説明

反応装置及び電子機器

【課題】反応装置から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持する。
【解決手段】反応装置本体11と、反応装置本体11を収容する断熱容器20とを備える反応装置10である。断熱容器20は反応装置本体11からの赤外領域の輻射を透過する輻射透過領域23,25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置等に用いる反応装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、エネルギー変換効率の高いクリーンな電源として、水素を燃料とする燃料電池が自動車や携帯機器などに応用され始めている。燃料電池は、燃料と大気中の酸素を電気化学的に反応させて、化学エネルギーから電力を直接取り出す装置である。
【0003】
燃料電池に用いる燃料としては水素が挙げられるが、常温で気体であることによる取り扱い・貯蔵に問題がある。アルコール類及びガソリンといった液体燃料を用いる場合には、液体燃料を気化させる気化器、気化した燃料と高温の水蒸気を反応させることによって、発電に必要な水素を取り出す改質器、改質反応の副産物である一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器等が必要となる。
【0004】
この気化器や一酸化炭素除去器の動作温度が高温であるため、これらの反応装置本体としての高温体を断熱容器としての高温体収納装置に収納し、放熱を抑制することが行われている(例えば、特許文献参照)。
【特許文献1】特開2004−303695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような断熱容器において、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を抑えると、反応装置本体の温度が上昇し、適切な反応温度を保てないおそれがある。一方、このような問題を避けるため、例えば、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を増大させると、反応装置本体を備える外部の電子機器の温度が上昇するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、反応装置本体から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応装置であって、反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容する第1の容器とを備え、前記第1の容器は前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の反応装置であって、前記第1の容器の前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、LiF、SiO2、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、CaCO、KI、NaI、NaNO、AgCl、AgBr、TlBr、Al23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、Cr23、DyF2、Fe23、GaAs、GaSe、Gd23、Ge、HfO2、HoF3、Ho23、La23、MgO、NaF、Nb25、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnS、ZrO2の少なくとも1つが用いられ、前記第1の容器の前記輻射透過領域を除く部分には、前記第1の容器の前記輻射透過領域よりも赤外領域の透過率が低い材料が用いられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の反応装置であって、前記第1の容器の全体には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、LiF、SiO2、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、CaCO、KI,NaI,NaNO、AgCl、AgBr、TlBr、Al23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、Cr23、DyF2、Fe23、GaAs、GaSe、Gd23、Ge、HfO2、HoF3、Ho23、La23、MgO、NaF、Nb25、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnS、ZrO2の少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記第1の容器の前記輻射透過領域を除く部分の内壁面には、Au,Al,Ag,Cu,Rhの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置本体の前記輻射透過領域との対向面には、前記反応装置本体の前記輻射透過領域との対向面を除く部分の外壁面よりも赤外領域の輻射率が高い輻射放熱領域が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置本体の少なくとも前記輻射透過領域との対向面を除く部分には、前記反応装置本体からの輻射を防止する輻射防止膜が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の反応装置であって、前記輻射放熱領域は非蒸発型ゲッターにより形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置本体の外側であって前記第1の容器の内側は、大気圧よりも低い圧力であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部が前記輻射透過領域と対向配置されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置本体は互いに異なる温度であり反応物がそれぞれ反応する2つ以上の反応部を有し、前記2つ以上の反応部のうち少なくとも1つが前記輻射透過領域と対向配置されることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部は燃料及び水を気化して混合気を生成する気化器を含み、前記輻射透過領域には、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、CdSe、CdTe、Geの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部は気化された燃料及び水から改質ガスを生成する改質器を含み、前記輻射透過領域には、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、GaAs、GaSe、Ge、NaF、PbF2、TlCl、YF3、ZnOの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部は、反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の反応装置であって、前記燃料電池セルは溶融炭酸塩型であり、前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、NaF、PbF2、Si、TlCl、YF3、ZnO、ZnSの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、
前記燃料電池セルは固体酸化物型であり、請求項13に記載の反応装置であって、前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、MgO、NaF、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnSの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明は、電子機器であって、請求項13〜15のいずれか一項に記載の反応装置と、前記燃料電池セルの電力により動作する電子機器本体とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の電子機器であって、前記輻射透過領域は、前記電子機器の外周面に沿って配置されることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、反応装置本体から断熱容器の外部へ輻射放熱を行うことによって、反応装置本体から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る反応装置10Aの構成を示す模式図である。図1に示すように、反応装置10Aは、反応装置本体11と、反応装置本体11を収容する断熱容器(第1の容器)20とからなる。反応装置10Aは、例えばステンレス(SUS304)やコバール合金、ニッケル基合金等の金属板を貼り合わせて形成してもよいし、光学材料あるいはガラス基板等を貼り合わせて形成してもよい。
反応装置本体11の外壁面には、後述する輻射放熱膜13a,15aが設けられた部分を除き、輻射を防止する輻射防止膜11aが設けられている。輻射防止膜11aの材料には、後述する反射膜21aと同様の材料を用いることができる。輻射防止膜11aにより、反応装置10Aからの輻射による反応装置10Aの外部への熱量の移動が抑制される。
【0027】
反応装置本体11は、第1連結部12と、低温反応部13と、第2連結部14と、高温反応部15とからなる。高温反応部15は、低温反応部13よりも高温に保たれる。
図1に示すように、低温反応部13及び高温反応部15の外表面には、輻射放熱膜13a,15aがそれぞれ設けられている。輻射放熱膜13a,15aには、1〜30μmの赤外領域での輻射率が0.5以上、より好ましくは0.8以上である高輻射率の材料を用いることができる。
【0028】
輻射放熱膜13a,15aは、反応装置本体11の表面全体に輻射防止膜11aを成膜した後に、輻射防止膜11aと重ねて成膜してもよい。
輻射放熱膜13a,15aの材料としては、作成方法が簡便である材料を選択することができ、SiO2やアルミナ(Al23)に代表される各種酸化物や、カオリン等の粘土鉱物、セラミック等を用いることができる。例えば、SiO2、Al23、カオリンやRFeO3(Rは希土類)、ハフニウム酸化物やYSZや、チタン酸化物を含有する耐熱輻射塗料などを用いることができる。
輻射放熱膜13a,15aは、例えば高輻射率の材料を含有するエマルジョン液体を基板等に塗布し、乾燥させることでシート状に形成することができる。
あるいは、断熱容器20内のガスを吸着する非蒸発型ゲッターにより輻射放熱膜13a,15aを形成してもよい。
【0029】
一方、電気伝導性を有するもの、例えば通常の金属や可視光領域で黒色に見えるグラファイトは、赤外領域を含む長波長領域において輻射率が低くなるため、輻射放熱膜13a,15aの材料として用いることはできない。
【0030】
また、輻射放熱膜13a,15aは、陽極酸化等の手法により、Al23を筐体21の外表面に多孔質体状に形成することができる。あるいは、細いグラスファイバーを用いた布を輻射放熱膜13a,15aとして用いることもできる。
輻射放熱膜13a,15aは、断熱容器20の内壁面の輻射透過窓23,25と対向配置される。
【0031】
第1連結部12は高温反応部15や低温反応部13において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部12は、一端で低温反応部13に接続され、他端側で断熱容器20を貫通するとともに、他端で図示しない外部の装置に接続される。第1連結部12は、低温反応部13から断熱容器20の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)と、断熱容器20の外部から低温反応部13に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)とを備える。
【0032】
第2連結部14は高温反応部15や低温反応部13において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部15と低温反応部13との間を接続する。第2連結部14は、一端で高温反応部15に接続され、他端で低温反応部13に接続されるとともに、高温反応部15から低温反応部13に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)と、低温反応部13から高温反応部15に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)とを備える。
【0033】
次に、断熱容器20について説明する。断熱容器20は直方体形状をしており、内部に反応装置本体11が収納されている。
【0034】
断熱容器20の内部空間は気体分子による熱伝導や対流を防ぐため、例えば10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、といった大気圧よりも低い圧力に維持されている。
断熱容器20は、筐体21と、輻射透過窓23,25と、反射膜21aとから概略構成される。
筐体21の内壁面には、反応装置本体11からの輻射による熱損失を抑制するために、輻射を反射する反射膜21aが形成されている。反射膜21aの材料については、後述する。反射膜21aにより、反応装置本体11からの輻射による筐体21への熱量の移動が抑制される。
【0035】
低温反応部13には第2連結部14を介して高温反応部15から熱量が伝導するので、第1連結部12を介して断熱容器20に伝導する熱量以上の熱量が伝導すると、温度が適温以上に上昇するおそれがある。そこで、本実施形態の断熱容器20の内壁面には、低温反応部13及び高温反応部15に対応する位置に、それぞれ輻射透過窓23,25を設けている。
【0036】
輻射透過窓23,25は、断熱容器20の内壁面の反射膜21aが設けられた領域と比較して、赤外領域での輻射の透過率が高い。輻射透過窓25は高温反応部15の輻射放熱膜15aからの輻射を透過させて断熱容器20の外部に放出する。輻射透過窓23は低温反応部13の輻射放熱膜13aからの輻射を透過させて断熱容器20の外部に放出する。
【0037】
輻射透過窓23,25は、例えば図1に示すように、断熱容器20の輻射放熱膜13a,15aと対向する部分に設けられており、赤外領域の輻射の透過率が高い材料で形成されている。輻射透過窓23,25の材料については、後述する。
【0038】
以下、反応装置10Aにおける熱の移動について説明する。
一般に、固体の伝熱量をQ、熱伝導率をk、断面積をS、温度差を△T、伝熱長を△xとすると、以下の数式(1)が成立する。
【数1】

【0039】
したがって、第2連結部14を通しての高温反応部15から低温反応部13への伝熱量QS1は、高温反応部15と低温反応部13との温度差、第2連結部14の熱伝導率及び断面積に比例し、第2連結部14の長さに反比例する。同様に、低温反応部13から断熱容器20への伝熱量QS2は、低温反応部13と断熱容器20との温度差、第1連結部12の熱伝導率及び断面積に比例し、第1連結部12の低温反応部13から断熱容器20までの長さに反比例する。
【0040】
次に、輻射放熱膜13a,15aによる放熱量について検討する。
高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜15aによる放熱量をQI、輻射放熱膜13aによる放熱量をQIIとすると、熱平衡状態では以下の数式(2)、(3)が成立する。
【数2】

【0041】
数式(2)、(3)より、低温反応器13および高温反応器15の熱収支の合計はQIとQIIとQS2の和となる。したがって、各反応器の温度を適切に保つには、各反応器13,15の熱収支に合わせて放熱量を適切に設定する必要がある。ここで、断熱容器への伝熱量QS2は、断熱容器を介しての外部の装置への伝熱量と等しくなるので、外部の装置の温度上昇を防ぐためには、QS2を抑制する必要がある。一方、輻射放熱膜15a、13aによる放熱量QI、QIIは、輻射透過窓23,25を透過して外部へ放射されるため、各輻射透過窓を適切に配置することにより、この熱が外部の装置へと伝熱させないようにすることができる。したがって、各反応器13,15での熱収支の合計及び抑制された断熱容器への伝熱量QS2に応じて、適切に放熱量QI及びQIIを設定することにより、各反応器13,15の温度を適切に保ちながら、外部の装置への伝熱量QS2を抑制することが可能である。
【0042】
シュテファン=ボルツマンの法則によると、絶対温度T(K)、輻射率ε、表面積A(m2)の物体から単位時間当たりに放出される総輻射エネルギー量E(W/m2)は以下の数式(4)で表される。
【数3】

ここで、σはシュテファン=ボルツマン定数であり、σ=5.67×10-8(W/m2/K4)である。したがって、放熱量QI、QIIは、輻射放熱膜13a,15aの面積を変更したり、適度な輻射率の材質を選択することにより調整することができる。
【0043】
次に、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の波長と輻射透過窓23,25の材質について検討する。
温度T(K)の黒体が放射する波長λの電磁波の黒体放射強度B(λ)は、プランクの式と呼ばれる次の数式(5)で与えられる。
【数4】

【0044】
ウィーンの変位則によると、温度T(K)の黒体からの輻射強度がピークをとる波長λmax(m)は温度T(K)に反比例し、次の数式(6)で表される。
【数5】

【0045】
図2は数式(5)により求めた、100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。なお、波長λmaxにおける輻射強度B(λmax)を1として規格化している。図2に示すように、反応部の温度によって輻射強度が最大となる波長が異なるため、低温反応部13及び高温反応部15の動作温度に合わせて、反射膜21aや輻射透過窓23,25の材質を選択する必要がある。
【0046】
図3は反射膜21aの材料の候補となるAu,Al,Ag,Cu,Rhの輻射の反射率の波長依存性を示すグラフである。図3に示すように、Au,Al,Ag,Cuは100℃〜1000℃の反応部から放射される約1μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であり、反射膜21aとして用いることができる。また、Rhは約2μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であるので、反応部の温度が500℃以下であれば、反射膜21aとして用いることができる。
【0047】
図4、図5は輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。輻射透過窓23,25としては、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の透過率が高い材料を選択することができる。一方、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の透過率が低く吸収率が高い材料は、吸収した輻射熱により輻射透過窓23,25の温度が上昇し、断熱容器20を介して外部の装置へと伝熱してしまうため、適していない。
【0048】
輻射透過窓23,25に適した材料としては、例えば、超高真空用の覗き窓の材料として利用されているCaF2(フッ化カルシウム;0.15−12)、BaF2(フッ化バリウム;0.25−15)、ZnSe(セレン化亜鉛;0.6−18)、MgF2(フッ化マグネシウム;0.13−10)、KRS−5(臭沃化タリウム;0.6−60)、KRS−6(臭塩化タリウム;0.41−34)、LiF(フッ化リチウム;0.11−8)、SiO2(光学用合成石英;0.16−8)、CsI(ヨウ化セシウム;0.2−70)、KBr(臭化カリウム;0.2−40)等を用いることができる。なお、括弧内の数字は透過領域波長(μm)である。
【0049】
この他にも、AlF3(0.22−12)、NaCl(0.21−26)、(0.16−15)、KCl(0.21−30)、CsCl(0.19−25)、CsBr(0.24−40)、CsF(0.27−18)、NaBr(0.22−23)、CaCO(0.3−5.5)、KI(0.3−30)、NaI(0.25−25)、AgCl(0.4−30)、AgBr(0.45−33)、TlBr(0.9−40)、Al23(0.2−8)、BiF3(0.26−20)、CdSe(0.7−25)、CdS(0.55−18)、CdTe(0.86−28)、CeF3(0.3−12)、CeO2(0.4−16)、Cr23(1.2−10)、DyF2(0.22−12)、GaAs(0.9−18)、GaSe(0.65−17)、Gd23(0.32−15)、Ge(1.7−25)、HfO2(0.23−12)、La23(0.26−11)、MgO(0.23−9)、NaF(0.13−15)、Nb25(0.32−8)、PbF2(0.24−20)、Si(1.1−1.4)、Si34(0.25−9)、SrF2(0.2−10)、TlCl(0.4−20)、YF3(0.2−14)、Y23(0.25−9)、ZnO(0.35−20)、ZnS(0.38−14)、ZrO2(0.3−8)等を用いることができる。
【0050】
以上示したように、本実施形態によれば、高温反応部15または低温反応部13からの輻射を輻射透過窓23,25を介して反応装置10Aの外部に放出するので、高温反応部15または低温反応部13から断熱容器20への伝熱量を抑制しながら、高温反応部15、低温反応部13の温度を適切に維持することができる。
【0051】
なお、上記実施形態においては、低温反応部13及び高温反応部15の両方に輻射放熱膜13a,15aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。また、輻射透過窓23,25についても、設けられる輻射放熱膜に対向するいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。また、筐体21を、赤外領域の輻射を透過させる材料で輻射透過窓23,25と一体に形成してもよい。
【0052】
<変形例1>
図6は本発明の第1変形例に係る反応装置10Bの構成を示す模式図であり、図7は図6のVII矢視図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
本変形例の反応装置は、第2連結部14に輻射放熱膜14aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜14aと対向する部分に輻射透過窓24を設けることにより、高温反応部15での輻射放熱を行わずに、第2連結部14で輻射放熱を行っている。この場合、高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜14aによる放熱量をQr1とすると、熱平衡状態では以下の数式(7)、(8)が成立する。
【数6】

【0053】
数式(7)、(8)より、低温反応器13および高温反応器15の熱収支の合計はQr1とQS2の和となる。本変形例においても、第1実施形態と同様、各反応器13,15での熱収支の合計及び抑制された断熱容器への伝熱量QS2に応じて、適切に放熱量Qr1を設定することにより、各反応器13,15の温度を適切に保ちながら、外部の装置への伝熱量QS2を抑制することが可能である。
【0054】
ここで、上述の第1実施形態及び本変形例の各反応器の熱収支QRA、QRB及び断熱容器への伝熱量QS2を同じであるとき、高温反応部15から第2連結部14への伝熱量は、第1実施形態ではQRA−QI、本変形例ではQRAであり、本変形例のほうが、伝熱量が大きい。一方、数式(1)より、熱伝導率をk、断面積をS、温度差を△Tがそれぞれ一定であれば、伝熱量QS1が大きくなると、伝熱長△xが小さくなるので、本変形例のように高温反応部15での輻射放熱を行わない場合、第1実施形態のように高温反応部15で輻射放熱を行う場合と比べて、第2連結部14の配管長を短縮することができ、反応装置本体11及び反応装置10Bをそれぞれ小型化することができる。
【0055】
また、高温反応部15及び第2連結部14の両方で輻射放熱を行ってもよい。この場合、高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜14aによる放熱量をQr1とすると、熱平衡状態では以下の数式(9)、(10)が成立する。
【数7】

【0056】
この場合、高温反応部15から第2連結部14への伝熱量はQRA−QIであるが、第2連結部14でも輻射放熱を行うので、第1実施形態と比べてQIを小さく設定することができる。従って、第1実施形態よりも高温反応部15から第2連結部14への伝熱量を大きくすることができ、本変形例と同様、第2連結部14の配管長をより短縮して、反応装置本体11及び反応装置10Bをそれぞれ小型化することができる。
【0057】
<変形例2>
図8は本発明の第2変形例に係る反応装置10Cの構成を示す模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
本変形例の反応装置は、第1連結部12の低温反応部13と断熱容器20との間の部分に輻射放熱膜12aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜12aと対向する部分に輻射透過窓22を設けることにより、各反応部13,15での輻射放熱を行わずに、第1連結部12で輻射放熱を行っている。この場合、高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜12aによる放熱量をQr2とすると、熱平衡状態では以下の数式(11)、(12)が成立する。
【数8】

【0058】
ここで、上述の第1実施形態及び本変形例の各反応器の熱収支QRA、QRB及び断熱容器への伝熱量QS2を同じであるとき、数式(11)、(12)より、低温反応部13から第1連結部12への伝熱量は、第1実施形態ではQRB−QII+QS1、本変形例ではQRB+QS1であり、本変形例のほうが、伝熱量が大きい。従って、上述の第1変形例と同様、本変形例のように各反応部13,15での輻射放熱を行わない場合、第1実施形態のように高温反応部15で輻射放熱を行う場合と比べて、第1連結部12の配管長を短縮することができ、反応装置本体11及び反応装置10Cをそれぞれ小型化することができる。
【0059】
<変形例3>
図9は本発明の第3変形例に係る反応装置10Dの構成を示す模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
本変形例の反応装置は、第1連結部12の低温反応部13と断熱容器20との間の部分に輻射放熱膜12aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜12aと対向する部分に輻射透過窓22を設けるとともに、第2連結部14に輻射放熱膜14aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜14aと対向する部分に輻射透過窓24を設けることにより、低温反応部13及び高温反応部15での輻射放熱を行わずに、第1連結部12及び第2連結部14で輻射放熱を行っている。この場合、高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜12aによる放熱量をQr2、輻射放熱膜14aによる放熱量をQr1とすると、熱平衡状態では以下の数式(13)、(14)が成立する。
【数9】

【0060】
ここで、上述の第1実施形態及び本変形例の各反応器の熱収支QRA、QRB及び断熱容器への伝熱量QS2を同じであるとき、数式(13)、(14)より、高温反応部15から第2連結部14への伝熱量は、第1実施形態ではQRA−QI、本変形例ではQRAであり、本変形例のほうが、伝熱量が大きい。また、低温反応部13から第1連結部12への伝熱量は、第1実施形態ではQRB−QII、本変形例ではQRBであり、本変形例のほうが、伝熱量が大きい。従って、上述の各変形例と同様、本変形例のように各反応部13,15での輻射放熱を行わない場合、第1実施形態のように各反応部13,15で輻射放熱を行う場合と比べて、第1連結部12及び第2連結部14の配管長をそれぞれ短縮することができ、反応装置本体11及び反応装置10Dをそれぞれ小型化することができる。
【0061】
また、第1連結部12、低温反応部13、第2連結部14及び高温反応部15の各部で輻射放熱を行ってもよい。この場合、高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜14aによる放熱量をQr2、輻射放熱膜14aによる放熱量をQr1とすると、熱平衡状態では以下の数式(15)、(16)が成立する。
【数10】

【0062】
この場合、高温反応部15から第2連結部14への伝熱量はQRA−QIであるが、第2連結部14でも輻射放熱を行うので、第1実施形態と比べてQIを小さく設定することができる。また、低温反応部13から第1連結部12への伝熱量はQRB−QIIであるが、第1連結部12でも輻射放熱を行うので、第1実施形態と比べてQIIを小さく設定することができる。従って、第1実施形態よりも高温反応部15から第2連結部14への伝熱量及び低温反応部13から第1連結部12への伝熱量を大きくすることができ、第1変形例と同様、第2連結部14及び第1連結部12の配管長をより短縮して、反応装置本体11及び反応装置10Dをそれぞれ小型化することができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は本発明の第2実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。この電子機器100はノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、ゲーム機器等といった携帯型の電子機器である。
【0064】
電子機器100は、燃料電池装置130と、燃料電池装置130から供給される電力により駆動される電子機器本体101と、等から概略構成される。燃料電池装置130は後述するように、電力を生成し電子機器本体101に供給する。
【0065】
次に、燃料電池装置130について説明する。この燃料電池装置130は、電子機器本体101に出力する電力を生成するものであり、燃料容器102、送液ポンプ103、反応装置110、燃料電池セル140、DC/DCコンバータ131、二次電池132、等を備える。
【0066】
燃料容器102には、液体の原燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水との混合液が貯留されている。なお、液体の原燃料と水とを燃料容器102内で別々に貯留してもよい。
燃料容器102内の混合液は、送液ポンプ103により反応装置110の気化器104に送液される。
【0067】
反応装置110は、気化器104、改質器105、一酸化炭素除去器106、熱交換器107、触媒燃焼器109等からなる。
気化器104は燃料容器102から送られた混合液を後述するヒータ兼温度センサ153や改質器105からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱し、気化させる。気化器104で気化した混合気は改質器105へ送られる。
【0068】
改質器105は内部に流路が形成され、流路の壁面に改質触媒が担持されている。改質触媒としては、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒等が用いられる。改質器105は後述するヒータ兼温度センサ155からの伝熱により気化器104から送られる混合気を約300〜400℃程度に加熱し、流路内の触媒により改質反応を起こさせる。すなわち、原燃料と水の触媒反応によって、燃料としての水素、二酸化炭素、及び、副生成物である微量な一酸化炭素等の混合気体(改質ガス)が生成される。
【0069】
ここで、原燃料がメタノールの場合、改質器105では主に次の化学反応式(17)に示すような主反応である水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 ・・・(17)
なお、化学反応式(17)についで逐次的に起こる次の化学反応式(18)のような副反応によって、副生成物として一酸化炭素が微量に(1%程度)生成される。
2+CO2→H2O+CO ・・・(18)
化学反応式(17)及び(18)の反応による生成物(改質ガス)は一酸化炭素除去器106に送出される。
【0070】
一酸化炭素除去器106の内部には流路が形成され、その流路の壁面に一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化触媒が担持されている。選択酸化触媒としては、例えばPt/Al23等を用いることができる。
【0071】
一酸化炭素除去器106には改質器105で生成された改質ガス及び、外部の空気が送られる。改質ガスが空気と混合して一酸化炭素除去器106の流路を流れ、改質器105やヒータ兼温度センサ155からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱される。そして、改質ガスのうち一酸化炭素が触媒により次の化学反応式(19)のような主反応により優先的に酸化される。これにより主生成物として二酸化炭素が生成され、改質ガス中の一酸化炭素を燃料電池セル140に供給可能な10ppm程度まで低濃度化することができる。
2CO+O2→2CO2 ・・・(19)
化学反応式(19)の反応は発熱反応であるため、吸熱反応(混合液の気化)が行われる気化器104と隣接して配置される。
一酸化炭素除去器106を通過した改質ガスは燃料電池セル140に送出される。
【0072】
触媒燃焼器109には燃料電池セル140の燃料供給流路144aを通過した改質ガス(オフガス)及び空気が送られ、改質ガス中に残留する水素が空気により燃焼される。熱交換器107は一酸化炭素除去器106と隣接して配置され、燃料電池セル140から触媒燃焼器109に供給されるオフガス及び空気が通過する過程で、一酸化炭素除去器106の熱によりオフガス及び空気を加熱する。
【0073】
燃料電池セル140は固体高分子型燃料電池であり、固体高分子電解質膜141と、固体高分子電解質膜141の両面に形成された燃料極142(アノード)及び酸素極143(カソード)と、燃料極142に改質ガスを供給する燃料供給流路144aが設けられた燃料極セパレータ144と、酸素極143に酸素を供給する酸素供給流路145aが設けられた酸素極セパレータ145と、が積層されている。
【0074】
固体高分子電解質膜141は水素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極142には燃料供給流路144aを介して改質ガスが送られる。燃料極142では改質ガス中の水素による次の電気化学反応式(20)に示す反応が起こる。
2→2H++2e- ・・・(20)
生成した水素イオンは固体高分子電解質膜141を透過して酸素極143に到達する。生成した電子はアノード出力電極146に供給される。
【0075】
酸素極143には、空気が酸素供給流路145aを介して送られる。酸素極143では固体高分子電解質膜141を透過した水素イオンと、空気中の酸素とカソード出力電極147より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(21)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O ・・・(21)
なお、固体高分子電解質膜141の両面には、電気化学反応式(20)、(21)の反応を促進する図示しない触媒が設けられている。
【0076】
アノード出力電極146及びカソード出力電極147は外部回路であるDC/DCコンバータ131と接続されており、アノード出力電極146に到達した電子はDC/DCコンバータ131を通ってカソード出力電極147に供給される。
【0077】
DC/DCコンバータ131は燃料電池セル140により生成された電力を適切な電圧に変換したのちに電子機器本体101に供給するとともに、電力を二次電池132に充電する。
【0078】
次に、反応装置110の構造について説明する。図11は反応装置110の斜視図、図12は図11のXII-XII切断線に対応する模式断面図、図13は図11のXIII矢視図である。反応装置110は、反応装置本体111と、反応装置本体111を収容する断熱容器(第1の容器)120とからなる。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。また、図12において、リード線153c、155cは高電圧側または低電圧側の1本だけを図示した。また、簡明に示すため、図12において、リード線153c、155cが重畳しないように記載したが、実際は横方向から見た場合に重畳してもよい。
【0079】
反応装置本体111は、第1連結部112と、低温反応部113と、第2連結部114と、高温反応部115とからなる。
高温反応部115には、改質器105となる改質流路105a及び触媒燃焼器109となる触媒燃焼流路109aが設けられる。また、高温反応部115には、電気ヒータ兼温度センサ155が設けられており、高温反応部115は電気ヒータ兼温度センサ155により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ155は、断熱容器120を貫通するリード線155cに接続されており、リード線155cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ155は、絶縁膜155a,155bにより他の部材と絶縁されている。
【0080】
低温反応部113には、気化器104となる気化流路104a、一酸化炭素除去器106となる一酸化炭素除去流路106a、熱交換器107となる熱交換流路107aが設けられている。また、低温反応部113には、電気ヒータ兼温度センサ153が設けられており、低温反応部113は電気ヒータ兼温度センサ153により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ153は、断熱容器120を貫通するリード線153cに接続されており、リード線153cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ153は、絶縁膜153a,153bにより他の部材と絶縁されている。
【0081】
第1連結部112は高温反応部115や低温反応部113において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部112は、一端で低温反応部113に接続され、他端側で断熱容器120を貫通するとともに、他端で送液ポンプ103、燃料電池セル140、図示しないエアポンプ等に接続される。また、第1連結部112は、低温反応部113から断熱容器120の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)112bと、断熱容器120の外部から低温反応部113に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)112cとを備える。
【0082】
第2連結部114は高温反応部115や低温反応部13において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部115と低温反応部113との間を接続する。また、第2連結部114は、一端で高温反応部115に接続され、他端で低温反応部113に接続されるとともに、高温反応部115から低温反応部113に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)114bと、低温反応部113から高温反応部115に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)114cとを備える。
【0083】
ここで、第1配管及び第2配管は、それぞれ一体的に形成されるかまたは互いに接合されて、第1配管及び第2配管の間で熱交換が行われるようにしてもよい。この場合、例えば、第1配管を2本に分けて、各第1配管を第2配管の周囲に配置することにより、第1配管と第2配管との間での熱交換が行われやすくなる。第3配管及び第4配管についても同様である。
【0084】
本実施形態においては、図12に示すように、低温反応部113に輻射放熱膜113aが設けられており、断熱容器120の輻射放熱膜113aと対向する部分に輻射透過窓123が設けられている。輻射放熱膜113aからの輻射は輻射透過窓123を透過するため、低温反応部113で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器120の外部へ放出される。したがって、低温反応部113から第1連結部112を経て断熱容器120へ伝導する熱量を抑えるとともに、高温反応部115からの伝熱により低温反応部113の温度が必要以上に上昇することを防ぎ、低温反応部113の温度を適正に維持することができる。
【0085】
本実施形態の構造において、低温反応部113の温度を150℃、高温反応部115の温度を400℃、燃料電池セル140の効率を40%、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
第2連結部114や第1連結部112による熱伝導を除く高温反応部115、低温反応部113の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+2W、+9Wになる。輻射放熱膜113a及び輻射透過窓123を設けない場合には、この合計11Wの熱量が断熱容器120へと伝導してしまう。たとえば、9Wを輻射透過窓123を介して輻射放熱膜113aにより輻射放熱することで、第1連結部112より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。輻射放熱膜113aの輻射率を1とし、輻射透過窓123をBaF2によって形成した場合、輻射放熱膜113aの表面積を約50cm2とることにより、9Wを放熱することができる。
【0086】
なお、気化器104を有する低温反応部113の温度は約150℃であり、3.0〜23μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓123の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、CdSe、CdTe、Geを用いることが好ましい。また、例えば、約400℃である改質器105を有する高温反応部115から放熱を行う場合には、2.2〜17μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓125の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、GaAs、GaSe、Ge、NaF、PbF2、TlCl、YF3、ZnOを用いることが好ましい。
【0087】
上述の通り、本実施形態では、輻射放熱膜113a及び輻射透過窓123に用いる材料を、放熱量や輻射放熱領域の温度に応じて、適宜選択することができる。また、輻射放熱膜113a及び輻射透過窓123の面積は、放熱量に応じて変更することができ、逆に、それらの設置面積に制約があれば、それに応じて、輻射放熱膜113a及び輻射透過窓123に用いる材料を変更することができる。なお、上述の計算値は、第1配管及び第2配管、または、第3配管及び第4配管の間で熱交換を行っていない場合のものであり、輻射率1とは、全波長領域で積分した輻射率が1であることを示す。また、上述した透過することが好ましい波長領域は、規格化した輻射強度が0.1以上となる波長領域としたが、必要に応じて波長領域を変更することができるだけでなく、変更された波長領域に対応する輻射透過窓の材料を選択することができる。
【0088】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図14は本発明の第3実施形態に係る電子機器200を示すブロック図である。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0089】
本実施形態においては、反応装置210が、気化器204、改質器205、第1の熱交換器207、第2の熱交換器208、触媒燃焼器209、燃料電池セルスタック240等を含む。
気化器204と第1の熱交換器207とは一体に設けられており、改質器205と第2の熱交換器208とは一体に設けられており、燃料電池セルスタック240と触媒燃焼器209とは一体に設けられている。
【0090】
図15は反応装置210の斜視図、図16は図15のXVI-XVI切断線に対応する模式断面図、図17は図15のXVII矢視図である。燃料電池セルスタック240は、図16に示すように、複数の燃料電池セル240A,240B,240C,240Dを積層してなる。なお、燃料電池セル240A,240B,240C,240Dは溶融炭酸塩型であり、一酸化炭素除去器は用いられない。一体化された燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209は気密容器(第2の容器)250に収容され、気密容器250は断熱容器(第1の容器)220に収容されている。気密容器250は、気密容器250によって仕切られる空間の内外間で気体が流通しないようにするためのものであり、アノード出力電極246及びカソード出力電極247、リード線257c及び第3連結部216が貫通する部分は気密封止される。ここで、各出力電極及びリード線は、ガラス、セラミック等の図示しない絶縁材により他の部材から絶縁されて引き出される。
なお、図14では、複数の燃料電池セル240A,240B,240C,240Dのうち単一の燃料電池セル240Aのみを示し、符号の末尾のアルファベットを省略している。また、簡明に示すため、図16において、リード線253c、255c、257cが重畳しないように記載したが、実際は横方向から見た場合に重畳してもよい。また、図16において、リード線253c、255c、257cは高電圧側または低電圧側の1本だけを図示すとともに、カソード出力電極247は図示していない。
【0091】
以下、単一の燃料電池セル240及び触媒燃焼器209で生じる反応について説明する。
燃料電池セル240は、電解質241と、電解質241の両面に形成された燃料極242(アノード)及び酸素極243(カソード)と、燃料極242に改質ガスを供給する燃料供給流路244aが設けられた燃料極セパレータ244と、酸素極243に酸素を供給する酸素供給流路245aが設けられた酸素極セパレータ245と、が積層されている。
【0092】
電解質241は炭酸イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、一酸化炭素、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極242には燃料供給流路244aを介して改質ガスが送られる。燃料極242では改質ガス中の水素、一酸化炭素及び電解質241を通過した炭酸イオンによる次の電気化学反応式(22)、(23)に示す反応が起こる。
2+CO32-→H2O+CO2+2e- ・・・(22)
CO+CO32-→2CO2+2e- ・・・(23)
生成した電子はアノード出力電極246に供給される。生成した水、二酸化炭素及び未反応の水素、一酸化炭素からなる混合気体(オフガス)は触媒燃焼器209に供給される。
【0093】
触媒燃焼器209には、第1の熱交換器207及び第2の熱交換器208により加熱された酸素(空気)と、オフガスとが混合されて供給される。触媒燃焼器209では、水素及び一酸化炭素が燃焼され、燃焼熱は燃料電池セルスタック240を加熱するのに用いられる。
触媒燃焼器209の排ガス(水、酸素及び二酸化炭素の混合気体)は酸素供給流路245aを介して酸素極243に供給される。
【0094】
酸素極243では酸素供給流路245aより供給される酸素、二酸化炭素と、カソード出力電極247より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(24)に示す反応が起こる。
2CO2+O2+4e-→2CO32- ・・・(24)
生成した炭酸イオンは電解質241を通過して燃料極242に供給される。
【0095】
次に、反応装置210の構造について説明する。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
図16に示すように、反応装置210は、反応装置本体211と、反応装置本体211を収容する断熱容器220とからなる。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0096】
反応装置本体211は、高温反応部217と、中温反応部215と、低温反応部213と、第1連結部212と、第2連結部214と、第3連結部216とからなる。
高温反応部217には、燃料電池セル240A,240B,240C,240Dが積層された燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209となる触媒燃焼流路209aが設けられる。
【0097】
燃料電池セル240Aの酸素極セパレータと燃料電池セル240Bの燃料極セパレータ、燃料電池セル240Bの酸素極セパレータと燃料電池セル240Cの燃料極セパレータ、燃料電池セル240Cの酸素極セパレータと燃料電池セル240Dの燃料極セパレータは、それぞれ一体化された両面セパレータ248となっている。燃料電池セル240Aの燃料極セパレータ244にアノード出力電極246が接続され、燃料電池セル240Dの酸素極セパレータ245にカソード出力電極247が接続されている。アノード出力電極246及びカソード出力電極247は断熱容器220を貫通しており、燃料電池セルスタック240で生成された電力を外部に出力する。
【0098】
また、高温反応部217には、電気ヒータ兼温度センサ257が設けられており、高温反応部217は電気ヒータ兼温度センサ257により約600〜700℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ257は、断熱容器220を貫通するリード線257cに接続されており、リード線257cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ257は、絶縁膜257aにより他の部材と絶縁されている。
【0099】
中温反応部215には、改質器205となる改質流路205a及び第2の熱交換器208となる熱交換流路208aが設けられている。
また、中温反応部215には、電気ヒータ兼温度センサ255が設けられており、中温反応部215は電気ヒータ兼温度センサ255により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ255は、断熱容器220を貫通するリード線255cに接続されており、リード線255cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ255は、絶縁膜255a,255bにより他の部材と絶縁されている。
【0100】
低温反応部213には、気化器204となる気化流路204a、一酸化炭素除去器206となる一酸化炭素除去流路206a、熱交換器207となる熱交換流路207aが設けられている。また、低温反応部213には、電気ヒータ兼温度センサ253が設けられており、低温反応部213は電気ヒータ兼温度センサ253により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ253は、断熱容器220を貫通するリード線253cに接続されており、リード線253cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ253は、絶縁膜253a,253bにより他の部材と絶縁されている。
【0101】
第1連結部212は高温反応部217、中温反応部215や低温反応部213において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部212は、一端で低温反応部213に接続され、他端側で断熱容器220を貫通するとともに、他端で送液ポンプ203、図示しないエアポンプ等に接続される。第1連結部212は、低温反応部213から断熱容器220の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)212bと、断熱容器220の外部から低温反応部213に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)212cとを備える。第2実施形態と同様、第1配管及び第2配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0102】
第2連結部214は高温反応部217、中温反応部215や低温反応部213において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、中温反応部215と低温反応部213との間を接続する。第2連結部214は、一端で中温反応部215に接続され、他端で低温反応部213に接続されるとともに、中温反応部215から低温反応部213に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)214bと、低温反応部213から中温反応部215に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)214cとを備える。第2実施形態と同様、第3配管及び第4配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0103】
第3連結部216は高温反応部217、中温反応部215や低温反応部213において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部217と中温反応部215との間を接続する。第3連結部216は、一端で高温反応部217に接続され、他端で中温反応部215に接続されるとともに、高温反応部217から中温反応部215に反応物や生成物を送る流路となる第5配管(流出配管)216bと、中温反応部217から高温反応部217に反応物や生成物を送る第6配管(流入配管)216cとを備える。第2実施形態と同様、第5配管及び第6配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0104】
本実施形態においては、図16に示すように、高温反応部217に輻射放熱膜217aが設けられており、断熱容器220の輻射放熱膜217aと対向する部分に輻射透過窓227が設けられている。輻射放熱膜217aからの輻射は輻射透過窓227を透過するため、高温反応部217で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器220の外部へ放出される。したがって、高温反応部217から第3連結部216を経て中温反応部215へ伝導する熱量を抑えるとともに、高温反応部217で生じる熱量により高温反応部217の温度が必要以上に上昇することを防いで、高温反応部217の温度を適正に維持することができる。
【0105】
また、本実施形態においては、触媒燃焼器209は気密容器250の近傍に配置されるか、接触または接合されて、燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209で生じた熱が気密容器250に伝導しやすい。そして、輻射放熱膜217aは、気密容器250における触媒燃焼器209に対応する部分に設けられている。これらの構成により、燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209で生じた熱は、気密容器250のうち特に輻射放熱膜217aに伝導されやすく、ひいては、燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209から断熱容器220の外部へ輻射放熱される熱量を増大することができる。
【0106】
本実施形態の構造について、低温反応部213の温度を150℃、中温反応部215の温度を400℃、高温反応部217の温度を650℃、燃料電池セルスタック240の効率を50%とし、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
第3連結部216、第2連結部214及び第1連結部212による熱伝導を除く高温反応部217、中温反応部215、低温反応部213の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+21W、+0.5W、−2.5Wになる。輻射放熱膜217aを設けない場合には、この合計19Wの熱量が断熱容器220へと伝導してしまう。たとえば、17.5Wを輻射透過窓227を介して輻射放熱膜217aにより放射することで、第1連結部212より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。輻射放熱膜217aの輻射率を1とし、輻射透過窓123をBaF2によって形成した場合、輻射放熱膜217aの表面積を約4.25cmとることにより、7.5Wを放熱することができる。
【0107】
なお、例えば、溶融炭酸塩型の燃料電池セルスタック240を有する高温反応部217の温度を約600℃とすると、1.4〜11μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓227の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、CaF2、BaF2、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、NaF、PbF2、Si、TlCl、YF3、ZnO、ZnSを用いることが好ましい。また、例えば、約400℃である改質器205を有する中温反応部215からも放熱を行う場合には、2.2〜17μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓225の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、GaAs、GaSe、Ge、NaF、PbF2、TlCl、YF3、ZnOを用いることが好ましい。
【0108】
上述の通り、本実施形態では、輻射放熱膜217a及び輻射透過窓227に用いる材料を、放熱量や輻射放熱領域の温度に応じて、適宜選択することができる。また、輻射放熱膜217a及び輻射透過窓227の面積は、放熱量に応じて変更することができ、逆に、それらの設置面積に制約があれば、それに応じて、輻射放熱膜217a及び輻射透過窓227に用いる材料を変更することができる。なお、上述の計算値は、第1配管及び第2配管、第3配管及び第4配管、または、第5配管及び第6配管の間で熱交換を行っていない場合のものであり、輻射率1とは、全波長領域で積分した輻射率が1であることを示す。また、上述した透過することが好ましい波長領域は、規格化した輻射強度が0.1以上となる波長領域としたが、必要に応じて波長領域を変更することができるだけでなく、変更された波長領域に対応する輻射透過窓の材料を選択することができる。
【0109】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図18は本発明の第4実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。図19は反応装置310の斜視図、図20は図19のXX-XX切断線に対応する模式断面図、図21は図19のXXI矢視図である。以下、本実施形態の第3実施形態と異なる点について説明し、第3実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0110】
燃料電池セルスタック340は固体酸化物型であり、複数の燃料電池セル340A,340B,340C,340Dを積層してなる。第3実施形態と同様に、反応装置310には一酸化炭素除去器は用いられない。一体化された燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309は気密容器350に収容され、気密容器(第2の容器)350は断熱容器(第1の容器)320に収容されている。気密容器250は、気密容器350によって仕切られる空間の内外間で気体が流通しないようにするためのものであり、アノード出力電極346及びカソード出力電極347、リード線357c及び第3連結部316が貫通する部分は気密封止される。ここで、各出力電極及びリード線は、ガラス、セラミック等の図示しない絶縁材により他の部材から絶縁されて引き出される。
なお、図18では、複数の燃料電池セル340A,340B,340C,340Dのうち単一の燃料電池セル340Aのみを示し、符号の末尾のアルファベットを省略している。
【0111】
以下、単一の燃料電池セル340及び触媒燃焼器309で生じる反応について説明する。
燃料電池セル340は、電解質341と、電解質341の両面に形成された燃料極342(アノード)及び酸素極343(カソード)と、燃料極342に改質ガスを供給する燃料供給流路344aが設けられた燃料極セパレータ344と、酸素極343に酸素を供給する酸素供給流路345aが設けられた酸素極セパレータ345と、が積層されている。
【0112】
電解質341は酸素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、一酸化炭素、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極342には燃料供給流路344aを介して改質ガスが送られる。燃料極342では改質ガス中の水素、一酸化炭素及び電解質341を通過した酸素イオンによる次の電気化学反応式(25)、(26)に示す反応が起こる。
2+O2-→H2O+2e- ・・・(25)
CO+O2-→CO2+2e- ・・・(26)
生成した電子はアノード出力電極346に供給される。未反応の改質ガス(オフガス)は触媒燃焼器309に供給される。
【0113】
酸素極343には酸素供給流路345aを介して、第1の熱交換器307及び第2の熱交換器308により加熱された酸素(空気)が供給される。酸素極343では、酸素と、カソード出力電極347より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(27)に示す反応が起こる。
1/2O2+2e-→O2- ・・・(27)
生成した酸素イオンは電解質341を通過して燃料極342に供給される。未反応の酸素(空気)は触媒燃焼器309に供給される。
【0114】
触媒燃焼器309では、燃料供給流路344aを通過したオフガスと、酸素供給流路345aを通過した酸素(空気)とが混合され、オフガス中の水素及び一酸化炭素が燃焼される。燃焼熱は燃料電池セルスタック340を加熱するのに用いられる。
触媒燃焼器309の排ガス(水、酸素及び二酸化炭素の混合気体)は第2の熱交換器308及び第1の熱交換器307において熱を放出した後に、排出される。
【0115】
本実施形態においては、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309が一体化された高温反応部317は、電気ヒータ兼温度センサ357及び触媒燃焼器309により約700〜1000℃に保たれる。
【0116】
図20に示すように、反応装置310には、高温反応部317に輻射放熱膜317aが設けられており、断熱容器320の輻射放熱膜317aと対向する部分に輻射透過窓327が設けられている。輻射放熱膜317aからの輻射は輻射透過窓327を透過するため、高温反応部317で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、高温反応部317から第3連結部316を経て中温反応部315へ伝導する熱量を抑えるとともに、高温反応部317で生じる熱量により高温反応部317の温度が必要以上に上昇することを防いで、高温反応部317の温度を適正に維持することができる。
【0117】
また、本実施形態においては、図20に示すように、中温反応部315に輻射放熱膜315aが設けられており、断熱容器320における輻射放熱膜315aと対向する部分に輻射透過窓325が設けられている。輻射放熱膜315aからの輻射は輻射透過窓325を透過するため、中温反応部315で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、中温反応部315から第2連結部314を経て低温反応部313へ伝導する熱量を抑えるとともに、第3連結部316から伝導する熱量により中温反応部315の温度が必要以上に上昇することを防いで、中温反応部315の温度を適正に維持することができる。
【0118】
さらに、本実施形態においても、触媒燃焼器309は気密容器350の近傍に配置されるか、接触または接合されて、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309で生じた熱が気密容器350に伝導しやすい。そして、輻射放熱膜317aは、気密容器350における触媒燃焼器309に対応する部分に設けられている。これらの構成により、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309で生じた熱は、気密容器350のうち特に輻射放熱膜317aに伝導されやすく、ひいては、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309から断熱容器320の外部へ輻射放熱される熱量を増大することができる。
【0119】
ここで、燃料電池装置330を起動する場合、ヒータ兼温度センサ357により、高温反応部317を約700〜1000℃といった、固体酸化物型燃料電池の動作温度にまで上昇させる。本実施形態では、高温反応部317においてヒータ兼温度センサ357が設けられる側と反対側の面で輻射放熱するので、高温反応部317において加熱される側の面は冷却されにくく、高温反応部317の加熱を効率良く行うことができる。
【0120】
本実施形態の構造について、低温反応部313の温度を150℃、中温反応部315の温度を400℃、高温反応部317の温度を800℃、燃料電池セルスタック340の効率を60%とし、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
第3連結部316、第2連結部314及び第1連結部312による熱伝導を除く高温反応部317、中温反応部315、低温反応部313の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+10W、+3W、+0Wになる。輻射放熱膜312a,316aを設けない場合には、この合計13Wの熱量が断熱容器320へと伝導してしまう。たとえば、8W,3Wを輻射透過窓325,327を介して輻射放熱膜315a,317aにより放射することで、第1連結部312より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。輻射放熱膜315a,317aの輻射率を1とし、輻射透過窓123をBaF2によって形成した場合、輻射放熱膜315a,317aの表面積をそれぞれ約1.3cm、2.6cmとることにより、8W,3Wを放熱することができる。
【0121】
なお、固体酸化物型の燃料電池セルスタック340を有する高温反応部317の温度は約800℃であり、1.1〜9μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓327の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、MgO、NaF、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnSを用いることが好ましい。また、例えば、約400℃である改質器305を有する中温反応部315からも放熱を行う場合には、2.2〜17μmの波長領域の輻射を透過することが好ましい。この場合、輻射透過窓325の材料としては、上述した材料のいずれも用いることができるが、この波長領域における透過率を考慮すると、特に、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、GaAs、GaSe、Ge、NaF、PbF2、TlCl、YF3、ZnOを用いることが好ましい。
【0122】
上述の通り、本実施形態では、輻射放熱膜315a,317a及び輻射透過窓325,327に用いる材料を、放熱量や輻射放熱領域の温度に応じて、適宜選択することができる。また、輻射放熱膜315a,317a及び輻射透過窓325,327の面積は、放熱量に応じて変更することができ、逆に、それらの設置面積に制約があれば、それに応じて、輻射放熱膜315a,317a及び輻射透過窓325,327に用いる材料を変更することができる。なお、上述の計算値は、第1配管及び第2配管、第3配管及び第4配管、または、第5配管及び第6配管の間で熱交換を行っていない場合のものであり、輻射率1とは、全波長領域で積分した輻射率が1であることを示す。また、上述した透過することが好ましい波長領域は、規格化した輻射強度が0.1以上となる波長領域としたが、必要に応じて波長領域を変更することができるだけでなく、変更された波長領域に対応する輻射透過窓の材料を選択することができる。
【0123】
なお、上記実施形態においては、中温反応部315及び高温反応部317の両方に輻射放熱膜315a,317aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。この場合、輻射透過窓325,327についても、設けられる輻射放熱膜に対向するようにいずれか一方のみを設けてもよい。
【0124】
<変形例4>
図22は本発明の第4変形例に係る反応装置310Aの構成を示す図20と同様の模式断面図である。第4実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。本変形例においては、中温反応部315及び高温反応部317の上面に輻射放熱膜315a,317aがそれぞれ設けられ、断熱容器320における輻射放熱膜315a,317aに対向する位置に輻射透過窓325,327がそれぞれ設けられている。従って、本変形例では、中温反応部315及び高温反応部317におけるヒータ兼温度センサ355,357がそれぞれ設けられた面において輻射放熱を行っている。
【0125】
触媒燃焼器309aにおける発熱量よりも、高温反応部317における発熱量の方が大きいときには、高温反応部317における触媒燃焼器309aが設けられた側は相対的に温度が低くなってしまう。従って、本変形例のように、高温反応部317における触媒燃焼器309aが設けられた側と反対側の面において輻射放熱を行うことにより、高温反応部317の中で温度分布をより一様となるようにすることができる。
【0126】
<変形例5>
図23は本発明の第5変形例に係る反応装置310Bの構成を示す図20と同様の模式断面図である。第4実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。本変形例においては、中温反応部315及び高温反応部317の下面にヒータ兼温度センサ355,357がそれぞれ設けられ、中温反応部315及び高温反応部317の上面に輻射放熱膜315a,317aがそれぞれ設けられ、断熱容器320における輻射放熱膜315a,317aに対向する位置に輻射透過窓325,327がそれぞれ設けられている。従って、本変形例では、中温反応部315及び高温反応部317におけるヒータ兼温度センサ355,357がそれぞれ設けられた側と反対側の面において輻射放熱を行っている。
【0127】
ここで、燃料電池装置330を次の手順で起動することができる。即ち、ヒータ兼温度センサ355により、例えば約300〜400℃といった、中温反応部315の温度を改質ガスが生成される温度にまで上昇させるとともに、ヒータ兼温度センサ357により、例えば100℃といった、触媒燃焼器309aの温度を改質ガス中の水素の燃焼が行われる温度にまで上昇させて、次いで、触媒燃焼器309aにおいて水素を燃焼することにより、高温反応部317を約700〜1000℃といった、固体酸化物型燃料電池の動作温度にまで上昇させる。
【0128】
本変形例では、ヒータ兼温度センサ357が触媒燃焼器309aの近くに設けられていて、また、高温反応部317において加熱される側と反対側の面で輻射放熱するので、ヒータ兼温度センサ357が触媒燃焼器309aに効率良く伝わるとともに、高温反応部317において加熱される側の面は冷却されにくく、高温反応部317の加熱を効率良く行うことができる。なお、本変形例においても、燃料極セパレータ344を気密容器350の近傍に配置するか、絶縁膜を介して接触させてもよい。この場合、上述の各実施形態と同様、燃料電池セルスタック340で生じた熱が気密容器350に伝導しやすく、燃料電池セルスタック340から断熱容器320の外部へ輻射放熱される熱量を増大することができる。
【0129】
図24は本実施形態に係る電子機器300の形態例を示す斜視図である。なお、図24に示す電子機器300はノート型パーソナルコンピュータである。図24に示すように、反応装置310は電子機器300の背面側に取り付けられており、輻射透過窓325,327は電子機器300の外周面に沿って設けられている。このため、輻射放熱膜315a,315aより放射された輻射は輻射透過窓325,327を透過して外部に放出され、電子機器本体301への伝熱を抑制して、温度上昇を抑制できる。この場合、電子機器本体301への伝熱を抑制できればよいので、輻射透過窓325,327は必ずしも電子機器300の最外面に配置する必要はなく、最外面から窪んだ位置や突出した位置に設けてもよい。また、輻射透過窓325,327は後方向きに設けられているので、放出された輻射が電子機器300を使用中のユーザに向けて輻射されることを抑制できる。
【0130】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図25は本発明の第5実施形態に係る反応装置310Cの図20と同様の模式断面図であり、図26は図25における図21と同様のXIX矢視図である。図20と同様であるので斜視図を割愛する。なお、第4実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
図25、図26に示すように、第3連結部316に輻射放熱膜316aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜316aと対向する部分に輻射透過窓326を設けてもよい。高温反応部317から第3連結部316へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜316aから輻射され、輻射透過窓326より断熱容器320の外部へ放出されるため、中温反応部315を介した高温反応部317から断熱容器320への伝熱量を抑制しながら、中温反応部315の温度を適切に維持することができる。
【0131】
以下に具体例として、高温反応部317から中温反応部315へ繋がる第3連結部へ5Wの伝熱があり、その温度が800℃であるときに、第3連結部316から中温反応部315に伝導する伝熱量(QS1)を2Wに抑えながら、中温反応部315の温度を400℃に維持する場合の、第3連結部316の長さについて説明する。ここで、第3連結部316に輻射放熱膜316aを設けた場合において、輻射放熱膜316aによる放熱量(QSr)は3Wであり、次の数式(28)が成立する。
【数11】

【0132】
実施例及び比較例として、以下の各例について、第3連結部316に必要な配管長をそれぞれ算出した。
[実施例1]
第3連結部316のうち中温反応部315に近くより低温となる部分に輻射放熱膜316a及び輻射透過窓326を設けて輻射放熱する。図27は、第1実施例に係る反応装置310Dの下面図である。図25と同様のため、反応装置310Dの模式断面図を割愛した。
[実施例2]
第3連結部316のうち高温反応部317に近くより高温となる部分に輻射放熱膜316a及び輻射透過窓326を設けて輻射放熱する。図28は、第2実施例に係る反応装置310Eの下面図である。図25と同様のため、反応装置310Eの模式断面図を割愛した。
[比較例1]
高温反応部317に輻射放熱膜317a及び輻射透過窓を327設けて輻射放熱する。
[比較例2]
輻射放熱を行わない。即ち、QSr=0Wであり、5Wの熱量がそのまま中温反応部315に伝導する。
なお、第3連結部316は耐熱材料のインコネルとし、幅3mm、高さ3mm、肉厚0.25mmの角管が3本使用されているとした。
【0133】
図29は、上述の第1実施例、第2実施例、第1比較例及び第2比較例における第3連結部316の高温反応部317からの長さと温度との関係を計算した結果を示すグラフである。表1に、同様の結果を示した。
【0134】
【表1】

【0135】
第1実施例では、第3連結部316のうち中温反応部315に接続された端部(第二の端部)から15.5mmの領域(温度範囲は400℃〜725℃の領域に対応する)において輻射放熱することにより、放熱量QSrを3Wとして中温反応部315への伝熱量QS1を2Wに抑えることができた。
第2実施例では、第3連結部316のうち高温反応部317に接続された端部(第一の端部)から7.8mmの領域(温度範囲は647℃〜800℃の領域に対応)において輻射放熱する。これらの領域で輻射放熱することにより、上述の条件を満たすことができた。
【0136】
以上から、第3連結部316で輻射放熱した方が、高温反応部317のみで同じ熱量を輻射放熱する場合より、第3連結部316を短くすることができ、ひいては、反応装置310Cをより小型化することができる。
また、数式(4)より、輻射透過窓の単位面積当たりの輻射エネルギー量は温度の4乗に比例して増大する。従って、例えば3Wといった所定量のエネルギー量を輻射放熱する場合、第2実施例のように、反応装置本体のうち、より高温となる領域に輻射放熱膜316aを設けて輻射透過窓326を介して輻射放熱したほうが、第1実施例のように、より低温となる領域から輻射放熱するよりも、輻射透過窓326の面積を小さくすることができる。さらに、その温度範囲に対応する波長領域において輻射を効率良く透過する、輻射の透過率の高い輻射放熱窓326の材料を入手しやすい。
【0137】
一方、第3連結部316においてより低温となる領域に輻射放熱膜316a及び輻射透過窓326を設けて輻射放熱すると、第3連結部316の全長をより短くできる。また、上述の通り、例えば3Wといった所定量のエネルギー量を輻射放熱する場合には、輻射放熱する領域の面積は大きくなり、輻射が集中せずに分散するため、電子機器に搭載した場合、電子機器を使用中のユーザに対する安全性を高めることができる。
なお、輻射放熱を行わない場合は、第3連結部316の長さを最も短くできるものの、中温反応部315に5Wの熱量が伝導してしまうため、別の領域で輻射放熱を行う必要がある。
【0138】
<変形例6>
図30に示すように、第2連結部314に輻射放熱膜314aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜314aと対向する部分に輻射透過窓324を設けてもよい。中温反応部315から第2連結部314へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜314aから輻射され、輻射透過窓324より断熱容器320の外部へ放出されるため、低温反応部313を介した中温反応部315及び高温反応部317から断熱容器320への伝熱量を抑制しながら、低温反応部313の温度を適正に維持することができる。
本変形例においても、第2連結部314で輻射放熱した方が、中温反応部315のみで輻射放熱して第2連結部314では輻射放熱しない場合より、第2連結部314を短くすることができる。また、第2連結部314で輻射放熱を行う場合は、第2連結部314においてより低温となる領域に輻射放熱膜314a及び輻射透過窓324を設けて輻射放熱した方が、第2連結部314をより短くできる。いずれの場合も、反応装置310Fを小型化することができる。また、第5実施形態と同様、第2連結部314においてより高温となる領域に輻射放熱膜314a及び輻射透過窓324を設けて輻射放熱した方が、輻射透過窓324の面積を小さくすることができる。
【0139】
<変形例7>
図31に示すように、第1連結部312に輻射放熱膜312aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜312aと対向する部分に輻射透過窓322を設けてもよい。低温反応部313から第1連結部312へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜312aから輻射され、輻射透過窓322より断熱容器320の外部へ放出されるため、低温反応部313、中温反応部315及び高温反応部317から断熱容器320への伝熱量を抑制しながら、低温反応部313、中温反応部315及び高温反応部317の温度を適正に維持することができる。
本変形例においても、第1連結部312で輻射放熱した方が、低温反応部313のみで輻射放熱して第1連結部312では輻射放熱しない場合より、第1連結部312を短くすることができる。また、第1連結部312で輻射放熱を行う場合は、第1連結部312においてより低温となる領域に輻射放熱膜312a及び輻射透過窓322を設けて輻射放熱した方が、第1連結部312をより短くできる。いずれの場合も、反応装置310Gをより小型化することができる。また、第5実施形態、第6変形例と同様、第1連結部312においてより高温となる領域に輻射放熱膜312a及び輻射透過窓322を設けて輻射放熱した方が、輻射透過窓322の面積を小さくすることができる。
【0140】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図32は本発明の第6実施形態に係る反応装置310Hの図20と同様の模式断面図であり、図33は図32のXXIV矢視図である。斜視図は図20と同様のため、割愛する。
図32、図33に示すように、アノード出力電極346及びカソード出力電極347に輻射放熱膜346a,347aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜346a,347aと対向する部分に輻射透過窓366,367を設けてもよい。
【0141】
以下に具体例として、高温反応部317と中温反応部315とを接続する第3連結部に、高温反応部317から5Wの伝熱があり、高温反応部317の温度が800℃であるときに、高温反応部317からアノード出力電極346及びカソード出力電極347を介して断熱容器320に伝導する伝熱量(QS1)を0.5Wに抑えながら、断熱容器320の温度を50℃に維持する場合の、アノード出力電極346及びカソード出力電極347の長さについて説明する。ここで、アノード出力電極346及びカソード出力電極347に輻射放熱膜346a,347aを設けた場合において、輻射放熱膜346a,347aによる放熱量(QSr)は4.5Wであり、上述の数式(28)が成立する。
【0142】
実施例及び比較例として、以下の各例について、アノード出力電極346及びカソード出力電極347に必要な配管長をそれぞれ算出した。ここで、アノード出力電極346及びカソード出力電極347はともに同形状であるものとした。
[実施例3]
アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうちより低温となる部分(50℃〜645℃)に輻射放熱膜346a,347a及び輻射透過窓366,367を設けて輻射放熱する。図34は第3実施例に係る反応装置310Iの下面図である。図32と同様のため、反応装置310Iの模式断面図を割愛した。
[実施例4]
アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち中間の温度領域となる部分(300℃〜655℃)に輻射放熱膜346a,347a及び輻射透過窓366,367を設けて輻射放熱する。
[実施例5]
アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうちより高温となる部分(707℃〜800℃)に輻射放熱膜346a,347a及び輻射透過窓366,367を設けて輻射放熱する。図35は第5実施例に係る反応装置310Jの下面図である。図32と同様のため、反応装置310Jの模式断面図を割愛した。
[比較例3]
高温反応部317に輻射放熱膜317a及び輻射透過窓367を設けて輻射放熱する。この場合、高温反応部においてQSr=4.5Wを輻射放熱するとして計算した。
[比較例4]
輻射放熱を行わない。この場合QS1=5Wであるとして計算した。
【0143】
図36は、上述の第3乃至第5実施例、第3比較例及び第4比較例におけるアノード出力電極346及びカソード出力電極347の高温反応部317からの長さと温度との関係を計算した結果を示すグラフである。表2に、同様の結果を示した。
【0144】
【表2】

【0145】
上述の第3実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち50℃〜645℃となる部分(断熱容器320と接続された端部(第二の端部)から51mmの長さ)において輻射放熱することにより、上述の温度及び熱量の各条件を満たすことができた。
【0146】
上述の第4実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち300℃〜655℃となる部分(断熱容器320と接続された端部と高温反応部317と接続された端部(第一の端部)の間の23.65mm)において輻射放熱することにより、上述の温度及び熱量の各条件を満たすことができた。
【0147】
上述の第5実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち707℃〜800℃となる部分(高温反応部317と接続された端部から5.9mmの長さ)において輻射放熱することにより、上述の温度及び熱量の各条件を満たすことができた。
【0148】
上述の第3比較例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347の全長に亘って、伝熱量が0.5Wであるので、数式(1)より△xが191.2mmとなる。
【0149】
上述の第4比較例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347の全長に亘って、伝熱量が5Wであるので、数式(1)より△xが19.15mmとなる。
【0150】
以下、上述の結果について述べる。数式(1)より、ある物体を熱が伝導する場合、その物体の単位長さ当たりの温度差は伝熱量に比例する。
第4比較例のように、輻射放熱を行わない場合は、電極での伝熱量が5Wと大きいので、各電極の長さを短くすることができるが、別の領域にて輻射放熱を行う必要がある。また、第3比較例のように、高温反応部317で4.5Wの熱量を輻射放熱する場合は、電極での伝熱量が0.5Wと小さいので、各電極の長さが長くなってしまう。
【0151】
第3乃至第5実施例のように電極部分から4.5Wを輻射放熱する場合、高温反応部317に接続されて800℃となる端部では伝熱量は5Wであり、断熱容器320に接続されて50℃となる端部では伝熱量は0.5Wである。
第3実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち、より低温である断熱容器320に接続された第二の端部を含む連続した領域で輻射放熱した。この場合、第二の端部から51mmの領域で4.5Wの熱量を輻射でき、第二の端部から51mmの位置では各電極の温度は645℃となった。そして、この位置よりも高温反応部317と接続された第二の端部に近い部分の伝熱量は5Wであり、この伝熱量で800℃から645℃まで温度を降下させたので、数式(1)より、△x=5.1mmの長さが必要となった。
【0152】
第5実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち、より高温である高温反応部317に接続された第一の端部を含む連続した領域で輻射放熱した。この場合、第一の端部から5.9mmの領域で4.5Wの熱量を輻射でき、第一の端部から5.9mmの位置では各電極の温度は707℃となった。そして、この位置よりも断熱容器320と接続された第二の端部に近い部分の伝熱量は0.5Wであり、この伝熱量で707℃から50℃まで温度を降下させたので、数式(1)より、△x=160mmの長さが必要となった。
【0153】
第4実施例では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347のうち、中間の温度域である300〜655℃の温度範囲の連続した領域で輻射放熱した。従って、800℃となる第一の端部や50℃となる第二の端部では輻射放熱しない。この場合、655℃となる位置から23.65mmの位置で、4.5Wの輻射放熱が完了するとともに各電極の温度は300℃となった。各電極のうち655℃よりも高温となる第一の端部を含む連続した領域での伝熱量は5Wであり、この伝熱量で800℃から655℃まで温度を下げることになるので、数式(1)より、△x1=4.75mmの長さが必要となった。また、各電極のうち300℃よりも低温となる第二の端部を含む連続した領域での伝熱量は0.5Wであり、この伝熱量で655℃から50℃まで温度を下げることになるので、数式(1)より、△x2=48.4mmの長さが必要となった。このように、全長は△x1、△x2及び輻射放熱している長さの和である76.0mmとなった。
【0154】
以上から、アノード出力電極346及びカソード出力電極347で輻射放熱した方が、高温反応部317のみで同じ熱量を輻射放熱する場合より、アノード出力電極346及びカソード出力電極347を短くすることができ、ひいては、反応装置310Hをより小型化することができる。
また、第5実施形態と同様、例えば3Wといった所定量のエネルギー量を輻射放熱する場合、第5実施例のように、アノード出力電極346及びカソード出力電極347においてより高温となる領域に輻射放熱膜346a,347a及び輻射透過窓366,367を設けて輻射放熱した方が、第3実施例のように、より低温となる領域から輻射放熱するよりも、輻射透過窓366,367の面積を小さくすることができる。これにより、反応装置310Hをより小型化しやすい。さらに、その温度範囲に対応する波長領域において輻射を効率良く透過する、輻射の透過率の高い輻射放熱窓366,367の材料を入手しやすい。
【0155】
一方、アノード出力電極346及びカソード出力電極347においてより低温となる領域に輻射放熱膜346a,347a及び輻射透過窓366,367を設けて輻射放熱すると、アノード出力電極346及びカソード出力電極347の全長をより短くできる。また、上述の通り、例えば3Wといった所定量のエネルギー量を輻射放熱する場合には、輻射放熱する領域の面積は大きくなり、輻射が集中せずに分散するため、電子機器に搭載した場合、電子機器を使用中のユーザに対する安全性を高めることができる。
【0156】
本実施形態のようにアノード出力電極346及びカソード出力電極347から輻射放熱する場合、更に以下の利点がある。
まず、高温反応部317からアノード出力電極346及びカソード出力電極347へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜346a,347aから輻射され、輻射透過窓366,367より断熱容器320の外部へ放出されるため、アノード出力電極346及びカソード出力電極347を介した高温反応部317から断熱容器320への伝熱量を抑制しながら、高温反応部317及び断熱容器320の温度を適切に維持することができる。
【0157】
また、反応を行う高温反応部317、中温反応部315、低温反応部313から輻射放熱する場合、各反応部内の温度を均一とする必要があるので、各反応部内の温度分布を考慮して輻射放熱膜及び輻射放熱窓を配置する必要があった。一方、第6実施形態では、アノード出力電極346及びカソード出力電極347は、上述の各反応部と異なり内部の温度の均一性を要求されないので、電極のうちどの領域を輻射放熱領域としてもよいこととなる。従って、輻射放熱膜346a,347a及び輻射放熱窓366,367を形成するときの設計上の制約が軽減される。特に、携帯型の電子機器においては、ユーザーに向けて輻射放熱しないことが設計上の制約となるとが考えられるので、本実施形態は設計上の制約を軽減できる点において望ましい。
【0158】
さらに、数式(1)より、断熱容器320への伝熱量を小さくするために、アノード出力電極346及びカソード出力電極347を細くしたり長くすると、各電極の電気抵抗が増大してしまい、発電効率が低下してしまうが、各電極から輻射放熱することにより、各電極の形状を変えずに、電気抵抗を低く且つ発電効率を高く維持したまま、断熱容器320への伝熱量を小さくすることができる。
【0159】
なお、上述の第6実施形態では、輻射放熱膜346a,347aを電極の下面に設けて、輻射放熱窓366,367も各反応装置310H、310I、310Jの下面に設けたが、これに限らず、輻射放熱膜346a,347a及び輻射放熱窓366,367を他の面に設けるようにしてもよい。
【0160】
〔第7実施形態〕
図37は第5比較例に係る反応装置310Kの定常状態における温度及び熱量を示す模式図であり、図38は理想的な熱交換を説明するための模式図であり、図39は第7実施形態に係る反応装置310Lの定常状態における温度及び熱量を示す模式図である。
反応装置310K及び310Lは、それぞれ、第1連結部312となる流入配管312b及び流出配管312c、低温反応部313、第2連結部314となる流入配管314b及び流出配管314c、中温反応部315、第3連結部316となる流入配管316b及び流出配管316c、及び、中温反応部317を備える。反応装置310Lは、更に、流入配管312bと流出配管312cとの間で熱交換を行う熱交換器312d、流入配管314bと流出配管314cとの間で熱交換を行う熱交換器314d、及び、流入配管316bと流出配管316cとの間で熱交換を行う熱交換器316dを備える。
【0161】
流入配管と流出配管は、一体的に形成されるかまたは互いに接合されて、配管同士の間で熱交換が行われるものであり、各配管は、複数の配管を含んでもよい。例えば、流出配管を2本に分けて、2本の流出配管をそれぞれ流入配管の周囲に配置することにより、流出配管と流入配管との間での熱交換が行われやすくなる。なお、本実施形態の各流出配管は、本明細書における第1配管、第3配管、第5配管にそれぞれ対応し、各流入配管は、本明細書における第2配管、第4配管、第6配管にそれぞれ対応するものである。
【0162】
第1連結部312の流入配管312bは、低温反応部313で反応する反応物が流れる配管であり、流入配管312bを介して反応物が低温反応部313に供給される。第1連結部312の流出配管312cは、低温反応部313で生成する生成物が流れる配管であり、流出配管312cを介して反応物が低温反応部313から排出される。第2連結部314の流入配管314bは、中温反応部315で反応する反応物が流れる配管であり、流入配管314bを介して反応物が中温反応部315に供給される。第2連結部314の流出配管314cは、中温反応部315で生成する生成物が流れる配管であり、流出配管314cを介して反応物が中温反応部315から排出される。第3連結部316の流入配管316bは、高温反応部317で反応する反応物が流れる配管であり、流入配管316bを介して反応物が高温反応部317に供給される。第3連結部316の流出配管316cは、高温反応部317で生成する生成物が流れる配管であり、流出配管316cを介して反応物が高温反応部317から排出される。
【0163】
図37に示す本比較例について説明する。本比較例においては、各流出配管312b、314b、316bと各流入配管312c、314c、316cとの間で熱交換を行わない。中温反応部315は、図示しない輻射放熱膜315aを備え、断熱容器320の内壁面の図示しない輻射透過窓325と対向配置されている。高温反応部317は、図示しない輻射放熱膜317aを備え、断熱容器320の内壁面の図示しない輻射透過窓327と対向配置されている。
【0164】
以下に示す計算値は、燃料電池装置の実出力が1.4W、発電量が1.7W、燃料電池装置内部で0.3Wが消費されるものと仮定して算出した。
流入配管316cを介して高温反応部317に供給された反応物の温度は375℃であり、高温反応部317の反応温度は800℃であるので、高温反応部317において生じる発熱反応の熱量の一部は、反応物の温度を上昇させるための顕熱として利用され、高温反応部317では、0.766Wの余剰熱が生じる。この余剰熱のうち、第3連結部316を介して中温反応部315に伝導する熱量は0.300Wであり、高温反応部317の輻射放熱膜317aから輻射透過窓327を介して輻射放熱される熱量は0.466Wである。
【0165】
更に、中温反応部315の輻射放熱膜315aから輻射透過窓325を介して0.337Wの熱量を輻射放熱することにより、反応装置の外部の装置への伝熱量を0.300Wに抑えながら、中温反応部315を375℃、低温反応部313を150℃に維持することができる。このように、本比較例では、中温反応部315及び高温反応部317のそれぞれに対応する輻射透過窓325及び327を設けることにより、断熱容器への伝熱量を抑制しながら、各反応部313、315、317の温度をそれぞれ適切に維持している。
【0166】
理想的な熱交換について説明する。図38のT1in及びT1outは図37及び図39の流出配管に対応し、T2in及びT2outは図37及び図39の流入配管に対応する。流出配管から流入配管に熱量Qが移動して理想的な熱交換が行われるとき、温度効率εは以下の数式(29)、(30)を満たす。
【数12】

【0167】
図39に示す本実施形態について説明する。本実施形態においては、各流出配管312b、314b、316bと各流入配管312c、314c、316cとの間で熱交換を行う。高温反応部317は、図示しない輻射放熱膜317aを備え、断熱容器320の内壁面の図示しない輻射透過窓327と対向配置されている。中温反応部315では、輻射放熱を行わない。
【0168】
以下に示す計算値も、本比較例と同様、燃料電池装置の実出力が1.4W、発電量が1.7W、燃料電池装置内部で0.3Wが消費されるものと仮定して算出した。
本実施形態では、流入配管316cと流出配管316bとの間で熱交換が行われることにより、高温反応部317の生成物の温度は、流出配管316bを流れる間に800℃から375℃に降下するとともに、この温度降下の顕熱に相当する熱量が、流入配管316cの内部を流れる反応物(中温反応部315から排出された生成物)の温度を上げるための顕熱として利用される。この場合、ε1=1、ε2=0.97であるのは、上記出力値を達成するための燃料の量に基づいて算出を行ったためであり、実質的には理想的な熱交換が行われていると見なして良い。
【0169】
このため、流入配管316cを介して高温反応部317に供給された反応物の温度は788℃であり、高温反応部317の反応温度は800℃であるので、高温反応部317において生じる発熱反応の熱量のうち、反応物を昇温するための顕熱として利用される熱量は、本比較例に比べて大幅に低減される。このため、高温反応部317では、本比較例よりも多い1.790Wの余剰熱が生じる。この余剰熱のうち、第3連結部316を介して中温反応部315に伝導する熱量は0.629Wであり、高温反応部317の輻射放熱膜317aから輻射透過窓327を介して輻射放熱される熱量は1.161Wである。
【0170】
また、流入配管314cと流出配管314bとの間で熱交換が行われることにより、中温反応部315の余剰熱のうち一部は、流入配管314cの内部を流れる反応物(低温反応部313から排出された生成物)の温度を上げるための顕熱として利用される。一方で、中温反応部315の余剰熱の残りの熱量0.300Wが、第2連結部314を介して中温反応部315から低温反応部313に伝導するため、中温反応部315においては輻射放熱しなくてもよい。この場合も、上記出力値を達成するための燃料の量に基づいて算出を行ったため、ε1=0.99、ε2=0.99であるが、実質的には理想的な熱交換が行われていると見なして良い。
【0171】
また、流入配管312cと流出配管312bとの間で熱交換が行われることにより、低温反応部313の余剰熱のうち一部は、流入配管312cの内部を流れる反応物(反応装置の外部から供給された反応物)の温度を上げるための顕熱として利用される。一方で、低温反応部313の余剰熱の残りの熱量0.309Wが、第1連結部312を介して低温反応部313から反応装置の外部に伝導するため、低温反応部313においても輻射放熱する必要がない。この場合も、上記出力値を達成するための燃料の量に基づいて算出を行ったため、ε1=0.93、ε2=1であるが、実質的には理想的な熱交換が行われていると見なして良い。
【0172】
ここで、本実施形態及び本比較例について、燃料電池装置が搭載される電子機器の筐体等が吸収する熱量について説明する。
本比較例では、第1連結部312から排出されるオフガスの温度は150℃であり、オフガスの温度を排気温度である25℃まで降下させるための顕熱に相当する熱量0.466が、電子機器の筐体に吸収される。また、オフガスが凝縮するときの潜熱に相当する熱量0.703W、低温反応部313から第1連結部312を介した伝導による熱量0.300W、輻射透過窓において吸収される熱量0.104W、燃料電池装置内部で消費される電力に相当する0.300Wが、それぞれ電子機器の筐体に吸収されるため、その総和は1.873Wとなる。
【0173】
一方、本実施形態では、第1連結部312から排出されるオフガスの温度は38℃であり、オフガスの温度を排気温度である25℃まで降下させるための顕熱に相当する熱量0.025W、オフガスが凝縮するときの潜熱に相当する熱量0.089W、低温反応部313から第1連結部312を介した伝導による熱量0.309W、輻射透過窓において吸収される熱量0.111W、燃料電池装置内部で消費される電力に相当する0.300Wが、それぞれ電子機器の筐体に吸収されるため、その総和は1.094Wとなる。
【0174】
上述の通り、本実施形態では、本比較例と比べて、電子機器の筐体に吸収される熱量を0.779W低減することができるので、電子機器の筐体の温度上昇を抑制することができる。また、後述する通り、本発明の燃料電池装置を電子機器に搭載する場合、電子機器の筐体等による輻射の再吸収を抑制するため、電子機器の最外面から輻射放熱することが望ましい。従って、電子機器に搭載する場合には、輻射透過窓を2箇所に備える本比較例よりも、輻射透過窓を1箇所だけ備える本実施形態の方が、設計上の制約を軽減できる。特に、携帯型の電子機器においては、ユーザーに向けて輻射放熱しないことが設計上の制約となるとが考えられるので、本実施形態は設計上の制約を軽減できる点において望ましい。
【0175】
また、数式(4)より、輻射透過窓の単位面積当たりの輻射エネルギー量は温度の4乗に比例して増大する。従って、同じエネルギー量を輻射放熱する場合、反応装置本体のうち、より高温となる領域に輻射放熱膜を設けて輻射透過窓を介して輻射放熱すると、より低温となる領域から輻射放熱するよりも、輻射透過窓の面積を小さくすることができるとともに輻射エネルギー量を増大することができる。燃料電池装置を電子機器に搭載する場合、輻射透過窓の面積が小さい方が、設計上の制約を軽減できる。
【0176】
なお、輻射放熱膜346a,347aのいずれか1つのみを設け、対向するいずれか1つの輻射透過窓366,367のみを設けてもよい。
また、輻射放熱膜312a,313a,314a,315a,316a,317a,346a,347aのいずれか2つ以上を設けてもよい。その場合には、対向する輻射透過窓322,323,324,325,326,327,366,367を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1実施形態に係る反応装置10Aの構成を示す模式図である。
【図2】100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。
【図3】Au,Al,Ag,Cu,Rhの反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図4】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図5】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1変形例に係る反応装置10Bの構成を示す模式図である。
【図7】図6のVII矢視図である。
【図8】本発明の第2変形例に係る反応装置10Cの構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第3変形例に係る反応装置10Dの構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。
【図11】反応装置110の斜視図である。
【図12】図11のXII-XII切断線に対応する模式断面図である。
【図13】図11のXIII矢視図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る電子機器200を示すブロック図である。
【図15】反応装置210の斜視図である。
【図16】図15のXVI-XVI切断線に対応する模式断面図である。
【図17】図15のXVII矢視図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。
【図19】反応装置310の斜視図である。
【図20】図19のXX-XX切断線に対応する模式断面図である。
【図21】図19のXXI矢視図である。
【図22】本発明の第4変形例に係る反応装置310Aの構成を示す模式断面図である。
【図23】本発明の第5変形例に係る反応装置310Bの構成を示す模式断面図である。
【図24】本発明の第4実施形態に係る電子機器300の形態例を示す斜視図である。
【図25】本発明の第5実施形態に係る反応装置310Cの図20と同様の模式断面図である。
【図26】図25における図21と同様のXXVI矢視図である。
【図27】本発明の第1実施例に係る反応装置310Dの下面図である。
【図28】本発明の第2実施例に係る反応装置310Eの下面図である。
【図29】第3連結部316の高温反応部317からの長さと温度との関係を計算した結果を示すグラフである。
【図30】本発明の第6変形例に係る反応装置310Fの構成を示す模式断面図である。
【図31】本発明の第7変形例に係る反応装置310Gの構成を示す模式断面図である。
【図32】本発明の第6実施形態に係る反応装置310Hの模式断面図である。
【図33】図32における図21と同様のXXXIII矢視図である。
【図34】本発明の第3実施例に係る反応装置310Iの下面図である。
【図35】本発明の第5実施例に係る反応装置310Jの下面図である。
【図36】アノード出力電極346及びカソード出力電極347の高温反応部317からの長さと温度との関係を計算した結果を示すグラフである。
【図37】本発明の第5比較例に係る反応装置310Kの定常状態における温度及び熱量を示す模式図である。
【図38】理想的な熱交換を説明するための模式図である。
【図39】本発明の第7実施形態に係る反応装置310Lの定常状態における温度及び熱量を示す模式図である。
【符号の説明】
【0178】
10A〜10D,110,210,310,310A〜310L 反応装置
11,111,211,311 反応装置本体
11a,111a,211a,311a 輻射防止膜
12a〜15a,113a,217a,312a〜317a,346a,347a 輻射放熱膜
12,112,212,312 第1連結部
13,113,213,313 低温反応部
14,114,214,314 第2連結部
215,315 中温反応部
216,316 第3連結部
15,115,217,317 高温反応部
20,120,220,320 断熱容器(第1の容器)
250,350 気密容器(第2の容器)
21a,121a,221a,321a 反射膜
22,23,24,25,123,226,227,322〜327,366,367 輻射透過窓
312b,314b,316b 流出配管
312c,314c,316c 流入配管
100,200,300 電子機器
130,230,330 燃料電池装置
140,240,340 燃料電池セル
146,246,346 アノード出力電極
147,247,347 カソード出力電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、
前記反応装置本体を収容する第1の容器とを備え、
前記第1の容器は前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有することを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記第1の容器の前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、LiF、SiO2、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、CaCO、KI、NaI、NaNO、AgCl、AgBr、TlBr、Al23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、Cr23、DyF2、Fe23、GaAs、GaSe、Gd23、Ge、HfO2、HoF3、Ho23、La23、MgO、NaF、Nb25、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnS、ZrO2の少なくとも1つが用いられ、
前記第1の容器の前記輻射透過領域を除く部分には、前記第1の容器の前記輻射透過領域よりも赤外領域の透過率が低い材料が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記第1の容器の全体には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、LiF、SiO2、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、CaCO、KI,NaI,NaNO、AgCl、AgBr、TlBr、Al23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、Cr23、DyF2、Fe23、GaAs、GaSe、Gd23、Ge、HfO2、HoF3、Ho23、La23、MgO、NaF、Nb25、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnS、ZrO2の少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記第1の容器の前記輻射透過領域を除く部分の内壁面には、Au,Al,Ag,Cu,Rhの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記反応装置本体の前記輻射透過領域との対向面には、前記反応装置本体の前記輻射透過領域との対向面を除く部分の外壁面よりも赤外領域の輻射率が高い輻射放熱領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記反応装置本体の少なくとも前記輻射透過領域との対向面を除く部分には、前記反応装置本体からの輻射を防止する輻射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記輻射放熱領域は非蒸発型ゲッターにより形成されていることを特徴とする請求項5に記載の反応装置。
【請求項8】
前記反応装置本体の外側であって前記第1の容器の内側は、大気圧よりも低い圧力であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記反応部が前記輻射透過領域と対向配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記反応装置本体は互いに異なる温度であり反応物がそれぞれ反応する2つ以上の反応部を有し、
前記2つ以上の反応部のうち少なくとも1つが前記輻射透過領域と対向配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記反応部は燃料及び水を気化して混合気を生成する気化器を含み、
前記輻射透過領域には、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、CdSe、CdTe、Geの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記反応部は気化された燃料及び水から改質ガスを生成する改質器を含み、
前記輻射透過領域には、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、NaCl、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、GaAs、GaSe、Ge、NaF、PbF2、TlCl、YF3、ZnOの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記反応部は、反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
前記燃料電池セルは溶融炭酸塩型であり、
前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、NaF、PbF2、Si、TlCl、YF3、ZnO、ZnSの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項13に記載の反応装置。
【請求項15】
前記燃料電池セルは固体酸化物型であり、
前記輻射透過領域には、CaF2、BaF2、ZnSe、MgF2、KRS−5、KRS−6、CsI、KBr、AlF3、NaCl、KF、KCl、CsCl、CsBr、CsF、NaBr、KI、NaI、AgCl、AgBr、TlBr、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、CeF3、CeO2、DyF2、GaAs、GaSe、Gd23、HfO2、La23、MgO、NaF、PbF2、Si、Si34、SrF2、TlCl、YF3、Y23、ZnO、ZnSの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項13に記載の反応装置。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の反応装置と、前記燃料電池セルの電力により動作する電子機器本体とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項17】
前記輻射透過領域は、前記電子機器の外周面に沿って配置されることを特徴とすることを特徴とする請求項16に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2009−238581(P2009−238581A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83166(P2008−83166)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】