説明

可変容量圧縮機用制御弁

【課題】 圧力制御区間において安定的に動作できるとともに、ソレノイドの非通電時には、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に迅速に移行させることができる可変容量圧縮機用制御弁を提供する。
【解決手段】 可変容量圧縮機用制御弁においては、圧力制御区間において弁体に負荷される閉弁方向の力が増加して、冷媒圧力により弁体に負荷される開弁方向の力にバランスするため、安定した圧力制御を実現することができる。また、弁体が圧力制御区間の終点位置を越えると、弁体に負荷される閉弁方向の力が減少することにより全開時の弁開度が大きくなるため、ソレノイドの非通電時において十分な冷媒流量を確保することができ、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に迅速に移行させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量圧縮機用制御弁に関し、特に自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機の吐出容量を制御するための可変容量圧縮機用制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置の冷凍サイクル中で冷媒を圧縮するために用いられる圧縮機は、エンジンを駆動源としているので、回転数制御を行うことができない。そこで、エンジンの回転数に制約されることなく適切な冷房能力を得るために、冷媒の圧縮容量を変えることができる可変容量圧縮機が用いられている。
【0003】
このような可変容量圧縮機においては、エンジンによって回転駆動される軸に取り付けられた揺動板に圧縮用ピストンが連結され、揺動板の角度を変えることによって圧縮用ピストンのストロークを変えることで冷媒の吐出量を変えるようにしている。
【0004】
揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に圧縮された冷媒の一部を導入し、その導入する冷媒の圧力を変化させ、圧縮用ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えている。
【0005】
クランク室内の圧力は、可変容量圧縮機の吐出室とクランク室との間又はクランク室と吸入室との間に制御弁を設け、吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を変えるか、クランク室から吸入室に導出する冷媒の流量を変えることにより調整される。例えば前者の場合には、クランク室と吸入室との間にオリフィスが設けられ、吐出室から吸入室へ冷媒が流れる経路が形成される。制御弁は、例えば吐出室とクランク室とを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離してその弁孔を開閉可能な弁体を備える。そして、ソレノイドを駆動してこの弁体の弁孔からのリフト量を制御することにより、吐出室側から吸入室側へ流れる冷媒の流量を調整する(例えば特許文献1参照)。
【0006】
この制御弁は、より具体的には、その弁体が弁孔の下流側に配置され、その弁体の弁孔と反対側に弁体を軸線方向に支持するシャフトを備える。このシャフトは、ソレノイドのプランジャ(可動鉄芯)と一体に形成されて弁体の端面に当接する。この制御弁には、弁体を開弁方向に付勢するスプリング、プランジャとコア(固定鉄芯)との間に介装されてプランジャを開弁方向に付勢するスプリング、及びプランジャを閉弁方向に付勢するスプリングが設けられている。このため、ソレノイドの通電時には、弁体が、冷媒による圧力、これらのスプリングによる合力、及びソレノイド力がバランスした位置に保持され、その弁開度が決定される。
【特許文献1】特開2003−328936号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような可変容量圧縮機用制御弁では、弁体が閉弁位置から実際に圧力制御が行われる圧力制御区間の終点位置まで動作する間に閉弁方向の付勢力が不足すると、本来所定の弁開度に保持しなければならないにも拘わらず、弁体が急激に動作して全開状態となってしまう。すなわち、圧力制御区間において弁開度が増加しているにも拘わらず、弁体に負荷される閉弁方向の力が一時的にでも減少してしまうような場合には、冷媒の圧力による開弁方向の力がその減少の起点となる力を上回ったときに、弁体が全開位置に急激に動作する。一方、その全開状態により冷媒の圧力が小さくなると、弁体は再び全閉位置へと動作する。このような弁体の動作により、弁開度がオン・オフする状態が繰り返され、圧力制御区間における安定した制御が実現できないという問題が生じる。
【0008】
そこで、従来は、その圧力制御区間においては弁開度の増加とともにスプリングの付勢力を増加させるようにし、スプリングとソレノイドによる閉弁方向の力と冷媒の圧力による開弁方向の力とがバランスするようにしていた。
【0009】
しかしながら、このようにしてスプリングによる閉弁方向の付勢力を大きくすると、結果的に最大弁開度が小さくなってしまうため、全開時に冷媒流量を十分に確保することができず、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に移行させる際の応答性が悪いという問題があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、圧力制御区間において安定的に動作できるとともに、ソレノイドの非通電時には、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に迅速に移行させることができる可変容量圧縮機用制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記問題を解決するために、可変容量圧縮機の冷媒の吐出容量を制御する可変容量圧縮機用制御弁において、前記可変容量圧縮機のクランク室に連通して前記冷媒を導入又は導出する冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置され、前記弁孔を開閉する弁体と、前記弁体を軸線方向に支持するシャフトと、前記シャフトを介して前記弁体に閉弁方向のソレノイド力を付与するソレノイドと、前記ソレノイド力に対抗する付勢力を生成し、その付勢力と前記ソレノイド力との合力による閉弁方向の力が、前記弁体が閉弁位置から少なくとも圧力制御区間を経た所定位置までリフトする間は一定又は増加し、前記所定位置を越えると減少するように設定された付勢手段と、を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁が提供される。
【0012】
このような可変容量圧縮機用制御弁では、付勢手段による付勢力とソレノイド力との合力による閉弁方向の力が、弁体が閉弁位置から少なくとも圧力制御区間を経た所定位置までリフトする間は一定又は増加する。このため、圧力制御時には、その閉弁方向の力が冷媒圧力により弁体に負荷される開弁方向の力に対抗してバランスする。
【0013】
また、弁開度がさらに増加して弁体が所定位置を越えると、付勢手段による付勢力とソレノイド力との合力による閉弁方向の力が減少するため、相対的に開弁方向の力が大きくなり、全開時の弁開度が大きくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可変容量圧縮機用制御弁によれば、圧力制御区間において弁体に負荷される閉弁方向の力が一定又は増加して、冷媒圧力により弁体に負荷される開弁方向の力にバランスするため、安定した圧力制御を実現することができる。
【0015】
また、弁体が圧力制御区間を経た所定位置を越えると、弁体に負荷される閉弁方向の力が減少することにより全開時の弁開度が大きくなるため、ソレノイドの非通電時において十分な冷媒流量を確保することができ、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に迅速に移行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
図1は、本実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
【0017】
可変容量圧縮機用制御弁1は、図示しない可変容量圧縮機の吐出冷媒の一部をそのクランク室へ流入させるための冷媒流路を開閉する弁構成部2と、その弁構成部2の弁部の開弁量を調整して通過する冷媒流量を制御するためのソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。
【0018】
弁構成部2は、そのボディ10の上部に可変容量圧縮機の吐出室に連通して吐出圧力Pdを受けるポート11が設けられている。このボディ10の上端部には、このポート11を覆うようにストレーナ12が嵌着されている。ポート11は、ボディ10の側部に設けられたポート13と内部で連通している。そのポート13は、可変容量圧縮機のクランク室に連通し、そのクランク室に制御された圧力(「クランク圧力」という)Pcを導出する。
【0019】
ポート11とポート13とを連通する冷媒通路には、円筒状の弁座形成部材14が嵌入されており、その内部通路により弁孔15が形成され、そのクランク室側の端部内周縁により弁座16が形成されている。
【0020】
また、この弁座16に吐出圧力Pdを導出する側から対向して、弁体17が接離自在に配置されている。弁体17は、中央にガイド部18を有する長尺円柱状の本体を有し、このガイド部18が、ボディ10に設けられたガイド孔19に摺動可能に挿通されている。弁体17の一端は、弁孔15の下流側でクランク室に連通する圧力室51に配置され、その弁孔15に接離してこれを開閉する。また、弁体17のガイド部18の下方には、細径部を隔ててフランジ状のフランジ部20が形成され、同一軸線上に配置された長尺状のシャフト21により軸線方向に支持されている。この弁体17は、細径部を除く断面積が弁孔15の断面積とほぼ等しくなっており、弁孔15を閉じる際にその一端部が弁孔15内に部分的に挿通されるいわゆるスプール弁体となっている。
【0021】
また、ボディ10の中央よりやや下方には、可変容量圧縮機の吸入室に連通して吸入圧力Psを受けるポート23が形成され、ボディ10の下端中央に設けられた所定深さの開口孔24に連通している。この開口孔24は、吸入圧力Psが導入される圧力室52を形成し、弁体17とシャフト21との当接部が配置される。
【0022】
一方、ソレノイド3は、そのケース31内に固定されたコア32と、弁構成部2を開閉制御するためにシャフト21を介して弁体17を進退させるプランジャ33と、外部からの供給電流によりコア32及びプランジャ33を含む磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。
【0023】
コア32は、その上端部にねじ部が設けられており、そのねじ部がボディ10の開口孔24に設けられたねじ部に螺合することによりボディ10に固定されている。コア32には、その中央を軸線方向に貫通してシャフト21の上半部を挿通する挿通孔が設けられており、その上端開口部には、シャフト21の上端部を摺動可能に支持する円筒状のガイド部材35が嵌入されている。このガイド部材35の周縁部には、軸線方向に貫通する冷媒通路35aが形成されている。
【0024】
コア32の下半部には下端が閉じた有底スリーブ36の上半部が外挿され、その有底スリーブ36内においては、プランジャ33がシャフト21に一体化され、コア32の下方で軸線方向に進退可能に支持されている。有底スリーブ36は、その上端がコア32の中央部に周設された溝部に嵌着されている。また、有底スリーブ36とコア32との間には、断面ひょうたん形状のシール部材37が配置され、有底スリーブ36の内部を気密に保持している。
【0025】
また、有底スリーブ36内の下端部には軸受部材38が固定配設され、シャフト21の下端部を摺動可能に支持している。シャフト21の長手方向の下部には、プランジャ33が嵌着されている。プランジャ33は、その上端面中央に設けられた孔部に円筒状の座面形成部材39が圧入されており、コア32と座面形成部材39との間に介装されたスプリングSP1(第1スプリング)によって下方に付勢される一方、軸受部材38との間に介装されたスプリングSP2(第2スプリング)により上方に付勢されている。そして、座面形成部材39のプランジャ33の孔部への圧入量を調整することにより、スプリングSP1がプランジャ33に付与するばね荷重を設定でき、また、弁開度ひいては磁気ギャップが大きくなってスプリングSP1がフリー(つまりほぼ自然長)となる軸線方向の位置を設定できるようになっている。
【0026】
また、ボディ10のガイド孔19の下端開口部近傍と弁体17のフランジ部20との間には、上方に向って拡径化する円錐状のスプリングSP3(第3スプリング)が介装されて弁体17を開弁方向に付勢し、弁体17、シャフト21及びプランジャ33が一体に動作できるようになっている。
【0027】
さらに、有底スリーブ36の外周には、電磁コイル34が配置され、これに給電するためのハーネス42が外部に導出されている。
次に、可変容量圧縮機用制御弁の弁体に負荷される力の特性について説明する。図2は、弁体に負荷される軸線方向の力の関係を表すグラフである。同図の横軸は、プランジャとコアとの間に形成される磁気ギャップの大きさ(弁開度の大きさ、つまり弁体17のリフト量に対応する)を表し、縦軸は、弁体に負荷される閉弁方向を正とした各力の大きさを表している。なお、ここでいう磁気ギャップ及び力の正の方向については、図1に示されている。
【0028】
図2に示すように、ここではソレノイド3の吸引力特性として、その通電時の電流値(I)を0.2A,0.4A,0.6A,0.8Aと変化させたときのソレノイド力を一点鎖線にて表している。また、各スプリングSP1,SP2,SP3によるばね荷重、及びその合力(SP1+SP2+SP3)を細い実線にて表している。そして、各電流値に対応したソレノイド力とばね荷重の合力との総和である総合力の特性を太い実線にて表している。
【0029】
同図からも分かるように、本実施の形態では、弁体17に対し、スプリングSP1及びスプリングSP3は開弁方向の力(つまり負の力)を作用させ、スプリングSP2及びソレノイド3は、閉弁方向の力(つまり正の力)を作用させる。そして、スプリングSP1は、そのばね定数がスプリングSP2,SP3のばね定数よりも大きく、そのばね荷重が実際に圧力制御が行われる圧力制御区間の終点位置まで作用するように構成されている。なお、ここでいう「圧力制御区間」とは、ソレノイド3が通電状態で弁体17に負荷される力がバランスした状態において、弁体17が圧力制御により軸線方向に変位する区間(つまり、弁体17の弁座16からのリフト位置)を意味する。
【0030】
すなわち、弁体17が圧力制御区間の終点位置までリフトされたときにスプリングSP1がフリーとなるように、上述した座面形成部材39のプランジャ33の孔部への圧入量が調整されている。したがって、弁体17が閉弁状態からリフトされ、磁気ギャップが大きくなるにつれて圧縮されていたスプリングSP1が弾性復帰により伸長してそのばね荷重が小さくなっていく。そして、スプリングSP1は、弁体17が圧力制御区間の終点位置に変位するとほぼ自然長となり、その弾性力を失う。このため、弁体17には、スプリングSP1による力が閉弁位置から圧力制御区間の終点位置まで作用し、それ以降は作用しない。その結果、ばね荷重の合力(SP1+SP2+SP3)は、その終点位置からその傾斜が緩やかとなる折線状に変化する。
【0031】
このため、このばね荷重の合力と各電流値におけるソレノイド力との総合力による閉弁方向の力は、図示のように、弁体17が閉弁位置から圧力制御区間の終点位置までリフトする間は増加し、その終点位置を越えると減少する特性を有する。したがって、弁体17が圧力制御区間にあるときには、弁開度の増加とともにばね荷重とソレノイド力との総合力が増加するため、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)による開弁方向の力が多少変動したとしても、この総合力とバランスする。このため、ソレノイド3への通電がオフにされてもいないのに、その圧力制御区間において弁体17が突然その最大開度位置に変位して弁開度が全開状態になってしまうこともない。
【0032】
一方、弁開度がさらに増加して弁体17の動作が圧力制御区間の終点位置を越えると、ばね荷重の合力とソレノイド力との総合力による閉弁方向の力が減少するため、相対的に開弁方向の力が大きくなり、全開時の弁開度が大きくなる。
【0033】
図1に戻り、以上の構成の可変容量圧縮機用制御弁1において、弁体17の受圧面積と弁孔15の断面積とが等しいため、弁体17の軸線方向にはクランク圧力Pcが実質的に作用しない。このため、弁体17は、純粋に吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧を感知して、弁部の開閉方向に動作することになる。
【0034】
また、弁体17に対して開弁方向の付勢力を付与するスプリングSP1及びスプリングSP3によるばね荷重は、閉弁方向の付勢力を付与するスプリングSP2のばね荷重よりも大きく設定されている。このため、ソレノイド3が非通電のときには、弁体17が弁座16から離間して弁部が全開状態に保持される。このとき、可変容量圧縮機の吐出室からポート11に導入された吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート13からクランク室へと流れることになる。したがって、可変容量圧縮機は、クランク圧力Pcが吐出圧力Pdに近い圧力になるため、吐出容量最小の運転を行うことになる。
【0035】
一方、自動車用空調装置の起動時又は冷房負荷が最大のときには、ソレノイド3に供給される電流値は最大になる。このとき、プランジャ33は、コア32に最大の吸引力で吸引されることになるため、弁体17は、スプリングSP1及びスプリングSP3の付勢力に抗してプランジャ33に固定されたシャフト21によって閉弁方向に押され、弁座16に着座して弁部が全閉状態となる。このとき、ポート11に導入される吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全閉の弁部によって阻止されるので、可変容量圧縮機は、クランク圧力Pcが吸入圧力Psに近い圧力になって、吐出容量最大の運転を行うことになる。
【0036】
ここで、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定されているときには、弁体17は、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧による力と、スプリングSP1及びスプリングSP3のばね荷重とによる開弁方向の力と、スプリングSP2のばね荷重及びソレノイド力による閉弁方向の力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0037】
このバランスが取れた状態で、エンジンの回転数が上がるなどして可変容量圧縮機の回転数が上がり、吐出容量が増えたとすると、吐出圧力Pdが上がって吸入圧力Psが下がるので、その差圧(Pd−Ps)が大きくなり、弁体17には開弁方向の力が作用し、弁体17は、さらにリフトして吐出室からクランク室へ流す冷媒の流量を増やすことになる。これにより、クランク圧力Pcが上昇し、可変容量圧縮機は、その吐出容量を減少させる方向に動作し、差圧(Pd−Ps)がソレノイド3によって設定された所定値になるように制御される。このとき、差圧(Pd−Ps)がこの所定値になる過程で多少変動したとしても、その圧力制御区間においては閉弁方向の力が増加するように設定されているため、弁体17が急に全開状態に変位することはなく、安定した圧力制御が実現される。一方、エンジンの回転数が低下した場合は、その逆の動作をし、可変容量圧縮機は、差圧(Pd−Ps)がソレノイド3によって設定された所定値になるように制御される。
【0038】
以上に説明したように、可変容量圧縮機用制御弁1においては、圧力制御区間において弁体17に負荷される閉弁方向の力が増加して、冷媒圧力により弁体17に負荷される開弁方向の力にバランスするため、安定した圧力制御を実現することができる。
【0039】
また、弁体17が圧力制御区間の終点位置を越えると、弁体17に負荷される閉弁方向の力が減少することにより全開時の弁開度が大きくなるため、ソレノイド3の非通電時において十分な冷媒流量を確保することができ、可変容量圧縮機を吐出容量最小の運転に迅速に移行させることができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、可変容量圧縮機用制御弁を吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧が一定になるように制御して吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を変える制御弁として構成した例を示したが、例えばクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧が一定になるように制御してクランク室から吸入室に導出する冷媒の流量を変える制御弁として構成してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、各スプリングの付勢力とソレノイド力との合力による閉弁方向の力が、弁体17が閉弁位置から圧力制御区間の終点位置までリフトする間は増加するように設定した例を示したが、その閉弁方向の力が増加する区間が圧力制御区間の終点位置を越えた所定位置になるように設定してもよい。また、増加ではなくほぼ一定になるように設定してもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、座面形成部材39をプランジャ33側に設けた例を示したが、コア32側に設けてもよいし、双方に設けてもよい。
さらに、弁体17の形状を全長にわたってほぼ同断面積の円柱形状としたが、弁孔15近傍の上端部の断面積を大きくして、弁孔15に着脱する構成としてもよい。また、弁体17は、ピストンロッドとしての機能も有するため、弁孔15に接離する弁体部に同軸状のピストンロッドを固定した態様として構成してもよい。また、弁体17の下端部を軸線方向に短いフランジ部20として構成した例を示したが、下方に長く形成してもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、弁体17に負荷される力の特性を左右する付勢手段をスプリングSP1,SP2,SP3により構成した例を示したが、他の弾性部材その他の付勢手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
【図2】弁体に負荷される軸線方向の力の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1 可変容量圧縮機用制御弁
2 弁構成部
3 ソレノイド
10 ボディ
15 弁孔
16 弁座
17 弁体
21 シャフト
32 コア
33 プランジャ
34 電磁コイル
38 軸受部材
39 座面形成部材
SP1,SP2,SP3 スプリング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量圧縮機の冷媒の吐出容量を制御する可変容量圧縮機用制御弁において、
前記可変容量圧縮機のクランク室に連通して前記冷媒を導入又は導出する冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置され、前記弁孔を開閉する弁体と、
前記弁体を軸線方向に支持するシャフトと、
前記シャフトを介して前記弁体に閉弁方向のソレノイド力を付与するソレノイドと、
前記ソレノイド力に対抗する付勢力を生成し、その付勢力と前記ソレノイド力との合力による閉弁方向の力が、前記弁体が閉弁位置から少なくとも圧力制御区間を経た所定位置までリフトする間は一定又は増加し、前記所定位置を越えると減少するように設定された付勢手段と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項2】
吐出室の吐出圧力と吸入室の吸入圧力との差圧を所定値に保つように前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量を制御するように構成され、
前記弁孔が前記吐出室と前記クランク室とを連通させる冷媒通路を形成し、前記弁体が前記弁孔に前記クランク室側から接離するように配置されたこと、
を特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項3】
前記ソレノイドは、前記シャフトを同軸状に内挿するコアと、前記コアの前記弁体と反対側に配置され、前記シャフトと一体に動作して前記弁体に閉弁方向の駆動力を伝達するプランジャとを有し、
前記付勢手段は、少なくとも前記コアと前記プランジャとの間に介装されて前記プランジャを開弁方向に付勢する第1スプリングと、前記プランジャの前記コアと反対側に配置されて前記プランジャを閉弁方向に付勢する第2スプリングとを有し、
前記第1スプリングが、前記弁体が前記閉弁位置から前記所定位置までリフトする間は前記プランジャに付勢力を及ぼし、前記所定位置を越えるとフリーになるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項4】
前記コア及び前記プランジャの少なくとも一方に、前記第1スプリングに対向して軸線方向に位置調整可能な座面形成部材が設けられ、
前記座面形成部材の軸線方向の位置を調整することにより、前記第1スプリングがフリーとなる位置を設定できるように構成されたことを特徴とする請求項3記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項5】
前記座面形成部材は、前記プランジャの端面に形成された孔部に圧入され、その圧入量を調整することにより、前記第1スプリングがフリーとなる位置を設定できるように構成されたことを特徴とする請求項4記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項6】
前記付勢手段は、
さらに前記弁体を開弁方向に付勢する第3スプリングを有し、
前記ソレノイドへの通電がオフにされて前記第1スプリングがフリーとなった以降において、前記第2スプリングと前記第3スプリングの合力により、前記弁体が予め設定した最大弁開度となる位置までリフトされるように設定されたことを特徴とする請求項4記載の可変容量圧縮機用制御弁。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−194114(P2006−194114A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4871(P2005−4871)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】