説明

可変容量圧縮機

【課題】 プーリーを介して外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構とを備える可変容量圧縮機であって、磁性体の磁歪を利用せずに負荷トルクを検知できる可変容量圧縮機を提供する。
【解決手段】 外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構と、圧縮動作の反作用として回転軸に働く負荷トルクに対応する軸力を発生させる軸力発生手段と、前記軸力を検知して電気信号に変換する検知手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プーリーを介して外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構と、圧縮動作の反作用として回転軸に働く負荷トルクによるプーリーの捩れを磁性棒の軸歪ひいては磁歪に変換し当該磁歪を電気信号に変換する負荷トルク検知手段とを備える可変容量圧縮機が特許文献1に開示されている。
文献1の可変容量圧縮機においては、可変容量圧縮機の負荷トルクを把握できるので、当該負荷トルクに応じた適正トルクを発生させるように外部駆動源を制御することにより、外部駆動源の消費エネルギーが過大になるのを防止できる。
【特許文献1】特開2001−132634
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の圧縮機には、圧縮機の近傍に発電機やモーター等の変動する磁場を発生させる物体が存在すると、磁性棒の磁歪に影響が生じ、負荷トルクの検知精度が低下するという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、プーリーを介して外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構とを備える可変容量圧縮機であって、磁性体の磁歪を利用せずに負荷トルクを検知できる可変容量圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構と、圧縮動作の反作用として回転軸に働く負荷トルクに対応する軸力を発生させる軸力発生手段と、前記軸力を検知して電気信号に変換する検知手段とを備えることを特徴とする可変容量圧縮機を提供する。
本発明に係る可変容量圧縮機においては、負荷トルクに応じた軸力を発生させ、当該軸力を検知することにより、磁性体の磁歪を利用することなく、負荷トルクを検知することができる。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、軸力発生手段は、径方向テーパ状凹部が内周縁に形成されると共に外部駆動源により回転駆動されるリングと、径方向且つ回転軸延在方向凹部が外周縁に形成されると共に回転軸に固定されたハブと、径方向テーパ状凹部と径方向且つ回転軸延在方向凹部とに係合可能なボールと、ボールに当接してボールを径方向外方へ且つ前記回転軸延在方向へ押圧可能な斜面が形成された押圧リングと、押圧リングを前記回転軸延在方向へ付勢するバネとを有し、検知手段は押圧リングとバネとの間で働く回転軸延在方向の軸力を電気信号に変換する荷重センサーを有する。
リングの径方向テーパ状凹部と、ハブの径方向且つ回転軸延在方向凹部との間で、ボールを介してトルク伝達が行なわれ、外部駆動源の動力が回転軸に伝達される。負荷トルクに応じた法線力がボールとリングの径方向テーパ状凹部との当接部に発生し、当該法線力を受けたボールは、押圧リングの斜面に当接しつつハブの径方向且つ回転軸延在方向凹部に押し込まれる。この結果、ボールから前記回転軸延在方向と逆方向の力を受けて押圧リングがバネの方向へ押され、押圧リングとバネとの間に負荷トルに応じた回転軸延在方向の軸力が発生する。当該軸力が荷重センサーによって電気信号に変換されることにより、負荷トルクが検知される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る可変容量圧縮機においては、負荷トルクに応じた軸力を発生させ、当該軸力を検知することにより、磁性体の磁歪を利用することなく、負荷トルクを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施例に係る可変容量圧縮機を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1に示すように、車両空調装置用可変容量斜板式圧縮機Aは、回転軸10と、回転軸10に固定されたローター11と、摺動可能に且つ傾角可変に回転軸10に外嵌合する斜板12と、摺動可能に回転軸10に外嵌合しローター11と斜板12とを連結するスプリング13とを備えている。斜板12は、斜板12の回転軸10に対する傾角変動を許容するリンク機構14を介してローター11に連結され、ローター11ひいては回転軸10に同期して回転する。
斜板12の周縁部に摺接する一対のシュー15を介してピストン16が斜板12に係留されている。ピストン16は、シリンダブロック17に形成されたシリンダボア17aに挿入されている。
周方向に互いに間隔を隔てて複数対のシュー15、複数のピストン16、シリンダボア17aが配設されている。
【0009】
回転軸10、ローター11、斜板12を収容するクランク室18をシリンダブロック17と協働して形成する、有底筒状のフロントハウジング19が配設されている。回転軸10は、フロントハウジング19のボス部19aを貫通して外部へ延びている。回転軸10のフロントハウジング貫通部を密封する軸封部材20が配設されている。
回転軸10は、ラジアルベアリング21、22を介して、フロントハウジング19、シリンダブロック17により、回転可能に支持されている。ローター11は、スラストベアリング23を介して、フロントハウジング19により回転可能に支持されている。
【0010】
吸入室24aと吐出室24bとを形成する、有底筒状のシリンダヘッド25が配設されている。
シリンダブロック17とシリンダヘッド25との間に、ボア17aに連通する吸入穴26aと吐出穴26bとが形成された弁板26が配設されている。弁板26は吸入穴26aを開閉する吸入弁と、吐出穴26bを開閉する吐出弁とを装備している。
吸入室24aは、シリンダヘッド25の囲壁に形成された吸入ポートに連通すると共に、吸入穴26aと吸入弁とを介してシリンダボア17aに連通している。吸入ポートは、冷媒通路を介して図示しない車両空調装置の蒸発器に連結している。
吐出室24bは、シリンダヘッド25の囲壁に形成された吐出ポートに連通すると共に、吐出弁と吐出穴26bとを介してシリンダボア17aに連通している。吐出ポートは、冷媒通路を介して図示しない車両空調装置の凝縮器に連結している。
回転軸10、ローター11、斜板12、シュー15、ピストン16、シリンダボア17a、弁板26、吸入弁、吐出弁等により、吐出容量可変の圧縮機構が形成されている。
【0011】
シリンダヘッド25内に容量制御弁27が配設されている。容量制御弁27は、吐出室24bとクランク室18との間で延在する連通路28の途上に配設されている。クランク室18と吸入室24aとは図示しないオリフィス通路を介して連通している。
フロントハウジング19、シリンダブロック17、弁板26、シリンダヘッド25は、通しボルト29により一体に組付けられている。
【0012】
フロントハウジングのボス部19aに動力伝達機構30が取り付けられている。
動力伝達機構30は、図2に示すように、玉軸受31を有している。玉軸受31の内輪はボス部19aに固定され、玉軸受31の外輪にプーリー32が固定されている。プーリー32は図示しない無端ベルトを介して車両エンジンに連結されている。プーリー32の側面にアウターリング33が複数のボルト34によって固定され、アウターリング33の内面に加硫接着されたゴムリング35を介してインナーリング36が固定されている。
図2、3に示すように、インナーリング36の内周縁に、ボール37を収容するための径方向テーパ状凹部36aが形成されている。径方向テーパ状凹部36aは、左右対称の一対の斜面36bを有している。周方向に互いに間隔を隔てて、複数の径方向テーパ状凹部36aが形成されている。
回転軸10に、ハブ38の軸取付部38aがナット39によって固定されている。ハブ38の外周縁に、ボール37を収容するための径方向且つ回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)凹部38bが形成されている。周方向に互いに間隔を隔てて、複数の径方向且つ回転軸延在方向凹部38bが形成されている。
図2に示すように、ハブ38の突出円筒部38cに、押圧リング40と皿バネ41と圧電素子42とが外嵌合し、ナット43が螺合している。押圧リング40は、ボール37に当接してボール37を径方向外方へ且つ前記回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)へ押圧可能な斜面40aが形成されている。皿バネ41は押圧リング40を前記回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)へ付勢している。ナット43が締めつけられ、押圧リング40は、図2、3に示すように、ボール37を径方向テーパ状凹部36aの最奥部と径方向且つ回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)凹部38bの入口部とに押し当てている。
プーリー32のフロントハウジング19に対峙する内端部にロータリトランス44の一次コイル44aが固定され、一次コイル44aに対峙してフロントハウジング19にロータリトランス44の二次コイル44bが固定されている。一次コイル44aは圧電素子42に接続され、二次コイル44bは図示しない検出処理回路を介して図示しない車両空調装置の制御装置に接続されている。
【0013】
可変容量斜板式圧縮機Aにおいては、図示しない車両エンジンの回転動力が動力伝達機構30を介して回転軸10に伝達され、回転軸10の回転がローター11、リンク機構14を介して斜板12に伝達される。斜板12の回転に伴う斜板12周縁部の回転軸10延在方向の往復動が、シュー15を介してピストン16に伝達され、ピストン16がボア17a内で往復動する。車両空調装置の蒸発器から還流した冷媒ガスが、吸入ポートと吸入室24aと吸入孔26aと吸入弁とを通ってシリンダボア17aへ吸入され、シリンダボア17a内で圧縮され、吐出穴26bと吐出弁とを通って吐出室24bへ吐出し、吐出ポートを通って車両空調装置の凝縮器へ圧送される。
容量制御弁27により、吸入室24a内の冷媒ガス圧力、或いは吐出室24b内の冷媒ガス圧力と吸入室24a内の冷媒ガス圧力との差圧、に応じて連通路28が開閉制御され、吐出室24b内の冷媒ガスのクランク室18への導入が切り入りされてクランク室18の内圧が可変制御され、圧縮機Aの吐出容量が可変制御される。この結果、吸入室24a内の冷媒ガス圧力、或いは吐出室24b内の冷媒ガス圧力と吸入室24a内の冷媒ガス圧力との差圧が所望値に制御され、所望の車両空調が実現される。
【0014】
車両エンジンに駆動されたインナーリング36が、図3に白抜き矢印で示す方向へ回転すると、インナーリング36の内周縁に形成された径方向テーパ状凹部36aと、ハブ38の外周縁に形成された径方向且つ回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)凹部38bとの間で、ボール37を介してトルク伝達が行なわれ、車両エンジンの動力が回転軸10に伝達される。
圧縮機Aの負荷トルクに応じた法線力Fがボール37とインナーリング36の径方向テーパ状凹部36aの斜面36bとの当接部に発生し、法線力Fを受けたボール37は、押圧リング40の斜面40aに当接しつつ、ハブ38の径方向且つ回転軸延在方向(クランク室18へ接近する側への回転軸延在方向)凹部38bに押し込まれる。この結果、ボール37から前記回転軸延在方向と逆方向(クランク室18から遠ざかる側の回転軸延在方向)の力を受けて押圧リング40が皿バネ41の方向へ押され、押圧リング40と皿バネ41との間に圧縮機Aの負荷トルクに応じた回転軸延在方向の軸力が発生する。当該軸力は圧電素子42によって電気信号に変換される。
前記電気信号はロータリトランスの一次コイル44aに伝達され、二次コイル44bに電気信号を誘発する。二次コイル44bに発生した電気信号は検出処理回路を介して車両空調装置の制御装置に伝達され、車両空調装置の制御装置は、圧縮機Aの負荷トルクを認識する。
車両空調装置の制御装置から車両制御装置へ圧縮機Aの負荷トルク情報が伝達され、車両制御装置は、圧縮機Aの負荷トルクに応じた適正トルクを発生させるように車両エンジンを制御する。この結果、車両エンジンの消費エネルギーが過大になるのが防止される。
【0015】
上記説明から分かるように、圧縮機Aの負荷トルクに応じた軸力を発生させ、当該軸力を検知することにより、磁性体の磁歪を利用することなく、前記負荷トルクを検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、可変容量圧縮機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る車両空調装置用可変容量斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2のIII−III矢視図である。
【符号の説明】
【0018】
10 回転軸
11 ローター
12 斜板
14 リンク機構
16 ピストン
17 シリンダブロック
17a シリンダボア
18 クランク室
19 フロントハウジング
25 シリンダヘッド
27 容量制御弁
30 動力伝達機構
32 プーリー
36 インナーリング
36a 径方向凹部
37 ボール
38 ハブ
38b 径方向且つ回転軸延在方向凹部
40 押圧リング
41 皿バネ
42 圧電素子
43 ナット
44 ロータリトランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部駆動源から動力を供給される回転軸と、回転軸により駆動される吐出容量可変の圧縮機構と、圧縮動作の反作用として回転軸に働く負荷トルクに対応する軸力を発生させる軸力発生手段と、前記軸力を検知して電気信号に変換する検知手段とを備えることを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項2】
軸力発生手段は、径方向テーパ状凹部が内周縁に形成されると共に外部駆動源により回転駆動されるリングと、径方向且つ回転軸延在方向凹部が外周縁に形成されると共に回転軸に固定されたハブと、径方向テーパ状凹部と径方向且つ回転軸延在方向凹部とに係合可能なボールと、ボールに当接してボールを径方向外方へ且つ前記回転軸延在方向へ押圧可能な斜面が形成された押圧リングと、押圧リングを前記回転軸延在方向へ付勢するバネとを有し、検知手段は押圧リングとバネとの間で働く回転軸延在方向の軸力を電気信号に変換する荷重センサーを有することを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−152847(P2006−152847A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341550(P2004−341550)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】