説明

合成樹脂製二重管とその製造方法

【課題】 内管と外管との二重構造を有する合成樹脂製管であって、内管がオレフィン系樹脂よりなり、外管の一部を内管とは非接着性の硬質塩化ビニル樹脂製補強螺旋突条より形成して、可撓性と優れた耐圧強度を備えていると共に任意の部分から切断してもその切断端部の外周面にオレフィン系樹脂とは非接着性の継手用短管を隙間なく接着することができるようにする。
【解決手段】 オレフィン系樹脂製内管1の外周面に硬質塩化ビニル樹脂製補強螺旋突条3を巻装していると共にこの補強螺旋突条3の巻きピッチ間の螺旋状溝5内に内管1と一体に融着したオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材4を充填して補強螺旋突条3のほつれや離脱等を防止していると共に、補強螺旋突条3とともに外周面が全長に亘って面一状に連続した外管2を形成して継手用短管の接着を可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水管その他の配管として使用される長尺の合成樹脂製二重管とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水管や排水ホース等に使用される可撓性を有する合成樹脂管としては、安価にして多量生産に適した軟質塩化ビニル樹脂製の管体が使用されており、その端部に同質材料よりなる継手用短管を接着剤によって一体的に取付けることにより、管体同士を接続したり、該管体を給水口等に接続することが行われているが、管体全体を軟質塩化ビニル樹脂によって形成しているために、耐圧強度が弱くて径方向に外圧が作用すると容易に圧潰して円滑な排水が行えなくなると共に、湾曲させた場合にもその湾曲部が偏平状に座屈した状態となって円滑な流通が阻害されるといった問題点がある。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載されているように、オレフィン系樹脂、又は軟質塩化ビニル樹脂よりなる可撓性を有する合成樹脂製ホース主体の外周面に硬質塩化ビニル樹脂等の補強螺旋突条を巻装してこの補強螺旋突条により合成合成樹脂製のホース主体に耐圧強度を付与していると共に、ホース主体の両端部をこのホース主体と同一合成樹脂によって内外周面が平滑な面に形成した一定の厚みを有する接続口部に形成してなる合成樹脂製ホースが開発されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−286172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記合成樹脂製ホースによれば、ホース主体を軟質塩化ビニル樹脂によって形成すると、焼却した場合には多量のダイオキシンが発生して環境汚染を引き起こすことになると共に耐候性に劣って耐用年数が短くなり、その上、その内部に含んでいる可塑剤が移行して弊害が生じる虞れがある。
【0006】
このような問題点は、ホース主体をポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂によって形成した場合には解消することができるが、オレフィン系樹脂は接着性が悪いために、オレフィン系樹脂によって可撓性を有する上記ホース主体を形成すると、その外周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条を融着させることができず、従って、この合成樹脂製ホースにおいては、補強螺旋突条をホース主体に一体に融着しているオレフィン系樹脂よりなる被覆層によって被覆しておく必要があり、製造に手間を要するばかりでなく、被覆層が破れると、補強螺旋突条が飛び出す虞れがある。
【0007】
さらに、このようにホース主体の外周面に補強螺旋突条を巻装してなる合成樹脂製ホースの大きな問題点は、硬質塩化ビニル樹脂等からなる継手用短管によって他の塩化ビニル樹脂よりなるホースや管体と接続したり給水口等に接続したりする場合に、例え、ホース主体を軟質塩化ビニル樹脂より形成してこのホース主体の外周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる上記補強螺旋突条を一体に融着させておいても、ホースを所定長に切断してホース端の外周部に突設している補強螺旋突条に継手用短管の一半部を被嵌して接着剤によって固着させると、このホース内を流通する水が継手用短管によって接続している該ホース端と他の管体等との接続部を流通する際に、これらのホース端面と管体等の端面とを突き合わせ端面間から継手用短管の内周面に接している上記補強螺旋突条間の螺旋状溝内を伝って外部に漏水することになる。
【0008】
このため、外周面に補強螺旋突条を設けている合成樹脂製ホースにおいては、所望長さに切断して使用することができず、そのため、比較的短尺のホース主体の両端部に、内外周面が平滑な面に形成した一定の厚みを有する接続口部を設けてなる定尺のホースの構造として使用せざるをえず、使用範囲が大きく制限されるといった問題点があった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、外周面に補強螺旋突条を設けているにもかかわらず、両端部に内外周面が平滑な接続口部などを設けることなく、長尺にしてどの部分から切断してもその切断端部の外周面に継手用短管の内周面を全面的に密嵌合させた状態で強固に取り付けることができる優れた耐圧強度と適度な可撓性を有する合成樹脂製二重管とその製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の合成樹脂製二重管は請求項1に記載したように、オレフィン系樹脂よりなる可撓性を有する内管の外周面に、硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条を一定のピッチでもって巻装していると共にこの補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成された螺旋状溝内にオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材を埋設状態に充填してこの軟質樹脂充填材の内周面を上記内管の外周面に一体に融着させ、且つ、この軟質樹脂充填材によって上記補強螺旋突条を内管から離脱不能に保持させてあり、さらに、補強螺旋突条と軟質樹脂充填材との外周面を管の長さ方向に面一状に連続させてこれらの補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とにより外周面が平滑な外管を形成し、この外管と上記内管とによって二重管を構成している。
【0011】
このように構成した合成樹脂製二重管において、請求項2に係る発明は、上記硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条を、その両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を有する断面凸字状または台形状に形成している一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材の両端面に上記係止面上に重ね合わせ状に係合する係止面を形成していることを特徴とする。
【0012】
一方、請求項3に係る発明は、上記硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の両端面を凹凸係止面に形成している一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材の両端面をこの凹凸係止面に係合する凹凸係止面に形成していることを特徴とする。また、請求項4に係る発明は、上記補強螺旋突条の中央部を内管の外周面に向かって開口した開口部を有する中空部に形成していることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記合成樹脂製二重管の製造方法であって、成形回転軸上に一定幅と一定厚みを有する半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる軟質合成樹脂製帯状材を螺旋巻きすることにより、一定厚みの可撓性を有する内管を形成すると共に、この内管の外周面に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる硬質合成樹脂紐状材を一定のピッチでもって螺旋状に巻装することにより補強螺旋突条を形成し、さらに、先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填してこの軟質樹脂充填材の底面を補強螺旋突条部間の螺旋状溝部に露出している上記内管の外周面に一体に融着させると共に軟質樹脂充填材の頂面を補強螺旋突条の頂面と面一状に連続するように成形することにより、内管の外周面に上記補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とからなる外管を設けることを特徴とする。
【0014】
このように構成した合成樹脂製二重管の製造方法において、請求項6に係る発明は、半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条を、その両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を有する断面凸字状または台形状に成形している一方、内管の外周面に先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に供給、充填される半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材は、上記螺旋状溝内に供給充填されたのち、螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均されると共に、螺旋状溝内においては隣接する上記補強螺旋突条部の対向面に接して塑性変形させられて螺旋状溝内に充填され且つその底面をオレフィン系樹脂よりなる内管の外周面に一体に融着させられることを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条は、その両端面に凹凸係止面を有し且つ頂面を平坦な面に成形されている一方、内管の外周面に先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に供給、充填される半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材は、上記螺旋状溝内に供給、充填されたのち、螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均されると共に、螺旋状溝内においては隣接する上記補強螺旋突条部の対向する凹凸係止面に接して塑性変形させられて螺旋状溝内に充填され且つその底面をオレフィン系樹脂よりなる上記内管の外周面に一体に融着させられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、オレフィン系樹脂よりなる可撓性を有する内管と、この内管の外周面に螺旋巻きした硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条とこの補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成されている螺旋状溝内に充填した軟質樹脂充填材とによって形成してなる外管とから、外周面が全長に亘って平滑な合成樹脂製二重管を構成しているので、硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条によって全長に亘り耐圧潰強度を付与することができると共に、湾曲させても偏平状に変形することなく断面円形状を保持して良好な排水機能を発揮することができるのは勿論、長さ方向のどの部分から切断してもその切断端部の外周面には硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条とオレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材との互いに面一状に連続した頂面が存在するので、この管端部に他の管体等との接続を行うための硬質塩化ビニル樹脂等からなる継手用短管の一半部を被嵌させた際に、硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条と接するその内周面をこの補強螺旋突条の頂面に接着剤によって確実に接着することができると共に、面一状に連続した補強螺旋突条と軟質樹脂充填材との頂面により形成されている管の端部外周面に継手用短管の内周面を全面的に密接させることができて漏水などの発生を確実に防止することができる。
【0017】
さらに、内管がオレフィン系樹脂よりなるので、可塑剤による弊害が生じることなく長期の使用に供することができると共に、このオレフィン系樹脂よりなる内管の外周面に螺旋状に巻装している硬質塩化ビニル樹脂よりなる上記補強螺旋突条は、オレフィン系樹脂とは非接着性であるにもかかわらず、この補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成されている螺旋状溝内に充填した軟質樹脂充填材はオレフィン系樹脂よりなり、且つ、その内周面をオレフィン系樹脂よりなる上記内管の外周面に一体に融着させていると共にこの軟質樹脂充填材によって上記補強螺旋突条を内管から離脱不能に保持させているので、管を所望長さ部分から切断しても、補強螺旋突条が切断端部からほつれたりする虞れはなく、常に、内管上に固定させられて正確な二重管構造を保持し、取扱性に優れていると共に施工が容易な合成樹脂製二重管を提供することができる。
【0018】
また、この合成樹脂製二重管の内管は、上記のように可撓性を有するオレフィン系樹脂からなり、外管は硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条とこの補強螺旋突条とは非接着性のオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材とからなるので、湾曲させた際に、内側湾曲部においてはオレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材が補強螺旋突条により挟圧されて圧縮する一方、外側湾曲部においては硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条と、この補強螺旋突条とは非接着性の上記オレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材との接合面が離れる方向に移動して全長に亘って均一に湾曲させることができ、従って、比較的大径ではあるがドラム等に巻装することができるので、十数メートル以上、さらには数十メートル以上の長い合成樹脂製二重管を巻き取っておくことができ、施工に際しては上述したように所望長さに切断して継手管等を介して他の配管に簡単且つ確実に接続させることができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、硬質塩化ビニル樹脂よりなる上記補強螺旋突条は、その両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を有する断面凸字状または台形状に形成されている一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材は、その両端面を上記係止面上に重ね合わせ状に係合する係止面に形成しているので、オレフィン系樹脂からなる内管の外周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の内周面が接着していないにもかかわらず、内管の外周面に一体に融着しているオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材がその係止面を補強螺旋突条の係止面上に係止させた状態となって管の端部側から補強螺旋突条がほつれたり離脱するのを確実に阻止することができ、補強螺旋突条と軟質樹脂充填材との頂面によって外管の外周面を面一状に形成しておくことができる。
【0020】
さらに、請求項3に係る発明によれば、硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の両端面を凹凸係止面に形成している一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材の両端面をこの凹凸係止面に係合する凹凸係止面に形成しているので、内管と一体の軟質樹脂充填材の側端面に設けている凹凸係止面と内管とは接着していない硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の対向側端面に設けている凹凸係止面との係止によって上記請求項2と同様に、補強螺旋突条が内管からほつれたり離脱するのを確実に防止することができる。
【0021】
また、請求項4に係る発明によれば、上記硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の中央部を内管の外周面に向かって開口した開口部を有する中空部に形成しているので、材料費の削減は勿論のこと、管を湾曲させた場合にはこの補強螺旋突条がその湾曲度に応じてその開口部の開口幅を拡縮させることができ、従って、本発明の合成樹脂製二重管の湾曲性が一層良好となって取扱性、施工性等の向上を図ることができる。
【0022】
請求項5に係る発明は上記合成樹脂二重管の製造方法であって、成形回転軸上に一定幅と一定厚みを有する半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる軟質合成樹脂製帯状材を螺旋巻きすることにより、一定厚みの可撓性を有する内管を形成し、この内管の外周面に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる硬質合成樹脂紐状材を一定のピッチでもって螺旋状に巻装することにより補強螺旋突条を形成し、さらに、先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填することにより、これらの補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とで外管を形成するので、内管を形成しながらこの内管上に外管を連続的に形成していくことができて長さに制限されることなく長尺の合成樹脂製二重管を能率よく製造することができる。
【0023】
さらに、成形回転軸上で形成されていく内管の外周面において、先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に上記半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填してこの軟質樹脂充填材の底面を補強螺旋突条部間の螺旋状溝部に露出している上記オレフィン系樹脂よりなる内管の外周面に一体に融着させると共に軟質樹脂充填材の頂面を補強螺旋突条の頂面と面一状に連続するように成形するものであるから、オレフィン系樹脂よりなる内管上に巻装した補強螺旋突条は、オレフィン系樹脂とは非接着性の硬質塩化ビニル樹脂より形成されているにもかかわらず、補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成される螺旋状溝内に充填して内管と一体に融着したオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材によって内管上に正確に螺旋巻きした状態を保持することができると共に、これらの補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とを互いにその対向側面同士を隙間なく全面的に密接させた状態で管の長さ方向に連続して外周面を全長に亘って同一径の平滑面に形成した一定厚みの外管を正確に且つ円滑に形成することができる。
【0024】
また、上記合成樹脂製二重管の製造方法において、請求項6に係る発明は、内管上に螺旋巻きする半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を形成している一方、半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材は、補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成される上記螺旋状溝内に供給充填されたのち、螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって押圧するので、この軟質樹脂充填材の頂面を補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均すことができると共に、螺旋状溝内において軟質樹脂充填材が隣接する上記補強螺旋突条部の対向側端面に接して塑性変形して螺旋状溝内に充満し、硬化後には補強螺旋突条の両端部の係止面上に係止した面を形成して補強螺旋突条を内管上に離脱不能に保持しておくことができる。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を形成している上記請求項6に記載の補強螺旋突条に代えて、両側の端面に凹凸係止面を有し且つ頂面を平坦な面に成形している補強螺旋突条を使用し、この補強螺旋突条の巻きピッチ間によって内管上に形成される螺旋状溝内に半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填して螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって押圧するので、請求項6と同様に、この軟質樹脂充填材の頂面を補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均すことができると共に、螺旋状溝内において軟質樹脂充填材が隣接する上記補強螺旋突条部の対向側端面に接して塑性変形して螺旋状溝内に充満し、硬化後には補強螺旋突条の両端部の凹凸係止面に係止した凹凸係止面を形成して補強螺旋突条を内管上に離脱不能に保持しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は合成樹脂二重管の一部を断面した側面図、図2はその一部拡大断面図であって、可撓性を有するポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系樹脂よりなる一定厚みを有する内管1と、この内管1上に一体に設けられている外周面が全長に亘って同一径の平滑な面に形成されている一定厚みを有する外管2とからなり、この外管2は、内管1の外周面に一定のピッチでもって巻装している硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条3と、この補強螺旋突条3の巻きピッチ間、即ち、内管1の外周面に先に巻着した補強螺旋突条部と次に巻着した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝5内に該螺旋状溝5を全体に亘って埋設するように充填してなるオレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材4とから形成されている。
【0027】
上記螺旋状溝5の溝底面は内管1の外周面によって形成されてあり、この螺旋状溝5内に充填している上記軟質樹脂充填材4は内管1と同じ材料のオレフィン系樹脂よりなるので、製造時において半溶融状態の軟質樹脂充填材を螺旋状溝5内に供給、充填することによって内管1の外周面に該軟質樹脂充填材4の内周面(底面)を融着させて内管1と軟質樹脂充填材4とを一体化させていると共に螺旋状溝5内に全面的に充満して該螺旋状溝5と同一断面形状に形成されている。
【0028】
軟質樹脂充填材4と共に外管2を形成している上記補強螺旋突条3の断面形状としては特に限定されないが、この補強螺旋突条3はオレフィン系樹脂よりなる内管1とは非接着性の硬質塩化ビニル樹脂よりなるので、内管1の外周面に一体に融着した軟質樹脂充填材4によってこの補強螺旋突条3を内管1から巻き戻し方向に離脱不能に内管1上に保持させておくことができる断面形状に形成している。
【0029】
このような補強螺旋突条3の断面形状としては、図1、図2に示すものは、頂面3aが平坦な面に形成された一定厚みを有する凸字状に形成されていてその両側の端面をL字状の係止面3b、3bとしている。従って、管の長さ方向に隣接する補強螺旋突条部間の上記螺旋状溝5内に充填している軟質樹脂充填材4の断面形状は補強螺旋突条3を反転させた倒立凸字状に形成されていて、その底面を内管1の外周面に融着させていると共に両端面を補強螺旋突条3の上記L字状の係止面3b上に重ね合わせ状に係止した逆L字状の係止面4b、4bに形成して補強螺旋突条3が内管1からほつれたり巻き戻し方向に離脱するのを阻止してあり、さらに、軟質樹脂充填材4は補強螺旋突条3と同一厚みに形成されていてその平坦な頂面4aを補強螺旋突条3の頂面3aに面一状に連続させている。
【0030】
このように構成した合成樹脂製二重管を湾曲させると、内側湾曲部においては圧縮力が発生してオレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材4が硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条3により挟圧されて幅方向に圧縮する一方、外側湾曲部においては引張力が発生して、互いに接合している対向端面が一体に接着することなく単に密接した状態となっている補強螺旋突条3と軟質樹脂充填材4との該接合面が離間する方向に移動し、均一な曲げ半径でもって容易に湾曲させることができ、長尺の合成樹脂二重管をドラム等に巻装しておくことができる。
【0031】
また、配管の施工時において、この長尺の合成樹脂製二重管を所望長さに切断した場合には、オレフィン系樹脂からなる内管1上に螺旋巻きした硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条3は内管1とは一体に接着していないにもかかわらず、この補強螺旋突条3と共に外管2を形成しているオレフィン系樹脂からなる軟質樹脂充填材4は同一材料からなる内管1の外周面に一体に融着しており、且つ、補強螺旋突条3の係止面3b上にその内向き係止面4bを重ね合わせ状態で係合させているので、補強螺旋突条3はほつれることなく常に軟質樹脂充填材4と共に外周面が周方向及び長さ方向に連続した平滑な面を形成している管端部を維持することができ、従って、硬質塩化ビニル樹脂製等の継手管や継手部材をその管端部に接着剤を介して被嵌させることにより、この接着剤を管端部に螺旋状に露出している硬質塩化ビニル樹脂製補強螺旋突条3の外周面に接着させて継手管や継手部材を簡単且つ強固に二重管の端部に取付けることができ、配管作業が能率よく行うことができる。
【0032】
上記実施例においては、オレフィン系樹脂からなる内管1と非着着性の硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条3を断面凸字状に形成してその両端面に形成している係止面3b、3bを、この補強螺旋突条3の断面形状を反転させた断面倒立凸字状の軟質樹脂充填材4の両端面に形成している係止面4bにより押さえた係合状態にして補強螺旋突条3が内管1からほつれたり離脱するのを防止しているが、内管1と一体の軟質樹脂充填材4によって補強螺旋突条3のほつれ等を防止する構造としては上記以外に種々の構造を採用することができ、例えば、図3に示すように、補強螺旋突条3を断面台形状に形成してその両端傾斜面を傾斜係止面3b、3bとする一方、軟質樹脂充填材4の断面形状を、この補強螺旋突条3を反転させた倒立台形状に形成してその斜め下向き(内向き)に形成した両端傾斜係止面4bを補強螺旋突条3の上記傾斜係止面3bに接合、係止させた構造としておいてもよい。
【0033】
さらに、図4に示すように、補強螺旋突条3の上下面(内外面)を略同一幅の平坦な面に形成すると共に両端面を厚み方向(上下方向)にジグザグ状に屈曲した凹凸係止面3b、3bに形成する一方、軟質樹脂充填材4を補強螺旋突条3と同じ厚みを有し、且つ、上下面(内外面)を略同一幅の平坦な面に形成すると共に両端面を厚み方向(上下方向)に補強螺旋突条3の上記凹凸係止面3bに係合可能な凹凸係止面4b、4bに形成して、これらの凹凸係止面3b、4bの係合により内管1の外周面からこの内管1と非接着性の補強螺旋突条3がほつれたり離脱するのを防止した構造としておいてもよい。
【0034】
また、補強螺旋突条3を図5に示すように断面凸字状に形成してその両端部に上下面間に貫通する貫通孔3cを設けておき、この補強螺旋突条3を内管1の外周面に先に巻回した補強螺旋突条部の一端面に次に巻回する補強螺旋突条部の他端面を図6に示すように接合させながら螺旋状に巻装すると共に、この補強螺旋突条3の螺旋巻きによって形成される螺旋状溝5に半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填してこの軟質樹脂充填材の内層部の一部を上記補強螺旋突条3の貫通孔3c内に充満させてこの貫通孔3cを通じて内管1の外周面に融着させることにより、軟質樹脂充填材4によって硬質塩化ビニル樹脂からなる補強螺旋突条3がオレフィン系樹脂からなる内管1の外周面からほつれたり離脱するのを防止し、且つ、これらの補強螺旋突条3と軟質樹脂充填材4とによって外周面が面一状の平滑な面に形成した外管2を形成した構造としておいてもよい。なお、上記貫通孔3cは円形孔に限らず長孔であってもよい。
【0035】
さらにまた、上記補強螺旋突条3をいずれも中実構造としているが、例えば、断面形状の凸字状に形成している補強螺旋突条3において、図7に示すように、その中央部を内管1の外周面に向かって開口した開口部を有する中空部3dに形成しておいてもよく、このような中空部3dを設けておくと、可撓性を有するオレフィン系樹脂よりなる内管1の外周面にこの補強螺旋突条3と軟質樹脂充填材4とからなる外管2を形成してなる合成樹脂製二重管を湾曲させた場合、補強螺旋突条3の上記中空部3dが幅方向に拡縮変形して優れた湾曲性を発揮することができるものである。
【0036】
次に、上記のように構成した合成樹脂製二重管の製造方法を図8に基づいて簡単に説明すると、まず、一定幅と一定厚みを有する半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる帯状材11を第1成形ノズル21から押し出しながら周知のように成形回転軸20上に、先行する帯状材部の一側部(一半部)上に後続する帯状材部の対向側部(他半部)を重ね合わせて一体に融着させながら一定のピッチでもって螺旋状に巻回することによって内径が全長に亘って同一径で一定厚みを有する内管1を形成していくと共に、この内管1を形成する上記オレフィン系樹脂よりなる帯状材11に後続して第2成形ノズル22から断面凸字状に成形された半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる紐状材13を押し出して内管1の外周面に一定のピッチでもって螺旋状に巻回することにより補強螺旋突条3を形成する。この補強螺旋突条3の形成によって内管1上に先に螺旋状に巻回された補強螺旋突条部3'と次に螺旋状に巻回される補強螺旋突条3'との間に螺旋状溝5が連続的に形成される。
【0037】
さらに、この補強螺旋突条3を形成するための上記第2成形ノズル22からの半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる紐状材13を内管1上に螺旋巻きしていくのに後続して、第3成形ノズル23から半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状材14を押し出してこの紐状材14を上記補強螺旋突条3の巻きピッチ間によって形成された螺旋状溝5に供給、充填し、該螺旋状溝5からはみ出している該紐状材14の頂部を補強螺旋突条3の頂面に接して回転する均しローラ24によって押圧して紐状材14を塑性変形させながら螺旋状溝5内に全面的に充満させることにより螺旋状溝5と同一断面形状を有する軟質樹脂充填材4を形成し、このオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材4の頂面4aを補強螺旋突条3の頂面3aと面一状に成形すると共に底面を上記隣接する補強螺旋突条部3'、3'間に露出するオレフィン系樹脂よりなる内管1の外周面に押し付けて該外周面に融着させることにより内管1と一体化させ、この状態で冷却することにより、オレフィン系樹脂よりなる内管1の外周面に補強螺旋突条3と軟質樹脂充填材4とからなる外管2を一体に設けてなる合成樹脂製二重管を製造するものである。
【0038】
なお、上記合成樹脂製二重管の製造方法においては、内管1上に断面凸字状の補強螺旋突条3を螺旋巻きしているが、上記図3に示す断面台形状の補強螺旋突条3や図4に示す両側面に凹凸係止面3b、3bを設けている補強螺旋突条3、さらには図5〜図7に示す補強螺旋突条3であっても、上記と同じ製造方法によってこれらの補強螺旋突条3を使用した合成樹脂製二重管を製造することができる。また、成形回転軸20上に形成されるオレフィン系樹脂よりなる内管1上に硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条3を螺旋巻きすると共に先に巻着した補強螺旋突条部31と次に巻着した補強螺旋突条部31との間の螺旋状溝5内に供給、充填される半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材4の頂部を上記均しローラ24によって押圧することにより、軟質樹脂充填材4の頂面4aを補強螺旋突条3の頂面3aと面一状となるように成形する際に、上記均しローラ24と共にドクターナイフ(図示せず)を使用して余剰の軟質樹脂充填材4を掻き取ると共に外管2の外周面を平滑な面となるように成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明合成樹脂製二重管の一部を断面した側面図。
【図2】その一部拡大縦断側面図。
【図3】外管構造の変形例を示す一部の縦断側面図。
【図4】外管構造の別な変形例を示す一部の縦断側面図。
【図5】補強螺旋突条の変形例を示す斜視図。
【図6】この補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とで形成した外管部分の縦断側面図。
【図7】外管構造の更に別な変形例を示す一部の縦断側面図。
【図8】製造方法を説明するための一部を断面した簡略側面図。
【符号の説明】
【0040】
1 内管
2 外管
3 補強螺旋突条
3a 頂面
3b 係止面
4 軟質樹脂充填材
4a 頂面
4b 係止面
5 螺旋状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂よりなる可撓性を有する内管の外周面に、硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条を一定のピッチでもって巻装していると共にこの補強螺旋突条の巻きピッチ間によって形成された螺旋状溝内にオレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材を埋設状態に充填してこの軟質樹脂充填材の内周面を上記内管の外周面に一体に融着させ、且つ、この軟質樹脂充填材によって上記補強螺旋突条を内管から離脱不能に保持させてあり、さらに、補強螺旋突条と軟質樹脂充填材との外周面を管の長さ方向に面一状に連続させてこれらの補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とにより外周面が平滑な外管を形成していることを特徴とする合成樹脂製二重管。
【請求項2】
硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条は両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を有する断面凸字状または台形状に形成されている一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材はその両端面を上記係止面上に重ね合わせ状に係合する係止面に形成していることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製二重管。
【請求項3】
硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条の両端面を凹凸係止面に形成している一方、オレフィン系樹脂よりなる軟質樹脂充填材の両端面をこの凹凸係止面に係合する凹凸係止面に形成していることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製二重管。
【請求項4】
補強螺旋突条はその中央部を内管の外周面に向かって開口した開口部を有する中空部に形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の合成樹脂製二重管。
【請求項5】
成形回転軸上に一定幅と一定厚みを有する半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる軟質合成樹脂製帯状材を螺旋巻きすることにより、一定厚みの可撓性を有する内管を形成すると共に、この内管の外周面に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる硬質合成樹脂紐状材を一定のピッチでもって螺旋状に巻装することにより補強螺旋突条を形成し、さらに、先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材を供給、充填してこの軟質樹脂充填材の底面を補強螺旋突条部間の螺旋状溝部に露出している上記内管の外周面に一体に融着させると共に軟質樹脂充填材の頂面を補強螺旋突条の頂面と面一状に連続するように成形することにより、内管上に上記補強螺旋突条と軟質樹脂充填材とからなる外管を設けることを特徴とする合成樹脂製二重管の製造方法。
【請求項6】
半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条は、両端部に段状の係止面又は傾斜係止面を有する断面凸字状または台形状に成形されている一方、内管の外周面に先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に供給、充填される半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材は、上記螺旋状溝内に供給充填されたのち、螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均されると共に、螺旋状溝内においては隣接する上記補強螺旋突条部の対向面に接して塑性変形させられて螺旋状溝内に充填され且つその底面をオレフィン系樹脂よりなる内管の外周面に一体に融着させられることを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂製二重管の製造方法。
【請求項7】
半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強螺旋突条は、両端面に凹凸係止面を有し且つ頂面を平坦な面に成形されている一方、内管の外周面に先に巻装した補強螺旋突条部と次に巻装した補強螺旋突条部との間の螺旋状溝内に供給、充填される半溶融状態のオレフィン系樹脂よりなる紐状の軟質樹脂充填材は、上記螺旋状溝内に供給充填されたのち、螺旋状溝から突出するその頂部を補強螺旋突条の平坦な頂面に接して回転する均しローラによって補強螺旋突条の頂面と面一状となるように均されると共に、螺旋状溝内においては隣接する上記補強螺旋突条部の対向する凹凸係止面に接して塑性変形させられて螺旋状溝内に充填され且つその底面をオレフィン系樹脂よりなる内管の外周面に一体に融着させられることを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂製二重管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−85334(P2009−85334A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255494(P2007−255494)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000114994)エバック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】