的に分離してP型基板上に複数のトランジスタが形成され、前記トランジスタのうちN型領域が入力端子に接続された第一のトランジスタとこれに隣接する第二のトランジスタを電気的に分離する前記P型分離領域中に、電源に接続されたN型島領域およびP型拡散領域を含む抵抗領域を形成した
半導体集積回路。
【請求項2】
前記抵抗領域が、第一のトランジスタの周囲を取り囲むように形成した
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記抵抗領域中のN型島領域を電源に接続するためのコンタクト領域を、前記第一のトランジスタの外側を取り囲むように形成した
請求項2記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第一のトランジスタを半導体チップのコーナーに配置され、前記第一のトランジスタの周囲のうち前記半導体チップの端に面していない部分をガードするようにL字型に抵抗領域を形成した
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項5】
接地されたP型分離領域により電気的に分離してP型基板上に複数のトランジスタが形成され、前記トランジスタのうちN型領域が入力端子に接続された第一のトランジスタとこれに隣接する第二のトランジスタを電気的に分離する前記P型分離領域中に、電源に接続されたN型島領域およびP型拡散領域を含む抵抗領域を形成し、
P型分離領域により電気的に分離してP型基板上に形成された複数のトランジスタと、前記P型分離領域中に形成した抵抗領域の抵抗とで電気回路の少なくとも一部を構築した
半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−332214(P2006−332214A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151705(P2005−151705)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】