説明

半熱硬化性異方導電性フィルム組成物

【課題】高分子量の熱可塑性樹脂と緻密な硬化構造を提供する熱硬化性材料とを含むことによって、品質および生産性に優れ、モジュール製造ラインでの操作性および生産性を向上させ、さらに短時間の回路接続工程でも接続力および接続抵抗に優れた異方導電性フィルムができる異方導電性フィルム組成物を提供する。
【解決手段】(i)重量平均分子量150,000〜600,000の熱可塑性樹脂、(ii)重量平均分子量100〜10,000以下のアクリレートまたはメタクリレート官能基を有する熱硬化性材料、(iii)有機過酸化物、(iv)シランカップリング剤および(v)導電性粒子を含むことを特徴とする半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半熱硬化性異方導電性フィルム組成物に関し、詳細には、高分子量熱可塑性樹脂および緻密な硬化構造を提供する熱硬化性材料を含むことによって、品質および生産性に優れ、モジュール製造ラインでの操作性および生産性を向上させ、さらに短時間の接続工程でも接着力および接続抵抗に優れた異方導電性フィルムを提供できる異方導電性フィルム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)とは、一般にニッケルや金などの金属粒子、またはこのような金属でコーティングされた高分子粒子などの導電性粒子が分散したフィルム状接着剤である。異方導電性フィルムを接続しようとする電気部品間に位置させた後一定条件の加熱加圧工程を経ると、この異方導電性フィルムは、電気部品間に導電性粒子による電気的接続を形成するとともに、二つの電気部品間の空間に絶縁性接着樹脂を充填して導電性粒子同士を分離し高絶縁性を付与する。前記異方導電性フィルムは、液晶ディスプレイ(LCDs)、チップ・オン・フィルム(COF)、テープ・キャリア・パッケージ(TCPs)、プリント配線基板(PCBs)などの電気的接続に広く使われている。
【0003】
また、最近、ディスプレイ製品の大型化および薄型化に伴って電極と回路間のピッチも小さくなっている。このような微細回路素子を接続させる手段として、異方導電性フィルムはとても重要な役割を果たしている。その結果、異方導電性フィルムは、チップ・オン・グラス実装、チップ・オン・フィルム(COF)実装などに対する最適な材料として注目を集めている。
【0004】
従来の異方導電性フィルムとして、硬化剤と混合されたエポキシ系またはフェノール系樹脂からなるエポキシ硬化タイプと、ラジカル重合性オリゴマー、モノマー、およびラジカル開始剤からなるラジカル硬化タイプとがある。
【0005】
しかし、従来の異方導電性フィルムは、長期信頼性または硬化速度が優秀である一方で、大量生産時に品質および生産性が確保できない場合が多く、フィルムの力学的性質および硬化後の再加工性が悪い傾向がある。また、モジュール製造ラインでの工程不良がよく発生し、生産性を向上させるために回路接続工程の時間を短縮すると、長期信頼性および安定接着力を確保できないという問題もある。
【0006】
特に、従来のエポキシ硬化タイプ異方導電性フィルムは、粘着性が低くて仮圧着(pre-bonding)工程での不良が増加し、硬化後の再加工性が低下する。また、反応温度が非常に
高いため、工程管理および加圧着装置のメンテナンスが難しいという短所がある。
【0007】
また、従来のラジカル硬化タイプ異方導電性フィルムは、導電性粒子と回路素子との間の接触を確保するために反応速度を減少させる場合、バインダー樹脂と硬化剤とのレオロジー特性の差に起因するバインダー樹脂と硬化剤との流動性の差により過度の気泡が発生し、長期信頼性を確保できないという問題がある。一方、反応速度を増加させる場合、導電性粒子と回路素子との間の不十分な接触により接続信頼性が低下し、過度の硬化が発生して再加工性の問題を引き起こす。
【0008】
上述の問題を解決するため、熱可塑性樹脂を導入して再加工性などを改善しようとしているが、硬化系(curing system)との親和性、適切なフィルム強度およびひずみを確保す
ることが難しい。さらに、熱可塑性樹脂の伸縮調節が難しく、低温工程で熱可塑性樹脂が硬化反応を妨害するため、高温高湿の下で信頼性が著しく減少するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、フィルム製造時のコーティング性、スリッティング工程での生産性、および品質に優れた半熱硬化性異方導電性フィルム組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、接着力およびモジュール生産性が改善された異方導電性フィルム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様は、(i)重量平均分子量150,000〜600,000の熱可
塑性樹脂;(ii)重量平均分子量100〜10,000のアクリレートまたはメタクリレート官能基を有する熱硬化性材料;(iii)有機過酸化物;(iv)シランカップリング剤;および(v)導電性粒子を含むことを特徴とする半熱硬化性異方導電性フィルム組成物に関する。
【0011】
本発明の他の態様は、前記組成物で形成された異方導電性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異方導電性フィルム組成物は、フィルム形成時のコーティング性およびスリッティング工程での生産性に優れ、本発明で得られた異方導電性フィルムは、切断性、仮圧着性および仮圧着再加工性に優れるので、モジュール製造ラインでのモジュール生産性を向上できる。また、本発明の異方導電性フィルムは、回路接続工程で緻密な硬化構造を形成して長期信頼性および安定接着性を示すことができ、さらに、短時間の加熱加圧工程により回路接続を完成して高いモジュール生産性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明は、下記成分を含む異方導電性フィルム組成物を提供する。
(i)重量平均分子量150,000〜600,000の熱可塑性樹脂;
(ii)重量平均分子量100〜10,000のアクリレートまたはメタクリレート官能基を有する熱硬化性材料;
(iii)有機過酸化物;
(iv)シランカップリング剤;および
(v)導電性粒子
<熱可塑性樹脂>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(i)は、フィルム形成に必要なマトリクスとして働
く。本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、高分子量の熱可塑性樹脂であり、例えば、オレフィン樹脂、アクリルゴム、ブタジエン樹脂、アクリロニトリルブタジエン共重合体、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ただし、クロロプレンゴムは、工程中に遊離塩化イオンを発生させて回路素子を腐食させうるため、熱可塑性樹脂として適切ではない。
【0014】
このような高分子量の熱可塑性樹脂は、異方導電性フィルム組成物に含まれている樹脂との親和性を与えて導電性粒子の沈降を防止し、適切なフィルムの降伏応力および破断ひずみを与えて回路接続工程時に優れた再加工性を提供する。また、前記熱可塑性樹脂(i
)は、高圧着性を有しており、加熱加圧回路工程を経て異方導電性フィルムに高接着力お
よび高付着力を与えて回路素子の良好な接続を確保することができる。
【0015】
前記熱可塑性樹脂(i)は、その重量平均分子量が150,000〜600,000で
あることが好ましい。前記熱可塑性樹脂(i)の重量平均分子量が150,000未満の
場合には、適切なフィルム強度および破断ひずみを確保できず、あるいは組成物中で導電性粒子の沈降が激しく発生する場合がある。一方、前記熱可塑性樹脂(i)の重量平均分
子量が600,000を超える場合には、親和性の減少により異方導電性フィルム組成物の製造時に相分離が発生して被着体への接着力が減少し、過度の伸縮により長期接続信頼性が低下する場合がある。なお、この熱可塑性樹脂(i)の重量平均分子量は、ゲル透過
クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0016】
<熱硬化性材料>
本発明で用いられる熱硬化性材料(ii)は、硬化反応が起こって回路素子間の接続力および接続信頼性を確保できる硬化系として働く。本発明の異方導電性フィルム組成物は、重量平均分子量100〜10,000のアクリレートまたはメタクリレート官能基を有する熱硬化性材料である熱硬化性材料(ii)を含み、緻密な硬化構造を形成することができる。
【0017】
前記熱硬化性材料(ii)を含む硬化系によって回路接続工程を短時間に実行できるので、モジュール生産性の高い異方導電性フィルムを提供することができる。前記熱硬化性材料(ii)の重量平均分子量が100未満の場合には急速な反応性により不適切であり、一方、10,000を超える場合には加熱加圧により緻密な硬化構造が確保できないので長期接着性および接着信頼性が低下する場合がある。なお、この熱硬化性材料(ii)の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0018】
前記熱硬化性材料(ii)としては、ポリマー、オリゴマーおよびモノマーのいずれか一つを用いてもよく、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
前記熱硬化性材料(ii)としては、特に制限されないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス(4−(アクリロキシポリメトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレートまたはトリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアノレートなどの官能基を含む、モノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いてもよい。これらの熱硬化性材料は、一種単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。また、接着力および常温安定性を向上させるために、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸、2−アクリロイルオキシエチルリン酸などのリン酸エステル構造を有するアクリレートまたはメタクリルレートを用いてもよい。
【0019】
熱硬化性材料(ii)の含量は、前記熱可塑性樹脂(i)100重量部に対して100〜
400重量部が好ましい。すなわち、前記熱可塑性樹脂(i)と、熱硬化性材料(ii)と
の重量比率が、20:80〜50:50であることが好ましい。前記熱可塑性樹脂(i)
100重量部に対して、熱硬化性材料(ii)の含量が400重量部を超過する場合には、加熱加圧工程後の再加工性が低下し、100重量部未満の場合には硬化密度が相対的に減少して接続信頼性が低下する場合がある。
【0020】
<有機過酸化物>
本発明で用いられる有機過酸化物(iii)は、熱硬化開始剤として作用する。本発明の
有機過酸化物(iii)としては、通常有機過酸化物として一般に使用されているものを特
に制限なく用いることができるが、例えば、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、およびジアルキルペルオキシドからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0021】
前記有機過酸化物(iii)の例として、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリ
メチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、m−トルオイル/ベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネ−ト、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネ−ト、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネ−ト、ジ−2−エチルへキシルペルオキシジカーボネ−ト、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネ−ト、ビス(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネ−ト、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネ−ト、t−ブチルペルオキシ2−エチルへキシルモノカーボネ−ト、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、α,α'−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシノエデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネ−ト、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バラレート、α,α'−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどが挙げられる。
【0022】
前記有機過酸化物(iii)の含量は、組成物の硬化特性および保全性をバランスよく提
供する範囲内で決定することができる。本発明では、前記熱硬化性材料(ii)100重量部に対して0.3〜10重量部が好ましい。前記有機過酸化物(iii)の含量が0.3重
量部未満の場合には硬化反応速度が遅くなって低温高速硬化特性が低下し、一方、10重量部を超える場合には常温安定性および保全性が低下し、過度の硬化により再加工時に組成物が完全に除去されないという問題が生じる場合がある。
【0023】
<シランカップリング剤>
本発明で用いられるシランカップリング剤(iv)は、本発明で組成物の組成時に分子量および特性が異なる異種樹脂間の反応性と、銅、グラスなどの無機材料表面との接着力とを改善することによって、耐熱性、耐湿性および接続信頼性を向上させることができる。本発明のシランカップリング剤(iv)としては、通常シランカップリング剤として一般に使用されているものを特に制限なく用いることができるが、例えば、ビニル基、エポキシ基、メタアクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、およびイソシアネート基を含むシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0024】
前記シランカップリング剤(iv)の含量は、前記熱可塑性樹脂(i)と、熱硬化性材料
(ii)と、有機過酸化物(iii)との合計100重量部に対して0.2〜10重量部が好
ましい。前記シランカップリング剤(iv)の含量が0.2重量部未満の場合にはカップリング剤としての働きが不足し、10重量部を超える場合には樹脂の凝集力が減少して接着力または信頼性が低下するという問題がある。
【0025】
<導電性粒子>
本発明において、導電性粒子(v)は、異方導電性フィルム組成物の導電性能を向上さ
せるために用いられる。本発明の導電性粒子(v)としては、通常導電性粒子として一般
に使用されているものを特に制限なく用いることができるが、Au、Ag、Ni、Cu、Sn又ははんだなどを含む金属粒子;カーボン粒子;ベンゾグアニン、PMMA、アクリル共重合体もしくはポリスチレンなどを含む樹脂又はその変性樹脂を、Au、Ag、Ni、Cu、Sn又ははんだなどを含む金属でコーティングした粒子;ならびにその上に絶縁粒子または絶縁膜をさらにコーティングして絶縁処理した導電性粒子からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
前記導電性粒子(v)の大きさは、対応する回路のピッチに応じて1〜30μmの大き
さを有してもよい。大きさの異なる粒子を混合して用いてもよい。
前記導電性粒子(v)の含量は、前記熱可塑性樹脂(i)と、熱硬化性材料(ii)と、有機過酸化物(iii)と、シランカップリング剤(iv)との合計100重量部に対して0.
2〜30重量部が好ましい。前記導電性粒子(v)の含量が0.2重量部未満の場合には
導電性能の向上が不足し、一方、30重量部を超える場合には絶縁不良を引き起こすという問題が生じる場合がある。
【0027】
本発明の異方導電性フィルム組成物には、基本物性を損なうことなく、異方導電性フィルム組成物に付加的な物性を提供するために、重合防止剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0028】
前記重合防止剤として、通常重合防止剤として使用されているものを特に制限なく用いることができるが、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、フェノチアジン、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0029】
また、熱によって起こる組成物の酸化反応を防止し、熱安定性を提供するために、酸化防止剤を添加してもよい。前記酸化防止剤として、テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシンナマート)メタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸チオールジ−2,1−エタンジイルエステル、オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシンナマート(Ciba社製造)、2,6−ジ−tert−p−メチルフェノールなどが挙げられるが、これに限定されることはない。
【0030】
前記添加剤は、一種単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、前記熱硬化性材料(ii)と有機過酸化物(iii)との合計100重量部に対して0.03〜0.3重量
部を用いることができる。前記添加剤の含量が0.03重量部未満の場合には付加的な物性が提供できず、一方、0.3重量部を超える場合には基本物性を損なう場合がある。
【0031】
本発明の組成物は、特別な装置及び設備を用いることなく異方導電性フィルム形成に用いられ、従来の調製方法を通じて調製することができる。
例えば、本発明の組成物をトルエンのような通常の有機溶媒に溶解させて液状化した後
、導電性粒子が粉砕されない速度範囲内で一定時間撹拌を行い、この溶液をリリースフィルム上に10〜50μmの厚さでコーティングし、一定時間乾燥することで有機溶媒を蒸発させて一層構造を有する異方導電性フィルムを得る。この際、必要に応じて上記工程を2回以上繰り返して二層または多層構造を有する異方導電性フィルムを得ることができる。
【0032】
前記有機溶媒として、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができるが、これに限定されることはない。
【0033】
本発明の異方導電性フィルム組成物で形成された異方導電性フィルムは、降伏応力20gf/mm2以上かつ破断ひずみ300%以上である。前記異方導電性フィルム組成物で
コーティングされたフィルムを一定幅でスリットするためには、適切な機械的性質を有することが要求される。また、モジュール製造ラインの回路接続工程でも、フィルムの切断性および仮圧着不良時の再加工性のために、適切な機械的性質が要求される。このような機械的物性には、降伏応力および破断ひずみなどがある。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これらの実施例は、説明を目的としたものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものと解釈してはならない。
実施例1
カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)80gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(2/1重量部)に固形分24%で溶解させた。
【0035】
次に、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(VR60,Showa Highpolymer Co.,LTD.,重量平均分子量7,500)75gをメチルエチルケトンに固形分60%で溶解させて加え、重量平均分子量2,500[下記化学式(1)]のアクリレート樹脂45gを加えた。
【0036】
三つのアクリレート官能基を有するペンタエリトリトールトリアクリレート(Pentaerythritol triacrylate、重量平均分子量298)13gと、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート(2−acryloyloxyethyl phosphate,重量平均分子量196)4gとをそれぞれ加え、ベンゾイルペルオキシド4gをトルエンに固形分10%で溶解させて加えた。
【0037】
メタクリルオキシ基を有するシランカップリング剤(3−glycidoxypropyltriethoxysilane)1.7gと、ニッケル(Ni)粒子19gとを添加して異方導電性フィルム組成物を得た。
【0038】
【化1】

【0039】
実施例2
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてカル
ボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(N34,Zeon Chemicals,重量平均分子量236,400)80gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(2/1重量部)に固形分25%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0040】
実施例3
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてアクリルゴム(SG−80H,Nagase Chemtex,重量平均分子量350,000)80gをメチルエチルケトンに固形分26%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0041】
実施例4
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてアクリルゴム(WS−023,Nagase Chemtex,重量平均分子量500,000)80gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に固形分20%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0042】
比較例1
ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(VR60,Showa Highpolymer Co.,LTD.,重量平均分子量7,500)75gをメチルエチルケトンに固形分60%で溶解させ、重量平均分子量2,500[下記化学式(1)]のアクリレート樹脂50gを加えた。
【0043】
三つのアクリレート官能基を有するペンタエリトリトールトリアクリレート(Pentaerythritol triacrylate,重量平均分子量298)13gと、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート(2−acryloyloxyethyl phosphate,重量平均分子量196)4gとをそれぞれ加え、ベンゾイルペルオキシド0.6gをトルエンに固形分10%で溶解させて加えた。
【0044】
メタクリルオキシ基を有するシランカップリング剤(3−glycidoxypropyltriethoxysilane)1.7gと、ニッケル(Ni)粒子19gとを添加して異方導電性フィルム組成物を得た。
【0045】
比較例2
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてフェノキシ樹脂(E1256,Japan Epoxy Resin,重量平均分子量59,400)80gをメチルエチルケトンに固形分39%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0046】
比較例3
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてフェノキシ樹脂(E4275,Japan Epoxy Resin,重量平均分子量73,800)80gをメチルエチルケトンに固形分40%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0047】
比較例4
実施例1で用いられたカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)に代えてアクリルゴム(SG708−6,Nagase Chemtex,重量平均分子量700,000)80gをメチルエチルケトンに固形分19%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0048】
比較例5
実施例1でカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(1072CGX,Zeon Chemicals,重量平均分子量204,400)を代えてアクリルゴム(SGP3,Nagase Chemtex,重量平均分子量850,000)80gをメチルエチルケトンに固形分14%で溶解させて用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0049】
比較例6
実施例1で用いられた重量平均分子量7,500および2,500のアクリレート樹脂に代えてウレタンアクリレート樹脂(UX−3204,Nippon Kayaku,重量平均分子量11,500)100gを添加したことを除いて、実施例1と同様の方法で異方導電性フィルム組成物を得た。
【0050】
上記実施例および比較例の個々の組成物を、鋳造ナイフを用いてシリコーン処理したポリエステルフィルム上に塗布して溶媒乾燥(オーブン温度80℃で5分)させた後、厚さ30〜50μmのフィルムを得た。このフィルムを幅1.5mmでスリットしてテストに使用した。
【0051】
〔異方導電性フィルム組成物および異方導電性フィルムの評価〕
(1) 異方導電性フィルム組成物の評価
異方導電性フィルム組成物を用いてフィルムを商業的に製造するためには、組成物内の樹脂間の均一混合が必要であり、x−y平面上への絶縁性、z軸への導電性を得るためには、粒子が凝集せずに分散しなければならない。また、組成物を6時間放置して導電性粒子の沈降がない場合に限り、長さ300m以上のコーティングが可能である。フィルムコーティング時にピンホール(Pinhole)およびスクラッチが形成してはならない。
【0052】
フィルムのコーティング性、組成均一性、導電性粒子の分散、および導電性粒子の沈降を組成物調製の6時間後、官能検査で評価した。官能検査は5段階の尺度で、5〜4:良好、3:普通、2〜1:不良で評価した。
【0053】
(2) 異方導電性フィルムの評価
実施例および比較例により製造された異方導電性フィルムの降伏応力および破断ひずみを万能試験機(UTM、modelH5KT)を用いて測定した。ポリエステルフィルムをはがした後、標点距離(Gauge Length)10mm、速度50mm/minで引張試験を実施した。破断ひずみを下記式で計算した。このとき、ゴム性質により破断が遅延する場合には、降伏応力50%に対応する時点の伸長距離を用いて破断ひずみを算出した。
【0054】
破断ひずみ(%)=(L−L0)/L0×100
L=伸長距離、L0=初期距離(10mm)
(3) 異方導電性フィルムの接着力および接続抵抗の評価
上記実施例および比較例により製造された異方導電性フィルムの回路接続性能を評価するためにプリント配線基板(PCB)およびチップ・オン・フィルム(COF)を用いた。個々の製造フィルムを常温で1時間放置した後、80℃、1秒、1.0MPaの条件で仮圧着してリリースフィルムを除去し、180℃、5秒、3.0MPaの条件で本圧着(main-bonding)を行った。こうして得られた試験片を用いて初期接続抵抗および90゜接着力を測定し、温度85℃、相対湿度(RH)85%、250時間および500時間の条件で試験片を放置した後、接続抵抗を測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
前記実施例から分かるように、本発明による異方導電性フィルム組成物は、良い組成均一性および導電性粒子の高分散性を示し、絶縁性および導電異方性の信頼性に優れる。したがって、本発明による異方導電性フィルム組成物は、導電性粒子の沈降を抑制できるため、長時間コーティングが可能であり、フィルムのコーティング性に優れるため、高生産性および高生産収率を有する。さらに、本発明による異方導電性フィルム組成物は、降伏応力20gf/mm2以上かつ破断ひずみ300%以上であり、スリッティング工程での
高加工性と高生産収率、異方導電性フィルムの接続工程での高切断性、および仮圧着不良時の高い再加工性を提供する。
【0058】
表2を参照すると、本発明の異方導電性フィルムは、短時間の回路接続工程(180℃,5秒、3.0MPa)で500gf/cm以上の接着力で安定しており、接続抵抗が初期において2.5Ω以下かつ85℃/RH85%の下で放置後に4.0Ω以下であり、ディスプレイ装置の駆動に関する優れた回路接続性能および信頼性を提供する。
【0059】
一方、比較例1では、過度の粒子沈降を示しており、フィルムコーティング時に過度のピンホール形成によりコーティングの均一性を確保できず、フィルム強度が低すぎてスリッティング工程での加工性を確保することができない。その結果、フィルムの不均一性により安定接着力および接続抵抗信頼性の確保は不可能である。
【0060】
比較例2,3では、少量の異方導電性フィルム調製は可能であるが、導電性粒子の沈降が速いため、長さ300mm以上のフィルムコーティングは不可能である。また、重量平均分子量が少なくて十分なフィルム強度を得ることができる脆性ポリマーを用いるため、得られたフィルムは破断ひずみが300%未満であり、粘着性(Tack)が不充分である。
【0061】
比較例4,5では、重量平均分子量が700,000および800,000である熱可塑性樹脂を用いることによって、親和性が低くて、組成均一性および粒子分散性が確保することができない。その結果、異方導電性フィルムのコーティング表面が不均一であり、回路接続時に接着力が不足して接続構造内での過度の伸縮により接続信頼性が低下する。
【0062】
比較例6では、熱硬化性材料の重量平均分子量が10,000を超過することによって高温高湿の条件で接続抵抗が増加する。
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、これらの実施例は例示したものに過ぎない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明から様々な変形例および均等な他の実施例を得られることが分かる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、本発明の特許請求の範囲に示される技術的思想によって定められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)重量平均分子量150,000〜600,000の熱可塑性樹脂;
(ii)重量平均分子量100〜10,000のアクリレートまたはメタクリレート官能基を有する熱硬化性材料;
(iii)有機過酸化物;
(iv)シランカップリング剤;および
(v)導電性粒子
を含むことを特徴とする半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(i)と熱硬化性材料(ii)との重量比率が20:80〜50:50
であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(i)100重量部に対して100〜400重量部の前記熱硬化性材
料(ii)を含み;
該熱硬化性材料(ii)100重量部に対して0.3〜10重量部の前記有機過酸化物(iii)を含み;
該熱可塑性樹脂(i)、熱硬化性材料(ii)および有機過酸化物(iii)の合計100重量部に対して0.2〜10重量部の前記シランカップリング剤(iv)を含み;かつ、
該熱可塑性樹脂(i)、熱硬化性材料(ii)、有機過酸化物(iii)およびシランカップリング剤(iv)の合計100重量部に対して0.2〜30重量部の前記導電性粒子(v)
を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(i)が、オレフィン樹脂、アクリルゴム、ブタジエン樹脂、アクリ
ロニトリルブタジエン共重合体、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性材料(ii)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス(4−(アクリロキシポリメトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアノレート、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸または2−アクリロイルオキシエチルリン酸の官能基を含む、モノマー、オリゴマーおよびポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項6】
前記有機過酸化物(iii)が、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペ
ルオキシエステル、ペルオキシケタールおよびジアルキルペルオキシドからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項7】
前記シランカップリング剤(iv)が、ビニル基、エポキシ基、メタアクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、およびイソシアネート基を含むシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項8】
前記導電性粒子(v)が、Au、Ag、Ni、Cu、Sn又ははんだを含む金属粒子;
カーボン粒子;ベンゾグアニン、PMMA、アクリル共重合体もしくはポリスチレンを含む樹脂又はその変性樹脂を、Au、Ag、Ni、Cu、Sn又ははんだを含む金属でコーティングした粒子;ならびにそれらの上に絶縁粒子又は絶縁膜をさらにコーティングして絶縁処理した導電性粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項9】
前記半熱硬化性異方導電性フィルム組成物が、重合防止剤、酸化防止剤、および熱安定剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の半熱硬化性異方導電性フィルム組成物を用いて形成されることを特徴とする異方導電性フィルム。
【請求項11】
降伏応力20gf/mm2以上かつ破断ひずみ300%以上であることを特徴とする請
求項10に記載の異方導電性フィルム。

【公開番号】特開2008−243798(P2008−243798A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339600(P2007−339600)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】