説明

受信機

【課題】 複数の周波数帯の電波を1つの受信機で受信することができ、小型、薄型化を実現することができる受信機を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための受信機は、スーパーヘテロダイン方式を採用した受信機であって、局部発振器の構成を、圧電基板上に配置した一対の反射器と、前記一対の反射器の間に並列して設けられる櫛歯状電極から成る一対のIDTとを有するSAW共振子と、前記SAW共振子に配設された一対のIDTに並列接続する増幅器とから成り、前記一対のIDTのいずれか一方のIDTを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれと、前記増幅器との間に設けた一対の切替回路と、入力した周波数選択信号に基づいて前記切替回路を同期して切り替え、前記一対の櫛歯状電極の一方を前記増幅器の入力側または出力側に接続し、前記一対の櫛歯状電極の他方を前記増幅器の出力側または入力側に接続する制御部とを有するものとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信機に係り、特に、スーパーヘテロダイン方式によって復調を行う受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信器では、その送信周波数帯および受信周波数帯は決定されており、それを変更することはできなかった。したがって、2周波数帯を規定している無線通信機では、高い周波数帯を使用する送信機は高い周波帯を使用する受信機と、低い周波帯を使用する送信機は低い周波帯を使用する受信機とでなければ通信することができない。このため、無線通信を行うには、送信側と受信側とで周波数帯の合った通信機を選択する必要があった。
【0003】
このような事情を鑑み、特許文献1のような無線通信機が提案されている。特許文献1に記載の無線通信機は、高い周波数帯の信号を受信/送信するための帯域フィルタと、低い周波数帯の信号を受信/送信するための帯域フィルタとを備え、送信又は受信する信号の周波数に応じて使用する帯域フィルタを切り替えることを可能な構成としたスーパーヘテロダイン方式を採用した受信機を有する。
【0004】
このような構成の無線通信機によれば、送信又は受信する信号の周波数帯に応じて相手方(通信機)の周波数帯を切り替えることができ、送信側と受信側との周波数帯を必要に応じて合わせることが可能となり、1つの無線通信機で2つの周波数帯の信号に対応することができる。
【特許文献1】特開平6−132847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の無線通信機によれば、確かに2つの周波数帯の通信を1つの無線通信機によって担うことができる。
しかし近年、通信機器は小型化、薄型化を望まれる傾向が強く、携帯型の無線通信機器に関しては特にその傾向が強い。これに対し、特許文献1に記載の無線通信機は、複数の周波数帯に対応する帯域フィルタ、及びその周辺機器を備える分だけ、従来の無線通信機よりも部品数が多くなる。このことは、従来の無線通信機よりも大型化になることを意味し、市場の傾向に反することとなる。もちろん、従来の無線通信機を複数所持するよりも、その容積ははるかに縮減されるのは確かであるが、通信機自体が大型化されることは望まれることではない。
【0006】
本発明では、複数の周波数帯の電波を1つの受信機で受信することができ、しかも従来と変わらない、又は従来よりも小型、薄型な受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
スーパーヘテロダイン方式を採用した受信機では、受信信号と局部発振器からの信号とをミキシングして中間周波数信号を得、これを基に低周波信号を復調する。このため、局部発振器にて複数の周波数帯の信号を作り出すことができれば、複数の帯域フィルタを備える必要が無くなり、小型かつ薄型な受信機を実現することができると考えられる。
【0008】
そこで、本発明に係る受信機は、少なくとも、電波として送信された信号を受信するアンテナと、機内で信号を発振する局部発振器と、前記アンテナによって受信された信号と前記局部発振器によって発振された信号とを混合して中間周波数の信号に変換する混合器と、前記中間周波数の信号を低周波信号に復調する検波器とを備えた受信機であって、前記局部発振器は、圧電基板上に配置した一対の反射器と、前記一対の反射器の間に並列して設けられる櫛歯状電極から成る一対のIDTとを有するSAW共振子と、前記SAW共振子に配設された一対のIDTに並列接続する増幅器とから成り、前記一対のIDTのいずれか一方のIDTを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれと、前記増幅器との間に設けた一対の切替回路と、入力した周波数選択信号に基づいて前記切替回路を同期して切り替え、前記一対の櫛歯状電極の一方を前記増幅器の入力側または出力側に接続し、前記一対の櫛歯状電極の他方を前記増幅器の出力側または入力側に接続する制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成の受信機によれば、局部発振器中に備えるSAW共振子の一方のIDTへの入出力信号の接続を固定とし、他方のIDTへの入出力信号の接続を切替回路によって切り替え可能としたことにより、モードの異なる複数の発振形式、例えばS0モード(同位相)とA0モード(逆位相)を1つのSAW共振子によって実現することが可能となる。このため、1つの局部発振器から2つの周波数帯の信号を発振することが可能となり、同一の中間周波数に変換可能な2つの受信信号の周波数を得ることができる。よって、複数の周波数帯の信号を受信することができる受信機でありながら、小型かつ薄型なものとすることができる。
【0010】
また、1つのSAW共振子によって周波数帯の切り替えを行うことを可能とするため、周波数精度や、周波数偏移精度の同調をとる必要が無い。このため、周波数精度や周波数偏移精度の調整が容易となり、周波数精度、周波数偏移精度共に良好に保つことが可能となる。また、上記1対のIDTのうちのいずれか一方のIDTを基準の発振を行う発振部として常時発振をさせておくことで、1つの発振器内に基準の発振部を設けることができる。このため、他方のIDTに対する入出力信号の切り替えを行ったとしても、前記一方のIDTの発振に位相を即座に合致させることができ、出力位相の不連続を解消することができる。
【0011】
また、前記混合器と前記検波器との間に、第2の混合器と、当該第2の混合器に接続された第2の局部発振器を備える構成としても良い。このような構成とすることにより、ダブルスーパーヘテロダイン方式の受信機とすることができ、複数の受信周波数設定が可能な受信周波数帯の幅が広い場合であっても安定した通信が可能となる。また、前段に備えた局部発振器が複数の周波数帯の信号を発振することができるため、従来のダブルスーパーヘテロダイン方式の受信機よりも受信周波数帯の幅を広げることができる。さらに、同等の機能を有する従来の受信機に比べれば、小型化・薄型化も実現することができる。
【0012】
また、上記構成の受信機において、前記第2の局部発振器は、前段に備えた局部発振器と同様に、圧電基板上に配置した一対の反射器と、前記一対の反射器の間に並列して設けられる櫛歯状電極から成る一対のIDTとを有するSAW共振子と、前記SAW共振子に配設された一対のIDTに並列接続する増幅器とから成り、前記一対のIDTのいずれか一方のIDTを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれと、前記増幅器との間に設けた一対の切替回路と、入力した周波数選択信号に基づいて前記切替回路を同期して切り替え、前記一対の櫛歯状電極の一方を前記増幅器の入力側または出力側に接続し、前記一対の櫛歯状電極の他方を前記増幅器の出力側または入力側に接続する制御部と、を有するものとすると良い。
【0013】
このような構成の受信機とすることにより、局部発振器と、第2の局部発振器と発振信号の周波数帯の組合せは、4パターンとなり、複数の受信周波数設定が可能な受信周波数帯の幅をより広げることができ、かつ安定した通信も可能となる。
また、前記SAW共振子に配設される一対のIDTは、櫛歯状電極の交差幅を同一に構成するようにすると良い。
【0014】
上記構成により、相互のIDTによる発振を同期させることができるとともに、周波数精度、周波数偏移精度を向上させることができる。これは、SAW共振子におけるIDTは、その交差幅を変えることによって出力する周波数に僅かな変化を起こさせることによる。このため、IDTを構成する櫛歯状電極の交差幅を調整(制御)することにより、所望の周波数制度を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の受信機に係る実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に開示する実施の形態は、本発明の受信機に係る一部の実施形態であり、本発明はその主要部を変えない限りにおいて種々の形態を包含する。
【0016】
本発明の第1の実施形態に係る受信機は、アンテナからの受信信号と、発振器からの発振信号とをミキサによってミキシングして得られる各信号の周波数差(中間周波数)を、検波器によって復調するスーパーヘテロダイン方式(Super Heterodyne System)を採用した受信機である。
【0017】
図1を参照して、本実施形態に係る受信機100の構成について説明する。
本実施形態に係る受信機100は、電波として送信された送信信号を受信するためのアンテナ52と、前記アンテナ52によって受信される信号の周波数帯と異なる周波数帯の信号を発振する発振器(局部発振器)50と、前記アンテナ52によって受信される信号と、前記局部発振器50によって発振される信号とを混合(ミキシング)する混合器(ミキサ)58と、前記ミキサ58によって周波数変換された信号を復調する検波器64とを基本構成とする。このような基本構成要素から成る受信機100は、アンテナ52と、局部発振器50との間にミキサ58を配置し、ミキサ58の後段に検波器64を設けるように構成している。
【0018】
前記アンテナ52と、前記ミキサ58との間には、受信した高周波信号から設定範囲内の周波数帯の信号を得るための高周波濾波器(Radio Frequency Filter:RFフィルタ)54と、前記RFフィルタ54によって濾波された高周波信号(受信信号)を増幅する高周波増幅器(RFアンプ)56とが備えられている。
【0019】
RFアンプ56によって増幅された受信信号は、上述したように、ミキサ58によって局部発振器50からの出力信号とミキシングされ、中間周波数の信号に変換されて検波器64側へ出力される。ここで、中間周波数とは、受信信号の周波数と、局部発振器からの出力信号の周波数との周波数差を出力したものである。
【0020】
ミキサ58と、検波器64との間には、前記中間周波数の信号から設定周波数帯以外の信号を取り除くための中間周波濾波器(Intermediate Frequency Filter:IFフィルタ)60と、前記IFフィルタ60によって濾波された中間周波数信号を増幅する中間周波増幅器(IFアンプ)62とが備えられている。
【0021】
前記検波器64は、IFアンプ62から出力された中間周波数信号を低周波信号へ復調して出力端子66へ出力する。なお、出力端子66には、スピーカー(拡声器)、イヤホン等を接続し、信号を人の知覚によって認識できるようにすることができる。
【0022】
以下、局部発振器50の構成について図2を参照して説明する。本実施形態に係る局部発振器50は、SAW共振子10と、前記SAW共振子10に信号を伝達する増幅回路としての反転増幅器(以下、インバータという)20と、前記インバータ20に接続された電源端子42とを基本構成とし、前記SAW共振子10はインバータ20の正帰還回路に備えられる。
【0023】
本実施形態において前記SAW共振子10は図3に示すように、圧電基板12と、当該圧電基板12の一主面に配された、一対の反射器14a、14bと、前記一対の反射器14(14a、14b)の間に設けられる複数の櫛歯状電極18(18a、18b、18c、18d)とを形成する導電性パターンによって構成される。
【0024】
前記圧電基板12は、圧電性を有する単結晶、例えば、水晶、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)や、ZnO薄膜を備えたサファイア基板等で構成すれば良い。
【0025】
また、前記圧電基板12に配される反射器14や櫛歯状電極18を形成する導電性パターンは、金や銅、アルミニウムといった導電性金属を蒸着やスパッタ等により薄膜形成し、エッチング(例えばフォトリソグラフィ技術)によりパターン形成されることによって成るもので良い。
【0026】
本実施形態の局部発振器50に実装されるSAW共振子10の圧電基板12に配される反射器14は、梯子型に形成される導電性パターンであり、圧電基板12上には弾性表面波の伝搬方向に対して、梯子状の電極部15が、直交するように配置する。また、当該反射器14は圧電基板12上に一対配設される。圧電基板上での一対の反射器14a、14bの配設は、弾性表面波の伝搬方向に沿う方向に成される。
【0027】
前記櫛歯状電極18は、信号の入力側となる櫛歯状電極と信号の出力側となる櫛歯状電極との2つを噛合わせることで、1つのIDT(interdigital transducer)16を構成する。
【0028】
前記IDT16は圧電基板12上において、前記反射器14a、14bの間に一対、並列に配設される。詳細には、圧電基板12上において、前記一対の反射器14a、14bの配設方向であって、前記反射器14a、14bの間に、弾性表面波の伝搬方向に沿った方向を軸として、一対のIDT16a、16bを線対称に配設する。IDT16の配設に際し、IDT16aとIDT16bとの間には、前記弾性表面波の伝搬方向に沿った絶縁部を設けるようにする。IDTを前述のように配設することにより、前記櫛歯状電極18における櫛歯状の電極部は、前記弾性表面波の伝搬方向に直交するように配置されることとなる。
【0029】
上記のような構成のSAW共振子10では、IDT16a、16bを構成する櫛歯状電極18a〜18cへ入力する信号と、出力する信号とを逆転させることにより、IDT16aと、IDT16bとの間で同位相と逆位相といった異なるモードの発振を実現することが可能となる(本実施形態ではS0モードとA0モード)。このため、1つのSAW共振子10によって複数の周波数帯(本実施形態では2つ)の振動を奏することが可能となる。また、1つのSAW共振子10によって周波数帯の切り替えを可能とするため、複数のSAW共振子の周波数精度や、周波数偏移精度の同調をとって発振するという必要が無い。このため、周波数精度や周波数偏移精度の調整が容易となり、周波数精度、偏移精度共に良好に保つことが可能となる。
【0030】
また、1対のIDT16(16a、16b)のうちのいずれか一方のIDT16を基準の発振を行う発振部として常時発振をさせておくことで、1つのSAW共振子10の中に基準の発振部を持つこととなる。このため、他方のIDT16の入出力信号の切り替えを行ったとしても、前記基準の発振部となる一方のIDT16に位相を即座に合致させることができ、出力位相の不連続を起こさない。
【0031】
本実施形態においてS0モード、A0モードとは図4に示すような振動形態をいう。すなわち、S0モードは基本モードとされる線対象モードであり、A0モードは高次モードとされる点対称モードである。
上記構成のSAW共振子を実装する発振器の構成は、次の通りである(図2参照)。
【0032】
すなわち、前記インバータ20に対して、前記SAW共振子10を構成するIDT16aと、IDT16bとを並列に接続し、前記IDT16bと、前記インバータ20との間に切替回路(切替手段)22を備え前記IDT16を構成する櫛歯状電極18への入出力信号を逆転させることを可能に構成した。なお、前記切替手段22にはミキサ58が出力する信号の周波数帯を選択するための周波数選択信号が入力されることによって前記切替手段22a,22bの接続を同期させて切り替える制御部51が接続されており、前記制御部51には、前記周波数選択信号を入力するための周波数選択信号入力端子51aが備えられている。
【0033】
詳細すると、次のような構成となる。IDT16aの櫛歯状電極18aを入力電極、櫛歯状電極18bを出力電極とした場合、インバータ20からの出力信号であってIDT16aへの入力信号を入力するための入力信号経路30を前記櫛歯状電極18aに接続し、インバータ20への入力信号であってIDT16aからの出力信号を出力するための出力信号経路40を前記櫛歯状電極18bに接続する。
【0034】
また、前記入力信号経路30と、前記出力信号経路40とを分岐させて入力信号経路30a、出力信号経路40aとする。前記入出力信号経路30a、40aでは、S0モード信号伝達経路と、A0モード信号伝達経路との2系統のいずれかの経路を選択するαとβとの切り替えを可能とする切替手段22(22a、22b)を備える。
【0035】
切替手段22によって切り替えを可能とするS0モード信号伝達経路とA0モード信号伝達経路とは、それぞれIDT16bに接続される。IDT16bにおいては、櫛歯状電極18cと櫛歯状電極18dとの双方に、出力側・入力側の信号経路をそれぞれ接続する構成とする。すなわち、α選択時の入力側S0モード信号伝達経路(入力信号経路)32を櫛歯状電極18cに接続した場合、α選択時の出力側S0モード信号伝達経路(出力信号経路)36は櫛歯状電極18dに接続する。この場合、β選択時の入力側A0モード信号伝達経路(入力信号経路)34は櫛歯状電極18dに接続し、β選択時の出力側A0モード信号伝達経路(出力信号経路)38は櫛歯状電極18cに接続する。
【0036】
このような回路構成とすることにより、切替手段22によるα・βの切り替えでIDT16bに対する信号の入出力を逆転させることが可能となる。なお、前記切替手段22a、22bはα・βの切り替えを同期して行うようにする。
【0037】
上記のように構成された受信機では、入出力信号経路30、40が接続されたIDT16aは信号が入力される櫛歯状電極18aと、信号が出力される櫛歯状電極18bとの切り替えが為されないため、弾性表面波の位相に変化が無い。
【0038】
一方、入出力信号経路30a、40aが接続されたIDT16bにおいては、切替手段22の制御により入出力経路のα・βを切り替えることによって、入力側となる櫛歯状電極と、出力側となる櫛歯状電極とが逆転し、発振する弾性表面波の位相は180°ズレることとなる。
【0039】
このため、切替手段22がαに設定されている場合は、櫛歯状電極18aと櫛歯状電極18cとが信号入力側の電極となり、IDT16aとIDT16bとで発振する弾性表面波が同位相となり、発振回路としてS0モードの発振を奏する。一方、切替手段22がβに設定されている場合は、櫛歯状電極18aと櫛歯状電極18dとが信号入力側の電極となり、IDT16aとIDT16bとで発振する弾性表面波は逆位相となり発振回路としてA0モードの発振を奏する。
【0040】
このように上記構成のSAW共振子は各櫛歯状電極18a〜18dへの信号の入出力を制御することにより、1つのSAW共振子で2つのモード(同位相と逆位相:S0モードとA0モード)の発振を実現することができる。
【0041】
一般に、SAW共振子を構成する一組の櫛歯状電極は、その交差幅を変えることにより発振周波数に変化を起こすことが知られている。そこで、上記構成の局部発振器50に実装するSAW共振子10では、IDT16を構成する各櫛歯状電極18の交差幅を、所望の周波数精度に応じて調整(制御)するようにした。これにより、図5に示すように周波数差(周波数偏差)を調整することが可能となる。図5によれば、交差幅の設定によって、周波数差を実用化レベルの値にまで調整することができることがわかる。なお、IDT16aとIDT16bとの櫛歯状電極18の交差幅は、同一となるように構成する。これにより、相互のIDTによる発振の同調をとることができ、S0モード、A0モードの発振が可能となる。
【0042】
上記構成の局部発振器50では、SAW共振子10へ信号伝達経路を接続する際、IDT16aへ入出力信号経路30、40を接続し、IDT16bへ入出力信号経路30a、40aを接続したが、当然にIDT16bへ入出力信号経路30、40を接続し、IDT16aへ入出力信号経路30a、40aを接続する構成としても良い。
【0043】
上記構成の受信機のように、必要に応じて局部発振器が出力する信号の周波数帯を切り替えること(チャンネルの切り替え)が可能な構成とすることにより、同一の中間周波数に変換可能な2つの受信信号の周波数を得ることができる。すなわち、図6に示すように、高い周波数帯であるチャンネル1に妨害波が掛かっているような場合であっても、低い周波数帯であるチャンネル2に切り替えることができる。このため、通信に対する妨害波の少ない周波数帯を選択して通信を行うことができる。よって、妨害波の影響を受けやすいASK(Amplitude Shift Keying)通信であっても、良好な通信を行うことが可能となる。また、ASK通信は、FSK通信に比べて消費電力を抑えることができるため、長時間の無線通信に好適である。
【0044】
次に、図7を参照して、本発明の受信機に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態の受信機100aは、第1の実施形態に係る受信機100と基本的な構成は同様である。しかし、第1の実施形態に係る受信機100がシングルスーパーヘテロダイン方式を採用するものであるのに対し、本実施形態に係る受信機100aはダブルスーパーヘテロダイン方式を採用したものである点が異なる。よって、第1の実施形態と共通な構成要素に関しては図面に同じ符号を附して詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態の受信機100aでは、IFアンプ(本実施形態では第1のIFアンプという)62の出力側において、もう一度中間周波数信号を生成するような構成としたのである。詳細すると、アンテナ52から受信した高周波信号と局部発振器(本実施形態では第1の局部発振器という)50から発振された高周波信号とをミキサ(本実施形態では第1のミキサという)58によってミキシングして得られる中間周波数信号(本実施形態では一次中間周波数信号という)に対して、さらに高周波信号をミキシングして二次中間周波数信号を得、これを復調する構成である。
【0046】
受信機100aの具体的な構成としては、第1のIFアンプ62の後段に、第2のミキサ72を備え、当該第2のミキサ72には第2の局部発振器70の出力端子を接続し、双方からの出力信号をミキシングして二次中間周波数信号を出力するような構成とした。また、前記第2のミキサ72の後段には、二次中間周波数信号を濾波する第2のIFフィルタ74と、濾波された二次中間周波数信号を増幅する第2のIFアンプ76とが備えられ、第2のIFアンプ76の出力側には検波器64が接続される。
なお、本実施形態における第2の局部発振器70は、一般的なSAW共振子等を用いた高周波発振器であれば良い。
【0047】
このような構成の受信機100aでは、イメージ混信(受信)の解消等も図ることができ、より幅の広い周波数帯の信号を受信しつつ、安定した通信を可能とすることができる。
【0048】
次に、本発明の受信機に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る受信機は、第2の実施形態に係る受信機100aの構造と殆ど同一であり、第2の局部発振器70の構成が、第1の局部発振器50の構成と同一であるという点が異なる。従って、本実施形態の受信機には、第2の局部発振器70に、第1の局部発振器50と同様な制御部71と、周波数選択信号入力端子71aが備えられる。
【0049】
このような特徴を有する本実施形態に係る受信機では、二次中間周波数信号を得るための信号の組合せが4パターンとなるため、生成される二次中間周波数信号も4つの周波数帯のものを得ることができることとなる。よって、通信における妨害波を避けるために選択できる周波数帯の数が増える。このため、受信周波数帯を広げたとしても、安定した通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の受信機の局部発振器の構成を示す図である。
【図3】本発明の局部発振器に用いるSAW共振子を示す図である。
【図4】SAW共振子の発振モードを示す図である。
【図5】SAW共振子の櫛歯状電極の交差幅を変化させた場合の周波数差の変化を示す図である。
【図6】送信電波の切り替えを行う際に有効な例を示す図である。
【図7】本発明の第2、及び第3の実施形態に係る受信機の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
10………SAW共振子、12………圧電基板、14(14a,14b)………反射器、16(16a,16b)………IDT、18(18a,18b,18c,18d)………櫛歯状電極、20………インバータ(反転増幅器)、22(22a,22b)………切替手段、42………電源端子、50………局部発振器、51………制御部、51a………周波数選択信号入力端子、52………アンテナ、54………RFフィルタ、56………RFアンプ、58………ミキサ、60………IFフィルタ、62………IFアンプ、64………検波器、66………出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、電波として送信された信号を受信するアンテナと、機内で信号を発振する局部発振器と、前記アンテナによって受信された信号と前記局部発振器によって発振された信号とを混合して中間周波数の信号に変換する混合器と、前記中間周波数の信号を低周波信号に復調する検波器とを備えた受信機であって、
前記局部発振器は、圧電基板上に配置した一対の反射器と、前記一対の反射器の間に並列して設けられる櫛歯状電極から成る一対のIDTとを有するSAW共振子と、
前記SAW共振子に配設された一対のIDTに並列接続する増幅器とから成り、
前記一対のIDTのいずれか一方のIDTを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれと、前記増幅器との間に設けた一対の切替回路と、
入力した周波数選択信号に基づいて前記切替回路を同期して切り替え、前記一対の櫛歯状電極の一方を前記増幅器の入力側または出力側に接続し、前記一対の櫛歯状電極の他方を前記増幅器の出力側または入力側に接続する制御部と、
を有することを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記混合器と前記検波器との間に、第2の混合器と、当該第2の混合器に接続された第2の局部発振器が備えられたことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記第2の局部発振器は、圧電基板上に配置した一対の反射器と、前記一対の反射器の間に並列して設けられる櫛歯状電極から成る一対のIDTとを有するSAW共振子と、
前記SAW共振子に配設された一対のIDTに並列接続する増幅器とから成り、
前記一対のIDTのいずれか一方のIDTを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれと、前記増幅器との間に設けた一対の切替回路と、
入力した周波数選択信号に基づいて前記切替回路を同期して切り替え、前記一対の櫛歯状電極の一方を前記増幅器の入力側または出力側に接続し、前記一対の櫛歯状電極の他方を前記増幅器の出力側または入力側に接続する制御部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記SAW共振子に配設される一対のIDTは、櫛歯状電極の交差幅を同一に構成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−67120(P2006−67120A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245698(P2004−245698)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】