説明

可燃性廃棄物の燃焼処理方法とその装置

【課題】 廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメント製造装置で燃焼処理するに際して、操業にトラブルがなく連続的に安定運転が行え、燃焼空間の底部に燃焼残滓が堆積しない可燃性廃棄物の処理方法と装置を提供すること。
【解決手段】 仮焼炉二次空気ダクトの途中をボルテックス形状の高温空間の炉に改造し、該炉内に旋回空気流を発生させ、そこへ上部から可燃性廃棄物を投入して燃焼させるとともに、未燃分がボルテックス室の内壁へ固着することを防止することができる構造であって、可燃性廃棄物の燃焼残滓がボルテックス室の底部に堆積しないように底部が仮焼炉と隣接する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメント製造装置で燃焼処理するに際して、操業にトラブルがなく大量に処理でき、かつ連続的に安定運転を行うことができる可燃性廃棄物の燃焼処理方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、セメント製造装置の全体プロセスを示す図1を参照しながら、本発明の背景技術について説明する。
産業廃棄物を始めとする可燃性廃棄物は、物質とエネルギーの循環型社会としてその利用と処理がますます期待されている。セメント産業においても今後、大量に可燃性廃棄物を処理できるプラント装置としてこれを改良してゆくことは、環境問題の使命を担うものとしてのセメント産業にとって必要不可欠なものとなる。
従来、セメント製造装置において、廃プラスチック等の可燃性廃棄物は酸素が比較的少ないロータリーキルン1の窯尻15や仮焼炉2の内部へ投入していた。いずれの場所も酸素の少ない雰囲気であるので、可燃性廃棄物の燃焼が遅くなる。このためセメント製造装置の排ガス温度が上昇し、操業上の熱量原単位が悪化するという問題があった。その上、連続的な操業の点からはセメント製造装置が不安定状態へ陥りやすかった。また、プレヒーター・サイクロン16への付着物による閉塞など、最悪の場合にはセメント製造プラントのシャットダウンなどや、さらには排気温度の上昇や排気ファン7の回転羽根への可燃性廃棄物中の成分の付着物による排気ファン7の振動トラブルを起こしていた。
【0003】
また、従来からの1つの方法として、例えば特許文献1〜3のように、仮焼炉の二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6をほぼ水平方向へ延伸した形状のままで、直接に可燃性廃棄物を投入する方法があった。この方法では、可燃性廃棄物が大きいか又は比較的重い場合には、ダクトの底部の水平部に可燃性廃棄物が着地して固着物が成長していた。また、可燃性廃棄物の投入装置としては負圧の炉内を外気からシールするために、通常、二重ダンパーが使用されている。二重ダンパーは構造上供給物が間欠的に供給されるので、可燃性廃棄物が瞬間的に増えたり減ったりして脈動を起こし、可燃性廃棄物が一時的に増えたときに、その重量によって炉底に可燃性廃棄物の未燃分である燃焼残滓が堆積しやすかった。そのため、固着物の除去を行わなければならず、人的労力の投入による対応や、特許文献3のように、別途の固着堆積物の排出装置を設置する等、多くの費用がかかるなど問題も多かった。
【0004】
一方、例えば特許文献4のように難燃性燃料の処理に対する改良も行われてきたが、高温で高酸素の空気を利用した、熱効率が良く、大量に可燃性廃棄物を使用できる仮焼炉は提供されていなかった。
今までは、比較的に軽量で少量の可燃性廃棄物のみしか仮焼炉廻りへ投入できなかったので、比重量のある可燃性廃棄物はロータリーキルン1の窯尻15に直接、投入し燃焼させていた。しかし、大量に窯尻15の位置に投入すると、窯尻15の位置は酸素濃度が低いため、この位置から排ガスの下流部分であるライジング・ダクト9やプレヒーター・サイクロン16の間でも燃焼が起こり、この間の温度が上昇し、該操業上のトラブルを起こしやすいので、少量しか投入できなかった。このように、従来は可燃性廃棄物を大量に処理するという世の中からの要請には十分、応じることができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−206164号公報
【特許文献2】特開2002−145648号公報
【特許文献3】特開2005−221195号公報
【特許文献4】特開平5−294688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物をセメント製造装置で燃焼処理するに際して、操業にトラブルがなく連続的に安定運転を行うことができる可燃性廃棄物の燃焼処理方法とその装置を提供することを目的とするものである。
セメント製造装置を該目的に沿ったものに改善すること、即ち、可燃性廃棄物の破砕サイズをできるだけ大きくすることによって、可燃性廃棄物の前処理(破砕処理)に関わる設備を最小の投資で最大の効果を出すものにすること、また、比較的軽量でない可燃性廃棄物も燃焼処理ができるようにすること、そして燃えにくい可燃性廃棄物を燃やしやすくすることのためには、
(1)雰囲気温度が高い(少なくとも800℃以上である)、
(2)雰囲気に酸素が十分に存在する、
(3)可燃性廃棄物が燃えるまでに十分な滞留時間がある
ことなど、以上の3点が十分条件であるが、どれか少なくとも1つ以上が満足されることが必要条件となる。
【0007】
そこで、本発明者らは、可燃性廃棄物のサイズが大きくても、これを充分に燃焼させるためには次のようなことが必要であることを見出した。
仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6の内部のガス流は酸素が21容量%で前記(2)の条件を満足し、温度(約800乃至1000℃)も前記(1)の条件をクリヤーし適度な雰囲気であることから、可燃性廃棄物のダクト6内での滞留時間を大きく増加させ、充分に燃焼させることができれば前記目的を達成することができる。即ち、本発明の課題は、このダクト6の途中を改造し、可燃性廃棄物の大量処理が可能なように、投入された可燃性廃棄物の滞留時間を延長させる方法とその装置、また該装置から仮焼炉までの炉壁や炉底への可燃性廃棄物の燃焼残滓の堆積や固着を防止できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、次の三つの知見を得、当該知見に基づいて、仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6の途中に、該ダクト部分から仮焼炉までの炉壁へ未燃分が固着することを防止することができるボルテックス室5の構造と可燃性廃棄物の投入手段を提供することにより、本発明を完成するに至った。
【0009】
(1)ボルテックス室5の構造のダクト6は、内部に800乃至1000℃の熱空気が流れており、投入する可燃性廃棄物の最大長サイズが100mm以下、難燃品では好ましくは50mm未満であっても、自由落下により投入すれば、内部の旋回流により可燃性廃棄物の滞留時間を長くさせることが可能で、ダクト6内で充分に燃焼が可能となる。
【0010】
(2)また、可燃性廃棄物の投入手段を多系列にした上、ボルテックス室5の下部を仮焼炉2に隣接することで、可燃性廃棄物の燃焼残滓もボルテックス室5や仮焼炉2の炉底に堆積しにくい構造とすることができ、仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6の水平部へも堆積防止ができる。
【0011】
(3)また、前記投入手段における可燃性廃棄物の供給装置について、多系列の二重ダンパーを用い、供給量が脈動しにくい供給装置を併用することで、様々な課題を解決することができる。
【0012】
本発明は、800℃以上の温度を有する高温空気ダクトの一部の空間に旋回空気流を発生させ、該旋回空気流の中に、可燃性廃棄物を、専用吹込み管によって吹込むか、または自由落下にて投入して燃焼処理を行い、それにより発生した熱をセメント製造装置の仮焼炉の熱源とすることを特徴とする可燃性廃棄物の燃焼処理方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は上記本発明の可燃性廃棄物の燃焼処理方法を実施するための装置であって、セメント製造装置の仮焼炉2へ空気を導入するための温度800℃以上の高温空気ダクト6と、該ダクト6に連結された、前記旋回空気流を発生させるボルテックス室5とを備え、かつ該ボルテックス室5には、前記旋回空気流の中に、可燃性廃棄物を側面から吹込むかまたは上部から自由落下にて投入するための可燃性廃棄物の投入手段が設けられ、さらに該ボルテックス室5の構造が、前記旋回空気流で可燃性廃棄物を攪拌燃焼する円筒状の構造であるか、または該円筒状部の下部に逆コーン載台状の異径型レジューサーを連続的に接続している構造であることを特徴とする可燃性廃棄物の燃焼処理装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可燃性廃棄物の燃焼処理方法とその装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)可燃性廃棄物を従来よりも大量に仮焼炉2で使用することが可能となり、セメント製造原価の大幅な低減を図ることができる。
(2)可燃性廃棄物のサイズを従来よりも大きくできるので、破砕、粉砕にかかる電力コストを大幅に低減できる。
(3)可燃性廃棄物のサイズを従来よりも大きくできるので、破砕機の能力が従来のものよりも大幅に向上する。
(4)可燃性廃棄物が軽量なものでなくても仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6での燃焼が可能となり、廃棄物大量処理の社会的要請に応じることができるようになる。
(5)可燃性廃棄物を燃焼させた残滓がボルテックス室5や仮焼炉2の炉底に堆積しにくくなり、可燃性廃棄物を大量に使用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明を、その好ましい実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明のセメント製造装置の全体プロセスと該装置内に設けられたボルテックス室5の位置を模式的に示す概略図である。図2、図3及び図4は、それぞれ、本発明の可燃性廃棄物の燃焼処理装置に適用したボルテックス室5の構造の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態を模式的に示したものである。図5は、本発明の第1実施形態及び第2実施形態におけるボルテックス室5と仮焼炉2の連結ダクトの配置を模式的に示した概略図である。そして図6は、本発明のボルテックス室5への可燃性廃棄物の投入口を平面図で模式的に示したものである。また図7は、本発明のボルテックス室5へ投入される可燃性廃棄物の投入手段を模式的に示した概略図である。
【0017】
図1及び図2において、仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6の内部ガス流の酸素は21容量%である。また、その温度も約800乃至1000℃である。従って、雰囲気に酸素が十分に存在する、また雰囲気温度が少なくとも800℃以上であるという本発明の課題を達成するための前記第1及び第2の条件をクリヤーしている。
そこで、このダクト6の途中を、垂直方向の円筒形状であって、該円筒形状の曲面部の一部に接線方向かつ水平に前記熱風ダクトを装入し接続することを特徴とするボルテックス室5の構造に改造する。その際、ボルテックス室5の直径は、改造前における単純な直管ダクトの直径の1.5乃至2.5倍に拡大することが好ましい。また、ボルテックス室5の高さをL、直径をDとすると、L/Dは3乃至5が最適である。
前記ボルテックス室5の直径については、改造前における単純な直管ダクトの直径の1.5倍より小さいと、可燃性廃棄物のボルテックス室5内での滞留時間が不足することがあり、2.5倍より大きいと、可燃性廃棄物はボルテックス室5内での遠心力が不足し、重力が勝ることによってボルテックス室5内を失速落下し、やはり滞留時間が不足することがあるのでいずれの場合も好ましいことではない。また、前記L/Dが3未満では、可燃性廃棄物の滞留時間が不足して燃焼が不十分となる恐れがあり、逆に5より大きいと、ボルテックス室5の高さが燃焼に必要とされる以上の高さとなり、設備の工事費用が高くなる分、投資費用が無駄になるという問題がある。
【0018】
前記ボルテックス室5の構造に改造することにより、前記ボルテックス室5内には前記高温のクーラー抽気による旋回空気流(以下、単に旋回流ガスともいう。)が発生する。そこで図6において、可燃性廃棄物は、前記ボルテックス室5の上部の旋回流ガスに浮遊し内壁面を旋回流飛するように投入口11または12から投入される。投入位置12はボルテックス室天井部の中心点より内壁に寄った位置であって前記旋回流ガスが導入される主流ガスに乗る位置であればどこでも良い。また投入位置11については、ボルテックス室5における天井部の直面下の位置にほぼ水平方向から専用吹込み管によって前記旋回空気流の流れる方向と同方向に偏向させて吹込んでも良い。
これにより、ボルテックス室5の内部での可燃性廃棄物は、滞留時間を大きく増加し3乃至6秒ほどが確保される。またボルテックス室5の内部における内壁面の周囲は高酸素の21容量%でかつ前記の高温の雰囲気であるので、可燃性廃棄物を短時間で充分に燃焼させることができる。可燃性廃棄物が燃焼してガス化すれば慣性がなくなり他のガスと一緒に流飛し完全に燃焼してボルテックス室5の中央部へ寄ってきて、その結果、未燃物よりも迅速にボルテックス室5から排出される。
【0019】
このボルテックス室5の構造の入口ダクト内には、前述したように約800乃至1000℃の温度を有する熱空気が存在する。そこで、可燃性廃棄物の最大長サイズが100mm以下であれば、難燃品でも好ましくは50mm未満であれば、ボルテックス室5の内部の旋回空気流に乗ることによって未燃廃棄物には遠心力が生じ、該遠心力によって未燃廃棄物はボルテックス室5内を旋回流飛し、その結果、該ボルテックス室5及びそれに続く仮焼炉2までのダクト内での投入された可燃性廃棄物の滞留時間は長くなる。また、ボルテックス室5への投入が自由落下でなされれば、仮焼炉2へ到達する前までに、ほとんどの可燃性廃棄物は燃焼ガス化され、従って投入された可燃性廃棄物を完全燃焼させることが可能である。
本発明においては、ボルテックス室5へ可燃性廃棄物を空気にて吹き込む方法であってもよいが、この方法であると、仮焼炉2へ到達する前までに可燃性廃棄物の燃焼ガス化が完了せず、結果的に酸素が比較的少ない仮焼炉2内に未燃廃棄物が入ることによって可燃性廃棄物の燃焼が遅くなるため、前述したようなセメント製造装置の排ガス温度が上昇し、操業上の熱量原単位が悪化するという問題が起こることがある。
【0020】
本発明で使用される可燃性廃棄物とは、薄膜状の廃プラスチック、廃木材チップ、木屑、古畳、古紙、廃タイヤ片、廃ゴム、布裂、固形燃料(RDF類)、固体を主とした可燃物等の可燃性廃棄物や、固体状の廃プラスチック、水分を多く含む可燃物等の難燃品の単品または2種以上の混合品をいう。
なお、これら可燃性廃棄物に鉄屑やアルミ片等の異物が混入している場合は、磁力選別機、非鉄物除去装置、篩等の手段により予め除去すればよい。
【0021】
さらに図5に示すように、このボルテックス室5は、仮焼炉2の下部に設けられた接続口に隣接した、該接続口とは最短の位置に設置することが好ましい。また、ボルテックス室5と仮焼炉2の連結ダクトはガスの流れ方向において水平から下向きに0乃至75度になるように配置するのがよい。例えば、図2は前記連結ダクトが水平の角度、即ち、水平方向に対し角度が0度のケースであり、図5は水平方向に対し下向き角度が60度のケースである。
【0022】
また仮焼炉2の燃料燃焼用二次空気については、可燃性廃棄物の燃焼分ほど酸素濃度が低下するが、仮焼炉2の主燃料である微粉炭等の供給バーナー8からの燃料が前記可燃性廃棄物の燃焼分だけ低減できるため、仮焼炉2での総合的な燃焼熱としては大きな差異は出ない。
【0023】
以下に応用例を3例挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(1)仮焼炉A型の場合
第1の応用例は、前記連結ダクトを仮焼炉2の下部の側面から接続する仮焼炉A型の場合である。
図2において、仮焼炉2の下部の、クーラー抽気ガスを旋回導入する水平入口部近傍のダクト部に、上部に旋回空気流を構成する本発明の第1実施形態のボルテックス室(以下において旋回室ともいう。)5を、前記ダクトに対する直径比が1.5乃至2.0倍であって、直径に対する高さの比(L/D)が3乃至4の寸法にて改造設置する。そしてこのボルテックス室5の天井部の直下で旋回空気流の主流の位置12から廃プラスチックを、仮焼炉2で必要な熱量の30乃至80%に相当する量ほど自由落下にて投入する。ボルテックス室5の内部の作用については、内壁部の周囲において比較的低温のエアーカーテンを生成させ、天井部に廃プラスチックを供給すると、急激なる燃焼により比較的高温の部分を作ることができる。燃焼残滓と燃焼により生じた熱ガスは、ボルテックス室5の下部から仮焼炉2の下部側面に設けられた旋回流入口(接続口)に水平かつ接線方向に導入する。このようにして、ボルテックス室5と仮焼炉2の間の前記連結ダクト内の酸素濃度が6乃至10容量%に確保されることで、仮焼炉2の内部への石炭燃料の供給は、廃プラスチックを供給した熱量分ほど低減させることができる。
【0024】
また、図3に示したように、ボルテックス室5の円筒状の下部に逆コーン載台状の異径型レジューサー14を連続的に接続している構造である本発明の第2実施形態のボルテックス室5を仮焼炉2と連結することによって、前記連結ダクト内の燃焼ガス流れを滑らかにできると共に、ボルテックス室5から仮焼炉2までの該連結ダクト内でも旋回空気流を残し、滞留時間をさらに約1秒間延長させることもできる。
【0025】
また、燃焼残滓が多い可燃性廃棄物を投入する場合は、前記第1もしくは第2実施形態のボルテックス室5の下部と仮焼炉2を繋ぐ前記連結ダクトを、図5のように、仮焼炉2の側がボルテックス室5よりも下方になるように水平方向に対し60度ほど下向きに傾斜させて、仮焼炉2とボルテックス室5を外壁が接触した配置にすることによって、前記連結ダクトが最短の距離を保つ構成とすることもできる。こうすれば燃焼残滓のダクトへの堆積は最小限に防ぐことができる。
【0026】
(2)仮焼炉B型の場合
次に第2の応用例であるが、前記連結ダクトを仮焼炉2の下部の真下から接続する仮焼炉B型の場合である。
即ち、図4に示したように、仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)6の垂直な下降部を改造前のダクトに対する直径比が2乃至2.5倍となるように拡大し、内部の断熱を補強することによって、本発明の第3実施形態のボルテックス室5とし、可燃性廃棄物を予備燃焼させる炉としての機能を有するようにする。この場合、ボルテックス室5の直径に対する高さの比(L/D)は4乃至5であることが好ましい。
そして、前述した本発明の第1実施形態や第2実施形態の場合と同様、ボルテックス室5の円筒形状の頂部曲面部において接線方向かつ水平に入口ダクトを装入することによって、ボルテックス室5の内部は入口で旋回空気流を構成し、全体が旋回流のダクト炉になる。そこで、ボルテックス室5の天井部の直下で旋回空気流の主流の位置12から廃プラスチックを自由落下にて投入する。燃焼時の残滓は、ボルテックス室5出口において、屈曲ダクトの下部の炉底33から、仮焼炉2より落下する一部の原料とともにシュート13を経由し、ライジング・ダクト(RD)9に投入される。
【0027】
本応用例において、仮焼炉2で必要な熱量の50乃至70%に相当する量ほど可燃性廃棄物を投入すると、ボルテックス室5と仮焼炉2の間の前記連結ダクト内の酸素濃度は6乃至10容量%に確保される。これにより仮焼炉2の石炭燃料は、従来(改造前の直管型ダクト6の場合)よりも廃プラスチックの燃焼熱量分ほど低減できる。
【0028】
(3)仮焼炉A型及びB型における共通事項
そして第3の応用例は、図2、図3、図4、図6及び図7に模式的に示される可燃性廃棄物の投入手段である。該投入手段は、前記仮焼炉A型及び仮焼炉B型に共通して用いられる。
ボルテックス室5の内壁に付着しやすい種類の難燃性廃プラスチックなどの可燃性廃棄物が供給される場合などを考慮して、ボルテックス室5の天井部12または天井部直下の側面11から可燃性廃棄物を投入する手段としては、可燃性廃棄物の供給が独立した2乃至4系列を有する二重ダンパーを通過する供給装置31を使用する。これにより、温度特性が多様な可燃性廃棄物に対して、時系列的に一定な供給が行われ、ボルテックス室5内の温度は安定する。
もし前記供給装置31が1系列の二重ダンパーからなる構成の装置であったら、ボルテックス室5に供給される可燃性廃棄物は時系列的に脈動する。そして、ボルテックス室5内で瞬時的に可燃性廃棄物の供給が切れると該ボルテックス室5内の温度は低下し、瞬時的に可燃性廃棄物が投入されると該ボルテックス室5内の温度は上昇する。この脈動が温度の変動となって、ボルテックス室5の下部に付着物を生じやすくなり、操業上のトラブルを起こしやすくなる。
【0029】
図7において、ボルテックス室5に供給された可燃性廃棄物は、前記供給装置31の受入口23を経由して仕切板30により仕切られた各部屋に貯留される。便宜上、仕切られた部屋の片側の部屋を1系、他方を2系とする。
【0030】
前記仕切られた各部屋には、ダンパー24乃至27が上下方向に設置される。ダンパーとしてはスライドゲート式ダンパーが使用される。ダンパーの角度は水平方向に対して0乃至75度とすることができる。しかし、ダンパーの角度が大きい場合、ダンパー上部への可燃性廃棄物の滞留による噛み込みは防止できるが、供給経路が長くなるため、より好ましい角度として、水平方向に対して20乃至45度とする。これにより、可燃性廃棄物の滞留による噛み込みを防止できると同時に、供給経路の設置スペースを小さくすることができる。
また、同じ部屋のダンパー間の距離は、可燃性廃棄物の大きさや形状、供給量等によって適宜決めればよい。例えば、可燃性廃棄物の大きさが最大長サイズで50mmであり、滞留部32の直胴部の長さが2000mmである場合、直胴部の上部から上段ダンパーまでの距離が600乃至1200mm、好ましくは700乃至900mm、上下ダンパー間の距離が400乃至1000mm、好ましくは400乃至650mm、下段ダンパーから直胴部の下部までの距離が500乃至1000mm、好ましくは600乃至800mmであればよい。
また、異なる部屋同士の上段ダンパー(24と26)及び下段ダンパー(25と27)の上下方向の位置は同じとする。さらに、二重ダンパー(ダンパー24乃至27)の駆動方向は、図7に示すように対向させるのがよいが、供給経路の設置スペースによっては、並行とすることも可能である。
【0031】
ここで、図8は本発明を実施するための二重ダンパーの動作駆動のタイムスケジュールを示す。そして、前記各部屋における二重ダンパーは、制御部29と連結されており、図8に示したように、開閉のタイミングが異なるように以下の如く制御される。
【0032】
(1)まず、1系と2系の上段ダンパー(24及び26)と下段ダンパー(25及び27)が閉とされる。
(2)次に、1系と2系の上段ダンパー(24及び26)の上に、受入口23から可燃性廃棄物が充填される。
(3)次に、1系の上段ダンパー24が開となり、同時に2系の下段ダンパー27が開となる。これにより、1系においては可燃性廃棄物が上段ダンパー24と下段ダンパー25の間に受入れられ、2系においては可燃性廃棄物がボルテックス室5に供給される状態になる。
(4)その後、1系の上段ダンパー24が閉となり、同時に2系の下段ダンパー27が閉となる。これにより、1系及び2系の上段と下段のダンパーが全て閉となる。
(5)次に、1系の下段ダンパー25が開となり、2系の上段ダンパー26が開となる。これにより、1系から可燃性廃棄物がボルテックス室5に供給され、2系においては可燃性廃棄物が上段ダンパー26と下段ダンパー27の間に受入れられる。
(6)その後、1系の下段ダンパー25が閉となり、同時に2系の上段ダンパー26が閉となる。これにより、1系、2系の上段と下段のダンパーが全て閉となる。
(7)これによって、可燃性廃棄物の供給サイクルが終了する。
このサイクルを繰り返すことにより、可燃性廃棄物はボルテックス室5内に連続的かつ一定に供給される。これにより、可燃性廃棄物のボルテックス室5への供給量の脈動を緩和することが可能となり、該ボルテックス室5の操業条件の変動を大幅に低減することが可能となる。
【0033】
タイムスケジュールの各時間幅は、可燃性廃棄物の必要供給量に応じて、電子タイマーまたはソフトタイマーなどにて設定するが、上段ダンパー(24及び26)の開時間の幅については、下段ダンパー(25及び27)と上段ダンパー(24及び26)の間のシュート空間が可燃性廃棄物で満量にならない時間、即ち、満量の80%以下になるように前記タイマーの時間幅の設定を行う。
また、前記について、満量の80%になる高さの位置にレベルスイッチやリミットスイッチ28などを取り付け、該タイマーとの併用を行い、レベル検知またはタイマーの動作が行われたら、ダンパー24乃至27を所定の通りに動作させ、可燃性廃棄物を安定供給するようにさせてもよい。該タイマー時間の幅が大きすぎると、二重ダンパーの先端部に可燃性廃棄物が噛み込む原因にもなる。
【0034】
前記においては、2系列の可燃性廃棄物の供給装置について説明したが、3系列以上においても本発明を実施することは可能である。この場合における二重ダンパーの駆動方法は、前記の各系列のタイムスケジュールと同じであり、時間の差を設けるのみである。これにより、可燃性廃棄物の供給量の脈動をさらに緩和することが可能である。ボルテックス室5への可燃性廃棄物の投入口を多系列の並行的な投入手段にすることで、ボルテックス室5の下部の出口で内部の燃焼ガスは、温度の変動がなくなり一定温度となるため、可燃性廃棄物の燃焼残滓の仮焼炉炉壁への付着や堆積がなくなる。ただし、系列の数が多くなると、供給経路の構造が複雑になり、二重ダンパーの駆動の制御が煩雑になるので、系列の数は2乃至4系列が好ましい。
【0035】
本発明においては、前述した第1乃至第3実施形態に前記第3の応用例を適用することによって、ボルテックス室5の内壁面に旋回流ガスと共に可燃性廃棄物を変動させることなく一定量ほど流飛させ、該内壁を900乃至1000℃の温度に保持させ、ボルテックス室5から仮焼炉2までの炉壁における未燃物の付着を防止することができる。これによって、低融点かつ難燃性である可燃性廃棄物をも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、窯業、発電などの燃料の燃焼を行う炉において、製造コストを低減する目的で、従来使用している石炭などの燃料よりも燃焼の遅い可燃性廃棄物を使用する場合に有用となる方法と装置である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のセメント製造装置の全体プロセスと該装置内に設けられたボルテックス室の位置を模式的に示す概略図である。
【図2】本発明のボルテックス室の構造の第1実施形態である仮焼炉A型の場合の旋回室(直胴型)を模式的に示す概略図である。
【図3】本発明のボルテックス室の構造の第2実施形態である仮焼炉A型の場合の旋回室(下部逆コーン型)を模式的に示す概略図である。
【図4】本発明のボルテックス室の構造の第3実施形態である仮焼炉B型の場合の旋回室(直胴型)を模式的に示す概略図である。
【図5】本発明のボルテックス室と仮焼炉A型の連結ダクトの配置を模式的に示す図である。
【図6】本発明のボルテックス室への可燃性廃棄物の投入口(2個所)を平面図で模式的に示した概略図である。
【図7】本発明のボルテックス室に投入される可燃性廃棄物の投入手段を模式的に示した概略図である。
【図8】本発明における可燃性廃棄物の投入手段の二重ダンパーの駆動タイムスケジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ロータリーキルン
2 仮焼炉
3 エアー・クエンチング・クーラー(AQC)
4 キルンバーナー
5 ボルテックス室(旋回室燃焼ダクト)
6 仮焼炉二次空気ダクト(クーラー抽気ダクト)
7 排気ファン
8 仮焼炉バーナー
9 ライジング・ダクト(RD)
10 セメント原料投入口
11 可燃性廃棄物の吹込み投入口(水平吹込み)
12 可燃性廃棄物の投入口(天井部投入)
13 シュート
14 異径型レジューサー(逆コーン載台状)
15 窯尻
16 プレヒーター・サイクロン
23 可燃性廃棄物の受入口
24 1系上段ダンパー
25 1系下段ダンパー
26 2系上段ダンパー
27 2系下段ダンパー
28 レベルスイッチまたはリミットスイッチ
29 制御部
30 仕切板
31 可燃性廃棄物の供給装置
32 滞留部
33 炉底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
800℃以上の温度を有する高温空気ダクトの一部の空間に旋回空気流を発生させ、該旋回空気流の中に、可燃性廃棄物を、専用吹込み管によって吹込むか、または自由落下にて投入して燃焼処理を行い、それにより発生した熱をセメント製造装置の仮焼炉の熱源とすることを特徴とする可燃性廃棄物の燃焼処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の可燃性廃棄物の燃焼処理方法を実施するための装置であって、
セメント製造装置の仮焼炉へ空気を導入するための温度800℃以上の高温空気ダクトと、該ダクトに連結された、前記旋回空気流を発生させるボルテックス室とを備え、かつ該ボルテックス室には、前記旋回空気流の中に、可燃性廃棄物を側面から吹込むかまたは上部から自由落下にて投入するための可燃性廃棄物の投入手段が設けられ、さらに該ボルテックス室の構造が、前記旋回空気流で可燃性廃棄物を攪拌燃焼する円筒状の構造であるか、または該円筒状部の下部に逆コーン載台状の異径型レジューサーを連続的に接続している構造であることを特徴とする可燃性廃棄物の燃焼処理装置。
【請求項3】
前記ボルテックス室の構造が仮焼炉の下部に側面方向もしくは下方向から隣接して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の可燃性廃棄物の燃焼処理装置。
【請求項4】
前記可燃性廃棄物の投入手段が2乃至4系列の二重ダンパーからなる構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載の可燃性廃棄物の燃焼処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−205640(P2007−205640A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25179(P2006−25179)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】