説明

厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物および厚膜レジストパターンの製造方法

【課題】より高感度でマスク忠実性の高い厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物と、当該フォトレジスト組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、厚膜フォトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物であって、電磁波または粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、を含有する。酸発生剤(A)は、カチオン成分としてジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムカチオンと、アニオン成分としてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物および厚膜レジストパターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、フォトファブリケーションが精密微細加工技術の主流となっている。フォトファブリケーションとは、感光性樹脂組成物を被加工物表面に塗布して塗膜を形成し、フォトリソグラフィー技術によって塗膜をパターニングし、パターニングされた塗膜をマスクとして化学エッチング、電解エッチング、または電気めっきを主体とするエレクトロフォーミングなどを行って、半導体パッケージなどの各種精密部品を製造する技術の総称である。
【0003】
また、近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、半導体パッケージの高密度実装技術が進み、パッケージの多ピン薄膜実装化、パッケージサイズの小型化、フリップチップ方式による2次元実装技術、3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。このような高密度実装技術においては、接続端子として、たとえば、パッケージ上に突出したバンプ等の突起電極(実装端子)や、ウエーハ上のペリフェラル端子から延びる再配線と実装端子とを接続するメタルポストなどが基板上に高精度に配置される。
【0004】
上記のようなフォトファブリケーションにはフォトレジストが使用されるが、フォトファブリケーションに用いられるフォトレジストとしては、酸発生剤を含む化学増幅型のフォトレジスト組成物が知られている(たとえば、特許文献1、2参照)。化学増幅型フォトレジストは、放射線照射(露光)により酸発生剤から酸が発生し、加熱処理により酸の拡散が促進されて、樹脂組成物中のベース樹脂などに対し酸触媒反応を起こし、そのアルカリ溶解性が変化するというものである。
【0005】
また、上記のようなフォトファブリケーションに使用されるフォトレジストとして、厚膜用フォトレジストがある。厚膜用フォトレジストは、たとえばメッキ工程によるバンプやメタルポストの形成などに用いられている。たとえば、支持体上に膜厚約20μmの厚膜フォトレジスト層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像して、バンプやメタルポストを形成する部分が選択的に除去(剥離)されたレジストパターンを形成する。そして、この除去された部分(非レジスト部)に銅などの導体をメッキによって埋め込んだ後、その周囲のレジストパターンを除去することによりバンプやメタルポストを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−176112号公報
【特許文献2】特開平11−52562号公報
【特許文献3】特開平6−184170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の状況において、本発明者らは以下の課題を認識するに至った。すなわち、今後、半導体パッケージがより一層高密度化するにともなって、突起電極やメタルポストのさらなる高密度化が求められることとなる。そのため、化学増幅型フォトレジスト組成物を厚膜用フォトレジストとして使用した場合、突起電極やメタルポストのさらなる高密度化を実現するために、より高感度でマスク忠実性の高い厚膜用化学増幅型フォトレジスト組成物が求められることとなる。
【0008】
本発明は、本発明者らによるこうした認識に基づいてなされたものであり、その目的は、より高感度でマスク忠実性の高い厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物と、当該フォトレジスト組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は厚膜フォトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物であり、この厚膜フォトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、支持体上に、厚膜フォトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物であって、電磁波または粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、を含有し、酸発生剤(A)が、下記一般式(a1):
【化1】

[式(a1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、または下記一般式(a2)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは、ナフチル基または下記一般式(a2)で表される置換基である。当該フェニル基、およびナフチル基の水素原子の一部または全部は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【化2】

(式(a2)中、Aは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’−(ただしR’は、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基)、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、またはフェニレン基である。)]で表されるカチオン成分と、下記一般式(a5):
【化3】

[式(a5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、またはフェニル基であり、当該フェニル基の水素原子の一部または全部は、フッ素原子、およびトリフルオロメチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい]で表されるアニオン成分と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この態様によれば、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の感度とマスク忠実性を高めることができる。
【0011】
本発明の他の態様は厚膜レジストパターンの製造方法であり、この厚膜レジストパターンの製造方法は、支持体上に、上述の態様の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を含む膜厚10μm以上の厚膜フォトレジスト層を積層する積層工程と、厚膜フォトレジスト層に、選択的に電磁波または粒子線を含む放射線を照射する露光工程と、露光工程において露光された厚膜フォトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、より寸法精度の高い厚膜レジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より高感度でマスク忠実性の高い厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物と、当該フォトレジスト組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(実施形態)
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、回路基板、および回路基板に実装するCSP(チップサイズパッケージ)などの電子部品の製造において、バンプやメタルポストなどの接続端子、および配線パターンなどの形成に好適に用いられる。本実施形態の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、電磁波または粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)とを含有する。以下、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の各成分について詳述する。
【0016】
《酸発生剤(A)》
電磁波または粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)は、たとえば光酸発生剤であり、光により直接または間接的に酸を発生する。酸発生剤(A)は、以下に示すカチオン成分とアニオン成分を含む。
〈カチオン成分〉
酸発生剤(A)に含まれるカチオン成分は、下記一般式(a1):
【化4】

[式(a1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、または下記一般式(a2)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは、ナフチル基または下記一般式(a2)で表される置換基である。当該フェニル基、およびナフチル基の水素原子の一部または全部は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【化5】

(式(a2)中、Aは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’−(ただしR’は、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基)、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、またはフェニレン基である。)]
で表される構造を有する。
【0017】
上記一般式(a2)中、Aの好ましい例は、−S−、−NH−、炭素数1〜3のアルキレン基である。また、カチオン成分の好ましい例は、下記式(a3):
【化6】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムカチオンである。
【0018】
また、カチオン成分の他の好ましい例は、下記式(a4):
【化7】

で表されるナフチルジフェニルスルホニウムカチオンである。
【0019】
〈アニオン成分〉
酸発生剤(A)に含まれるアニオン成分は、下記一般式(a5):
【化8】

[式(a5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、またはフェニル基であり、当該フェニル基の水素原子の一部または全部は、フッ素原子、およびトリフルオロメチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい]
で表される構造を有する。
【0020】
アニオン成分の好ましい例は、下記式(a6):
【化9】

で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
【0021】
また、アニオン成分の他の好ましい例としては、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート:[B(CCF、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:[(CBF、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート:[(C)BF、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート:[B(Cなどが挙げられる。
【0022】
カチオン成分とアニオン成分の組み合わせの好ましい例としては、下記式(a7):
【化10】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
下記式(a8):
【化11】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、
下記式(a9):
【化12】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
下記式(a10):
【化13】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
下記式(a11):
【化14】

で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、
下記式(a12):
【化15】

で表されるナフチルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0023】
酸発生剤(A)としては、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、酸発生剤(A)としては、他の光酸発生剤を併用してもよい。
【0024】
他の光酸発生剤における第一の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジンなどのハロゲン含有トリアジン化合物、ならびにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−トなどの下記一般式(a13)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0025】
【化16】

【0026】
上記一般式(a13)中、R1a、R2a、R3aは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0027】
また、他の光酸発生剤における第二の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、ならびにオキシムスルホネ−ト基を含有する下記一般式(a14)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化17】

【0029】
上記一般式(a14)中、R4aは、1価、2価、または3価の有機基を表し、R5aは、置換、未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、または芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0030】
上記一般式(a14)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、たとえばフェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基や、フリル基、チエニル基などの複素環基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、たとえばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基などを1個以上有していてもよい。また、R5aは、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特にR4aが芳香族性化合物基、R5aが低級アルキル基の化合物が好ましい。
【0031】
上記一般式(a14)で表される光酸発生剤としては、n=1のとき、R4aがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R5aがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリルなどが挙げられる。n=2のとき、上記一般式(a14)で表される光酸発生剤としては、具体的には下記化学式で表される光酸発生剤が挙げられる。
【0032】
【化18】

【0033】
さらに、他の光酸発生剤における第三の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
【0034】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(a15)で表される構造が好ましい。
【0035】
【化19】

【0036】
上記一般式(a15)中、R6a、R7a、R8aのうち少なくとも1つは下記一般式(a16)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R6a、R7a、R8aのうちの1つが下記一般式(a16)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0037】
【化20】

【0038】
上記一般式(a16)中、R9a、R10aは、それぞれ独立して水酸基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、R11aは、単結合または置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、pおよびqは、それぞれ独立して0〜2の整数であり、p+qは3以下である。ただし、R10aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R9aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
上記R6a、R7a、R8aのうち上記一般式(a16)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
【0040】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基などが挙げられる。
【0041】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基などが挙げられる。
【0042】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記化学式(a17)、(a18)で表されるものなどを挙げることができ、特に化学式(a18)で表される構造が好ましい。
【0043】
【化21】

【0044】
このようなカチオン部としては、ヨ−ドニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率などの点からスルホニウム塩が望ましい。
【0045】
したがって、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0046】
このような光酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部または全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオンまたはアリールスルホン酸イオンである。
【0047】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから好ましいものの具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0048】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基などを挙げることができる。
【0049】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオンまたはアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部または全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パ−フルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネートなどが挙げられる。
【0050】
中でも、好ましいアニオン部として、下記一般式(a19)で表されるものが挙げられる。
【0051】
【化22】

【0052】
上記一般式(a19)において、R12aは、下記一般式(a20)、(a21)で表される構造や、下記化学式(a22)で表される構造である。
【0053】
【化23】

【0054】
上記一般式(a20)中、lは1〜4の整数であり、一般式(a21)中、R13aは、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表し、mは1〜3の整数である。中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0055】
また、アニオン部としては、下記一般式(a23)、(a24)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0056】
【化24】

【0057】
上記一般式(a23)、(a24)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Y、Zは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
【0058】
のアルキレン基の炭素数、またはY、Zのアルキル基の炭素数が小さいほどレジスト溶媒への溶解性も良好であるため好ましい。
【0059】
また、Xのアルキレン基またはY、Zのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0060】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記化学式(a25)、(a26)で表される化合物である。
【0061】
【化25】

【0062】
さらに、他の光酸発生剤における別の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレ−ト、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナートなどのニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミドなどのスルホン酸エステル;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミドなどのトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートなどのオニウム塩;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラートなどのベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨ−ドニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナ−トなどが挙げられる。
【0063】
他の光酸発生剤として、好ましくは上記一般式(a14)で表される化合物であって、好ましいnの値は2であり、また、好ましいR4aは、2価の炭素数1〜8の置換もしくは非置換のアルキレン基、または置換もしくは非置換の芳香族基であり、また、好ましいR5aは、炭素数1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のアリ−ル基であるが、これらに限定されない。
【0064】
このような他の光酸発生剤を併用する場合の使用割合は任意でよいが、通常、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤100質量部に対し、他の光酸発生剤は10〜900質量部、好ましくは25〜400質量部である。
【0065】
このような酸発生剤(A)の含有量は、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の全質量に対して、好ましくは約0.01〜約10質量%であり、より好ましくは約0.05〜約10質量%であり、さらに好ましくは約0.5〜約10質量%である。
【0066】
従来のリン系(PF6−)やホウ素系(BF6−)の光酸発生剤のみでは、高感度なアンチモン系(SbF6−)の光酸発生剤と同等の感度を得るためには、アンチモン系(SbF6−)と比べて10倍以上の露光量が必要であった。これに対して、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤によれば、アンチモン系と同等以上の感度でレジストパターンを形成することができる。また、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤によれば、レジストパターンのマスク忠実性も向上させることができる。ここで、マスク忠実性とは、フォトレジスト層の露光量を変化させたときのパターン寸法の変化量であり、パターン寸法の変化量が小さいほどマスク忠実性は高い。また、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤は、アンチモンやヒ素などの毒性のある元素を含有しないため、人体に対する安全性が高い。さらには、上面に銅によって形成された部分を有する支持体、たとえば銅基板上においても良好にレジストパターンを形成することができる。
【0067】
《樹脂(B)》
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)は、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、およびアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、またはこれらの混合樹脂もしくは共重合体である。
【0068】
〈ノボラック樹脂(B1)〉
ノボラック樹脂(B1)としては、下記一般式(b1)で表される樹脂を使用することができる。
【0069】
【化26】

【0070】
上記一般式(b1)中、R1bは、酸解離性溶解抑制基を表し、R2b、R3bは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0071】
さらに、上記R1bで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(b2)、(b3)で表される、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、またはトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0072】
【化27】

【0073】
上記一般式(b2)、(b3)中、R4b、R5bは、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、R6bは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を表し、R7bは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を表し、oは0または1である。
【0074】
上記炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0075】
ここで、上記一般式(b2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert−ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基などが挙げられる。また、上記一般式(b3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基などが挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ−tert−ブチルジメチルシリル基などの各アルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。
【0076】
〈ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)〉
ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)としては、下記一般式(b4)で表される樹脂を使用することができる。
【0077】
【化28】

【0078】
上記一般式(b4)中、R8bは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R9bは、酸解離性溶解抑制基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0079】
上記炭素数1〜6のアルキル基は、たとえば炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基、または環状のアルキル基である。炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0080】
上記R9bで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記一般式(b2)、(b3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0081】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基およびエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物類などを挙げることができる。
【0082】
〈アクリル樹脂(B3)〉
アクリル樹脂(B3)としては、下記一般式(b5)〜(b7)で表される樹脂を使用することができる。
【0083】
【化29】

【0084】
上記一般式(b5)〜(b7)中、R10b〜R17bは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し(ただし、R11bが水素原子であることはない)、Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の炭化水素環を形成し、Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基またはアルキル基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、pは0〜4の整数であり、qは0または1である。
【0085】
なお、上記炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子により置換されたものである。
【0086】
上記R11bとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅などが良好な点から、炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましく、上記R13b、R14b、R16b、R17bとしては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0087】
上記Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の脂肪族環式基を形成する。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0088】
さらに、上記Xの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)などの極性基や、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状の低級アルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0089】
上記Yは、脂肪族環式基またはアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0090】
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状の低級アルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0091】
また、Yがアルキル基である場合、炭素数1〜20、好ましくは6〜15の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基などが挙げられる。
【0092】
上記一般式(b5)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(b5−1)〜(b5−33)で表されるものを挙げることができる。
【0093】
【化30】

【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

【0096】
【化33】

【0097】
上記式(b5−1)〜(b5−33)中、Rαは、水素原子またはメチル基を表す。
【0098】
上記一般式(b6)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(b6−1)〜(b6−24)で表されるものを挙げることができる。
【0099】
【化34】

【0100】
【化35】

【0101】
上記式(b6−1)〜(b6−24)中、Rαは、水素原子またはメチル基を表す。
【0102】
上記一般式(b7)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(b7−1)〜(b7−15)で表されるものを挙げることができる。
【0103】
【化36】

【0104】
上記式(b7−1)〜(b7−15)中、Rαは、水素原子またはメチル基を表す。
【0105】
さらに、アクリル樹脂(B3)は、上記一般式(b5)〜(b7)で表される構成単位に対して、さらにエーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0106】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、エーテル結合およびエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などのラジカル重合性化合物を例示することができ、具体例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
さらに、アクリル樹脂(B3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含めることができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基およびエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物類などを挙げることができる。
【0108】
上記樹脂(B)の中でも、アクリル樹脂(B3)を用いることが好ましい。
【0109】
また、このようなアクリル樹脂(B3)の中でも、上記一般式(b7)で表される構成単位と、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類からなる構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。
【0110】
このような共重合体としては、下記一般式(b8)で表される共重合体であることが好ましい。
【0111】
【化37】

【0112】
上記一般式(b8)中、R20bは、水素原子またはメチル基を表し、R21bは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R22bは、炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、Xは前記のものと同じである。
【0113】
さらに、上記一般式(b8)で表される共重合体において、s、t、uは、それぞれ質量比で、sは1〜30質量%であり、tは20〜70質量%であり、uは20〜70質量%である。
【0114】
また、樹脂(B)のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは10,000〜600,000であり、より好ましくは50,000〜600,000であり、さらに好ましくは230,000〜550,000である。このような質量平均分子量とすることにより、基板との剥離性が低下することなくレジスト膜の十分な強度を保持でき、さらにはメッキ時のプロファイルの膨れや、クラックの発生を防ぐことができる。
【0115】
さらに、樹脂(B)は、分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とするメッキに対する応力耐性や、メッキ処理により得られる金属層が膨らみやすくなるという問題を回避できる。
【0116】
このような樹脂(B)の含有量は、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の全質量に対して、5〜60質量%とすることが好ましい。
【0117】
《アルカリ可溶性樹脂(C)》
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、クラック耐性を向上させるために、さらにアルカリ可溶性樹脂(C)を含有させることが好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のTMAH水溶液に1分間浸漬した際、0.01μm以上溶解するものをいう。アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ノボラック樹脂(C1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)、およびアクリル樹脂(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0118】
〈ノボラック樹脂(C1)〉
ノボラック樹脂(C1)としては、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0119】
このようなノボラック樹脂(C1)は、たとえばフェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」と称する)と、アルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。この際に使用されるフェノール類としては、たとえばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。
【0120】
また、アルデヒド類としては、たとえばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒドなどが挙げられる。付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、たとえば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸などが使用される。
【0121】
なお、o−クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
【0122】
〈ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)〉
ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)は、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0123】
このようなポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどが挙げられる。さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましい。このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0124】
〈アクリル樹脂(C3)〉
アクリル樹脂(C3)は、質量平均分子量が50,000〜800,000であることが好ましい。
【0125】
このようなアクリル樹脂(C3)としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導されたモノマー、およびカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導されたモノマーを含有することが好ましい。
【0126】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリラート、3−メトキシブチル(メタ)アクリラート、エチルカルビトール(メタ)アクリラート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラートなどのエーテル結合およびエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などを例示することができる。上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチルアクリラート、メトキシトリエチレングリコールアクリラートである。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基およびエステル結合を有する化合物などを例示することができる。上記カルボキシル基を有する重合性化合物は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
このようなアルカリ可溶性樹脂(C)の含有量は、上記樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部であり、より好ましくは10〜90質量部である。アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量を樹脂(B)100質量部に対して5質量部以上とすることによりクラック耐性を向上させることができ、95質量部以下とすることにより現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0129】
《酸拡散制御剤(D)》
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き安定性などの向上のために、さらに酸拡散制御剤(D)を含有させることが好ましい。酸拡散制御剤(D)としては、含窒素化合物(D1)が好ましく、さらに必要に応じて、有機カルボン酸、またはリンのオキソ酸もしくはその誘導体(D2)を含有させることができる。
【0130】
〈含窒素化合物(D1)〉
含窒素化合物(D1)としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3,−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタンなどを挙げることができる。これらのうち、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
このような含窒素化合物(D1)は、上記樹脂(B)およびアルカリ可溶性樹脂(C)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0132】
〈有機カルボン酸、またはリンのオキソ酸もしくはその誘導体(D2)〉
有機カルボン酸、またはリンのオキソ酸もしくはその誘導体(D2)のうち、有機カルボン酸としては、具体的には、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適であり、特にサリチル酸が好ましい。
【0133】
リンのオキソ酸またはその誘導体の例としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられる。これらの中で特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
このような有機カルボン酸、またはリンのオキソ酸もしくはその誘導体(D2)は、上記樹脂(B)およびアルカリ可溶性樹脂(C)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0135】
また、塩を形成させて安定させるために、有機カルボン酸、またはリンのオキソ酸もしくはその誘導体(D2)は、上記含窒素化合物(D1)と同等量を用いることが好ましい。
【0136】
《その他》
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、可塑性を向上させるために、さらにポリビニル樹脂を含有させてもよい。ポリビニル樹脂は、質量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、50,000〜100,000であることがより好ましい。
【0137】
このようなポリビニル樹脂は、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)であり、下記一般式(c1)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独または2種以上の混合物を重合することにより得られる重合体または共重合体からなる。
【0138】
【化38】

【0139】
上記一般式(c1)中、R1cは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。
【0140】
このようなポリビニル樹脂は、ビニル系化合物から得られる重合体である。このようなポリビニル樹脂としては、具体例として、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、およびこれらの共重合体などが挙げられる。ポリビニル樹脂は、ガラス転移点の低さの点から、好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
【0141】
また、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、基板との接着性を向上させるために、接着助剤をさらに含有させることもできる。使用される接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましい。官能性シランカップリング剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。また、官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。この接着助剤の含有量は、上記樹脂(B)およびアルカリ可溶性樹脂(C)の合計質量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。
【0142】
また、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させるために、界面活性剤をさらに含有させることもできる。界面活性剤の例としては、BM−1000、BM−1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145(いずれも旭硝子社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428(いずれも東レシリコーン社製)などの市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
また、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うために、酸、酸無水物、または高沸点溶媒をさらに含有させることもできる。
【0144】
酸および酸無水物の例としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸などのモノカルボン酸;乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸などのヒドロキシモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタートなどの酸無水物、といったものを挙げることができる。
【0145】
また、高沸点溶媒の例としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセタートなどを挙げることができる。
【0146】
上述したようなアルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うための化合物の使用量は、用途・塗布方法に応じて調整することができ、組成物を均一に混合させることができれば特に限定されるものではないが、得られる組成物全質量に対して60質量%以下、好ましくは40質量%以下とする。
【0147】
また、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には、粘度調整のために有機溶剤を適宜配合することができる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、およびジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、またはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0148】
これらの有機溶剤の使用量は、たとえば、スピンコート法などにより、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を使用して得られるフォトレジスト層の膜厚が5μm以上となるように、固形分濃度が30質量%以上となる範囲が好ましい。
【0149】
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の調製は、たとえば、上記各成分を通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合してもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いて濾過してもよい。
【0150】
本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、約5〜約200μm、好ましくは約10〜約120μm、より好ましくは約10〜約100μmの膜厚の厚膜フォトレジスト層を支持体上に形成するのに適している。
【0151】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、たとえば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。この基板としては、たとえば、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板やガラス基板などが挙げられる。特に、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、銅基板上においても良好にレジストパターンを形成することができる。配線パターンの材料としては、たとえば銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などが用いられる。
【0152】
《厚膜レジストパターンの製造方法》
厚膜レジストパターンは、たとえば以下のようにして製造することができる。すなわち、上述したように調製した厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の溶液を支持体上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜(厚膜フォトレジスト層)を形成する。支持体上への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などの方法を採用することができる。本実施形態の組成物を含む塗膜のプレベーク条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は70〜150℃、好ましくは80〜140℃で、2〜60分間程度である。
【0153】
厚膜フォトレジスト層の膜厚は、約5〜約200μm、好ましくは約10〜約120μm、より好ましくは約10〜約100μmの範囲であることが望ましい。
【0154】
そして、得られた厚膜フォトレジスト層に、所定パターンのマスクを介して、電磁波または粒子線を含む放射線、たとえば波長が300〜500nmの紫外線または可視光線を選択的に照射(露光)する。
【0155】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線などが含まれる。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、たとえば超高圧水銀灯使用の場合、100〜10,000mJ/cmである。また、放射線には、酸を発生させるために酸発生剤を活性化させる光線を含む。
【0156】
そして、露光後、公知の方法を用いて加熱することにより酸の拡散を促進させて、この露光部分の厚膜フォトレジスト層のアルカリ溶解性を変化させる。次いで、たとえば所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去して所定の厚膜レジストパターンを得る。
【0157】
現像液としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナンなどのアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、前記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0158】
現像時間は、組成物各成分の種類、配合割合、組成物の乾燥膜厚によって異なるが、通常1〜30分間であり、また現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法などのいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガンや、オーブンなどを用いて乾燥させる。
【0159】
そして、このようにして得られた厚膜レジストパターンの非レジスト部(アルカリ現像液で除去された部分)に、たとえばメッキなどによって金属などの導体を埋め込むことにより、メタルポストやバンプなどの接続端子を形成することができる。なお、メッキ処理方法は特に制限されず、従来から公知の各種方法を採用することができる。メッキ液としては、特にハンダメッキ、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ液が好適に用いられる。残っているレジストパターンは、最後に、定法に従って、剥離液などを用いて除去する。
【0160】
以上説明した本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物および厚膜レジストパターンの製造方法の作用効果を総括すると、本実施形態に係る厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含む酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)とを含有している。これにより、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の感度とマスク忠実性を向上させることができる。また、この組成物を用いることで、より精度の高いレジストパターンの形成が可能となる。さらに、上面に銅によって形成された部分を有する支持体、たとえば銅基板上においても良好にレジストパターンを形成することができる。
【0161】
また、酸発生剤(A)に含まれるカチオン成分が上記一般式(a3)で表される化合物であった場合に、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の感度とマスク忠実性をより向上させることができる。
【0162】
また、酸発生剤(A)に含まれるアニオン成分が上記一般式(a6)で表される化合物であった場合に、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の感度とマスク忠実性をより向上させることができる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0164】
(フォトレジスト組成物の調製)
樹脂(B)としてノボラックメタクレゾールとノボラックパラクレゾールの含有比が6対4で構成されたノボラック樹脂55質量部と、アルカリ可溶性樹脂(C)のポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)としてVPS−2515(日本曹達社製)20質量部と、アルカリ可溶性樹脂(C)のアクリル樹脂(C3)としてTW−1030(ハリマ化成株式会社製)25質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに添加した。また、酸発生剤(A)として後述する組成のものを、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の全質量に対して後述する質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに添加した。さらに、増感剤として1,5−ジヒドロキシナフタレン(1,5−DON)を、厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の全質量に対して1質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに添加した。そして、これらを均一に溶解させ、孔径1μmのメンブレンフィルターを通して濾過し、固形分質量濃度40質量%の厚膜用化学増幅型ポジ型レジスト組成物を得た。
【0165】
各実施例および各比較例における酸発生剤(A)の構成成分、および厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の全質量に対する含有質量比(濃度:質量%)は、下記表1に記載のとおりである。
【表1】

【0166】
(実施例1〜10)
表1に示すように、実施例1〜10の酸発生剤(A)は、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含むものである。また、実施例1〜5は、それぞれ酸発生剤(A)の構成成分が同一で、含有質量比を変化させたものであり、実施例6〜9は、実施例4に対してアニオン成分を変えたものであり、実施例10は、実施例4に対してカチオン成分を変えたものである。
【0167】
(比較例1)
比較例1は、酸発生剤(A)のカチオン成分として、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分ではないトリス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウム:[S(Cを用い、アニオン成分として、上記一般式(a5)で表されるアニオン成分ではないトリフルオロトリス(パーフルオロエチル)ホスファート:[(CPFを用いた以外は、実施例4と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を得た。
【0168】
(比較例2)
比較例2は、酸発生剤(A)の濃度が異なる以外は、比較例1と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を得た。
【0169】
(比較例3)
比較例3は、酸発生剤(A)のアニオン成分として、上記一般式(a5)で表されるアニオン成分ではないトリフルオロトリス(パーフルオロエチル)ホスファートを用いた以外は、実施例4と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を得た。
【0170】
(比較例4)
比較例4は、酸発生剤(A)のアニオン成分として、上記一般式(a5)で表されるアニオン成分ではないトリフルオロトリス(パーフルオロエチル)ホスファートを用いた以外は、実施例5と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を得た。
【0171】
(比較例5)
比較例5は、酸発生剤(A)のカチオン成分として、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分ではないトリフェニルスルホニウム:[(S(C)]を用いた以外は、実施例4と同様にして厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を得た。
【0172】
(厚膜レジストパターンの形成)
(実施例1〜10、および比較例1〜5)
上述のようにして得られた各実施例および各比較例の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を、8インチの銅基板上に塗布した。各フォトレジスト組成物の塗布は、たとえばスピンコート法により行うことができる。塗布したフォトレジスト組成物を乾燥させて、約20μmの膜厚を有する厚膜フォトレジスト層を得た。次いで、この厚膜フォトレジスト層をホットプレート上に載置し、120℃で5分間プリベークした。
【0173】
プリベーク後、所定パターンのマスクと露光装置Prisma GHI(Ultratech社製)を用いてパターン露光した(GHI線)。次いで、ホットプレート上に載置して75℃で5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を厚膜フォトレジスト層に滴下して、23℃で60秒間放置し、これを3回繰り返して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして100μmのラインアンドスペースパターンを有する厚膜レジストパターンを得た。
【0174】
(評価)
上記実施例1〜10、比較例1〜5で調製した厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物のそれぞれについて、上述の手順にしたがうとともに露光条件(露光量)を変えて厚膜レジストパターンを形成した。これにより各フォトレジスト組成物の感度を評価した。また、異なる露光条件で形成した各厚膜レジストパターンの形状を対比して、各フォトレジスト組成物のマスク忠実性を評価した。マスク忠実性の評価は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて行った。
【0175】
ここで、前記「感度」は、スペース部におけるパターンの残渣が認められなくなる露光量であり、すなわち、レジストパターンを形成するのに必要な最低限の露光量である。感度の評価は、1800mJ/cmを上回る場合を不良(×)、1800mJ/cm以内の場合を良(○)、770mJ/cm以内の場合をより良(◎)とした。なお、評価基準となる変化率の数値(770mJ/cm、1800mJ/cm)は、当業者が実験等によって適宜設定することができる。
【0176】
また、前記「マスク忠実性」は、それぞれの感度を基準として、感度×1.2の露光量で形成したパターンの平均スペース幅に対する、感度×1.6の露光量で形成したパターンの平均スペース幅の変化率であり、下記式に基づいて計算される。
【数1】

すなわち、マスク忠実性は、露光量を上げた時にどれだけスペース幅の広がりを抑えられるかを示すものである。なお、感度×1.2の露光量を基準としたのは、レジスト層を露光する際、パターン形成を確実に行うために感度×1.2の露光量にて露光するのが一般的であるためである。
【0177】
マスク忠実性の評価は、平均スペース幅の変化率が±2.5%を上回った場合を不良(×)、±2.5%内の場合を良(○)、±1.0%以内の場合をより良(◎)とした。なお、評価基準となる変化率の数値(1.0%、2.5%)は、当業者が実験等によって適宜設定することができる。
【0178】
各実施例および各比較例における感度およびマスク忠実性は、上記表1に記載のとおりである。表1に示すように、実施例1〜10と、比較例1〜5との比較から、酸発生剤(A)が、上記一般式(a1)で表されるカチオン成分と上記一般式(a5)で表されるアニオン成分とを含むものであった場合に、高い感度と高いマスク忠実性が得られることが確認された。また、実施例1と実施例2〜10との比較から、酸発生剤(A)の濃度が約0.05質量%以上のときに、より高いマスク忠実性が得られることが確認された。さらに、実施例1、2と実施例3〜10との比較から、酸発生剤(A)の濃度が約0.5質量%以上のときに、より高い感度が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、厚膜フォトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物であって、
電磁波または粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、
を含有し、
前記酸発生剤(A)が、下記一般式(a1):
【化1】

[式(a1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、または下記一般式(a2)で表される置換基であり、R〜Rの少なくとも1つは、ナフチル基または下記一般式(a2)で表される置換基である。当該フェニル基、およびナフチル基の水素原子の一部または全部は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【化2】

(式(a2)中、Aは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’−(ただしR’は、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基)、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、またはフェニレン基である。)]
で表されるカチオン成分と、
下記一般式(a5):
【化3】

[式(a5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、またはフェニル基であり、当該フェニル基の水素原子の一部または全部は、フッ素原子、およびトリフルオロメチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい]
で表されるアニオン成分と、
を含むことを特徴とする厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項2】
前記カチオン成分は、下記式(a3):
【化4】

で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記アニオン成分は、下記式(a6):
【化5】

で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項4】
前記樹脂(B)は、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、およびアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項5】
さらに、アルカリ可溶性樹脂(C)を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)は、ノボラック樹脂(C1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)、およびアクリル樹脂(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することを特徴とする請求項5記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項7】
さらに、酸拡散制御剤(D)を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項8】
前記支持体は、銅基板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項9】
支持体上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を含む膜厚10μm以上の厚膜フォトレジスト層を積層する積層工程と、
前記厚膜フォトレジスト層に、選択的に電磁波または粒子線を含む放射線を照射する露光工程と、
前記露光工程において露光された前記厚膜フォトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程と、
を含むことを特徴とする厚膜レジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2010−185986(P2010−185986A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29088(P2009−29088)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】