説明

原稿搬送装置、画像形成装置

【課題】原稿のセットのしやすさを確保しつつ、厚手の原稿の場合においても、搬送途中の原稿詰まりや、原稿搬送速度の不等速による画像品質の低下の虞を払拭できる原稿搬送装置、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】原稿を挿入させる第1挿入口50cと、第1挿入口50cの下方に設けられ原稿が排出される第1排出口50dとを、略C字状に搬送可能に連絡されると共に、C字状低部Aで小プラテンガラス73に原稿が沿うように形成された第1搬送路部と、C字状低部Aを挟んで第1排出口50dと反対側に第2排出口50gが設けられ、第1排出口50dを、原稿を挿入させる第2挿入口50dとさせて、第2挿入口50dから挿入された原稿を、C字状低部Aを介して第2排出口50gから搬送可能に連絡された第2搬送路部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置本体に原稿画像を読み取らせるために、その原稿を搬送させる原稿搬送装置と、その原稿搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機や、ファクシミリ装置と複写機機能を組み合わせた複合機のような画像形成装置は、大きいプラテンガラスの上に原稿を載せて、原稿画像を読取モジュールに読み取らせるものとは別に、大きいプラテンガラスの近くに小さいプラテンガラスを設け、その小さいプラテンガラスに沿うように原稿を搬送させて原稿画像を読取モジュールに読み取らせる原稿搬送装置がある。この原稿搬送装置は、大小のプラテンガラスの上に原稿を押さえ込むプラテンカバーを兼ねており、画像形成装置本体に対して開閉可能になっている。
【0003】
このような原稿搬送装置における原稿搬送の態様としては、例えば、原稿が排出される排紙トレイの上方に原稿をセットする原稿トレイを設け、小さいプラテンガラスを経由するように且つ原稿トレイと排紙トレイとを結ぶようにC字状の搬送路を設け、その搬送路内に、適宜、回転可能な搬送用のローラを設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
原稿搬送の他の態様としては、排紙トレイの下方に原稿トレイを設け、その排紙トレイと原稿トレイとの間に反転トレイを設け、小さいプラテンガラスを経由するように且つ原稿トレイと排紙トレイと反転トレイとを夫々結ぶようにC字状の搬送路を設け、さらに、小さいプラテンガラスを挟んで原稿トレイの反対側に第2排紙トレイを設け、その第2排紙トレイと搬送路とを水平状に結ぶ排出路を設け、搬送路内に、適宜、回転可能な搬送用のローラを設けたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
前者の原稿搬送の態様は、原稿が排出される排紙トレイの上方に原稿をセットする原稿トレイを設けて、原稿トレイの上方に遮る部材がないことから、原稿のセットがしやすいが、後者の原稿搬送の態様は、両面原稿を搬送路で反転させる必要があることから、必然的に、原稿が排出される排紙トレイの下方に原稿をセットする原稿トレイを設けており、排紙トレイが邪魔して原稿のセットがしづらい。
【0006】
ところで、ユーザーの使用する原稿の種類(紙種)には様々なものがあり、特に厚手の原稿の場合、C字状の搬送路内で屈曲しにくく、搬送路の途中で詰まったり、用紙搬送が一定の速度で搬送できずに画像が伸びたりする虞がある。
そこで、上述した特許文献2のように原稿トレイと第2排紙トレイとを、搬送路、小さいプラテンガラス、排出路を介して、原稿をUターンさせずに搬送可能に構成することで、厚手の用紙の原稿を安全・確実に搬送が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の原稿搬送の態様のままでは、上述したように、原稿のセットがしづらい。
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、原稿のセットのしやすさを確保しつつ、厚手の原稿の場合においても、搬送途中の原稿詰まりや、原稿搬送速度の不等速による画像品質の低下の虞を払拭できる原稿搬送装置、画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる原稿搬送装置、画像形成装置は、下記の技術的手段を講じた。
請求項1にかかる発明は、プラテンガラスに沿うように原稿を搬送させて、前記プラテンガラスの下方に位置した読取モジュールで原稿画像を読み取らせる原稿搬送装置であって、前記原稿を挿入させる第1挿入口と、該第1挿入口の下方に設けられ前記原稿が排出される第1排出口とを、略C字状に搬送可能に連絡されると共に、C字状低部で前記プラテンガラスに前記原稿が沿うように形成された第1搬送路部と、前記C字状低部を挟んで前記第1排出口と反対側に第2排出口が設けられ、前記第1排出口を、前記原稿を挿入させる第2挿入口とさせて、該第2挿入口から挿入された前記原稿を、前記C字状低部を介して前記第2排出口から搬送可能に連絡された第2搬送路部とを備えた原稿搬送装置を特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記原稿がセットされる原稿トレイと、該原稿トレイに設けられ、該原稿トレイにセットされた複数枚の原稿から1枚ずつ原稿を分離させて送り出すピックアップ部とを備え、前記第1挿入口または前記第2挿入口へ前記原稿を送り込み可能に、前記原稿トレイと前記ピックアップ部とを移動可能に構成されたことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項2において、前記原稿トレイは、その原稿後端側を支点にして揺動可能に構成されていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3の何れか1項において、前記第1排出口から排出された前記原稿を載せる第1排紙トレイと、前記第2排出口から排出された前記原稿を載せる第2排紙トレイとを備え、該第2排紙トレイは、前記プラテンガラスが設けられた画像形成装置本体の側部より外方に突出するように設けられると共に、折り畳み可能、または、着脱可能、または、折り畳み及び着脱可能に構成されていることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の原稿搬送装置を備えた画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原稿のセットのしやすさを確保しつつ、厚手の原稿の場合においても、搬送途中の原稿詰まりや、原稿搬送速度の不等速による画像品質の低下の虞を払拭できる原稿搬送装置、画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態にかかる原稿搬送装置を備えた電子写真方式の画像形成装置の概略を示した模式図である。
【図2】図1の要部の部分拡大図である。
【図3】原稿搬送路を切り替えた状態の原稿搬送装置の概略を示した模式図である。
【図4】図3の要部の部分拡大図である。
【図5】図3において第2排紙トレイを取り外した状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる原稿搬送装置を備えた電子写真方式の画像形成装置の実施の形態を、図1〜図5を参照しながら説明する。本実施の形態にかかる画像形成装置は、装置本体1の側面中途部に排紙トレイ部40を設けた、所謂、胴内排紙タイプのフルカラー出力可能なものが例示されており、本発明の要部である原稿搬送装置は、装置本体1の頂面部内に設けられた大小のプラテンガラスを開閉可能にカバーするプラテンカバー50を筐体として構成されている。
先ず、画像形成装置の装置本体1の概略を、図1を参照しながら説明する。
【0012】
装置本体1は、装置本体1の中央部に設けられた画像形成部2と、装置本体1の下部に設けられ画像形成部2において画像が形成されるシートを給紙する給紙部20と、画像形成部2の上方に設けられた画像読み取り部30とを備える。
【0013】
画像形成部2は、所定の間隔をあけて互いに平行に配置され、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、黒トナー像がそれぞれ形成される複数のドラム状の感光体3a、3b、3c、3dと、各感光体3a、3b、3c、3dの下部に複数の支持ローラ5、6によって水平状に回転可能に掛け渡された中間転写ベルト4と、各感光体に設けられ感光体表面に帯電処理を行う帯電装置7と、画像情報を感光体表面にレーザ光で照射する光走査装置(LSU)8と、各感光体に設けられ露光により感光体表面に形成された静電潜像を可視像化する現像装置9と、中間転写ベルト4を介して感光体3a、3b、3c、3dと対向配置された転写装置10と、中間転写ベルト4に転写後の感光体表面に残留するトナーを除去回収するクリーニング装置11と、中間転写ベルト4を挟んで、支持ローラ6に対向して配置された2次転写ローラ12とを備える。
【0014】
給紙部20は、画像形成部2の下部に配置されており、転写紙又は樹脂フィルムなどから成るシートを積載するシート収容部としての給紙トレイ21と、該給紙トレイ21に積載されたシートを送り出す給紙コロ22と、重送されたシートを1枚に分離する分離手段としてのフリクションパッド23と、両面画像形成時に用いる再搬走路24とを備える。
【0015】
画像読み取り部30は、大プラテンガラス34と、小プラテンガラス73と、読取モジュール35とを備える。
【0016】
大プラテンガラス34は、装置本体1の頂面部に形成された大開口部に塞ぐように設けられており、所望の原稿を載置させるようになっている。
【0017】
小プラテンガラス73は、装置本体1の頂面部の、大開口部の横方に設けられた小開口部に塞ぐように設けられており、所望の原稿が、後述する原稿搬送装置によって、沿いながら移動するようになっている。
【0018】
読取モジュール35は、大プラテンガラス34の上にセットされた原稿画像を走査して光学的に読み取り可能に、且つ、小プラテンガラス73直下に移動・停止して、後述する原稿搬送装置で搬送中の原稿の原稿画像を光学的に読み取り可能に構成され、排紙トレイ部40の上方に設けられている。
【0019】
以上のように構成された装置本体1の一連の動作を説明する。
先ず、操作者が、装置本体1の入力部を操作して画像形成(複写)を開始すると、画像読み取り部30によって、大プラテンガラス34の上、または、小プラテンガラス73上の原稿画像を読み取って画像情報を生成する。画像形成部2は、原稿画像を読み取り開始直後に、画像形成を開始する。
【0020】
この画像形成は、先ず、感光体3a、3b、3c、3dが、図1において反時計方向に回転駆動し、帯電装置7によって感光体表面が所定の極性に帯電する。次いで、その帯電面に、光走査装置8から画像情報に基づくレーザ光を照射し、これによって感光体表面に静電潜像を形成する。そして、感光体表面に形成した静電潜像は、現像装置9が、トナー像として可視像化し、転写装置10が、中間転写ベルト4上にトナー像を転写する。
【0021】
カラー画像形成時は、上記した画像形成動作が全ての感光体3a、3b、3c、3dで行われ、これによって各感光体に夫々形成した、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及び黒トナー像を、中間転写ベルト4上に順次重ねて転写する。
【0022】
一方、給紙部20は、シートを給紙し、シートの先端が、停止しているレジストローラ13に突き当たるまでレジストローラ13に向けて送り出す。レジストローラ13は、中間転写ベルト4上に形成したカラートナー像(またはモノクロトナー像)が2次転写ローラ12を設けた2次転写部でシートの先部と合致するようなタイミングで回転を開始し、2次転写部に向けてシートを送り出す。
【0023】
2次転写部で未定着トナー像が転写されたシートは、定着部14に送られる。定着部14によって、シートに未定着トナー像を定着した後、排紙ローラ16が、装置本体1の中途部に設けられた排紙トレイ部40にシートを排出して一連の動作が終了する。なお、トナー像転写後の中間転写ベルト4の表面に付着する転写残トナーは、ベルト用のクリーナー15によって除去される。
【0024】
次に本発明の要部である原稿搬送装置を詳述する。
本実施の形態にかかる原稿搬送装置は、図1及び図2に示すように、プラテンカバー50と、第1搬送路部と、第2搬送路部と、原稿トレイ部と、第2排紙トレイ90(排紙トレイ)と、制御部(図示せず)とを備える。
【0025】
プラテンカバー50は、装置本体1の頂面部を被いこみ可能な正面視略L字状に形成されており、装置本体1の正面側から開閉可能に、装置本体1の背面側上部とヒンジを介して接続されている。このプラテンカバー50は、大プラテンガラス34上、または、小プラテンガラス73上の原稿を画像読み取り部30で読み取る際に、その原稿を押さえ込ませると共に、一方側に隆起した凸部50aに原稿搬送装置の機構部を組み込ませる原稿搬送装置の筐体にもなっている。また、このプラテンカバー50は、凸部50aを除いた低い上面が、読み取られた原稿を載置する第1排紙トレイ50bになっている。
【0026】
第1搬送路部は、第1搬送路50eと、搬送ローラ部と、背板74と、第1ガイド板71と、第2ガイド板72とを備える。
【0027】
第1搬送路50eは、凸部50aの、第1排紙トレイ50b側の側面上部に開口された第1挿入口50cと、凸部50aの、第1排紙トレイ50b側の側面下部に開口された第1排出口50dとを、複数のガイド壁で略C字状に連絡させると共に、C字状低部Aが小プラテンガラス73と対向するように設けられている。
【0028】
搬送ローラ部は、第1搬送路50e内に回転可能に設けられた複数の搬送ローラからなり、第1挿入口50c近傍の一対の第1搬送ローラ65を基点にして反時計回りに順に、一対の第2搬送ローラ66と、一対の第3搬送ローラ67a、67bと、一対の第4搬送ローラ68と、第1排出口50d近傍の一対の第5搬送ローラ69とを備える。このうち、一対の第3搬送ローラ67a、67bと、一対の第4搬送ローラ68は、第1搬送路50e(及び第2搬送路50f)のC字状低部Aを避けるように設けられている。
【0029】
背板74は、両縁を上方に屈曲させた帯板状に形成され、原稿が小プラテンガラス73に沿うように、第1搬送路50e(及び第2搬送路50f)のC字状低部Aの空隙上部から突き出るように設けられている。
【0030】
第1ガイド板71は、第3搬送ローラ67aを背にして小プラテンガラス73の方向に向けた先鋭状の先部が上下に揺動可能に設けられた帯状部材であり、第1搬送路部による原稿搬送時に、原稿が小プラテンガラス73に沿うように先部を位置させ、後述する第2搬送路部による原稿搬送時に、原稿が第2排出口50gへ向かうように、先部を上方に位置させて第1搬送路50eの中途部を塞ぐようになっている。
【0031】
第2ガイド板72は、小プラテンガラス73の右端側に先鋭状の先部を位置させ、一対の第4搬送ローラ68近傍を揺動中心とさせた帯状部材であり、第1搬送路部による原稿搬送時に、原稿を掬い上げ可能に先部を下方に位置させ、後述の第2搬送路部による原稿搬送時に、原稿が小プラテンガラス73に沿うように先部を上位(僅かである)に位置させるようになっている。
【0032】
第2搬送路部は、第2搬送路50fと、搬送ローラ部と、第1ガイド板71と、第2ガイド板72と、背板74とを備える。
第2搬送路50fは、第1排出口50dを、原稿を挿入させる第2挿入口とさせ、C字状低部Aを挟んで第1排出口50dと反対側に設けられた第2排出口50gと、その第2挿入口50dとを、水平方向に連絡させてなる。この第2搬送路50fは、第1排出口50dからC字状低部Aまでを第1搬送路50eと共用させている。
【0033】
搬送ローラ部は、上述した一対の第5搬送ローラ69と、上述した一対の第4搬送ローラ68と、一対の第3搬送ローラ67a、67bのうち、第3搬送ローラ67aのみ共用とさせた第2排出口50g近傍の一対の第6搬送ローラ67a、67cとを備える。この第5搬送ローラ69と、上述した一対の第4搬送ローラ68と、第5搬送ローラ67aは、正逆可能に回転駆動されるようになっている。
【0034】
第1ガイド板71と第2ガイド板72と背板74は、上述のもので、第1搬送路部と共用させている。
原稿トレイ部は、原稿トレイ80と、ピックアップ部としてのピックアップコロ81とを備える。
【0035】
原稿トレイ80は、トレイ本体80aと、トレイ本体80aの下部に設けられトレイ本体80aの中途部を支点として図示しない弾性部材で上方へ押し上げる力を受けた上昇板80bと、その上昇板80bの下部の表面に設けられた分離パッド80cとを備え、原稿トレイ80の最下部が、第1挿入口50cに対応した上段、または、第2挿入口50dに対応した下段の何れかに位置されるように、原稿後端側である原稿トレイ80の最上部を支点80dとして揺動可能にプラテンカバー50に支持されている。
【0036】
ピックアップコロ81は、図示しない駆動モータにより回転可能に、且つ、分離パッド80cの対向するように原稿トレイ80に支持されており、原稿トレイ80にセットされ、上昇板80bにより押し上げ力を受けた複数枚の原稿のうち、最上段の原稿のみを分離させて送り出すようになっている。
【0037】
第2排紙トレイ90は、第2排出口50gから排出された原稿を載置させるもので、その基部が、第2排出口50gより下方の装置本体1の側部に設けられた支軸部91に所要角度回動可能に接続されて、装置本体1の側部から外方に突出するように、且つ、先側が上向くように位置固定されると共に、その支軸部91を回転中心にして、垂直状に折り畳み可能になっている。また、この第2排紙トレイ90は、支軸部91から容易に取り外し可能にもなっており、第2排出口50gから原稿の排出を行わないときに、第2排紙トレイ90を装置本体1の側部より外方に突出しない状態にすることで、省スペース化を達成できる。第2排紙トレイ90を取り外した状態を、図5に示す。なお、本実施の形態では、第2排紙トレイ90を折り畳み及び着脱可能なものを例示したが、何れか一方の構造でもよい。また、第2排紙トレイ90を、プラテンカバー50に支持させても良い。
【0038】
制御部は、装置本体1の入力部により、第1搬送路部による原稿搬送か、第2搬送路50f部による原稿搬送かのいずれかを選択入力可能に構成されると共に、その選択入力された搬送路部を駆動させるようになっている。この制御部による一連の動作は、以下の動作説明に代えるものとする。
【0039】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかる原稿搬送装置の一連の動作を説明する。
【0040】
(1)第1搬送路部を用いる場合(図1及び図2参照)。
操作者が、装置本体1の入力部を介して第1搬送路部による原稿搬送を選択入力する。
読取面を上向きにして複数枚の原稿(原稿束)を、上段に位置させた原稿トレイ80にセットする。原稿トレイ80にセットされた原稿束は、その先部分が、上昇板80bの支点を回転中心とした回転によって押し上げられて、ピックアップコロ81に、最上段の原稿が当接する。
【0041】
操作者が、装置本体1の入力部を操作して画像形成(複写)を開始すると、第1搬送ローラ65と、第2搬送ローラ66と、第3搬送ローラ67a、67bと、第4搬送ローラ68と、第5搬送ローラ69とが回転を開始する。これと同時に、第1ガイド板71は、その先部が、小プラテンガラス73の上面よりも高く、原稿が通過可能な位置まで下降する。また、第2ガイド板72は、その先部が、小プラテンガラス73の上面よりも低い位置に下降する。
【0042】
そして、上昇板80bのピックアップコロ81に対向する位置に設けた分離パッド80cによる摩擦抵抗と、ピックアップコロ81の回転とによって、最上段の原稿のみが分離し、その原稿が、第1挿入口50cを介して、第1搬送路50eに送り込まれる。
【0043】
送られた1枚の原稿は、第1搬送ローラ65と、第2搬送ローラ66と、第3搬送ローラ67a、67bとによって、第1搬送路50e内を移動し、小プラテンガラス73の上面よりも高く且つ原稿が通過可能な位置に先部を下降させた第1ガイド板71によって、小プラテンガラス73の上面に導かれる。このとき、原稿は、屈曲した背板74の左側の縁に原稿の先端があたり、その屈曲した縁によって下方に導かれ、背板74と小プラテンガラス73とで形成された水平な間隙に導かれる。
【0044】
背板74と小プラテンガラス73の間に設けられた水平な間隙を原稿が通過する時に、読取モジュール35により原稿画像を読み取り、先部を小プラテンガラス73の上面よりも低い位置に下降させた位置に移動させた第2ガイド板72によって、原稿の先部分がすくい上げられて、第1搬送路50eの後半部分に送られる。第4搬送ローラ68及び第5搬送ローラ69によって原稿が搬送され、第1排出口50dを介して、プラテンカバー50上の第1排紙トレイ50bに排出される。
【0045】
(2)第2搬送路部を用いる場合(図3及び図4参照)。
第1搬送路部による原稿搬送では、搬送路の曲率によって搬送抵抗が大きくなりすぎるような腰の強い原稿や厚手の用紙の原稿の場合、操作者は、装置本体1の入力部を介して第2搬送路部による原稿搬送を選択入力する。これと前後して、第2排紙トレイ90を傾斜させる。
【0046】
読取面を下向きにして複数枚の原稿(原稿束)を下段に位置させた原稿トレイ80にセットする。原稿トレイ80にセットされた原稿束は、その先部分が、上昇板80bの支点を回転中心とした回転によって押し上げられて、ピックアップコロ81に、最上段の原稿が当接する。
【0047】
操作者が、装置本体1の入力部を操作して画像形成(複写)を開始すると、第5搬送ローラ69と、第4搬送ローラ68と、第6搬送ローラ67a、67cとが、第1搬送路部を用いた場合の搬送ローラの回転方向とは逆方向に回転を開始する。
これと同時に、第1ガイド板71は、その先部が、第1搬送路50eの中途部を塞いで、原稿が第2排出口50gへ向かうように上昇する。また、第2ガイド板72は、その先部が、小プラテンガラス73の上面よりも高く、原稿が通過可能な位置まで上昇する。
【0048】
そして、上昇板80bのピックアップコロ81に対向する位置に設けた分離パッド80cによる摩擦抵抗と、ピックアップコロ81の回転とによって、最上段の原稿のみが分離し、その原稿が、第2挿入口50dを介して、第2搬送路50fに送り込まれる。
【0049】
送られた1枚の原稿は、第5搬送ローラ69と、第4搬送ローラ68とによって、第2搬送路50f内を移動し、その先部が、小プラテンガラス73の上面よりも高く、原稿が通過可能な位置まで上昇した第2ガイド板72によって、小プラテンガラス73の上面に導かれる。このとき、原稿は、屈曲した背板74の右側の縁に原稿の先端があたり、その屈曲した縁によって下方に導かれ、背板74と小プラテンガラス73とで形成された水平な間隙に導かれる。
【0050】
背板74と小プラテンガラス73の間に設けられた小さな水平な間隙を原稿が通過する時に、読取モジュール35により原稿画像を読み取り、先部で第1搬送路50eの中途部を塞いだ第1ガイド板71によって、原稿が第1挿入口50cに向かって逆送することなく第2搬送路50fの後半部分に送られる。第6搬送ローラ67a、67cによって原稿が搬送され、第2排出口50gを介して第2排紙トレイ90に排出される。
【0051】
このように、本実施の形態にかかる原稿搬送装置によれば、原稿が排出される第1排紙トレイ50bの上方に原稿をセットする原稿トレイ80を設けて、原稿のセットのしやすさを確保しつつ、原稿搬送方向が水平方向となる第2搬送路部を用いることで、搬送途中の原稿詰まりや、原稿搬送速度の不等速による画像品質の低下の虞を払拭でき、腰の強い原稿や厚手の原稿などにも対応できる。
【0052】
また、原稿の種類に応じて原稿トレイ80の位置を替えて使用するから、原稿のセットのしやすさの他、部品点数の削減、装置のコストダウン、故障率の低下などの効果を奏する。
また、第1ガイド板71と第2ガイド板72とを設けたことによって、第1搬送路部と第2搬送路部との双方における、原稿の読み取り、及び、第1排出口50dまたは第2排出口50gへの排出をスムーズに行うことができる。
【0053】
以上、本実施の形態にかかる原稿搬送装置を備えた画像形成装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1‥装置本体 2‥画像形成部 20‥給紙部 21‥給紙トレイ 22‥給紙コロ 23‥フリクションパッド 24‥再搬走路 30‥画像読み取り部 34‥大プラテンガラス 35‥読取モジュール 3a〜3d‥感光体 4‥中間転写ベルト 5、6‥支持ローラ 7‥帯電装置 8‥光走査装置 9‥現像装置 10‥転写装置 11‥クリーニング装置 12‥2次転写ローラ 13‥レジストローラ 14‥定着部 15‥ベルト用のクリーナー 16‥排紙ローラ 50‥プラテンカバー 50a‥凸部 50b‥第1排紙トレイ 50c‥第1挿入口 50d‥第1排出口、第2挿入口 50e‥第1搬送路 50f‥第2搬送路 50g‥第2排出口 71‥第1ガイド板 72‥第2ガイド板 73‥小プラテンガラス 74‥背板 65‥第1搬送ローラ 66‥第2搬送ローラ 67a、67b‥第3搬送ローラ 68‥第4搬送ローラ 69‥第5搬送ローラ 67a、67c‥第6搬送ローラ 80‥原稿トレイ 80a‥トレイ本体 80b‥上昇板 80c‥分離パッド 80d‥支点 81‥ピックアップコロ 90‥第2排紙トレイ 91‥支軸部 A‥C字状低部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2008‐024436号公報
【特許文献2】特開2005−162458号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンガラスに沿うように原稿を搬送させて、前記プラテンガラスの下方に位置した読取モジュールで原稿画像を読み取らせる原稿搬送装置であって、
前記原稿を挿入させる第1挿入口と、該第1挿入口の下方に設けられ前記原稿が排出される第1排出口とを、略C字状に搬送可能に連絡されると共に、C字状低部で前記プラテンガラスに前記原稿が沿うように形成された第1搬送路部と、
前記C字状低部を挟んで前記第1排出口と反対側に第2排出口が設けられ、前記第1排出口を、前記原稿を挿入させる第2挿入口とさせて、該第2挿入口から挿入された前記原稿を、前記C字状低部を介して前記第2排出口から搬送可能に連絡された第2搬送路部と
を備えたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記原稿がセットされる原稿トレイと、該原稿トレイに設けられ、該原稿トレイにセットされた複数枚の原稿から1枚ずつ原稿を分離させて送り出すピックアップ部とを備え、前記第1挿入口または前記第2挿入口へ前記原稿を送り込み可能に、前記原稿トレイと前記ピックアップ部とを移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記原稿トレイは、その原稿後端側を支点にして揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記第1排出口から排出された前記原稿を載せる第1排紙トレイと、前記第2排出口から排出された前記原稿を載せる第2排紙トレイとを備え、該第2排紙トレイは、前記プラテンガラスが設けられた画像形成装置本体の側部より外方に突出するように設けられると共に、折り畳み可能、または、着脱可能、または、折り畳み及び着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の原稿搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−123281(P2011−123281A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280613(P2009−280613)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】