説明

可変容量型タービン

【課題】漏れ流れが発生したとしても、漏れ流れによるタービン効率の低下を抑制し、結果として、タービン効率を向上させることができる可変容量型タービンを提供する。
【解決手段】本発明の可変容量型タービンは、回転翼3に導入される気体の流量を増減できるノズル5を備え、ノズル5は、略環状を呈する一対の導入壁と、一対の導入壁の間に回転自在に設けられる複数の可変翼53とを有する可変容量型タービンであって、少なくとも一方の導入壁51から他方の導入壁に向かって突出し、導入壁51の径方向に関して可変翼53の内側に位置する凸部55を有し、凸部55は、可変翼53と一方の導入壁51との間の隙間から漏出する気体(漏れ流れ)の流動方向を、隣接する複数の可変翼の間における開口部S3を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位させるという構成を採用する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の流動により回転翼を回転させるタービンに関わり、特に可変容量型のタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンに空気を過給するターボチャージャ等に、エンジンの排気ガス(気体)の流動により回転翼を回転させるタービンが用いられている。タービンの回転翼は遠心圧縮機に連結され、遠心圧縮機がエンジンに圧縮空気を供給し、エンジンの性能を向上させる。また、低回転域から高回転域までの広い範囲に亘り、エンジンの性能向上を図ることのできる可変容量型タービンも使用されている。
上記可変容量型タービンは、一対の略環状を呈する導入壁と、それら導入壁の間に回転自在に設けられる複数の可変翼とを有している。隣接する複数の可変翼の間には開口部が形成され、気体は上記開口部を通って回転翼に導入される。可変容量型タービンは、可変翼の向きを変え、開口部の大きさを変化させることで、回転翼に導入される気体の流量を増減させることができる。なお、可変翼を滑らかに回転させるために、可変翼と導入壁との間には適宜隙間が設けられている。
【0003】
ところで、上記隙間が設けられているために、一部の気体は上記隙間から漏出する。漏出した気体(漏れ流れ)は上記開口部を通る気体とは異なる方向で流動するため、回転翼を回転させるために漏れ流れの流動を利用することは難しく、また、漏れ流れがタービン内における気体の流動を乱すことによる損失も発生する。そのため、漏れ流れはタービンの効率を低下させており、タービン効率の更なる向上のためには上記漏れ流れを抑制する等の対策が必要である。
【0004】
ここで、特許文献1には、上記隙間からの漏れ流れを抑制するための可変翼が開示されている。
特許文献1に開示された可変翼では、導入壁に対向する可変翼の両端部端面がその中央部の断面よりも広く形成され、両端部端面は導入壁と平行に形成されている。この可変翼における両端部端面は、従来の可変翼に比べ大きな面積を持つため、上記端面と導入壁との間の隙間を流動する気体には大きな流動抵抗が生じ、漏れ流れが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−229815号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された可変翼は、その両端部端面が中央部断面よりも広く形成されていることから、可変翼の向きを変えたときに、隣接する可変翼の両端部が干渉する虞がある。そのため、可変翼の回転範囲が制限され、可変容量型タービンにおける気体の流量調整に必要な可変翼の回転範囲を確保できない場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、漏れ流れが発生したとしても、漏れ流れによるタービン効率の低下を抑制し、結果として、タービン効率を向上させることができる可変容量型タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の可変容量型タービンは、回転翼に導入される気体の流量を増減できるノズルを備え、該ノズルは、略環状を呈する一対の導入壁と、一対の導入壁の間に回転自在に設けられる複数の可変翼とを有する可変容量型タービンであって、少なくとも一方の導入壁から他方の導入壁に向かって突出し、導入壁の径方向に関して可変翼の内側に位置し、かつ、可変翼と一方の導入壁との間の隙間から漏出する気体の流動を規制することで、隙間から漏出する気体の流動方向を、隣接する複数の可変翼の間における開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位させる凸部を有するという構成を採用する。
【0009】
このような構成を採用する本発明では、上記漏れ流れの流動方向が、上記開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位する。よって、本発明では、回転翼を回転させるために漏れ流れの流動を利用することが可能となる。
また、本発明では、漏れ流れが凸部における上記他方の導入壁側の端部を通って下流側に流れた場合、漏れ流れは上記一方の導入壁から離間する。離間した漏れ流れは、回転翼周辺の他の漏れ流れ等と合流することなく、回転翼に直接導入される。よって、本発明では、上記隙間からの漏れ流れと他の漏れ流れとが合流するときに生じる気体の流動乱れを抑制でき、この気体の流動乱れによる損失が生じない。
【0010】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部は、可変翼が開口部を最も狭くする位置にあるときの、可変翼における下流側先端部の径方向内側近傍に形成され、少なくとも凸部の下流側先端部は、可変翼が開口部を最も狭くする位置にあるときの、該開口部を通過する気体の流動方向に略沿って延在しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、可変翼における下流側先端部の径方向内側近傍を流動する漏れ流れが、凸部の下流側先端部に規制され、開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位する。
【0011】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部の上流側先端部は、可変翼が開口部を最も狭くする位置にあるときの、可変翼の下流側先端部と一方の導入壁との間の隙間から漏出する気体の流動方向に略沿って延在しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、可変翼における下流側先端部の径方向内側近傍を流動する漏れ流れが、抵抗なく凸部の上流側先端部に沿って流動する。
【0012】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部は、その上流側先端部から下流側先端部に向かうに従って、その延在方向が漸次変化するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、凸部の上流側先端部に沿って流動している漏れ流れが、抵抗なく凸部の下流側先端部に沿って流動する。
【0013】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部は、回転翼を囲んで略環状に形成されるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、可変翼と上記一方の導入壁との間の隙間から漏出する漏れ流れが、略環状に形成された凸部に規制され、開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位する。
【0014】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部の一方の導入壁からの突出高さは、一対の導入壁の間隔に対して5%以上10%以下であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、凸部の突出高さが一対の導入壁の間隔に対して5%以上であるために、漏れ流れが、開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位する。また、本発明では、凸部の突出高さが上記間隔に対して10%以下であるために、開口部を通過する気体の流動を阻害しない。
【0015】
また、本発明の可変容量型タービンは、凸部の気体が流動する流動面は、一方の導入壁から離間するに従って漸次径方向外側に向かって傾斜しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、漏れ流れが、凸部における上記他方の導入壁側の端部を乗り越えて下流側に流れることが難しく、開口部を通過する気体の流動方向に沿う向きに変位しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、可変翼と導入壁との間の隙間から漏出する漏れ流れが発生したとしても、回転翼を回転させるために漏れ流れの流動を利用することができ、また、漏れ流れが生じることによる気体の流動乱れを抑制することができることから、従来の可変容量型タービンに比べタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る可変容量型タービンAの全体構成を示す概略図である。
【図2】図1におけるノズル5周辺の拡大図である。
【図3】第1の実施形態におけるノズル5の正面図である。
【図4】図3におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。
【図5】第1の実施形態における開口部S3が最小であるときの隙間S1を通過して漏出する漏れ流れの流動方向を示す概略図である。
【図6】第2の実施形態におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。
【図7】第3の実施形態におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。
【図8】第1、第2及び第3の実施形態における凸部55、第2凸部56及び第3凸部57の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1の実施形態に係る可変容量型タービンAの構成を、図1から図4を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る可変容量型タービンAの全体構成を示す概略図である。図2は、図1におけるノズル5周辺の拡大図である。図3は、第1の実施形態におけるノズル5の正面図である。図4は、図3におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。なお、上記図内における矢印Fは前方を示す。
【0019】
本実施形態に係る可変容量型タービンAは、不図示のエンジンから導かれる排気ガス(気体)の運動エネルギーを利用してエンジンに空気を過給する、可変容量型のターボチャージャ(不図示)に用いられるものである。
図1に示すように、可変容量型タービンAは、タービンハウジング1と、タービンハウジング1の前方側に一体的に接続される軸受けハウジング2とを有している。
【0020】
タービンハウジング1は、インペラ(回転翼)3と、タービンスクロール流路4と、ノズル5と、排出口6とを有している。
【0021】
インペラ3は、タービンハウジング1の略中央部に、前後方向で延びる所定の軸回りに回転自在に設けられている。インペラ3は、略円錐状を呈するベース31の外周面に複数の翼32が周方向で略等間隔に配設された構成となっており、ベース31の底面部(前方側端部)には、前後方向で延びるインペラ軸33が一体的に接続されている。なお、インペラ軸33は、軸受けハウジング2に軸受け21を介して回転自在に設けられ、不図示の遠心圧縮機に一体的に接続されている。
【0022】
タービンスクロール流路4は、インペラ3をその周方向で囲んで略環状に形成されており、エンジンの排気ガスが導入される流路である。タービンスクロール流路4は、不図示の排気ガス吸入口と接続されている。
【0023】
ノズル5は、インペラ3をその周方向で囲み、かつ、タービンスクロール流路4の径方向内側に設けられ、略環状に形成されている。ノズル5は、タービンスクロール流路4から導入された排気ガスをインペラ3に供給する流路であり、排気ガスの流量を増減することができる。
ノズル5は、略円環状を呈する板状部材である第1リング(導入壁)51及び第2リング(導入壁)52と、第1リング51と第2リング52との間に回転自在に複数設けられるノズルベーン(可変翼)53とを有している。
【0024】
第1リング51と第2リング52とは、互いに対向して設けられ、複数の連結ピン54を介して一体的に接続されている。なお、第2リング52は、第1リング51の前方側に設けられている。
図2に示すように、第1リング51及び第2リング52の互いに対向する面である、第1対向面51a及び第2対向面52bは、いずれも平面状に形成されている。また、第1リング51及び第2リング52には、前後方向で貫通する第1孔部51c及び第2孔部52dが各々形成されている。
【0025】
ノズルベーン53は、略矩形を呈する板状の部材であり、前後方向と直交する方向での断面は、中央部が厚く両端部が薄い、いわゆる翼形状に形成されている(図4参照)。ノズルベーン53の前後方向での両端部には、第1対向面51a及び第2対向面52bに各々平行する第1端面53a及び第2端面53bが形成されている。
第1対向面51aと第1端面53aとの間には、ノズルベーン53を滑らかに回転させるための隙間S1が形成され、第2対向面52bと第2端面53bとの間には、同様に隙間S2が形成されている。
第1端面53a及び第2端面53bからは、それぞれ第1軸53c及び第2軸53dが前後方向に突出しており、第1軸53c及び第2軸53dは、第1孔部51c及び第2孔部52dに各々回転自在に嵌合している。
【0026】
図3に示すように、ノズルベーン53は、第1リング51と第2リング52との間に周方向に関して略等間隔で複数設けられている。隣接する複数のノズルベーン53の間には開口部S3が各々形成されており、ノズルベーン53の向きを変えることで、開口部S3の大きさを変化させることができる。エンジンの排気ガスは、開口部S3を径方向外側から内側に向かって、ノズルベーン53の向きに沿って流動する。なお、図3及び図4において、開口部S3が最小となるときのノズルベーン53の位置を実線で表し、開口部S3が最大となるときのノズルベーン53の位置を二点鎖線で表している。
【0027】
第1リング51の第1対向面51aには、所定の方向で延びる凸部55が複数設けられている。
凸部55は、第1対向面51aから第2リング52に向けて突出しており、開口部S3が最小となるときのノズルベーン53における下流側先端部53eの径方向内側近傍に設けられている。また、図4に示すように、凸部55は、開口部S3が最小であるときの、開口部S3を通過する排気ガスの流動方向を示す矢印Vの方向に略沿って延在している。
図2に示すように、凸部55の第1対向面51aからの突出高さWは、第1対向面51aと第2対向面52bとの間の間隔Dの5%以上10%以下で形成されている。また、凸部55の幅方向断面は、矩形を呈している。
【0028】
図1に示すように、排出口6は、タービンハウジング1内に導入された排気ガスを排出する箇所であり、インペラ3の後方側に設けられている。排出口6は、不図示の有害成分抑制装置(触媒)及び消音装置に接続されている。
ノズル5の前方側には、複数のノズルベーン53を同期して回転させるための駆動部7が設けられている。
【0029】
続いて、本実施形態に係る可変容量型タービンAの動作・作用を説明する。
【0030】
最初に、可変容量型タービンAの動作を説明する。
エンジンから排出された排気ガスが、可変容量型タービンAの吸入口を通ってタービンスクロール流路4に導入される。タービンスクロール流路4は略環状に形成されているため、排気ガスはインペラ3を中心として周方向で回転するように流動する。次に、排気ガスはノズル5の開口部S3を通ってインペラ3の翼32に導入されるのであるが、上記回転流動のためにインペラ3を中心として渦巻くように導入される。この排気ガスの流動により、インペラ3が回転する。
【0031】
インペラ3は、インペラ軸33を介して不図示の遠心圧縮機と接続されているため、遠心圧縮機は空気を圧縮し、圧縮された空気をエンジンに供給する。この供給動作により、エンジンの性能を向上させることができる。
なお、排気ガスがノズル5を通ってインペラ3に導入されるにあたり、ノズルベーン53の向きを変え、開口部S3の大きさを変化させることにより、インペラ3に導入される排気ガスの流量を増減させることができる。このように排気ガスの流量を増減させることで、低回転域から高回転域までの広い範囲に亘り、エンジンの性能向上を図ることができる。
【0032】
インペラ3を回転させた排気ガスは、インペラ3の後方側に流動し、排出口6から排出される。
以上で、可変容量型タービンAの動作が終了する。
【0033】
続いて、本実施形態における凸部55が、隙間S1から漏出する排気ガス(漏れ流れ)の流動方向を変位させる動作・作用を、図5を参照して説明する。
図5は、シミュレーションを用いて解析した、第1の実施形態における開口部S3が最小であるときの隙間S1を通過して漏出する漏れ流れの流動方向を示す概略図である。
【0034】
前述の通り、排気ガスはノズル5の開口部S3を通ってインペラ3に導入される。図4に示すように、例えば開口部S3が最小である場合の開口部S3を通る排気ガスは、矢印Vに示す方向で流動する。
ほとんどの排気ガスは開口部S3を通ってインペラ3に導入されるのであるが、ノズルベーン53と第1リング51及び第2リング52との間には、隙間S1及びS2が各々形成されているため、一部の排気ガスは隙間S1及びS2を通って漏出する。なお、以下の説明では、漏れ流れの流動方向を変位させる動作・作用は、開口部S3が最小となっている場合について記述する。
【0035】
図5に示すように、隙間S1を通過する排気ガスの漏れ流れは、ノズルベーン53の厚さ方向に略沿って流動している。ノズルベーン53の径方向内側に漏出した漏れ流れにおいて、ノズルベーン53の上流側先端部53f側から漏出した漏れ流れは、下流側先端部53e側にその流動方向を変え、ノズルベーン53の下流側先端部53eから漏出した漏れ流れと合流する。これは、隣接する開口部S3を流動する排気ガスによって付勢されるためである。したがって、開口部S3が最小であるときの隙間S1から漏出する漏れ流れは、ノズルベーン53の下流側先端部53eの径方向内側近傍でほぼ集約され、図4に示す矢印v1の方向で流動する。
【0036】
図4に示すように、下流側先端部53eの径方向内側近傍には凸部55が設けられており、また、凸部55の第1対向面51aからの突出高さWも漏れ流れを規制するに適切な高さ(第1対向面51aと第2対向面52bとの間の間隔Dに対して5%以上)で形成されているため、上記漏れ流れを凸部55により規制し、凸部55の延在方向に沿う向きに変位させることができる。したがって、上記漏れ流れは、図4に示す矢印v2の向きで流動する。
凸部55の延在方向は、開口部S3を通る排気ガスの流動方向である矢印Vの向きと略同一に形成されているため、漏れ流れの流動方向である矢印v2の向きは、矢印Vと略同一となる。開口部S3が最小であるときにインペラ3を効率よく回転させるためには、排気ガスが矢印Vの方向でインペラ3に導入されることが必要となるため、矢印v2の向きに変位した漏れ流れの運動エネルギーを、インペラ3を回転させるために利用することができる。
【0037】
なお、図2に示すように、上記漏れ流れはその全てが矢印v2の方向に変位するのではなく、一部の漏れ流れは凸部55の第2リング52側の端部を通って下流側に流動する。この流動方向を、図2中の矢印v3で示している。
凸部55は、第1対向面51aからの突出高さWを有しているため、上記端部を通って下流側に流動した漏れ流れは、第1対向面51aから距離Wだけ離間した位置を流動する。離間して流動する漏れ流れは、インペラ3の翼32周辺の他の漏れ流れ等と合流することなく、翼32に直接導入される。したがって、漏れ流れが合流するときに生じる排気ガスの流動乱れ、及び、この流動乱れによる損失を抑制することができる。
以上で、隙間S1から漏出する漏れ流れの流動方向を変位させる動作が終了する。
【0038】
ところで、図4に示すように、開口部S3の大きさが変化すれば、開口部S3を通って流動する排気ガスの流動方向も変化する。その一方で、凸部55の延在方向は一定であることから、開口部S3が最小であるとき以外では、漏れ流れの運動エネルギーをインペラ3を回転させるために利用することが難しい。
もっとも、開口部S3が最小であるときに、ノズル5における径方向外側の排気ガス内圧と内側の排気ガス内圧との差が最大となるため、隙間S1から漏出する漏れ流れの流量が最大となる。したがって、開口部S3が最小であるときの隙間S1からの漏れ流れを変位させることで、タービン効率に対する改善効果を効果的に得ることができる。
【0039】
なお、排気ガスが矢印Vとは異なった方向で流動している場合は、その流動方向と凸部55の延在方向は異なるのであるが、凸部55の突出高さは第1対向面51aと第2対向面52bとの間の間隔Dに対して10%以下に抑えられているため、開口部S3を通る排気ガスの流動を阻害しない。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、ノズルベーン53と第1リング51との間の隙間S1から漏出する漏れ流れが発生したとしても、インペラ3を回転させるために漏れ流れの流動を利用することができ、また、漏れ流れが生じることによる気体の流動乱れを抑制することができることから、従来の可変容量型タービンに比べタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0041】
〔第2実施形態〕
第2の実施形態に係る可変容量型タービンA2の構成を、図6を参照して説明する。
図6は、第2の実施形態におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。なお、図6において、図4に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る可変容量型タービンA2において、第1の実施形態に係る可変容量型タービンAと異なる点は、第1の実施形態における凸部55が第2凸部56に変更されていることである。したがって、以下の説明では、第2凸部56の構成及び動作・作用についてのみ説明する。なお、ノズルベーン53は、開口部S3を最小とする向きに位置しているものとする。
【0043】
図6に示すように、第2凸部56は、ノズルベーン53の下流側先端部53eの径方向内側近傍に設けられている。また、第2凸部56の延在方向は、その上流側先端部56aと下流側先端部56bとで異なっている。
より詳細には、上流側先端部56aの延在方向は、漏れ流れの流動方向を示す矢印v1の方向と略同一に形成されている。また、下流側先端部56bの延在方向は、開口部S3を通る排気ガスの流動方向を示す矢印Vの方向と略同一に形成されている。なお、第2凸部56の延在方向は、上流側先端部56aから下流側先端部56bに向かうに従って漸次変化している。
【0044】
第2凸部56の第1対向面51aからの突出高さWは、第1対向面51aと第2対向面52bとの間の間隔Dの5%以上10%以下で形成されている。また、第2凸部56の幅方向断面は、矩形を呈している。
【0045】
続いて、本実施形態における第2凸部56を用いて、隙間S1から漏出する漏れ流れの流動方向を変位させる動作・作用を説明する。
【0046】
第1の実施形態と同様に、隙間S1から漏出する漏れ流れは、ノズルベーン53における下流側先端部53eの径方向内側近傍で集約され、矢印v1の方向で流動する(図5参照)。この漏れ流れは、第2凸部56の上流側先端部56aが設けられている箇所に導入されるのであるが、上流側先端部56aは矢印v1に略沿った方向で延在しているので、漏れ流れは抵抗なく上流側先端部56aに沿って流動することができる。
【0047】
次に、漏れ流れは第2凸部56の径方向外側の面に沿って流動する。ここで、第2凸部56の延在方向は、上流側先端部56aから下流側先端部56bに向かうに従って漸次変化しているため、漏れ流れは抵抗なく下流側先端部56bに沿うことができる。下流側先端部56bは、開口部S3を通る排気ガスの流動方向を示す矢印Vの方向と略同一に形成されているため、漏れ流れを矢印Vと略同一の方向、すなわち矢印v2の方向に変位させることができる。
【0048】
なお、矢印v2の方向に変位せず、第2凸部56の第2リング52側の端面から下流側に流れる漏れ流れを、第1対向面51aから離間できることは、第1の実施形態と同様である。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、漏れ流れが第2凸部56に導入されるときに発生する損失や、漏れ流れが矢印v2の向きに変位するときに発生する損失を低減させることができる。したがって、第1の実施形態に比べ、さらにタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0050】
〔第3実施形態〕
第3の実施形態に係る可変容量型タービンA3の構成を、図7を参照して説明する。
図7は、第3の実施形態におけるノズルベーン53周辺の拡大図である。なお、図7において、図4に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係る可変容量型タービンA3において、第1の実施形態に係る可変容量型タービンAと異なる点は、第1の実施形態における凸部55が第3凸部57に変更されていることである。したがって、以下の説明では、第3凸部57の構成及び動作・作用についてのみ説明する。なお、ノズルベーン53は、開口部S3を最小とする向きに位置しているものとする。
【0052】
図7に示すように、第3凸部57は、ノズルベーン53の径方向内側に設けられ、インペラ3を囲んで略環状に形成されている。
【0053】
第3凸部57の第1対向面51aからの突出高さWは、第1対向面51aと第2対向面52bとの間の間隔Dの5%以上10%以下で形成されている。また、第3凸部57の幅方向断面は、矩形を呈している。
【0054】
続いて、本実施形態における第3凸部57を用いて、隙間S1から漏出する漏れ流れの流動方向を変位させる動作・作用を説明する。
【0055】
第1の実施形態と同様に、隙間S1から漏出する漏れ流れは、ノズルベーン53における下流側先端部53eの径方向内側近傍で集約され、矢印v1の方向で流動する(図5参照)。この漏れ流れは、第3凸部57が設けられている箇所に導入されるのであるが、矢印v1は第3凸部57の接線方向と直交しておらず、矢印Vと同様の方向に傾いている。したがって、矢印v1の向きで第3凸部57に導入された漏れ流れを、第3凸部57が規制することにより、矢印Vに沿う向き、すなわち矢印v2の向きに変位させることができる。
【0056】
なお、矢印Vの方向に変位せず、第3凸部57の第2リング52側の端面から下流側に流れる漏れ流れを、第1対向面51aから離間できることは、第1の実施形態と同様である。もっとも、第3凸部57は略環状に形成されているため、いかなる方向から漏れ流れが導入されたとしても、全ての漏れ流れを第1対向面51aから離間させることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、ノズルベーン53と第1リング51との間の隙間S1から漏出する漏れ流れが発生したとしても、インペラ3を回転させるために漏れ流れの流動を利用することができ、また、漏れ流れが生じることによる気体の流動乱れを抑制することができることから、従来の可変容量型タービンに比べタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0058】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、凸部55、第2凸部56及び第3凸部57は、第1対向面51aから突出していたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、第2対向面52bから第1リング51に向けて突出していてもよい。隙間S1だけでなく隙間S2からも漏れ流れは発生するため、この漏れ流れを変位させることでタービン効率を向上させることができる。また、上記凸部を、第1対向面51a及び第2対向面52bのいずれにも設けてよい。
なお、上記凸部を第2対向面52bのみに設けた場合に比べ、第1対向面51aのみに設けた場合は、より大きくタービン効率を向上させることができる。そのため、少なくとも第1対向面51aには上記凸部を設けることが好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では、凸部55、第2凸部56及び第3凸部57の幅方向断面はいずれも矩形を呈していたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば図8に示す形状であってもよい。図8は、第1、第2及び第3の実施形態における凸部55、第2凸部56及び第3凸部57の変形例を示す概略図である。
すなわち、図8に示すように、上記凸部における漏れ流れが流動する流動面58が、第1対向面51aから離間するに従って漸次直交する方向の径方向外側に向かって傾斜しているという構成であってもよい。このような構成を採用することで、漏れ流れが上記凸部の第2リング52側の端部58aを乗り越えて下流側に流れることを抑制でき、結果として、漏れ流れが開口部S3を通過する排気ガスの流動方向に沿う向きに変位しやすくなるという効果がある。
【符号の説明】
【0061】
A、A2、A3…可変容量型タービン、3…インペラ(回転翼)、5…ノズル、51…第1リング(導入壁)、52…第2リング(導入壁)、53…ノズルベーン(可変翼)、53e…下流側先端部、55…凸部、56…第2凸部、56a…上流側先端部、56b…下流側先端部、57…第3凸部、58…流動面、S3…開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼に導入される気体の流量を増減できるノズルを備え、該ノズルは、略環状を呈する一対の導入壁と、前記一対の導入壁の間に回転自在に設けられる複数の可変翼とを有する可変容量型タービンであって、
少なくとも一方の前記導入壁から他方の前記導入壁に向かって突出し、前記導入壁の径方向に関して前記可変翼の内側に位置し、かつ、前記可変翼と前記一方の導入壁との間の隙間から漏出する前記気体の流動を規制することで、前記隙間から漏出する前記気体の流動方向を、隣接する前記複数の可変翼の間における開口部を通過する前記気体の流動方向に沿う向きに変位させる凸部を有することを特徴とする可変容量型タービン。
【請求項2】
前記凸部は、前記可変翼が前記開口部を最も狭くする位置にあるときの、前記可変翼における下流側先端部の前記径方向内側近傍に形成され、
少なくとも前記凸部の下流側先端部は、前記可変翼が前記開口部を最も狭くする位置にあるときの、該開口部を通過する前記気体の流動方向に略沿って延在していることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型タービン。
【請求項3】
前記凸部の上流側先端部は、前記可変翼が前記開口部を最も狭くする位置にあるときの、前記可変翼の下流側先端部と前記一方の導入壁との間の隙間から漏出する前記気体の流動方向に略沿って延在していることを特徴とする請求項2に記載の可変容量型タービン。
【請求項4】
前記凸部は、その上流側先端部から下流側先端部に向かうに従って、その延在方向が漸次変化することを特徴とする請求項3に記載の可変容量型タービン。
【請求項5】
前記凸部は、前記回転翼を囲んで略環状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型タービン。
【請求項6】
前記凸部の前記一方の導入壁からの突出高さは、前記一対の導入壁の間隔に対して5%以上10%以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の可変容量型タービン。
【請求項7】
前記凸部の前記気体が流動する流動面は、前記一方の導入壁から離間するに従って漸次前記径方向外側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の可変容量型タービン。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−180811(P2010−180811A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26094(P2009−26094)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】