説明

可視光通信発電システム

【課題】発電とともに情報認証に基づく錠前の施解錠が行え、電池交換が不要な可視光通信発電システムを提供する。
【解決手段】可視光通信発電システム1は、ゲートに設けられる錠前を施解錠制御する電気錠装置3を備え、ゲートの通行を許可するIDと対応付けされた可視光を照射する情報発光器2を用いたものである。電気錠装置3は、情報発光器2からの可視光を含む外光を受光し、この受光した外光に応じた光起電力を発生して発電する受光発電部11と、受光発電部11が発電した電力を蓄電する2次電池15と、受光発電部11が情報発光器2から受光した可視光による発電の強弱からゲートの通過を許可するIDを取得し、この取得したIDと照合用IDとを照合比較して前記取得したIDの正当性を判別し、取得したIDを正常認証したときにゲートを解錠制御する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光通信により、発電とともに情報認証に基づく錠前の施解錠を行うことができる可視光通信発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の各種扉の錠前部分には、不審者の侵入を回避するため、防犯性に富んだ電気錠システムが採用されている。この種の電気錠システムは、錠前の施解錠を指示する信号が入力されると、その信号の正当性を判別し、正常認証したときにソレノイドなどのアクチュエータを駆動し、デッドボルトを扉枠のストライクの係止穴に対して進退させることで電気錠を施解錠している。
【0003】
ところで、この種の電気錠システムとして、下記特許文献1に開示されるように、電池を駆動源とし、他の機器に依存せずに独立で動作するオフライン環境下のスタンドアローン機器からなるカード式電気錠を採用したものが知られている。
【0004】
図5はスタンドアローン機器からなるカード式電気錠を採用したカードロックシステムのブロック図である。図5のカードロックシステム51は、カード式電気錠52と、電池付き非常電源供給カード53とからなる。カード式電気錠52は、本体に駆動源として電池54を内蔵している。そして、カード式電気錠52の施解錠制御部55は、錠前の施解錠時に予めカードに記憶された施解錠情報と登録情報とを照合して施解錠情報の正当性を判別し、施解錠情報を正常認証したときのみ電池54からの電源供給により駆動機構56の駆動を制御して錠前を自動的に施解錠している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−265859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のカードロックシステム51に採用されるカード式電気錠52は、本体に内蔵する電池54の寿命により、カード式電気錠52そのものの機能がスリープすることを避けることができないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、発電とともに情報認証に基づく錠前の施解錠が行え、電池交換が不要な可視光通信発電システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された可視光通信発電システムは、ゲートに設けられる錠前を施解錠制御する電気錠装置を備え、前記ゲートの通行を許可するIDと対応付けされた可視光を照射する情報発光器を用いた可視光通信発電システムであって、
前記電気錠装置は、前記情報発光器からの可視光を含む外光を受光し、この受光した外光に応じた光起電力を発生して発電する受光発電部と、
前記受光発電部が発電した電力を蓄電する2次電池と、
前記受光発電部が前記情報発光器から受光した可視光による発電の強弱から前記ゲートの通過を許可するIDを取得し、この取得したIDと照合用IDとを照合比較して前記取得したIDの正当性を判別し、前記取得したIDを正常認証したときに前記ゲートを解錠制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された可視光通信発電システムは、ゲートに設けられる錠前を施解錠制御する電気錠装置を備え、前記ゲートの通行を許可するIDと対応付けされた可視光を照射する情報発光器を用いた可視光通信発電システムであって、
前記電気錠装置は、外光を受光し、受光した外光に応じた光起電力を発生して発電する受光発電部と、
前記受光発電部の受光領域の一部に配設され、前記情報発光器から照射される可視光を受光し、この受光した可視光から前記ゲートの通過を許可するIDを取得する情報取得部と、
前記受光発電部が発電した電力を蓄電する2次電池と、
前記受光発電部の発電により前記2次電池に蓄電される電力が設定値に達したときに前記情報取得部を起動させ、該情報取得部が取得したIDと照合用IDとを照合比較して前記取得したIDの正当性を判別し、前記取得したIDを正常認証したときに前記ゲートを解錠制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る可視光通信発電システムによれば、太陽光や周囲の照明光だけでなく、情報発光器からの可視光の照射による可視光通信を利用し、電気錠装置で発電して2次電池に蓄電つつID認証を行うことができる。しかも、外部電源がない構成なので、後付けが可能であり、電池交換も不要なスタンドアロン機器による電気錠装置を用いたシステムを構築できる。また、可視光通信により光が届く閉鎖性のある通信範囲の部位しか情報が到達しないので、情報のアイソレート化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る可視光通信発電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の可視光通信発電システムにおける受光発電部の拡大平面図である。
【図3】本発明に係る可視光通信発電システムの他の構成例を示すブロック図である。
【図4】受光発電部の他の構成例を示す拡大平面図である。
【図5】特許文献1に開示されるカードロックシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る可視光通信発電システムの構成を示すブロック図、図2は図1の可視光通信発電システムにおける受光発電部の拡大平面図、図3は本発明に係る可視光通信発電システムの他の構成例を示すブロック図、図4は受光発電部の他の構成例を示す拡大平面図である。
【0013】
本発明に係る可視光通信発電システムは、可視光通信により、発電とともに情報認証に基づく錠前の施解錠を行うものである。なお、本発明における「可視光通信」とは、「可視光通信コンソーシアム」(http://www.vlcc.net/)の提唱する「見える光を使ってデータ通信する」ことである。
【0014】
図1に示すように、可視光通信発電システム1(1A)は、システムの運用者が所持する情報発光器2と、情報発光器2との間で可視光通信する電気錠装置3とから構築される。
【0015】
情報発光器2は、可視光を出射する発光ダイオード(LED)を光源とし、システムの運用者が所持可能な携帯型のLEDライトで構成される。情報発光器2は、制御対象のゲート(建物の出入口など)の通行を許可するべく予め決められたID(通行者を特定する暗証情報など)と対応付けされたバイナリモールス符号の可視光を照射している。
【0016】
さらに説明すると、情報発光器2の本体にはスイッチが設けられ、このスイッチをオン・オフ操作し、照射する可視光の点滅速度の長短を可変することにより、所望のバイナリモールス符号による可視光を照射している。これにより、ゲートを通行を許可するIDと対応付けされたバイナリモールス符号の可視光を情報発光器2から照射している。
【0017】
電気錠装置3は、制御対象の各ゲートに設けられ、電池を駆動源とし、他の機器に依存せずに独立で動作するオフライン環境下のスタンドアローン機器で構成される。
【0018】
電気錠装置3は、対象となるゲートの錠前を施解錠制御するもので、図1に示すように、本体に対し、受光発電部11、情報取得部12、制御部13、駆動機構14、2次電池15を備えている。
【0019】
受光発電部11は、図2に示すように、例えば単結晶シリコンや多結晶シリコンなどの矩形板状のセルからなる周知のソーラーパネルで構成される。受光発電部11は、光起電力効果により、太陽光や周囲の照明光などの外光や情報発光器2からの可視光を受光し、この受光した光の光強度に応じた光起電力を発生して発電している。
【0020】
情報取得部12は、例えばフォトダイオードやイメージセンサなどで構成され、図2に示すように、受光発電部11としてのソーラーパネルの中心部に形成される窓部11aに臨むようにして配設される。情報取得部12は、後述する制御部13の起動制御手段13bからの起動制御信号により、その起動が制御される。情報取得部12は、情報発光器2から照射される可視光を受光し、この受光した可視光のレベルに応じた電気信号に変換し、この変換された電気信号からバイナリモールス符号の情報を取得している。
【0021】
なお、情報取得部12は、情報発光器2からの可視光を効率的に受光するため、受光発電部11の中心部に配設しているが、受光発電部11の受光領域の一部に配設すれば良く、配設位置が受光発電部11の中心部に限定されるものではない。
【0022】
制御部13は、電力監視手段13a、起動制御手段13b、情報判別手段13c、錠前制御手段13d、記憶手段13eを備えている。
【0023】
電力監視手段13aは、2次電池15に充電されている電力を監視し、この監視によって得られる電力が設定値に達したか否かを判別している。
【0024】
起動制御手段13bは、受光発電部11が受光した光によって2次電池15に蓄電される電力が設定値に達すると、情報取得部12を起動するための起動制御信号を出力している。
【0025】
情報判別手段13cは、情報取得部12が取得したバイナリモールス符号の情報と、予め記憶手段13eに記憶された照合用情報(ゲートの通行を許可する照合用ID)とを比較照合し、情報取得部12が取得したバイナリモールス符号の情報が通行を許可するIDであるか否かを判別している。そして、情報判別手段13cは、情報取得部12が取得したバイナリモールス符号の情報が通行を許可するIDと判別したときに、後述する錠前14bを解錠するための解錠指令信号を錠前制御手段13dに出力している。
【0026】
錠前制御手段13dは、待機時に、後述する錠前14bの施錠を保持するための施錠制御信号を駆動機構14に出力している。また、錠前制御手段13dは、情報判別手段13cから解錠指令信号が入力されると、後述する錠前14bを解錠するための解錠制御信号を駆動機構14に出力している。
【0027】
記憶手段13eは、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAMなどの半導体メモリで構成される。記憶手段13eは、情報取得部12が取得したバイナリモールス符号の情報と比較照合して認証を行うための照合用情報(ゲートの通行を許可する照合用ID)を記憶している。
【0028】
駆動機構14は、駆動装置14aと、駆動装置14aによって解錠(施錠)される錠前14bとを備えて構成される。駆動装置14aは、例えば圧電素子やソレノイドなどのアクチュエータからなる。駆動機構14は、待機時に、錠前制御手段13dから施錠制御信号が入力されると、駆動装置14aの駆動によりデッドボルトを扉枠の係止穴に突出させて錠前14bを施錠制御している。これにより、電気錠装置3は、待機時に施錠状態を保持する。
【0029】
また、駆動機構14は、2次電池15に設定値以上の電力が充電されて情報取得部12が起動状態に移行し、情報取得部12が可視光通信により情報発光器2から取得したバイナリモールス符号の情報が正常認証され、錠前制御手段13dから解錠制御信号が入力されると、駆動装置14aの駆動によりデッドボルトを扉枠の係止穴から引き込んで錠前14bを解錠制御している。
【0030】
2次電池15は、受光発電部11が受光した外光によって発電する電力や情報発光器2からの可視光によって発電する電力を充電するバッテリーで構成され、電気錠装置3の各部(制御部13、駆動機構14)に必要な駆動電源を供給している。
【0031】
次に、上記構成による可視光通信発電システム1の動作について説明する。可視光通信発電システム1は、待機時に電気錠装置3が錠前14bの施錠状態を保持している。また、電気錠装置3は、待機時に、周囲の外光(太陽光や照明光など)を受光し、この受光した外光によって発電する電力を2次電池15に蓄電し続けている。これにより、情報取得部12の起動時間の短縮を図っている。
【0032】
その後、運用者が待機状態の電気錠装置3の本体の前に立ち、情報発光器2を受光発電部11に向けて可視光を照射すると、受光発電部11が情報発光器2からの可視光を受光し、この受光した可視光によって発電を開始し、一定電力が2次電池15に蓄電されると、情報受光器12を起動させる。
【0033】
情報取得部12は、起動により情報発光器2からの可視光を受光し、この受光した可視光のレベルに応じた電気信号に変換し、この電気信号からバイナリモールス符号の情報を取得する。そして、情報判別手段13cは、取得したバイナリモールス符号の情報と予め記憶手段13eに記憶された照合用情報とを比較照合し、取得したバイナリモールス符号の情報が通行を許可するIDと判別して正常にID認証すると、錠前制御手段13dに解錠制御信号を出力する。錠前制御手段13dは、情報判別手段13cから解錠制御信号が入力されると、駆動機構14の駆動装置14aを駆動し、錠前14bを解錠する。
【0034】
ところで、上述した実施の形態の可視光通信発電システム1Aでは、外光を受光する受光発電部11と、情報発光器2からの可視光を受光して情報を取得する情報取得部12とを別体に構成しているが、この構成に限定されるものではない。
【0035】
例えば、図3に示すように、受光発電部11が情報取得部12の機能を兼ね備え、情報取得部12を省いた可視光通信発電システム1Bを構築することもできる。
【0036】
なお、図3の可視光通信発電システム1Bにおいて、図1の可視光通信発電システム1Aと同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0037】
図3の可視光通信発電システム1Bは、図2と図4を比較しても判るように、情報取得部12が省かれた構成であり、太陽光や周囲の照明光などの外光や情報発光器2からの可視光を受光発電部11が受光する。また、制御部13に関しては、電力監視手段13aと起動制御手段13bを省くことができる。
【0038】
図3の構成による可視光通信発電システム1Bは、待機時に、電気錠装置3が錠前14bの施錠状態を保持している。また、待機時には、受光発電部11が受光した外光により発電した電力で2次電池15が蓄電され続ける。受光発電部11は、情報発光器2から可視光が照射されると、この可視光を受光し、この受光した可視光の光強度に応じた光起電力を発生して発電し、この発電の強弱に応じたバイナリモールス符号の情報を取得する。この際、発電した電力の一部は2次電池15に蓄電される。そして、情報判別手段13cは、受光発電部11の発電の強弱に応じたバイナリモールス符号の情報と予め記憶手段13eに記憶された照合用情報とを比較照合し、バイナリモールス符号の情報が通行を許可するIDと判別して正常にID認証すると、錠前制御手段13dに解錠制御信号を出力する。錠前制御手段13dは、情報判別手段13cから解錠制御信号が入力されると、駆動機構14の駆動装置14aを駆動し、錠前14bを解錠する。
【0039】
このように、本発明に係る可視光通信発電システム1では、外光による発電と可視光通信によるID認証とを同時に実行し、正常にID認証すると電気錠装置3の錠前14bを解錠制御している。これにより、太陽光や周囲の照明光だけでなく、LEDライトによる情報発光器2からの可視光の照射による可視光通信を利用し、電気錠装置3で発電して2次電池15に蓄電つつID認証を行うことができる。しかも、外部電源がない構成なので、後付けが可能であり、電池交換も不要なスタンドアロン機器による電気錠装置3を用いたシステムを構築できる。
【0040】
また、情報発光器2と電気錠装置3との間の可視光通信であって、光が届く閉鎖性のある通信範囲の部位しか情報が到達しないので、情報のアイソレート化を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1(1A,1B) 可視光通信発電システム
2 情報発光器
3 電気錠装置
11 受光発電部
12 情報取得部
13 制御部
13a 電力監視手段
13b 起動制御手段
13c 情報判別手段
13d 錠前制御手段
13e 記憶手段
14 駆動機構
14a 駆動装置
14b 錠前
15 2次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートに設けられる錠前を施解錠制御する電気錠装置を備え、前記ゲートの通行を許可するIDと対応付けされた可視光を照射する情報発光器を用いた可視光通信発電システムであって、
前記電気錠装置は、前記情報発光器からの可視光を含む外光を受光し、この受光した外光に応じた光起電力を発生して発電する受光発電部と、
前記受光発電部が発電した電力を蓄電する2次電池と、
前記受光発電部が前記情報発光器から受光した可視光による発電の強弱から前記ゲートの通過を許可するIDを取得し、この取得したIDと照合用IDとを照合比較して前記取得したIDの正当性を判別し、前記取得したIDを正常認証したときに前記ゲートを解錠制御する制御部とを備えたことを特徴とする可視光通信発電システム。
【請求項2】
ゲートに設けられる錠前を施解錠制御する電気錠装置を備え、前記ゲートの通行を許可するIDと対応付けされた可視光を照射する情報発光器を用いた可視光通信発電システムであって、
前記電気錠装置は、外光を受光し、受光した外光に応じた光起電力を発生して発電する受光発電部と、
前記受光発電部の受光領域の一部に配設され、前記情報発光器から照射される可視光を受光し、この受光した可視光から前記ゲートの通過を許可するIDを取得する情報取得部と、
前記受光発電部が発電した電力を蓄電する2次電池と、
前記受光発電部の発電により前記2次電池に蓄電される電力が設定値に達したときに前記情報取得部を起動させ、該情報取得部が取得したIDと照合用IDとを照合比較して前記取得したIDの正当性を判別し、前記取得したIDを正常認証したときに前記ゲートを解錠制御する制御部とを備えたことを特徴とする可視光通信発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−208387(P2011−208387A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75398(P2010−75398)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】