説明

半導電性部材、エンドレスベルト及び画像形成装置

【課題】離型性及び耐摩耗性に優れた表面層を備える半導電性部材及びエンドレスベルト並びにこれらの部材を備えた画像形成装置の提供。
【解決手段】基材と、前記基材上に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備える半導電性部材、及び、ベルト本体と、前記ベルト本体の表面に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備えるエンドレスベルト並びにこれを備える画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性部材、エンドレスベルト及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、まず、像保持体(感光体)上を帯電させ、画像信号を変調したレーザー等により像保持体表面に静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像してトナー像とする。そして、前記トナー像を、中間転写体を介して記録媒体に静電的に転写、或いは直接記録媒体に静電的に転写することにより、記録媒体上にトナー像を形成し、トナー像が形成された記録媒体に熱や圧力を加えることで、記録媒体上に所望の画像を得ることが可能となる。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置を構成する、像保持体を帯電させるための帯電部材や、トナー像の転写を媒介するための中間転写体等の表面には、離型性や耐摩耗性が要求される。離型性や耐摩耗性を示す表面層材料として、フッ化グラファトを分散させたフッ素樹脂を用いる提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示されている発明では、導電剤としてカーボンブラックなどの粒子が添加されている。
【0004】
また、中間転写体の表面層としては、体積抵抗率を1010〜1014Ωcmの範囲とすることが望まれる。
【特許文献1】特開2003−248365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた離型性及び耐摩耗性を示すと共に、体積抵抗率の経時による変化を抑制可能な表面層を備える半導電性部材及びエンドレスベルト並びにこれらの部材を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、以下の本発明により当該課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち請求項1に係る発明は、基材と、前記基材上に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備えることを特徴とする半導電性部材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のポリアニリン粒子のうち最大の粒子の絶対最大長が、10.0μm以下であることを特徴とする半導電性部材である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の表面層の体積抵抗率が、1010〜1014Ωcmであることを特徴とする半導電性部材である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面層のデュロメータ硬さが、A35〜A70であることを特徴とする半導電性部材である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリアニリン粒子が、自己ドープ型のポニアニリンであることを特徴とする半導電性部材である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基材が、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする半導電性部材である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、ベルト本体と、前記ベルト本体の表面に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備えることを特徴とするエンドレスベルトである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、像保持体と、前記像保持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を備え、前記像保持体、前記帯電手段、前記現像手段、前記転写手段及び前記定着手段からなる群より選択される少なくとも一つに、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導電性部材を用いたことを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載のエンドレスベルトを用紙搬送ベルトとして備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して優れた離型性及び耐摩耗性を示すと共に、体積抵抗率の経時による変化を抑制可能な表面層を備える半導電性部材を得ることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、表面層の微小領域における抵抗率の変化を抑制することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、本発明の半導電性部材を画像形成装置における中間転写体として好適に使用することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して凹凸への追従性が向上する。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して表面層の電気特性のばらつきを少なくすることができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して半導電性部材の機械的強度を向上することができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較してエンボス紙等の凹凸の大きな記録媒体への追従性に優れるエンドレスベルトを得ることができる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して耐久性に優れる画像形成装置を得ることができる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較してエンボス紙等の凹凸の大きな記録媒体への高品質な画像を形成可能な画像形成装置を得ることができる。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較してエンボス紙等の凹凸の大きな記録媒体への高品質な画像を形成可能な画像形成装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の半導電性部材、エンドレスベルト及び画像形成装置について詳細に説明する。
【0028】
<半導電性部材>
本発明の半導電性部材は、基材と、前記基材上に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明において、「半導電性」とは、体積抵抗率が10〜1014Ωcmであることをいう。
【0030】
本発明の半導電性部材に係る表面層は表面エネルギーの小さいフッ素樹脂とフッ化グラファイトとを含むために、該表面層の表面エネルギーを小さくすることができる。そのため、優れた離型性を示すものと推察される。また、フッ化グラファイトを含む表面層は、下記理由から優れた耐摩耗性を示すものと推察される。
フッ化グラファイトは、六角形の板状の結晶構造を有しており、その結晶構造は亀の甲状の層状物質で、層毎の面内は強い共有結合(sp2結合)で炭素間が結合しており、層と層との間(面間)は、弱いファンデルワールス力で結合している。それゆえ層状に剥がれる(へき開完全)ことにより、優れた耐磨耗性を示す。
【0031】
さらに、上述のようにフッ化グラファイトは層間剥離性を示すものであり、これが表面層中に含有されるために、本発明の半導電性部材を後述する中間転写体として用いた場合に、中間転写体と該中間転写体に接触する感光体(像保持体)表面との動摩擦係数を小さくすることがでる。そのため、中間転写体の表面エネルギーの低下との相乗効果により、中間転写体の表面の汚染を効果的に防止するものと推察される。
【0032】
また、ポリアニリン粒子を表面層に添加することにより該表面層に導電性を付与することが可能となる。導電剤としてポリアニリン粒子を用いることにより、カーボンブラックを導電剤として用いる場合に比べて表面層の体積抵抗率の経時による変化を抑制可能になる。これは、カーボンブラックは構造体を形成して導電性を発現しているため、使用中に電気的、機械的圧力により構造体が破壊され、経時により抵抗率が変化し、抵抗のバラツキが大きくなってしまうが、ポリアニリン粒子ではこのようなことが起こらないためと推察される。
【0033】
−フッ素樹脂−
表面層に含有されるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体などの樹脂を挙げることができる。これらを単独、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
これらのフッ素樹脂のうちでも、四フッ化エチレン(テトラフルオロエチレン)を含む少なくとも2種類のモノマーの共重合体であり、前記共重合体に占める四フッ化エチレンの割合が70質量%以上であるフッ素樹脂を用いることが好ましい。例えば、テトラフルオロエチレン−アルキルビニルエーテル共重合体として、ゼッフルGK−500(ダイキン工業社製)や、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体として、サイトップ(旭硝子社製)等が好適に用いられる。前記共重合体に占める四フッ化エチレンの割合は、表面層からフッ素樹脂を取り出して、KBr法によりFT−IR(堀場製作所製顕微FT−IR分光器FT−530)を用いて測定することができる。
【0035】
表面層中に含まれるフッ素樹脂の含有量は、40質量%〜95質量%の範囲内にあることが好ましく、70質量%〜95質量%の範囲内にあることがより好ましい。また、表面層中には、フッ素樹脂以外の他の樹脂成分も含まれてもよい。
フッ素樹脂以外の他の樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等を挙げることができる。
【0036】
−フッ化グラファイト−
表面層に含有されるフッ化グラファイトとしては、例えば、(C2F)n型であるセフボンDM(セントラル硝子社製)、(CF)n型であるセフボンCMA、セフボンCMF(セントラル硝子社製)、フッ化炭素#2065、#1030、#1000(旭硝子社製)、CF−100(日本カーボン社製)、また(CF)n型でフッ化率を変えたフッ化炭素#2028、#2010(旭硝子社製)、更には上記フッ化カーボンをアミン等の塩基で処理し表面のフッ素を除去したもの等が挙げられ、(CF)n型であるセフボンCMA、セフボンCMF、フッ化炭素#2065、#1030、#1000、CF−100がより好ましい。
なお、フッ化グラファイト中に含まれるフッ素の含有量は特に限定されないが、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。フッ化グラファイト中に含まれるフッ素の含有量は、表面層からフッ化グラファイトを取り出して、KBr法によりFT−IR(堀場製作所製顕微FT−IR分光器FT−530)を用いて測定することができる。
【0037】
表面層中に含まれるフッ化グラファイトの含有量は、3質量%以上であることが好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、5質量%〜25質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0038】
−ポリアニリン粒子−
表面層に含有されるポリアニリン粒子は、ポリアニリン粒子のうち最大の粒子の絶対最大長が10.0μm以下であることが好ましい。
導電性を付与するために添加されるポリアニリン粒子中の最も長い粒子、即ち、最大ポリアニリン粒子の絶対最大長が10.0μm以下であると、表面の突起や凹凸を低減することができ、また、巨大なポリアニリン粒子が存在しないことから、微小領域における抵抗率の変化を抑制することができる。
なお、本明細書において、ポリアニリン粒子のうち最大の粒子を「最大ポリアニリン粒子」と称することがある。
本発明における「ポリアニリン粒子のうち最大の粒子(最大ポリアニリン粒子)の絶対最大長」とは、表面層に含有されるポリアニリン粒子の中でも、長さが最大の粒子を最大ポリアニリン粒子とした場合、その最大ポリアニリン粒子の最も離れた2点間の距離のことを言う。
つまり、最大ポリアニリン粒子は、表面層中に確認されるポリアニリン粒子(ゲル、凝集体等を含む)の中でも最も長い粒子を意味する。
本発明においては、最大ポリアニリン粒子の絶対最大長は、8.0μm以下であることがより好ましく、7.0μm以下であることが更に好ましい。
【0039】
本発明における最大ポリアニリン粒子の絶対最大長の測定方法について、エンドレスベルトを例に以下に説明する。
本発明における最大ポリアニリン粒子の絶対最大長は、エンドレスベルトから切り出した断面方向の切片に対して、電子線染色を施し、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと称する。)でポリアニリン粒子の画像を取り込み、更に画像処理を行ない、最大ポリアニリン粒子外縁の2点間の最大長を測定することで求めることができる。
【0040】
具体的には、まず、試料として、エンドレスベルトを1mm×8mm程度の短冊形(観察したい側、若しくは成形時の成形方向を短辺とする)に切り出す。試料片の表裏の区別のため試料の一方の面に金属の蒸着を施した後、エポキシ樹脂で包埋する。硬化後、ダイヤモンドナイフを取り付けたミクロトームにて、膜厚0.1μmの切片を作製する。ミクロトームは、例えば、Reichert社製ウルトラカットNを使用することができる。得られた切片においてポリアニリンの存在が確認できない場合は電子線染色を施し、ポリアニリンを可視化する。染色剤としては四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸、ヨウ素などの中から、染色条件等を考慮して、選択する。
上記切片を、透過型電子顕微鏡(TEM:FEI社製TecnaiG2)を用いて、加速電圧100KV、倍率12,000倍で、1切片につき、6視野の画像(厚み方向3×幅方向2=6)を取得する。
【0041】
次に、取得した12,000倍のTEM画像について、米国 Media Cybernetics社の画像解析装置Image Pro Plusを用いて粒子解析を行う。TEM画像を計測に適した明るさとコントラストに調整し、画像に色調勾配がある場合はシェーディング補正を行う。ポリアニリン粒子の他に充填材等が含まれているときには、予め濃淡を利用した画像処理によって取り除いておく。各視野の画像に関して、ポリアニリン粒子の中から、長さが大きいと思われるポリアニリン粒子を幾つか選び、ポリアニリン粒子外縁の2点間の最大長を計測する。この計測を6視野分の画像で繰返し計測し、6視野の画像の中で最も大きな計測値を、その試料が持つ最大ポリアニリン粒子の絶対最大長とする(ここで、画像中で、互いに重なっているか接しているポリアニリン粒子は、一つのポリアニリン粒子と捉え、その絶対最大長を測定する。)。
なお、測定に用いる切片は、1本のエンドレスベルト上で、幅方向3点×周方向3点の計9点から上述のようにして採取した短冊から作製した。計9点について上記の測定を行い、その最も大きな計測値をそのエンドレスベルトの最大ポリアニリン粒子の絶対最大長とする。
【0042】
本発明においては、ポリアニリン粒子として脱ドープ状態のポリアニリンと、前記脱ドープ状態のポリアニリンを導電化させるドーパントと、を反応させて得られたポリアニリン(以下、第一のポリアニリンと称することがある。)又は自己ドープ型のポニアニリン(以下、第二のポリアニリンと称することがある。)を用いることができる。
【0043】
まず、第一のポリアニリンについて説明する。
第一のポリアニリンにおける「脱ドープ状態のポリアニリン(Emeraldine Base)」とは、以下に示すポリアニリンの取りうる4つの構造における「B」の構造に相当する。具体的には、例えば、特開平8−259709号公報の段落番号〔0042〕〜〔0044〕に記載の方法で得られたものや、愛知県工業技術センター研究報告 第37号 溶剤分離型ポリアニリンの作製に記載の方法で得られたもの等が挙げられる。また、市販品としては、パニポール社製「Panipol PA」が挙げられる。
また、脱ドープ状態のポリアニリンの数平均分子量は、4000〜400000であることが好ましい。
【0044】
【化1】

【0045】
脱ドープ状態のポリアニリンを粉砕する方法としては、粉砕機などの物理的手法を用いることができ、湿式粉砕法、乾式粉砕法のいずれもが適用できる。
ここで用いられる粉砕機としては、湿式ジェットミル、乾式ジェットミル等を用いることができる。一般に、脱ドープ状態のポリアニリンが顆粒状又は粉体状であれば、湿式ジェットミルを用いるより、乾式ジェットミルを用いた方がよい。
なお、機械的粉砕は、複数回おこなってもよい。例えば、湿式ジェットミルを用いて2回に分けて粉砕を行う場合、1度目の粉砕後に分散液の温度が高くなった際には、冷却してから、次の粉砕を行うことが好ましい。この際、冷却は10℃、15%RH程度の環境で行うことが好ましい。
【0046】
脱ドープ状態のポリアニリンの粉砕に湿式法を用いる場合、このポリアニリンの分散液に用いることができる液体としては、エタノール、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
また、分散液中の脱ドープ状態のポリアニリンの含有量としては、3〜20質量%の範囲が好ましい。
【0047】
ポリアニリンの粉砕は、下記に示す粒度分布の条件を満たすようになるまで行ってもよい。
すなわち、50%粒子径(体積基準)が0.05〜3.0μmの範囲であり、かつ、90%粒子径(体積基準)が50%粒子径(体積基準)の1倍以上2倍以下の範囲となるまで粉砕されることが好ましく、50%粒子径(体積基準)が0.05〜2.0μmの範囲であり、かつ、90%粒子径(体積基準)が50%粒子径(体積基準)の1倍以上2倍以下の範囲となるまで粉砕されることがより好ましい。
更に、100%粒子径(体積基準)は、概ね50%粒子径(体積基準)の5.0倍以下であることが好ましい。
上記粒子径の範囲まで粉砕することで、表面層に含有される最大ポリアニリン粒子の絶対最大長を10.0μm以下に調整することができる。
なお、本発明において、これらの粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)により測定することで、求められる。
【0048】
上記ポリアニリンの粉砕工程が終了した後、その分散液中に、ポリアニリンを導電化させるドーパントを添加する。
第一のポリアニリンにおけるドーパントとしては、通常、プロトン酸を好ましく用いることができる。ドーパントとして好ましいプロトン酸は、酸溶解定数pKa値が4.8以下であるプロトン酸である。上記プロトン酸として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸のほか、酸溶解定数pKa値が4.8以下である有機酸を挙げることができる。
【0049】
上記有機酸は、例えば、有機カルボン酸又はフェノール類であって、酸解離定数pKa値が4.8以下であることが好ましい。該有機酸としては、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式等の一又は多塩基酸を含む。該有機酸は、水酸基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を有していてもよい。従って、かかる有機酸の具体例として、例えば、酢酸、n−酪酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸等を挙げることができる。
【0050】
また、有機酸は、スルホン酸基又は硫酸基を有するものであってもよい。該有機酸としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、パラフェノールスルホン酸等を挙げることができる。
【0051】
また、本発明においては、分子内に2つ以上のスルホン酸基を有する多官能有機スルホン酸も用いることができる。該多官能有機スルホン酸としては、例えば、エタンジスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、エチルベンゼンジスルホン酸、プロピルベンゼンジスルホン酸、ブチルベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジプロピルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ペンチルナフタレンジスルホン酸、ヘキシルナフタレンジスルホン酸、ヘプチルナフタレンジスルホン酸、
【0052】
オクチルナフタレンジスルホン酸、ノニルナフタレンジスルホン酸、ジメチルナフタレンジスルホン酸、ジエチルナフタレンジスルホン酸、ジプロピルナフタレンジスルホン酸、ジブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレンジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾールジスルホン酸、ジフエニルメタンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ターフェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸−ホルマリン縮合物等を挙げることができる。芳香環におけるスルホン酸基の位置は特に限定されない。
【0053】
更に、有機酸はポリマー酸であってもよい。該ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化アクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、N−スルホアルキル化ポリアニリン、核スルホン化ポリアニリン等を挙げることができる。ナフィオン(米国デュポン社登録商標)として知られている含フッ素重合体も、ポリマー酸として好適に用いられる。
【0054】
更に、本発明において、有機酸は上記した有機酸とポリヒドロキシ化合物とのエステルのうち、酸末端を有するものも好ましい。該ポリヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート若しくはペンタエリストリールなどの多価アルコール類や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンテトラメチレングリコール若しくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類、上記の多価アルコール類とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル又はアリルグリシジルエーテルなどとの開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類などを挙げることができる。
【0055】
上記ドーパントは、前記ポリアニリンの取りうる4つの構造における「B」の構造を有する脱ドープ状態のポリアニリンをプロトン化することで、導電性を付与することができる。具体的には、「B」の構造におけるキノンジイミン構造をイミン窒素へのプロトン化することにより、「D」の構造に変化させることで、脱ドープ状態のポリアニリンを導電性とすることができるものである。
このため、上記ドーパントの使用量(添加量)は、脱ドープ状態のポリアニリンの構造中のキノンジイミン構造単位の量により決定される。
また、ドーパントは、所定の濃度の溶液として添加されることが好ましい
【0056】
次に、第二のポリアニリンについて説明する。
第二のポリアニリンにおける「自己ドープ型のポリアニリン」とは、ポリアニリン構造内にドーパントとなる酸性基(例えば、スルホン酸基)を有する構造である。具体的には、例えば、自己ドープ型のポリアニリンである平均分子量が10,000のポリアニリンスルホン酸は公知の方法(例えば、J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666.等)により得ることができる。市販品としては、例えば、三菱レイヨン(株)製の導電性コーティング剤aquaPASS−01(ポリアニリンスルホン酸の水溶液)が挙げられる。
また、自己ドープ型のポリアニリンの数平均分子量は、4000〜400000であることが好ましい。
【0057】
自己ドープ型のポリアニリンを粉砕する方法としては、脱ドープ状態のポリアニリンを粉砕する際と同様の方法を適用することができる。一般に、顆粒状の自己ドープ型ポリアニリンを入手できれば、湿式ジェットミルを用いるより、乾式ジェットミルの用いた方が、取扱いは容易である。
なお、自己ドープ型のポリアニリンの粉砕に湿式法を用いる場合、このポリアニリンの分散液に用いられる液体としては、DMAc(ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等を挙げることができる。
更に、分散液中の自己ドープ型のポリアニリンの含有量としては、3〜20質量%の範囲が好ましい。
上記方法で粉砕された自己ドープ型のポリアニリンの粒度分布については、上述の脱ドープ状態のポリアニリンを粉砕した場合の粒度分布と同様である。
【0058】
表面層のデュロメータ硬さは、JIS K7215(1986)に準拠したデュロメータ硬さで、A35〜A70であることが好ましく、A40〜A60であることが更に好ましい。表面層のA硬度が、A35〜A70であることで、本発明の半導電性部材を中間転写体に用いた場合に色紙やエンボス加工等の表面に凹凸を付けた特殊な紙への追従性がよくなるので、トナーの転写性を改善することができる。
表面層のA硬度がA70以下であれば、色紙やエンボス加工等の表面に凹凸を付けた特殊な紙への追従性がよくなるので、トナーの転写性を改善することができ、表面層のA硬度がA35以上であれば、金属製のクリーニング部材、紙粉(用紙に含まれる炭酸カルシュウム)などにより表面層が傷つくのを防ぐことができる。
尚、表面層のデュロメータ硬さは、表面層を積層して、6mmの厚みとして、JIS K7215に準拠して計測した。
【0059】
また、表面層の体積抵抗率は1×1010〜1×1014Ωcmであることが好ましく、1×1011〜1×1013Ωcmであることがより好ましい。
この体積抵抗率が1×1010ΩCm以上であれば、像保持体から中間転写体であるエンドレスベルトに転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きやすくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像端部のフリンジ電界の力による画像の周囲へのトナーの飛散(ブラー)を防ぎ、画質欠陥の小さい画像を形成することができる。一方、体積抵抗率が1×1014Ωcm以下であれば、電荷の保持力が小さいために、1次転写での転写電界における中間転写体表面の帯電を防ぐことができるために除電機構が不要になる。
従って、体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0060】
本発明において、体積抵抗率は、円形電極(例えば、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型「URプローブ」)を用い、JIS K6991(1995)に従って測定することができる。前記体積抵抗率の測定方法を図を用いて説明する。図1は、円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図1に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと第二電圧印加電極Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極Bとの間に半導電性部材Tを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、中間転写体Tの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式中、tは、半導電性部材の表面層厚さTを示す。
【0061】
式:ρv=19.6×(V/I)×t
【0062】
−基材−
本発明の半導電性部材は、電子写真方式の画像形成装置における像保持体、帯電手段、現像手段、転写手段、中間転写体又は定着手段等として用いることができる。本発明の半導電性部材に用いられる基材は特に限定されるものではなく、半導電性部材の用途、機能等に応じて材質、形状、大きさ等が設定される。
例えば、本発明の半導電性部材が帯電部材又は転写手段として使用可能な半導電性ロールである場合には、弾性層が表面に設けられたSUS、SUM等の金属棒が基材として挙げられる。この場合、弾性層上に本発明に係る表面層を形成することができる。
本発明の半導電性部材が像保持体として使用可能な感光体である場合には、導電性基体とこの導電性基体上に形成された感光層とを備える部材が基材として挙げられる。この場合、感光層上に本発明に係る表面層を形成することができる。
本発明の半導電性部材が現像手段として使用可能な現像スリーブである場合には、金属スリーブ又は弾性スリーブが基材として挙げられる。この場合、金属スリーブ又は弾性スリーブ上に本発明に係る表面層を形成することができる。
本発明の半導電性部材が中間転写体として用いられる場合には、金属若しくは樹脂製のベルト又は円筒状の金属が基材として挙げられる。この場合、金属若しくは樹脂製のベルト又は円筒状の金属上に本発明に係る表面層を形成することができる。
本発明の半導電性部材が定着手段として用いられる場合には、金属若しくは樹脂製のベルト又は表面に弾性層を備える円筒状の金属が基材としてあげられる。この場合、金属若しくは樹脂製のベルト上又は弾性層上に本発明に係る表面層を形成することができる。
【0063】
本発明に係る基材は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を含むことが好ましい。これにより、半導電性部材の機械的強度を向上することができる。
【0064】
<エンドレスベルト>
本発明の半導電性部材の好ましい一実施態様として、中間転写ベルトや用紙搬送ベルト等として使用可能なエンドレスベルトが挙げられる。
即ち、本発明のエンドレスベルトは、ベルト本体と、前記ベルト本体の表面に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、を備えることを特徴とするものである。
【0065】
本発明のエンドレスベルトにおいては、導電剤としてポリアニリン粒子を用いるため、カーボンブラックを用いた従来のエンドレスベルトよりも表面層の硬度を低くすることができる。そのため、ベルト本体と表面層との間に弾性層を設けることなくエンボス紙等の凹凸の大きな記録媒体への追従が可能になる。
【0066】
本発明のエンドレスベルトにおいては、基材であるベルト本体として無端ベルトを用いることができる。該無端ベルトはポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を含むことが好ましい。なお、本発明のエンドレスベルトに係るフッ素樹脂、フッ化グラファイト及びポリアニリン粒子の具体例及び好適な含有量などは上述した本発明の半導電性部材の場合と同様である。
【0067】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を備え、前記像保持体、前記帯電手段、前記現像手段、前記転写手段及び前記定着手段からなる群より選択される少なくとも一つに、本発明の半導電性部材を用いたことを特徴とするものである。
【0068】
離型性及び耐摩耗性に優れた表面層を備える本発明の半導電性部材を、像保持体、帯電手段、現像手段、転写手段及び定着手段からなる群より選択される少なくとも一つに用いることにより、画像形成装置の耐久性を向上することができる。
【0069】
また、本発明の画像形成装置は、本発明のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして備える中間転写体方式の画像形成装置であってもよいし、本発明のエンドレスベルトを用紙搬送ベルトとして備える用紙搬送ベルト方式の画像形成装置であってもよい。例えば、感光体ドラム等の像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置があげられる。
【0070】
以下に、本発明の画像形成装置の1例として、一次転写を繰り返すカラー画像形成装置を示す。図2は、本発明の画像形成装置の1例を示す概略構成図である。
図2に示す画像形成装置は、像保持体としての感光体ドラム101、中間転写体としての中間転写ベルト102、転写電極であるバイアスローラ103、記録媒体である用紙を供給する記録媒体収納部104、BK(ブラック)トナーによる現像装置105、Y(イエロー)トナーによる現像装置106、M(マゼンタ)トナーによる現像装置107、C(シアン)トナーによる現像装置108、ベルトクリーナー109、剥離爪113、ベルト支持ロール121、123及び124、バックアップローラ122、導電性ローラ125、電極ローラ126、クリーニングブレード131、用紙束141、ピックアップローラ142、並びにフィードローラ143を備えてなり、中間転写ベルト102として本発明のエンドレスベルトが用いられる。
【0071】
図2に示す画像形成装置において、感光体ドラム101は矢印F方向に回転し、図示しない帯電装置(帯電手段)でその表面が帯電される。帯電された感光体ドラム101にレーザー書込み装置などの画像書き込み手段(潜像形成手段)により第一色(例えば、BK)の静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置(現像手段)105によってトナー現像されて可視化されたトナー像Tが形成される。トナー像Tは感光体ドラム101の回転で導電性ローラ125が配置された一次転写部に到り、導電性ローラ125からトナー像Tに逆極性の電界を作用させることにより上記トナー像Tを静電的に中間転写ベルト102に吸着されつつ中間転写ベルト102の矢印G方向の回転で一次転写される。導電性ローラ125は、図2に示したように感光体ドラム101の直下に配置していても、図示してはいないが、感光体ドラム101の直下からずれた位置に配置させてもよい。
【0072】
以下、同様にして第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次形成され中間転写ベルト102において重ね合わせられて、多重トナー像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0073】
中間転写ベルト102に転写された多重トナー像は、中間転写ベルト102の回転でバイアスローラ103が設置された二次転写部に到る。二次転写部は、中間転写ベルト102のトナー像が保持された表面側に設置されたバイアスローラ103と該中間転写ベルト102の裏側からバイアスローラに対向して配置されたバックアップローラ122及びこのバックアップローラ122に圧接して回転する電極ローラ126から構成される。
【0074】
用紙141は、記録媒体収納部104に収容された用紙束からピックアップローラ142で一枚ずつ取り出され、フィードローラ143で二次転写部の中間転写ベルト102とバイアスローラ103との間に所定のタイミングで給送される。給送された用紙141には、バイアスローラ103及びバックアップローラ122による圧接搬送と中間転写ベルト102の回転により、該中間転写ベルト102に保持されたトナー像が転写される。
【0075】
トナー像が転写された用紙141は、最終トナー像の一次転写終了まで退避位置にある剥離爪113を作動せることにより中間転写ベルト102から剥離され、図示しない定着装置(定着手段)に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。なお、多重トナー像の用紙141への転写の終了した中間転写ベルト102は、二次転写部の下流に設けたベルトクリーナー109で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、バイアスローラ103は、ポリウレタン等のクリーニングブレード131が常時接するように取り付けられており、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0076】
単色画像の転写の場合、一次転写されたトナー像Tを二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合、各色のトナー像が一次転写部で正確に合致するように中間転写ベルト102と感光体ドラム101との回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。上記二次転写部では、バイアスローラ103と中間転写ベルト102を介して対向配置したバックアップローラ122に圧接した電極ローラ126にトナー像の極性と同極性の電圧を印加することで該トナー像を用紙141に静電反発で転写する。
以上のようにして、画像を形成することができる。
【0077】
次に、本発明の画像形成装置における他の一例を示す。
図3に示す画像形成装置は、ユニットY、M、C、BKと、用紙搬送ベルト206と、転写ロール(転写手段)207Y、207M、207C、207BKと、用紙搬送ロール208と、定着器(定着手段)209とを備えている。用紙搬送ベルト206として、本発明のエンドレスベルトが用いられる。
【0078】
ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能にそれぞれ感光体ドラム(像保持体)201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、コロトロン帯電器(帯電手段)202Y、202M、202C、202BKと、露光器(潜像形成手段)203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(現像手段)(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラムクリーナー205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0079】
ユニットY、M、C、BKは、用紙搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットY、M、C、BKの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等は、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0080】
用紙搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転可能になっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその少なくとも一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。用紙搬送ベルト206には、ベルト用のクリーニング装置214が備えられている。
【0081】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、用紙搬送ベルト206の内側であって、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、用紙搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(記録媒体)216に転写する転写領域(接触部分)を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図3のように感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、図示してはいないが、直下からずれた位置に配置しても良い。
【0082】
定着装置209は、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域(接触部分)を用紙216が通過した後に搬送できるように配置されている。
【0083】
用紙搬送ロール208により、用紙216は用紙搬送ベルト206に搬送される。
【0084】
図3に示す画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動してコロトロン帯電器202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0085】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0086】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと用紙搬送ベルト206との転写領域(接触部分)を通過するときに、用紙216が静電的に用紙搬送ベルト206に吸着して転写領域(接触部分)まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写電圧により形成される電界により、用紙216の外周面に順次、転写される。
【0087】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナー205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の転写サイクルに供される。
【0088】
以上の転写サイクルは、ユニットC、M及びYでも同様に行われる。
【0089】
転写ロール207BK、207C、207M及び207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上のようにして記録紙上に所望の画像が形成される。
【0090】
次に、本発明の画像形成装置における他の一例を示す。
図4は、中間転写ベルト86を用いたタンデム式の画像形成装置の要部部分を説明する模試図である。具体的には、図4において感光体(像保持体)79表面を帯電する帯電ローラ83(帯電装置)、感光体79表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(露光装置)、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像装置)、現像したトナー像を中間転写ベルト86に転写する転写ロール80、感光体に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体クリ−ナー84 (クリーニング装置)、記録用紙(記録媒体)上のトナー像を定着する定着ローラ72等が備えられる。感光体79と転写ロール80は、図4のように感光体直下からずれた位置に配置していても、感光体直下に配置(図示せず)していてもよい。そして、この中間転写ベルト86として本発明のエンドレスベルトを備える。
【0091】
さらに、図4に示す画像形成装置の構成について詳細に説明する。図4に示す画像形成装置は、4つのトナーカートリッジ71、1対の定着ロール72、バックアップロール73、テンションロール74、2次転写ロール75、用紙経路76、記録媒体収納部77、レーザー発生装置78、4つの感光体79、4つの1次転写ロール80、駆動ロール81、転写クリーナー82、4つの帯電ロール83、感光体クリーナー84、現像器85、中間転写ベルト86等を主用な構成部材として含んでなる。
【0092】
まず、感光体79の周囲には、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体クリーナー84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83と現像器85との間の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射することができるレーザー発生装置78が設けられている。
【0093】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との接触部分を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール73、テンションロール74、及び駆動ロール81により張架されている。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面をクリーニングする転写クリーナー82が駆動ロール81に対して圧接するように設けられている。
【0094】
また、中間転写ベルト86を介してバックアップロール73の反対側には記録媒体収納部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、バックアップロール73に対して圧接するように設けられている。
【0095】
また、画像形成装置の底部には記録用紙をストックする記録媒体収納部77が設けられ、記録媒体収納部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成するバックアップロール73と2次転写ロール75との圧接部を通過するように供給することができる。この圧接部を通過した記録用紙は更に1対の定着ロール72の圧接部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送可能であり、最終的に画像形成装置外へと排出することができる。
【0096】
次に、図4の画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との圧接部に運ばれたトナー像を矢印A方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー84によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0097】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写体86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、記録媒体収納部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着部を構成する1対の定着ロール72の圧接部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0099】
<第一のポリアニリンの調製>
−脱ドープ状態のポリアニリン及びドーパントの準備−
脱ドープ状態のポリアニリンとして、パニポール社製のPanipol PAを用意した。
また、脱ドープ状態のポリアニリンのモル当量の30%に相当する(言い換えれば、脱ドープ状態のポリアニリンのモル当量の半分を100%としたときに60%に相当する)ドーパントとしてのパラフェノールスルホン酸を用意した。このパラフェノールスルホン酸を、窒素雰囲気下で、DMAc溶媒中に加え攪拌し、5質量%濃度のドーパント溶液を準備した。
【0100】
−ポリアニリン分散液(A)の作製−
脱ドープ状態のポリアニリンであるパニポール社のPanipol PAを、乾式ジェットミルを用いて微細化した。乾式ジェットミルには、ホソカワミクロン(株)のカウンタージェットミル(型式100AFG)を用いた。
ここで、カウンタージェットミルの装置構成は、(1)原料供給装置FTS−20、(2)カウンタージェットミル100AFG、(3)製品捕集機−1(Φ100サイクロン)、(4)製品捕集機−2(P−bag:ろ過面積2.3平方メートル)、(5)排気のためのブロワ、である。微細化の条件は、粉砕空気量が毎分100立方メートル、空気圧力が600kPa、分級回転速度20000rpmである。
【0101】
その後、製品捕集機−2(P−bag)に捕集されたポリアニリン粒子を採取しエタノール中に分散させた。このポリアニリン粒子の粒度分布を測定したところ、50%粒子径(体積基準)は1.4μm、90%粒子径は2.4μm、100%粒子径(体積基準)は5.9μmであった。
この微細化したポリアニリン粒子250質量部を、25質量部のPVP(ポリビニルピロリドン)と共に、窒素雰囲気下で、ポリアニリン250質量部に対して規定のドーピング量となる5質量%濃度のドーパント溶液中に、徐々に加え、攪拌し、これをポリアニリン分散液(A)とした。
【0102】
<第二のポリアニリンの調製>
−自己ドープ型のポリアニリンの準備−
三菱レイヨン(株)製の導電性コーティング剤aquaPASS−01(ポリアニリンスルホン酸の水溶液)を、エバポレータを利用して乾燥させて粉体化させた。得られた紛体のポリアニリンスルホン酸(PAS;平均分子量10,000、平均粒径9μm)を自己ドープ型のポリアニリンとして準備した。
【0103】
−ポリアニリン分散液(B)の作製−
自己ドープ型ポリアニリンである粉体のポリアニリンスルホン酸を、乾式ジェットミルを用いて微細化した。乾式ジェットミル及び微細化条件は、ポリアニリン分散液(A)と同様とした。
製品捕集機−2(P−bag)に捕集されたポリアニリンスルホン酸を採取しエタノール中に分散させた。このポリアニリン粒子の粒度分布を測定したところ、50%粒子径(体積基準)は1.8μm、90%粒子径は3.3μm、100%粒子径(体積基準)は7.8μmであった。
窒素雰囲気下で、1700質量部のDMAcに、15質量部のPVP(ポリビニルピロリドン)を加え、室温(22℃)で攪拌し、その溶液中に250質量部の粉体のポリアニリンスルホン酸(PAS)を徐々に加えて、ポリアニリンスルホン酸を13質量%含有する混合液を準備した。この混合液をポリアニリン分散液(B)とした。
【0104】
−ポリアニリン分散液(C)の作製−
窒素雰囲気下で、1700質量部のDMAc溶媒中に、250質量部のパニポール社の
Panipol PAを徐々に加え、均一に攪拌し、13質量%濃度のポリアニリン溶液
を作製した。
次に、DMAc溶媒中にドーパント(パラフェノールスルフォン酸)を加え、攪拌し、
均一な5質量%濃度のドーパント溶液を作製した。
Panipol PAはモル当量の半分がドーピングされるので、これを100%とし
た時に、60%に相当するように、5質量%濃度のドーパント溶液を徐々に加え、均一に
攪拌し、ドープ済みのポリアニリン分散液(C)を得た。
【0105】
<ベルト本体の調製>
−ポリアミドイミド樹脂を含む無端ベルト−
ポリアミドイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリアミドイミド樹脂:東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分18質量%、溶剤:メチル−2ピロリドン)、導電剤としてカーボンブラック(デグサ(株)製スペシャルブラック4:pH3.揮発分14質量%)を樹脂成分100質量部あたり、25質量部添加して、高圧衝突分散機(ジーナス(株)製)を用い、150Mpaにて、Φ0.1mmのオリフイスを通過させるとともに、2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。この液を外径168mmのアルミ製パイプの外面に塗布し、150℃で30分間回転乾燥後、250℃で1時間加熱して、外径168mmで、幅368mm、厚みが0.08mmのポリアミドイミド樹脂を含む無端ベルトを得た。このベルトの表面抵抗率は1.1×1012Ω/□、体積抵抗率は2×1011Ωcm、ヤング率は、2500MPaであった。
【0106】
−ポリイミド樹脂を含む無端ベルト−
(ポリアミド酸溶液(A)の調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とをモノマー成分として含むポリアミド酸のN−メチルー2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18質量%)に、この溶液中のポリイミド系樹脂を形成することが可能な原料の固形分100質量部に対して、乾燥した酸化処理カーボンブラック(デグサ(株)製スペシャルブラック4:pH3.揮発分14質量%)を23質量部になるよう添加して、衝突型分散機(シーナス製GeanusPY)を用い、圧力200MPaで、Φ0.1mmのオリフイスを通過させるとともに、2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行ない、基材用のカーボンブラック入りポリアミド酸溶液(A)を得た。
【0107】
カーボンブラック入りポリアミド酸溶液(A)を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して塗膜の厚みが0.5mmとなるように塗布し、金型を1500rpmで15分間回転させて塗膜を形成した後、金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱し、室温(23℃)にまで冷却して皮膜を形成した。
その後、金型の内面に形成された皮膜を剥離して、この皮膜を金属芯体の外周を覆うように被覆して400℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、更に400℃で30分加熱し、皮膜に残留する溶媒及び脱水閉環水を除去すると共に、イミド転化反応を完結させた。その後金属芯体を室温(23℃)にまで冷却した後に、金属芯体表面に形成されたポリイミドフィルムを剥離することにより、外径168mm、幅368mm、厚みが0.08mmのポリイミド樹脂を含む無端ベルトを得た。この無端ベルトの表面抵抗率は1×1012Ω/□、体積抵抗率は3.2×109Ωcm、ヤング率は、3800MPaであった。
【0108】
<表面層材料の調製>
−表面層材料A−
表面層材料として、四フッ化エチレン含有率76質量%の四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂、ゼッフルGK−570(ダイキン工業(株)製)を含む下記組成物(配合A)をボールミル((株)セイワ技研製、製品名卓上ボールミルBM−10、分散条件:直径200mlのアルミナ容器に、直径10mmのアルミナボールを200g添加して、回転数20rpmで2時間)で混合し、フッ素樹脂中にポリアニリン粒子とフッ化グラファイトとが分散した分散液(表面層材料A)を調製した。
【0109】
配合A
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−570:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製):14.6質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):10質量部
ポリアニリン分散液(A):18質量部
【0110】
−表面層材料B−
下記組成物(配合B)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中にポリアニリン粒子とフッ化グラファイトとが分散した分散液(表面層材料B)を調製した。
【0111】
配合B
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−570:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製):14.6質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):5質量部
ポリアニリン分散液(B):20質量部
【0112】
−表面層材料C−
下記組成物(配合C)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中にポリアニリン粒子とフッ化グラファイトとが分散した分散液(表面層材料C)を調製した。
【0113】
配合C
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−570:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製):14.6質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):3質量部
ポリアニリン分散液(B):20質量部
【0114】
−表面層材料D−
下記組成物(配合D)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中にポリアニリン粒子とフッ化グラファイトとが分散した分散液(表面層材料D)を調製した。
【0115】
配合D
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−570:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製):14.6質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):3質量部
ポリアニリン分散液(C):20質量部
【0116】
−表面層材料E−
下記組成物(配合E)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中にポリアニリン粒子とフッ化グラファイトとが分散した分散液(表面層材料E)を調製した。
【0117】
配合E
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−570:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHX:日本ポリウレタン工業(株)製):14.6質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):1質量部
ポリアニリン分散液(B):25質量部
【0118】
−表面層材料F−
四フッ化エチレン含有率45質量%の四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂、ゼッフルGK−500(ダイキン工業(株)製)を含む下記組成物(配合F)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中に導電剤(アンチモンドープ酸化錫)と固体潤滑剤(フッ化グラファイト)とが分散した分散液(表面層材料F)を調製した。
【0119】
配合F
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−500:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHL:日本ポリウレタン工業(株)製):2質量部
アンチモンドープ酸化錫(SN−100P:石原産業(株)製):30質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):2質量部
【0120】
−表面層材料G−
下記組成物(配合G)を表面層材料Aの場合と同様にボールミルで混合し、フッ素樹脂中に導電剤(アンチモンドープ酸化錫)と固体潤滑剤(二硫化モリブデン)とが分散した分散液(表面層材料G)を調製した。
【0121】
配合G
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−500:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHL:日本ポリウレタン工業(株)製):2質量部
アンチモンドープ酸化錫(SN−100P:石原産業(株)製):30質量部
二硫化モリブデン(モリパウダーPS,住友潤滑剤(株)製):5質量部
【0122】
−表面層材料H−
表面層材料として、四フッ化エチレン含有率45質量%の四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂、ゼッフルGK−500(ダイキン工業(株)製)を含む下記組成物(配合H)をボールミル((株)セイワ技研製、製品名卓上ボールミルBM−10、分散条件:直径200mlのアルミナ容器に、直径10mmのアルミナボールを200g添加して、回転数20rpmで6時間)で混合し、フッ素樹脂中にカーボンブラックが分散した分散液(表面層材料H)を調製した。
【0123】
配合H
四フッ化エチレンとビニルエーテルとの共重合体樹脂(ゼッフルGK−500:ダイキン工業(株)製):100質量部
イソシアネート架橋剤(コロネートHL:日本ポリウレタン工業(株)製):2質量部
フッ化グラファイト(セフボン−CMA:セントラル硝子(株)製):10質量部
カーボンブラック(粒状デンカブラック:電気化学工業(株)製):13質量部
【0124】
<エンドレスベルト(中間転写ベルト)の作製>
下記表1の組み合わせに従い、上記表面層材料A〜Hを、ポリイミド樹脂を含む無端ベルト(PI)又はポリアミドイミド樹脂を含む無端ベルト(PAI)の表面にスプレー塗布・乾燥して厚さ10μmの表面層を形成することにより、エンドレスベルトA〜Hを得た。塗布装置、塗布条件及び乾燥条件は以下の通りである。
アネスト岩田(株)製の塗料ノズル径0.5Φのスプレーガンを用い、塗料吐出量40l/min、吹き付け空気圧0.29MPaで塗布して、170℃、30分乾燥して厚さ10μmの表面層を形成した。
【0125】
エンドレスベルトA〜Hの各々について、上述の方法により最大ポリアニリン粒子の絶対最大長並びに表面層のデュロメータ硬さ及び体積抵抗率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0126】
<評価>
得られたエンドレスベルトを、富士ゼロックス(株)Docu Color1255CPを改造した画像形成装置に中間転写ベルトとして搭載し、富士ゼロックスオフィスサプライ(株)J紙を用い、転写画質(画像の中抜けの発生)、連続して10万枚出力した後の転写画質(連続走行テスト)、エンボス適性を評価した。尚、トナーとしては、形状係数(SF1)132、体積平均粒子径5.5μmの球状トナーを用い、感光体は有機感材感光体を用いた。
【0127】
−転写画質(画像の中抜けの発生)−
日本画像学会発行のテストチャートNo.5−2を出力したときの初期画像(1枚目から10枚目までの出力画像)における画像の中抜けの発生状況について、以下の基準に基づき目視により評価した。
◎:画像の中抜けの発生なし。
○:画像の中抜けの発生はわずかであり、画質上での問題なし。
△:画像の中抜けの発生は、少しあるが、画質上での問題は少ない。
×:画像の中抜けの発生があり、画質上での問題あり。
【0128】
−連続走行テスト−
日本画像学会発行のテストチャートNo.5−2を10万枚連続してフルカラーで出力した後、マゼンタ30%のハーフトーン画像を出力した時の白抜け発生状況について、以下の基準に基づき目視により評価した。
○:白抜けの発生がなく、画質上での問題なし
△:白抜けの発生があるが、画質上での問題なし
×:白抜けの発生があり、画質上での問題あり
【0129】
−エンボス適性の評価−
記録紙として、富士ゼロックスオフィスサプライ(株)レザック66(エンボス紙、151/gsm(1平方メートルあたりのグラム数))を用いて、出力10枚目の画質について、富士ゼロックス(株)画像濃度測定装置IQM(Image Quality Measurement)のDenstyモードで測定した、シアン30%ハーフトーン画像の2次転写における転写効率の評価を行った。
ここで、2次転写における転写効率とは、転写効率={記録紙上の画像濃度/(中間転写ベルト上に残った画像濃度+記録紙上の画像濃度)}×100(%)で表されるものである。従って、中間転写ベルト上に残る画像濃度が少ないものほど転写効率は高いと言える。
○:転写効率が80%以上。
×:転写効率が80%未満。
【0130】
得られた評価結果を下記表1に示す。
【0131】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】体積抵抗率の計測方法を示す図である。
【図2】本発明のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置の概略図である。
【図3】本発明のエンドレスベルトを用紙搬送ベルトとして備えた画像形成装置の概略図である。
【図4】本発明のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0133】
102(86) 中間転写ベルト
206 用紙搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、
を備えることを特徴とする半導電性部材。
【請求項2】
前記ポリアニリン粒子のうち最大の粒子の絶対最大長が、10.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導電性部材。
【請求項3】
前記表面層の体積抵抗率が、1010〜1014Ωcmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導電性部材。
【請求項4】
前記表面層のデュロメータ硬さが、A35〜A70であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導電性部材。
【請求項5】
前記ポリアニリン粒子が、自己ドープ型のポニアニリンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導電性部材。
【請求項6】
前記基材が、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導電性部材。
【請求項7】
ベルト本体と、
前記ベルト本体上に設けられ、フッ素樹脂と、フッ化グラファイトと、ポリアニリン粒子と、を含有する表面層と、
を備えることを特徴とするエンドレスベルト。
【請求項8】
像保持体と、前記像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を備え、
前記像保持体、前記帯電手段、前記現像手段、前記転写手段及び前記定着手段からなる群より選択される少なくとも一つに、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導電性部材を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7に記載のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項7に記載のエンドレスベルトを用紙搬送ベルトとして備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−175978(P2008−175978A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8284(P2007−8284)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】