説明

取引監視装置

【課題】自動取引システムの正当な利用者間の円滑な金銭取引を阻害することなく、そのシステムの取引端末による送金処理を悪用した詐欺行為を防止する取引監視装置を提供する。
【解決手段】取引監視装置1は、取引端末の利用者を撮影するように設置された監視カメラ130より取得した画像データから利用者の顔領域を抽出する顔検出部22と、顔領域の色情報から利用者の肌色を決定する肌色検出部23と、顔領域の近傍に設定された探索領域内で、利用者の肌色を基準として、色情報が略同一の肌色に相当する所定範囲内の画素を肌色画素として抽出し、その肌色画素が占める面積に基づいて利用者の手を検出する手領域検出部24と、所定期間にわたって順次取得された画像データのそれぞれから利用者の手が検出された場合、利用者が通話中であると判定する判定部25と、通話中であると判定されると、警報を報知する異常報知部12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引監視装置に関し、特に、自動取引システムの取引端末の利用者を撮影した画像から、利用者が特定の行動をとっているか否かを判定する取引監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の利用者間での金銭取引において、金融機関またはコンビニエンスストアなどに設置された取引端末、例えば、現金自動預け払い機(ATM、Automated Teller Machine)を用いた振込み手続きといった送金処理が広く利用されている。
ところが、近年、この取引端末による送金処理を利用して、家族または親族などの身内の者を装って、取引端末の利用者に現金を送金させる詐欺行為が増加しており、社会的に問題となっている。
また、同様に、公的団体の職員を装って、医療費または税金が還付される等、払い過ぎた金銭が返金されるかのように偽り、利用者に言葉巧みに取引端末を操作させて、利用者本人が気付かないうちに、他人(詐欺行為者)の口座に金銭を振り込ませる詐欺行為も急増している。
このような問題に対して、利用者が送金処理を行うときに金銭の受取人の正当性を判別することで、詐欺行為の被害を未然に防止しようとするシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された自動取引システムは、取引装置にて送金処理を行う振込人と、この送金を受け取る受取人とが通話するハンドセットを備える。そしてこの自動取引システムは、このハンドセットを通じて取得される受取人の声紋データを、予め顧客データベースに記憶された振込人の身内の者の声紋データと照合して、その照合結果で振込取引の可否を判断することにより、詐欺被害を未然に防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−80123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された自動取引システムは、詐欺被害を防止するために、正当な取引であっても、振込手続時に受取人の声紋照合を必ず行わなければならない。そのため、この自動取引システムは、取引装置にて送金処理を行う全ての利用者について、自己の送金先として考えられ得る全ての人物の声紋データを取得して、顧客データベースに事前に登録しておかなければならない。もし、送金先の人物の声紋データが顧客データベースに登録されていなければ、利用者は、この自動取引システムを利用してその人物の口座に対して送金処理を行うことができないので、円滑な金銭取引に支障をきたすおそれが生じる。
【0006】
そこで、本発明は、自動取引システムの正当な利用者間の円滑な金銭取引を阻害することなく、そのシステムの取引端末による送金処理を悪用した詐欺行為を防止する取引監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、家族または親族などの身内の者を装い金銭の送金を要求する詐欺行為では、聴力の衰えた高齢者が被害者として狙われることが多い。その詐欺行為の手口として、詐欺行為者は、被害者の身内などを装って被害者が取引端末の前まで出向いた後に詐欺行為者自身まで電話するように被害者を誘導する。被害者が詐欺行為者を信用した場合、その被害者は詐欺行為者の指示通りに取引端末の前で携帯電話機を使って詐欺行為者に電話を掛けてしまう。そして被害者は、詐欺行為者からの電話を通じた取引端末の操作方法の具体的な指示に従って取引端末を操作してしまい、詐欺と気付かずに金銭を詐欺行為者の口座に送金してしまう。
【0008】
また、還付金があるかのように偽る詐欺行為についても同様であり、被害者として狙われるのは取引端末の操作に不慣れな高齢者であることが多い。この場合の詐欺行為の手口として、詐欺行為者は、社会保険事務所または自治体の職員、あるいは税務署員を装って、医療費または保険金、あるいは税金が還付される等、払い過ぎた金銭が取引端末を操作することによって返還されるかのように偽って被害者を取引端末まで誘導し、被害者が取引端末の前まで出向いた後に詐欺行為者自身まで電話させる。被害者が詐欺行為者を信用した場合、上述した詐欺行為の類型と同様に、その被害者は詐欺行為者の指示通りに取引端末の前で携帯電話機を使って詐欺行為者に電話を掛けてしまう。そして詐欺行為者は、取引端末まで出向いた被害者から電話が掛かってくると、「私の云う通りにATMを操作して下さい」等と言葉巧みに被害者に取引端末を操作させ、例えば振込金額の入力画面で、「ここで暗証番号を入力します」などと偽り振込金額を入力させる。そのため、被害者は、金銭が還付されるものと思いながら取引端末を操作しても、実際は本人が気付かないうちに、他人(詐欺行為者)の口座に送金を行ってしまう。
【0009】
本発明に係る取引監視装置は、上述した取引端末の送金処理を悪用した詐欺行為は、被害者が取引端末の前で携帯電話機を通じての詐欺行為者からの指示に従って取引端末を操作することにより行われる点に着目したものである。
【0010】
かかる課題を解決するための本発明は、送金処理が可能な自動取引端末の利用者の行動を監視する取引監視装置を提供する。本発明に係る取引監視装置は、自動取引端末の利用者を撮影するように設置された監視カメラより取得した画像データから利用者の顔に対応する顔領域を抽出する顔検出部と、顔領域の色情報から利用者の肌色を決定する肌色検出部と、顔領域の近傍に設定された探索領域内で、肌色検出部により決定された利用者の肌色を基準として、色情報が略同一の肌色に相当する所定範囲内の画素を肌色画素として抽出し、その肌色画素が占める面積に基づいて利用者の手を検出する手領域検出部と、所定期間中に順次取得された画像データのそれぞれから、手領域検出部が利用者の手を検出した場合、利用者が携帯電話機を使用して通話中であると判定する判定部と、判定部により、利用者が携帯電話機を使用して通話中であると判定されると警報を報知する異常報知部とを有する。
【0011】
また、肌色検出部は、顔領域に含まれる画素の色情報の統計的な代表値を算出し、その代表値を利用者の肌色とすることが好ましい。
【0012】
この場合において、肌色検出部は、顔領域に含まれる画素のうち、肌色に相当する所定の色情報を持つ画素のみから色情報の統計的な代表値を算出することが好ましい。
【0013】
さらに、異常報知部は、自動取引端末に併設された通話装置が使用されたことを検知すると、利用者が携帯電話機を使用して通話中であると判定されていても警報を報知しないことが好ましい。
【0014】
また本発明の他の形態によれば、人物を撮影するように設置された監視カメラより取得した画像データから人物が携帯電話機を使用して通話中か否か判定する電話使用検出装置が提供される。本発明に係る電話使用検出装置は、画像データから人物の顔に対応する顔領域を抽出する顔検出部と、顔領域の色情報からその人物の肌色を決定する肌色検出部と、顔領域の近傍に設定された探索領域内で、肌色検出部により決定された人物の肌色を基準として、色情報が略同一の肌色に相当する所定範囲内の画素を肌色画素として抽出し、その肌色画素が占める面積に基づいてその人物の手を検出する手領域検出部と、所定期間中に順次取得された画像データのそれぞれから、手領域検出部がその人物の手を検出した場合、その人物が携帯電話機を使用して通話中であると判定する判定部とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る取引監視装置は、自動取引システムの正当な利用者間の円滑な金銭取引を阻害することなく、そのシステムの取引端末による送金処理を悪用した詐欺行為を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る取引監視装置を含む自動取引システムの概略構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係る取引監視装置の概略構成図である。
【図3】手の探索領域の一例を示す図である。
【図4】本発明の一つの実施形態に係る取引監視装置の制御部上で実行されるコンピュータプログラムにより制御される、通話検知処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一つの実施形態に係る取引監視装置の制御部上で実行されるコンピュータプログラムにより制御される、取引監視装置の全体処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、一つの実施形態による、電話使用検出装置が組み込まれた取引監視装置について説明する。
この取引監視装置は、ATMなど、金銭の取引を行う自動取引システムの取引端末に設置される。そしてこの取引監視装置は、取引端末の利用者を撮影した画像から利用者の顔領域を検出し、その顔領域の近傍に手が存在するか否かを調べることにより、利用者が携帯電話機を使用して通話しているか否かを判定する。そしてこの取引監視装置は、利用者が携帯電話機を使用して通話していると判定したときに、利用者に対して詐欺行為の可能性がある旨の警報を発する。特にこの取引監視装置は、利用者の顔と手の色は略等しいと考えられることから、顔領域から求めた利用者の肌色情報を手の検出判断に利用することで、高精度で携帯電話機を使用した通話の有無を判定可能とするものである。
【0018】
図1は、一つの実施形態による、電話使用検出装置が組み込まれた取引監視装置を含む自動取引システムの概略構成図である。図1に示すように、金融機関の店舗などに設置された取引端末100は、筐体110と、タッチパネルディスプレイ120と、通帳またはキャッシュカードなどの受け入れ口111、112と、金銭の受け入れ・払い出し口113とを有する。
通帳またはキャッシュカードなどの受け入れ口111、112は、筐体110の正面上方に形成されており、取引端末100は、その受け入れ口111に挿入された通帳に記帳したり、受け入れ口112に挿入されたキャッシュカードから所定の情報を取得することが可能となっている。金銭の受け入れ・払い出し口113は、筐体110の正面のテーブル状に形成された部位に形成されており、この受け入れ・払い出し口113を介して、利用者は金銭の預け入れ及び払い出しをすることが可能となっている。
【0019】
タッチパネルディスプレイ120は、筐体110の正面のテーブル状に形成された部位に、上方に向けて情報が表示されるように設置される。そしてタッチパネルディスプレイ120は、取引端末100の利用者に対して、振込、入金、出金などの各種処理に応じた操作ボタン及び操作案内を表示する。そして利用者が、タッチパネルディスプレイ120に表示された操作ボタンを押下することにより、タッチパネルディスプレイ120は、押下された操作ボタンに応じた操作信号あるいは、暗証番号、振込先、金額などを表す情報を取得する。そして取引端末100は、タッチパネルディスプレイ120から取得した操作信号または情報を、通信回線(図示せず)を介して接続されたサーバ(図示せず)に送信し、サーバからの応答信号に従って、利用者が選択した操作に対応する処理を実行する。
【0020】
取引端末100の内部または近傍には、監視カメラ130と、スピーカ140と、センサ160とが設置され、これらの機器が取引監視装置1と接続される。
監視カメラ130は、取引端末100の利用者の頭部から肩にかけての領域を正面から撮影することが可能なように、筐体110の正面上方に設置される。なお、監視カメラ130は、利用者の頭部から肩にかけての領域を正面から撮影することが可能であれば、取引端末100と別個に、例えば取引端末100の背面に隣接する壁面に設置されてもよい。また監視カメラ130は、CCDまたはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系などを有する。そして監視カメラ130は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影を行って、利用者を撮影した画像を順次取引監視装置1へ出力する。
【0021】
スピーカ140は、筐体110の上方に設置される。またスピーカ140は、取引監視装置1と接続され、取引監視装置1から受け取った警報音声信号に応じた音声を発する。
【0022】
さらに、取引端末100の近傍、例えば、取引端末100が設置されたブースの壁面には、取引端末100を操作する利用者を検知するためのセンサ160が設置される。このセンサ160は、例えば、予め取引端末100の正面の所定空間に設定された検知領域から放射される赤外線を受光し、その受光量の変化によって利用者を検知する人感センサとすることができる。あるいは、センサ160は、予め取得した背景画像とカメラにより撮影した画像との差分によって得られた変化領域から利用者を検知する画像センサ、あるいはマットセンサ若しくは近接センサなどであってもよい。そしてセンサ160は、取引監視装置1と接続され、利用者を検知している間、その旨を示す人体検知信号を取引監視装置1へ出力し、利用者を検知しなくなると、人体検知信号の出力を停止する。
【0023】
また、取引端末100の近傍、例えば、取引端末100が設置されたブースの壁面には、オートホン150が設置される。このオートホン150は、プロセッサ、半導体メモリ、通信インターフェース及びその周辺回路を有するオートホン制御装置151と接続されている。そしてオートホン150の受話器が外されると、オートホン制御装置151は、通信回線170を介してオートホン制御装置151に接続された、遠隔地のATMセンタに設置されたATMセンタ装置180に向けて自動発信処理を実行し、利用者がオートホン150を介してATMセンタ装置180のオペレータと通話することを可能にする。
また、オートホン制御装置151は、取引監視装置1とも接続され、利用者がオートホン150を使用している場合に、その旨を示すオートホン使用信号を取引監視装置1へ出力する。具体的には、オートホン制御装置151は、オートホン150から受話器が外れていることを示すオフフック信号を受信している間、オートホン使用信号を取引監視装置1へ出力する。
なお、オートホン150と取引監視装置1を直接接続し、取引監視装置1は、オートホン150からオフフック信号を直接受信することにより、オートホン150が使用中であることを確認できるようにしてもよい。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る、電話使用検出装置が組み込まれた取引監視装置1について説明する。
図2は、取引監視装置1の概略構成図である。図2に示すように、取引監視装置1は、画像取得部2と、音声出力部3と、通信部4と、記憶部5と、制御部6とを有する。
【0025】
画像取得部2は、画像入力インターフェースであり、例えば、ビデオ入力端子などで構成される。そして画像取得部2は、監視カメラ130から入力された画像データを取得して制御部6へ渡す。
【0026】
音声出力部3は、音声出力インターフェースであり、例えば、オーディオ出力端子などで構成される。そして音声出力部3は、制御部6から受け取った警報音声信号をスピーカ140へ出力する。
【0027】
通信部4は、通信インターフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、ユニバーサルシリアルバス2(USB2)、IEEE802.11a、IEEE1394、RS232Cなどの通信規格に従ったインターフェース及び制御回路などで構成される。そして通信部4は、オートホン制御装置151からのオートホン使用信号またはオートホン150からのオフフック信号を受信して、それらの信号を制御部6へ渡す。
さらに通信部4は、センサ160から受け取った人体検知信号を制御部6へ渡す。
また取引監視装置1と取引端末100とは、通信部4を介して接続されてもよく、この場合、取引監視装置1の制御部6は、通信部4を介して警報信号などを取引端末100へ送信してもよい。
【0028】
記憶部5は、フラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、または磁気ディスク(HDD)などの記憶装置の少なくとも何れか一つを有する。なお、記憶部5は、制御部6が有する半導体メモリの記憶領域の一部として実現されてもよい。そして記憶部5は、取引監視装置1で使用される各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部5は、例えば、そのようなデータとして、センサ160によって利用者が検知されているか否かを示す人体検知フラグ、オートホン150が使用されているか否かを表すオートホン使用フラグを記憶する。さらに記憶部5は、利用者の手の検索範囲を設定するための検索領域情報、利用者の顔及び手を判定するためのテンプレート及び判定基準情報等を記憶する。さらに記憶部5は、携帯電話機を使用して取引端末100から送金させる詐欺行為に注意を促す音声メッセージに対応する音声データを記憶する。
そして記憶部5は、制御部6と接続され、制御部6からの要求に応じて、所定のプログラム及びデータを出力し、あるいは所定のデータを記憶する。
【0029】
制御部6は、プロセッサユニット、RAM及びROMなどの半導体メモリ、及び周辺回路を有する。そして制御部6は、取引監視装置1全体を制御する。また制御部6は、監視カメラ130から受け取った画像データに基づいて、利用者が携帯電話機を使用しているか否か判定し、使用している場合には、スピーカ140を介して注意を促す。そのために、制御部6は、携帯使用検知部11と、異常報知部12と、フラグ処理部13とを有する。制御部6が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサユニット上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。
【0030】
携帯使用検知部11は、監視カメラ130から受け取った画像データから、利用者の顔の近傍に利用者の手があるか否かを調べることにより、利用者が携帯電話機を使用しているか否か判定する。そのために、携帯使用検知部11は、エッジ画像生成部21と、顔検出部22と、肌色検出部23と、手領域検出部24と、判定部25とを有する。
【0031】
エッジ画像生成部21は、監視カメラ130から受け取った、利用者が撮影された画像データ(以下監視画像という)から、利用者の各部の輪郭に対応するエッジ画素を抽出する。そのためにエッジ画像生成部21は、例えば、監視画像に対してsobelフィルタまたはprewittフィルタなどのエッジ検出フィルタを用いた近傍画素間演算を実行する。そしてエッジ画像生成部21は、近傍画素間演算の結果得られた差分値の絶対値が所定の閾値よりも大きい画素をエッジ画素とする。なお、所定の閾値は、例えば、監視画像の各画素について得られた差分絶対値の平均値とすることができる。また、エッジ画像生成部21は、エッジ検出フィルタの向きを少なくとも垂直方向と水平方向の2方向に設定し、垂直方向のエッジと水平方向のエッジを検出することが好ましい。そしてエッジ画像生成部21は、各画素について、得られた各方向の差分絶対値のうち、最大値となる方向をその画素のエッジの向きとする。
エッジ画像生成部21は、抽出されたエッジ画素を表すエッジ画像を作成する。例えば、エッジ画像では、抽出されたエッジ画素に対応する画素の画素値が、水平方向のエッジであれば1、垂直方向のエッジであれば2で表され、その他の画素の画素値が0で表される。あるいは、エッジ画像生成部21は、エッジ画像とは別個に、抽出されたそれぞれのエッジ画素の向きを表すエッジ方向データを作成してもよい。
エッジ画像生成部21は、作成したエッジ画像を手領域検出部24へ渡す。また顔検出部22がエッジ画像に基づいて顔特徴点を検出する場合には、エッジ画像生成部21は、顔検出部22にもエッジ画像を渡す。
【0032】
顔検出部22は、監視画像から利用者の顔が写っている顔領域を検出する。そのために、顔検出部22は、画像から顔領域を検出する様々な技術の何れかを利用することができる。例えば、監視画像がカラー画像である場合、顔検出部22は、監視画像の各画素の色情報をHSV表色系の色情報に変換する。そして顔検出部22は、色相Hの成分が所定の範囲に含まれる色情報を有する画素を肌色画素として抽出する。なお、所定の範囲は、例えば、色相Hの成分の色情報が0から255で表される場合、0から40に設定される。そして顔検出部22は、肌色画素及び肌色画素で囲まれた領域を候補領域とし、その候補領域から抽出されるHaar-like特徴を用いたAdaboost識別器により、候補領域が顔領域か否か判定する。なお、Haar-like特徴は、入力された画像領域中に任意に設定された複数の隣接矩形領域間の輝度差である。また、Adaboost識別器は、複数の弱識別器と、各弱識別器の判定結果を統合して判定する強識別器とから構成される。
【0033】
各弱識別器は、入力された画像領域から、それぞれ異なるHaar-like特徴を算出し、算出されたHaar-like特徴に基づいて入力された候補領域が顔領域か否かの識別結果を出力する。例えば、弱識別器は、候補領域が顔領域であると判定した場合、1を出力し、一方、候補領域が顔領域でないと判定した場合、-1を出力する。一方、強識別器は、各弱識別器による出力結果をそれぞれ重み付けして、その重み付け和を求める。そして強識別器は、得られた重み付け和が所定の閾値(例えば、0)よりも高い場合、候補領域が顔領域であると判定する。
【0034】
また、候補領域中のどの位置に関するHaar-like特徴を識別に利用する弱識別器が使用されるか、及び弱識別器に対する重みは、人物の顔が写っていない複数のサンプル画像と人物の顔が写っている複数のサンプル画像とを用いた事前学習により決定される。学習手順の概略は以下の通りである。
(1)使用可能な全ての弱識別器について、Haar-like特徴の値に基づいて、入力された画像領域に顔が写っているか否かを識別する閾値を設定する。
(2)各サンプル画像に対する重みを決定する。重みの初期値は、各サンプル画像に対して同じ値とする。
(3)全ての弱識別器に対して各サンプル画像を入力して、弱識別器ごとに識別に失敗したサンプル画像に付けられた重みを合計する。そしてその重みの合計を評価値とする。
(4)評価値が最も小さい弱識別器をAdaboost識別器で使用する弱識別器として選択する。そして評価値から選択された弱識別器の出力に付される重みを決定する。
(5)選択された弱識別器が識別に失敗したサンプル画像の重みを大きくする。
(6)(3)〜(5)の手順を繰り返す。
なお、Haar-like特徴及びAdaboost識別器の詳細については、例えば、Paul Viola and Michael Jones, "Rapid Object Detection using a Boosted Cascade of Simple Features", IEEE CVPR, vol.1, pp.511-518, 2001に開示されている。
【0035】
また、顔検出部22は、監視画像から、人物の顔において特徴的な目領域(両目尻の中点を含む)、鼻尖点、口点、口角点などの顔特徴点を抽出することにより、顔領域を検出してもよい。例えば、顔検出部22は、エッジ画像生成部21から受け取ったエッジ画像から、顔の輪郭形状に近似した楕円形状のエッジ分布を、パターンマッチングなどを用いて検出する。そして、顔検出部22は、その楕円形状のエッジ分布に囲まれた領域内に存在するエッジ画素の位置、パターンなどに基づいて求めた特徴量が、目、鼻、口などの部位について予め定められた条件を満たすか否かを調べて各部位の位置を特定することにより、各顔特徴点を抽出することができる。そしてこれらの顔特徴点が抽出できた場合、顔検出部22は、その楕円形状のエッジ分布に囲まれた領域を顔領域とする。また顔検出部22は、エッジ抽出処理を行ってエッジ画素を抽出する代わりに、ガボール変換処理あるいはウェーブレット変換処理を行って、異なる複数の空間周波数帯域で局所的に変化の大きい画素を抽出してもよい。さらに顔検出部22は、顔領域に相当するテンプレートと監視画像とのテンプレートマッチングを行ってテンプレートと監視画像との相関値を求め、その相関値が所定の閾値以上となる場合、その相関値に対応する監視画像内の領域を顔領域として検出してもよい。
顔検出部22は、監視画像から顔領域を検出することができた場合、その顔領域を表す情報(例えば、顔領域の外接矩形の左上端点の画素の座標と右下端点の画素の座標)を、肌色検出部部23及び手領域検出部24へ渡す。さらに顔検出部22は、顔領域内の肌色画素を示す肌色領域情報を肌色検出部23へ渡す。一方、顔検出部22は、監視画像から顔領域を検出することができなかった場合、その旨を示す顔検出不能信号を携帯使用検知部11に返す。
【0036】
肌色検出部23は、顔領域内に含まれる肌色画素の色情報の統計的な代表値を、利用者の肌色として算出する。具体的には、肌色検出部23は、顔領域内に含まれる肌色画素の色情報の平均値、例えば、HSV表色系のH相成分の平均値を、利用者の肌色とする。あるいは、肌色検出部23は、顔領域内に含まれる肌色画素の色情報における、H相成分の最頻値あるいは中央値を、利用者の肌色としてもよい。
ここで、顔領域内に含まれる肌色画素は、顔検出部22より受け取った肌色領域情報により特定される。また、顔検出部22が肌色画素を抽出しなかった場合、肌色検出部23自体が顔領域内で肌色画素を抽出してもよい。この場合も、顔検出部22が肌色画素を抽出する場合と同様に、顔領域内の各画素のうち、色相Hの成分が所定の範囲に含まれる色情報を有する画素を肌色画素として抽出する。そしてこの所定の範囲も、上記と同様に、例えば、色相Hの成分の色情報が0から255で表される場合、0から40に設定される。このように、肌色検出部23は、色相Hの成分の範囲を制限することにより、顔領域内に存在する、髪、眉、目、鼻孔、唇など、肌とは異なる色を持つ部分を除いて利用者の肌色を決定できる。そのため、肌色検出部23は、利用者の肌色を正確に決定できる。なお、肌色検出部23は、顔検出部22により検出された顔特徴点及びその近傍領域に含まれる画素を除外して、利用者の肌色を決定してもよい。
肌色検出部23は、利用者の肌色を表す肌色情報を手領域検出部24へ通知する。
【0037】
手領域検出部24は、顔検出部22により検出された顔領域の近傍領域において、利用者の手が検出できるか否か判定する。そこでまず、手領域検出部24は、利用者が携帯電話機を利用している場合、利用者の顔の側面に手を近づけることを考慮して、手の探索領域を設定する。
【0038】
図3は、手の探索領域の一例を示す。図3に示すように、利用者が正面方向を向いている場合、手の探索領域320は、顔領域310の側面に隣接し、顔領域310と手の探索領域320はほぼ重ならないように設定される。利用者が携帯電話機を用いて通話する場合、その利用者は携帯電話機を耳に近づける。そのため、利用者が正面を向いていれば、携帯電話機を持つ手は顔の横にあると想定されるためである。また、手の探索領域320の上端は、顔領域310の高さ方向の中心に設定され、探索領域320の下端は、通話中に利用者が手を置くと考えられる位置の下端を探索領域320に含むように、例えば、監視画像300の下辺に接触するように設定される。また、探索領域320の左右端は、利用者の両肩が含まれると想定される範囲を含むように設定される。例えば、探索領域320の左右端は、それぞれ、顔領域310の水平方向の中心から、顔領域310の幅の2倍から3倍の距離だけ離れた位置に設定される(なお、図3では各領域の大きさを簡略化して示している)。さらに、顔領域310の下端から下方の所定幅の領域330には、首または衣類のボタンなど、肌色かつ多数のエッジ画素が抽出される物体が存在する。そこで、肌色かつ多数のエッジ画素が抽出される物体を手として誤検出することを防止するために、この領域330は探索領域320から除外されてもよい。また、利用者は、携帯電話機を使用して通話を行う場合、顔の下方に手を持ってくる可能性は低いので、このような領域330を手の探索領域から除外しても、手の探索に失敗する可能性は低いと考えられる。なお、除外される領域330の幅は、例えば、顔領域310の幅の1/2〜1倍に設定され、除外される領域330の中心線が顔領域310の中心線と一致するように、除外される領域330の水平方向の位置が設定される。
【0039】
手領域検出部24は、上述した手の探索領域内で、利用者の手を検出できるか否か判定する。ここで、手に相当する領域は、画像上において、その領域内に多数のエッジ画素が存在するとともに、その領域内に肌色の画素が多数含まれるという特徴を持つ。そこで、手領域検出部24は、例えば、監視画像に設定された手の探索領域内に存在する肌色の画素を検出する。
【0040】
さらに、利用者の手の色と顔の色は一般にほとんど変わらないと想定される。そのため、手領域検出部24は、肌色検出部23から受け取った肌色情報を参照して、手の探索領域内で、利用者の顔の肌色と近い色の画素のみを、利用者の手である可能性があるものとして抽出する。
そこで、手領域検出部24は、手の探索領域内で、肌色情報に示された利用者の肌色を中心として、略同一の肌色に相当する所定範囲内の色情報を持つ画素を肌色画素として抽出する。所定範囲は、同一人物の肌色と判定できる色情報の範囲であって、顔領域内で肌色画素を抽出する際の限定範囲よりも狭く、例えば、色相Hの成分に関して、利用者の肌色を中心として±5に設定される。この所定範囲は、取引監視装置1の設置場所の照明環境など、想定される状況を考慮して、同じ肌色の領域が監視画像上で異なる色として表現される範囲を含むように設定されることが好ましい。
【0041】
手領域検出部24は、手の探索領域から抽出された、顔の肌色と近い色情報を持つ肌色画素についてラベリング処理を実行することにより、肌色画素が含まれる肌色領域を手候補領域として抽出する。なお、手領域検出部24は、モルフォロジーのクロージング演算などを行って、肌色領域に囲まれた非肌色画素を手候補領域に含めてもよい。これにより、影などの影響で、手の一部分に対応する画素が監視画像上では肌色でない場合も、手領域検出部24は、手の一部分に対応する非肌色の画素を手候補領域に含めることができる。また手領域検出部24は、複数の手候補領域を抽出してもよい。
【0042】
手領域検出部24は、手候補領域の面積Sh、すなわち、手候補領域に含まれる画素数と、顔領域の面積Sf、すなわち、顔領域に含まれる画素数との比Sh/Sfを求める。そして手領域検出部24は、手候補領域の面積と顔領域の面積との比Sh/Sfが、人の顔と手の大きさの一般的な比に相当する所定の範囲に含まれるか否か判定する。例えば、その所定の範囲は、0.1から1までの範囲である。
【0043】
手領域検出部24は、Sh/Sfが所定の範囲から外れる場合、その手候補領域は利用者の手ではないと判定する。一方、Sh/Sfが所定の範囲に含まれる場合、手領域検出部24は、その手候補領域に対応するエッジ画像上の領域に含まれるエッジ画素の数Ehを計数する。そして手領域検出部24は、手候補領域の面積Shに対するエッジ画素の数Ehの比Eh/Shが、手領域に含まれるエッジ画素の一般的な比率の最小値に対応する所定の閾値以上であるか否かを判定する。例えば、その所定の閾値は、0.1に設定される。
手領域検出部24は、手候補領域の面積Shに対するエッジ画素の数Ehの比Eh/Shが所定の閾値未満の場合、その手候補領域は利用者の手ではないと判定する。一方、その比Eh/Shが所定の閾値以上の場合には、手領域検出部24は、その手候補領域は利用者の手であると判定する。
手領域検出部24は、利用者の手が検出されたか否かの判定結果を示す手領域検出結果信号を携帯使用検知部11に返す。
【0044】
判定部25は、利用者の手の検出結果に基づいて、利用者が携帯電話機を用いて通話中か否かを判定する。具体的には、判定部25は、何れかの時点で取得された監視画像に対して、手領域検出部24が利用者の手が検出されなかったことを示す判定結果を返すと、制御部6が有するメモリに記憶されるカウンタの値を0にリセットする。一方、判定部25は、何れかの時点で取得された監視画像に対して、手領域検出部24が利用者の手が検出されたことを示す判定結果を返すと、カウンタの値を1インクリメントする。そのため、順次取得された監視画像に対して連続的に利用者の手が検出されると、カウンタの値が増加する。そしてカウンタの値が所定値に達すると、すなわち、一定期間の間連続して利用者の手が利用者の顔または頭部の近傍で検出されると、判定部25は、利用者が携帯電話機を用いて通話中であると判定する。なお、所定値は、例えば、詐欺行為者からの指示を利用者が聞くのに必要と考えられる期間(例えば、1分間)の間に取得される監視画像の枚数に設定されることが好ましい。
【0045】
判定部25は、利用者が携帯電話機を用いて通話中であると判定されたときに、通話中であることが検知されたことを示す通話検出信号を携帯使用検知部11に返す。そして携帯使用検知部11は、その通話検出信号を制御部6に通知する。一方、カウンタの値が所定値未満であれば、判定部25は、利用者が通話中か否か分からないため、判定結果を携帯使用検知部11に通知しない。
【0046】
図4に示したフローチャートを参照しつつ、制御部6の携帯使用検知部11による通話検知処理の動作手順を説明する。なお、この動作手順は、制御部6において実行されるコンピュータプログラムによって制御される。
【0047】
まず、監視画像が取得されると、エッジ画像生成部21は、監視画像から、利用者の各部の輪郭に対応するエッジ画素を抽出したエッジ画像を作成する(ステップS101)。エッジ画像生成部21は、作成したエッジ画像を手領域検出部24へ渡す。また顔検出部22がエッジ画像に基づいて顔特徴点を検出する場合には、エッジ画像生成部21は、顔検出部22にもエッジ画像を渡す。
次に、顔検出部22は、利用者の顔領域を検出する処理を実行し、顔領域が検出できたか否か判定する(ステップS102)。ステップS102において、顔領域が検出できなかった場合、顔検出部22は、顔検出不能信号を携帯使用検知部11に返す。そして携帯使用検知部11は、制御をステップS106に移行する。
一方、ステップS102において、顔領域が検出された場合、肌色検出部23は、顔領域内の肌色画素の色情報の統計的代表値を算出し、その統計的代表値を利用者の肌色とする(ステップS103)。そして肌色検出部23は、利用者の肌色を表す肌色情報を手領域検出部24に渡す。
【0048】
その後、手領域検出部24は、顔領域の近傍に設定された手の探索領域内で、利用者の肌色から所定範囲内の色情報を持つ画素を抽出し、その抽出された画素に基づいて手領域検出処理を実行する(ステップS104)。そして手領域検出部24は、その手領域検出処理の結果、手領域が検出できたか否か判定する(ステップS105)。ステップS105において、手領域が検出できなかった場合、手領域検出部24は、利用者の手が検出されなかったことを示す手領域検出結果信号を携帯使用検知部11に返す。そして携帯使用検知部11は、制御をステップS106に移行する。一方、ステップS105において、手領域が検出できた場合、手領域検出部24は、利用者の手が検出されたことを示す手領域検出結果信号を携帯使用検知部11に返す。そして携帯使用検知部11は、制御をステップS108に移行する。
【0049】
ステップS106では、判定部25は、カウンタを0にリセットする。そして携帯使用検知部11は、記憶部5に記憶されている人体検知フラグがONか否か判定する(ステップS107)。ステップS107において、人体検知フラグがOFFであれば、携帯使用検知部11は通話検知処理を終了する。一方、ステップS107において、人体検知フラグがONであれば、携帯使用検知部11は制御をステップS101に戻し、新たに取得された監視画像に対して通話検知処理を実行する。
【0050】
また、ステップS105において、手領域が検出された場合、判定部25はカウンタを1インクリメントする(ステップS108)。そして判定部25は、カウンタの値が所定値に到達したか否か判定する(ステップS109)。ステップS109において、カウンタの値が所定値に到達していない場合、携帯使用検知部11は制御をステップS101に戻し、新たに取得された監視画像に対して通話検知処理を実行する。
一方、ステップS109において、カウンタの値が所定値に到達している場合、判定部25は、利用者が携帯電話機を用いて通話中であると判定する(ステップS110)。そして判定部25は、通話中であることが検知されたことを示す通話検出信号を携帯使用検知部11に返し、携帯使用検知部11は、その通話検出信号を制御部6に通知する。そして判定部25は、カウンタを0にリセットし(ステップS111)、その後、携帯使用検知部11は通話検知処理を終了する。
なお、各ステップにおける処理の詳細は、携帯使用検知部11の各部の説明において説明したので、ここではその説明を省略する。
【0051】
異常報知部12は、後述するオートホン使用フラグがOFFに設定されていれば、携帯使用検知部11から通話検出信号が通知されているか否かを調べる。そして異常報知部12は、携帯使用検知部11から通話検出信号が通知されている場合、すなわち、利用者が携帯電話機を用いて通話中であると判定された場合、取引端末100から金銭を振り込ませる詐欺行為に注意を促す警報音声データを記憶部5から読み込む。そして異常報知部12は、警報音声データを音声出力部3を介してスピーカ140へ出力し、利用者に警報を発する。異常報知部12は、警報音声データの出力を所定回数繰り返して実行した後、警報音声を通知する処理を終了する。あるいは、異常報知部12は、携帯使用検知部11から通話検出信号が通知されている間、警報音声データを繰り返しスピーカ140へ出力してもよい。なお、異常報知部12が行う警報を報知する処理は、警報音声データの出力に限らず、例えば、異常報知部12が、オートホン制御装置151に異常信号を出力し、これを受信したオートホン制御装置151が、通信回線170を介してATMセンタ装置180へ利用者が詐欺行為に遭っている可能性が高い旨を通知する処理であってもよい。
一方、オートホン使用フラグがONに設定されていれば、利用者がオートホン150を用いてオペレータと通話していることを携帯電話機を用いた通話と誤認識して警報を発することがないように、異常報知部12は警報音声データをスピーカ140へ出力しない。
【0052】
フラグ処理部13は、携帯使用検知部11が通話検知処理を開始するためのトリガとなる人体検出フラグと、異常報知部12が警報音声データを出力するか否かの判定基準となるオートホン使用フラグの値を設定する。
具体的には、フラグ処理部13は、センサ160から、取引端末100を操作する利用者が検知されたことを示す人体検知信号を受信している間、記憶部5に記憶されている人体検出フラグをONに設定する。一方、フラグ処理部13は、人体検知信号を受信しなくなると、人体検出フラグをOFFに書き換える。
また、フラグ処理部13は、オートホン制御装置151からオートホン150が使用されていることを示すオートホン使用信号を受信している間、あるいは、オートホン150からオフフック信号を受信している間、記憶部5に記憶されているオートホン使用フラグをONに設定する。一方、フラグ処理部13は、オートホン使用信号及びオフフック信号を受信しなくなると、オートホン使用フラグをOFFに書き換える。
【0053】
図5に示したフローチャートを参照しつつ、取引監視装置1による処理全体の動作手順を説明する。なお、この動作手順は、制御部6において実行されるコンピュータプログラムによって制御される。
取引端末100が起動されたとき、取引監視装置1も起動され、処理が開始される。そして、制御部6は、記憶部5に記憶された人体検知フラグがONに設定されているか否か判定する(ステップS201)。ステップS201において、人体検知フラグがOFFであれば(ステップS201−No)、制御部6は、制御をステップS206に進める。一方、ステップS201において、人体検知フラグがONであれば(ステップS201−Yes)、制御部6の携帯使用検知部11は、通話検知処理を実行する(ステップS202)。なお、通話検知処理の詳細手順は、図4とともに上述したとおりである。そして制御部6は、携帯使用検知部11からの通話検出信号を参照して、利用者が携帯電話を使用して通話しているか否かを判定する(ステップS203)。
【0054】
ステップS203において、利用者が携帯電話を使用して通話していると判定された場合(ステップS203−Yes)、制御部6の異常報知部12は、スピーカ140へ警報音声データの出力を開始する(ステップS204)。音声データの出力開始後、制御部6は、記憶部5に記憶された人体検知フラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS205)。この判定で、人体検知フラグがONである場合、制御部6は、人体検知フラグがOFFになるまで、ステップS205の処理をループさせる。これは、同一の利用者に対して警告音声データを何度も出力しないようにするためである。一方、ステップS203において、利用者が携帯電話を使用して通話していると判定されなかった場合(ステップS203−No)、あるいはステップS205にてNoと判定された後、制御部6は、取引端末100がサービスを終了したか否か判定する(ステップS206)。なお、制御部6は、取引端末100の営業時間の終了時刻になったこと、あるいは、取引端末100からシャットダウンする旨の通知を受けることにより、取引端末100がサービスを終了したと判定できる。ステップS206において、取引端末100がサービスを終了していない場合、制御部6は、制御をステップS201に戻し、ステップS201〜S206の処理を繰り返す。一方、ステップS206において、取引端末100がサービスを終了した場合、取引監視装置1の処理を終了し、取引監視装置1の電源を切る。
【0055】
以上説明してきたように、本発明の一実施形態である、電話使用検出装置が組み込まれた取引監視装置は、ATMなど、金銭の取引を行う取引端末に設置される。そしてこの取引監視装置は、取引端末の利用者を撮影した画像から利用者の顔領域を検出し、その顔領域の近傍に手が存在するか否かを調べることにより、利用者が携帯電話機を使用しているか否かを判定する。そしてこの取引監視装置は、利用者が携帯電話機を使用していると判定したときに、利用者に対して詐欺行為の可能性がある旨の警報を発する。特にこの取引監視装置は、利用者の顔の肌色と手の肌色はあまり変わらないことを利用して、手の探索領域から、顔領域の肌色画素の色情報と近い色情報を持つ画素のみを利用者の手である可能性がある画素として抽出する。これにより、この取引監視装置は、利用者の手以外のものを誤って利用者の手として誤検出してしまう可能性を著しく低減できるので、高精度で利用者が携帯電話機を使用して通話しているか否かを判定できる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、携帯使用検知部11は、オートホン使用フラグがONに設定されている間、通話検知処理の実行を中断してもよい。
また、本発明に係る電話使用検出装置は、上記の実施形態のような、取引端末操作時の利用者の携帯電話機を用いた通話を検出するための使用に限定されない。本発明に係る電話使用検出装置は、病院内など、携帯電話機の使用が禁止される場所に設置されたカメラにより取得された画像データに基づいて、人が携帯電話機を用いて通話していることを検出し、その検出結果に応じて注意を促すメッセージを自動的に放送するためにも好適に使用できる。
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
100 取引端末
110 筐体
120 タッチパネルディスプレイ
130 監視カメラ
140 スピーカ
150 オートホン
151 オートホン制御装置
1 取引監視装置
2 画像取得部
3 音声出力部
4 通信部
5 記憶部
6 制御部
11 携帯使用検知部
12 異常報知部
13 フラグ処理部
21 エッジ画像生成部
22 顔検出部
23 肌色検出部
24 手領域検出部
25 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送金処理が可能な自動取引端末の利用者の行動を監視する取引監視装置であって、
前記自動取引端末の利用者を撮影するように設置された監視カメラより取得した画像データから利用者の顔に対応する顔領域を抽出する顔検出部と、
前記顔領域の色情報から利用者の肌色を決定する肌色検出部と、
前記顔領域の近傍に設定された探索領域内で、前記肌色検出部により決定された利用者の肌色を基準として、色情報が略同一の肌色に相当する所定範囲内の画素を肌色画素として抽出し、当該肌色画素が占める面積に基づいて利用者の手を検出する手領域検出部と、
所定期間中に順次取得された前記画像データのそれぞれから、前記手領域検出部が利用者の手を検出した場合、利用者が携帯電話機を使用して通話中であると判定する判定部と、
前記判定部により、利用者が携帯電話機を使用して通話中であると判定されると警報を報知する異常報知部と、
を有することを特徴とする取引監視装置。
【請求項2】
前記肌色検出部は、前記顔領域に含まれる画素の色情報の統計的な代表値を算出し、当該代表値を前記利用者の肌色とする、請求項1に記載の取引監視装置。
【請求項3】
前記肌色検出部は、前記顔領域に含まれる画素のうち、肌色に相当する所定の色情報を持つ画素のみから前記色情報の統計的な代表値を算出する、請求項2に記載の取引監視装置。
【請求項4】
人物を撮影するように設置された監視カメラより取得した画像データから当該人物が携帯電話機を使用して通話中か否か判定する電話使用検出装置であって、
前記画像データから前記人物の顔に対応する顔領域を抽出する顔検出部と、
前記顔領域の色情報から前記人物の肌色を決定する肌色検出部と、
前記顔領域の近傍に設定された探索領域内で、前記肌色検出部により決定された前記人物の肌色を基準として、色情報が略同一の肌色に相当する所定範囲内の画素を肌色画素として抽出し、当該肌色画素が占める面積に基づいて前記人物の手を検出する手領域検出部と、
所定期間中に順次取得された前記画像データのそれぞれから、前記手領域検出部が前記人物の手を検出した場合、前記人物が携帯電話機を使用して通話中であると判定する判定部と、
を有することを特徴とする電話使用検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−176533(P2010−176533A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20360(P2009−20360)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】