説明

受信装置およびナビゲーション装置

【課題】 交通情報データを取得する際ユーザに与える違和感をより少なくした受信装置を提供する。
【解決手段】 ステップS10では、制御部10は、グループタイプコードが0Aのグループに含まれるTAコードが「1」になったことを検出すると、他のネットワークの放送局の周波数を示す放送局リストを作成する。ステップS11では、交通情報の放送開始を示す交通情報放送開始情報、つまり14Bグループに含まれるTAコードが「1」であるか否かを判定する。ステップS12では、TAコードが「1」となった放送局の周波数を、放送局リストから抽出し、抽出した放送局の周波数へ受信周波数を変更する。ステップS13では、変更した放送局がTMCデータを提供しているとき、ステップS14に進む。ステップS14では、RDSデータの中の8AグループのデータからTMCデータを取得し、取得したTMCデータをメモリ16に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM多重放送によって提供される交通情報等のデータを利用することができる受信装置およびナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RDS(Radio Data System)は、FM(Frequency Modulation)放送波によって、放送関連情報および交通情報などに関するデータ(以下RDSデータという)を多重伝送するシステムである。このRDSは、同一番組を放送するためにネットワーク化されている各放送局がネットワーク局の周波数、すなわち代替局の周波数を送出し、自局の受信状態が悪くなると代替局に変更することができること、および他ネットワーク局の交通情報等を受信することができることなどを特徴としている。欧州では、FM放送局が中心であり、上述した特徴を有するRDSを利用した車載用の受信装置およびナビゲーション装置が普及している。
【0003】
図7は、受信装置80の電気的構成を示すブロック図である。受信装置80は、制御部10、アンテナ11、チューナモジュール12、増幅部13、スピーカ14、RDSデモジュレータ15、メモリ16、およびPLL(Phase Locked Loop)17を含んで構成される。制御部10は、受信装置80全体を制御し、選局する放送局の受信周波数をPLL17に指示する。チューナモジュール12は、PLL17と協働して、制御部10から指示された受信周波数の多重放送信号であるFM放送信号を受信する。
【0004】
チューナモジュール12で復調された音声信号は、増幅部13で増幅されてスピーカ14から音声として出力される。RDSデモジュレータ15は、FM放送信号に含まれるデータ信号からRDSデータを抽出し、制御部10に転送する。制御部10は、転送されたRDSデータをメモリ16に記憶する。
【0005】
RDSデータは、104ビットからなるグループ単位で構成され、1グループは、4つのブロックから構成される。第1ブロックは、番組を識別するためのコードであるPI(Program Identification)コードを含み、第2ブロックは、グループのタイプを示す4ビットのコードであるグループタイプコード、グループタイプコードのバージョンを示す1ビットのバージョンコード、交通情報を放送する放送局であるか否かを示す1ビットのTP(Traffic Program)コード、スポーツ、音楽、ニュース、交通情報などの番組の種類を識別するための5ビットのコードであるPTY(Program Type)コードを含む。第3ブロックおよび第4ブロックは、グループタイプコードによって決まる情報を含む。
【0006】
グループタイプコードは、「0」〜「15」のコードである。バージョンコードは、「0」のときバージョンA、「1」のときバージョンBを示す。グループタイプコードによって決まる情報には、放送局名を示すPS(Program Service)コード、同一の番組を放送している同じネットワークの放送局の周波数を示すAF(Alternative Frequency)リストコード、他のネットワークの情報であるEON(Enhanced Other Networks)情報、交通情報を放送中であるか否かを示す1ビットのTA(Traffic Announcement)コードなどがある。
【0007】
図8は、図7に示した制御部10の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、他のネットワークの放送局の交通情報の放送が始まったことを、他のネットワークの情報であるEON情報を利用して検出し、選局をその放送局に切り替えて交通情報の放送を受信し、さらに交通情報の放送が終了すると、選局を元の放送局に切り替えるときに実行される処理である。
【0008】
ステップA1では、制御部10は、RDSデータのグループタイプコードが0Aのグループ(以下0Aグループという)に含まれる交通情報を放送中であるか否かを示すTAコードを監視する。TAコードの値が「1」になったことを検出すると、グループタイプコードが14Aグループで送信される他のネットワークの放送局の周波数を収集し、放送局リストを作成する。放送局リストは、放送局とその放送局の周波数とを対応付けたものである。ステップA2では、制御部10は、交通情報の放送開始を示す交通情報放送開始情報、つまり14Bグループに含まれるTAコードが「1」であるか否かを判定する。TAコードが「1」のとき、ステップA3に進み、TAコードが「1」でないとき、ステップA2に戻り、再度TAコードを確認する。
【0009】
ステップA3では、制御部10は、TAコードが「1」となった放送局の周波数を、作成した放送局リストから抽出し、抽出した放送局の周波数へ受信周波数を変更する。ステップA4では、制御部10は、0AグループのTAコードが「0」であるか否かを判定する。TAコードが「0」であるとき、交通情報の放送が終了したことを示しており、ステップA5に進み、TAコードが「0」でないとき、まだ交通情報は放送中であり、ステップA4に戻る。ステップA5では、受信周波数を元の放送局の周波数に変更して、終了する。
【0010】
このように、受信装置80は、EON情報の中の14BグループのTAコードを監視することによって、交通情報の放送開始を検出するものである。したがって、交通情報の放送中のみ、受信していた放送局に代えて、交通情報の放送を受信することができる。
【0011】
EON情報を利用した第1の従来技術として、交通情報の放送が始まると、現在再生中のCD(Compact Disk)またはカセットテープなどのソースに代えて、交通情報の放送を出力し、交通情報の放送が終了すると、元のソースに戻すことができるRDSチューナがある。このRDSチューナは、現在再生中のソースが、CDまたはカセットテープなどのソースでも、交通情報の放送を受信可能としたものである(たとえば特許文献1参照)。
【0012】
EON情報を利用した第2の従来技術として、交通情報の放送が始まると、交通情報の放送局に切り替え、交通情報の放送が終了すると、元の放送局と同じネットワークの放送局のうちで、最も良い受信状態の放送局を選局するようにしたRDS受信機がある。このRDS受信機は、元の放送局を受信していたときに、同じネットワークの放送局の周波数を記憶して置いて、交通情報の放送が終了したとき、記憶して置いた各周波数の受信電界強度とPIコードを検出することによって、同じ番組を放送している放送局のうちで最も良い受信状態の放送局を選局するものである(たとえば特許文献2参照)。
【0013】
ナビゲーション装置は、自動車に搭載され、地図画面上に自車位置を併せて表示し、その表示を自車の走行に伴って更新し、さらに目的地が入力されると、現在位置から目的地まで、たとえば最短経路となる経路を検索して、推奨経路として表示するものである。
【0014】
RDSデータに含めて送信される交通情報に関するデータである交通情報データ、つまりTMC(Traffic Message Channel)データを利用するために、RDS受信機を搭載したナビゲーション装置がある。TMCデータは、交通渋滞、工事、天候状態、迂回路の有無などの情報をコード化したデータであり、TMCデータから得られるこれらの情報を利用することによって、たとえば時々刻々変化する交通渋滞に対する迂回路について適切に指示することができるナビゲーションを実現することができる。
【0015】
TMCデータは、8Aグループのデータとして、常時送信されているデータであるが、全ての放送局が送信しているとは限らない。したがって、現在受信している放送局がTMCデータを提供していない放送局のときは、このTMCデータを利用することはできない。TMCデータを受信するための専用のチューナを搭載して、2チューナ方式とすることも可能であるが、コストが高くなる、必要なスペースが増えるなどの問題がある。
【0016】
この問題を回避するための第3の従来技術として、シングルチューナでTMCデータを提供していない放送局を受信し、ナビゲーション装置からの割り込みがあったときまたは予め定める時間が経過したとき、受信中の放送局を、TMCデータを提供している放送局に切り替えて、TMCデータを取得する車載用ラジオ受信システムがある。この受信システムは、TMCデータを取得している間、割り込み処理に係る情報案内または予め定める時間が経過したときに実行される演算処理に基づいた情報案内を行うことによって、ユーザに与える違和感、つまりユーザが聞いていた放送が無音状態になるという違和感を無くそうとするものである(たとえば特許文献3参照)。
【0017】
【特許文献1】特開平6−61880号公報
【特許文献2】実開平7−39130号公報
【特許文献3】特開2002−26753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、第1および第2の従来技術は、EON情報を利用して、他のネットワークの放送局での交通情報の放送が開始されたことを検出したとき、交通情報を放送している放送局に切り替えて、交通情報の放送を出力することはできるが、交通情報データを取得することはできないという問題がある。
【0019】
第3の従来技術は、交通情報データを取得するために、選局されていた放送局の放送が無音状態となる間、割り込み処理などに係る情報案内を行って、無音状態を回避している。しかし、交通情報データの取得は、ナビゲーション装置からの割り込みがきっかけであるために、ナビゲーション装置からの割り込みがないと、表示している情報がいつまでも更新されないという問題がある。あるいは交通情報データの取得は、予め定める時間が経過したときに行われるので、ユーザが予期しないときに情報案内が行われることがあり、ユーザに違和感を抱かせることがあるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、多重放送信号であるFM放送信号を受信しているとき、ユーザに与える違和感をより少なくして、多重放送信号に含まれるデータを取得することができる受信装置およびナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報を出力する出力手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データを記憶する記憶手段と、
第1の放送局を選局して、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局を選局して前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させる選局切り替え手段と、
前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局を選局して第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる選局復帰手段とを含むことを特徴とする受信装置である。
【0022】
本発明に従えば、受信手段によって、搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号が受信され、出力手段によって、前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報が出力され、記憶手段によって、前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データが記憶され、選局切り替え手段によって、第1の放送局が選局されて、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局が選局されて前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させ、記憶制御手段によって、前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部が前記記憶手段に記憶され、選局復帰手段によって、前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局が選局されて第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる。
【0023】
このようにして、多重放送信号に含まれる情報であって他ネットワークの放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報を監視し、その情報を検出したとき、予め定めるジャンルの多重データを放送する放送局に切り替えるので、予め定めるジャンルの多重データを取得することができる。
【0024】
また本発明は、前記記憶手段に記憶させた前記予め定めるジャンルの多重データに基づく情報を、予め定めるタイミングで前記出力手段に出力させる出力制御手段を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、取得した予め定めるジャンルの多重データを、予め定めるタイミングで出力手段に出力させるので、違和感の少ないタイミングで出力することができる。
【0026】
また本発明は、前記予め定めるジャンルの多重データの出力指示を入力する入力手段を含み、
前記予め定めるタイミングは、前記選局復帰手段によって前記第1の放送局が選局されて、第1の多重放送信号を前記受信手段によって受信しているとき、および/または前記出力制御手段が前記入力手段によって入力された出力指示を受けたときであることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、予め定めるタイミングが元の第1の放送局に切り替えた後であるので、予め定めるジャンルの多重データの受信に続けて出力することができ、または予め定めるタイミングが入力手段によって入力された出力指示を受けたときであるので、ユーザが所望するタイミングで出力することができる。
【0028】
また本発明は、搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報を出力する出力手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データを記憶する記憶手段と、
第1の放送局を選局して、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局を選局して前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させる選局切り替え手段と、
前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局を選局して第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる選局復帰手段と、
目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されているとき、前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データに基づいて、前記経路探索手段に探索させた経路を、経路情報として前記出力手段に出力させる経路探索制御手段とを含むことを特徴とするナビゲーション装置である。
【0029】
本発明に従えば、まず、受信手段によって、搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号が受信され、出力手段によって、前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報が出力され、記憶手段によって、前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データが記憶され、選局切り替え手段によって、第1の放送局が選局されて、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局が選局されて前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させ、記憶制御手段によって、前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部が前記記憶手段に記憶され、選局復帰手段によって、前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局が選局されて第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる。
【0030】
次に、経路探索手段によって、目的地までの経路が探索され、経路探索制御手段によって、前記記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されているとき、前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データに基づいて、前記経路探索手段に探索させた経路が、経路情報として前記出力手段に出力される。
【0031】
このようにして、多重放送信号に含まれる情報であって他ネットワークの放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報を監視し、その情報を検出したとき、予め定めるジャンルの多重データを放送する放送局に切り替えるので、予め定めるジャンルの多重データを取得することができる。
【0032】
また本発明は、前記記憶手段に記憶させた予め定めるジャンルの多重データを少なくとも可視情報または可聴情報として前記出力手段に出力させる出力制御手段を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明に従えば、予め定めるジャンルの多重データを少なくとも可視情報または可聴情報として出力するので、少なくとも画面などへの表示またはスピーカなどから音声として出力することができる。
【0034】
また本発明は、前記予め定めるジャンルが交通情報であり、かつ前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データが交通情報データであることを特徴とする。
【0035】
本発明に従えば、予め定めるジャンルが交通情報であり、かつ予め定めるジャンルの多重データが交通情報データであるTMCデータであるので、交通情報が放送されている間にTMCデータを取得することができる。
【0036】
また本発明は、前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データを消去する消去手段を含むことを特徴とする。
【0037】
本発明に従えば、記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データを消去する消去手段を有するので、古い多重データが記憶手段に残ることを防止することができる。
【0038】
また本発明は、前記経路探索制御手段は、前記記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されていないときは、予め定めるジャンルの多重データ以外の情報に基づいて前記経路探索手段に経路を探索させることを特徴とする。
【0039】
本発明に従えば、記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されていないとき、前記予め定めるジャンルの多重データを用いずに経路探索を行うので、多重データを取得するための待ち時間を発生させることがない。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、多重放送信号に含まれる情報であって他ネットワークの放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報を監視し、その情報を検出したとき、予め定めるジャンルの多重データを放送する放送局に切り替えて、予め定めるジャンルの多重データを取り込むので、多重放送信号であるFM放送信号を受信しているとき、ユーザに与える違和感をより少なくして、多重放送信号に含まれる予め定めるジャンルの多重データを取得することができる。
【0041】
また本発明によれば、取得した予め定めるジャンルの多重データを、予め定めるタイミングで出力手段に出力させて、違和感の少ないタイミングで出力するので、多重放送信号であるFM放送信号を受信しているとき、ユーザに与える違和感をより少なくして、多重放送信号に含まれる予め定めるジャンルの多重データを取得することができる。
【0042】
また本発明によれば、予め定めるタイミングが元の第1の放送局に切り替えた後、つまり予め定めるジャンルの多重データの受信に続けて出力するので、または予め定めるタイミングが入力手段によって入力された出力指示を受けたとき、つまりユーザが所望するタイミングで出力するので、ユーザに与える違和感をより少なくして、予め定めるジャンルの多重データを出力することができる。
【0043】
また本発明によれば、多重放送信号に含まれる情報であって他ネットワークの放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報を監視し、その情報を検出したとき、予め定めるジャンルの多重データを放送する放送局に切り替えて、予め定めるジャンルの多重データを取得するので、多重放送信号であるFM放送信号を受信しているとき、ユーザに与える違和感をより少なくして、多重放送信号に含まれる予め定めるジャンルの多重データを取得することができ、取得した予め定めるジャンルの多重データに基づいて検索した推奨経路を提供することができるダイナミックルートガイダンスを実現することができる。
【0044】
また本発明によれば、予め定めるジャンルの多重データを少なくとも可視情報または可聴情報として出力して、少なくとも画面などへの表示またはスピーカなどから音声として出力することができるので、予め定めるジャンルの多重データを画面などへの表示によって認識することができる交通情報表示、およびスピーカなどからの音声によって認識することができる交通情報自動読み上げを行うことができる。
【0045】
また本発明によれば、予め定めるジャンルが交通情報であり、かつ予め定めるジャンルの多重データが交通情報データであるTMCデータであり、交通情報が放送されている間にTMCデータを取得するので、多重放送信号であるFM放送信号を受信しているとき、ユーザに与える違和感をより少なくして、多重放送信号に含まれるTMCデータを取得することができる。
【0046】
また本発明によれば、記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データを消去する消去手段によって、古い多重データが記憶手段に残ることを防止するので、古い多重データに基づいた経路探索による不正な経路の表示を防止することができる。
【0047】
また本発明によれば、記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されていないとき、前記予め定めるジャンルの多重データを用いずに、つまりGPSおよびセンサなどのデータだけで経路探索を行い、多重データを取得するための待ち時間を発生させることがないので、ユーザに与える違和感をより少なくして、推奨経路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1は、本発明の実施の一形態である受信装置1の電気的構成を示すブロック図である。受信装置1は、制御部10、アンテナ11、チューナモジュール12、増幅部13、スピーカ14、RDS(Radio Data System)デモジュレータ15、メモリ16、PLL(
Phase Locked Loop)17、表示部18、および音声合成部19を含んで構成される。
【0049】
制御部10は、受信装置1全体を制御し、選局する放送局の受信周波数をPLL17に指示する。放送局に備えられる放送設備から送信される多重放送信号であるFM(
Frequency Modulation)放送信号は、電波によって伝送され、アンテナ11を介して受信手段であるチューナモジュール12によって受信される。チューナモジュール12は、PLL17と協働して、制御部10から指示された受信周波数のFM放送信号を受信する。チューナモジュール12で復調された音声信号は、アンプなどの増幅部13で増幅されてスピーカ14から音声として出力される。
【0050】
RDSデモジュレータ15は、FM放送信号に含まれるデータ信号からRDSデータを抽出し、制御部10に転送する。制御部10は、転送されたRDSデータを記憶手段であるメモリ16に記憶する。メモリ16は、たとえばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、またはディスク装置などの記憶媒体で実現される。
【0051】
制御部10は、第1の放送局を選局して、RDSデータの中に含まれるEON(
Enhanced Other Networks)情報の1つであって、交通情報の放送開始を示す交通情報放送開始情報である14BグループのTA(Traffic Announcement)コードを監視する。TAコードが「1」になると、受信している放送局を、交通情報を放送している第2の放送局に切り替える。スピーカ14から交通情報の放送を出力しているとき、制御部10は、並行してRDSデータの中から交通情報データであるTMC(Traffic Message
Channel)データを取得し、メモリ16に記憶する。交通情報放送開始情報が第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報、予め定めるジャンルが交通情報、および予め定めるジャンルの多重データがTMCデータである。第1の放送局から送信される多重放送信号が第1の多重放送信号であり、第2の放送局から送信される多重放送信号が第2の多重放送信号である。
【0052】
制御部10は、TMCデータの取得が完了すると、選局を元の第1の放送局に切り替える。制御部10は、メモリ16に記憶したTMCデータから交通情報を抽出し、抽出した交通情報を液晶ディスプレイなどの表示画面を有する表示部18、または音声を出力するスピーカ14などの出力手段のうち少なくとも1つに出力する。音声の出力は、抽出した交通情報を音声合成部19で音声信号に変換させ、変換された音声信号を増幅部13で増幅して、スピーカ14から出力する。制御部10は、選局切り替え手段、記憶制御手段、選局復帰手段、および出力制御手段を含む。
【0053】
図2は、図1に示した受信装置1の制御部10の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、他のネットワークの放送局の交通情報の放送が始まったことを、EON情報を利用して検出し、選局をその放送局に切り替えて交通情報の放送を出力し、並行して交通情報データを取得するときに実行される処理である。
【0054】
制御部10が、グループタイプコードが0Aのグループに含まれるTAコードを監視し、TAコードの値が「1」になったことを検出すると、ステップS10に移る。ステップS10では、制御部10は、グループタイプコードが14Aグループで送信される他のネットワークの放送局の周波数を収集し、放送局リストを作成する。放送局リストは、放送局とその放送局の周波数とを対応付けたものである。ステップS11では、制御部10は、交通情報の放送開始を示す交通情報放送開始情報、つまり14Bグループに含まれるTAコードが「1」であるか否かを判定する。TAコードが「1」のとき、ステップS12に進み、TAコードが「1」でないとき、ステップS11に戻り、再度TAコードを確認する。
【0055】
ステップS12では、制御部10は、TAコードが「1」となった放送局の周波数を、作成した放送局リストから抽出し、抽出した放送局の周波数へ受信周波数を変更する。ステップS13では、変更した放送局がTMCデータを提供しているTMCサービス局であるか否かを判定する。TMCサービス局であるとき、ステップS14に進み、TMCサービス局でないとき、ステップS19に進む。TMCサービス局であるか否かは、3Aグループに含まれるAIDコードが、「CD46h」または「4B02h」であると、TMCサービス局であると判定する。または、8Aグループのデータが送信されていることでTMCサービス局と判定してもよい。
【0056】
ステップS14では、制御部10は、RDSデータの中の8AグループのデータからTMCデータを取得し、取得したTMCデータをメモリ16に記憶する。ステップS15では、制御部10は、0AグループのTAコードが「0」であるか否かを判定する。TAコードが「0」であるときは、交通情報の放送が終了したことを示しており、ステップS16に進み、TAコードが「0」でないときは、まだ交通情報は放送中であり、ステップS14に戻る。
【0057】
ステップS16では、制御部10は、TMCデータの取得が完了したか否かを判定する。TMCデータの取得が完了したとき、ステップS17に進み、TMCデータの取得が完了していないとき、ステップS14に戻る。TMCデータの取得が完了したか否かの判定は、一度8Aグループのデータから取得したTMCデータが、次の8Aグループのデータから取得したTMCデータに一致したとき、最新のTMCデータの取得が完了したと判定することによって行われる。
【0058】
ステップS17では、制御部10は、受信周波数を元の放送局の周波数に変更する。ステップS18では、制御部10は、記憶部に記憶したTMCデータから交通情報を抽出し、抽出した交通情報を少なくとも可視情報または可聴情報として出力して、終了する。
【0059】
ステップS19では、制御部10は、0AグループのTAコードが「0」であるか否かを判定する。TAコードが「0」であるときは、交通情報の放送が終了したことを示しており、ステップS20に進み、TAコードが「0」でないときは、まだ交通情報は放送中であり、ステップS19に戻る。ステップS20では、受信周波数を元の放送局の周波数に変更して、終了する。
【0060】
図3は、図2に示した処理手順に係るタイムチャートの一例を示す図である。TMCデータを提供していない放送局をA局、TMCデータを提供している放送局をB局とし、最初A局を選局しているものとする。A局は、TMCデータを提供していない放送局であるので、A局のRDSデータの中の0Aグループの自分のネットワークのTPコード(以下自TPコードという)は、常に「0」である。B局は、TMCデータを提供している放送局であるので、B局のRDSデータの中の0Aグループの自TPコードは、常に「1」である。
【0061】
制御部10は、A局のRDSデータの中の0Aグループの自分のネットワークのTAコード(以下自TAコードという)を監視し、自TAコードが「1」になると、他のネットワークに交通情報を放送する放送局があると判定する。次に制御部10は、他のネットワークの放送局の周波数リストを取得するために、14Aグループの他のネットワークのTPコード(以下他TPコードという)を監視し、他TPコードが「1」になると、14Aグループの他ネットワークの周波数リストを取得する。
【0062】
制御部10は、他ネットワークの交通情報の放送が開始されたか否かを、14Bグループの他のネットワークのTAコード(以下他TAコードという)を監視し、他TAコードが「1」になると、選局をA局からB局に切り替える。B局のRDSデータの0Aグループの自TAコードが「1」の間、交通情報が放送される。
【0063】
制御部10は、TMCデータを取得するために8Aグループのデータが送信されるのを監視し、8Aグループのデータが送信されたとき、TMCデータを取得し、メモリ16に記憶する。この例では、14Bグループの他TAコードが「0」になっても、次の8Aグループのデータを取得することができていないので、B局の選局を維持する。次の8Aグループのデータを取得し、取得した8Aグループのデータがメモリ16に記憶したTMCデータと一致していると、最新のTMCデータの取得が完了したと判断する。制御部10は、TMCデータの取得が完了すると、選局をB局からA局に切り替える。
【0064】
このように、受信装置1は、EON情報の中の14BグループのTAコードを監視することによって、交通情報の放送開始を検出する。交通情報の放送が始まると、受信していた放送局に代えて、交通情報の放送を受信して音声として出力し、並行してTMCデータを取得することができるので、交通情報データを取得する際ユーザに与える違和感をより少なくすることができる。さらに、交通情報が放送される頻度で交通情報データに基づく新たな情報をユーザに提供することができ、ユーザは更新された交通情報を、少なくとも画面などへの表示、およびスピーカなどから出力される音声のどちらか1つによって認識することができる。
【0065】
上述した実施の形態では、予め定めるタイミング、つまりTMCデータの取得が完了し、選局を元の放送局に切り替えた後、記憶部に記憶したTMCデータから交通情報を抽出して、抽出した交通情報を少なくとも可視情報または可聴情報として出力しているが、予め定めるタイミングとして、ユーザが所望するタイミングで出力するようにしてもよい。具体的には、受信装置1に、ユーザが出力指示を入力することができる入力手段、たとえば操作キーあるいはタッチキーなどの入力部を搭載する。ユーザがその入力部から出力指示を入力すると、制御部10は、その出力指示に応答して、記憶部に記憶したTMCデータから交通情報を抽出し、抽出した交通情報を少なくとも可視情報または可聴情報として出力する。ユーザが望むときに出力できるので、違和感をより少なくすることができる。
【0066】
上述した実施の形態では、RDSデータに含まれるTMCデータを利用して交通情報を提供する例を示したが、RDSデータは、交通情報以外の予め定める種類の放送情報、たとえばニュースおよび天気予報などの番組の放送情報に関するデータについても提供しており、ニュースおよび天気予報などの番組の放送が開始されたときに、その番組を放送している放送局に選局を切り替え、その番組が放送されている間に、ニュースおよび天気予報などの番組の放送情報に関連するデータをRDSデータから取得して利用することができる。この場合、交通情報、ニュース、および天気予報などの番組の放送情報が第1の放送情報であり、交通情報、ニュース、および天気予報などの番組の放送情報の放送開始を示す情報が第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報であり、交通情報、ニュース、および天気予報などが予め定めるジャンルであり、交通情報、ニュース、および天気予報などの番組の放送情報に関連するデータが予め定めるジャンルの多重データである。
【0067】
図4は、本発明の実施の他の形態であるナビゲーション装置20の電気的構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置20は、たとえば自動車に搭載されて、現在位置表示および経路案内表示などを行い、運転者の進路決定などに役立てられる。現在位置表示は、地図画面上に自車位置を併せて表示し、その表示を自車の走行に伴って更新するものである。経路案内表示は、たとえば目的地が入力されると、現在位置から目的地まで最短経路となる経路を検索して、推奨経路として表示するものである。
【0068】
ナビゲーション装置20は、ナビゲーション制御部41、操作キー42、メモリ43、表示駆動部44、表示部45、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)装置60、CD−ROMディスク61、デコーダ62、処理回路63、および通信バス70を含んで構成される。
【0069】
ナビゲーション装置20は、概略的に、操作キー42への入力操作に応答して、マイクロコンピュータなどで実現されるナビゲーション制御部41が通信バス70を介してCD−ROM装置60へ、所望とする地域の地図データの読取りを指示する。その指示に応答して、処理回路63が、デコーダ62を介して、CD−ROMディスク61に記録されている地図データから、対応する地域の地図データを読み出す。こうして処理回路63から前記通信バス70を介して入力された地図データに対応して、ナビゲーション制御部41が、表示駆動部44を介して、液晶表示装置などで実現される表示手段である表示部45を表示駆動することによって、所望とする地域の地図画面表示が実現される。
【0070】
メモリ43には、入力された目的地および経由地、選択された経路などが記憶されるとともに、探索の始点または終点となった探索地点が記憶されている。メモリ43は、たとえばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、またはディスク装置などの記憶媒体で実現される。
【0071】
さらにナビゲーション装置20には、GPS(Global Positioning System)受信部58が設けられている。このGPS受信部58は、GPSアンテナ59で受信された地球周回軌道を回る測位衛星からの信号に基づいて三角測量を行い、自車の緯度、経度、高度および走行速度などを演算する。その演算結果は、通信バス70を介してナビゲーション制御部41へ出力される。
【0072】
さらにナビゲーション装置20には、地磁気センサ51と、ジャイロセンサ52と、車輪速センサ53とが備えられている。地磁気センサ51は車両の走行方向を検出し、ジャイロセンサ52は車両の姿勢変化を検出し、車輪速センサ53は車体速度を検出する。各センサ51,52の検出結果は、それぞれアナログ/デジタル変換器55,56でデジタル値に変換されて処理回路50に入力される。車輪速センサ53からの車速パルスは、パルスカウンタ57でカウントされ、処理回路50に入力される。このとき、後退位置検出器54によって変速機の変速段が後退位置であることが検出されると、パルスカウンタ57のカウント値は負の値とされる。
【0073】
処理回路50へは、ナビゲーション制御部41から、操作キー42で入力された自車位置などに関するデータが入力され、これによって処理回路50は、各センサ51〜53の検出結果からの現在の車両位置を推測演算する。その演算結果をナビゲーション制御部41へ出力する。このようにして、GPS受信部58によって正確な車両位置を計測することが不可能な地点において、たとえばビル影、高架下、またはトンネル内などにおいても、いわゆる推測航法によって正確に車両位置を計測することができる。
【0074】
さらにナビゲーション装置20には、交通情報データに基づく情報を音声信号に変換する音声合成部46があり、ソースセレクタ47で音声合成部46の出力である音声信号が選択されると、その音声信号は、アンプなどの増幅部48で増幅されて、スピーカ49から出力される。
【0075】
ナビゲーション装置20は、さらに受信装置30を含む。受信装置30は、アンテナ31、チューナモジュール32、PLL33、RDSデモジュレータ34、RDS制御部35、およびメモリ36を含んで構成される。RDS制御部35は、受信装置30全体を制御し、選局する放送局の受信周波数をPLL33に指示する。多重放送信号であるFM放送信号は、電波によって伝送され、アンテナ31を介して受信手段であるチューナモジュール32によって受信される。チューナモジュール32は、PLL33と協働して、RDS制御部35から指示された受信周波数のFM放送信号を受信する。チューナモジュール32からの音声信号は、ソースセレクタ47を介して増幅部48で増幅されてスピーカ49から音声として出力される。
【0076】
RDSデモジュレータ34は、FM放送信号に含まれるデータ信号からRDSデータを抽出し、RDS制御部35に転送する。RDS制御部35は、転送されたRDSデータをメモリ36に記憶する。RDS制御部35は、RDSデータの中の情報であって、交通情報の放送開始を示す交通情報放送開始情報である14BグループのTAコードを監視する。TAコードが「1」になると、受信している放送局を、交通情報を放送している放送局に切り替える。
【0077】
スピーカ49から交通情報の放送を出力しているとき、RDS制御部35は、並行してRDSデータの中から交通情報データであるTMCデータを取得し、メモリ36に記憶する。RDS制御部35は、TMCデータの取得が完了すると、選局を元の放送局に切り替え、メモリ36に記憶したTMCデータをナビゲーション制御部41に転送する。ナビゲーション制御部41は、転送されたTMCデータをメモリ43に記憶するとともに、転送されたTMCデータに基づいて目的地への経路を探索し、探索した経路を新たな推奨経路として表示部45に表示する。
【0078】
推奨経路を表示部45に表示するとともに、または推奨経路を表示部45に表示することに代えて、メモリ36に記憶したTMCデータから交通情報を抽出し、抽出した交通情報を表示部45に表示してもよい。または、抽出した交通情報を音声合成部46で音声信号に変換させ、変換された音声信号を、ソースセレクタ47を介して増幅部48で増幅して、スピーカ49から出力してもよい。あるいは表示部45への表示と、スピーカ49からの出力とを、両方行ってもよい。
【0079】
図5は、図4に示したナビゲーション制御部41が処理する経路探索手順の一部を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、ナビゲーション制御部41が目的地への経路を探索し、探索した経路を新たな推奨経路として表示部45に表示するときに実行される。RDS制御部35が、取得したTMCデータをナビゲーション制御部41に送信したとき、またはナビゲーション制御部41が経路探索の要求を検出したとき、ステップS30に移る。
【0080】
ステップS30では、RDS制御部35からTMCデータが転送されたか否かを判定する。TMCデータが転送されたとき、ステップS31に進み、TMCデータが転送されなかったとき、ステップS34に進む。ステップS31では、RDS制御部35から転送されたTMCデータを受領してメモリ43に記憶する。ステップS32では、ナビゲーション制御部41は、メモリ43に記憶されたTMCデータに基づいて、目的地への経路を探索する。
【0081】
ステップS33では、ナビゲーション制御部41は、探索した経路を新たな推奨経路として表示部45に表示するか、TMCデータを可視情報として出力するか、およびTMCデータを可聴情報として出力するかの少なくともいずれか1つを実行して、終了する。可視情報としての出力は、たとえば記憶したTMCデータから交通情報を抽出し、抽出した交通情報を表示部45に表示する。可聴情報としての出力は、たとえば抽出した交通情報を音声合成部46で音声信号に変換させ、変換された音声信号を介して増幅部48で増幅して、スピーカ49から出力する。これらの選択は、ユーザの操作によって行うようにしてもよい。
【0082】
ステップS34では、TMCデータを用いずに、GPSおよびセンサなどから得られるデータだけで、目的地への経路を探索する。ステップS35では、探索した経路を新たな推奨経路として表示部45に表示して、終了する。メモリ43にTMCデータが記憶されていないとき、TMCデータを取得するための待ち時間を発生させることなく、ユーザに推奨経路を表示することができる。
【0083】
RDS制御部35の処理手順は、図2に示した制御部10の処理手順のステップ18を除いた処理手順と同じある。RDS制御部35は、ステップ18では、図2に示した制御部10の処理に代えて、取得が完了したTMCデータをメモリ36に記憶するとともに、ナビゲーション制御部41に転送する。
【0084】
RDS制御部35は、選局切り替え手段、および選局復帰手段を含み、ナビゲーション制御部41は、経路探索手段、記憶制御手段、経路探索制御手段、出力制御手段、および消去手段を含む。RDS制御部35とナビゲーション制御部41とは、1つの制御部であってもよく、その場合、その制御部はRDS受信装置30も含めたナビゲーション装置20全体を制御する。この場合、メモリ36とメモリ43とをあわせて1つの記憶手段であるメモリとする。
【0085】
このように、ナビゲーション装置20は、EON情報の中の14BグループのTAコードを監視することによって、交通情報の放送の開始を検出する。交通情報の放送が始まると、受信していた放送局に代えて、交通情報の放送を受信して音声として出力し、並行してTMCデータを取得することができるので、交通情報データを取得する際ユーザに与える違和感をより少なくすることができる。さらに、交通情報が放送される頻度で交通情報データに基づく新たな情報をユーザに提供することができ、ユーザは更新された交通情報を、少なくとも画面などへの表示、およびスピーカなどから出力される音声のどちらか1つによって認識することができる。
【0086】
上述した実施の形態では、TMCデータの取得が完了したときに、元の放送局に選局を切り替えているが、TMCデータの取得が完了する前に、交通情報の放送が終了すると、選局している放送局から、音声が無くなること、または音楽などが出力されることがある。この場合、音声が無くなること、または音楽などが出力されることに代えて、交通情報を繰り返しスピーカ49から出力する。
【0087】
具体的には、ナビゲーション装置20に、音声記憶部を搭載することによって、交通情報の放送が終了してからTMCデータの取得が完了するまで、交通情報を繰り返しスピーカ49から出力する。音声記憶部は、音声信号を音声データに変換するアナログ/デジタル変換器、変換した音声データを記憶するメモリなどの記憶部、および音声データを音声信号に復元するデジタル/アナログ変換器を含んで構成される。
【0088】
ナビゲーション制御部41は、チューナモジュール32からの交通情報放送の音声信号を音声記憶部で変換して記憶する。交通情報の放送が終了した後TMCデータ取得完了までの間、音声記憶部によって、記憶した音声データを音声信号に復元して、ソースセレクタ47を介してスピーカ49から出力する。
【0089】
または、ナビゲーション制御部41は、交通情報の放送が終了した後TMCデータ取得完了までの間、音声が無くなること、または音楽が出力されることに代えて、新たな経路を探索中であることを示す情報を音声合成手段46で音声信号に変換して、スピーカ49から出力してもよい。
【0090】
このように、TMCデータの取得が完了する前に、交通情報の放送が終了しても、交通情報を繰り返し出力させることができ、または新たな経路を探索中であることを示す情報を音声で出力することができるので、無音状態等、たとえば音声が無くなること、または音楽などが出力されることを回避することができ、交通情報データを取得する際ユーザに与える違和感をより少なくすることができる。
【0091】
さらに上述した実施の形態では、交通情報の放送が始まったとき、放送局の放送を、交通情報の放送に切り替える場合について説明したが、たとえばCD−ROM装置60を用いてCDからの音声がスピーカ49から出力されているとき、交通情報の放送に切り替える場合にも適用することができる。
【0092】
具体的には、ソースセレクタ47がCD−ROM装置60からの音声信号を選択してスピーカ49から音声として出力しているときに、RDS制御部35が交通情報の放送が始まったことを検出すると、RDS制御部35は、選局を交通情報の放送に切り替えるとともに、その旨をナビゲーション制御部41に通知する。ナビゲーション制御部41は、ソースセレクタ47にチューナモジュール32から音声信号を選択するように指示する。
【0093】
交通情報データの取得が完了すると、RDS制御部35は、その旨をナビゲーション制御部41に通知する。ナビゲーション制御部41は、ソースセレクタ47にCD−ROM装置60からの音声信号を選択するように指示する。ソースセレクタ47で選択する装置は、CD−ROM装置以外の装置、たとえばカセットテーププレーヤ、またはMD(Mini Disk)プレーヤなどの装置であってもよい。
【0094】
このように、交通情報の放送が始まったことを検出したときに、交通情報を放送する放送局に切り替え、交通情報の放送を出力中に、交通情報データを取り込むので、音声の出力源が放送局の音声信号以外であっても、交通情報データを取得する際ユーザに与える違和感をより少なくすることができる。
【0095】
図6は、図4に示したナビゲーション制御部41が処理する電源切断手順の一部を示すフローチャートである。ナビゲーション制御部41が、ナビゲーション装置20に対する電源切断指示を受けるとステップS40に移る。ステップS40では、メモリ43に記憶されたTMCデータを消去して終了する。ナビゲーション装置20の電源が再び投入されたとき、メモリ43にはTMCデータが残っていないので、古いデータに基づいて推奨経路を探索し、不正な推奨経路を表示するといったことを回避することができる。
【0096】
上述した実施の形態では、ナビゲーション装置20の電源が切断されるときに、ナビゲーション制御部41がメモリ43に記憶したTMCデータを消去しているが、メモリ43に記憶したTMCデータは、そのTMCデータが利用された後も、メモリ43に残るので、他のタイミング、たとえばTMCデータを利用した後に消去してもよい。
【0097】
さらに上述した実施の形態では、RDSデータに含まれるTMCデータを利用して、目的地への推奨経路を探索して表示する例を示したが、RDSデータは、交通情報以外の予め定める種類の放送情報、たとえばニュースおよび天気予報などの番組の放送情報に関する放送情報データについても提供しており、この放送情報データを利用することもできる。
【0098】
具体的には、まずRDS制御部35は、ニュースおよび天気予報などの番組の放送が開始されたとき、その番組を放送している放送局に選局を切り替え、その番組が放送されている間に、放送情報データをRDSデータから取得して、ナビゲーション制御部41に転送する。ナビゲーション制御部41は、転送された放送情報データをメモリ43に記憶し、記憶した放送情報データを利用して、目的地への推奨経路を探索して表示する。
【0099】
放送情報データを利用して目的地への推奨経路を探索するときは、放送情報データの個々のデータ、たとえばニュースに関するデータまたは天気予報に関するデータだけを利用してもよいし、これらのデータを組み合わせて、たとえば交通情報に関するデータとニュースに関するデータと天気予報に関するデータとを組み合わせて利用してもよい。
【0100】
個々のデータを利用することによって、状況に応じた経路選択が可能になり、より適切なナビゲーションを行うことができる。さらにこれらのデータを組み合わせて利用することによって、より正確な経路選択が可能になり、信頼度の高いナビゲーションを提供することができる。
【0101】
このようにして、放送情報データつまり予め定めるジャンルの多重データに基づいて検索した推奨経路を提供することができるダイナミックルートガイダンスを実現することができる。さらに予め定めるジャンルの多重データを画面などへの表示によって認識することができる交通情報表示、およびスピーカなどから出力される音声によって認識することができる交通情報自動読み上げを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施の一形態である受信装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した受信装置1の制御部10の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した処理手順に係るタイムチャートの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の他の形態であるナビゲーション装置20の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示したナビゲーション制御部41が処理する経路探索手順の一部を示すフローチャートである。
【図6】図4に示したナビゲーション制御部41が処理する電源切断手順の一部を示すフローチャートである。
【図7】受信装置80の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した制御部10の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1,30,80 受信装置
10 制御部
11,31 アンテナ
12,32 チューナモジュール
13,48 増幅部
14,49 スピーカ
15,34 RDSデモジュレータ
16,36,43 メモリ
17,33 PLL
18,45 表示部
19,46 音声合成部
35 RDS制御部
20 ナビゲーション装置
41 ナビゲーション制御部
42 操作キー
44 表示駆動部
47 ソースセレクタ
50,63 処理回路
51 地磁気センサ
52 ジャイロセンサ
53 車輪速センサ
54 後退位置検出器
55,56 アナログ/デジタル変換器
57 パルスカウンタ
58 GPS受信部
59 GPSアンテナ
60 CD−ROM装置
61 CD−ROMディスク
62 デコーダ
70 通信バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報を出力する出力手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データを記憶する記憶手段と、
第1の放送局を選局して、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局を選局して前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させる選局切り替え手段と、
前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局を選局して第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる選局復帰手段とを含むことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶させた前記予め定めるジャンルの多重データに基づく情報を、予め定めるタイミングで前記出力手段に出力させる出力制御手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記予め定めるジャンルの多重データの出力指示を入力する入力手段を含み、
前記予め定めるタイミングは、前記選局復帰手段によって前記第1の放送局が選局されて、第1の多重放送信号を前記受信手段によって受信しているとき、および/または前記出力制御手段が前記入力手段によって入力された出力指示を受けたときであることを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
搬送波に多重データを表す多重データ信号が重畳された多重放送信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データに基づく情報を出力する出力手段と、
前記受信手段によって受信した多重放送信号に含まれる多重データを記憶する記憶手段と、
第1の放送局を選局して、前記受信手段によって受信された第1の多重放送信号に含まれる多重データに、第2の放送局における予め定めるジャンルの多重データの提供を示す情報が含まれていると、前記第2の放送局を選局して前記受信手段に第2の多重放送信号を受信させる選局切り替え手段と、
前記選局切り替え手段によって選局されて前記受信手段が受信した第2の多重放送信号に含まれる前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段が前記予め定めるジャンルの多重データの少なくとも一部を前記記憶手段に記憶させた後、再び前記第1の放送局を選局して第1の多重放送信号を前記受信手段に受信させる選局復帰手段と、
目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されているとき、前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データに基づいて、前記経路探索手段に探索させた経路を、経路情報として前記出力手段に出力させる経路探索制御手段とを含むことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶させた予め定めるジャンルの多重データを少なくとも可視情報または可聴情報として前記出力手段に出力させる出力制御手段を含むことを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記予め定めるジャンルが交通情報であり、かつ前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データが交通情報データであることを特徴とする請求項4または5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶された予め定めるジャンルの多重データを消去する消去手段を含むことを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記経路探索制御手段は、前記記憶手段に予め定めるジャンルの多重データが記憶されていないときは、予め定めるジャンルの多重データ以外の情報に基づいて前記経路探索手段に経路を探索させることを特徴とする請求項7に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−94281(P2006−94281A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279183(P2004−279183)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】