説明

単結晶ツインフリー貴金属ナノワイヤ及びハロゲン化貴金属を利用した単結晶ツインフリー貴金属ナノワイヤの製造方法

【課題】高結晶性、高純度で制御された形状を有し、基板と一定の方向を有する単結晶貴金属ナノワイヤの製造方法の提供。
【解決手段】ハロゲン化貴金属である前駆物質を反応炉の前端部に位置させて、前駆物質の温度を制御し、単結晶基板を反応炉の後端に位置させ、一定な圧力下で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部に不活性気体が流れる条件で、前記単結晶基板上に前記単結晶基板とエピタキシャル関係を有するツインフリー単結晶体の貴金属ナノワイヤを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイン(twin)を含む2次元面欠陥のない単結晶体の貴金属ナノワイヤ、及びハロゲン化貴金属を前駆物質として、気相移送法を利用し、基板上2次元面欠陥のない単結晶体貴金属ナノワイヤを製造する方法に関し、詳細には、前記前駆物質の温度を制御し、面欠陥のない高品質の貴金属ナノワイヤを製造する方法であって、貴金属ナノワイヤの長軸の方向性を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、貴金属単結晶ナノワイヤは、その化学的安定性が高く、熱伝導度及び電気伝導度が大きくて、電気、磁気、光学素子及びセンサーへの活用価値が高い。
【0003】
Agは、全ての金属の中でも最もよい電気及び熱伝導率を有しており、Agの光学的特性により、可視光線領域で最も高いSERS(Surface Enhanced Raman Scattering:表面増強ラマン)効率を示している。このようなAgをナノワイヤ形態に製造する場合、マイクロ電子素子から光学センサーまで多様な応用にその発展が期待できる。特に、SERSの場合、信号の大きさは、Agナノ構造の細密な形態に大きく依存するため、確実な化学またはバイオセンサーの製作のためには、きれいな表面を有する、よく定義されてよく分析されたナノワイヤを製造する技術が最も重要である。
【0004】
Auの場合、Agの場合と同様に、SERS現象を観察することができる。一般に、金属ナノ構造体(nanostructure)は、SAM(self-assembled monolayer)を利用して表面に分子を吸着させることができるが、これを利用し、Auナノ構造体表面に均一に吸着された分子層を得ることができる。AuナノワイヤとSAMを利用して分子のSERS現象を観察して、SAMをなす分子をlinkerに応用し、選択的な生分子分析及び光素子への活用が大きいといえる。また、Auナノワイヤ構造をSERS測定に利用する場合、非常に高感度の分析技術として利用できると期待される。
【0005】
Pdの場合、センサーへの活用が注目を浴びている。多様で且つ精密なガスセンサーの開発は、科学技術の発展と共に高精密度が要求される分野で重大な課題として残っている。また、感知能力に優れたセンサーの開発は、国内・国外を問わず、遥かに遠い状態である。特に、燃料電池の開発と共に、これを商用化する時に発生し得る水素の漏れとこれを監視できる高感度燃料電池用水素ガスセンサーの開発は、次世代清浄エネルギーに使用される燃料電池の研究と並行すべき課題として残っている。このような水素センサーの開発並みに重要視されていることが、センサーとして使用される物質の開発である。その中でも最も注目を浴びている物質の一つがPd金属であって、水素との強い吸着力を有して、自己体積の900倍の水素を吸収できる金属Pdを利用して、ナノワイヤとして合成し高感度センサーに応用することに対する研究が、国内外の数多いグループで進行中である。
【0006】
Ptは、独特の触媒活動、高温における酸化と腐蝕防止、高い融点を有していて、このような特性により、産業全般に広く利用されている。優れた触媒としての性質は、自動車、化学、石油産業で幅広く使用されて、Ptを重要な産業金属と位置づけて、化学的な非活性と熱の安定性は、熱電池及び数多い電気・電子応用分野で接触部分及び電極のようなところに使用される。また、近来化学エネルギーを電気エネルギーに変換させる燃料電池の商業的利用においてPtを電極に使用しつつ、その重要性がより一層目立っている。また、Agの場合と同様に、SERS現象が観察できる。
【0007】
単結晶体の貴金属ナノワイヤは、多結晶体から構成されたナノワイヤに比べ、結晶内欠点がないため、ナノワイヤ表面に沿う表面プラズモン伝達に優れている。したがって、ナノワイヤの両端で散乱する光信号測定を通じて、多結晶貴金属ナノワイヤとは異なって、表面プラズモン共鳴器(Surface Plasmon resonator)として使用できる特性を示す。
【0008】
上述の貴金属ナノワイヤの活用のためには、高純度で且つ内部欠陥がなく、原子水準によく定義された単結晶体の貴金属ナノワイヤ、触媒や鋳型体(template)を使用せずに物理的に互いに分離されて個別的に存在する貴金属ナノワイヤを製造できる技術の開発が切実な状況である。
【0009】
本出願人は、既に、触媒及び鋳型体を使用せず、気相移送法を利用して高純度、高結晶性を有する貴金属ナノワイヤの製造方法を出願し(大韓民国公開特許第2009−0001004号)、さらに、基板表面と方向性を有する貴金属ナノワイヤの製造方法を出願したことがある(大韓民国公開特許第2009−0004456号)。
【0010】
前記大韓民国公開特許第2009−0004456号は、ナノワイヤの方向性に影響を及ぼす前駆物質の温度、圧力、基板の温度、不活性気体の流れ量の中、不活性気体の流れ量及び圧力を主制御因子として、基板表面に対して垂直または水平の関係を有する貴金属ナノワイヤを製造する方法を提供し、ひいては、前駆物質として貴金属物質または貴金属酸化物を使用して、基板に対して垂直または水平の関係を有する貴金属ナノワイヤの製造方法を提供する。
【0011】
前記大韓民国公開特許第2009−0004456号に、たとえハロゲン化貴金属を前駆物質として使用することが記載されているものの、貴金属物質または貴金属酸化物とハロゲン化貴金属の気化特性が非常に相異なり、実質的に貴金属物質または貴金属酸化物を前駆物質として利用した前記大韓民国公開特許第2009−0004456号に公開された方法では、ハロゲン化貴金属を前駆物質として貴金属ナノワイヤの方向性を制御することが難しいことを見出し、本特許を出願するに至った。
【0012】
さらに、本出願人は、気相移送法を利用したナノワイヤの製造及び方向性制御に対する研究を深化した結果、本発明を出願するに至り、基板に対して方向性を有するAgナノワイヤを合成できる他の技術を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2009−0001004号
【特許文献2】大韓民国公開特許第2009−0004456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の問題点を解決するための本発明の目的は、触媒及び鋳型体を使用せず、ハロゲン化貴金属を前駆物質として使用して、前記前駆物質の温度を制御し、基板に対して方向性(ナノワイヤ長軸と基板表面間の方向性)が制御された貴金属ナノワイヤを製造する方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、高純度、高結晶性を有し、基板表面とエピタキシャル関係を有するPtナノワイヤを提供することである。
【0016】
本発明のまた他の目的は、ナノ細孔が備えられた有/無機鋳型体、触媒などを使用することなく、ツインを含んだ欠陥が存在せず、高結晶性及び高純度を有し、表面が結晶学的によく規定(well define)されて、形状が制御された単結晶Agナノワイヤを製造する方法、及び大量生産が可能で、再現性のあるAgナノワイヤの製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、高結晶性、高純度、制御された形状を有し、基板と一定な方向を有する単結晶Agナノワイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下、本発明の製造方法を詳述するが、本明細書で使用する技術用語及び科学用語において、特に定義がなければ、この発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明において、本発明の要旨を曖昧にする公知機能及び構成に対する説明は省く。
【0019】
以下、本発明による貴金属ナノワイヤの製造方法の第1態様を詳述する。
【0020】
本発明による貴金属ナノワイヤの製造方法は、ハロゲン化貴金属を前駆物質として、前記前駆物質を反応炉の前端部に位置させ、単結晶基板を反応炉の後端に位置させて、一定な圧力下で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部に不活性気体が流れる条件で熱処理し、前記単結晶基板上に前記単結晶基板とエピタキシャル関係を有する貴金属ナノワイヤの製造方法であって、前記前駆物質の温度を制御することによって、前記基板表面を基準にした前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が制御される特徴がある。
【0021】
前記ハロゲン化貴金属(noble metal halide)は、塩化貴金属(noble metal chloride)、臭化貴金属(noble metal bromide)、ヨウ化貴金属(noble metal iodide)またはフッ化貴金属(noble metal fluoride)である特徴があり、さらに好ましくは、塩化貴金属である。
【0022】
詳細に、前記ハロゲン化貴金属は、Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Os、RuまたはRhである貴金属と、F、Cl、IまたはBrとが結合した化合物であり、前記ハロゲン化貴金属は、ハロゲン化貴金属水和物を含む。前記ハロゲン化貴金属を前駆物質として、Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Os、RuまたはRh単結晶ナノワイヤが製造されて、特徴的に、前記前駆物質の温度を制御し、前記単結晶基板の表面に対してナノワイヤ長軸が垂直または水平の方向性を有するように製造される。
【0023】
前記貴金属ナノワイヤの長軸が基板表面に対して有する方向性は、基板上に形成される一つ以上の貴金属ナノワイヤが同一な方向性を有する特徴があり、より詳細に、前記基板表面に対して同一なエピタキシャル関係を有する多数個の貴金属シード(seed)が形成されて、前記貴金属シードに供給される物質供給メカニズムを制御して前記貴金属シードを成長させ、同一な方向性を有する多数個の貴金属ナノワイヤが製造される。
【0024】
本発明による製造方法は、前記貴金属単結晶ナノワイヤの成長方向に影響を及ぼす前駆物質の温度、圧力、基板の温度及び不活性気体の流れ量の中、前駆物質の温度を主制御因子として、基板表面に対して垂直または水平の方向性を有する貴金属ナノワイヤを製造する特徴がある。
【0025】
ハロゲン化貴金属の熱分解及び熱気化が非常に容易であることから、前駆物質の温度を制御して、貴金属ナノワイヤの長軸方向(成長方向)を精密に制御するために、前記圧力は、高圧に維持される特徴があって、詳細に0.9乃至1.1atmである特徴がある。
【0026】
ハロゲン化貴金属の熱分解及び熱気化が非常に容易であることから、前駆物質の温度を制御して、貴金属ナノワイヤの長軸方向(成長方向)を精密に制御するために、前記不活性気体を高流量で流す特徴があって、詳細に200乃至300sccm流す特徴がある。
【0027】
前記基板の温度は、貴金属物質の核生成及び成長駆動力を提供して、容易な物質移動(surface diffusion, vapor phase diffusion、結晶内部diffusionを含む物質移動)が起こる温度であって、詳細には、製造対象である貴金属ナノワイヤの貴金属物質の融点(melting point(℃))をTmとして、0.4Tm乃至0.95Tmである特徴がある。
【0028】
上述の圧力、不活性気体の流れ及び基板の温度で、ハロゲン化貴金属である前記前駆物質の温度を制御し、基板に形成される貴金属ナノワイヤが基板とエピタキシャル関係を有し、基板に対して垂直方向に成長した垂直貴金属ナノワイヤ、または基板に形成される貴金属ナノワイヤが基板とエピタキシャル関係を有し、基板に対して水平方向に成長した水平貴金属ナノワイヤを選択的に製造する。
【0029】
前記前駆物質の温度は、前記前駆物質の融点(℃)及び分解点(decomposition point(℃))のうち低い方の温度の0.6倍から0.9倍である特徴があり、このような前駆物質の温度制御により、前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と垂直である垂直貴金属ナノワイヤが形成される特徴がある。
【0030】
前記前駆物質の温度は、前記前駆物質の融点(melting point(℃))または分解点(decomposition point(℃))の中、低い温度を基準に1.3倍乃至1.6倍の温度である特徴があり、このような前駆物質の温度制御により、前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と平行である水平貴金属ナノワイヤが形成される特徴がある。
【0031】
前記基板は、製造したい貴金属ナノワイヤの貴金属物質に対してエピタキシャルとなる基板であることが好ましく、さらに好ましくは、{111}面族、{110}面族、及び{100}面族を含む低指数面と基板表面の結晶面がエピタキシャルを形成する単結晶基板である。
【0032】
より詳細に、前記単結晶基板は、目的とする貴金属単結晶の核生成、特に2次元核生成(2-dimensional nucleation)が容易に発生する不導体または半導体単結晶の表面であり、格子ミスマッチ(lattice mismatch)により誘導される弾性応力(elastic stressまたはelastic strain)及び線欠陥(dislocation)が容易に発生しないように適宜選択する必要がある。
【0033】
貴金属単結晶の核生成の容易性(2-dimensional nucleation energy barrier)は、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤの物質、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤの低指数面の原子構造、前記単結晶基板の物質、前記単結晶基板の表面方向、またはこれらの組み合わせにより決定される。
【0034】
上述のように、前記不導体または半導体単結晶基板は、目的とする貴金属単結晶ナノワイヤと、好ましくは貴金属単結晶の低指数面とエピタキシャル関係を形成して、前記熱処理条件で化学的/熱的に安定した半導体または不導体であればいずれも使用可能であるが、実質的にシリコン単結晶、ゲルマニウム単結晶またはシリコンゲルマニウム単結晶から選択された4族単結晶;ガリウム砒素単結晶、インジウムリン単結晶またはガリウムリン単結晶から選択された3〜5族単結晶;2〜6族単結晶;4〜6族単結晶;サファイア単結晶;酸化ケイ素単結晶;またはこれらの積層基板;から選択される。
【0035】
一例として、低費用で購入が容易で、Pt、Au、Pd、AuPd、Agなどの単結晶と熱力学的に安定した面である低指数面でエピタキシャルを有するサファイア単結晶を使用することが実質的である。
【0036】
特徴的に、前記前駆物質は、塩化プラチナム、臭化プラチナム、ヨウ化プラチナムまたはフッ化プラチナムであり、前記貴金属ナノワイヤは、Ptナノワイヤである特徴がある。
【0037】
前記前駆物質が塩化プラチナム、臭化プラチナム、ヨウ化プラチナムまたはフッ化プラチナムであり、製造したい単結晶貴金属ナノワイヤがPtである場合、前記基板の温度は、850乃至1000℃、圧力は、0.9乃至1.1atm、不活性気体の流量は、200乃至300sccmである特徴がある。
【0038】
より特徴的に、前記前駆物質は塩化プラチナムであり、前記前駆物質の温度が400乃至500℃に制御され、Ptナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と垂直である垂直Ptナノワイヤが形成されて、前記前駆物質(塩化プラチナム)の温度が800乃至900℃に制御され、Ptナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と平行である水平Ptナノワイヤが形成される。
【0039】
この際、実質的に前記単結晶基板は、C面を表面として有するサファイア単結晶基板であることが好ましい。
【0040】
本発明は、上述の製造方法を利用して、単結晶体のPtナノワイヤを提供する。本発明のPtナノワイヤは、無−触媒、無−テンプレート(template)で、単結晶基板の表面とエピタキシャル関係(epitaxial relation)を有し、ナノワイヤの長軸が前記基板表面に対して垂直または水平の関係を有し、前記基板表面に支えなしで立っている(free standing)単結晶体である特徴がある。
【0041】
より特徴的に、本発明のPtナノワイヤは、ツイン(twin)を含む面欠陥のない単結晶体であり、Ptナノワイヤの長軸が[110]方向である特徴がある。
【0042】
以下、本発明による貴金属ナノワイヤの製造方法の第2態様を詳述する。
【0043】
本発明によるAgナノワイヤの製造方法は、前駆物質であるAgを熱気化させて、気化されたAgが不活性気体により単結晶基板に移送され、前記単結晶基板上に、前記基板とエピタキシャル関係を有し、{001}及び{111}面族からなる面取り状(faceted shape)のAgシード(seed)が形成されて、前記Agシードから、ナノワイヤの長軸が前記単結晶基板表面と平行で、ツインを含んだ2次元面欠陥のない単結晶体であるAgナノワイヤが製造される特徴がある。
【0044】
前記Agシードが成長して製造される前記Agナノワイヤは、基板に対して方向性を有する特徴があり、前記方向性は、基板の表面と基板上部に製造されるナノワイヤの長軸との方向を意味して、特徴的に基板の表面に対して水平方向性を有するAgナノワイヤが製造される。
【0045】
詳細に、前記前駆物質は、反応炉前端部に位置し、前記単結晶基板は、反応炉後端部に位置して、一定な圧力下で前記反応炉前端部から前記反応炉後端部に前記不活性気体が流れて前記Agシード及び前記Agナノワイヤが製造される。
【0046】
本出願人の提案技術(大韓民国特許出願2009−0028953号)によって、基板に対して方向性を有するナノワイヤを製造するために、前記基板とエピタキシャル関係を有し、面取りの形状を有するシードを製造する必要があり、前記面取り状のシードに供給される物質の主供給メカニズムを制御する必要があって、このために、前記前駆物質の種類、前記単結晶基板の物質、前記単結晶基板の表面方向、前記前駆物質の温度、前記単結晶基板の温度、前記不活性気体の流れ量、前記圧力、またはこれらの組み合わせを制御する必要がある。
【0047】
基板の表面に対して水平方向性を有するAgナノワイヤを製造するために、前記前駆物質は、Agである特徴があり、前記前駆物質は、Agスラグ(slug)またはAg粉末(powder)を含む。
【0048】
前記Ag前駆物質の温度及び前記不活性気体の流れ量は、前記基板上部にAgシードの生成駆動力及びAgシードの成長駆動力に主に影響を及ぼし、前記Ag前駆物質の温度、前記不活性気体の流れ量、前記圧力及び前記基板の温度は、Agシードに供給されるAg物質の供給メカニズムに主に影響を及ぼして、前記基板の温度及び前記圧力は、Agシード及びAgナノワイヤの表面相(surface phase)に主に影響を及ぼす。
【0049】
前記Ag前駆物質(反応炉前端部)は、780〜800℃に維持されて、前記単結晶基板(反応炉後端部)は、650〜700℃に維持される特徴があり、前記不活性気体は、前記反応炉前端部から前記反応炉後端部に90〜110sccm流れる特徴があって、前記圧力は、5〜7torrである特徴がある。上述の条件で30分〜1時間熱処理してAgナノワイヤを製造することが好ましい。
【0050】
上述の前駆物質の温度、単結晶基板の温度、圧力及び不活性気体の流れ量から外れると、単結晶基板表面に対する方向性を失うか、ナノワイヤの形態ではない、ロッドや粒子状のAgが生成され得て、また、単結晶体ではなく多結晶体から構成されたAgナノワイヤが生成される可能性があり、Agナノワイヤの表面が特定のAg結晶面から構成される形状性を失ってしまうおそれがある。
【0051】
ここで、前記単結晶基板は、不導体または半導体単結晶基板であって、上記基板の物質及び基板の表面方向は、製造しようとする金属シードを構成する金属物質とエピタキシャル関係(epitaxial relation)を有する基板である。
【0052】
前記基板は、製造しようとする金属シードの生成時、核生成、特に2次元核生成(2-dimensional nucleation)が容易に発生する不導体または半導体単結晶の表面であり、格子ミスマッチ(lattice mismatch)により誘導される弾性応力(elastic stressまたはelastic strain)及び線欠陥(dislocation)が容易に発生しないように適宜選択する必要がある。
【0053】
好ましくは、前記基板は、前記基板の表面を構成する結晶面と製造しようとする金属ナノワイヤを構成する金属物質固有の結晶構造を基準に、{111}面族、{110}面族及び{100}面族群から選択された面とエピタキシャル関係を有する基板である。
【0054】
より好ましくは、前記単結晶基板の物質及び前記単結晶基板の表面は、Ag固有の結晶構造を基準に、{100}面族の面とエピタキシャル関係を有する不導体または半導体単結晶基板であり、前記単結晶基板上に水平方向性を有するAgナノワイヤの長軸が互いに直交関係を有するAgナノワイヤを製造するために、(001)表面のSrTiO単結晶基板であることが好ましい。
【0055】
上述のように、本発明の製造方法は、触媒、有/無機鋳型体を使用せず、Agを前駆物質として使用して、単結晶基板上に基板に対して水平方向性を有するAgナノワイヤを形成させる方法であって、その工程が簡単で、再現性があり、不純物を含まない高純度のナノワイヤを製造することができる長所がある。
【0056】
また、基板表面に対して水平の方向性を有し、固まる(conglomeration)ことなく互いに独立して均一に特定方向に配列されたAg単結晶ナノワイヤを製造することができる。
【0057】
上述の前駆物質の温度、単結晶基板の温度、圧力及び不活性気体の流れ量条件で、前記単結晶基板に、前記基板とエピタキシャル関係を有し、{001}及び{111}面族からなる面取り状のAgシードが形成されて、上述の前駆物質の温度、単結晶基板の温度、圧力及び不活性気体の流れ量条件で、前記Agシードから、ナノワイヤの長軸が前記単結晶基板表面と平行で、ツインを含んだ2次元面欠陥のない単結晶体であるAgナノワイヤが製造される。
【0058】
特徴的に、前記面取り状のAgシードは、{111}面族に属する四つの面及び{001}面族に属する一つの面からなる五面体(half-octahedron)形状であり、前記{001}面族に属する面が基板とエピタキシャル関係を有し、前記{111}面族に属する四つの面がシードの表面をなす。
【0059】
前記五面体形状の面取り状のAgシードは、上述の前駆物質の温度、単結晶基板の温度、圧力及び不活性気体の流れ量条件で物質供給メカニズムが、不活性気体により移送された前駆物質が前記基板に供給されて、基板表面を移動経路とした表面拡散(surface diffusion)によりシードに供給される間接供給に制御されて、前記基板と平行な方向に側面成長が主になされて、長軸の方向が基板表面と平行な水平Agナノワイヤが製造される。
【0060】
この際、前記Agナノワイヤの長軸は、<110>方向である特徴があり、前記Agナノワイヤは、少なくとも{111}面族に属する二つの面を長軸表面として有し、{001}面族に属する一つの面が前記基板と長軸方向界面(interface)を形成して、前記基板と平行な方向性を有するナノワイヤが製造される特徴がある。
【0061】
上述の製造方法により製造可能な本発明によるAgナノワイヤは、ツインを含んだ2次元面欠陥のないツインフリー単結晶体であり、面取り状(faceted shape)のAgナノワイヤであって、{111}面族に属する二つの面をナノワイヤの長軸表面として有し、{001}面族に属する一つの面が前記基板と長軸方向界面(interface)を形成して、前記基板とナノワイヤの長軸が平行な方向性を有する特徴がある。
【0062】
Agが面心立方構造(FCC;Face Centered Cubic)を有することは周知のことであり、本発明による、ナノワイヤ形状を有し、表面方向が制御されて、ツインを含んだ2次元欠陥が存在しないAg単結晶体ナノワイヤも同様に面心立方構造である。
【0063】
前記Agナノワイヤの長軸は、<110>方向である特徴があり、前記Agナノワイヤの短軸断面は、三角形状である特徴がある。前記三角形状の断面は、長軸を構成する表面及び基板との界面が特定の結晶学的面からなることに起因したもので、{111}面族に属する二つの面が長軸の表面をなして、{001}面族に属する一つの面が基板との界面、特徴的にエピタキシャル関係を有する界面を形成する。
【0064】
より特徴的に、前記Agナノワイヤは、長軸の両端表面が{111}面族に属する面からなり、{111}面族に属する四つの面でナノワイヤの表面が構成されて、{001}面族に属する一つの面が基板との界面を形成する。
【0065】
前記Agナノワイヤは、2次元面欠陥のない純粋な単結晶体であり、基板の表面と長軸の方向が平行な水平方向性を有する特徴があって、Agナノワイヤの表面が結晶学的によく規定された表面である特徴があり、直径(短軸最短径)が100〜400nmであり、長軸の長さがμmオーダー(order)である特徴があって、基板に対して水平方向性を有するAgナノワイヤの長軸方向間垂直または水平関係をなす一定な配列を有するAgナノワイヤである特徴がある。
【0066】
特徴的に、前記基板は、(100)面のSrTiO単結晶であり、前記基板とナノワイヤの長軸とが平行な方向性を有する二つ以上のAgナノワイヤは、Agナノワイヤの長軸方向が互いに直交する。
【発明の効果】
【0067】
本発明の貴金属ナノワイヤの製造方法は、ハロゲン化貴金属を前駆物質として、前駆物質の温度を制御することにより、基板の表面に対する方向性を有する高純度、高結晶性の貴金属単結晶ナノワイヤを製造することができ、再現可能で単純な製造工程を通じて大量の高純度・高品質の貴金属ナノワイヤを製造することができる長所がある。
【0068】
本発明は、ハロゲン化貴金属を前駆物質として、単なる前駆物質の温度制御のみにより、基板に形成される貴金属単結晶ナノワイヤの方向性が制御可能であって、基板表面に対し、多数個のナノワイヤが同一な方向性を有するように制御可能な長所がある。
【0069】
本発明は、ハロゲン化貴金属を前駆物質として利用し、物理的に互いに分離されて、基板表面に対して特定な方向性を有する多数個の貴金属単結晶ナノワイヤの製造方法を提供することにより、貴金属ナノワイヤそのものに対する物理的、光学的、電磁気的性質を研究できる足場を提供して、金属の中、電気伝導度及び熱伝導率がよくて化学的に安定した貴金属ナノワイヤを利用した電気素子、光素子または磁気素子の特性向上が期待でき、貴金属ナノワイヤの表面特性を利用した分光装置、生物学的情報検出装置(bio sensor)、光、電気、磁気、熱または振動、またはこれらの組み合わせを検出する装置(sensor)の検出特性の調節、敏感度、正確性、再現性の向上を期待することができる。さらに、単結晶基板の表面に対する垂直または水平配列を利用して、MEMS(micro electro mechanical systems)構造体、3次元メモリー素子に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1で製造された垂直Ptナノワイヤの走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscopy)写真である。
【図2】本発明の実施例2で製造された水平Ptナノワイヤの走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】本発明の実施例1で製造されたPtナノワイヤの透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscopy)写真である。
【図4】本発明の実施例1で製造されたPtナノワイヤの高倍率透過電子顕微鏡(HRTEM;High Resolution Transmission Electron Microscopy)写真である。
【図5】本発明の実施例1で製造されたPtナノワイヤのエネルギー分光検出(EDS;Energy Dispersive Spectrometer)結果を示した図面である。
【図6】本発明の実施例1で製造されたPtナノワイヤのX−線回折結果を示した図面である。
【図7】実施例3で製造されたナノワイヤのX-線回折結果(X-ray diffraction pattern)である。
【図8】実施例3で製造されたAgナノワイヤの熱処理時間による走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscopy)写真である。
【図9】実施例3で製造されたAgナノワイヤを観察した透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、ハロゲン化貴金属を前駆物質として、前記前駆物質の温度を制御し、貴金属単結晶ナノワイヤの方向性を制御する特徴があり、ハロゲン化貴金属の熱分解及び熱気化特性が類似していることから、塩化プラチナムを前駆物質として、本発明の製造方法をより具体的に説明する。
【0072】
(実施例1)
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されて、独立的に加熱体(heating element)及び温度調節装置を備えている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cmの大きさの石英(Quzrtz)材質からなるものを使用した。
【0073】
反応炉の前端部の中央に、前駆物質のPtCl(Aldrich, #520632-1G, Tm=581℃)0.03gを入れた高純度アルミナ材質のボート状容器を位置させて、反応炉の後端部の中央には、C面サファイア基板を位置させた。
【0074】
前記石英管内の圧力は、1atmに維持して、アルゴン気体は、反応炉の前端部に投入され、反応炉の後端部に排気されて、アルゴン気体は、MFC(Mass Flow Controller)を利用して300sccmが流れるようにした。
【0075】
反応炉の前端部(前駆物質を入れたアルミナボート)の温度は400℃に維持して、反応炉の後端部(サファイア基板)の温度は1000℃に維持した状態で30分間熱処理し、基板に対して垂直方向性を有するPt単結晶ナノワイヤを製造した。
【0076】
(実施例2)
前記反応炉の前端部(前駆物質)の温度を除いては実施例1と同様な条件でPtナノワイヤを製造して、反応炉の前端部(前駆物質)の温度を、400℃ではなく800℃に維持して、基板に対して水平方向性を有するPt単結晶ナノワイヤを製造した。
【0077】
(実施例3)
反応炉でAgスラグ(Aldrich #373249-4.1G)を利用して、基板に対して水平方向性を有するAg単結晶ナノワイヤを合成した。
【0078】
前記反応炉は、前端部と後端部に区別されて、独立的に加熱体(heating element)及び温度調節装置を備えている。反応炉内の管は、直径1インチ、長さ60cm大きさの石英(Quzrtz)材質からなるものを使用した。
【0079】
反応炉前端部の中央に、Agスラグ(Aldrich #373249-4.1G)4.1gを入れた高純度アルミナ材質のボート状坩堝を位置させて、反応炉後端部の中央には(001)表面を有するSrTiO単結晶基板(0.3cmX0.3cm)を位置させた。
【0080】
アルゴン気体は、反応炉前端部に投入されて反応炉後端部に排気されて、反応炉後端部には、真空ポンプが備えられている。前記真空ポンプを利用して石英管内の圧力を5torrに維持して、MFC(Mass Flow Controller)を利用して100sccmのArが流れるようにした。
【0081】
反応炉前端部(Agスラグを入れたアルミナ坩堝)の温度は、790℃に維持して、反応炉後端部(SrTiO3単結晶基板)の温度は、670℃に維持した状態で、30分間熱処理してAg単結晶ナノワイヤを製造した。
【0082】
図1は、実施例1で製造されたPt単結晶ナノワイヤの走査電子顕微鏡写真である。図1は、Ptナノワイヤが形成された基板を45度傾けて(tilt)観察した写真であって、図1から分かるように、基板とエピタキシャル関係を有し、基板表面に対して垂直に成長したPt単結晶ナノワイヤが製造されることが分かり、平均直径が約100nmで、平均長軸の長さが数〜数十μmである、非常に大きい縦横比を有するPt単結晶ナノワイヤが製造されることが分かる。
【0083】
図2は、実施例2で製造されたPt単結晶ナノワイヤの走査電子顕微鏡写真である。図2から分かるように、基板とエピタキシャル関係を有し、基板表面に対して水平に成長したPt単結晶ナノワイヤが製造されることが分かり、実施例1で製造されたナノワイヤと同様に、平均直径が約100nmで、平均長軸の長さが数〜数十μmである、非常に大きい縦横比を有するPt単結晶ナノワイヤが製造されることが分かる。
【0084】
図3は、実施例1で製造されたPt単結晶ナノワイヤの透過電子顕微鏡暗視野像であり、図4は、実施例1で製造されたPt単結晶ナノワイヤの高倍率透過電子顕微鏡(HRTEM)イメージであって、図4の右側上部に挿入されたイメージは、ナノワイヤの電子回折パターン(SAED; Selected Area Electron Diffraction pattern)である。図3乃至図4から、製造されたPtナノワイヤの長軸方向が[110]方向であり、単一なナノワイヤが、ツイン(twin)を含んだ面欠陥(2-dimensional defect)のない完璧な単結晶体であることが分かり、高結晶性(high crystallinity)を有する単結晶体であることが分かる。
【0085】
図5は、透過電子顕微鏡に付着されたエネルギー分光検出装置(TEM-DES)を利用した検出結果を示したもので、製造されたナノワイヤが純粋なPtナノワイヤであることを確認することができ、X−線回折結果(図6)を通じて、製造されたナノワイヤのX−線回折パターンが純粋なPt(JCPDS card (04-0802))によく符合することを確認することができた。
【0086】
図7は、実施例3を通じて製造されたナノワイヤのX−線回折結果であり、製造されたナノワイヤのX−線回折ピークが面心立方構造のAg(JCPDS 04-0783)と一致することが分かり、面心立方構造の結晶質Agナノワイヤが製造されることが分かる。
【0087】
図8は、実施例3で製造されたAgナノワイヤの熱処理時間による走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscopy)写真であって、図8(a)から分かるように、half-octahedron形状の面取り状のAgシードが形成されて、図8(b)及び図8(d)から分かるように、Agシードが前記基板と平行な方向に側面成長して、図8(c)及び図8(e)のように、長軸の方向が基板表面と平行な水平Agナノワイヤが製造されることが分かる。
【0088】
図8(f)の低倍率走査電子顕微鏡写真から分かるように、前記half-octahedron形状の面取り状のAgシードが基板に対して特定な方向に側面成長して、前記基板表面に対して水平方向性を有するAgナノワイヤが一定な方向性を有することが分かり、図8(a)−図8(b)−図8(c)に成長したAgナノワイヤ及び図8(a)−図8(d)−図8(e)に成長したAgナノワイヤのように、長軸方向が互いに垂直であるAgナノワイヤが製造されることが分かる。
【0089】
前記図8(e)、図8(c)及び図8(f)から分かるように、直径が約100〜400nmで、長さが数μmであるAgナノワイヤが製造されて、製造された多数のナノワイヤが均一な大きさ及び形状を有し、互いに固まることなく基板上に個別的に分離されて製造されて、製造されたナノワイヤが面取り状を有し、面取り面が非常に滑らかで偏平な表面からなることが分かる。
【0090】
図9(a)は、実施例3で製造されたAgナノワイヤを観察した透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)の暗視野像(Dark Field Image)写真であり、図9(b)は、図9(a)において白色四角形で表示されたAgナノワイヤと基板の界面の高倍率透過電子顕微鏡(HRTEM;High Resolution Transmission Electron Microscope)写真であり、図9(b)の右側上部に挿入された図面は、Agナノワイヤの電子回折パターン(SAED;Selected Area Electron Diffraction Pattern)であり、図9(b)の左側下部に挿入された図面は、単結晶基板の電子回折パターンである。
【0091】
図9の断面写真及び図9のAgナノワイヤ電子回折パターン結果を通じて、単一なナノワイヤが単一な結晶体であることが分かり、図7のX−線回折結果と一致するように面心立方構造を有することが分かる。
【0092】
また、図9(a)及び図9(b)を通じて、Agナノワイヤの成長方向(長軸の方向)が[110]方向であることが分かり、ツインを含んだ面欠陥が存在しない純粋な単結晶体であることが分かる。
【0093】
図9(b)の高倍率透過電子顕微鏡の観察結果のように、Agナノワイヤの{100}面が基板と界面をなして、エピタキシャル関係を有することが分かり、図9(a)において基板との界面をなす{100}面と長軸表面との面間角度(54.7°)、図9(b)の電子回折パターンを通じて、Agナノワイヤの長軸方向表面が{111}面族の面から形成されることが分かる。
【0094】
図9の透過電子顕微鏡の結果と図8の走査電子顕微鏡の結果及び面取り面の表面間の角度を通じて、図8(a)の面取り状のAgシードが、{111}面族に属する四つの面から表面が構成されて、{100}面族に属する一つの面が単結晶基板とエピタキシャル関係を有するAgシードが製造され、前記Agシードが[011]方向に側面成長して{111}面族に属する四つの面から形成された表面構造が維持されて、基板に対して水平方向性を有するAgナノワイヤが製造されることが分かる。
【0095】
以上のように、本発明では、特定の事項と、限定された実施例及び図面を参照して説明したが、これらは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたもので、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者なら、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0096】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なあるいは等価的な変形のある全てのものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化貴金属を前駆物質として、前記前駆物質を反応炉の前端部に位置させ、単結晶基板を反応炉の後端に位置させて、一定な圧力下で、前記反応炉の前端部から前記反応炉の後端部に不活性気体が流れる条件で熱処理し、前記単結晶基板上に前記単結晶基板とエピタキシャル関係(epitaxial relation)を有する貴金属ナノワイヤの製造方法であって、前記前駆物質の温度を制御することによって、前記基板表面を基準にした前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が制御されることを特徴とする、貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化貴金属は、塩化貴金属、臭化貴金属、ヨウ化貴金属またはフッ化貴金属であることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記圧力は、0.9乃至1.1atmであることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記不活性気体流量は、200乃至300sccmであることを特徴とする、請求項3に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記基板の温度は、製造対象である貴金属ナノワイヤの貴金属物質の融点(℃)をTmとして、0.4Tm乃至0.95Tmであることを特徴とする、請求項4に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記前駆物質の温度は、前記前駆物質の融点(℃)及び分解点(℃)のうち低い方の温度の0.6倍から0.9倍であり、前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と垂直である垂直貴金属ナノワイヤが形成されることを特徴とする、請求項5に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記前駆物質の温度は、前記前駆物質の融点(melting point(℃))または分解点(decomposition point(℃))の中、低い温度を基準に1.3倍乃至1.6倍の温度であり、前記貴金属ナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と平行である水平貴金属ナノワイヤが形成されることを特徴とする、請求項5に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項8】
前記基板は、製造したい貴金属ナノワイヤの貴金属物質に対してエピタキシャルとなる基板であることを特徴とする、請求項1に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項9】
前記前駆物質は、塩化プラチナム、臭化プラチナム、ヨウ化プラチナムまたはフッ化プラチナムであり、前記貴金属ナノワイヤは、Ptナノワイヤであることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項10】
前記基板の温度は、850乃至1000℃であることを特徴とする、請求項9に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項11】
前記前駆物質は、塩化プラチナムであり、前記前駆物質の温度が400乃至500℃に制御され、Ptナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と垂直である垂直Ptナノワイヤが形成されることを特徴とする、請求項10に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項12】
前記前駆物質は、塩化プラチナムであり、前記前駆物質の温度が800乃至900℃に制御され、Ptナノワイヤの長軸方向が前記基板の表面と平行である水平Ptナノワイヤが形成されることを特徴とする、請求項10に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項13】
前記基板は、c面を表面として有するサファイア単結晶基板であることを特徴とする、請求項9に記載の貴金属ナノワイヤの製造方法。
【請求項14】
無触媒且つ無テンプレート(template)で、単結晶基板の表面とエピタキシャル関係を有し、ナノワイヤの長軸が前記基板表面に対して垂直または水平の関係を有し、前記基板表面に支えなしで立っている(free standing)単結晶体のPtナノワイヤ。
【請求項15】
前記Ptナノワイヤは、ツイン(twin)を含む面欠陥のない単結晶体であることを特徴とする、請求項14に記載のPtナノワイヤ。
【請求項16】
前記Ptナノワイヤの長軸は、[110]方向であることを特徴とする、請求項14に記載のPtナノワイヤ。
【請求項17】
前駆物質であるAgを熱気化させて、気化されたAgが不活性気体により単結晶基板に移送され、前記単結晶基板上に、前記基板とエピタキシャル関係を有し、{001}及び{111}面族からなる面取り状(faceted shape)のAgシードが形成されて、前記Agシードから、ナノワイヤの長軸が前記単結晶基板表面と平行で、ツインを含んだ2次元面欠陥のない単結晶体であるAgナノワイヤが製造されることを特徴とする、Agナノワイヤの製造方法。
【請求項18】
前記前駆物質は、反応炉前端部に位置し、前記単結晶基板は、反応炉後端部に位置して、一定な圧力下で前記反応炉前端部から前記反応炉後端部に前記不活性気体が流れて前記Agシード及び前記Agナノワイヤが製造されて、
前記前駆物質は、780〜800℃に維持されて、前記単結晶基板は、650〜700℃に維持されることを特徴とする、請求項17に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項19】
前記不活性気体は、前記反応炉前端部から前記反応炉後端部に90〜110sccm流れることを特徴とする、請求項18に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項20】
前記圧力は、5〜7torrであることを特徴とする、請求項19に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項21】
前記面取り状のAgシードは、{111}面族に属する四つの面及び{001}面族に属する一つの面からなる五面体であることを特徴とする、請求項18に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項22】
前記Agナノワイヤの長軸は、<110>方向であることを特徴とする、請求項21に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項23】
前記Agナノワイヤは、少なくとも{111}面族に属する二つの面を長軸表面として有し、{001}面族に属する一つの面が前記基板と長軸方向界面(interface)を形成して、前記基板と平行な方向性を有するナノワイヤが製造されることを特徴とする、請求項22に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項24】
前記基板は、Ag{001}面とエピタキシャル関係を有する不導体または半導体単結晶基板であることを特徴とする、請求項21に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項25】
前記基板は、(100)面のSrTiO単結晶であることを特徴とする、請求項18に記載のAgナノワイヤの製造方法。
【請求項26】
ツインを含んだ2次元面欠陥のないツインフリー(twin free)単結晶体であり、面取り状(faceted shape)のAgナノワイヤであって、
{111}面族に属する二つの面をナノワイヤの長軸表面として有し、
{001}面族に属する一つの面が単結晶基板と長軸方向に界面(interface)を形成して、前記基板とナノワイヤの長軸が平行な方向性を有することを特徴とする、Agナノワイヤ。
【請求項27】
前記Agナノワイヤの長軸は、<110>方向であることを特徴とする、請求項26に記載のAgナノワイヤ。
【請求項28】
前記Agナノワイヤの短軸断面は、三角形状であることを特徴とする、請求項26に記載のAgナノワイヤ。
【請求項29】
前記基板は、(100)面のSrTiO単結晶であることを特徴とする、請求項26に記載のAgナノワイヤ。
【請求項30】
前記基板とナノワイヤの長軸とが平行な方向性を有する二つ以上のAgナノワイヤは、Agナノワイヤの長軸方向が互いに直交することを特徴とする、請求項29に記載のAgナノワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255093(P2010−255093A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−257894(P2009−257894)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(596071752)コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (60)
【Fターム(参考)】