説明

可塑化射出装置の冷間起動防止装置及び冷間起動防止方法

【課題】 最小限の待ち時間で、可塑化装置に過大な負荷をかけることなく可塑化スクリュや射出プランジャを動作できる状態を検出し、冷間起動防止機能を解除することのできる可塑化射出装置の冷間起動防止装置及び冷間起動防止方法を提供する。
【解決手段】 可塑化スクリュの回転トルクが所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させ、可塑化スクリュの回転数を検出し、検出される回転数が所定の回転数以上となる場合に冷間起動防止機構を解除するようにしたり、可塑化スクリュまたは射出プランジャに所定の前後進圧力を加え、可塑化スクリュまたは射出プランジャの前後進位置を検出し、検出される位置が所定の位置に達したときに、冷間起動防止機構を解除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱シリンダと、可塑化スクリュまたは射出プランジャあるいはその両方とを備えた射出成形機や押出機等の可塑化射出装置について、可塑化射出装置を停止させた後の再起動において、加熱シリンダ内の樹脂などの可塑化材料が溶融するまでは、可塑化スクリュの回転および、可塑化スクリュまたは射出プランジャの前後進を阻止するための可塑化射出装置の冷間起動防止装置および冷間起動防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、射出成形機においては、運転を停止している機械を再起動した場合、加熱シリンダ内の樹脂が十分に溶融していない状態で、可塑化スクリュを回転させたり、射出等のために前進移動させたりすると、可塑化スクリュやノズル部分に大きな負荷がかかりこれらを破損させることがある。そのために加熱シリンダが設定温度に達し、加熱シリンダ内の樹脂温度が所定値に到達するのを待ってから可塑化スクリュの回転または移動を許可する、いわゆる冷間起動防止装置が広く採用されている。
【0003】
従来の冷間起動防止装置は、さまざまな可塑化条件に対して十分な待ち時間を設定する方法、停止から再起動までの停止時間を考慮して待ち時間を設定する方法(例えば、下記特許文献1参照)、再起動のためのシリンダの加熱に伴うシリンダの昇温勾配に基づいて待ち時間を演算により求める方法(例えば、下記特許文献2参照)、加熱シリンダ内の可塑化スクリュ位置に基づいて待ち時間を演算により求める方法(例えば、下記特許文献3参照)などが知られている。
【特許文献1】特開平11−170327号公報
【特許文献2】実公平6−15004号公報
【特許文献3】特開2004−106357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、確実に加熱シリンダ内の樹脂が溶融し、可塑化装置に過大な負荷をかけることなく、可塑化スクリュや射出プランジャなどを回転または移動できることを検知するための手段を有さず、従って、加熱シリンダ内の樹脂が確実に溶融していることを保証するために、必要以上の時間、冷間起動防止状態にしなければならず、無駄な時間を要し、可塑化射出装置の起動を迅速に行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、最小限の待ち時間で、可塑化装置に過大な負荷をかけることなく可塑化スクリュや射出プランジャを動作できる状態を検知し、冷間起動防止機能を解除することのできる可塑化射出装置の冷間起動防止装置及び冷間起動防止方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、可塑化スクリュの回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出手段と、前記可塑化スクリュの所定の回転トルクを記憶する回転トルク記憶手段と、前記可塑化スクリュの所定の回転数を記憶する回転数記憶手段と、前記回転トルク制御手段により制御される回転トルクが前記回転トルク記憶手段に記憶された所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させた場合に、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記回転数記憶手段に記憶された前記所定の回転数以上となる場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段とを備えてなるものである。
【0007】
また、本発明は、上述した可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、前記回転トルク記憶手段に記憶される前記所定の回転トルクは、可塑化材料が溶融している場合に前記可塑化スクリュを回転させるには十分であり、かつ可塑化材料が溶融していない場合に、前記可塑化スクリュを破損させない大きさであることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明は、上述した可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、前記回転数記憶手段に記憶される前記所定の回転数は、前記可塑化スクリュに過負荷を与えない程度に可塑化材料が溶融したとみなせる程度の回転数であり、かつ可塑化材料が溶融している場合に可塑化スクリュが損傷したり、可塑化材料が変質しない程度の回転数であることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、可塑化スクリュの回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出手段と、前記可塑化スクリュの所定の回転トルクを記憶する回転トルク記憶手段と、前記可塑化スクリュの所定の回転数を記憶する回転数記憶手段と、前記可塑化スクリュにおける前後進圧力を制御する前後進圧力制御手段と、前記可塑化スクリュにおける前後進位置を検出する前後進位置検出手段と、前記可塑化スクリュの所定の前後進圧力を記憶する前後進圧力記憶手段と、前記可塑化スクリュの所定の前後進位置を記憶する前後進位置記憶手段と、前記回転トルク制御手段により制御される回転トルクが前記回転トルク記憶手段に記憶された所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させた場合に、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記回転数記憶手段に記憶された前記所定の回転数以上となり、且つ前記可塑化スクリュの前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された所定の前後進位置にない場合に、前記前後進圧力制御手段により制御される前後進圧力が前記前後進圧力記憶手段に記憶された所定の前後進圧力となるように前記可塑化スクリュを前後進させ、前記前後進位置検出手段により検出される前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された前記所定の前後進位置、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段とを備えてなるものである。
【0010】
また、本発明は、射出用可塑化スクリュまたは射出プランジャあるいはその双方により構成される溶融可塑化材料の射出手段を有する可塑化射出装置において、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に前記可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、前記射出手段における前後進圧力を制御する前後進圧力制御手段と、前記射出手段における前後進位置を検出する前後進位置検出手段と、前記射出手段の所定の前後進圧力を記憶する前後進圧力記憶手段と、前記射出手段の所定の前後進位置を記憶する前後進位置記憶手段と、前記前後進圧力制御手段により制御される前後進圧力が前記前後進圧力記憶手段に記憶された所定の前後進圧力となるように前記射出手段を前後進させた場合に、前記前後進位置検出手段により検出される前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された前記所定の前後進位置、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段とを備えてなるものである。
【0011】
また、本発明は、上述した可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、前記前後進圧力記憶手段に記憶されている前記所定の前後進圧力は、可塑化材料が溶融している場合に前記可塑化スクリュまたは射出プランジャを前進させるには十分であり、かつ可塑化材料が溶融していない場合に可塑化スクリュまたは射出プランジャを破損させない程度の大きさであることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上述した可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、前記前後進位置記憶手段に記憶されている前後進位置は、計量部の可塑化材料が溶融したことを確認することができる可塑化スクリュまたは射出プランジャの最前進位置であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止方法であって、可塑化スクリュの回転トルクが所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させるステップと、前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出ステップと、前記回転数検出ステップにより検出される回転数が所定の回転数以上となる場合に前記冷間起動防止機構を解除する解除ステップとを備えてなるものである。
【0014】
また、本発明は、射出用可塑化スクリュまたは射出プランジャあるいはその双方により構成される溶融可塑化材料の射出手段を有する可塑化射出装置において、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に前記可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止方法であって、前記射出手段の前後進圧力が、所定の前後進圧力となるように前記射出手段を前後進させる前後進ステップと、前記射出手段における前後進位置を検出する前後進位置検出ステップと、前記前後進位置検出ステップにより検出される前後進位置が所定の前後進位置に到達するか、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する解除ステップとを備えてなるものである。
【0015】
以上のように、本発明によれば、可塑化スクリュや射出プランジャなどの射出手段の所定の駆動状態における動作を検出することにより、それらが動作できる状態を即座に検知することができ、従来技術のように、加熱シリンダ内の樹脂が確実に溶融していることを保証するために、必要以上の時間にわたり冷間起動防止状態を維持する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば可塑化スクリュを回転、前後進させることができるようになることで、可塑化材料の溶融を検知するようにしたため、加熱シリンダ温度や、機械の停止から再起動までの停止時間、加熱開始からの経過時間などを考慮することなく、機械の再起動開始から可塑化スクリュおよび射出プランジャの操作が許可されるまでの待ち時間を最短とすることができ、もって、可塑化射出装置の起動を迅速におこなうことができる冷間起動防止装置及び冷間起動防止方法を実現することができ、射出成形機や押出機の立ち上げ時間を短縮することで作業効率や生産効率を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を射出成形機に適用した一実施形態について、図1および図2に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明による射出成形機のスクリュインライン式射出装置における冷間起動防止装置の概要構成図である。本装置は加熱シリンダ1、ヒータ2、可塑化スクリュ3、ホッパ4、ロードセル5、移動板6、可塑化用モータ7、射出用モータ8、サーボモータアンプ9、温度制御装置10、主制御装置11などから構成されている。これらは、射出成形機として一般的なものであるため、詳述を避ける。なお、12,13はベルト、14は軸受け、15はボールネジである。ここで、可塑化スクリュ3は、本発明の溶融可塑化材料(溶融樹脂)を射出する射出手段にも相当している。
【0019】
主制御装置11には、可塑化スクリュ3の所定の回転トルクτを記憶した回転トルク(τ)記憶手段31、可塑化スクリュ3の所定の回転数Nを記憶した回転数(N)記憶手段32、可塑化スクリュ3の所定の前後進圧力Pを記憶した前後進圧力(P)記憶手段33、可塑化スクリュ3の所定の前後進位置Xを記憶した前後進位置(X)記憶手段34とがアクセス可能に接続されている。
【0020】
図1において、可塑化用モータ7は主制御装置11からの速度指令V1とトルク制限指令τ1を受けたサーボモータアンプ21により駆動される。可塑化用モータ7には、回転数を検出するためのエンコーダ22とモータ駆動電流を検出するための電流センサ23が取り付けられており、サーボモータアンプ21は検出された回転数と駆動電流をもとに可塑化用モータ7の回転を制御するとともに、検出回転数nを主制御装置11に提供する。可塑化用モータ7はベルト12を介して可塑化スクリュ3を回転させる。
【0021】
ここで、主制御装置11、可塑化用モータ7、サーボモータアンプ21は可塑化スクリュ3における回転トルクを制御する本発明の回転トルク制御手段を構成している。
【0022】
射出用モータ8も、可塑化用モータ7と同様に主制御装置11からの速度指令V2とトルク制限指令τ2を受けたサーボモータアンプ9により駆動される。射出用モータ8はベルト13およびボールネジ15により移動板6を前後進させることによって可塑化スクリュ3を前後進させる。
【0023】
移動板6と可塑化スクリュ3の間にはロードセル5が組み込まれており、ロードセル5で検出された圧力は可塑化スクリュ前後進圧力PRとして主制御装置11に提供される。
【0024】
従って、主制御装置11、射出用モータ8、ロードセル5、サーボモータアンプ9の構成により、可塑化スクリュ3の前後進圧力が制御可能となり、これらは可塑化スクリュ3における前後進圧力を制御する本発明の前後進圧力制御手段を構成している。
【0025】
射出用モータ8に取付けられているエンコーダ24の検出したモータ回転数は、カウンタ25によって可塑化スクリュ3の検出位置POに変換され、主制御装置11に提供される。主制御装置11は可塑化スクリュ3の検出前後進圧力PRと検出前後進位置POによって可塑化スクリュ3の前後進を制御する。
【0026】
温度制御装置10は主制御装置11からの温度指令TCによってヒータ2を駆動し、加熱シリンダ1を加熱する。
【0027】
図2は、本発明による射出成形機の冷間起動防止機能動作のフローチャートである。
【0028】
この実施の形態では図2に示すように、加熱シリンダ昇温中(ステップS1)に、可塑化用モータ7と可塑化用モータ7に取り付けられた電流センサ23によって可塑化スクリュ3の回転トルクを制御し、回転トルク記憶手段31によって記憶されている回転トルクτを可塑化スクリュ3に加え(ステップS2)、このときのスクリュ回転数を可塑化用モータ7に取付けられたエンコーダ22によって監視する。
【0029】
このとき可塑化スクリュ3にかける回転トルクτは、樹脂が溶融している場合に可塑化スクリュ3を回転させるには十分であり、なおかつ樹脂が溶融していない場合に可塑化スクリュ3を破損させない程度のものとする。
【0030】
そして、可塑化スクリュ3の回転数について、回転数記憶手段32に記憶されている回転数N以上に到達する場合を監視する(ステップS3)。
【0031】
このときの可塑化スクリュ3の回転数Nは、「可塑化スクリュに過負荷を与えない程度に樹脂が溶融した」とみなせる程度で、なおかつ樹脂が溶融している場合に可塑化スクリュが損傷したり、樹脂が変質しない程度のものとする。
【0032】
すなわち、この回転数は、加熱シリンダ1が昇温し、加熱シリンダ1内の樹脂が溶融し始めると、可塑化スクリュ3はそれに加えられている回転トルクによって回転し始めるが、このとき可塑化スクリュ3の回転数が上がりすぎないようにする程度のものである。
【0033】
可塑化スクリュ3が回転数Nで回転するようになったら(ステップS3:≧N)、可塑化スクリュの位置を検出して判断し(ステップS4)、それが所定の位置に到達していない(ステップS4:Xよりも後方)場合は、可塑化シリンダ前方の計量部の樹脂が溶融したことを確認するために、射出用モータ8とロードセル5によって、前後進圧力記憶手段33に記憶されている前進圧力Pとなるように可塑化スクリュ3を駆動させる(ステップS5)。
【0034】
このときの可塑化スクリュ3にかける前進圧力Pは、樹脂が溶融している場合に可塑化スクリュ3を前進させるには十分であり、なおかつ樹脂が溶融していない場合に可塑化スクリュ3や加熱シリンダ1を破損させない程度のものとする。
【0035】
加熱シリンダ1が十分昇温し、可塑化シリンダ3の前方の計量部の樹脂が溶融し始めると、可塑化スクリュ3はそれに加えられている前進圧力によって前進し始める。このとき可塑化スクリュ3の前後進位置を監視し、前後進位置記憶手段34によって記憶されている前後進位置Xよりも前進してしまわないように制御する。
【0036】
このときの前後進位置Xは計量部の樹脂が全て溶融したことを確認するために、可塑化スクリュ3の最前進位置とすることが好ましい。
【0037】
この場合、結果として加熱シリンダ内の計量部の樹脂は全て排出されることになる。なおこの工程は可塑化スクリュが前後進位置記憶手段34によって記憶されている前後進位置よりも前にある場合には省略することができる。
【0038】
以上の動作が完了すれば、可塑化シリンダ内の樹脂は溶融し、過剰な負荷をかけることなく可塑化スクリュを回転、前後進させることができる状態になっているので、冷間起動防止機能を解除する。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上述した実施の形態においては、所定のトルクに対する可塑化スクリュの回転数を判断する第1の判断を行い(ステップS2、S3)、且つ所定の前進圧力に対する可塑化スクリュの位置を判断する第2の判断を行う(ステップS4、S5)ことで、冷間起動防止解除を行うようにしたが、いずれか一方のみの判断、すなわち、第1の判断(ステップS2、S3)のみでも、或いは第2の判断(ステップS4、S5)のみでも本発明の目的は達成することができることは言うまでもない。
【0040】
また、上述した実施の形態では、本発明を電動駆動式のインラインスクリュ式射出装置に適用した例について説明したが、図3に示すようなプランジャ式可塑化射出装置、及び、スクリュ式とプランジャ式を組み合わせてなる図4に示すようなスクリュプリプラ式可塑化射出装置にも適用できることは言うまでもない。
【0041】
すなわち、図3に示すプランジャ式可塑化射出装置においては、加熱シリンダ1Aに、本発明の射出手段に相当する射出プランジャ3Aを備えた構成になっており、この射出プランジャ3Aについての制御構成を図1に示した可塑化スクリュ3における制御構成におけるトルク制御手段(主制御装置11、サーボモータアンプ21、可塑化用モータ7)を除いた構成とし、実施の形態で説明した可塑化スクリュ3に対する前後進圧力制御手段(主制御装置11、射出用モータ8、ロードセル5、サーボモータアンプ9から構成される)に対応する前後進圧力制御手段を射出プランジャ3Aにおける前後進圧力制御手段として用いる。
【0042】
そして、射出プランジャ3Aの所定の前後進圧力を記憶する前後進圧力記憶手段(図1の前後進圧力記憶手段33に対応)を設け、前記前後進圧力制御手段により制御される前後進圧力が前後進圧力記憶手段に記憶された所定の前後進圧力となるようにプランジャ3Aを前後進させた場合に、前後進位置検出手段(図1のエンコーダ22に対応)により検出される前後進位置が前後進位置記憶手段に記憶された所定の前後進位置、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除するようにする。
【0043】
また、図4に示すスクリュープリプラ式可塑化射出装置においては、予備可塑化用加熱シリンダ1Bに可塑化スクリュ3Bを備えると共に、射出用加熱シリンダ1Cに射出プランジャ3Cを備える構成となっている。この場合、可塑化スクリュ3Bについては、図1の構成を適用し、図2の動作を実行させる。また、射出プランジャ3Cについては、図3において上述した射出プランジャ3Aと同様の構成において同様の動作を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態による射出成形機のスクリュインライン式射出装置における冷間起動防止装置の概要構成図である。
【図2】実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】プランジャ式の可塑化射出装置を示す側面図である。
【図4】スクリュープリプラ式の可塑化射出装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,1A,1B,1C 加熱シリンダ、2 ヒータ、3,3B 可塑化スクリュ、3A,3C 射出プランジャ、4 ホッパ、5 ロードセル、6 移動板、7 可塑化用モータ、8 射出用モータ、9,21 サーボモータアンプ、10 温度制御装置、11 主制御装置、12,13 ベルト、14 軸受け、15 ボールネジ、22,24 エンコーダ、31 回転トルク記憶手段、32 回転数記憶手段、33 前後進圧力記憶手段、34 前後進位置記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、
可塑化スクリュの回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、
前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記可塑化スクリュの所定の回転トルクを記憶する回転トルク記憶手段と、
前記可塑化スクリュの所定の回転数を記憶する回転数記憶手段と、
前記回転トルク制御手段により制御される回転トルクが前記回転トルク記憶手段に記憶された所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させた場合に、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記回転数記憶手段に記憶された前記所定の回転数以上となる場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段と、
を備えてなる可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、
前記回転トルク記憶手段に記憶される前記所定の回転トルクは、可塑化材料が溶融している場合に前記可塑化スクリュを回転させるには十分であり、かつ可塑化材料が溶融していない場合に、前記可塑化スクリュを破損させない大きさであることを特徴とする可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、
前記回転数記憶手段に記憶される前記所定の回転数は、前記可塑化スクリュに過負荷を与えない程度に可塑化材料が溶融したとみなせる程度の回転数であり、かつ可塑化材料が溶融している場合に可塑化スクリュが損傷したり、可塑化材料が変質しない程度の回転数であることを特徴とする可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項4】
加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、
可塑化スクリュの回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、
前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記可塑化スクリュの所定の回転トルクを記憶する回転トルク記憶手段と、
前記可塑化スクリュの所定の回転数を記憶する回転数記憶手段と、
前記可塑化スクリュにおける前後進圧力を制御する前後進圧力制御手段と、
前記可塑化スクリュにおける前後進位置を検出する前後進位置検出手段と、
前記可塑化スクリュの所定の前後進圧力を記憶する前後進圧力記憶手段と、
前記可塑化スクリュの所定の前後進位置を記憶する前後進位置記憶手段と、
前記回転トルク制御手段により制御される回転トルクが前記回転トルク記憶手段に記憶された所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させた場合に、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記回転数記憶手段に記憶された前記所定の回転数以上となり、且つ前記可塑化スクリュの前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された所定の前後進位置にない場合に、
前記前後進圧力制御手段により制御される前後進圧力が前記前後進圧力記憶手段に記憶された所定の前後進圧力となるように前記可塑化スクリュを前後進させ、前記前後進位置検出手段により検出される前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された前記所定の前後進位置、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段と、
を備えてなる可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項5】
射出用可塑化スクリュまたは射出プランジャあるいはその双方により構成される溶融可塑化材料の射出手段を有する可塑化射出装置において、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に前記可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止装置であって、
前記射出手段における前後進圧力を制御する前後進圧力制御手段と、
前記射出手段における前後進位置を検出する前後進位置検出手段と、
前記射出手段の所定の前後進圧力を記憶する前後進圧力記憶手段と、
前記射出手段の所定の前後進位置を記憶する前後進位置記憶手段と、
前記前後進圧力制御手段により制御される前後進圧力が前記前後進圧力記憶手段に記憶された所定の前後進圧力となるように前記射出手段を前後進させた場合に、前記前後進位置検出手段により検出される前後進位置が前記前後進位置記憶手段に記憶された前記所定の前後進位置、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する制御手段と、
を備えてなる可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、
前記前後進圧力記憶手段に記憶されている前記所定の前後進圧力は、可塑化材料が溶融している場合に前記可塑化スクリュまたは射出プランジャを前進させるには十分であり、かつ可塑化材料が溶融していない場合に可塑化スクリュまたは射出プランジャを破損させない程度の大きさであることを特徴とする可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の可塑化射出装置の冷間起動防止装置において、
前記前後進位置記憶手段に記憶されている前後進位置は、計量部の可塑化材料が溶融したことを確認することができる可塑化スクリュまたは射出プランジャの最前進位置であることを特徴とする可塑化射出装置の冷間起動防止装置。
【請求項8】
加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止方法であって、
可塑化スクリュの回転トルクが所定の回転トルクとなるように前記可塑化スクリュを回転させるステップと、
前記可塑化スクリュの回転数を検出する回転数検出ステップと、
前記回転数検出ステップにより検出される回転数が所定の回転数以上となる場合に前記冷間起動防止機構を解除する解除ステップと、
を備えてなる可塑化射出装置の冷間起動防止方法。
【請求項9】
射出用可塑化スクリュまたは射出プランジャあるいはその双方により構成される溶融可塑化材料の射出手段を有する可塑化射出装置において、加熱シリンダ内の可塑化材料が溶融しない間に前記可塑化射出装置が起動するのを防止する冷間起動防止機構を備えた可塑化射出装置の冷間起動防止方法であって、
前記射出手段の前後進圧力が、所定の前後進圧力となるように前記射出手段を前後進させる前後進ステップと、
前記射出手段における前後進位置を検出する前後進位置検出ステップと、
前記前後進位置検出ステップにより検出される前後進位置が所定の前後進位置に到達するか、或いはそれを越える場合に前記冷間起動防止機構を解除する解除ステップと、
を備えてなる可塑化射出装置の冷間起動防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−62276(P2006−62276A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249546(P2004−249546)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】