説明

印刷物の検査方法及び印刷物の検査装置

【課題】画像全体で位置補正してもなお高い精度で印刷物の状態を判定する。
【解決手段】印刷物の検査装置1は、撮像部が得た撮像画像と基準画像との比較結果を基に、印刷物の印刷状態を判定する欠陥判定部44と、撮像画像全体を単位として全体補正情報を算出する全体補正情報演算部41と、撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で複数の細分化補正情報を算出する細分化補正情報演算部42と、全体補正情報及び細分化補正情報を基に、欠陥判定部44の判定における撮像画像と基準画像との位置ずれを補正する位置補正部43と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の検査方法及び検査装置に関するものであり、特に検査対象である印刷物の伸縮や撮像位置ずれなどで発生する基準画像と検査画像との位置ずれを補正可能にして印刷状態を検査する印刷物の検査方法及びその検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材への印刷方法としては、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、又はフレキソ印刷などがある。以下、グラビア印刷機を例に挙げて説明することとする。
一般に、グラビア印刷機では、原反に印刷して得られる帯状の印刷物を搬送し、検査装置が有するラインセンサカメラ等の撮像手段でその印刷物の絵柄を撮像し、その際に得られる画像データに基づいて、検査を実施している。
【0003】
このような印刷物の検査装置では、撮像手段によって得られる画像を良否判定するための画像データとして使用する方法などが知られている。また、既知のデータ類(入稿、製版)を基に、良否を判定するための画像データを生成する方法も知られている。
これらの画像を基準として検査を行う場合、基材である原反の搬送過程における伸縮及び蛇行や、撮像手段による画像取得の微小なタイミングずれなどによって、基準画像と検査画像との位置ずれが生じることがある。
【0004】
ここで、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等で印刷物を撮像し、画像処理を用いてその印刷物を検査する方法として、例えば特許文献1が従来技術として知られている。この特許文献1に記載の技術により、位置補正と同時に良否を判定するための画像データを用いた検査をすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3948866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、位置補正が画像全体に及ぶことで、一部の範囲が逆に誤検出・誤判定の原因となる位置ずれを起こしたり、また、位置ずれによる誤検出・誤判定を回避するため、欠陥の検出力を上げられない恐れがある。
本発明は、前記課題を解決するため、基材である原反の搬送時の伸縮及び蛇行や、撮像手段による画像取得の微小なタイミングずれによらず印刷物の状態を高い精度で判定するため、画像全体での位置補正結果と細分化した画像ごとでの位置補正結果を比較し、細分化した画像ごとで位置補正結果が正しいかどうかを評価するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するために、請求項1に係る発明は、表面及び裏面の少なくとも一方に印刷が施された印刷面が有り搬送される帯状の印刷物の検査方法であって、前記印刷物の表面及び裏面の少なくとも一方に光を照射しつつ、前記印刷物の搬送と同期をとり又は予め設定した所定時間間隔で前記印刷物の印刷面を撮像し、撮像して得た撮像画像と基準画像との比較結果を基に、前記印刷物の印刷状態を判定しており、前記撮像画像全体を単位として第1位置補正用情報を算出しかつ前記撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で複数の第2位置補正用情報を算出し、前記第1位置補正用情報及び前記複数の第2位置補正用情報を基に、前記判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正することを特徴とする印刷物の検査方法である。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の記載において、前記第1位置補正用情報により前記複数の第2位置補正用情報のうちの少なくとも一部を補正することで、前記判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正することを特徴とする印刷物の検査方法である。
また、請求項3に係る発明は、表面及び裏面の少なくとも一方に印刷が施された印刷面が有り搬送される帯状の印刷物の検査装置であって、前記印刷物の表面及び裏面の少なくとも一方に光を照射する照射手段と、前記印刷物の搬送と同期をとり又は予め設定した所定時間間隔で前記印刷物の印刷面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が得た撮像画像と基準画像との比較結果を基に、前記印刷物の印刷状態を判定する判定手段と、前記撮像画像全体を単位として第1位置補正用情報を算出する第1位置補正用情報算出手段と、前記撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で複数の第2位置補正用情報を算出する第2位置補正用算出手段と、前記第1位置補正用情報及び前記複数の第2位置補正用情報を基に、前記判定手段の判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正する補正手段と、を備えることを特徴とする印刷物の検査装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像画像全体を単位として算出した第1位置補正用情報と撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で算出した複数の第2位置補正用情報とを基に、判定における撮像画像と基準画像との位置ずれを補正することで、撮像画像全体及び撮像画像の分割画像の両方を考慮して位置ずれを補正することができる。
これにより、画像全体で位置補正してもなお高い精度で印刷物の状態を判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】印刷物の検査装置を示す構成概略図である。
【図2】撮像部、反射照明部、及び透過照明部の構成例を示す図である。
【図3】制御・画像処理部の構成例を示す図である。
【図4】画像細分化状態の一例を示す図である。
【図5】原反が伸縮した場合の画像例を示す図である。
【図6】画像細分化状態(図6(a))、及び細分化状態にて独立して位置補正演算を実施した結果(図6(b))の一例を示す図である。
【図7】画像細分化状態の一例を示す図である。
【図8】細分化状態にて独立して位置補正演算を実施したセル毎の演算結果の一の例を示す図である。
【図9】細分化状態にて独立して位置補正演算を実施したセル毎の演算結果の他の例を示す図である。
【図10】制御・画像処理部の全体動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の印刷物の検査装置1を示す構成概略図である。
図1に示すように、検査装置1は、不図示の印刷機が印刷物10を所定速度で移動させており、その印刷機の速度と同期を取り、且つ印刷物10の表面を撮影する撮像部30と、印刷物10の表面に光を照射する反射照明部20と、印刷物10の裏面に光を照射する透過照明部21と、撮像部30により印刷物10の表面を撮影して得られた画像データ(撮像画像)を用いて、印刷物10に存在する欠陥部を抽出し、自動判定する制御・画像処理部40と、を有する。
【0012】
ここで、印刷物10は所定速度で被撮像領域を移動している。この際、印刷機に取り付けた印刷物10の移動量を高精度に計測するユニットから単位距離毎の信号を得て、その信号を場合によっては、分周分配して制御・画像処理部40に送ることによって、印刷機の速度変動の影響を受けないように走査撮像を行う。
撮像部30の分解能の範囲内で印刷機の搬送速度を一定とみなすことができる場合は、トリガー信号による撮像開始、及び予め設定した一定時間間隔の撮像のみで画像を得る方法も考えられるが、前述のように常に印刷機の搬送速度と同期を取った撮像の方が確実である。
【0013】
また、印刷物10の原反として、プラスチックフィルムなどの伸縮が発生しやすい原反を使用することも多い。印刷物10の原反に伸縮が発生した場合、印刷機の速度と同期をとった撮像を実施しても、撮像した画像に影響を与えてしまう可能性がある。よって、印刷機の搬送速度以外にも、印刷物10の伸縮の影響を考慮した計測が必要となる。例えば、印刷物10にその一部を接触させた計測方法を採用することで、伸縮などの影響を軽減させることもできる。
【0014】
図2は、撮像部30、反射照明部20、及び透過照明部21の構成例を示す図である。
撮像部30には撮像用のレンズ32が取り付けられており、その垂直方向に撮像対象である印刷物10が配置されている。
グラビア印刷機では、印刷物10はロール状にて製造されるため、搬送速度は一定速度の場合が多い。その場合には撮像対象が、常に撮像部30の下を通過することになるので、撮像部30としてラインセンサカメラを用いる。しかし、印刷機の種類、特に搬送の形態によっては撮像部30としてエリアセンサカメラを用いることもできる。
【0015】
また、撮像部30の配置は、印刷物10(印刷物10の面)に対して垂直に配置しているが、ラインセンサカメラの場合、適切な画像が得られる照明系を実現でき、且つラインセンサカメラの横並び方向において各画素間で同じ距離にある印刷物10を撮像可能であれば、図2に示す角度θを傾けて(90°以外に)配置しても構わない。
反射照明部20は、印刷物10と撮像部30の間に配置されており、印刷物10の表面に光を照射する第1照明部22を備える。
【0016】
反射照明部20の種類には、適切な処理を行なえる画像が得られる光量を確保できるのであれば何を使用しても構わないが、撮像部30にラインセンサカメラを採用する場合、ライン状に照射可能な照明系が適している。具体的には、反射照明部20として、蛍光灯や伝送ライト、LED照明等を選択使用する。
また、反射照明部20は、乱反射、正反射、又はその両方、又は両方を配置させつつ印刷物10の原反によってそのうちいずれかを選択する、という配置が考えられるが、印刷機の種類(印刷方式)や原反によってどの配置を選択しても構わない。
【0017】
また、撮像部30に最適な光量を受光させるため、第1照明部22を2個以上配置しても構わない。また、反射照明部20に蛍光灯を採用した場合には、反射照明部20の周辺に反射部材を配置させ、光量を増加させても構わない。
反射照明部20には撮像用のスリット31が設けられている。具体的には、撮像部30に受光する光量に影響が無ければ、スリット31は、空間であっても、ガラスや透明アクリルのような透明部材であっても構わない。
【0018】
透過照明部21は、撮像部30と該透過照明部21の間に印刷物10が位置されるように配置されている。透過照明部21は、印刷物10の裏面に光を照射する第2照明部23を備える。
透過照明部21の種類には、適切な処理を行なえる画像が得られる光量を確保できるのであれば何を使用しても構わないが、撮像部30にラインセンサカメラを採用する場合、ライン状に照射可能な照明系が適している。具体的には、反射照明部20として、蛍光灯や伝送ライト、LED照明等を選択使用する。
【0019】
また、透過照明部21は、最大の光量が確保できる方法として、撮像部30に対して直線的(撮像部30の光軸の延長線上)に配置させる方法が考えられるが、欠陥の検出に支障が出ない光量が確保できるのであれば、直線的な配置である必要はない。
また、印刷機の種類(印刷方式)や原反によって、特に透過性が低い原反を使用する場合などは、透過照明部21を配置しなくても構わない。但し、どの原反が搬送されるか未確定な印刷機に取り付ける場合などには、透過照明部21をONとOFFを切り替え可能な形態であることが適している。
【0020】
また、撮像部30に最適な光量を受光させるため、白色光を照射する第2照明部23をそれぞれ2個以上配置しても構わない。また、透過照明部20に蛍光灯を採用した場合には、透過照明部20の周辺に反射部材を配置させ、光量を増加させても構わない。
図3は、制御・画像処理部40の構成例を示す。
【0021】
図3に示すように、制御・画像処理部40は、全体補正情報演算部41、細分化補正情報演算部42、位置補正部43、欠陥判定部44、及び記憶部45を有する。41〜45の各部はそれぞれ別個のユニットとし、これらを組み合わせて、全体として制御・画像処理部40を構成することが一般的である。すなわち、例えば、41〜45の各部それぞれをボードコンピュータ化し、それらを1つのケースに収めて接続して制御・画像処理部40としたり、あるいは、41〜45の各部それぞれを1つの装置とし、それらを1つのラックに収めて接続して制御・画像処理部40とするものである。ただし、処理時間がかかっても構わない場合には、制御・画像処理部40として、パーソナルコンピュータなどを使用しても良い。
【0022】
全体補正情報算出部41は、全体補正情報を算出する。その全体補正情報算出では、画像データ全体の情報を参照して位置補正情報を算出する。算出手法については、例えばパターンマッチングや正規化相関など、具体的な手法について特にこだわらない。しかし、局所的な画素情報のみ用いて算出する方法は、画像細分化と重複することが想定されるため、好ましくない。全体補正情報算出部41は、全体補正情報算出による算出結果として、一つの画像データ全体に対して一つの位置補正情報を算出する。
【0023】
図4は、画像細分化状態の一例である。
この例は、撮像部30によって撮像された画像全体(図4(a))を幅方向及び搬送方向それぞれで6等分している状態(図4(b))を示している。このように、細分化は、画像の入力状態である矩形又は正方形に分割する手法によるものが望ましい。また、算出の都合を考慮すると、細分化した後の画像の大きさが一定となるように、等分割が望ましい。また、等分割後の画像の大きさをどの程度にするか、つまり何等分するかについては、入力される画像サイズ及び、基材である原反の搬送過程における伸縮及び蛇行や、撮像手段による画像取得の微小なタイミングずれの限度、即ち位置補正を実施する範囲によって状況が異なるため、具体的な数値にはこだわらない。
【0024】
通常、カラーのラインセンサ(以下カラーカメラ)による撮像では、R、G、B別に画像が出力されるため、R、G、B別に検出処理をすることが多い。当然、画像入力段階でこれらを合成し、処理することも可能であるが、合成手法によっては欠陥部の変化が平均化されることもあり、高精度な検出には不向きである。本実施形態では、これらの課題を解決する合成手法を採用するのであれば、R、G、B別の検出処理にはこだわらない。図4ではR、G、Bのうちいずれか1種類の画像に注目した処理例を示している。
【0025】
図5は、基材である原反が伸縮した場合の画像例である。
伸縮前の画像(図5(a))と伸縮後の画像(図5(b))とで同じ点の座標がどのように変化しているかを、画像の中央部、画像の端部の二点の座標値で示している。図5(a)から図5(b)への変化から、伸縮が起こった場合には画像の中央部と端部では、基準となる点の座標の変化の仕方が異なるということがわかる。よって、一度に画像全体を移動させる移動量を規定するような位置補正を実施する場合、全ての位置を正確に合わせることは難しいということになる。
【0026】
図6は、画像細分化状態(図6(a))、及び細分化状態にて独立して位置補正演算を実施した結果(図6(b))の一例である。
図6では、細分化状態での集合をセルと定義し、それぞれ独立して演算処理できるように、セル(0,0)(セルのX座標が“0”、Y座標が“0”を意味)といったように全体位置に対するセル位置を記載することで、セルを弁別している。よって、セル単位で独立して位置補正演算を実施した結果は、セル数と同数になる。ここで、セルという名称自体には意味は無く、全体位置に対するセル位置による弁別手法についても、位置に応じて弁別して処理することが可能であれば特にこだわらない。また、図6(b)の演算結果は、セル全体の内、一部を表記したものである。細分化補正情報算出部42はこのような位置補正演算を行う。
【0027】
図6のように、細分化した集合体であるセル単位で位置補正演算を実施することで、図5のような伸縮が起こった場合においても、伸縮の影響が異なる画像の中央部と端部などの各部で演算結果を独立に算出することができるため、誤検出・誤判定のリスクを軽減することが可能となる。
【0028】
セルの各部における位置補正演算の手法に関しては、セル全体画像のパターンマッチングや微分処理によるエッジ抽出をベースとした補正処理、又は特徴的な階調値若しくは数画素(ピクセル)を基準単位とした特徴パターンを抽出し、その座標の変動を基に補正量を決定させる特徴パターンによる補正など、様々な手法が考えられる。本実施形態では、位置ずれをできるだけ正確に補正することが可能であれば、そのいずれを選択するかは特にこだわらない。また、移動量の算出に際し、一つの画素(ピクセル)を更に細分化するサブピクセル処理を実施し、移動量の単位が一画素(ピクセル)以下となっても構わない。また、画像が単純な巾(X)方向、及び搬送(Y)方向だけではなく、回転(θ)方向にずれることを鑑み、回転方向に対するずれ量を算出し、位置補正演算を実施しても構わない。
【0029】
図7は、画像細分化状態の一例である。
図4(b)のようにセルを重複無く細分化すると、位置補正情報の演算及びその後の処理において、基準画像又は検査画像(撮像画像)を補正させる場合に、セルのサイズが基準画像と検査画像で異なるか、又はセルのサイズが異なった状態で、誤検出・誤判定を回避するために非検査処理などを実行すると、画像全体での検査が実行できなくなる可能性がある。そこで、図7のようにセルの範囲を等分割した状態から、巾(X)、及び搬送(Y)方向に、予め設定した値だけ画素(ピクセル)を大きくする、即ちオーバーラップ処理を実施しても構わない。当然、画像全体を記憶し、セル単位での演算結果を正しく反映できるのであれば、位置補正処理に係わる演算単位を等分割セル丁度の範囲で実行しても構わない。
【0030】
図8は、細分化状態にて独立して位置補正演算(細分化補正情報演算部42による演算)を実施したセル毎の演算結果の一例である。
図8のように、画像を細分化すると一回の検査における位置補正演算結果の回数がそれだけ増加するということになる。よって、位置補正演算を失敗するリスクが高くなるということになる。位置補正にて高精度な演算が実施できれば、失敗のリスクを考慮する必要が無くなるが、どんな位置補正演算も100%の精度を保つことは難しい。特に印刷物の検査においては、モザイク模様などの局所的に類似パターンが印刷されることによる位置補正演算ミス等も十分に考えられる。細分化することで逆に画像全体像が位置補正演算に反映できないということによる影響が大きい。
【0031】
図8は、セル(4,1)の演算結果(−5,0)(X方向の移動量が“−5”、Y方向の移動量が“0”を意味)が、他の全てのセルの演算結果(2,0)となっており、他のセルの演算結果とは著しく異なっている例である。このような演算結果が出た場合、一つのセルのみが著しく位置変動する状況が物理的に想定できないため、通常の判断では、セル(4,1)の演算結果のみが誤っているということが容易に判断できる。このように画像全体に関する位置補正演算が終了した段階で、位置補正演算のミスを回避できるような判断部を入れ込むことができれば、図8のようなミスを回避することができるようになる。
【0032】
図9は、細分化状態にて独立して位置補正演算(細分化補正情報演算部42による演算)を実施したセル毎の演算結果の一例である。
図9では、演算結果が列ごとに大きく異なっている。このようにセル単位で演算結果のばらつきが大きい場合、セルの演算結果が全て出揃った段階で、判断部を入れ込んだとしても、正しい補正結果を得られない可能性がある。このように一つの演算手法から得られたデータの集合体の場合、その精度によっては正しい補正が難しいということが言える。そこで、本実施形態では、画像データ全体の全体補正情報(全体補正情報演算部41が算出した情報)と細分化したセルごとの独立した細分化補正情報(細分化補正情報演算部42が算出した情報)の二種類を使って位置補正をしている。位置補正については位置補正部43が行う。
【0033】
図9では、例えば、画像データ全体の全体補正情報の移動量が(2,0)と算出された場合、セル(4)列目とセル(5)列目の演算結果(移動量)は、その全体補正情報の移動量との差がほぼ無いため、これらの列の演算結果は概ね正しいことが類推できる。このように、細分化補正情報(細分化補正情報演算部42が算出した情報)のみでは、正しい補正値を判断できない場合でも、画像データ全体の全体補正情報(全体補正情報演算部41が算出した情報)と比較することで、精度よく補正量を算出(位置補正部43が算出)することができるようになる。
【0034】
具体的な全体補正情報と細分化補正情報との二つの情報を基に実施する位置補正手法(位置補正部43により補正演算)については、全体補正情報を基に細分化補正情報を補正する。より詳細には、細分化補正情報の信頼性が欠けているということを全てのセルの細分化位置補正演算が終了した段階で判断し、それを全体補正情報の結果と比較、及び最終的な補正値への置き換え判断が可能であれば、どのような手法を用いて実現しても構わない。
【0035】
(動作、作用等)
図10は、制御・画像処理部40の全体動作を示したフローチャートである。
印刷物10が所定の搬送速度にて移動し、印刷機の搬送速度及び印刷物10の伸縮と同期をとり、印刷物10の表面を撮像部30により撮像する(ステップS1)。
【0036】
その撮像により得た画像データは、制御・画像処理部40に送出され、画像データから印刷物の情報を抽出する(ステップS2)。このステップ2では、画像データを細分化して得られた各セルについて位置補正演算を行ったり、各セルについての位置補正演算結果が正しいか否かを評価したりする処理が行われる(全体補正情報演算部41、細分化補正情報演算部42、及び位置補正部43による処理が行われる)。
【0037】
更に、各セルの位置補正演算処理後のデータを用いて欠陥検出・判定処理が実行される(ステップS3)。この欠陥検出・判定処理は、全ての印刷物10に対して実行され、この後全体動作は完了する(ステップS4,YES)。
このとき、不良検出・判定処理(ステップS3)では、得られた画像に対して二値化、多値化処理を施して不良部位を抽出するか、予め基準となる画像(基準画像)をマスターデータとして保持しておき(記憶部45に記憶しておき)、得られた画像データとのパターンマッチングや差分処理などの画像処理を施すことで各種印刷物10の不良を検出(欠陥判定部44が検出)することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、照射手段として反射照明部20(又は第1照射部22)、透過照明部21(又は第2照明部23)を用いている。また、撮像手段として撮像部30を用いている。また、判定手段として欠陥判定部44を用いている。また、第1位置補正用情報算出手段として全体補正情報演算部41を用いている。また、第2位置補正用算出手段として細分化補正情報演算部42を用いている。また、補正手段として位置補正部43を用いている。
【0039】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、撮像画像全体を単位として算出した第1位置補正用情報である全体補正情報と撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で算出した複数の第2位置補正用情報である細分化補正情報とを基に、判定における撮像画像と基準画像との位置ずれを補正している。
【0040】
これにより、本実施形態では、撮像画像全体及び撮像画像の分割画像の両方を考慮して位置ずれを補正することができる。
この結果、基材である原反の搬送時の伸縮及び蛇行や、撮像手段による画像取得の微小なタイミングずれによらず、印刷物10の状態を高い精度で判定することに加えて、画像全体で位置補正してもなお高い精度で印刷物10の状態を判定することができるようになる。
【0041】
(本実施形態の変形例)
本実施形態の変形例として、裏面又は両面に印刷が施され搬送される帯状の印刷物の印刷状態を検査することができる。この場合、その検査が可能となるように、撮像部30、反射照明部20、及び透過照明部21等の構成を適宜配置する。
【符号の説明】
【0042】
1 印刷物の検査装置、10 印刷物、20 反射照明部、21 透過照明部、22 第1照明部、23 第2照明部、30 撮像部、31 撮像用のスリット、32 撮像用のレンズ、40 制御・画像処理部、41 全体補正情報演算部、42 細分化補正情報演算部、43 位置補正部、44 欠陥判定部、45 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面の少なくとも一方に印刷が施された印刷面が有り搬送される帯状の印刷物の検査方法であって、
前記印刷物の表面及び裏面の少なくとも一方に光を照射しつつ、前記印刷物の搬送と同期をとり又は予め設定した所定時間間隔で前記印刷物の印刷面を撮像し、
撮像して得た撮像画像と基準画像との比較結果を基に、前記印刷物の印刷状態を判定しており、
前記撮像画像全体を単位として第1位置補正用情報を算出しかつ前記撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で複数の第2位置補正用情報を算出し、前記第1位置補正用情報及び前記複数の第2位置補正用情報を基に、前記判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正することを特徴とする印刷物の検査方法。
【請求項2】
前記第1位置補正用情報により前記複数の第2位置補正用情報のうちの少なくとも一部を補正することで、前記判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正することを特徴とする請求項1に記載の印刷物の検査方法。
【請求項3】
表面及び裏面の少なくとも一方に印刷が施された印刷面が有り搬送される帯状の印刷物の検査装置であって、
前記印刷物の表面及び裏面の少なくとも一方に光を照射する照射手段と、
前記印刷物の搬送と同期をとり又は予め設定した所定時間間隔で前記印刷物の印刷面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が得た撮像画像と基準画像との比較結果を基に、前記印刷物の印刷状態を判定する判定手段と、
前記撮像画像全体を単位として第1位置補正用情報を算出する第1位置補正用情報算出手段と、
前記撮像画像全体を分割して得た分割画像単位で複数の第2位置補正用情報を算出する第2位置補正用算出手段と、
前記第1位置補正用情報及び前記複数の第2位置補正用情報を基に、前記判定手段の判定における前記撮像画像と前記基準画像との位置ずれを補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする印刷物の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−252886(P2011−252886A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128698(P2010−128698)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】