説明

反応器−再生器装置及びスチレンの製造におけるその使用

炭化水素の触媒脱水素反応のための少なくとも一つの反応器と、「迅速上昇管」型の少なくとも一つの触媒再生器とを具備する反応器−再生器装置において、前記再生器−上昇管は、固相に密接に接触した気相を含む化学反応のための実質的に管状の装置であり、該気相及び固体粒子は並流で上方に移動する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、反応器−再生器装置、及びスチレンの製造におけるその使用に関する。
より詳細に言えば、本発明は、炭化水素の触媒脱水素反応のための少なくとも一つの反応器と、迅速上昇管型の少なくとも一つの触媒再生器とを具備した、反応器−再生器装置に関する。
【0002】
さらに詳細に言えば、本発明は、任意にエタンと混合されたエチルベンゼンの脱水素における、前記反応器−再生器装置の使用に関する。特に、本発明の反応器−再生器装置は、スチレンの製造において使用することができる。
【0003】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する「迅速上昇管」の用語は、固相に緊密に接触した気相を含む化学反応のための実質的に管状の装置であって、ガス及び固体粒子が並流で上方に移動し、ガスの見かけ速度が固体粒子の終端速度よりも高く、好ましくは前記終端速度の2倍高い反応器を言う。該反応器は、気相、例えば再生ガス(空気、酸素又は酸素富化空気)が粒子形態の固体と接触する反応のために特に適しており、ここでの化学反応、例えば粒子形状の排出された触媒の再生は、「迅速上昇管型反応器」に典型的な短時間の接触で起きるように充分に迅速である。
【0004】
吸熱触媒反応、例えば脱水素反応を行うためのプロセス及び装置が文献において知られており、例えば、Zenz及びOthmerが「流動化及び流動粒子系」(Reinhold Publishing,1960)に記載した「SODモデルIV」反応器である。
【0005】
エチルベンゼンのようなアルキル芳香族炭化水素を脱水素して、スチレンのような対応するビニル芳香族誘導体を与えるためのプロセスも、文献において知られている。例えば、米国特許第6,031,143号は、スチレン及びエチレンの同時製造のためのプロセスであって、エチルベンゼン及びエタンを脱水素反応器に供給して、アルミナ上に支持された酸化ガリウムに基づく触媒系により、エチレン及びスチレンを製造することを含んでなるプロセスを記載している。この脱水素反応器は、排出される触媒を連続的に受取る再生反応器と組合せて動作し、該触媒は再生及び加熱された後に、さらに連続的に脱水素区画へと再供給される。
【0006】
上記に要約したプロセスは、ガス及び固体の向流の流れを伴って脱水素反応及び触媒の再生相の両者に作用する、反応器及び流動床再生器からなるシステムの使用を想定している。しかし、流動床は、適切に動作できるように製造能力に比例して、大きなサイズの設備及び大量の触媒を必要とする欠点を有している。流動床反応器内のガスの見かけ速度は、実際のところ触媒の空気圧搬送速度によって必然的に制限され、一般には100〜150cm/秒未満である。
【発明の開示】
【0007】
本発明の一つの目的は、流動条件下でも動作するが、上記で述べた公知技術の欠点なしに気相において脱水素反応を実行することを可能にする、反応器−再生器装置を提供することである。
【0008】
従って、本発明の一つの目的は、エチルベンゼン及び/又はエタンの触媒脱水素反応を気相において実行するための反応器−再生器装置であって、粒子形状の固形触媒の存在下での脱水素反応に適した少なくとも一つの反応容器と、該反応容器に直接接続されかつ迅速上昇管から成る触媒再生器とを具備し、該上昇管においてはガス及び固体が並流で上方に移動し、ガスの見かけ速度は固体粒子の終端速度よりも高く、好ましくは該終端速度の2倍よりも高い反応器−再生器装置に関する。ガスの見かけ速度は、壁の腐蝕現象を回避し、且つ固体粒子の摩擦を最小化するために、好ましくは30m/秒よりも低い。
【0009】
本発明によれば、反応容器は、流動床において行われる反応のための1以上の反応器、好ましくは、新鮮な触媒又は再生触媒が頂部から充填される一方、気相の試薬が底部に近接した位置で特別の分配器を通して供給される反応器からなることができる。従って、反応容器の基部に供給されるガスは、下降する触媒に対して向流で上昇し、それを流動床状態下に維持する。各反応容器の内部には、ガス及び触媒の再混合を防止できる適切な内部構造体、例えば円筒状の格子又は棒が配置されて、各反応容器内部においてガスの上昇流及び固体の下降流が栓流になるようになっている。栓流の存在は、一般に、脱水素反応の変換及び選択性を改善する。
【0010】
或いは、充分に活性な触媒が入手可能であれば、反応容器は、再生器上昇管におけるような流動条件下で動作する、少なくとも一つの上昇管反応器からなることができる。米国特許第6,031,143号のように、試薬系がエチルベンゼン/エタンの混合物を含む脱水素反応の場合、該反応器上昇管は、速度論的観点及び熱力学的観点から各脱水素反応が最も好ましい動作条件で行われることを可能にするために、異なる高さに少なくとも二つの供給点(各ガス成分について一つ)を含むことができる。
【0011】
或いは、平行に配置された少なくとも二つの反応器上昇管が存在することができ、その各々が、それぞれの試薬ガス又は適切なガスの混合物を供給され、該混合物は希釈剤機能を持ったもう一つの反応器上昇管からの流出ガスを含むことができる。触媒は、種々の反応器上昇管に沿って直列に流れ、試薬ガスによって並流的に上方へと運ばれ、次いで重力により、後続の反応器−上昇管の基部へと下方に運ばれる。
【0012】
本発明の更なる実施形態に従えば、再生器−上昇管から直接来る触媒は、任意に、各反応に便利な温度へと触媒の一部を冷却するために幾つかの熱交換器を挿入して、種々の反応器上昇管へと平行に供給することができる。
【0013】
ガス及び固体が並流で上方に移動する前記反応器−上昇管の各々において、前記ガスの見かけ速度は、前記固体粒子の終端速度よりも高く、好ましくは該終端速度の二倍よりも高い。ガスの見かけ速度は、反応器−上昇管についても、壁の腐蝕現象を回避し、固体粒子の摩擦を最小化するために、好ましくは30m/秒未満である。
【0014】
反応容器は、搬送ラインによって反応器−上昇管に直接連結され、該搬送ラインは、流動床反応器の底部で回収され、又は反応器−上昇管の頂部から回収される使用済み触媒を、不活性ガスでよい担体ガスを用いて、又は再生ガス自身を担体ガスに用いて再生器に搬送することを可能にする。
【0015】
再生ガスは高温で供給され、空気、酸素、或いは窒素若しくは不活性ガスで希釈され、又は酸素で濃縮された空気若しくは酸素から選択される。使用済み触媒の再生は、専ら再生ガスを用いて、反応残渣、例えば触媒上に堆積したピッチ又は石炭のような炭素質残渣の酸化/燃焼によって行われる。さらに、触媒は再生器上昇管の中でも加熱されて、反応容器の中に存在する脱水素反応のための動作温度になるので、再生された触媒の加熱を、メタン若しくはLPGのような前記可燃ガスの触媒燃焼によって、又は脱水素反応自身からくる水素の燃焼によって行うように、可燃ガスの入口点は再生器−上昇管の基部が想定され、また異なる高さも想定される。
【0016】
本発明の目的である反応器−再生器装置はまた、再生された触媒を、これを随伴する気相から回収するために、再生器−上昇管の出口に配置された分離装置を具備することができる。該分離装置はサイクロン分離機からなることができ、その底部において前記再生された触媒が回収され、該触媒は不活性ガス、例えば窒素でのストリッピングにより可能な随伴する再生ガスを排除され、担体として例えば試薬ガスを用いて前記反応容器へと循環される。本発明の目的である装置において、再生ガスから触媒を分離するのに適し且つこの目的のために使用できる装置が、米国特許第4,043,899号に記載されている。
【0017】
本発明の更なる目的は、上記で述べた反応器−再生器装置を使用する、エチルベンゼン及び/又はエタンの気相における触媒脱水素反応を実行するための方法に関する。二成分試薬ガス、すなわちエチルベンゼン+エタンの場合、本発明の目的である反応器−再生器システムは、特許請求の範囲により良く定義されるように、イタリア特許第1,295,072号及びその対応する外国特許に記載された、組込まれたプロセスと組合せて使用することができる。
【0018】
より詳細に言えば、本発明の更なる目的は、気相中においてエチルベンゼン及び/又はエタンの触媒脱水素反応を行うための方法であって、下記のことを含んでなる方法に関する:
(i)触媒を含みかつ流動条件下、例えば流動床条件下で動作する、触媒脱水素反応を行うために適した少なくとも一つの反応容器を含む区画へ、試薬ガスを連続的に供給すること;
(ii)前記工程(i)の容器の頂部から反応生成物を放出させて、それを後続の未反応成分の分離工程及び回収/再循環工程に送ることと;
(iii)前記反応容器からの触媒の排出流を連続的に取出し、特定の装置内での不活性ガスを用いた任意のストリッピングの後に、該触媒に対して並流の再生ガスを担体に用いて、再生器−上昇管を備えた再生/加熱区画へと供給することと;
(iv)前記再生器−上昇管の頂部から再生され加熱された触媒の流れを連続的に取出し、特定の装置内での不活性ガスを用いた任意のストリッピングの後に、試薬ガス、又はエチルベンゼン/エタン混合物の場合にはエタンを担体に用いて、これを前記脱水素反応器へと供給する工程。
【0019】
エタン/エチルベンゼン混合物のような二成分試薬ガスの場合は、反応容器として、国際特許出願WO 02/96844に記載のものに類似した反応器−上昇管、又は各々がこれらガスの一方を供給され且つ関与する反応のために最も好ましい熱力学的条件下に維持される一対の反応器−上昇管を使用することが可能である。
【0020】
脱水素反応が生じる区画において、温度は400〜750℃の範囲で変化する。圧力は大気圧、又はそれよりも僅かに高く、試薬の流速は、流動床反応器の場合には100〜1000NL/hLcat、好ましくは150〜450NL/hLcatの範囲に亘るGHSV(1時間当りのガス空間速度)、及び5〜30分、好ましくは10〜15分に亘る触媒の滞留時間が得られるように、又は反応器−上昇管の場合には、2000NL/hLcatを越えるGHSV及び1分未満の固体の滞留時間が得られるように調節される。
【0021】
触媒の再生は、一般に、脱水素反応よりも高い温度、大気圧又はそれよりも僅かに高い圧力、2000NL/hLcatよりも高く、好ましくは3000NL/hLcatよりも高いGHSV、及び1分未満、好ましくは30秒未満の触媒滞留時間で行われる。特に、再生温度は500〜750℃であり、好ましくは、滞留時間は5秒未満である。
【0022】
本発明の目的である脱水素プロセスに使用できる典型的な触媒の例は、イタリア特許出願MI2001A02709に記載されたガリウム及びマンガンに基づくものである。これらの触媒組成物は、該組成物の合計に対して計算したときに、
(a)0.08〜5質量%のシリカで修飾され、またBET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物のアルミナからなる担体と;
(b)Ga23として表される、0.1〜35質量%、好ましくは0.2〜3.8質量%のガリウムと;
(c)Mn23として表される、0.01〜5質量%、好ましくは0.15〜1.5質量%のマンガンと;
(d)質量で0〜100ppm、好ましくは5〜90ppmのプラチナと;
(e)0.05〜4質量%、好ましくは0.1〜3質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物
とを含有する。
【0023】
これらの触媒は、
・支持される成分の1以上の溶液を調製することと;
・該溶液を、シリカで修飾されたアルミナ担体上に分注することと;
・含浸された担体を乾燥することと;
・該乾燥された担体を、500〜900℃に亘る温度で焼成することと;
・任意に、先の工程を1回又は2回繰返すこと
を含んでなる方法に従って調製することができる。
【0024】
これら触媒の調製において、該修飾されたアルミナ担体は、ゲルダルト(Gas Fluidization Technology, D. Geldart, John Wiley & Sons, 1986)に従ってグループAに属するものとして分類された粒子形態である。
【0025】
該担体上での触媒成分の分散は、含浸、イオン交換、蒸着、又は表面吸着のような従来の技術に従って行うことができる。初期の湿式含浸技術が好ましく使用される。
【0026】
ガリウム及びマンガンに基づく触媒は、それぞれの担持された活性金属成分の機械的混合物の形態において効果的であることが立証されている。触媒の機械的混合物の1例は、ガリウム(Ga23)の量が0.2〜3.8質量%、マンガンの量が0.15〜1.5質量%、プラチナの量が質量で5〜50ppm、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物の合計量が0.1〜3質量%であり、100%にするための補完物は、0.08〜5質量%のシリカで修飾され、またBET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物の支持体アルミナであることは明らかである。
【0027】
特に適した触媒の更なる例は、シリカで修飾され、またBET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を好ましくは有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物のアルミナ上の、アルカリ若しくはアルカリ土類金属及びランタニドから選択される1以上のプロモータ及び鉄に基づく国際特許出願PCT/EP00/9196に記載されたものである。より詳細には、これらの触媒は下記のものを含有する:
・1〜60質量%、好ましくは1〜20質量%の酸化鉄;
・0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の少なくとも一つのアルカリ若しくはアルカリ土類金属の酸化物、例えばカリウムの酸化物;
・ランタニドの酸化物、例えばセリウム、ランタン、又はプラセオジムの酸化物から選択される0〜15質量%、好ましくは0.1〜7質量%の第二のプロモータ;
・100%にするための補完物である0.08〜5質量%のシリカで修飾されたアルミナ。
【0028】
触媒の他の例は、ヨーロッパ特許第637,578号に記載されたガリウム及びプラチナに基づくものである。ガリウム及びプラチナに基づく触媒は、下記を含んでなるものから選択することができる:
・0.1〜34質量%、好ましくは0.2〜3.8質量%のGa23
・1〜99ppm(質量)、好ましくは3〜80ppmのプラチナ;
・0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の酸化物、例えばカリウムの酸化物;
・0.08〜3質量%のシリカ;
100%にするための補完物は、BET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物のアルミナである。
【0029】
反応器−再生器装置、及びその気相触媒脱水素反応における使用のための方法は、例示的で且つ非制限的実施形態を表す添付の図1及び図2を参照することによって、より良く理解することができる。ここで、
図1は、反応器−再生器装置を表しており、該反応器は流動床容器からなり、処理される気相は二成分系(エチルベンゼン及びエタンの混合物)であり、
図2は、反応器−再生器装置を表しており、該反応器は反応器−上昇管からなり、気相は二成分系(エチルベンゼン及びエタンの混合物)である。
【0030】
図を参照すると、本発明の目的である反応器−再生器装置の第一の可能な実施形態は、バブリング流動床において、ガス及び固体の流れを向流にして反応を実施することを想定している。この場合、試薬混合物(1)が反応器(RE)に供給され、そこでは固体に対して向流で上昇し、脱水素反応に従って部分的に反応してスチレン及びエチレンを形成した後、流出流(2)によって反応器を出る。触媒は重力によって下降し、窒素又は別の適切なガスからなる流れ(10)によって粒子間ガスからストリップされた後に、流れ(3)によって該反応器を下から流出し、迅速上昇管再生器(RI)の底部に到達する。ここでは、触媒は充分な比率の酸素を含有する流れ(4)によって上方に運ばれ、この流れは、反応の際に生成した表面コークス、及び再生器(RI)の適切な高さに注入されるガス燃料(5)の両方を燃焼させることができる。この向流のガス及び固体の流れは、任意にストリッパー(S)を含むことができる分離ユニットに導入され、ここでは、ガスの低下した見かけ速度の結果として、固体は下方に落下する一方、燃焼後のガスの流れ(6)は上方から当該システムを出て行く。固体はストリッピングガス(8)に対して向流で下降し、流れ(7)によってストリッパーを出て行き、反応器(RE)の触媒床の上部へと搬送される。
【0031】
別の実施形態(図2)では、両者共に迅速上昇管型の再生器(R1)及び反応器(R2)を、適切な触媒と結合させることができる。この場合、熱力学的により安定な炭化水素(エタン)が、流れ(9)によって反応器−上昇管(R2)の底部へと供給される一方、より安定性の低い炭化水素(エチルベンゼン)は、流れ(10)によって該上昇管に沿った適切な高さに供給され、そこでは触媒を冷却したエタンの脱水素反応の結果として、高い選択性でのエチルベンゼンのスチレンへの脱水素を可能にするような温度になる。反応したガス及び触媒の混合物はストリッパ(S2)へと導入され、そこでの離脱ゾーンにおいて、ストリッピングガス(11)は上方に流れて、流れ(12)により反応器を出て行く一方、固体は、ストリッピングガス(11)に対して向流的に底部に向けて下降して反応器を出て行き(18)、再生器上昇管(R1)の基部へと運ばれる。再生器は、上記で述べた場合と同様に動作し、そこでは高い見かけ速度で供給される酸素を含有する流れ(13)が、ガス及び固体の上方への並流を生じさせる一方、燃料ガス(14)は、(R1)に沿った適切な高さに供給される。この固体及びガスの混合物はストリッパ(S1)に導入され、そこには離脱ゾーンが存在しており、燃焼したガスを上方に流して、流れ(16)により(S1)を出て行くことを可能にする一方、固体はストリッピングガスの流れ(15)に対して向流的に下降し、底部で該ストリッパを出て、反応器−上昇管(R1)の底部へと運ばれる(17)。安定性の低い炭化水素の中間供給に対する代替法として、一連の反応器−上昇管を使用し、それらの各々が最も適切な炭化水素の混合物を下から供給される一方、固体は、熱力学的により安定な炭化水素が供給される反応器から出発して、熱力学的に安定性の低い炭化水素が供給される反応器上昇管で終わるように、一方から他方へと流れるようにすることが可能である。固体は、適切なストリッピングの後に、この後者の反応器から迅速上昇管反応器へと通過する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、反応器−再生器装置を表しており、ここでの反応器は流動床容器からなり、処理される気相は二成分系(エチルベンゼン及びエタンの混合物)である。
【図2】図2は、反応器−再生器装置を表しており、該反応器は反応器−上昇管からなり、気相は二成分系(エチルベンゼン及びエタンの混合物)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相においてエチルベンゼン及び/又はエタンの触媒脱水素反応を実行するための反応器−再生器装置であって、粒子形状の固形触媒の存在下での脱水素反応に適した少なくとも一つの反応容器と、該反応容器に直接接続された触媒再生器とを具備し、該再生器においてはガス及び固体が並流で上方に移動し、ガスの見かけ速度が固体粒子の終端速度よりも高い反応器−再生器装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記ガスの見かけ速度が、固体粒子の終端速度の二倍よりも高い装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、前記ガスの見かけ速度が30m/秒よりも低い装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の装置であって、前記反応容器は、流動床において行われる反応のための1以上の反応器からなり、その中には新鮮な触媒又は再生触媒が頂部から充填される一方、気相の試薬が底部に近接した位置において分配器を通して供給される装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の装置であって、前記反応容器は、再生器−上昇管のような流動状態で動作する少なくとも一つの反応器上昇管からなる装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記反応容器は、エチルベンゼン/エタン混合物からなる試薬系の存在下において、各ガス成分について一つの、少なくとも二つの異なる高さにある供給点を有する反応器−上昇管を含んでなる装置。
【請求項7】
請求項5に記載の装置であって、前記反応容器は、エチルベンゼン/エタン混合物からなる試薬系の存在下において、各々がそれぞれの試薬ガスを供給される少なくとも二つの反応器−上昇管を含んでなる装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記触媒は、種々の反応器−上昇管に沿って直列に流れる装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、前記触媒は、種々の反応器−上昇管に対して並列に流れる装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の装置であって、前記反応容器は搬送ラインによって直接に前記反応器−上昇管に連結され、該搬送ラインは、流動床反応器の底部で回収され又は反応器−上昇管の頂部から回収される使用済み触媒を、再生ガス自身を担体ガスに用いて前記再生器へと搬送することを可能にする装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の装置であって、前記再生ガスは高温で供給され、また空気、酸素、或いは窒素で希釈され、又は酸素が富化された空気若しくは酸素から選択される装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の装置であって、前記再生器−上昇管は異なる高さに可燃性ガスの導入点を含んでおり、前記可燃性ガスの触媒燃焼によって前記再生された触媒の加熱を行う装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の装置であって、前記再生された触媒をそれが随伴するガス相から回収するために、前記再生器−上昇管の出口に配置された分離ユニットを具備する装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置であって、前記分離ユニットはサイクロン分離機からなり、その底部において前記再生された触媒が回収される装置。
【請求項15】
気相中においてエチルベンゼン及び/又はエタンの触媒脱水素反応を行うための方法であって:
(i)触媒を含み且つ流動条件下で動作する、触媒脱水素反応を行うために適した少なくとも一つの反応容器を含む区画へ、試薬ガスを連続的に供給することと;
(ii)前記工程(i)の容器の頂部から反応生成物を放出させて、それを後続の未反応成分の分離工程及び回収/再循環工程に送ることと;
(iii)前記反応容器からの触媒の排出流を連続的に取出し、特定の装置内での不活性ガスを用いた任意のストリッピングの後に、それを、該触媒に対して並流の再生ガスを担体に用いて再生器−上昇管を備えた再生/加熱区画へと供給することと;
(iv)前記再生器−上昇管の頂部から再生及び加熱された触媒の流れを連続的に取出し、特定の装置内での不活性ガスを用いた任意のストリッピングの後に、それを、試薬ガス、又はエチルベンゼン/エタン混合物の場合にはエタンを担体に用いて、前記脱水素反応器へと供給すること
とを含んでなる方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記脱水素反応は、400〜750℃の温度、及び大気圧又はそれよりも僅かに高い圧力で行われる方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法であって、前記触媒の再生は、前期脱水素反応の場合よりも高い温度、大気圧又はそれよりも僅かに高い圧力で行われる方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記再生温度は500〜750℃である方法。
【請求項19】
請求項15〜18の何れか1項に記載の方法であって、前記脱水素触媒が、
(a)0.08〜5質量%のシリカで修飾され、またBET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物のアルミナからなる担体と;
(b)Ga23として表される、0.1〜35質量%、好ましくは0.2〜3.8質量%のガリウムと;
(c)Mn23として表される、0.01〜5質量%、好ましくは0.15〜1.5質量%のマンガンと;
(d)質量で0〜100ppm、好ましくは5〜90ppmのプラチナと;
(e)0.05〜4質量%、好ましくは0.1〜3質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物
とを含有し、
前記パーセンテージは、当該組成物の合計に対して計算される方法。
【請求項20】
請求項15〜18の何れか1項に記載の方法であって、前記脱水素触媒がそれぞれの担持された活性金属成分の機械的混合物であり、その中でのガリウム(Ga23)の量は0.2〜3.8質量%であり、マンガンの量は0.15〜1.5質量%であり、プラチナの量は質量で5〜50ppmであり、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物の合計量が0.1〜3質量%であり、100%にするための補完物は、0.08〜5質量%のシリカで修飾され、またBET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有するデルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物の支持体アルミナである方法。
【請求項21】
請求項15〜18の何れか1項に記載の方法であって、前記脱水素触媒が、
(a)1〜60質量%、好ましくは1〜20質量%の酸化鉄と;
(b)0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の少なくとも一つのアルカリ若しくはアルカリ土類金属の酸化物、例えばカリウムの酸化物と;
(c)ランタニドの酸化物、例えばセリウム、ランタン、又はプラセオジムの酸化物から選択される0〜15質量%、好ましくは0.1〜7質量%の第二のプロモータと;
(d)100%にするための補完物である0.08〜5質量%のシリカで修飾されたアルミナ
とを含有する方法。
【請求項22】
請求項15〜18の何れか1項に記載の方法であって、前記脱水素触媒が、
(a)0.1〜34質量%、好ましくは0.2〜3.8質量%のGa23と;
(b)1〜99ppm(質量)、好ましくは3〜80ppmのプラチナと;
(c)0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%のアルカリ若しくはアルカリ土類金属の酸化物、例えばカリウムの酸化物と;
(d)0.08〜3質量%のシリカ
とを含有し、
100%にするための補完物は、BET法で測定したときに150m2/g未満の表面積を有する、デルタ相若しくはシータ相、又はデルタ+シータ相、シータ+アルファ相、若しくはデルタ+シータ+アルファ相の混合物のアルミナである方法。
【請求項23】
請求項15〜22の何れか1項に記載の方法であって、エチルベンゼンをエタンとの混合物で前記脱水素区画に供給し、両成分の同時脱水素により、スチレン及びエチレンを生じる方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、エチルベンゼンを得るために、前記エチレンが新鮮なベンゼンの流れと共に、アルキル化ユニットへと再循環される方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524676(P2007−524676A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551823(P2006−551823)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001258
【国際公開番号】WO2005/075063
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(503431448)スナムプロジェッティ ソシエタ ペル アチオニ (6)
【Fターム(参考)】