説明

含フッ素化合物からなる機能性材料

潤滑剤、除酸剤、各種イオン性液体材料、太陽電池の電解質、アクチュエータ材料として有用なイオン性液体型機能性材料を提供する。式(1):
[化1]


〔式中、−D−は、式(1−1):
[化2]


(式中、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;nは1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、mが2以上の場合、2種以上のDは同じかまたは異なっても良い;Raは前記Dを含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、mが2以上の場合、2種以上のRaは同じかまたは異なっても良い;mは1〜4の整数;Ryは塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基である。ただし、上記式(1)および(1−1)において−O−O−の単位を含まない]で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物からなるイオン性液体型機能性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性官能基を有しかつ特定の含フッ素エーテル由来の構造単位を含有する芳香族化合物からなる機能性材料に関し、イオン性液体、太陽電池電解質、潤滑剤、除酸剤、アクチュエータ材料などとして有用である。
【0002】
またさらに本発明は塩基性官能基を含む芳香族環状構造の部位と、含フッ素エーテル構造の部位を側鎖に有する含フッ素重合体からなる機能性材料に関し、イオン性液体型ポリマーなどとして有用である。
【背景技術】
【0003】
従来、含フッ素エーテルは主にポリエーテルの形態で、その優れた耐酸化性、耐候性、耐薬品性を生かし、熱安定性、化学的安定性が高いオイルとして、潤滑剤やグリースなどの様々な用途に用いられている。また、含フッ素ポリエーテルの片末端、または両末端をカルボン酸、スルホン酸、水酸基、またはそれらの酸を塩基で中和した酸塩は、溶剤溶解性の向上、極性基の導入による基板密着性の向上といった特徴を生かして、レジスト用反射防止膜用途や基板保護材用途に用いられている。また片末端または両末端をアクリロイル基やアルコキシシシリル基といった中性の官能基で変換した含フッ素ポリエーテルでは、それらの官能基を架橋サイトとして用いて硬化しうることを特徴として、反射防止膜用途や酸素富化膜用途に用いられている。
【0004】
一方、塩基性を示す官能基を有する含フッ素エーテル含有化合物についてはほとんど知られていない。芳香族アミドを有する長鎖の含フッ素ポリエーテルをオイル用途に用いるという報告(特開昭47−1895号公報)、や同化合物にアルコキシフォスファイトを含有させ、同じくオイル用途に用いる(特開平1−265049号公報)といった報告はあるが、これらの報告は塩基性を示す官能基を積極的に含有させその特徴を生かすといったものではなく、むしろ、特開昭47−1895号公報の比較例にみられるように、塩基性官能基の含有は避けるべきものとされている。このように、酸性または中性の官能基を含有する含フッ素エーテル含有化合物の場合と異なり、塩基性の官能基を有する含フッ素エーテル化合物はこれまでほとんど省みられることはなく、様々な機能性材料に応用しうる化合物はこれまで見出されていない。
【0005】
また、イオン性液体とは、室温から比較的高温(〜300℃)まで液体状態にある溶融塩である。その特徴としては、つぎのものが挙げられる。
(a)一般に高い極性を示し、低分子の有機化合物や無機化合物に対し高い溶解力を示す。
(b)蒸気圧が極めて低く、不揮発性であることから合成反応媒体として用いた場合、真空中で使用できたり、クリーンな反応環境を提供できる。
(c)いくつかの有機溶媒や水と不溶性を示すことから、二層系の媒体中などでの反応環境を提供でき、反応原料と生成物の分離が容易になったり、界面反応による反応制御が可能となり、例えば合成反応の生成物の立体選択性を制御でき、種々の新規な有機合成反応をもたらしている。
【0006】
従来よりイオン性液体として、種々のイミダゾリウム塩化合物が検討されている。
【0007】
例えば、N,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンのテトラフルオロホウ酸アニオン(BF4-)やヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6-)の塩などが水に安定なイオン性液体として種々の応用について検討されている。
【0008】
しかしながらこれらのイオン性液体(N−メチル、N’−ブチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸塩)は、粘性が高く、合成反応の媒体として用いた場合、溶質の拡散が起こりにくい問題があった。またさらに、これら従来のイオン性液体はポリビニルアルコールなどの合成高分子や、蛋白質、多糖、核酸などの生体高分子、ミセル、二分子膜などの分子集合体を可溶化できず、これら由来の機能発現が充分に得られない問題があった。
【0009】
これら高粘性による課題を解決するために、N,N’−ジアルキルイミダゾリウム塩のアルキル部分に、アルコキシル基を導入したイオン性液体(特開2002−3478号公報)が提案されており、それによって低粘性化が可能となり合成高分子、生体高分子および分子集合体などが可溶化できることを報告している。
【0010】
しかしながら、これまで述べたN,N’−ジアルキルイミダゾリウム塩やアルコキシル基を導入したN,N’−ジアルキルイミダゾリウム塩(特開2002−3478号公報)は、粘性の面で高く、アルコキシル基の導入によっても低下効果が不十分であること、またさらにはこれらイオン性液体自体、耐熱性や耐酸化性等の安定性や耐久性が不十分であるなどの問題があった。
【0011】
また、一方、イオン性液体型ポリマーとしては、N−ビニル、N’−アルキルイミダゾリン塩を重合して得られるN−ビニルイミダゾリウム塩ポリマー(特開2000−11753号公報)が開示されている。単量体であるN−ビニルイミダゾリウム塩はイオン性液体としての形態を有しているが、重合して得られるイミダゾリウム構造を有するポリマーは固体であり、そもそも常温で液状を示さないものである。
【0012】
本発明の目的は、上記の現状に鑑み、低粘性と耐熱性および耐酸化性を兼ね備えた芳香族化合物からなり、イオン性液体として有用な機能性材料を提供することにある。具体的には、イオン性液体としての機能を発現する材料、例えば合成反応媒体、抽出媒体、除酸剤、太陽電池電解質、潤滑剤、アクチュエータ材料などとして有用な機能性材料を提供することにある。
【0013】
さらに本発明は、上記イオン性液体型機能性材料に利用可能な新規な芳香族化合物および新規な含フッ素重合体を提供することにある。
【発明の開示】
【0014】
本発明者らは、塩基性官能基を有する化合物について鋭意研究した結果、特定の含フッ素エーテル鎖と塩基性官能基をもつ特定の芳香族化合物が、良好な低粘性を示し、かつ耐熱性および耐酸化性において優れることを見いだした。
【0015】
さらに、塩基性官能基を有する重合体についても鋭意研究した結果、特定の塩基性官能基と特定の含フッ素エーテル構造を同一側鎖に有する重合体が、良好な液状性を示し、かつ耐熱性および耐酸化性に優れることを見いだした。
【0016】
またこれら芳香族化合物および重合体が、イオン性液体型の機能性材料、例えば、イオン性液体、太陽電池電解質、アクチュエータ、潤滑剤、除酸剤などの高機能材料を構成する化合物として優れた性能を有することを見出し、本願を完成するに至った。
【0017】
本発明は、式(1):
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、−D−は、式(1−1):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;nは1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、mが2以上の場合、2種以上のDは同じかまたは異なっても良い;
Raは前記Dを含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、mが2以上の場合、2種以上のRaは同じかまたは異なっても良い;
mは1〜4の整数;
Ryは塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基である。ただし、上記式(1)および(1−1)において−O−O−の単位を含まない〕で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物からなるイオン性液体型機能性材料に関する。
【0022】
前記−D−における−O−R−が、−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CF2CF2)−、−(OCH2CF2CF2)−、−(OCFZ2)−、−(OCZ32)−、−(CFZ1CF2O)−、−(CF2CF2CF2O)−、−(CH2CF2CF2O)−、−(CFZ2O)−および−(CZ32O)−(式中、Z1、Z2は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Z3はCF3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロエーテルの単位であることが好ましい。
【0023】
Raは炭素数1〜20の含フッ素アルキル基Rxから選ばれるものであることが好ましい。
【0024】
前記Ryが有する塩基性官能基または該塩基性官能基の塩は、アミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、アジン類およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
また本発明は式(M−1):
−(M1)−(A1)− (M−1)
[式中、構造単位M1は、式(2):
−D1−Ry1 (2)
{式中、−D1−は、式(2−1):
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、R1は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n1は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位;Ry1は塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基}で示される部位を側鎖に有するエチレン性単量体由来の構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位である。ただし、構造単位M1中および式(2−1)中において−O−O−の単位を含まない;構造単位A1は構造単位M1を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であって、構造単位M1を1〜100モル%、構造単位A1を0〜99モル%含む含フッ素重合体からなるイオン性液体型機能性材料に関する。
【0028】
前記Ry1中に有する塩基性官能基Y1または該塩基性官能基の塩Y2が、アミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、アジン類およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
また本発明は、式(4):
【0030】
【化4】

【0031】
[式中、−D2−は、式(4−1):
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R2は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n2は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、m2が2以上の場合、2種以上のD2は同じかまたは異なっても良い;Ry3はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基;Rx2は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基であって、m2が2以上の場合、2種以上のRx2は同じかまたは異なっても良い;m2は1〜4の整数である。ただし、上記式(4)および(4−1)において−O−O−の単位を含まない]で示される含フッ素エーテル鎖を有する新規な芳香族化合物に関する。
【0034】
本発明はさらに、式(5):
CX12=CX3−(CX45n3(C=O)n4−D2−Ry4 (5)
(式中、X1、X2、X4、X5は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X3は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3から選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;Ry4はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基;D2は前記式(4)と同じ)で示される含フッ素エーテル鎖を有する新規な芳香族化合物に関する。
【0035】
また、本発明は式(M−3):
−(M3)−(A3)− (M−3)
[式中、構造単位M3は式(7):
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、X6、X7、X9およびX10は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X8は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3より選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;D2およびRy4は前記式(5)と同じ)で示される構造単位;構造単位A3は構造単位M3を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M3が1〜100モル%、構造単位A3が0〜99モル%の数平均分子量で500〜1000000の新規な含フッ素重合体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明のイオン性液体型機能性材料は式(1):
【0039】
【化7】

【0040】
〔式中、−D−は、式(1−1):
【0041】
【化8】

【0042】
(式中、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;nは1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、mが2以上の場合、2種以上のDは同じかまたは異なっても良い;
Raは前記Dを含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、mが2以上の場合、2種以上のRaは同じかまたは異なっても良い;
mは1〜4の整数;
Ryは塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基である。ただし、上記式(1)および(1−1)において−O−O−の単位を含まない〕で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物からなるものである。
【0043】
これらイオン性液体型機能性材料に用いる芳香族化合物の特徴の第一は、上記式(1)の−D−で示される含フッ素エーテルの単位を含むことであり、具体的には−(O−R)−または−(R−O)−の繰り返し単位を1〜20個有することである。
【0044】
−R−は炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であって、少なくとも1個のフッ素原子を有するものであり、それによって、従来のフッ素を含まないアルコキシル基を有するものやアルキレンエーテル単位を有するものに比べて、イオン性液体を目的とする芳香族化合物を液状化することができたり、芳香族化合物の粘性をさらに低粘度化することができる。
【0045】
また、さらに含フッ素エーテルの単位−D−は耐熱性および耐酸化性を大幅に改善できる点でも好ましい。
【0046】
含フッ素エーテルの単位−D−は、そのR中のフッ素含有率が高いほど低粘性化、耐熱および耐酸化性に及ぼす効果が高く、含フッ素アルキレン基R中のフッ素含有率の好ましくは45〜76質量%、より好ましくは55〜76質量%、特に好ましくはは65〜76質量%であり、最も好ましくはRがパーフルオロアルキレン基(76質量%)である。
【0047】
−D−中の−(O−R)−または−(R−O)−は、具体的には、−(OCF2CF2CF2)−、−(CF2CF2CF2O)−、−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CFZ1)−、−(OCFZ2)−、−(CFZ2O)−、−(OCH2CF2CF2)−、(OCF2CF2CH2)−、−(OCH2CH2CF2)−、−(OCF2CH2CH2)、−(OCF2CF2CF2CF2)−、−(CF2CF2CF2CF2O)−、−(OCFZ2CH2)−、−(CH2CFZ2O)−、−(OCH(CH3)CF2CF2)−、−(OCF2CF2CH(CH3))−、−(OCZ32)−および−(CZ32O)−(Z1、Z2は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3、Z3はCF3)等が挙げられ、−D−はこれらの1種または2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。
【0048】
なかでも、−D−は−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CF2CF2)−、−(OCH2CF2CF2)−、−(OCFZ2)−、−(OCZ32)−、−(CFZ1CF2O)−、−(CF2CF2CF2O)−、−(CH2CF2CF2O)−、−(CFZ2O)−および−(CZ32O)−から選ばれる1種または2種以上の繰り返し単位であることが好ましく、特には−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CF2CF2)−、−(OCH2CF2CF2)−、−(CFZ1CF2O)−、−(CF2CF2CF2O)−および−(CH2CF2CF2O)−から選ばれる1種または2種以上の繰り返し単位、さらには−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CF2CF2)−、−(CFZ1CF2O)−および−(CF2CF2CF2O)−から選ばれる1種または2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。
【0049】
ただし、上記の含フッ素エーテルの単位−D−中および前記式(1)の芳香族化合物中において、−O−O−(具体的には、−R−O−O−R−、−O−O−R−および−R−O−O−など)構造単位を含まないものとする。
【0050】
これら好ましい含フッ素エーテル、特にはパーフルオロエーテルは、イオン性液体を目的とする芳香族化合物をより効果的に液状化または低粘度化でき、さらにはより高耐熱および高耐酸化性のイオン性液体型の機能性材料を与えることができる。
【0051】
−D−における上記含フッ素エーテル単位の繰り返し数nは、目的、狙いおよび用途によって適宜選択され、1〜20の繰り返し数から選ばれる。
【0052】
n数は大きいほど低粘度化に効果的に作用するが、20を超えると後述する塩基性官能基を含む芳香族環状の部位Ryに基づく、塩基性、誘電率に対する効果を低下させるため好ましくない。
【0053】
後述するイオン性液体、アクチュエータ、太陽電池電解質といった用途では、本化合物のRyに由来する塩基性、誘電率という効果が重要である。そうした場合には、含フッ素エーテル単位の繰り返し数nは、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜12である。
【0054】
また、たとえば廃液中の酸を除去する除酸剤としては、その水との分離容易性、再生容易性の点からアニオン型ポリマーが用いられる場合がある。しかし、除酸のプロセスが液・固反応となるため、必ずしも効率がよいとはいえない。含フッ素エーテルを含む本化合物はそれ自体が液体であるため、除酸のプロセスが液・液反応となり、効率が高い。ただ、含フッ素エーテル鎖が短い場合、本化合物が酸性水溶液中に溶解してしまうことがあり、分離が困難となることがあり、この観点からは、含フッ素エーテル鎖は長いほうが好ましい。
【0055】
したがって、含フッ素エーテル単位自体の特徴を生かす用途である除酸剤、潤滑剤といった材料では含フッ素エーテル単位の繰り返し数nが大きいほうが好ましく、5〜20個、より好ましくは10〜20個である。
【0056】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物の第二の特徴は、塩基性の官能基を有し、かつ芳香族環状構造を有する部位Ryが含フッ素エーテルの部位−D−と結合している点であり、Ryには前記含フッ素エーテル−D−を含む部位が少なくとも1個結合してなり、2〜4個結合していてもよい。
【0057】
Ryは、詳しくは塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基である。
【0058】
Ry中の塩基性官能基Y1は、pKaが水より大きな値を示す官能基から選んでよいが、通常、pKaで20以上の官能基から選ばれる。好ましくはpKaで20以上、より好ましくはpKaで25以上、特に好ましくはpKaで28以上の官能基である。
【0059】
塩基性度が低すぎると(pKaが低すぎる)、酸と反応させて塩の形態としたとき、イオン性液体としてのイオン性の機能が充分発揮できなくなり好ましくない。
【0060】
例えば、反応媒体として、またはその一部として用いた場合、目的の反応基質を溶解させることが困難となったり、目的の反応が起こらなかったり、目的の反応生成物の選択性が得られなかったりする。また、除酸剤として用いた場合、目的の酸をトラップできなかったり、酸を分離抽出できなかったりする。また、アクチュエータ用途に用いた場合、目的の運動性能が得られなかったりする。
【0061】
具体的には、前記Ry中の塩基性官能基Y1は、リン酸アミド類、リン酸イミド類、アミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、ヒドロキシルアミン類、アミジン類、アジン類、ヒドラジン類、オキシム類、アミンオキシド類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、なかでもアミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、アジン類から選ばれるものが好ましく、とくに好ましくは、アミン類である。
【0062】
アミン類が、後述する芳香族環状炭素原子に置換基として結合した場合、第一級アミノ基(−NH2)、第二級アミノ基(−NR1H)、第三級アミノ基(−NR23)のいずれのものでも利用できるが、通常、第二級アミノ基、第三級アミノ基の場合においても、炭素数の少ない炭化水素基(R1、R2、R3)を有する低級アミノ基であることが、耐酸化性の面で好ましい。例えば炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくは例えば炭素数1〜5の炭化水素基、より好ましくはメチル基またはエチル基である。なかでも耐酸化性の面で最も好ましくは、第一級アミノ基(−NH2)である。
【0063】
アミノ基を形成する窒素原子が同時に芳香族環を構成している場合、通常、第二級または第三級アミノ基の形態を取りうる。これら環状アミノ基自体は耐酸化性により優れるものであるが、環状アミノ基の窒素原子にさらに1価の炭化水素基を結合させる場合は、前記同様、炭素数の少ない炭化水素基であることが好ましい。例えば炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくは例えば炭素数1〜5の炭化水素基、より好ましくはメチル基またはエチル基である。なかでも耐酸化性の面で最も好ましくは、窒素原子に1価の炭化水素基が結合されていない環状アミノ基であることが好ましい。
【0064】
本発明のイオン性液体型機能性材料において、Ryに含まれる官能基が塩基性官能基の塩Y2であるか、塩基性官能基の塩Y2を含むことが好ましい。
【0065】
塩基性官能基の塩Y2は、上記で記載した塩基性官能基Y1と陰イオン(アニオン種)との塩であれば、特に制限されず選択でき、芳香族化合物の種類、機能、目的、用途等によって適宜選択される。
【0066】
またさらに、塩基性官能基の塩Y2は、前記塩基性官能基Y1を、4級カチオン化された塩であっても良く、例えばアミン類を4級化した第四級アンモニウムカチオンの塩類であっても良い。
【0067】
塩基性官能基の塩Y2中のアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、F-といったハロゲン原子由来のアニオン;HSO3-、NO3-、ClO4-、PF6-、BF4-、SbF6-といった無機酸由来のアニオン;CF3SO3--N(SO2CF32-C(SO2CF32-OCOCF3といった有機酸由来のアニオンなどが利用できる。
【0068】
なかでも、液状化が可能となりやすい点で、また低粘性化が可能となる点で、イオン性液体型機能性材料として好ましいアニオンとしては無機酸由来のアニオン、有機酸由来のアニオンの群より選ばれるものがあげられ、特に好ましくは無機酸由来のアニオンである。
【0069】
さらには、ルイス酸を形成できるアニオンであることが好ましく、例えば、PF6-、BF4-、SbF6-などが好ましい。
【0070】
本発明のイオン性液体型機能性材料において、Ryは上記塩基性官能基Y1、塩基性官能基の塩Y2に加えて芳香族環状構造を有することを特徴とする。
【0071】
芳香族環状構造の部位は、炭素原子のみで芳香族環構造を形成したもの、炭素原子と窒素原子、硫黄原子、酸素原子などのヘテロ原子とから芳香族環構造を形成したものであっても良く、さらには単環構造、多環構造(縮合環)であっても良い。
【0072】
芳香族環状構造の部位の具体例としては、
【0073】
【化9】

【0074】
などが挙げられる。
【0075】
これら、芳香族環構造の存在は、本発明のイオン性液体型機能性材料に、耐酸化性の向上、誘電率の向上をもたらす点で好ましい。
【0076】
本発明のイオン性液体型機能性材料において前述した含フッ素エーテル単位−D−の存在は通常、誘電率の点では不利であったが、これら芳香族環状構造の導入により、誘電率を改善できる。
【0077】
具体的には、誘電率の向上は、イオン性液体用途、太陽電池電解質用途において特に好ましい。
【0078】
また芳香族環状構造の存在により、種々の無機化合物、炭化水素化合物、高分子化合物などに対して相互作用(親和性)が高く、吸着性を高くすることができる点で好ましい。本発明のイオン性液体型機能性材料において、前述した含フッ素エーテル単位−D−の存在は通常、吸着力の点では不利であったが、芳香族環状構造の導入により、様々な無機材料、有機材料に対する良好な吸着性を改善できる。この吸着力の改善により、基材との密着性が要求される潤滑剤用途などの機能性材料に好適な材料となりうる。
【0079】
芳香族環構造への塩基性官能基Y1または塩基性官能基の塩Y2(今後、Y1、Y2を総じて官能基Yと示すこととする)の結合は、芳香族環構造に置換基として環外に結合したもの、官能基Y(塩の場合はカチオン部分)を形成するヘテロ原子が同時に芳香族環を構成したものであっても良い。
【0080】
芳香族環構造に官能基Yが置換基として結合したものとしては、芳香族環状炭素に直接Yが結合したものであっても良いし、または芳香族環状炭素と官能基Yが2価の有機基の結合手(スぺーサー)を介して結合していても良い。
【0081】
結合手となる2価の有機機としては炭素数1〜10の2価の炭化水素基から選ばれることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5の2価のアルキレン基、特にはメチレン基、エチレン基が好ましい。鎖長の長すぎる炭化水素基は耐酸化性を低下させるため好ましくない。
【0082】
さらに、官能基Yが−Y−として芳香族環の置換基中に含まれていてもよい。
【0083】
炭素原子とヘテロ原子とから芳香族環構造を形成する場合、前記官能基Y(カチオン部分)を形成するヘテロ原子が同時に芳香族環を構成していても良い。
【0084】
またさらに、官能基Yは、上記で示した様に、芳香族環構造に置換基として、または環構造内に1つ存在するものであって、さらには2個以上存在していても良い。
【0085】
具体的には、
(i)芳香族環状炭素原子に官能基Yが置換基として結合したもの
【0086】
【化10】

【0087】
などが挙げられる。
(ii)官能基Y(塩Y2の場合はカチオン部分)を形成する原子が同時に芳香族環を構成したもの
具体的には、官能基Yがアミン類の場合を例示すると、
【0088】
【化11】

【0089】
などが挙げられる。
(iii)前記(ii)の芳香族環状炭素にさらに官能基Yが置換基として結合したものとしては、
【0090】
【化12】

【0091】
【化13】

【0092】
などが好ましく挙げられる。
【0093】
これら、(i)〜(iii)の芳香族環状構造の部位のなかでも、官能基量(濃度)を向上でき、イオン性液体型機能性材料としての機能、反応媒体や抽出媒体としての溶質の溶解力や酸の捕集力、アクチュエータとしたときの運動性能を向上できる点で、前記(ii)の官能基Y(カチオン部分)を形成する原子が同時に芳香族環を構成したもの、前記(iii)のさらに官能基が置換したものが好ましい。
【0094】
また、これら(ii)、(iii)の部位は耐酸化性の面でも好ましい。
【0095】
さらに本発明の芳香族環状構造の部位Ryの環構造は、なかでも単環状の構造が好ましく、それによって、低粘性化、液状化が効果的に達成できる。
【0096】
本発明のイオン性液体型機能性材料に利用する式(i)の化合物において、官能基Yを有する芳香族環状構造を含む有機基Ryと含フッ素エーテル構造の部位−D−との結合の第一は、前記(i)、(ii)または(iii)の例示などのRyが−D−に直接結合している場合、第二は、Ryと−D−の間に結合手(スぺーサー)を有している場合であり、結合手を介してRyと−D−を結合させる場合は、結合手(−A−)はRyに含むものとする(Ry中に結合手−A−を有する場合、Ryは−A−Ry”とする)。
【0097】
Ryと−D−との直接結合は、耐熱性や耐酸化性の面で特に好ましい。
【0098】
結合手を介する場合、結合手(−A−)としては、共有結合で結合した2価の結合手であれば特に制限されないが、2価のヘテロ原子や2価の有機基から選ばれる。
【0099】
なかでも、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、2価のアルキレン基、2価の含フッ素アルキレン基、エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合、酸アミド結合、アミジン結合などが、耐酸化性を低下させない点でより好ましい。
【0100】
具体的には、
(a)結合手−A−が2価のアルキレン基、2価の含フッ素アルキレン基の場合
2価のアルキレン基は炭素数1〜10の2価のアルキレン基から選ばれることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5の2価のアルキレン基、特にはメチレン基、エチレン基が好ましい。鎖長の長すぎる炭化水素基は耐酸化性を低下させるため好ましくない。
【0101】
2価の含フッ素アルキレン基は上記のアルキレン基の水素原子の一部または全てが、フッ素原子に置換したものであり、耐酸化性の面でより多くフッ素原子に置換されたものが好ましく、特にはパーフルオロアルキレン基が好ましいものである。
【0102】
具体的には、
【0103】
【化14】

【0104】
などが好ましく挙げられる。
【0105】
これらは、特に耐酸化性の面で好ましい。
【0106】
(b)結合手−A−がエーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)の場合
具体的には、
−D−O−Ry”、−D−S−Ry”
などが挙げられる。
【0107】
特にはエーテル結合が耐酸化性、耐熱性、耐薬品性の面で好ましい。
【0108】
(c)結合手−A−がエステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合の場合
具体的には、
【0109】
【化15】

【0110】
などが挙げられる。
【0111】
(d)結合手−A−がアミド結合の場合
具体的には、
【0112】
【化16】

【0113】
(式中、R’は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基)
なかでも、R’は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが、耐酸化性、耐熱性を低下させない点で好ましい。特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0114】
具体的には、
【0115】
【化17】

【0116】
が挙げられる。
【0117】
これらは、耐酸化性、耐熱性が優れる点で好ましい。
【0118】
(e)結合手−A−がスルホンアミド結合、リン酸アミド結合の場合
具体的には、
【0119】
【化18】

【0120】
(式中、R’は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基)などが好ましく挙げられる。
【0121】
なかでも、R’は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが、耐酸化性、耐熱性を低下させない点で好ましい。特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0122】
具体的には、
【0123】
【化19】

【0124】
などが好ましく挙げられる。
【0125】
(f)結合手−A−がアミジン結合の場合
具体的には、
【0126】
【化20】

【0127】
(式中、R’、R”は同じか異なり、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基)などが好ましく挙げられる。
【0128】
なかでも、R’、R”は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが、耐酸化性、耐熱性を低下させない点で好ましい。特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0129】
具体的には、
【0130】
【化21】

【0131】
などが好ましく挙げられる。
【0132】
これら(a)〜(f)に例示の結合手のなかでも、2価のアルキレン基、2価の含フッ素アルキレン基、エーテル結合、アミド結合、アミジン結合が特に耐酸化性の面で好ましい。
【0133】
また、これら(a)〜(f)に例示のRyにおいて、官能基Yを有する芳香族環状構造の部位Ry”は、前記、(i)、(ii)および(iii)で記載のRyの具体例が、同様に好ましく利用できる。
【0134】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物において、Raは前記−D−のもう一方に結合している残基であり、−D−の構造を含まない炭素数1〜20の1価の有機基から選ばれるものであれば特に制限されないものである。
【0135】
なかでも、Raの好ましくは、
(iv)エーテル結合を有しても良い炭素数1〜20の含フッ素アルキル基Rxである。
【0136】
これらのRxの導入は、芳香族化合物(1)に低粘性化、液状化を可能とする点で、また耐酸化性を付与できる点で好ましい。
【0137】
含フッ素アルキル基Rxは、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは1〜5個であり、低粘性化、液状化および耐酸化性の面で好ましい。
【0138】
またさらに、Rxはフッ素含有率が高いものが耐酸化性の点で好ましく、フッ素含有率で40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特には、60質量%以上、最も好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0139】
具体的には、
【0140】
【化22】

【0141】
などが挙げられ、なかでも好ましくは、
37−、CF3−、C25−、CF3CH2−、HCF2CF2CH2−、
CF3CF2CH2−、(CF32CH−、
37O−、CF3O−、C25O−、CF3CH2O−、HCF2CF2CH2O−、
CF3CF2CH2O−、(CF32CHO−
などが挙げられる。
【0142】
またRaとしては、(v)末端にエチレン性二重結合を有する炭素数2〜20の1価の有機基Rx'も挙げられる。
【0143】
これらは、前述の−D−とRyの部位によるイオン性液体型機能性材料としての同様の効果に加えて、エチレン性二重結合を用いて重合することにより、含フッ素エーテル単位−D−と官能基Yと芳香族環状構造を側鎖に有する含フッ素重合体を得ることができ、これら含フッ素重合体からなるイオン性液体型重合体を得ることができる点で好ましい。
【0144】
Rx’を構成する有機基の炭素数が大きすぎると、粘性が高くなり、また重合性の低下がみられるため、炭素数は1〜10、さらには炭素数が1〜5であることが好ましい。
【0145】
具体的には、下式:
CX12=CX3−(CX45n3(C=O)n4(O)n6
(式中、X1、X2、X4、X5は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X3は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3から選ばれるもの;n3、n4およびn6は同じかまたは異なり、0または1)で表される部位であり、より具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、αフルオロアクリロイル基などのラジカル重合性の部位があげられる。
【0146】
具体例としては、
【0147】
【化23】

【0148】
などが挙げられる。
【0149】
(vi)塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜20の1価の有機基Ry’である。
【0150】
具体的には、前述のRyと同様なものが、好ましく利用でき、それによって、本発明の式(1)の化合物1分子にRyを2個以上導入でき、イオン性液体型機能性材料の機能をより効果的に発揮できる点で好ましい。
【0151】
Ry’の具体例は、前述のRy(−A−Ry”)で示した具体例が同様に好ましく挙げられる。
【0152】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物は、前述の官能基Yを含む芳香族環状構造の部位Ryに結合する含フッ素エーテルの部位−D−と、その−D−のもう一方に結合する残基Raのそれぞれの部位によって構成され、Ryに−D−(−D−Ra)が少なくとも1つ結合したものであって、Ryに−D−(−D−Ra)が2から4個(式(1)中のmが2〜4)結合していても良い。
【0153】
式(1)の芳香族化合物の具体例としては、前述の含フッ素エーテル単位−D−の好ましいもの、官能基Yと芳香族環状構造を有する部位Ryの好ましいもの、DとRyとの結合手の好ましいもの、残基Raの好ましいものを組み合わせたものが好ましく挙げられる。
【0154】
式(1)の芳香族化合物においてm=1のものとしては、つぎのものが挙げられる。
(1−a)−D−とRyが直接結合し、Raがパーフルオロアルキル基のもの
具体例としては、
【0155】
【化24】

【0156】
【化25】

【0157】
などが好ましく挙げられる。
【0158】
(1−b)−D−とRyがアミド結合を介して結合し、Raがパーフルオロアルキル基のもの
具体例としては、
【0159】
【化26】

【0160】
などが好ましく挙げられる。
【0161】
(1−c)−D−とRyがアミジン結合を介して結合し、Raがパーフルオロアルキル基のもの
具体例としては、
【0162】
【化27】

【0163】
などが好ましく挙げられる。
【0164】
(1−d)さらに式(1)の芳香族化合物において、m=2のもの
具体例としては、
【0165】
【化28】

【0166】
【化29】

【0167】
などが好ましく挙げられる。
【0168】
(1−e)−D−とRyが直接結合し、Raが末端にエチレン性二重結合を有するもの
具体例としては、
【0169】
【化30】

【0170】
【化31】

【0171】
などが好ましく挙げられる。
【0172】
(1−f)−D−とRyがアミド結合を介して結合し、Raが末端にエチレン性二重結合を有するもの
具体例としては、
【0173】
【化32】

【0174】
【化33】

【0175】
などが好ましく挙げられる。
【0176】
(1−g)−D−とRyがアミジン結合を介して結合し、Raが末端にエチレン性二重結合を有するもの
具体例としては、
【0177】
【化34】

【0178】
【化35】

【0179】
などが好ましく挙げられる。
【0180】
本発明のイオン性液体型機能性材料の第二は、フルオロエーテルの単位−D1−、と塩基性官能基および/または塩基性官能基の塩を有する芳香族環状構造の部位Ry1を同一側鎖に有する含フッ素エチレン性単量体を重合してなる重合体からなる機能性材料である。
【0181】
つまり、本発明の第二のイオン性液体型機能性材料に利用する重合体の第一は式(M−1):
−(M1)−(A1)− (M−1)
[式中、構造単位M1は、式(2):
−D1−Ry1 (2)
{式中、−D1−は、式(2−1):
【0182】
【化36】

【0183】
(式中、R1は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n1は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位;Ry1は塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基}で示される部位を側鎖に有するエチレン性単量体由来の構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位である。ただし、構造単位M1中および式(2−1)中において−O−O−の単位を含まない;構造単位A1は構造単位M1を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であって構造単位M1を1〜100モル%、構造単位A1を0〜99モル%含む含フッ素重合体である。
【0184】
本発明の重合体の第二は、式(M−2):
−(M2)−(A2)− (M−2)
[式中、構造単位M2は、式(3):
【0185】
【化37】

【0186】
(式中、Ry2は塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2の少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の2〜4価の有機基;Ra1はD1を含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、m1が2以上の場合、2種以上のRa1は同じかまたは異なっても良い;m1は1〜3の整数;D1は前記式(2)と同じものから選ばれ、ただしm1が2以上の場合、2種以上のD1は同じかまたは異なっても良い)で示される部位を側鎖に有するエチレン性単量体由来の構造単位である。ただし、構造単位M2中および式(2−1)中において−O−O−の単位を含まない;構造単位A2は構造単位M2を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であって構造単位M2を1〜100モル%、構造単位A2を0〜99モル%含む含フッ素重合体である。
【0187】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体は、いずれもエチレン性重合体であって、1つの側鎖に、フルオロエーテル単位−D−と塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2を有する芳香族環状構造の部位Ry1を有することを特徴とする。
【0188】
Ry1の導入は、そこに含まれる塩基性官能基と極性の芳香族構造によって、耐酸化性や耐熱性を低下させずに、イオン性液体型機能性材料としての、前述の目標機能を、効果的に付与できる。
【0189】
しかしながら、高分子重合体へのこれらRy1部位の導入のみでは、逆に固体化または高粘度化してしまい、イオン性液体としての機能を損なってしまうものであった。
【0190】
本発明者らは、Ry1を有する同一側鎖に、さらにフッ素原子を含むエーテル単位を導入することで、通常、固体化、または高粘度化してしまう高分子化合物においても、より効果的に液状化、または低粘度化させることを見出した。
【0191】
さらには、フルオロエーテル単位の導入は耐酸化性、耐熱性および耐薬品性においても、効果的に作用するものである。
【0192】
含フッ素重合体(M−1)の側鎖構造は式(2)に示すように、フルオロエーテル単位−D1−を介して側鎖末端にRy1を有することを特徴とし、Ry1に含まれる官能基の機能をより効果的に発揮できる点で好ましい。
【0193】
一方、含フッ素重合体(M−2)の側鎖構造は、官能基を有する芳香族環状構造の部位Ry2を介して、フルオロエーテル単位−D1−、およびその残基Ra1は側鎖末端に位置し、含フッ素重合体を、より効果的に液状化または低粘度化することができる点で好ましい。
【0194】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる含フッ素重合体(M−1)、(M−2)において、側鎖構造を形成するフルオロエーテル単位−D1−は、上記式(2−1)で示されたものから選ばれるが、含フッ素アルキレン基R1の種類、フッ素含有率、好ましい具体例、フルオロエーテルの繰り返し単位数n1などについては、前記イオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物で示した、前記式(1−1)の−D−(R、n)の好ましいものおよびその具体例が同様に好ましく利用できる。
【0195】
本発明のイオン性液体型機能性材料に用いる含フッ素重合体(M−1)、(M−2)において、塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2を有する芳香族環状構造の部位Ry1、Ry2について、具体的には、その部位内に含まれる塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2の種類について、また芳香族環状構造の種類、構造、さらにはフルオロエーテル単位−D1−との結合方法、結合手などのそれぞれついては、前記イオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物で示したものと同様のものが、本発明の含フッ素重合体においても好ましく利用でき、前述のRyの好ましい具体例と同様のものから選ばれるものが好ましい例示である。
【0196】
また、式(M−2)の重合体における、構造単位M2の側鎖を構成する式(3)の部位のうち、Ra1は、−D−の末端に結合する残基であり、炭素数1〜20の1価の有機基から選ばれるものであれば特に制限されないが、前記の式(1)のイオン性液体型機能性材料で用いる芳香族化合物で述べたRaの好ましいもの、および具体例が同様に好ましく使用できる。
【0197】
なかでも、エーテル結合を有しても良い炭素数1〜20の含フッ素アルキル基(前記(iv)で示したRx)であることが好ましく、重合体を効果的に液状化または低粘度化でき、さらに耐酸化性、耐熱性においても優れる点で好ましい。
【0198】
前記(iv)で示したRxの具体例と同様のものが、Ra1においても好ましい具体例である。
【0199】
式(M−1)の含フッ素重合体における構造単位M1は、側鎖構造の一部または全体が前記式(2)の構造を持つエチレン性単量体の構造単位であれば特に制限されないが、なかでも式(2−2):
【0200】
【化38】

【0201】
(式中、X20、X21、X23およびX24は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X22は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3より選ばれるもの;n10は0〜2の整数;n11、n12は同じかまたは異なり、0または1;D1およびRy1は前記式(2)と同じ)で示される構造単位であることが、イオン性液体型機能性材料の種々の機能を効果的に発揮でき、さらに耐酸化性・耐熱性が優れる点で好ましい。
【0202】
具体的には、式(2−2)の構造単位M1は、
【0203】
【化39】

【0204】
などが好ましく挙げられ、なかでも式(2−2)の構造単位は、式(2−3):
【0205】
【化40】

【0206】
(式中、X20、X21、X22、X23およびX24、n10、n12は前記式(2−2)と同じ;D1、Ry1は前記式(2)と同じ)で表される構造単位が特に耐酸化性と耐熱性および耐薬品性において好ましい。
【0207】
式(2−3)の構造単位は、より具合的には
【0208】
【化41】

【0209】
などが好ましく挙げられ、なかでも特に、
【0210】
【化42】

【0211】
の構造単位が耐酸化性、耐熱性および耐薬品性においてより好ましい。
これら好ましい構造単位M1は、さらに詳しくは、
【0212】
【化43】

【0213】
【化44】

【0214】
【化45】

【0215】
【化46】

【0216】
などが好ましく挙げられる。
【0217】
式(M−2)の含フッ素重合体における構造単位M2は、側鎖構造の一部または全体が前記式(3)の構造を持つエチレン性単量体の構造単位であれば特に制限されないが、なかでも式(3−2):
【0218】
【化47】

【0219】
(式中、X20、X21、X22、X23およびX24、n10、n11およびn12は前記式(2−2)と同じ;n13は0または1;D1は前記式(2)と同じ。ただしn13=1、および/またはm1が2以上の場合、2種以上のD1は同じであっても異なっていても良い;Ry2、Ra1、m1は前記式(3)と同じ)で示される構造単位であることが、イオン性液体型機能性材料の種々の機能を効果的に発揮でき、さらに耐酸化性・耐熱性が優れる点で好ましい。
【0220】
より好ましくは、式(3−3):
【0221】
【化48】

【0222】
(式中、X20、X21、X22、X23およびX24、n10、n12、n13およびD1は前記式(3−2)と同じ;Ry2、Ra1、m1は前記式(3)と同じ)
で表される構造単位であり、式(M−1)の重合体の構造単位M1と同様、耐酸化性、耐熱性において優れる点で好ましい。
【0223】
構造単位M2の詳しくは、前記構造単位M1の例示のそれぞれにおいて側鎖部分:
−D1−Ry1
を、下式:
【0224】
【化49】

【0225】
(式中、n13、D1、Ry2、Ra1、m1は前記式(3−3)と同じ)で表される部位に置き換えたものが同様に好ましい具体例として挙げられる。
【0226】
式(M−2)の重合体における構造単位M2の具体例は、
【0227】
【化50】

【0228】
【化51】

【0229】
などが好ましく挙げられる。
【0230】
本発明の(M−1)の重合体は構造単位M1を、(M−2)は構造単位M2を1モル%以上含有していればよく、共重合可能な単量体由来の構造単位A1またはA2を有する共重合体であっても構わない。
【0231】
また、構造単位M1(またはM2)の単独重合体であっても構わない。
【0232】
構造単位A1(またはA2)は構造単位M1(またはM2)を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位であり、通常、含フッ素重合体が非晶性ポリマーとなるように選択される。
【0233】
それによって、液状化、低粘度化が可能となる。
【0234】
また、構造単位A1(またはA2)は、構造単位M1(またはM2)由来の性能、例えば耐酸化性・耐熱性や液状性・低粘性を低下させないものが好ましい。
【0235】
その点でも、構造単位A1(またはA2)は含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0236】
含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位としては、炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位A1−1(またはA2−1)から選ばれるものが好ましい。この構造単位A1−1(またはA2−1)は、耐酸化性、耐熱性を改善できる点で好ましい。
【0237】
具体的には、CF2=CF2、CF2=CFCl、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3などが挙げられ、なかでも、共重合性、耐酸化性、耐熱性および耐薬品性を維持する効果が高い点で、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、クロロトリフルオロエチレン(CF2=CFCl)が好ましい。
【0238】
式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、構造単位M1、M2の構造、目的とする機能、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M1(またはM2)が30〜100モル%、構造単位A1(またはA2)が0〜70モル%であり、より好ましくは構造単位M1(またはM2)が40〜100モル%、構造単位A1が0〜60モル%、特に好ましくは構造単位M1(またはM2)が60〜100モル%、構造単位A1(またはA2)が0〜40モル%、さらに好ましくは構造単位M1(またはM2)が70〜100モル%、構造単位A1(またはA2)が0〜30モル%である。
【0239】
式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で500〜1000000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1000〜50000であり、特には2000〜20000である。
【0240】
分子量が低すぎると、耐熱性が低下したり、機械的特性が低下する問題が生じることがある。また、分子量が高すぎると、高粘度化する可能性が生じるため好ましくない。
【0241】
本発明の前記式(1)の芳香族化合物および式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体は、前述したように種々の特性および機能を有しており、単独で、または他の成分と混合してイオン性液体型機能性材料として使用できる。それらの使用形態は目的とする機能、用途に応じて適宜選定される。
【0242】
イオン性液体型機能性材料としては、たとえばイオン性液体、太陽電池の電解質、潤滑剤、除酸剤、アクチュエータ材料などが例示できる。
【0243】
配合可能な他の成分としては、目的とする機能性材料により適宜選定すればよいが、たとえば潤滑剤、アクチュエータ材料などとして使用する場合は、有機酸または無機酸を配合してもよいし、太陽電池の電解質の場合は有機溶媒、無機酸を配合してもよい。また、イオン性液体として使用する場合は、他のイオン性液体や有機溶媒などを配合してもよい。
【0244】
ここでいう有機酸および無機酸とは、H+を放出するブレンステッド型の酸とH+を放出しない酸であるルイス酸の双方を含んでいる。
【0245】
酸は任意のものであってもよいが、H+を放出するブレンステッド型の酸としては、テトラフルオロホウ酸、タングステン酸、クロム酸、ヘキサフルオロ燐酸、過塩素酸、ヘキサフルオロ砒素酸、硝酸、硫酸、燐酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、チオシアン酸などの無機酸;トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、n−ヘキサンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、セチルスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸、2−スルホ安息香酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホコハク酸、スルホセバシン酸などの有機酸などがあげられる。そのほか、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボン酸を有するスチレン、側鎖にスルホン酸を有するスチレン、ナフィオン(デユポン社の商標)に代表される側鎖にスルホン酸を含有するパーフルオロスルホン酸系高分子、フレミオン(旭硝子(株)の商標)に代表される側鎖にカルボン酸を含有するパーフルオロカルボン酸系高分子、側鎖にリン酸を含有するパーフルオロリン酸系高分子、主鎖または側鎖にスルホニルイミドを含有するパーフルオロイミド系高分子といった固体高分子酸があげられる。
【0246】
+を放出しない酸であるルイス酸としては、ホウ素、アルミニウム、シリカ、また、遷移金属、例えばモリブデン、タングステン、アンチモン、クロム、チタン、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、バナジウム、タンタル、オスミウム、銅、亜鉛などの酸化物や、当該金属のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)といった無機酸、m、またはp−ニトロトルエン、ニトロベンゼン、p−ニトロフルオロベンゼン、p−ニトロクロロベンゼン、2,4−ジニトロトルエン、2,4−ジニトロフルオロベンゼン、2,4,6−トリニトロトルエン、2,4,6−トリクロロベンゼンといった有機酸があげられる。
【0247】
これらの酸を配合する対象としては前記式(1)の芳香族化合物でも式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体でも良い。前記式(1)の芳香族化合物の場合は、潤滑剤、イオン性液体用の機能性材料として有利であり、また式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体の場合、酸と混合させることにより粘性が下がり、粘性の低い塩の重合体として、太陽電池の電解質のほか、高分子イオン性液体として好適である。
【0248】
また、固体状の高分子量の有機酸または無機酸と本化合物や重合体との組成物は、アクチュエータとして好適な材料となる。
【0249】
前記式(1)の芳香族化合物または式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体と酸は任意の割合で混合させることができるが、芳香族化合物中または重合体中の塩基性官能基Y1(またはその塩Y2)の数(Nb1)/有機酸または無機酸中の酸基の数(Na1)が、0.01〜100であることが好ましく、さらには0.1〜10であることが好ましい。
【0250】
酸以外の配合可能な成分としては、たとえば有機溶媒、本発明の芳香族化合物および重合体以外のイオン性液体などがあげられる。有機溶媒としては、極性の高い有機溶媒、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルといったニトリル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートといったカーボネート類;テトラヒドロフラン、トリグライム、テトラグライムといったエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホアミドといったアミド類が望ましい。また、本化合物以外のイオン性液体としては、イミダゾール、ピリジンの誘導体のカチオンとCl-、Br-、PF6-、BF4-、SbF6-、CF3SO3--N(SO2CF32-C(SO2CF32-OCOCF3のアニオンからなるイオン性液体があげられる。
【0251】
つぎに本発明のイオン性液体型機能性材料の具体的適用形態について、個別に説明するが、本発明の機能性材料は、かかる具体例に限定されるものではない。また、説明を芳香族化合物(本化合物)で代表させているが、式(M−1)、(M−2)で示す含フッ素重合体であっても、適用可能なものである。
【0252】
重合体としたときの利点として、たとえば電気化学用電解質(たとえばLi二次電池用電解質、キャパシタ用電解質など)、反応溶媒、分離抽出溶媒などとして用いられるイオン性液体は、高分子量化により溶媒との分離性、熱的安定性、製膜容易性が得られるため重合体であることが好ましい。また、上記イオン性液体としての機能を用いて、気体分離膜や選択的透過膜といった機能性膜への展開が可能となるため、重合体の形態とすることが好ましい。またさらに、太陽電池電解質では封止安定性、成形性がよくなるため、重合体であることが好ましい。
【0253】
(イオン性液体)
現在、有機塩の中でも室温で液状の塩がイオン性液体として注目をあびている。これらの塩は、高極性で蒸気圧がないなど、塩の特徴を有する液体であるため、従来の有機溶媒の革新的な改革につながるとして、電気化学用電解質(たとえばLi二次電池用電解質、キャパシタ用電解質など)、反応溶媒、分離抽出溶媒など様々な分野でその応用が期待されている(イオン性液体、シーエムシー出版、2003)。
【0254】
イオン性液体のカチオンはイミダゾールやピリジンをその基本骨格として様々な誘導体が検討されているが、それは、融点を効果的にさげられ、粘性を低下しうるカチオンの基本骨格がイミダゾール、ピリジンの誘導体に限られるからであり、選択できる種類に限りがある。
【0255】
本発明よれば、芳香族化合物に含フッ素エーテルを含有させることによって、とりわけ多環芳香族化合物においても、その芳香族化合物の融点をさげることができ、さらに粘性も低くすることができる。そしてこれらは、それ自体の融点の低さ、粘性の低さから、イオン性液体のカチオン材料として好適なものとなる。含フッ素エーテル鎖が長ければ融点の低下、粘性の低下がみられるが、誘電率も低くなり、イオン性液体部材として適さなくなる。従って、イオン性液体として使用する場合は、含フッ素エーテル単位は望ましくは1〜10個、さらに望ましくは1〜5個であることが望ましい。また、塩基性官能基を含有する本化合物は、酸との混合によって液化しやすくなるものが多く、酸と本化合物との組成物が容易にイオン性液体となりうる。
【0256】
かかるイオン性液体は、上記電気化学用電解質、反応溶媒、分離抽出溶媒などとして有用である。
【0257】
(太陽電池の電解質)
前述したように、本発明の芳香族化合物の用途として、太陽電池電解質をあげることができる。色素増感太陽電池電解質は、現在はアセトニトリルを溶媒として用いている。しかし、アセトニトリルは(i)熱膨潤、収縮による封止性の劣化、(ii)電極に用いられるTiO2の直接励起による酸化、といった問題を抱えている。そのため、イオン性液体やゲル電解質などを用いた研究がなされているが(特開2000−58891号公報;色素増感太陽電池の最新技術、第28章(シーエムシー出版、2001年))、未だ十分な性能(伝導度、寿命など)は得られていない。
【0258】
本発明の芳香族化合物は、色素増感型太陽電池の電解質として用いることができる。色素増感型太陽電池の電解質は、I-/I3-の塩を伝導させる必要があるが、本化合物の塩の対アニオンをI-とすることにより、本発明の材料は優れた電解質として機能する。
【0259】
本発明の芳香族化合物は沸点が高いことによる熱膨潤と収縮の減少、含フッ素エーテルを含有させることによる芳香族化合物の粘性の低下と耐酸化性の向上という利点がある。
【0260】
またI-/I3-の導電性をあげるためには塩濃度の向上が必要であるが、この点からは塩基性官能基濃度のより高い芳香族環状構造由来の塩であることが好ましい。従って1つのRyに多官能の塩基性官能基を含むもの、具体的には前述した塩基性官能基を形成する原子が同時に芳香族環構造を構成したもの(前記(ii)(iii)で示したRyの例示のもの)が芳香族環状構造としてより好ましい。
【0261】
(潤滑剤)
パーフルオロポリエーテルは潤滑剤として長らく使用されてきた。パーフルオロポリエーテルは基材との密着性がないため、密着性を高めるべく、水酸基、カルボン酸基といった官能基の導入、また、カルボン酸の塩として密着性を高めるという手法がとられている。例えば、磁気記録媒体として用いられる潤滑剤として、水酸基またはカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルのエステル化合物を潤滑剤として利用するという報告(特開平5−194970号公報)、カルボン酸基を末端、または両端に有するパーフルオロポリエーテルのアミン塩化合物を潤滑剤として利用するという報告(特開平5−143975号公報、特開2001−216625号公報など)がなされている。しかし、パーフルオロポリエーテル末端のカルボン酸の酸性は通常の炭化水素系カルボン酸に比べて高く、そのため、エステルの場合は加水分解しやすく、長期の安定性に問題がある。また、パーフルオロポリエーテル末端のカルボン酸のアミン塩化合物を用いる場合でも、パーフルオロポリエーテル末端のカルボン酸の酸性が強いため遊離カルボン酸の影響により基材に影響がある。そのため、塩と共存して過剰の芳香族アミンを含有させねばならず、低分子である芳香族アミンの基盤からの滑落、蒸発により長期の安定性に問題がある。
【0262】
本発明の芳香族化合物を潤滑剤として用いた場合、本化合物自体は塩基性をもつために基材に悪影響を与えるため、潤滑剤として使用する場合は、酸との組成物でなければならない。しかし、本化合物は含フッ素エーテル鎖が塩基性であるため、酸成分として基材に影響の少ない弱酸との組成物の形で潤滑剤成分として用いることができ、長期安定性が高い、さらには、芳香族環状構造を含むために基材との密着性が高い、といった効果がある。
【0263】
なお、本化合物のうち塩基性官能基を含有しているものは、液体の酸と混合させることにより液化しやすく、液体の酸が中和点以下であっても液化する。このように、液体の酸と本発明の芳香族化合物との組成物は粘性の低い組成物となり、イオン性流体として好適な化合物になりうる。
【0264】
(除酸剤)
環境問題が重要視される中、化学物質合成の際に発生する廃水、廃溶媒の処理が問題となっている。特に、廃水中に有機酸、リン酸、またオスミウム、スズの酸化物、ハロゲン化物といった環境影響の強い酸成分が含まれる場合、単に酸を中和だけでは処理したことにならず、そのもの自体の除去が必要となる。廃水中の酸を除去する除酸剤としては、その水との分離容易性、再生容易性の点からアニオン型ポリマーが用いられる場合がある。しかし、水との分離性が良好なアニオン型ポリマーは種類が少なく、また、耐酸化性が必ずしもよくないので再生利用回数が限られる。更には廃水からの除酸のプロセス、再生のための除酸のプロセスが液・固反応となるため、必ずしも効率がよいとはいえない。含フッ素エーテルを含む本発明の芳香族化合物はそれ自体が液体であるため、除酸のプロセスが液・液反応となり、効率が高い。また、含フッ素エーテル鎖が短い場合、本化合物が酸性水溶液中に溶解してしまうことがあり、分離が困難となることがあるので、含フッ素エーテル鎖が長い芳香族化合物が好ましい。また、本発明の芳香族化合物は沸点が高いために揮発の心配がなく、再生使用も容易である。
【0265】
(アクチュエータ)
アクチュエータは人工筋肉やマイクロロボットへの応用が期待されているが、熱、光、電気などの外部刺激により変形する材料である。アクチュエータの中でも、電気に応答して高分子電解質ゲルが膨潤・収縮する材料は、電気信号が比較的容易に制御できることから実用化への期待が高い(科学と工業、72(4),p162−p167(1998))。
【0266】
このようなアクチュエータは、電位に対して変位が大きい方が、小電位で所定の変形をなすことから好ましい。現在は、パーフルオロスルホン酸膜、パーフルオロカルボン酸膜といった固体高分子酸を水で膨潤させてアクチュエータ材料として用いているが、電位に対する変形を大きくするべく検討が行われている。
【0267】
本発明においては、たとえば水で膨潤させたパーフルオロスルホン酸膜、パーフルオロカルボン酸膜といった固体高分子酸に、塩基性官能基を含有する本化合物または重合体を添加した場合は、添加しない場合に比べて、変形が大きくなるという効果がある。
【0268】
本発明の機能性材料は、上述のように液状で、または固体状で使用または混合することができるが、さらには固体膜としても成形することができる。
【0269】
固体膜への成形手法としては、たとえばキャスト、含浸、ヒートプレスなど、公知の任意の手法が用いられる。
【0270】
固体膜を形成する場合、酸と当該化合物または重合体との組み合わせは、
(i)固体の酸に液体の本含フッ素エーテル芳香族化合物を含浸させる、
(ii)固体の本含フッ素エーテル芳香族重合体を液体の酸に含浸させる、
(iii)固体の本含フッ素エーテル芳香族重合体と固体の酸を複合させる、
(iv)酸との組成物を他の固体膜に含浸させる
などの組み合わせがあげられる。
【0271】
本発明の第二は、含フッ素エーテル鎖を有する新規な芳香族化合物である。
【0272】
含フッ素エーテル鎖を有する新規な芳香族化合物の第一は、前述のイオン性液体型機能性材料に用いる芳香族化合物に含まれるものであって、イオン性液体型機能性材料として最も好ましいものの1つであり、特許、文献などに未記載の新規な化合物である。
【0273】
本発明の新規な芳香族化合物の第一は、式(4):
【0274】
【化52】

【0275】
[式中、−D2−は、式(4−1):
【0276】
【化53】

【0277】
(式中、R2は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n2は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、m2が2以上の場合、2種以上のD2は同じかまたは異なっても良い;Ry3はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基;Rx2は炭素数1〜20のエーテル結合を含んでも良い含フッ素アルキル基であって、m2が2以上の場合、2種以上のRx2は同じかまたは異なっても良い;m2は1〜4の整数である。ただし、上記式(4)および(4−1)において−O−O−の単位を含まない]で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物である。
【0278】
上記式(4)の芳香族化合物において、フルオロエーテル単位−D2−は、前述のイオン性液体型機能性材料で用いる芳香族化合物(式(1))における−D−と同様のものが好ましく、また、具体例についても前記−D−で説明したものと同様のものが好ましい具体例として挙げられる。
【0279】
上記式(4)の芳香族化合物において、Ry3はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基であり、具体的には、Ry3は前述の式(1)の芳香族化合物におけるRyにおいて、官能基がアミン類およびその塩から選ばれるものであること以外は、前述のRyで例示したものが同様に好ましく挙げられる。
【0280】
また、上記式(4)の芳香族化合物において、Rx2は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基であり、Rx2は具体的には、前述の式(1)の芳香族化合物におけるRaにおいて、好ましいグループとして挙げたエーテル結合を有しても良い含フッ素アルキル基Rxと同様のものが、好ましく利用でき、前述のRxの具体例についても、同様にRx2の好ましい具体例として挙げられる。
【0281】
また、上記式(4)の芳香族化合物全体の構造の好ましい具体例は、前述の式(1)の芳香族化合物の具体例の分類された記載のうち、(1−a)、(1−b)、(1−c)および(1−e)で記載したものが、同様に好ましい例示である。
【0282】
これら例示の、芳香族化合物はそれぞれ、特許・文献等に未記載の新規な芳香族化合物であり、イオン性液体型の機能性材料以外に、エポキシ硬化剤、保水剤、表面保護剤などの用途に利用可能であり、好ましい化合物である。
【0283】
本発明の新規な芳香族化合物の第二は、前述のイオン性液体型機能性材料に用いる式(1)の芳香族化合物のうち、重合性のエチレン性二重結合を有するものであり、イオン性液体型の機能に加えて、重合によって高分子量体(ポリマー)を製造することができるものであって、得られる重合体自体がイオン性液体型ポリマーとして前述した、優れた性能を有する点でも好ましい。
【0284】
この本発明の新規な芳香族化合物の第二は、式(5):
CX12=CX3−(CX45n3(C=O)n4−D2−Ry4 (5)
(式中、X1、X2、X4、X5は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X3は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3から選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;Ry4はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基;D2は前記式(4)と同じ)で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物である。
【0285】
上記式(5)の芳香族化合物において、−D2−は前記式(4)の芳香族化合物における−D1−と同様のものが好ましく挙げられ、−Ry4は前記式(4)の芳香族化合物における−Ry3であるアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基のうち、1価のものが同様に好ましく挙げられる。
【0286】
式(5)の芳香族化合物は、具体的には、
【0287】
【化54】

【0288】
などが挙げられ、なかでも好ましくは、式(6):
CX12=CX3−(CX45n3−D2−Ry4 (6)
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、n3、D2およびRy4は前記式(5)と同じ)で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物であり、単独重合性や含フッ素エチレン性単量体との共重合性が良好で、得られた重合体に効果的に耐酸化性、耐熱性を付与できる点で好ましい。
【0289】
式(6)の芳香族化合物は、具体的には
CH2=CFCF2−D2−Ry4、CF2=CF−D2−Ry4
CF2=CFCF2−D2−Ry4、CH2=CH−D2−Ry4
CH2=CHCH2−D2−Ry4
CH2=CFCF2O−D2−Ry4、CF2=CFO−D2−Ry4
CF2=CFCF2O−D2−Ry4、CH2=CHO−D2−Ry4
CH2=CHCH2O−D2−Ry4
などが好ましく挙げられ、特には、
CH2=CFCF2−D2−Ry4、CF2=CF−D2−Ry4
CH2=CFCF2O−D2−Ry4、CF2=CFO−D2−Ry4
が重合性が高く、重合体により効果的に耐酸化性、耐熱性を付与できる点で好ましい。
【0290】
また、上記式(6)の芳香族化合物全体の構造の好ましい具体例は、前述の式(1)の芳香族化合物の具体例の分類された記載の内、(1−e)、(1−f)および(1−g)で記載したものが、同様に好ましい例示である。
【0291】
本発明の第三は、新規な含フッ素重合体に関するものであり、イオン性液体型機能性材料に用いる前述の(M−1)の重合体に含まれるもので、イオン性液体型機能性材料としても、最も好ましいものの1つである。
【0292】
本発明の新規な重合体は、式(M−3):
−(M3)−(A3)− (M−3)
[式中、構造単位M3は式(7):
【0293】
【化55】

【0294】
(式中、X6、X7、X9およびX10は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X8は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3より選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;D2、Ry4は前記式(5)と同じ)で示される構造単位;構造単位A3は構造単位M3を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M3が1〜100モル%、構造単位A3が0〜99モル%の数平均分子量で500〜1000000の含フッ素重合体である。
【0295】
これら式(M−3)の重合体は、特許・文献等に未記載の新規な重合体である。
【0296】
本発明の式(M−3)の重合体は、前記式(5)で示したエチレン性二重結合を有する芳香族化合物を重合して得られる重合体であり、M3の構造単位のみからなる単独重合体であっても、また、M3を与えることができる式(5)の単量体と共重合可能な単量体との共重合体であっても良い。
【0297】
式(M−3)の重合体における構造単位M3は、具体的には、
【0298】
【化56】

【0299】
などが好ましく挙げられ、なかでも構造単位M3は、式(8):
【0300】
【化57】

【0301】
(式中、X6、X7、X8、X9、X10、n3、D2およびRy4は前記式(7)と同じ)で示される構造単位であることが、特に耐酸化性、耐熱性および耐薬品性において好ましい。
【0302】
式(8)の構造単位は、より具合的には、
【0303】
【化58】

【0304】
などが好ましく挙げられ、なかでも特に、
【0305】
【化59】

【0306】
の構造単位が耐酸化性、耐熱性および耐薬品性においてより好ましい。
【0307】
これら好ましい構造単位M3の全体の構造として好ましくは、前述のイオン性液体型機能性材料に用いる式(M−1)で示した構造単位M1のより詳しい具体例と同様のものが挙げられる。
【0308】
本発明の(M−3)の重合体は構造単位M3を1モル%以上含有していればよく、共重合可能な単量体由来の構造単位A3を有する共重合体であっても構わない。また、構造単位M3の単独重合体であっても構わない。
【0309】
また、構造単位A3は、構造単位M3由来の性能、例えば耐酸化性・耐熱性や液状性・低粘性を低下させないものが好ましい。
【0310】
その点でも、構造単位A3は含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0311】
含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位としては、炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位A3−1から選ばれるものが好ましい
この構造単位A3−1は、耐酸化性、耐熱性を改善できる点で好ましい。
【0312】
具体的には、CF2=CF2、CF2=CFCl、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3などが挙げられ、なかでも、共重合性、耐酸化性、耐熱性および耐薬品性を維持する効果が高い点で、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、クロロトリフルオロエチレン(CF2=CFCl)が好ましい。
【0313】
式(M−3)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、構造単位M3の構造、目的とする機能、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M3が30〜100モル%、構造単位A3が0〜70モル%であり、より好ましくは構造単位M3が40〜100モル%、構造単位A3が0〜60モル%、特に好ましくは構造単位M3が60〜100モル%、構造単位A3が0〜40モル%、さらに好ましくは構造単位M3が70〜100モル%、構造単位A3が0〜30モル%である。
【0314】
式(M−3)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で500〜1000000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1000〜50000であり、特には2000〜20000である。
【0315】
分子量が低すぎると、耐熱性が低下したり、機械的特性が低下する問題が生じることがある。また、分子量が高すぎると、高粘度化する可能性が生じるため好ましくない。
【0316】
本発明の式(M−3)の重合体は、前述のイオン性液体型機能性材料として最も好ましいものであるが、それ以外に、エポキシ硬化剤、保水剤、表面保護剤などの用途に利用可能であり、好ましい化合物である。
【実施例】
【0317】
つぎに本発明を実施例および合成例によって示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0318】
以下の実施例において、物性の評価は次の装置および測定条件を用いて行なった。
(1)NMR:BRUKER社製 AC−300
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR分析:Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定する。
(3)GPC:数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
(4)TGA測定:10%熱分解温度(Td10)および、50%熱分解温度(Td50)は、セイコーインストルメンツ(株)製のTG/DTA−6200を用いて室温から10℃/minで昇温したときのデータより算出する。
【0319】
実施例1(パーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを150ml、アミノピリミジンを57g、トリエチルアミンを42g入れた。氷浴下、攪拌しつつ、パーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッドクロライド):
【0320】
【化60】

【0321】
176gをゆっくりと滴下した。滴下後、徐々に室温にもどし、室温下で1時間攪拌した。反応液を酸、水で分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧蒸留することによりパーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミド:
【0322】
【化61】

【0323】
を142g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物はアセトン、酢酸エチルに可溶であり室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=159℃、Td50=188℃であった。
【0324】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(7F)、−82〜−85ppm(4F)、−92ppm(2F)、−115ppm(2F)、−132ppm(1F)、−145.0ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):7.2ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.0ppm(1H)
【0325】
実施例2(N−(パーフルオロ(1,1−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイル)−N-(2−ピリミジン)の合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、スルホラン150ml、パーフルオロ(1,1−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイル)−オルト−ニトロベンゼンスルホナート:
【0326】
【化62】

【0327】
を60g、アミノピリミジンを34g入れ、窒素雰囲気下170℃で24時間攪拌した。反応液を水に入れ、ろ過により固形物を取り除いた。ろ液を水/酢酸エチルで分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧蒸留することにより、N−パーフルオロ(1,1,−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイル)−N−(2−ピリミジン):
【0328】
【化63】

【0329】
を17g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は室温で液体であり、アセトン、酢酸エチルに可溶であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=122℃、Td50=138℃であった。
【0330】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(7F)、−82〜−85ppm(4F)、−94ppm(2F)、−112ppm(2F)、−143ppm(1F)、−168ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.8ppm(1H)、3.6ppm(2H)、7.2ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.0ppm(1H)
【0331】
実施例3(パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを150ml、アミノピリミジンを50g、トリエチルアミンを42g入れた。氷浴下、攪拌しつつ、パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイックアシッドクロライド):
【0332】
【化64】

【0333】
160gをゆっくりと滴下した。滴下後、徐々に室温にもどし、室温下で1時間攪拌した。反応液を酸、水で分液し油層を取り出した。油層を濃縮することにより、パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミド:
【0334】
【化65】

【0335】
を136g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルに可溶であり室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=180℃、Td50=209℃であった。
【0336】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(11F)、−82〜−85ppm(5F)、−97ppm(2F)、−118ppm(2F)、−132ppm(1F)、−147ppm(2F)
1H−NMR(CD3COCD3):7.2ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.0ppm(1H)
【0337】
実施例4(パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(4−アミノフェニル)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを120ml、p−フェニレンジアミンを38.9g、トリエチルアミンを18.3g入れた。室温下、攪拌しつつ、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッドクロライド)50.8gをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液に水とHCFC141bを加えて分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で加熱することにより未反応原料等を除き、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(4−アミノフェニル)アミド:
【0338】
【化66】

【0339】
を36.5g得た。19F−NMR分析、1H−NMRにより分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルに可溶であり室温で固体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=213℃、Td50=258℃であった。
【0340】
19F−NMR(CD3COCD3):−73ppm(2F)、−78〜−80ppm(4F)、−82〜−85ppm(4F)、−124ppm(1F)、−132ppm(1F)、−145.0ppm(1F)
1H−NMR(CDCl3):5.1ppm(1H)、5.3ppm(1H)、6.7ppm(2H)、7.2ppm(2H)、7.6ppm(2H)、8.1ppm(1H)
【0341】
実施例5(パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水THFを80ml、2−アミノピリミジンを14.8g、トリエチルアミンを16.8g入れた。室温下、攪拌しつつ、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッドクロライド)52.0gをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液に水とHCFC141bを加えて分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で加熱することにより未反応原料等を除き、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミド:
【0342】
【化67】

【0343】
を46.7g得た。19F−NMR分析、1H−NMRにより分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルに可溶であり室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=167℃、Td50=198℃であった。
【0344】
19F−NMR(CD3COCD3):−73ppm(2F)、−78〜−80ppm(4F)、−87〜−90ppm(4F)、−124ppm(1F)、−132ppm(1F)、−145.0ppm(1F)
1H−NMR(CDCl3):5.2ppm(1H)、5.3ppm(1H)、7.2ppm(2H)、8.7ppm(2H)、9.1ppm(1H)
【0345】
実施例6(パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(3−(1,2,4−トリアゾール))アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水THFを90ml、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを15.1g、トリエチルアミンを24.1g入れた。水浴上で攪拌しつつ、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッドクロライド)65.4gをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液に水とHCFC141bを加えて分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で加熱することにより未反応原料等を除き、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(3−(1,2,4−トリアゾール))アミド:
【0346】
【化68】

【0347】
を67.0g得た。19F−NMR分析、1H−NMRにより分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルに可溶であり室温で固体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=188℃、Td50=232℃であった。
【0348】
19F−NMR(CD3COCD3):−73ppm(2F)、−78〜−80ppm(4F)、−87〜−90ppm(4F)、−124ppm(1F)、−132ppm(1F)、−145.0ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):5.4ppm(1H)、5.6ppm(1H)、8.3ppm(1H)、8.5ppm(1H)、8.7ppm(1H)
【0349】
実施例7(パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデセノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水THFを100ml、2−アミノピリミジンを9.89g、トリエチルアミンを12.0g入れた。室温下、攪拌しつつ、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデセノイックアシッドクロライド)48.4gをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液に水とHCFC141bを加えて分液し油層を取り出した。油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で加熱することにより未反応原料等を除き、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデセノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミド:
【0350】
【化69】

【0351】
を20.9g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は液体であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=182℃、Td50=254℃であった。
【0352】
19F−NMR(CD3COCD3):−73ppm(2F)、−78〜−80ppm(8F)、−87〜−90ppm(5F)、−124ppm(1F)、−132ppm(1F)、−145.0ppm(2F)
1H−NMR(CDCl3):5.13ppm(1H)、5.24ppm(1H)、7.19ppm(1H)、8.71ppm(2H)、8.93ppm(1H)
【0353】
実施例8(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた50mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミドを6.14gと
【0354】
【化70】

【0355】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液4.14g、HCFC141b10mlを入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。反応混合物をHCFC141b:ヘキサン=9:1の混合溶液に注ぎ、分離、真空乾燥させ、淡黄色の重合体1.1gを得た。
【0356】
この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素エーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にピリミジンを有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は11,200、重量平均分子量は17,000であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=235℃、Td50=393℃であった。この化合物はアセトンに可溶の固体であった。
【0357】
19F−NMR(CD3COCD3):−75〜−83ppm(9F)、−84〜−87ppm(1F)、−128ppm(1F)、−144ppm(1F)、−166〜−180ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.8〜3.3ppm(2H)、7.3ppm(1H)、8.7ppm(2H)、11.0ppm(1H)
【0358】
合成例1(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた100mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッドクロライド)を29.7gと
【0359】
【化71】

【0360】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液29.2g、HCFC141b5mlを入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。得られた高粘度の液体をヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の重合体24.3gを得た。この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素エーテルの構造単位のみからなり側鎖末端に酸塩化物を有する含フッ素重合体であった。このポリマーをテトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定したところ、数平均分子量は8,000、重量平均分子量は12,300であった。
【0361】
実施例9
温度計、滴下漏斗を備えた200ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを15m、1,2−アミノピリミジンを1.90g、トリエチルアミンを3.00g入れた。室温下、攪拌しつつ、上記合成例1で得られた側鎖末端が酸塩化物であるポリマー7.10gをHCFC141b20mlに溶かしたものをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液を濃縮したものをアセトンに溶かし、水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、淡黄色の生成物3.76gを得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、本重合体であることを確認した。この重合体は固体であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=281℃、Td50=430℃であった。
【0362】
19F−NMR(CD3COCD3):−75〜−83ppm(9F)、−84〜−87ppm(1F)、−128ppm(1F)、−144ppm(1F)、−166〜−180ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.8〜3.1ppm(2H)、7.1ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.5ppm(1H)
【0363】
実施例10
温度計、滴下漏斗を備えた200ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを35ml、p−フェニレンジアミンを9.25g、トリエチルアミンを4.6g入れた。室温下、攪拌しつつ、上記合成例1で得られた側鎖末端が酸塩化物であるポリマー11.6gをHCFC141b20mlに溶かしたものをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、淡黄色の生成物11.7gを得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、本重合体であることを確認した。この重合体は固体であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=340℃、Td50=406℃であった。
【0364】
19F−NMR(CD3COCD3):−75〜−83ppm(9F)、−84〜−87ppm(1F)、−128ppm(1F)、−144ppm(1F)、−166〜−180ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.8〜3.1ppm(2H)、6.7ppm(2H)、7.2ppm(2H)、7.6ppm(2H)、8.1ppm(1H)
【0365】
実施例11
実施例5で製造したパーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミド0.93gにトリフルオロ酢酸1.84gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロ酢酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=220℃、Td50=235℃であった。
【0366】
実施例12
実施例6で製造したパーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(3−(1,2,4−トリアゾール))アミド0.56gにトリフルオロ酢酸1.40gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロ酢酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=210℃、Td50=221℃であった。
【0367】
実施例13
実施例5で製造したパーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(2−アミノピリミジン)アミド1.20gにトリフルオロメタンスルホン酸0.90gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=245℃、Td50=263℃であった。
【0368】
実施例14
実施例6で製造したパーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(3−(1,2,4−トリアゾール))アミド0.97gにトリフルオロメタンスルホン酸1.60gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=230℃、Td50=241℃であった。
【0369】
実施例15
実施例4で製造したパーフルオロ(9,9−ジヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノイックアシッド)−(4−アミノフェニル)アミドの0.97gにトリフルオロメタンスルホン酸1.60gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=250℃、Td50=261℃であった。
【0370】
比較例1
ピリミジン1gにトリフルオロ酢酸1gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロ酢酸を除去したところ固体が得られた。
【0371】
比較例2
ピリミジン1gにトリフルオロメタンスルホン酸1.8gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ固体が得られた。
【0372】
比較例3
フェニレンジアミン1gにトリフルオロメタンスルホン酸1.4gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ固体が得られた。
【0373】
実施例16
実施例9で製造した側鎖にアミドピリミジンを有する重合体1.2gにトリフルオロメタンスルホン酸1.8gを加えて室温で1日攪拌した。減圧下で加熱して過剰のトリフルオロメタンスルホン酸を除去したところ液体が得られた。このものを空気中でTGA測定した結果、Td10=310℃、Td50=430℃であった。
【0374】
実施例17(パーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッド)−(1,3−ジメチルピリミジン−2−イル)アミドのジヨード塩の合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、THFを100ml、実施例1で製造したパーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミド30gを入れた。水浴下、攪拌しつつ、ヨウ化メチル10gをゆっくりと滴下する。滴下後、室温下で1時間攪拌した。反応終了後、減圧により、残余のTHF、CH3Iを除去し、(パーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノナノイックアシッド)−(1,3−ジメチルピリミジン−2−イル)アミドのジヨード塩45gを得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は液体であった。
【0375】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(7F)、−82〜−85ppm(4F)、−92ppm(2F)、−115ppm(2F)、−132ppm(1F)、−145。0ppm(1F)
1H−NMR(CD3COCD3):4.1〜4.5ppm(6H)、7.2ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.0ppm(1H)
【0376】
実施例18(長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミドの合成)
温度計、滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを150ml、アミノピリミジンを10g、トリエチルアミン10gを入れた。氷浴下、攪拌しつつ、つぎの平均分子量2000の長鎖含フッ素エーテル含有酸フルオライド:
37O−(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2COF
(nは平均10)
120gをゆっくりと滴下した。滴下後、徐々に室温にもどし、室温下で1時間攪拌した。反応液を酸、水で分液し油層を取り出した。油層を濃縮することにより、つぎの長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミド:
37O−(CF(CF3)CF2O)12−CF(CF3)CONH−(2−ピリミジン)
を122g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルに不溶であり室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=310℃、Td50=328℃であった。
【0377】
1H−NMR(CD3COCD3):7.2ppm(1H)、8.7ppm(2H)、9.0ppm(1H)
【0378】
試験例1(除酸剤としての効果)
1規定の塩酸水溶液20mlに、実施例18で製造した長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミド30gを入れ、室温で0.5h攪拌した。攪拌中液は2層分離しており、攪拌終了後も長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミドは下層に、塩酸水溶液は上層に2層分離していた。pH試験紙でこの水溶液の酸性を調べたところ、液はアミドで処理する前後で強酸性から中性へと変化した。
【0379】
試験例2(除酸剤としての効果)
1規定の酢酸水溶液20mlに、実施例18で製造した長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミド30gを入れ、室温で0.5h攪拌した。攪拌中液は2層分離しており、攪拌終了後も当該長鎖含フッ素エーテル含有(2−ピリミジン)アミドは下層に、酢酸水溶液は上層に2層分離していた。pH試験紙でこの水溶液の酸性を調べたところ、液はアミドで処理する前後で酸性から中性へと変化した。
【0380】
試験例3(潤滑性の確認)
厚さ約100μm、横3cm、縦10cmのポリスチレンフィルム上に、金属コバルトを真空蒸着により塗布し、更にその上に厚さ約6μmのポリスチレン層をスピンコートにより形成した。この層の上に、潤滑層としてパーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサドデカノイックアシッド(潤滑層I)、または実施例3で製造したパーフルオロ(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサドデカノイックアシッド)−(2−ピリミジン)アミド10gとパーフルオロ−(2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサドデカノイックアシッド10gを混合してなる液状組成物(潤滑層II)をそれぞれスピンコートにより塗布した。塗布量は約10mg/m2であった。この層を、潤滑層を下におく形で下から長さ5cm、直径3cmの半円柱状の先端をもつ棒で約10gfの力で100回こすった。1回目と100回目の摩擦力と金属コバルトの残量を表1に示す。
【0381】
摩擦力の変化は、該層を一定の力でこすった場合の速さで、金属コバルト残量は光学顕微鏡観察で該層の表面を観察するとともに、コバルトの落下量(密着性がわるいとコバルトが粉となって落下する)で評価した。評価基準は、こする速さが大きく変化しないものを○、こする速さが大きく低下したものを×、さらにコバルト粉の落下量が少ないものを○、コバルト粉の落下量が多いものを×とした。
【0382】
【表1】

【0383】
試験例4(アクチュエータ効果の確認)
厚さ0.2mm、横1cm、縦5cmのナフィオン117(デュポン社の商標)膜を10-2規定の[AU(III)(フェナントリン)Cl2]Cl水溶液に室温で10時間含浸させ、のちに純水で洗浄するという操作を5回くりかえした膜を、10-3規定のNa2SO3水溶液に50℃で8時間含浸させることにより、金とナフィオンとの複合膜を得た。次にこの複合膜を、1規定のLiCl水溶液、1規定のNH4Cl水溶液、または1規定の実施例1で製造したアミド化合物のエタノール溶液に、室温で12時間含浸させてイオン交換を行い、それぞれスルホン酸の対イオンがLi+であるナフィオン膜(対カチオンI)、スルホン酸の対イオンがNH4+であるナフィオン膜(対カチオンII)、スルホン酸の対イオンが実施例1で製造したアミド化合物由来のカチオンであるナフィオン膜(対カチオンIII)を得た。
【0384】
次に、各々の膜の先端をPtフォイルではさみ、該Ptフォイルに電線を接続し、電線を介してポテンシオスタット(北斗電工(株)製のHA−501G)と接続した。膜を水に浸し、電位を3Vかけてその変位を目視で観察した。その結果を表2に示す。
【0385】
評価は、変位量を3段階に分け、○、△および×で評価した。
【0386】
【表2】

【0387】
合成例2(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた100mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデケノイックアシッドクロライド):
【0388】
【化72】

【0389】
を12g、
パーフルオロ−(12,12,2−トリヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカン):
【0390】
【化73】

【0391】
を10.4g入れ、ついで
【0392】
【化74】

【0393】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液36g、HCFC141b20mlを入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。得られた高粘度の液体をヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の重合体20.5gを得た。この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、側鎖末端が酸クロライドであるユニット/側鎖末端に官能基を有さないユニットの割合は53/47(モル%)であった。このポリマーをテトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定したところ、数平均分子量は6,800、重量平均分子量は8,300であった。
【0394】
実施例19
温度計、滴下漏斗を備えた200ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを15ml、2−アミノピリミジンを2.1g、トリエチルアミンを5.00g入れた。室温下、攪拌しつつ、上記合成例2で得られた側鎖末端が酸塩化物であるポリマー10gをHCFC141b20mlに溶かしたものをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液を濃縮したものをアセトンに溶かし、水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、淡黄色の生成物9.1gを得た。19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析し、本重合体であることを確認した。この重合体は固体であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=251℃、Td50=380℃であった。
【0395】
19F−NMR(CD3COCD3):−75〜−83ppm(10.4F)、−84〜−87ppm(1F)、−128ppm(1F)、−144ppm(1F)、−166〜−180ppm(1.5F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.8〜3.1ppm(4.9H)、7.1ppm(1.1H)、8.7ppm(2.1H)、9.5ppm(1.1H)
【0396】
合成例3(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた100mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデセノイックアシッドクロライド):
【0397】
【化75】

【0398】
を8g、
パーフルオロ−(12,12,2−トリヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカン):
【0399】
【化76】

【0400】
を20.7g入れ、
【0401】
【化77】

【0402】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液49g、HCFC141b28mlを入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。得られた高粘度の液体をヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の重合体25gを得た。この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、側鎖末端が酸クロライドであるユニット/側鎖末端に官能基を有さないユニットの割合は24/76(モル%)であった。このポリマーをテトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定したところ、数平均分子量は6,200、重量平均分子量は7,600であった。
【0403】
実施例20
温度計、滴下漏斗を備えた200ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、脱水DMFを15ml,2−アミノピリミジンを1.5g、トリエチルアミンを5.00g入れた。室温下、攪拌しつつ、上記合成例3で得られた側鎖末端が酸塩化物であるポリマー10gをHCFC141b20mlに溶かしたものをゆっくりと滴下した。滴下後、室温下で終夜攪拌した。反応液を濃縮したものをアセトンに溶かし、水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、淡黄色の生成物8.7gを得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、本重合体であることを確認した。この重合体は固体であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=264℃、Td50=360℃であった。
【0404】
19F−NMR(CD3COCD3):−75〜−83ppm(11.2F)、−84〜−87ppm(1F)、−128ppm(1F)、−144ppm(1F)、−166〜−180ppm(1.7F)
1H−NMR(CD3COCD3): 2.8〜3.1ppm(5.4H)、7.1ppm(0.5H)、8.7ppm(1.0H)、9.5ppm(0.5H)
【0405】
実施例21(2,4,6−トリ{パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]の合成)
パーフルオロ−(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノニトリル):
【0406】
【化78】

【0407】
35gと酸化銀0.2gを100mlオートクレーブ中に入れ、窒素置換後攪拌しながら140℃で18時間加熱した。反応終了後、ろ過により酸化銀を取り除き、ろ液を加熱下真空で留去することにより、2,4,6−トリ{パーフルオロ−(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]:
【0408】
【化79】

【0409】
を20g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=160℃、Td50=165℃であった。
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(11F)、−82〜−85ppm(5F)、−97ppm(2F)、−118ppm(2F)、−132ppm(1F)、−147ppm(2F)
1H−NMR(CD3COCD3):ピークなし
IR:1620cm-1(C=N)
【0410】
実施例22(2,4−ビス{パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]−6−オールの合成)
スルホラン30mlに水素化ナトリウム0.57gを入れ、そこへパーフルオロ−(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノニトリル)30g、尿素1.4gを水浴下滴下した。滴下後1時間攪拌し、その後に80℃で8時間加熱攪拌した。反応後水洗、分液し油層を取り出し、加熱下真空で未反応物を留去することにより、2,4,−ビス{パーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]−6−オール:
【0411】
【化80】

【0412】
を18g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルなどに可溶な室温で液体の化合物であった。また、空気中のTGA測定の結果、Td10=170℃、Td50=175℃であった。
【0413】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(11F)、−82〜−85ppm(5F)、−97ppm(2F)、−118ppm(2F)、−132ppm(1F)、−147ppm(2F)
1H−NMR(CD3COCD3):ピークなし
IR:1620cm-1(C=N)、3200cm-1(OH)
【0414】
実施例23(2,4−ジアミノ−6−{パーフルオロ−(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]の合成)
スルホラン30mlに水酸化ナトリウム0.7gを入れ、そこへパーフルオロ(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノニトリル)30g、ジアミノジシアン4.3gを水浴下滴下した。滴下後1時間攪拌し、その後に80℃で8時間加熱攪拌した。反応後アンモニア水で水洗、分液し油層をとりだし、加熱下真空で未反応物を留去することにより、2,4,−ジアミノ−6−{パーフルオロ−(2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)}−1,3,5−[トリアジン]:
【0415】
【化81】

【0416】
を21g得た。19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析し、上記化合物であることを確認した。この化合物は、アセトン、酢酸エチルなどに可溶な室温で固体の化合物であった。
【0417】
19F−NMR(CD3COCD3):−78〜−80ppm(11F)、−82〜−85ppm(5F)、−97ppm(2F)、−118ppm(2F)、−132ppm(1F)、−147ppm(2F)
1H−NMR(CD3COCD3):ピークなし
IR:1620cm-1(C=N)、3300cm-1(NH2
【0418】
合成例4(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた100mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノニトリル):
【0419】
【化82】

【0420】
9.8gと、パーフルオロ(12,12,2−トリヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカン):
【0421】
【化83】

【0422】
10.2gを入れ、
【0423】
【化84】

【0424】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を24g、HCFC141bを20g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。得られた高粘度の液体をヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の重合体16.0gを得た。この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、側鎖末端がシアノ基であるユニット/側鎖末端に官能基を有さないユニットの割合は48/52(モル%)であった。
【0425】
実施例24
撹拌装置、温度計、冷却管を備えた200ml三つ口フラスコに、上記合成例4で得られた側鎖末端がシアノ基であるポリマーを10g、N,N’−ジメチルホルムアミドを50g、ジシアンジアミドを0.9g、水酸化カリウムを0.8g入れた。この混合溶液を98℃まで昇温し、6時間攪拌した。反応液をアセトンに溶かし、水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、茶褐色の生成物9.4gを得た。19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析し、当該重合体のニトリル基がジアミノトリアジン:
【0426】
【化85】

【0427】
に変換していることを確認した。
【0428】
合成例5(側鎖に含フッ素エーテル構造体を有するポリマーの合成)
撹拌装置を備えた100mlのガラス製ナス型フラスコに、パーフルオロ(12,12−ジヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカノニトリル):
【0429】
【化86】

【0430】
14.9gと、パーフルオロ(12,12,2−トリヒドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサドデカン):
【0431】
【化87】

【0432】
5.2gを入れ、
【0433】
【化88】

【0434】
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を24g、HCFC141bを20g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なった。得られた高粘度の液体をヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明の重合体17.3gを得た。この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、側鎖末端がシアノ基であるユニット/側鎖末端に官能基を有さないユニットの割合は83/17(モル%)であった。
【0435】
実施例25
撹拌装置、温度計、冷却管を備えた100ml三つ口フラスコに、上記合成例5で得られた側鎖末端がシアノ基であるポリマーを9.0g、スルホランを45g、ジシアンジアミドを0.5g、水酸化カリウムを0.5g入れた。この混合溶液を98℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液をアセトンに溶かし、水で再沈殿した後分離、真空乾燥させ、茶褐色の生成物7.0gを得た。19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析し、当該重合体のシアノ基がジアミノトリアジンに変換していることを確認した。この重合体は粘性液体であった。
【0436】
19F−NMR(CD3COCD3):−77〜−82ppm(39.0F)、−82〜−85ppm(14.6F)、−120〜−121ppm(1F)、−121〜−123ppm(2F),−128〜129ppm(1.2F)、−137〜−138ppm(1F)、−142〜−145ppm(7.8F),−146〜−147ppm(3.1F)
1H−NMR(CD3COCD3):2.5〜3.3ppm(8.4H)、6.5〜6.8ppm(1H)、6.8〜7.3ppm(4.0H)
【産業上の利用可能性】
【0437】
本発明によれば、耐酸化性やイオン安定性、耐熱性、潤滑性、水不溶性、低粘性などに優れ、潤滑剤、除酸剤、各種イオン性液体材料または固体材料、太陽電池の電解質、アクチュエータ材料として有用なイオン性液体型機能性材料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

〔式中、−D−は、式(1−1):
【化2】

(式中、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;nは1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、mが2以上の場合、2種以上のDは同じかまたは異なっても良い;
Raは前記Dを含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、mが2以上の場合、2種以上のRaは同じかまたは異なっても良い;
mは1〜4の整数;
Ryは塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基である。ただし、上記式(1)および(1−1)において−O−O−の単位を含まない]で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物からなるイオン性液体型機能性材料。
【請求項2】
前記式(1)において、−D−における−O−R−が、−(OCFZ1CF2)−、−(OCF2CF2CF2)−、−(OCH2CF2CF2)−、−(OCFZ2)−、−(OCZ32)−、−(CFZ1CF2O)−、−(CF2CF2CF2O)−、−(CH2CF2CF2O)−、−(CFZ2O)−および−(CZ32O)−(式中、Z1、Z2は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Z3はCF3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロエーテルの単位を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項3】
Raが炭素数1〜20の含フッ素アルキル基Rxから選ばれるものである請求の範囲第1項または第2項記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項4】
Raが塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜20の1価の有機基Ry’である請求の範囲第1項または第2項記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項5】
前記Ryが有する塩基性官能基または該塩基性官能基の塩が、アミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、アジン類およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項6】
式(M−1):
−(M1)−(A1)− (M−1)
[式中、構造単位M1は、式(2):
−D1−Ry1 (2)
{式中、−D1−は、式(2−1):
【化3】

(式中、R1は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n1は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位;Ry1は塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2から選ばれる少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基}で示される部位を側鎖に有するエチレン性単量体由来の構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位である。ただし、構造単位M1中および式(2−1)中において−O−O−の単位を含まない;構造単位A1は構造単位M1を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であって、構造単位M1を1〜100モル%、構造単位A1を0〜99モル%含む含フッ素重合体からなるイオン性液体型機能性材料。
【請求項7】
式(M−2):
−(M2)−(A2)− (M−2)
[式中、構造単位M2は、式(3):
【化4】

(式中、Ry2は塩基性官能基Y1および/または該塩基性官能基の塩Y2の少なくとも1種を有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の2〜4価の有機基;Ra1はD1を含まない炭素数1〜20の1価の有機基であって、m1が2以上の場合、2種以上のRa1は同じかまたは異なっても良い;m1は1〜3の整数;D1は請求の範囲第6項記載の式(2)と同じものから選ばれ、ただしm1が2以上の場合、2種以上のD1は同じかまたは異なっても良い)で示される部位を側鎖に有するエチレン性単量体由来の構造単位である。ただし、構造単位M2中および式(2−1)中において−O−O−の単位を含まない;構造単位A2は構造単位M2を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であって、構造単位M2を1〜100モル%、構造単位A2を0〜99モル%含む含フッ素重合体からなるイオン性液体型機能性材料。
【請求項8】
Ra1が炭素数1〜20の含フッ素アルキル基Rx1から選ばれるものである請求の範囲第7項記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項9】
前記Ry1、Ry2中に有する塩基性官能基Y1または該塩基性官能基の塩Y2が、アミン類、イミン類、エナミン類、ケチミン類、アジン類およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第6項〜第8項のいずれかに記載のイオン性液体型機能性材料。
【請求項10】
式(4):
【化5】

[式中、−D2−は、式(4−1):
【化6】

(式中、R2は水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基から選ばれる少なくとも1種;n2は1〜20の整数)で示されるフルオロエーテルの単位であって、m2が2以上の場合、2種以上のD2は同じかまたは異なっても良い;Ry3はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1〜4価の有機基;Rx2は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基であって、m2が2以上の場合、2種以上のRx2は同じかまたは異なっても良い;m2は1〜4の整数である。ただし、上記式(4)および(4−1)において−O−O−の単位を含まない]で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物。
【請求項11】
式(5):
CX12=CX3−(CX45n3(C=O)n4−D2−Ry4 (5)
(式中、X1、X2、X4、X5は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X3は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3から選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;Ry4はアミン類および/またはアミン類の塩の少なくとも1つを有し、かつ芳香族環状構造を含む炭素数2〜30の1価の有機基;D2は請求の範囲第10項記載の式(4)と同じ)で示される含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物。
【請求項12】
式(6):
CX12=CX3−(CX45n3−D2−Ry4 (6)
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、n3、D2およびRy4は前記式(5)と同じ)で示される含フッ素エーテル鎖を有する請求の範囲第11項記載の芳香族化合物。
【請求項13】
式(M−3):
−(M3)−(A3)− (M−3)
[式中、構造単位M3は式(7):
【化7】

(式中、X6、X7、X9およびX10は同じかまたは異なり、水素原子またはフッ素原子;X8は水素原子、フッ素原子、CH3およびCF3より選ばれるもの;n3、n4は同じかまたは異なり、0または1;D2およびRy4は請求の範囲第11項記載の式(5)と同じ)で示される構造単位;構造単位A3は構造単位M3を与えうる単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M3が1〜100モル%、構造単位A3が0〜99モル%の数平均分子量で500〜1000000の含フッ素重合体。
【請求項14】
構造単位M3が式(8):
【化8】

(式中、X6、X7、X8、X9、X10、n3、D2およびRy4は前記式(7)と同じ)で示される構造単位である請求の範囲第13項記載の含フッ素重合体。

【国際公開番号】WO2005/085181
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510718(P2006−510718)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003611
【国際出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】