説明

合成樹脂成形品及びその製造方法

【課題】 複数の層構造を有する合成樹脂成形品であっても、層間剥離を防止し、且つ反りの発生を防止することができる合成樹脂成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の合成樹脂成形品は、外面層76間に中間層77が設けられて一体となった3層構造の合成樹脂成形品7である。中間層77の両側に積層された前記外面層76は充填材78が充填された合成樹脂組成物からなり、前記中間層77は、該中間層77の両側の外面層76のうちのいずれか一方の外面層76の樹脂が、充填材78を含ませることなく不織布6に含浸・硬化されて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、システムキッチンのカウンターや化粧カウンター等のカウンターに高級感を付与するために、人造大理石が用いられている。このような人造大理石のカウンターは、例えば、主剤となるエポキシ系樹脂に強度や耐熱性を向上させるための充填材を充填し、柄材や顔料を混入して合成樹脂組成物を形成し、このような合成樹脂組成物を硬化させてなる合成樹脂成形品であり、このものは単層(一層)構造である。
【0003】
ところで、人造大理石のカウンターのように、大理石調の外観を呈する表面が化粧面となった合成樹脂成形品を成形するに当たっては、大理石調の模様、深み感や立体感を現出するために、高価な合成樹脂組成物を使用して成形しなければならない。そのため、従来のように合成樹脂成形品全体を単層で構成すると、外観に寄与しない部分も高価な合成樹脂組成物を使用することになるため、使用する合成樹脂組成物のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、この問題を解決する策として、人造大理石のカウンターを二層で構成することが考えられる。すなわち、この人造大理石のカウンターの表面層に、大理石調の模様を現出するための高価な合成樹脂組成物を使うと共に、裏面層に大理石調の模様を現出する必要のない安価な合成樹脂組成物を使用して、コストダウンを図った二層構造の合成樹脂成形品を製造するというものである。
【0005】
ここで、二層構造の合成樹脂成形品を製造する一般的な方法として、従来から特許文献1により示す方法が知られている。
【0006】
この特許文献1に示された二層構造の合成樹脂成形品は、以下のように製造される。
【0007】
まず、上面型と第1下面型とを型閉めすることで形成されるキャビティに、第1の合成樹脂組成物を注入する。この第1の合成樹脂組成物が硬化した後、第1下面型をこの硬化した第1の合成樹脂組成物(第1層)から離型すると共に、第1層を上面型に密着させたまま第2下面型を型閉めする。この第1層の下面と第2下面型との間に形成されるキャビティに第2の合成樹脂組成物を注入する。そして、第2の合成樹脂組成物を硬化させることで第2層が形成される。
【0008】
以上のような方法で、第1層と第2層とが単に積層した二層構造の合成樹脂成形品が製造される。
【0009】
また、このような合成樹脂成形品の強度・耐熱性等を向上させるため、合成樹脂成形品を形成する合成樹脂組成物内に、充填材を充填させることが知られている(例えば特許文献2参照)。このような充填材は強度・耐熱性等を向上させるために充填されるが、それに加えて、樹脂に比べて安価な充填材においては、全体に対する充填材の割合を増やすことで、高価な樹脂の量を減らしてコストダウンを図ることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−162171号公報
【特許文献2】特開2005−335198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、二層構造の合成樹脂成形品を成形するに当たって、合成樹脂組成物に充填材を充填させると、各層の強度は向上するものの第1層と第2層との間における層間相互の密着力が弱くなり、層間剥離の問題が発生してしまう。ここで、第1層と第2層との結合は樹脂同士の密着力により結合しているため、充填材を含まない樹脂層同士の密着力がより強いものとなる。すなわち、第1層と第2層との界面に充填材が介在してしまうと、その充填材の分だけ隣り合って密着する樹脂同士の面積が減少してしまい、樹脂層間の密着力の低下につながってしまうと考えられる。
【0012】
また、上記のようなコストダウンを図るための二層構造の合成樹脂成形品は、表面層を高価な合成樹脂組成物からなる樹脂層とすると共に、裏面層を安価な合成樹脂組成物からなる樹脂層とすることがコストの点からも効率が良い。しかしこのように表面層と裏面層との材料構成を異ならせると両者の線膨張率は相違してしまう。このため、この合成樹脂成形品に熱が加わると、膨張率の差により反りが発生してしまうという問題が生じてしまう。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の層構造を有する合成樹脂成形品であっても、層間剥離を防止し、且つ反りの発生を防止することができる合成樹脂成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の合成樹脂成形品及びその製造方法は以下の構成を備えている。
【0015】
すなわち、請求項1に係る本発明の合成樹脂成形品は、外面層76間に中間層77が設けられて一体となった3層構造の合成樹脂成形品7である。中間層77の両側に積層された前記外面層76は充填材78が充填された合成樹脂組成物からなり、前記中間層77は、該中間層77の両側の外面層76のうちのいずれか一方の外面層76の樹脂が、充填材78を含ませることなく不織布6に含浸・硬化されてなるものである。
【0016】
このように構成したことで、外面層76間に中間層77を介在させた3層構造の合成樹脂成形品7において、充填材78の含まれた外面層76間に、充填材78を含まない樹脂層からなる中間層77が介在することとなる。さらに、外面層76が充填材78の含まれた強度の高い樹脂層となり、中間層77が充填材78の含まれない柔軟な樹脂層となる。
【0017】
また、請求項2に係る合成樹脂成形品の製造方法は、請求項1記載の合成樹脂成形品7を製造するための製造方法である。固定型1に対して可動自在となった可動型2が、第1のキャビティ41を形成する第1の成形位置と、第2のキャビティ42を形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在とされる。可動型2を第1の成形位置に位置させることで第1のキャビティ41が形成されると共に、前記不織布6が第1のキャビティ41内に可動型2に沿って配設される。この状態で充填材78が充填された第1の合成樹脂組成物71を第1のキャビティ41内に注入して、前記不織布6に充填材78を入れることなく樹脂を含浸させる。その後、可動型2を第2の成形位置に移動させることで可動型2と対向する面に前記不織布6が残置された第2のキャビティ42が形成され、この状態で第2のキャビティ42内に充填材78が充填された第2の合成樹脂組成物72を注入する。その後、可動型2を離型させることで3層構造の合成樹脂成形品7が得られる。
【0018】
このように構成したことで、可動型2に沿って不織布6が配設された第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71を注入し、不織布6に充填材78を入れることなく樹脂を含浸させると、充填材78を含まない樹脂層が形成される。この状態で第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72を注入すると、この第2の合成樹脂組成物72は充填材78の充填されていない中間層77と密着する。そして、外面層76が充填材78の含まれた強度の高い樹脂層となり、中間層77が充填材78の含まれない柔軟な樹脂層となった3層構造の合成樹脂成形品7が製造される。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の合成樹脂成形品は、中間層77が、外面層76のうちのいずれか一方の外面層76の樹脂を不織布6に含浸したうえで硬化して構成されているため、前記一方の外面層76と中間層77との密着力はアンカー効果により強固なものとなる。さらに、この中間層77は充填材を含んでいないため、他方の外面層76との密着力も強固なものとなる。このため、3層構造の合成樹脂成形品であっても、層間剥離を防止することができる。
【0020】
また本発明の合成樹脂成形品は、外面層76が充填材の含まれた強度の高い樹脂層となり、中間層77が充填材の含まれない柔軟な樹脂層となっているため、反りが発生した場合においても、柔軟な中間層77が外面層76の線膨張率の差を吸収することができる。このため、3層構造の合成樹脂成形品であっても、反りの発生を防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の合成樹脂成形品の概略断面図である。
【図2】同上の製造方法を説明するための概略側断面図であり(a)〜(e)はその製造方法の製造工程を説明するための図である。
【図3】同上の第1の合成樹脂組成物を注入した直後の概略側断面図である。
【図4】同上の図1における金型装置のD(図2(a))から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明の合成樹脂成形品7の一例として、本実施形態においては図1に示すような3層構造の樹脂成形品となっている。
【0024】
この合成樹脂成形品7は、一例として、人造大理石カウンター7aを例示することができる。そしてこの合成樹脂成形品7は、図1に示すように、第1の合成樹脂組成物71からなる外面層76としての表面層73と、第2の合成樹脂組成物72からなる外面層76としての裏面層74と、表面層73と裏面層74との境界に設けられて表面層73と裏面層74と一体となった中間層77とで構成される3層構造の合成樹脂成形品7となっている。
【0025】
本実施形態の表面層73は人造大理石カウンター7aの化粧面となる。この表面層73は第1の合成樹脂組成物71から形成されており、該第1の合成樹脂組成物71には少なくとも充填材78が充填されている。詳しく説明すると、主剤となるエポキシ系・アクリル系・不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂に充填材78が充填されており、充填材78には、シリカ・炭酸カルシウム・アルミニウム粉末等が好適に用いられる。なお、この充填材78は、合成樹脂成形品7の強度・耐熱性などを向上させる。本実施形態の合成樹脂組成物71は、このような充填材78が充填された合成樹脂組成物71に、柄材(図示せず)を混入して構成されている。この柄材は、顔料を混入した樹脂を主剤とする組成物でシートを作り、このシートを小さく破断することで形成される。
【0026】
一方、裏面層74は、第2の合成樹脂組成物72から形成されている。この第2の合成樹脂組成物72も主剤となるエポキシ系やアクリル系・不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂に充填材78が充填されており、充填材78には、シリカや炭酸カルシウム・アルミニウム粉末等が好適に用いられる。
【0027】
なお、表面層73を形成する合成樹脂組成物71のほうが、裏面層74を形成する合成樹脂組成物72よりも高価なものとなっている。つまり、第1の合成樹脂組成物71は柄材を特別に製造する必要がある分、第2の合成樹脂組成物72よりも高価なものとなる。
【0028】
中間層77は、表面層73を構成する第1の合成樹脂組成物71の樹脂を含浸した不織布6が硬化することで構成されている。つまり、この不織布6には充填材78が含まれていない。このためこの中間層77は、表面層73及び裏面層74よりも弾性率が低くなり、表面層73及び裏面層74に比べて柔軟な層となっている。
【0029】
本実施形態の不織布6は、熱可塑性の不織布6を用いており、充填材78が通過しないような構成となっている(図3参照)。具体的には、厚さ250μmの不織布6を用いており、不織布6を構成する繊維径が20〜30μm、繊維間の隙間は10〜30μmのものを用いている。特に、繊維間の隙間が充填材78の平均粒径未満のものを用いることが好ましい(充填材78の平均粒径以下でも可)。ここで、不織布6が熱可塑性である点は特に限定されない。
【0030】
なお、本実施形態の表面層73及び裏面層74に含まれる充填材78は、平均粒径が30μm程度のものが用いられている。
【0031】
ところで、このような3層構造の合成樹脂成形品7は、各層の樹脂同士が密着することにより層間の結合がなされている。つまり、充填材78は界面の密着強度に寄与しないため、樹脂層同士の界面に充填材78が介在してしまうと、密着面積の減少を招き、結果として層間同士の密着力の低下につながってしまう。
【0032】
そこで、本実施形態においては、第1の合成樹脂組成物71に含まれる充填材78を通過させないような繊維間の隙間によって構成された不織布6を用いることによって、不織布6に樹脂のみ(充填材78を含まない樹脂)を含浸させて中間層77を形成している。これにより、裏面層74と中間層77との界面における充填材78の介在する量を減らすことができる。この結果、本実施形態の合成樹脂成形品7は、充填材78を通過させるような多孔質のシート(充填材78を通過させるような目の粗い不織布6も含む)を外面層76間に介在させてなる多層構造の合成樹脂成形品よりも、層間相互の密着力をより一層強いものとすることができる。
【0033】
さらに、本実施形態の合成樹脂成形品7は、高価な第1の合成樹脂組成物71よりなる表面層73を薄く形成し、且つ安価な第2の合成樹脂組成物72よりなる裏面層74を厚く形成することで、高価な第1の合成樹脂組成物71の使用量を減らしてコストダウンを図ることができる。このとき、表面層73を高価な樹脂とすると共に裏面層74を安価な樹脂とし、両者の材料構成を異ならせたことで線膨張率の差が生まれ反りが発生したとしても、充填材78を含んでいない中間層77の弾性率が、充填材78を含む外面層76の弾性率よりも小さくなるので、この柔軟な中間層77により反りを吸収できる。この結果、反りの発生を抑制することも可能となる。なお、本実施形態の中間層77の弾性率は外面層76の弾性率の1/3〜1/5となっている。
【0034】
以上、本発明の合成樹脂成形品7の構成を、人造大理石カウンター7aに基づいて説明した。以下、合成樹脂成形品7の一例の人造大理石カウンターの製造方法を説明する。
【0035】
本実施形態の製造方法は、図2に示す金型装置Aを用いることによって人造大理石カウンターを製造する。
【0036】
金型装置Aは、金型8と、金型8内に合成樹脂組成物71,72を注入する第1のノズル91及び第2のノズル92とを備えている。この金型8は、固定型1と、固定型1に対して可動自在となった可動型2と、サイド型3とを有している。そして、この金型8には、上記実施形態の不織布6の外周端部を保持するためのシート保持手段93が設けられている(図4)。
【0037】
固定型1には、可動型2と対向する面に第1の成形部11が設けられている。この第1の成形部11は固定型1に設けられた凹部で構成されている。第1の成形部11の周囲の部分には、サイド型3を載置可能なサイド型載置部12が設けられている。このサイド型載置部12の周方向の一部には、後述の注入圧受け部51を有する支持プレート5を保持するためのプレート挿入凹所31が形成されている。このプレート挿入凹所31は、サイド型載置部12の周方向の一部を凹ませて形成されているが、第1の成形部11の周囲が矩形状をしている場合には、矩形状の一辺の全長に亘ってプレート挿入凹所31が形成されていたり、あるいは、矩形状の一辺の該辺方向の一部にプレート挿入凹所31が形成されていたりする。また、第1の成形部11の周囲が矩形状をしていない場合には、第1の成形部11の周囲の一部にプレート挿入凹所31が形成される。さらに、第1の成形部11の周囲に設けられたサイド型3と対向する面において、プレート挿入凹所31が設けられていない部分は、固定型側保持部13となっている。
【0038】
固定型1の第1の成形部11の底面には第1のノズル91が設けられている。この第1のノズル91は、プレート挿入凹所31に装着した状態の支持プレート5の注入圧受け部51に臨むように設けられている。
【0039】
サイド型3は、固定型1の第1の成形部11の周囲に設けられたサイド型載置部12の上部に、取り外し自在に設けられている。サイド型3には、固定型1に対向する面において、第1の成形部11側の縁部にサイド型側保持部32が設けられている。また、サイド型3の可動型2と対向する面(第1の成形部11に対し略直角な面)には、サイド型側摺接部33が設けられている。さらに、このサイド型3の可動型2と対向する面(第1の成形部11に対し略平行な面)の一部には、注入した合成樹脂組成物が外部に漏れるのを防止する漏れ防止手段34が設けられている。本実施形態の漏れ防止手段34は、可動型2の移動方向に突没自在に設けられた膨出部34aによって構成されており、この膨出部34aは、サイド型3から可動型2に向けて突出し、その突出先端が可動型2に当接した状態で可動型2の移動に追従するようになっている。
【0040】
上記固定型1のプレート挿入凹所31には、図2及び図4に示すように、板状の支持プレート5が装着される。この支持プレート5は、プレート挿入凹所31に装着された状態において、可動型2の移動方向に直角な平面を有している。この支持プレート5は注入圧受け部51側が第1の成形部11の凹部内に突出すると共に、その反対側の端部は固定型1のプレート挿入凹所31内にぴったりと嵌め合わされる。このプレート挿入凹所31内に嵌合された支持プレート5は、図4に示すように、プレート挿入凹所31に面していない面(図4中の上面)が固定型側保持部13に面一となるようになっており、この面一となった面とサイド型3のサイド型側保持部32とが対向するようになっている。本実施形態においては、このサイド型側保持部32と固定型側保持部13と支持プレート5とで、不織布6の外周端部を保持するためのシート保持手段93を構成している。
【0041】
すなわち、プレート挿入凹所31に支持プレート5を装着した状態の固定型1の固定型側保持部13に、固定型1の第1の成形部11を不織布6で覆うようにして、該不織布6の外周端部を載置する。この状態で固定型1に対してサイド型3を型閉めして、固定型側保持部13及び支持プレート5とサイド型側保持部32とでこの不織布6の外周端部を挟持させる。また、サイド型3と固定型1との型閉め状態において、不織布6の外周端部付近の一部が支持プレート5の注入圧受け部51の可動型2に対向する面に当接しており、前記不織布6の一部が支持プレート5のかかる面に支持されている。
【0042】
可動型2は、固定型1の第1の成形部11と対向する部位に第2の成形部21が形成されている。この第2の成形部21は、可動型2に設けられた該可動型2の移動方向に直角な平面からなる可動型側成形部22を有しており、この可動型側成形部22とサイド型3の一部とで構成されている。サイド型3と対向する可動型2の側面には、可動型側摺接部23が設けられている。可動型2はサイド型3に沿って移動し、可動型2の移動に際してこの可動型側摺接部23とサイド型側摺接部33とが摺接して、可動型2の移動がガイドされている。
【0043】
また、可動型2の可動型側成形部22の平面の一部には第2のノズル92が設けられている。この第2のノズル92は、第1のノズル91と同様に、プレート挿入凹所31に装着した状態の支持プレート5の注入圧受け部51に臨むように設けられており、第1のノズル91と第2のノズル92とは互いに対向する位置に設けられている。すなわち、第1のノズル91の注入方向と第2のノズル92の注入方向が、互いに支持プレート5に向くように設置されている。
【0044】
なお、固定型1及び可動型2の第1及び第2のノズル91,92を設けた部分とは反対側の端部には、図示しないベントノズルが設けられている。このベントノズルによって、第1及び第2のノズル91,92から合成樹脂組成物を注入した際の脱気を行なうことができる。
【0045】
このような可動型2は、第1のキャビティ41を形成する第1の成形位置と、第2のキャビティ42を形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在となっている。
【0046】
第1の成形位置は、図2(a)に示す可動型2の位置をいう。可動型2を第1の成形位置に位置させると、平面からなる可動型側成形部22と固定型1の第1の成形部11の凹部底面とが離間した状態となり、この可動型側成形部22と固定型1の第1の成形部11とで第1のキャビティ41が形成される。
【0047】
第2の成形位置は、図2(b)に示す可動型2の位置をいう。この第2の成形位置は、可動型2を前記第1の成形位置から固定型1とは離れる方向に所定の距離移動させた位置である。可動型2を第2の成形位置に移動させると、前記第1のキャビティ41に沿って第2のキャビティ42が形成される。
【0048】
離型位置は、図2(d)に示す可動型2の位置をいう。この離型位置は、可動型2を前記第2の成形位置から更に固定型1とは離れる方向に移動させた位置である。可動型2を離型位置に位置させることによって、合成樹脂成形品7を取り出すことができる。
【0049】
以上のように構成された金型装置Aを使用して、合成樹脂成形品7としての人造大理石カウンターが以下のように製造される。
【0050】
第1の合成樹脂組成物71の充填材78を通過させないように構成された不織布6の外周端部をシート保持手段93によって保持させる。そして、図2(a)に示すように、可動型2を第1の成形位置に位置させる。可動型2を第1の成形位置に位置させると第1のキャビティ41が形成される。この状態の第1のキャビティ41内においては、第1の成形位置にある可動型2の固定型1に対向する面に沿って前記不織布6が配設されている。このとき、支持プレート5は不織布6よりも固定型1側に位置している。この状態で、第1のノズル91から第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71を注入させる。すると、注入された第1の合成樹脂組成物71は、図2(a)の矢印のように支持プレート5の注入圧受け部51に当たって向きを変え、第1のキャビティ41内を前記不織布6の表面に沿って流れる。このようにして、第1のキャビティ41内に第1の合成樹脂組成物71が充填される。
【0051】
このとき、図3に示されるように、この不織布6は、第1の合成樹脂組成物71の充填材78を通過させないような繊維間の隙間を有するように構成されているため、第1の合成樹脂組成物71の充填材78を入れることなく樹脂を含浸させた状態となる。
【0052】
次に、この状態のままで、第1の合成樹脂組成物71を硬化させるために固定型1を加熱させて、該第1の合成樹脂組成物71を半硬化又は硬化させる。このとき、樹脂を含浸した不織布6からなる中間層77も半硬化又は硬化する。
【0053】
この後固定型1を加熱した状態のまま、可動型2を第1の成形位置から第2の成形位置に移動させる。可動型2を第2の成形位置に位置させると、可動型2と対向した半硬化又は硬化状態の第1の合成樹脂組成物71に不織布6が残置されたままとなっている。そして、この不織布6よりも可動型2側に、第1の合成樹脂組成物71に沿って第2のキャビティ42が形成される。なおこの時、第1の合成樹脂組成物71の可動型2側の部分が、仮に半硬化状態であっても、可動型2と第1の合成樹脂組成物71との間には不織布6が介在しているため、可動型2を移動させても半硬化状態の第1の合成樹脂組成物71はほとんど可動型2に付着しない。
【0054】
第1の合成樹脂組成物71が半硬化状態の時に可動型2を移動させれば、前記不織布6は、充填材78を通過させないものの、10〜30μm程度の隙間は存在するため、第1の合成樹脂組成物71内に含まれる気泡が不織布6を通過し、この気泡を第2のキャビティ42内に抜くことができる。すなわち、不織布6により、第1の合成樹脂組成物71内の気泡を脱泡することができるので、第1の合成樹脂組成物71が気泡を含んだままの状態で硬化されるのを防止し、成形後の強度を向上させることができる。
【0055】
次に第2のキャビティが形成された状態で、第2のノズル92から第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72を注入させる。すると、注入された第2の合成樹脂組成物72は、図2(c)の矢印のように支持プレート5の注入圧受け部51に当たって向きを変え、第2のキャビティ42内を不織布6の表面に沿って流れる。
【0056】
第2のキャビティ42内に第2の合成樹脂組成物72が注入されると、固定型1のみならず可動型2による加熱も開始し、可動型2及び固定型1の両側からの加熱によって合成樹脂組成物を完全に硬化させる。
【0057】
合成樹脂組成物が完全に硬化したら、固定型1及び可動型2の加熱を停止すると共に、可動型2を離型位置に移動させて型開きする。可動型2を離型位置に位置させるとサイド型3を固定型1のサイド型載置部12から取り外すことが可能となるため、固定型1からサイド型3を取り外す。すると、硬化した合成樹脂組成物を固定型1から取り外すことができるようになるため、固定型1から前記硬化した合成樹脂組成物を取り外す。
【0058】
脱型させた硬化状態の合成樹脂組成物は、成形の際に不織布6の外周端部をシート保持手段93によって保持していたため、外周に不織布6のシート保持手段93によって保持されていた外周端部が突出し、また、支持プレート5のプレート挿入凹所31内に嵌合されていた部分も突出した状態となっている。そこで、まず、第1の合成樹脂組成物71と不織布6との間に固着された支持プレート5をこの硬化した合成樹脂組成物から抜き取る。支持プレート5を抜き取ると、硬化した合成樹脂組成物の先端に溝75が生じてしまうため、前記不織布6の外周端部の外方に突出した部分と共に溝75部分を切断して除去する。このようにして、合成樹脂成形品7が完成する。
【0059】
また、第1のキャビティ41に第1の合成樹脂組成物71を充填する工程において、可動型2に沿って不織布6を配設した上で前記合成樹脂組成物71を充填するようにしたため、この第1の合成樹脂組成物71が半硬化状態のままでも、可動型2に第1の合成樹脂組成物71を付着させないで該可動型2を第2の成形位置に移動させることができる。この結果、第1の合成樹脂組成物71の充填後、完全に硬化するまで時間を要していた従来のものに比べて、短時間で合成樹脂成形品7を製造することができる。
【0060】
ところで、仮に、不織布6を配設せずに第1及び第2の合成樹脂組成物71,72を注入すると、第1の合成樹脂組成物71と第2の合成樹脂組成物72とが一部混じり合ったり、あるいは第1の合成樹脂組成物71が第2の合成樹脂組成物72に食い込んだり、あるいは、第2の合成樹脂組成物72が第1の合成樹脂組成物71に食い込んだりする。このため、表面層73の厚みを一定の厚みに確保できず、場合によっては裏面層74が表面近くに位置したり、あるいは裏面層74が表面に露出したりする場合もあった。しかし、本実施形態では、第2のキャビティ42に第2の合成樹脂組成物72を充填する工程において、第1の合成樹脂組成物71の可動型2側の面に不織布6が残置された状態となっているため、第2のノズル92の注入圧や第1の合成樹脂組成物71の硬化状態に影響を受けずに第2の合成樹脂組成物72を充填することができる。これにより、第1及び第2の合成樹脂組成物72により形成される表面層73及び裏面層74の各厚みを、設計寸法通りに且つ一定の厚みに成形することができる。
【0061】
また本実施形態では、第1及び第2のノズル92を支持プレート5に向けて注入するようにしているため、注入圧によって不織布6が変形するのを防ぐことができる。
【0062】
また、上記実施形態とは異なり、表面層73にアクリル樹脂を主剤とした透明な合成樹脂組成物を用いると共に、不織布6に化粧面を形成した構成とすることもできる。このような合成樹脂成形品7によれば、表面層73を通して不織布6の化粧面を見せることにより、従来にない外観を呈することができ、深み感を増した合成樹脂成形品7を製造することができる。
【0063】
また、上記実施形態において、第1の合成樹脂組成物71を裏面層74にすると共に第2の合成樹脂組成物72を表面層73にしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
6 不織布
7 合成樹脂成形品
7a 人造大理石カウンター
73 表面層
74 裏面層
76 外面層
77 中間層
78 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面層間に中間層が設けられて一体となった3層構造の合成樹脂成形品であって、
中間層の両側に積層された前記外面層は充填材が充填された合成樹脂組成物からなり、
前記中間層は、該中間層の両側の外面層のうちのいずれか一方の外面層の樹脂が、充填材を含ませることなく不織布に含浸・硬化されてなることを特徴とする合成樹脂成形品。
【請求項2】
請求項1記載の合成樹脂成形品を製造するための製造方法であって、
固定型に対して可動自在となった可動型が、第1のキャビティを形成する第1の成形位置と、第2のキャビティを形成する第2の成形位置と、離型位置との間で移動自在とされ、
可動型を第1の成形位置に位置させることで第1のキャビティが形成されると共に、前記不織布が第1のキャビティ内に可動型に沿って配設され、この状態で充填材が充填された第1の合成樹脂組成物を第1のキャビティ内に注入し、前記不織布に充填材を入れることなく樹脂を含浸させ、
その後、可動型を第2の成形位置に移動させることで可動型と対向する面に前記不織布が残置された第2のキャビティが形成され、この状態で第2のキャビティ内に充填材が充填された第2の合成樹脂組成物を注入し、
その後、可動型を離型させることで3層構造の合成樹脂成形品が得られることを特徴とする合成樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−46026(P2011−46026A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194730(P2009−194730)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】