説明

単結晶製造方法及び該単結晶製造方法を用いた基板製造方法、並びに該単結晶製造方法に用いられる引下げ装置

【課題】C軸が表面に垂直に配向した小型単結晶基板の、効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】C軸が矢印Cの方向に配向する第1のシード2を準備し(ステップ1)、続いて引下げ法を用い、第1のシード2におけるC軸と平行な平面と原材料融液の漏出部とを接触させ、接触部分より結晶の成長を開始する(ステップ2)。C軸とは異なるh方向に第1のシード2を引下げることにより、結晶の延在方向とは異なる方向にC軸が配向した円筒状の単結晶が得られる(ステップ3)。続いて、前記単結晶を第2のシード4とし、C軸の配向方向と引下げ方向とが直交する配向状態で、漏出孔から漏出する原材料融液と接触させた後、シード4を引下げることによって、第2のシード4と同じ方向にC軸配向する単結晶5が成長を開始し、単結晶6が5本同時に育成される(ステップ4,5)。これを切り出すことによって、5本の棒状の単結晶母材が得られる(ステップ6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶を製造する方法、及び該方法により得られた単結晶を用いて所定の特性を有する基板を製造する基板製造方法に関する。より詳細には、本発明は、例えばサファイヤのような単結晶であって、所謂C軸が引下げ方向と異なる方向に配向する単結晶の引下げ方法、及び該単結晶を用いて基板の厚み方向にC軸配向した単結晶基板を製造する方法に関する。また、この様なC軸配向の単結晶を複数本同時に育成する際に好適な引下げ装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明に用いられる単結晶基板には、C軸が基板面に垂直とされたサファイヤ等からなるものが好適とされている。このような基板作成のために、公知の引上げ法を用いて母材の単結晶を製造しようとした場合、結晶方位のC軸方向に沿った引上げを行い、インゴットをまず作成している。得られたインゴットは輪切りにされ、ディスク状の基板となるように各種処理を施した後、これを切断して個片化することで、個々の基板を得ることとしている。ここで、基板作成の際の母材となる所謂サファイヤ基板は高価であると共に大口径化することが困難とされている。このため、個片化、ウエハ切り出しの際に破棄される部分を抑えることが難しく、該破棄部分の発生により生産性が悪化することが問題となっている。なお、ここで述べるC軸は、所謂垂直方向結晶軸をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347789号公報
【特許文献2】特開2003−095783号公報
【特許文献3】特開2008−201644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な母材の作成方法に対して、近年、例えば特許文献1に例示される所謂引下げ法と呼ばれる単結晶の製造方法が検討されている。当該方法によれば、口径は小さいが品質的に優れた単結晶が短時間で製造可能であり、例えば特許文献2に述べられるように、単結晶の引下げ軸と垂直な断面の形状をある程度制御することも可能である。従って、この引下げ方法によりウエハ形状以外の好適な形状の母材を得ることが可能となれば、得られた単結晶を引下げ軸に垂直な平面にて切断するのみで、所望の小型基板を得ることも可能と考えられる。この様な製造方法によれば、破棄する部分を殆ど生じさせることなく、所望の小型基板を得ることが可能となると考えられる。
【0005】
しかしながら、小型基板のC軸と垂直な表面に対して予め平滑化等の処理を施す必要があるため、引下げ方法を利用する単結晶の製造においては、C軸を引下げ方向と垂直な方向に設定できなければ、単純な切断によって小型基板を得ることはできない。このため、引下げ方法におけるC軸の制御方法を確立する必要がある。特許文献3には、引上げ方法における結晶軸の制御方法が示されているが、当該制御方法が結晶の成長速度の早い引下げ方法においてもそのまま適用できるか否かについては検討を要する。また、実際に生産性を考慮した場合、単一ウエハから多数の小型基板が同時に得られる従来技術に対して、引下げ方法による場合には母材となる単結晶のサイズは小さい。このため、複数の単結晶を同時に製造するといった生産性の向上も同時に求められる。C軸の制御はこの生産性を高めた方法であっても、好適に為される必要がある。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、引下げ方向とは異なる方向にC軸を有する単結晶を得た後に当該単結晶を引下げ軸方向に対して垂直な面にて切断することによって小型基板を得る基板の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、当該製造方法において所望の単結晶を得るために好適な単結晶製造方法となる引下げ方法、及び当該単結晶製造方法に好適な引下げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る単結晶の製造方法は、引下げ方向とは異なる所定の方向にC軸が配向する単結晶を製造する引下げ方法であって、底部に原材料融液の漏出孔を有する坩堝の内部にて原材料を溶解して原材料融液とし、漏出孔から漏出する原材料融液に対して原材料融液が結晶化する際の結晶方位を定めるシードを接触させ、シードを引下げ方向に引下げることによりシードを基点として単結晶を作成する、工程を有し、シードは、C軸の配向方向が引下げ方向とは異なる方向となる配向状態に支持され、配向状態にて原材料融液と接触され、引下げ方向に対するC軸の配向状態が維持された状態にて引下げが為されることを特徴としている。
【0008】
なお、上述した製造方法において、シードは、引下げ方向と同じ方向に延在する軸心を有する筒形状を有し、原材料融液は前記シードにおける筒形状の一方の端面にて接触することが好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る単結晶基板を製造する方法は、表面に対して所定の角度を有してC軸が配向する単結晶基板を製造する方法であって、上述した引下げ方法によって単結晶を製造する単結晶製造工程と、引下げ方向に対して垂直な或いはC軸と所定の傾きを有して交差する平面にて単結晶を切断する切断工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る引下げ装置は、所定の引下げ軸の延在方向とは異なる方向にC軸が配向する単結晶を製造する引下げ装置であって、原材料を保持可能であって、所定の引下げ軸を中心として配置される複数の漏出孔を底部に有する坩堝と、坩堝の周囲に配置されて坩堝内部の原材料を加熱、溶融して原材料融液を得るための電力が供給される加熱機構と、坩堝と同心であって複数の漏出孔の近傍に配置されて漏出孔から漏出する原材料融液の温度低下を抑制するアフターヒータと、複数の漏出孔と対向する一方の端面を有して所定の引下げ軸を軸心とするように配置され、漏出孔から漏出する原材料融液と接触して原材料融液が結晶化する際の結晶方位を定める、筒形状のシードと、シードを他方の端面の側から支持すると共に所定の引下げ軸に沿ってシードを引下げるシード保持具と、を有し、シード保持具は、筒形状の内部空間に連通可能であって、筒形状の他方の端面の側から一方の端面の側に流れる気体を供給可能な通気経路を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型単結晶基板作成において破棄部分を抑制することと、且つ製造工程数を大幅に削減することとによって、従来方に比較して生産性を高めることが可能となる。従って、サファイヤ等のLED照明用の基板を安価に供給することが可能となる。また、本発明によれば、C軸が所定の方向に配向した、高品質且つ均質性の高い単結晶を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であって、所定の配向状態を有する棒状単結晶を複数本同時に得る単結晶の製造方法を模式化して示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であって、引下げ方法にて得られた棒状単結晶から所望の小型単結晶基板を製造する方法を模式化して示す図である。
【図3】図3Aは、従来の小型単結晶基板を製造する際の工程を示す図である。図3Bは、本発明の一実施形態である小型単結晶基板の製造方法における工程を示す図である。
【図4】図1に示す棒状単結晶を製造する際の引下げ装置の主要部を模式化して示す図である。
【図5】図4に示す主要部を有する引下げ装置の概要を示す模式図である。
【図6A】中実シードを用いた場合のアフターヒータ内での雰囲気温度の分布を示す図である。
【図6B】円筒状シードを用いた場合のアフターヒータ内での雰囲気温度の分布を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る引下げ装置におけるシード保持具を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る単結晶の製造方法である引下げ方法について、各工程を各々模式化して示している。本工程においては、まずステップ1に示すようにC軸が図中矢印Cの方向に配向する第1のシード2を準備する。続いて、引下げ法を用い、第1のシード2におけるC軸と平行な平面と原材料融液の漏出部とを接触させ、接触部分より結晶の成長を開始させる。この場合、第1のシード2より成長する単結晶3は、C軸が当該第1のシード2のC軸と同一の方向となるように(図中の矢印Cの方向に)配向する。この状態からC軸とは異なる方向、本形態ではC軸に対して直交するh方向に第1のシード2を引下げる。これにより、ステップ3に示すように結晶の延在方向とは異なる方向にC軸が配向した単結晶が得られる。本形態ではこの単結晶を第2のシード4とし、当該第2のシード4を用いて以降の工程を実行する。なお、これら第1のシード2及び第2のシード4は、原材料融液と接触した状態において、該原材料融液が結晶化する際の結晶方位を定め、単結晶の生成、育成の際の結晶成長の基点となる。
【0014】
なお、本実施形態では、後述する理由より第2のシード4は円筒形状を有しており、引下げ方向に延在する軸心を有している。第2のシード4は、引下げ時に原材料融液を供給する坩堝底面の漏出孔の形状を環状とする、或いは第1のシード2における原材料融液との接触端面を環状とすることにより得られる。また、原材料融液と該接触端面との濡れ性が良い場合には、この濡れ性を利用して、原材料融液と第1のシード2の接触端面との接触部分において該原材料融液を展延させ、環状に濡れ広がらせ、その後引下げの操作を行うこととしても良い。また、歩留まり、製造方法等に難点があるが、一般的な機械加工によってこれを得ることとしても良い。なお、ここで述べる濡れ性とは、第1のシード2を構成する材料によって平坦面を構成し、該平坦面上に原材料融液を滴下させた場合の滴が構成する接触角によって判断される材料特性をいう。該接触角が大きくなるに従って濡れ性は悪くなり、一般的に該接触角が90°より大きい場合に濡れ性が悪いとされ、小さい場合に濡れ性が良いとされる。
【0015】
次に、得られた円筒状の第2のシード4を用い、実際に目的とする小型単結晶基板の母材となる単結晶の引下げを行う。当該引下げ操作において、後述する引下げ軸を中心として、坩堝の底面には複数の四角形の漏出孔が設けられている。なお、本形態では漏出孔は5つとし、同一円周上に配置されると共に、各四角形は特定の一辺が図中の矢印Cに向かうように配置されている。第2のシード4は、その軸心がアフターヒータ13或いは引下げ軸と一致するように配置され、C軸の配向方向(図中矢印Cにて示される方向)と引下げ方向とが直交する配向状態を維持した状態で、一方の端面4aを全ての漏出孔と対向させて、これら漏出孔から漏出する原材料融液と接触させられる。これにより、ステップ4に示すように、各々の原材料融液と一方の端面4aとの接触点より第2のシード4と同じ方向にC軸配向する単結晶5が成長を開始する。続いて、ステップ5に示すように、この配向状態を維持したまま第2のシード4を所定の引下げ軸に沿って(所定の引下げ方向に)引下げることによって、所望の単結晶6が5本同時に育成される。その後、第2のシード4及び原材料融液の漏出部分から適当な距離を開けて単結晶6を切り出すことによって、5本の棒状の単結晶の母材が得られる(ステップ6)。
【0016】
なお、本実施形態では、C軸が引下げ方向(棒状の単結晶の延在方向)と直交する単結晶6を得ることを目的とすることから、ステップ1からステップ3における工程にて、軸方向がC軸に直交する円筒形状の第2のシード4を製造している。しかし、最終的に得ようとする単結晶基板におけるC軸の配向方向に応じて、第1のシード4のC軸の配向方向を、ステップ4以降の工程での引下げ方向とは異なる種々の方向としても良い。即ち、C軸の配向方向が引下げ方向とは異なる所定の方向となるようなシードの配向状態とし、その配向状態を維持して原材料融液とシードとを接触させ、更にその配向状態を維持したまま引下げの操作を実施すれば良い。また、本実施形態では、生産効率の観点から複数の単結晶6を同時に得ることを目的として、第2のシード4を円筒形状としている。しかし、単一の単結晶6を得ようとする場合、原材料融液との接触部分が平坦面からなる第2のシードを用いることとしても良い。また、第2のシード4は円筒形状であるが、後述する条件を満たせば断面多角形の筒状の形状としても良い。
【0017】
次に、以上の工程から得られた母材である単結晶6から、目的とする小型単結晶基板を製造する工程について説明する。図2は、図1と同様にこれら工程を模式化して示すものである。また、図中に示す矢印CはC軸の配向方向を示している。ステップ7では単結晶6の外周部分を研削、研磨し、C軸に対して所定の平滑面を有し且つ所定の幅、厚さ及び長さを有した母材6’を得るように各々加工が施される。ステップ8では、基板として用いる場合の配線7等を作り込むために、所定の面に対する例えば金属膜等の成膜、パターニング、及びエッチング等の処理が行われる。その後、ステップ9としてスライサー8等によりこの母材6’を所定のサイズに切断することにより、目的とする小型単結晶基板10が得られる。
【0018】
なお、本実施形態では、C軸が基板表面に対して垂直に配向する小型単結晶基板10を得る場合を示している。しかし、本発明は当該態様に限定されず、C軸が基板表面に対して所定の角度を有して配向する場合についても好適である。この場合、スライサー8等による母材6’の切断は、母材6’の長さ方向に垂直な平面、或いはC軸に対して所定の傾きを有して交差する平面にて為されることが好ましい。これにより、基板表面に対して様々な方向にC軸が配向する高品位な小型単結晶基板を、効率よく製造することが可能となる。
【0019】
次に本発明の効果に関して、従来の小型単結晶基板の製造方法と、前述した製造方法とを比較して説明する。図3は製造方法を一連の工程として示す図であって、図3Aが従来法、図3Bが上述した形態を各々示している。工程は図中左から順に右に向かって進行し、各々対応する工程が上下で並ぶように配置されている。従来方においては、まず引上げ法であるCz法により単結晶の育成を行い、得られた単結晶を結晶方位に応じてインゴットに切り出し、該インゴットの外周を研磨した後に、ワイヤーソー等によってウエハ形状に切断する。更に該ウエハの面研磨とベリングとを行った後に、配線等を形成するための成膜、パターニング、及びエッチングといった処理をウエハに施す。以上の工程を経たウエハをX−Y方向に切断することによって小型単結晶基板(チップ)が得られる。該小型単結晶基板は、更に検査、測定等の製品検査を経た後に梱包される。
【0020】
これに対し、本発明によれば、引下げ法による結晶育成によって棒状単結晶が得られた後、これを所定の長さに裁断し、上述した研磨を施す。研磨後の棒状単結晶に対しては、そのまま配線等を形成するための成膜、パターニング、及びエッチングといった処理を施すことが可能である。従って、従来法と比較してウエハを得るまでの各種工程を削減することができる。また、単純にX方向のみの母材の裁断にて所望の小型単結晶基板が得られることから、裁断の工程の簡略化及び裁断に伴う廃棄部分の削減といった効果も得られる。なお、引下げ方法において単一の棒状単結晶を製造する場合には、該棒状単結晶を一本得るために要する時間が掛かることから生産性が低下すると考えられる。しかし、上述した実施形態の如く複数の棒状単結晶を同時に得る構成とすることにより、該棒状単結晶を一本製造するための所謂タクトタイムを短縮することができ、従来法にも勝る生産性を得ることが可能となる。また、研磨による除去部分、及び切断による廃棄部分等も、工程に削減に伴って抑制することが可能となり、この点においても生産効率を向上させることが可能となる。
【0021】
次に、本発明の一態様に係る製造方法である引下げ方法を実施するために好適な引下げ装置について説明する。図4は、当該引下げ装置の主要部であって、該装置の結晶引下げ方向に沿った断面構成を示している。該引下げ装置1は、主たる構成として、坩堝11、アフターヒータ13、加熱チューブ15、ワークコイル17、チューブステージ19、坩堝ステージ21、インナーチューブ23、アウターチューブ25、第一の上下調整機構27、及び第二の上下調整機構29を有している。引下げ装置1は、高周波誘導によって材料の加熱、溶融を行っている。高周波電力は、内部に冷却用の水等を導通可能な金属製のチューブを所定の内径を有するコイル状に形成したワークコイル17を介して、加熱源(坩堝11、加熱チューブ15等)に伝達される。原材料が保持され且つ溶融される坩堝11は、底面(下端面)が閉止された円筒形状を有しており、カーボン或いは高融点金属(例えば、Re、Ir、W、Ta、Mo、Pt、或いはこれらの合金)から構成される。また、底部には、後述する所定の引下げ軸を中心として複数の漏出孔が配置される。坩堝11は、ワークコイル17と同軸であって且つワークコイル17の長手方向における中央部分に配置される。
【0022】
所定の引下げ方向は坩堝11等の中心軸の延在方向と一致している。坩堝11の下方には、坩堝11の下端と当接して該坩堝11を支持する、円筒形状のアフターヒータ13が配置される。アフターヒータ13は、坩堝と同様の材料より構成されており、坩堝11と同軸であって、漏出孔の近傍に配置されて該漏出孔から漏出する原材料融液の温度低下を抑制する。具体的には、原材料加熱時において、該アフターヒータ13も高周波誘導によって発熱し、坩堝11の下端より漏洩する原材料を加熱している。また、アフターヒータ13の長さは、ワークコイル17の長手方向において中央部に配置される坩堝11と該アフターヒータ13とを当接させて配置した際に、ワークコイル17における有効加熱領域に該アフターヒータ13が収容されるように設定されている。該アフターヒータ13の設置により引下げ方向における均熱領域が拡大可能となり、結晶育成の条件をより広範なものとすることが可能となる。また、本実施形態において、アフターヒータ13は、その下端において、円環状の坩堝ステージ21の上面によって支持されている。坩堝ステージ21は、セラミックス、石英等、加熱に用いる高周波電力に対して絶縁性を有する材料から構成されている。
【0023】
坩堝ステージ21は、下面において、該ステージ21と同様の材料からなる円筒状のインナーチューブ23の上端部によって支持されている。これら坩堝11、アフターヒータ13、坩堝ステージ21及びインナーチューブ23は、同軸となるように配置されており、結晶の引下げ操作は該軸に沿って行われる。また、インナーチューブ23の下端部は第二の上下調整機構29と連結されており、該調整機構29によって軸方向に上下動可能とされている。本装置において、高周波誘導によって発熱する主たる構成として加熱チューブ15が存在する。加熱チューブ15は、坩堝11の外径よりも大きな内径を有し且つワークコイル17の内径よりも小さな外径を有する円筒形状からなり、高周波電力を導通可能なカーボン或いは高融点金属(例えば、Re、Ir、W、Ta、Mo、Pt、或いはこれらの合金)から構成されている。該加熱チューブ15は、坩堝11を内部側に収容し、且つ外周側にワークコイル17が存在するようにこれらと同心関係となるように配置される。また、加熱チューブ15の長さは、ワークコイル17の長手方向における有効加熱領域から該チューブ15が僅かにはみ出す程度に設定されている。
【0024】
加熱チューブ15は、下端部において円環状のチューブステージ19の上面と当接し、該チューブステージ19によって支持される。チューブステージ19の円環内径は坩堝ステージ21の外径よりも大きく設定されており、これらステージが独立して軸方向に移動する際に相互に干渉することを防止している。チューブステージ19は、セラミックス、石英等、加熱に用いる高周波電力に対して絶縁性を有する材料から構成されている。また、チューブステージ19は、下面において、該ステージ19と同様の材料からなる円筒状のアウターチューブ25の上端部によって支持されている。これら加熱チューブ15、チューブステージ19及びアウターチューブ25は、坩堝11等と同軸となるように配置されており、内部側において、坩堝11、アフターヒータ13、坩堝ステージ21及びインナーチューブ23を収容している。また、アウターチューブ25の下端部は第一の上下調整機構27と連結されており、該調整機構27によって軸方向に上下動可能とされている。
【0025】
なお、加熱チューブ15を介して坩堝11及びアフターヒータ13に伝達される高周波電力も存在し、本構成においては坩堝11及びアフターヒータ13自体も発熱する。これら発熱源と加熱チューブ15により得られた均熱領域とを好適に相関させることにより、引下げ方向に長く且つ引下げ方向と垂直な平面において広範な均熱領域を得ることが可能となる。また、ワークコイル17より放射される高周波電力を効率的に熱に変換することが可能となり、原材料をより高い温度まで加熱することが可能となる。本装置においては、加熱チューブ15と、坩堝11及びアフターヒータ13とからなる構成とを、各々独立して引下げ軸方向に移動可能としている。結晶育成の条件を考慮した場合、例えば、坩堝11の孔から引下げ方向に形成される均熱領域の長さを適宜改変する必要が生じることが考えられる。本装置においては、第一の上下調整機構27と第二の上下調整機構29の少なくともいずれかを駆動させることによって、該均熱領域の長さ、より正確には均熱領域に対する結晶育成部位の配置を、簡易且つ迅速に改変することが可能となる。
【0026】
なお、上述した実施形態において、シードを保持する治具、該治具を引下げ方向に沿って上下動させる構成、坩堝孔より漏洩する原材料融液の固液境界面を観察するのぞき窓等の構成を省略している。しかし、上述の実施形態においては、単に説明の容易化のためにこれら構成が省略されたものであり、実際にはこれら構成要素が配置されている。また、得ようとする結晶によっては、雰囲気中の酸素分圧の低減、或いは特定のガスからなる雰囲気環境の形成等が必要な場合があり、上述した各構成は、内部空間の減圧、ガス置換等が可能な、密閉された空間内部に配置されることが好ましい。また、本実施形態において各構成は円筒状或いは円環状の形状からなることとしているが、本発明はこれら形状に限定されず、前述したように、引下げ方向に垂直な断面(端面)の形状を得ようとするファイバー状単結晶の外形状に応じて種々に改変可能である。この場合、各々の構成が引下げ方向と平行な所定の軸に対して全て同心となるように配置された際に、各々の構成間に形成される間隔が略一定に保たれれば良い。また、インナーチューブ及びアウターチューブは円筒形状の部材であるとしているが、これらを単なる棒状の部材とし、坩堝ステージ及びチューブステージをこれら棒状の部材によって支持することとしても良い。
【0027】
また、加熱チューブは一体のみ用いることとしているが、各々内外径の異なる複数のチューブを入れ子式に重ね、これらを一体として用いることとしても良い。また、この場合各々のチューブの長さを異ならせ、これにより均熱領域を変化させても良い。この場合、同一径であってワークコイルに対して長さの短いチューブを複数用意し、これらをワークコイルの長手方向において間隔をあけて配置する構成としても良い。これらチューブ構成の改変により、均熱領域の拡大、加熱効率の改善、特定部位の高温加熱化等、種々の効果の促進を選択的に進めることも可能となる。また、アフターヒータを無くし、加熱チューブに対してアフターヒータの働きを担わせることとしても良い。
【0028】
また、本実施形態においては、第一及び第二の上下調整機構を用いることとしている。しかしながら、本発明は当該形態に限定されない。具体的には、何れか一方の調整機構のみを配することによっても、均熱領域の調整効果を得ることは可能である。
【0029】
例えば、ワークコイルの長さを図示した形状より下方に延長し、それ以上に加熱チューブの長さを下方に延長しても良い。これにより加熱チューブにアフターヒータの作用を担わせることが可能となり、アフターヒータを除去することが可能となる。本発明において、坩堝11は、内部に収容する原材料を溶融する際の温度に対して耐性を有する高融点材料であって、ワークコイル17から放出される高周波電力によって発熱可能となるような該高周波電力を導通可能な材料から構成されることを要する。従って、上述したように高融点金属から構成されることが好ましいが、例えばセラミックス表面、或いは内部に高周波電力が導通可能なるような材料の添加、層形成等を施してこれを形成しても良い。従って、該坩堝は高周波電力を導通可能な高融点材料から構成されるとして定義されることが好ましい。また、同様の理由から、加熱チューブ15、アフターヒータ13についても高周波電力を導通可能な高融点材料から構成されるとして定義されることが好ましい。
【0030】
また、上述したように、各々の構成が円筒である必要がないことから、各々の構成は筒状として定義されることが好ましい。また、形状が円筒でなくなった場合、結晶引下げ方向である所定の軸と各々の構成の中心軸を幾何学的に一致させることが好ましいが、実際の各構成は明確な中心軸を得ることが困難となる場合も考えられ、該中心軸と一致させられるべき各構成の軸は、略中心軸として把握されることが好ましい。また、アフターヒータには結晶育成における固液境界面を観察するのぞき穴等を有する必要があり、該のぞき穴の形成条件によっては正確な意味での筒形状とは異なる可能性もある。従って、アフターヒータの形状は略筒状として把握されることが好ましい。また、第一の上下調整機構及び第二の上下調整機構は、坩堝ステージとチューブステージとを所定の軸方向において各々を相対的に移動可能であれば良い。従って、これら構成は、一体として坩堝ステージとチューブステージとを相対移動させる調整機構として把握されることが好ましい。
【0031】
次に、本発明を具現化した引下げ装置について図面を参照して述べる。なお、先の実施形態及び装置構成例において述べた構成と同一の作用効果を呈する構成については同一の参照符号を用いることとして、詳細な説明についてはこれを省略することとする。図5は、本実施例に係る引下げ装置を正面から見た場合の構成を示す部分的な断面図を含む正面図である。上述した装置構成例と同様、当該引下げ装置1は、結晶の引下げ軸を軸心として、ワークコイル17、加熱チューブ15、坩堝11、アフターヒータ13、チューブステージ19、坩堝ステージ21、アウターチューブ25及びインナーチューブ23を有している。アウターチューブ25及びインナーチューブ23は、各々アウターチューブ支持台35及びインナーチューブ支持台37によって各々支持されている。これら構成は、真空槽43の内部に全て配置されている。また、坩堝11の軸方向下方には、同一の軸心に沿って駆動可能なシード保持具39と、該シード保持具39を駆動可能に支持する不図示の引下げ機構部が配置される。シード保持具39は一方の端面にて結晶を育成するシードについて他方の端面側からこれを支持し、所定の引下げ軸に沿ってシードを引下げる。
【0032】
真空槽43は、上下面各々が楕円形を短軸方向に切断して得られる形状を有した略柱状の槽からなり、平面となる側面は開口面43aとされている。開口面43aには不図示のドアが開閉自在に取り付けられており、開口面43aの外周部分と不図示のドアとの当接部分に配置される不図示のシール部材によって該真空槽43内部の密閉性が保たれている。真空槽43は、その底面において鉛直方向に略延在する小径のベローズ43bの上面と連結されている。また、ベローズ43bは下端部において不図示のXYテーブルの表面に密着固定されており、真空槽43、ドア、ベローズ43b及びXYテーブルの上面により真空空間が形成される。該真空空間は不図示の真空排気系と接続されており、該排気系によって当該空間内部の排気を行い、当該空間の減圧、及び圧力制御が行われる。
【0033】
シード保持具39は、ベローズ43b内部を貫通するように配置され、その下端部がXYテーブルの上面に固定されている。XYテーブルは、シード保持具39を水平面内において直交するX、Yの2軸方向に駆動する。XYテーブルは引下げ機構により鉛直方向に上下動可能に支持されており、シード保持具39は所定の速度にて鉛直方向下方に駆動される。ワークコイル17は、不図示のシール部材が挿嵌された真空槽43に設けられた導入穴43cを介して、真空槽外部の不図示の高周波発振装置及びワークコイル用上下調節機構45に接続されている。該上下調整機構45はワークコイル17を軸方向に駆動し、ワークコイル17と坩堝11との位置関係の調節及び真空槽43内部におけるワークコイル17配置の調節を行う。このワークコイル用上下調節機構45は、公知のモータ、ボールねじ、ボールねじ軸、リニアガイド等から構成されているが、該駆動装置は本発明の主たる構成ではないことからここでの説明は省略する。
【0034】
真空槽43は、坩堝5の下方に形成される溶融材料と結晶との固液境界面を異なる方向から観察可能とする不図示ののぞき窓も更に有している。のぞき窓の外部には、撮影光軸が該のぞき窓を介して上述した固液境界面の略中心部に至る撮像装置が配置されていることが好ましい。該固液境界面はワークコイル17、加熱チューブ15及びアフターヒータ13に囲まれる領域に存在する。このため、加熱チューブ17及びアフターヒータ13には、その側面に対して、該固液境界面をのぞき窓から観察可能となるように不図示の貫通穴が設けられている。アウターチューブ支持台35は、不図示のシール部材が挿嵌された真空槽43に設けられた第二の導入穴43dを介して、真空槽外部に配置された第一の上下調整機構27に接続されている。該上下調整機構27は、上述したように加熱チューブ15を軸方向に駆動し、ワークコイル17と加熱チューブ15との位置関係の調節及び加熱チューブ15と坩堝11との位置関係の調節を行う。この第一の上下調整機構27は、公知のモータ、ボールねじ、ボールねじ軸、リニアガイド等から構成されているが、該駆動装置は本発明の主たる構成ではないことからここでの説明は省略する。
【0035】
インナーチューブ支持台37は、不図示のシール部材が挿嵌された真空槽43に設けられた第三の導入穴43eを介して、真空槽外部に配置された第二の上下調整機構29に接続されている。該上下調整機構29は、上述したように坩堝11及びアフターヒータ13を軸方向に駆動し、ワークコイル17と坩堝11との位置関係の調節及び加熱チューブ15と坩堝11との位置関係の調節を行う。この第二の上下調整機構29は、公知のモータ、ボールねじ、ボールねじ軸、リニアガイド等から構成されているが、該駆動装置は本発明の主たる構成ではないことからここでの説明は省略する。真空槽43には不図示のガス供給系が接続されており、当該ガス供給系を介して、結晶成長時に求められる雰囲気ガスの真空空間への導入が図られる。また、ガス供給系からのガス供給量を制御することにより、結晶成長時の圧力を制御する。また、真空槽43は前述したように不図示の真空排気系に接続されるが、該真空排気系は実際の結晶成長に必要となる引下げ速度、操作圧力、到達真空度等に応じて、適宜変更されることが望ましい。また、真空槽43の形状は、坩堝、種結晶、耐火物等の交換、メンテナンス等を行うための作業空間を確保する観点から、側面が最も大きく解放可能となる形状としているが、本発明に係る真空槽の形状はこれに限定されず、加熱条件、作業性、生産性等の観点から適宜変更されることが望ましい。
【0036】
本発明においては、複数の棒状単結晶を同時に得ることを目的として、前述したように筒状の第2のシード4を用いている。当該第2のシード4を用いる理由、及び当該第2のシード4用のシード保持具39について以下に述べる。図6Aは、所謂中実円柱形状のシード4’を用いた場合であって、図中上より順に、アフターヒータ13をシード4’の軸方向坩堝側から見た場合の軸に垂直な平面内での温度分布、軸に沿って切断した場合の温度分布、更にシードの軸方向断面を示している。曲線T1は水平位置に応じた温度を表し、図中上向きが正の温度方向を示す。実際の温度はT1に示される分布を示し、図中領域Mが所望温度の均熱領域、LはMより低い領域を示す。同図によれば、シードの中央部分に対応する領域に温度の低い領域が発生している。また、覗き穴13aが配置される部分からアフターヒータ13の内部から外部に向けて高温の気体の流れが発生することからこの部分の温度が非常に高くなっている。
【0037】
図6Bは図6Aと同様の様式にて本発明で用いる筒状シード(第2のシード4)の場合を示している。曲線T2は前述したT1と同じ様式にて温度分布を示す。本形態の場合、温度分布はT2となり、中実シード4’の場合と比較して中央部の温度が高められ、均熱領域Mが拡大している。また、均熱領域M内部での温度変化も抑制されている。これは、シードの中央部を軸方向に貫通する貫通孔4b内部において、上方に吹き上がる熱風が発生し、結果として中央部分を加熱する作用が生じることによると考えられる。この均熱領域において単結晶の育成を実施することにより、均質性に優れた単結晶を安定的に育成することが可能となる。上述した実施形態では、以上の結果を反映させ、筒状の第2のシード4を用いることで、円環状の均熱領域において、複数の棒状単結晶を好適に得ることとしている。
【0038】
なお、図6Bの説明において述べたように、均熱領域Mを得る上で、筒状のシードにおいては軸上貫通孔4bを通り抜ける熱風の確保が重要となる。本発明では、この様な筒状シードの効果をより得やすいシード保持具39を用いることとしている。図7に、このシード保持具39と該シード保持具39に保持された第2のシード4とを、中心軸に添って切断した状態を模式的に示す。なお、該シード保持具39の実際のシード保持については、クランプ、ネジ止め等、公知の種々の方法によって為される。本発明の一実施形態に係るシード保持具39は、シード保持具39の外部から、シード保持部39の内部を通り、シードの保持部分39aに至る通気経路39bを有している。該通気経路39bは、シード保持具39にて筒形状の第2のシード4を保持した際に該筒形状の内部空間(軸上貫通孔4b)に連通可能となる。この通気経路39bと内部空間4bとの連通により、該内部空間4bにおけるシードの支持側端部からシードの単結晶育成端部に至る気体の流れが生成される。
【0039】
以上述べたようなシード保持具39を有する単結晶の製造方法、即ち引下げ装置を用いることによって、複数の棒状単結晶を同時に育成、製造することが可能となる。従って、上述した小型単結晶基板の製造方法において、生産効率を向上させ、従来の引上げ方法を用いた小型単結晶基板の製造方法に対して生産性の面でも優位性を持つことが可能となる。なお、上述した実施形態では、該通気経路39bは引下げ軸に対して垂直な方向から形成され、該引下げ軸上にて当該軸方向に向きを変える様式としている。しかしながら、本発明の態様はこれに限定されず。例えばシード保持具39の外周に溝を形成する等、軸上貫通孔4bに対して該貫通孔4bの外部から気体が流入可能な経路を確保できれば良い。また、第2のシード4は円筒形状としているが、上述した均熱領域内に複数の単結晶の育成点が配置可能であれば断面多角形状の筒形状としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、サファイヤ等からなる小型単結晶基板の製造方法に好適である。しかし、本発明の適用対象はこれに限定されず、特定の配向性を有する小型基板を製造する場合に適用可能であり、大口径のウエハの製造が困難な材料を用いる場合に適用することで格別の効果が得られる。また。本発明の一実施形態に係る単結晶の引下げ装置にあっては、欠陥の少ない高品位な、例えばシリコン、ニオブ酸リチュウム(LN)、タンタル酸リチュウム(LT)、イットリウム−アルミニュウムガーネット(YAG)、サファイヤ、共晶体、シンチレーション用結晶、ターフェノールD等のファイバー状の単結晶材料を複数同時に製造する際に適用可能である。より詳細には、FZ法、ブリッジマン法、CZ法等では製造が困難であった、エレクトロニクス或いはオプトエレクトロニクス分野等で用いられる機能性材料として、或いは高温環境下等で用いられる構造材料としての繊維状、円柱状、角柱状、板状、チューブ状等に形状制御された複数の結晶を製造する装置として使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:引下げ装置、 2:第1のシード、 3、5:単結晶、 4:第2のシード、 4a:一方の端面、 4b:貫通孔(内部空間)、6:母材、 7:配線、 8:スライサー、 11:坩堝、 13:アフターヒータ、 15:加熱チューブ、 17:ワークコイル、 19:チューブステージ、 21:坩堝ステージ、 23:インナーチューブ、 25:アウターチューブ、 27:第一の上下調整機構、 29:第二の上下調整機構、 35:アウターチューブ支持台、 37:インナーチューブ支持台、 39:シード保持具、 39a:通気経路、 43:真空槽、 45:ワークコイル用上下調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引下げ方向とは異なる所定の方向にC軸が配向する単結晶を製造する引下げ方法であって、
底部に原材料融液の漏出孔を有する坩堝の内部にて原材料を溶解して前記原材料融液とし、
前記漏出孔から漏出する前記原材料融液に対して前記原材料融液が結晶化する際の結晶方位を定めるシードを接触させ、
前記シードを前記引下げ方向に引下げることにより前記シードを基点として単結晶を作成する、工程を有し、
前記シードは、C軸の配向方向が前記引下げ方向とは異なる方向となる配向状態に支持され、前記配向状態にて前記原材料融液と接触され、前記引下げ方向に対する前記C軸の配向状態が維持された状態にて前記引下げが為されることを特徴とする単結晶の引下げ方法。
【請求項2】
前記シードは、前記引下げ方向と同じ方向に延在する軸心を有する筒形状を有し、
前記原材料融液は前記シードにおける前記筒形状の一方の端面にて接触することを特徴とする請求項1に記載の単結晶の引下げ方法。
【請求項3】
表面に対して所定の角度を有して前記C軸が配向する単結晶基板を製造する方法であって、
請求項1或いは2の何れかに記載される引下げ方法によって単結晶を製造する単結晶製造工程と、
前記引下げ方向に対して垂直な或いは前記C軸と所定の傾きを有して交差する平面にて前記単結晶を切断する切断工程と、を有することを特徴とする単結晶基板を製造する方法。
【請求項4】
所定の引下げ軸の延在方向とは異なる方向にC軸が配向する単結晶を製造する引下げ装置であって、
原材料を保持可能であって、前記所定の引下げ軸を中心として配置される複数の漏出孔を底部に有する坩堝と、
前記坩堝の周囲に配置されて前記坩堝内部の前記原材料を加熱、溶融して原材料融液を得るための電力が供給される加熱機構と、
前記坩堝と同心であって前記複数の漏出孔の近傍に配置されて前記漏出孔から漏出する前記原材料融液の温度低下を抑制するアフターヒータと、
前記複数の漏出孔と対向する一方の端面を有して前記所定の引下げ軸を軸心とするように配置され、前記漏出孔から漏出する前記原材料融液と接触して前記原材料融液が結晶化する際の結晶方位を定める、筒形状のシードと、
前記シードを他方の端面の側から支持すると共に前記所定の引下げ軸に沿って前記シードを引下げるシード保持具と、を有し、
前記シード保持具は、前記筒形状の内部空間に連通可能であって、前記筒形状の前記他方の端面の側から前記一方の端面の側に流れる気体を供給可能な通気経路を有することを特徴とする引下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−246306(P2011−246306A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120598(P2010−120598)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】