説明

可燃性ガス検出装置

【課題】応答速度の低下を抑えつつ、気流の流れに起因する変動を可及的に抑えること。
【解決手段】軸方向に延びる熱電変換素子部12に、被検ガスの酸化反応を促進する酸化触媒層13を形成した検出部と、検出部をジュール熱により所定温度に加熱するヒータ14とが基板11に形成され、被検ガスと接触して電気信号を発生するセンサー10と、相対向する2箇所に窓21、21が形成された筒状の基台20と、からなり、センサー10が、熱電変換手段の軸方向A−Aが窓を結ぶ方向B−Bに直交するように基台20に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスと触媒層の触媒反応による発熱を電気信号として出力するガス検出センサーを用いた可燃性ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の普及に伴ない、水素等の可燃性ガス用のセンサーとして、特許文献1に記載されているように基板に、可燃性ガスとの接触により発熱する触媒層と、発熱部と、触媒層での温度変化を検出する検出部とを形成したものが提案されている。
このセンサーは、発熱部により触媒層を可燃性ガスとの反応が可能な程度に加熱する必要があり、かつガスの濃度に対応して信号を出力する検出部が、発熱部による温度差に起因して信号を出力するため、気流の流れに敏感に反応し、周囲の風などにより誤差が生じるという不都合がある。
もとよりこのような問題を解消するために、流体抵抗が大きな多孔質体などのキャップで覆うことも考えられるが、応答速度が低下するという新たな問題が発生する。
【特許文献1】特開2003-156461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、応答速度の低下を抑えつつ、気流の流れに起因する変動を可及的に抑えた可燃性ガス検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために請求項1の発明は、軸方向に延びる熱電変換手段に、被検ガスの酸化反応を促進する酸化触媒層を形成した検出部と、前記検出部をジュール熱により所定温度に加熱する発熱層とが基板に形成され、被検ガスと接触して電気信号を発生するセンサーと、相対向する2箇所に通孔部が形成された筒状の基台からなるケースと、からなり、
前記センサーが、前記熱電変換手段の軸方向が前記通孔部を結ぶ線に直交するように前記ケースに収容されている。
【0005】
請求項2の発明は、前記ケースの開口領域が網目状のキャップにより覆われている。
【0006】
請求項3の発明は、前記キャップの頂部に風防部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度分布の変動による出力の変動が大きい熱電変換手段の軸方向の気流を抑制しつつ、気流による温度変化が少ない方向に配置された通孔部から被検ガスを流入させて応答性を確保することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、キャップにより気流の影響をより確実に防止することができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、上部からの気流による影響を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明に使用するセンサーの一実施例を示すものであって、センサー10は、電気絶縁性材料の基板11の表面に蒸着などにより直線状に熱電変換素子部12を形成し、その一端側に偏した領域に可燃性ガスを酸化させるための酸化触媒層13を形成して検出部が構成されている。
検出部の両側には検出部の酸化触媒層13により被検出ガスを酸化反応させるのに適した温度に加熱するためのヒータ14が設けられている。
【0011】
熱電変換部12の両端は、リード部を介して信号端子15に、またヒータ14は導電パターンにより直列に接続された上でリード部を介して給電端子16、16’に接続されている。
【0012】
このように構成されたセンサー10は、給電端子16に通電してヒータ14を所定の温度に加熱すると、ヒータ14のジュール熱により酸化触媒層13がその表面で可燃性ガスと酸化反応するのに適した温度に加熱される。
【0013】
この状態で、水素などの可燃性ガスが酸化触媒層13に接触した場合には可燃性ガスが酸化触媒層13の表面で接触燃焼し、熱電変換部12の一端部、つまり酸化触媒層13の領域の温度が上昇して他端部、つまり信号端子15’の領域との間に温度差が生じる。この温度差は、可燃性ガスの濃度に比例し、かつ起電力は温度差に比例するから信号端子15、15’から図示しない信号処理部に出力させることにより可燃性ガスの濃度を知ることができる。
【0014】
なお、上述の実施例においては、水素を検出する場合について説明したが、触媒の種類を選択することにより、炭化水素など他の可燃性ガスを同様に検出することができる。
【0015】
図2は、上述のセンサーを使用した可燃性ガス検出器の一実施例を示すものであって、有底で、かつ対向する2つの領域を切欠いて窓21、21が形成された円筒状の基台20に、上述のセンサー10が検出面を開口23側に向け、かつ底面24に平行となるように配置されている。
【0016】
センサー10は、熱電変換部12の軸方向A−Aが窓21、21を結ぶ線の方向B−Bに対して略直交するように配置されている。
【0017】
さらに、基台の上部にはガスの透過が可能な網目状のキャップ25が装着されている。そしてセンサーに対向する領域が板状とされて風防部26が形成されている。
【0018】
この実施例において、通常の状態、つまり無風状態では開口面積の大きな窓21、21から環境中の流体が容易に流れ込むから、これに含まれている可燃性ガスの濃度に対応した信号が速やかに出力される。
【0019】
また、気流が存在する場合には、気流の方向が窓21、21を結ぶ方向(B−B方向)である場合には、熱電変換部12の軸方向A−Aに直交するから、熱電変換部の軸方向の温度勾配には変化が生じず、気流による影響は最小限となる。
【0020】
一方、気流の方向が熱電変換部12の軸方向A−Aに平行な場合には、基台20の壁が存在するため、気流はこの壁に遮断され、熱電変換部に直接流入するのを阻止され、壁により流速を弱められてから開口23から流れ込む。
これにより、気流の影響を最小限として可燃性ガスの濃度に対応した信号を出力する。
【0021】
図3(イ)、(ロ)は、それぞれ基準エア、及び水素10000ppmの基準ガスを風速0.1m/sec程度で供給した場合の本発明の検出装置(符号A)と、従来の装置(符号B)とのセンサー出力の変化を風向による変動を示すものである。なお、風向F1乃至F4は図1、及び図2の符号F1乃至F4の矢印で示す方向である。
【0022】
これらの結果から、本発明においては検出装置に対する気流の方向にかかわりなく基準エア、及び基準ガスに対する出力は略一定となる。
これに対して従来の装置は、その出力が熱電変換部の軸方向(A−A)に対する気流の方向に大きく依存する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に使用する可燃性ガスセンサーの一実施例を示す図である。
【図2】本発明の可燃性ガス検出装置の一実施例を、キャップを取り外した状態で示す図である。
【図3】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明の可燃性ガス検出装置及び従来の可燃性ガス検出装置の風向に対する基準エア、及び基準ガスのセンサー出力を示す線図である。
【符号の説明】
【0024】
10 センサー 11 基板 12 熱電変換素子部 13 酸化触媒層 14 ヒータ 15、15’ 信号端子 16、16’ 給電端子 20 基台 21 窓 23 開口 24 底面 25 キャップ 26 風防部 F1〜F4 風向 A−A 熱電変換部12の軸方向 B−B 窓21、21を結ぶ線の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる熱電変換手段に、被検ガスの酸化反応を促進する酸化触媒層を形成した検出部と、前記検出部をジュール熱により所定温度に加熱する発熱層とが基板に形成され、被検ガスと接触して電気信号を発生するセンサーと、
相対向する2箇所に通孔部が形成された筒状の基台からなるケースと、からなり、
前記センサーが、前記熱電変換手段の軸方向が前記通孔部を結ぶ線に直交するように前記ケースに収容されている可燃性ガス検出装置。
【請求項2】
前記ケースの開口領域が網目状のキャップにより覆われている請求項1に記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項3】
前記キャップの頂部に風防部が形成されている請求項2に記載の可燃性ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−232657(P2007−232657A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57127(P2006−57127)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構水素安全利用等基盤技術開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】